説明

シフトレバー装置

【課題】中立位置への付勢構造がシンプルであって、かつ、良好な操作フィーリングが実現された優れた特性のシフトレバー装置を提供すること。
【解決手段】セレクト軸30に外挿配置されるトーションばね4を含むシフトレバー装置1では、シフトレバーが中立位置にあるとき、一対のトーションバー41が係止部315を挟み込み、これにより、セレクト軸30の軸方向に直交する方向の反力がトーションばね4に生じており、この反力に由来する当接荷重がセレクト軸30と支持部311との間に設けられた凸部310と凹部300との収容構造に作用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフトレンジを選択するために車載されるシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の変速機で設定されるシフトレンジを車室側からの操作により切り換えるためのシフトレバー装置が知られている。シフトレバー装置としては、先端にシフトノブ等が取り付けられ、回動操作される棒状のシフトレバーを備えた装置が一般的である。シフトレバー装置の中には、シフトレバーの中立位置が設定された装置もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなシフトレバー装置では、シフトレバーが常時、中立位置に向けて付勢されている。運転者が所望のシフト位置に向けてシフトレバーを回動操作した後で手を離せば、そのシフト位置に対応するシフトレンジが選択されたまま、シフトレバーは中立位置に自動的に復帰する。
【0004】
しかしながら、前記従来のシフトレバー装置では、次のような問題がある。すなわち、前記シフトレバーを中立位置に付勢するための構造が複雑であったり、中立位置における節度感が十分ではなく操作フィーリングが良好ではなかったりといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、シフトレバーの中立位置が設けられたシフトレバー装置において、中立位置への付勢構造がシンプルであって、かつ、良好な操作フィーリングが実現された優れた特性のシフトレバー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シフトレバーを回動可能に支持する軸支構造を含む車両用のシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの回動動作の中心をなす回動軸と、
前記シフトレバーの回動動作に従動することなく前記回動軸に外接する外接部と、
バネ用線材をコイル状に巻回した略円筒状の巻回部、及び前記バネ用線材の両端が外周側に延設された一対の延設部を含み、前記回動軸に対して前記巻回部を外挿して取り付けられる弾性部材と、
前記シフトレバーが中立位置にあるとき、前記巻回部の軸芯を中心として回動方向に互いに離隔するように弾性変形した状態の前記一対の延設部により挟み込まれる係止部と、
前記一対の延設部の間隙に配置されると共に、前記シフトレバーの回動動作に従動して前記回動軸の回りを回動し、前記中立位置に対して回動側に位置する延設部を従動させて他方から離れる方向に回動させる駆動部と、を含み、
前記シフトレバーが前記中立位置にあるとき、前記一対の延設部が前記係止部を挟み込み、これにより、前記回動軸の軸方向に直交する方向の反力が前記弾性部材に作用するように構成され、かつ、
前記シフトレバーが前記中立位置にあるとき、前記回動軸と前記外接部とが凸部と凹部との収容構造を介在して当接すると共に、当該当接箇所には前記反力に由来する当接荷重が作用しているシフトレバー装置にある(請求項1)。
【0008】
本発明のシフトレバー装置では、前記中立位置から前記シフトレバーが操作されたとき、前記一対の延設部のうちの一方が前記駆動部によって外側に押し出されて回動し、これにより、前記駆動部を押し戻そうとする弾性付勢力が生じる。前記シフトレバーは、この弾性付勢力によって前記中立位置に向けて付勢される。
【0009】
一方、前記中立位置では、前記係止部を前記一対の延設部が挟み込み、これにより、前記回動軸に直交する方向の反力が生じている。この反力は、前記回動軸と前記外接部との間の当接荷重として前記収容構造に作用する。前記凹部と前記凸部とを組み合わせたこの収容構造は、前記中立位置において節度感を生じさせ、前記シフトレバーの操作フィーリングを向上させる。
【0010】
このように本発明のシフトレバー装置は、シフトレバーの中立位置が設けられたシフトレバー装置であって、中立位置へのシンプルな付勢構造により良好な操作フィーリングが実現された装置である。
【0011】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置においては、、前記凸部及び前記凹部は、前記回動軸に直交する断面形状が円弧をなすように形成されており、前記凹部の断面形状をなす円弧の曲率半径が、前記凸部の断面形状をなす円弧の曲率半径よりも小さい(請求項2)。
この場合には、前記凹部に収容された前記凸部の遊びを抑制でき、その凹部の中でのガタを抑制できる。これにより、前記中立位置における節度感をさらに向上でき、操作フィーリングを一層向上できる。
【0012】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置においては、前記一対の延設部は、前記セレクト軸から遠ざかるにつれて前記セレクト方向の幅が次第に広く、あるいは次第に狭くなっている箇所で前記係止部を挟み込み、これにより上記の反力が生じている(請求項3)。
【0013】
この場合には、前記一対の延設部の間隙で前記係止部を弾性的に挟み込むだけで前記反力を生じさせることができる。例えば、前記セレクト軸から遠ざかるにつれてセレクト方向の幅が次第に狭くなっている末窄まりの箇所で前記係止部を挟み込んだ場合であれば、仮にその窄まり方向に前記弾性部材が変位できれば、前記一対の延設部の回動方向の間隔をより縮めることが可能になる。そのため、前記一対の延設部の回動方向の間隔を縮めようとする弾性力は、前記セレクト軸から遠ざかる方向に前記弾性部材を変位させようとする反力に一部変換される。一方、前記セレクト軸から遠ざかるにつれて幅が次第に広くなる末広がりの箇所で前記係止部を挟み込めば、前記一対の延設部の回動方向の間隔を縮めることができるように前記セレクト軸側に向かって変位させようとする反力が前記弾性部材に作用する。
【0014】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置においては、車体側に取り付けるための取付部が設けられる筐体と、
前記シフトレバーの基部をなし、シフト方向の操作に応じて前記シフトレバーと一体的に回動するレバーブロックと、
前記シフト方向の操作に応じて前記レバーブロックが回動可能なように該レバーブロックを軸支すると共に、シフト方向とは直交するセレクト方向の操作に応じて回動可能な状態で前記筐体側に軸支される揺動台と、を有し、
前記シフト方向及び前記セレクト方向のうちの少なくとも何れか一方に前記中立位置が設けられている(請求項4)。
【0015】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置においては、前記凸部は、前記巻回部をなすバネ用線材が内周側に屈曲されて形成され、前記凹部は、前記回動軸の外周面に形成されている(請求項5)。
この場合には、前記シフトレバーを前記中立位置に付勢する機構と、前記中立位置において節度感を与える機構と、を前記弾性部材のみにより、新たな部品を追加することなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、シフトレバー装置を示す斜視図。
【図2】実施例1における、シフトレバー装置の断面構造を示す断面図(シフト軸に沿う断面)。
【図3】実施例1における、シフトレバー装置の断面構造を示す断面図(図2中のA−A線矢視断面)。
【図4】実施例1における、セレクト軸の周辺構造を示す斜視図。
【図5】実施例1における、セレクト軸の周辺構造を示す正面図。
【図6】実施例1における、その他のトーションばねを示す説明図。
【図7】実施例1における、セレクト軸のその他の周辺構造を示す正面図。
【図8】実施例2における、セレクト軸の周辺構造を示す斜視図。
【図9】実施例2における、その他のトーションばねを示す斜視図(A)及び正面図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、車両のシフトレンジを選択するために互いに直交するシフト方向及びセレクト方向に操作可能なシフトレバー21を含むシフトレバー装置1に関する例である。この内容について、図1〜図7を用いて説明する。
【0018】
本例のシフトレバー装置1は、図1〜図4に示すごとく、シフトレバー21のセレクト方向の回動動作の中心をなすセレクト軸(回動軸)30と、略円筒状の巻回部40、及びその両端が外周側に延設された一対のトーションバー(延設部)41を含み、セレクト軸30に対して巻回部40を外挿して取り付けられるトーションばね(弾性部材)4と、回動方向に互いに離隔するように弾性変形した状態の一対のトーションバー41により挟み込まれる係止部315と、一対のトーションバー41の間隙に配置されると共に、シフトレバー21の回動動作に従動してセレクト軸30の回りを回動し、中立位置に対して回動側に位置するトーションバー41を従動させて他方から離れる方向に回動させる駆動片(駆動部)326と、を含んでいる。
【0019】
このシフトレバー装置1は、シフトレバー21が中立位置にあるとき、一対のトーションバー41が係止部315を挟み込み、これにより、セレクト軸30の軸方向に直交する方向の反力がトーションばね4に作用するように構成されている。さらに、シフトレバー21が中立位置にあるとき、セレクト軸30が、凹部300に凸部310が収容される収容構造を介在して、シフトレバー21に従動しない支持部(外接部)311に当接している。この当接箇所には、上記の反力に由来する当接荷重が作用している。
以下、この内容について、詳しく説明する。
【0020】
シフトレバー装置1は、図1に示すごとく、運転者がシフトレバー21を操作可能なように、車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される装置である。本例のシフトレバー装置1は、互いに略直交するシフト方向(X軸方向)及びセレクト方向(Y軸方向)にシフトレバー21を操作可能なタイプの装置である。シフト方向は、運転者から見て前後方向の操作方向であり、セレクト方向は、左右方向の操作方向である。
【0021】
シフトレバー装置1では、図1に示すごとく、シフト方向の操作列が3列設定されており、セレクト方向にシフトレバー21を操作することでシフト方向の操作列を切り換え可能である。本例のシフトレバー装置1では、ゲート通路150が十字に交差する中央位置がホームポジション151(Hポジション)となっている。シフトレバー21は、中立位置であるHポジション151に向けて付勢されている。
【0022】
例えば、Hポジション151に位置するシフトレバー21(図2及び図3参照。)を図1中の右側(セレクト方向)に操作した後に手前(シフト方向)に引くように操作すればDポジジョンに操作できDレンジを選択できる。その後、運転者がシフトレバー21から手を離すと、Dレンジが選択された状態が維持されたまま、シフトレバー21がHポジション151に復帰する。また、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を手前に引けば−ポジションに操作できギアを一段下げることができる。さらに、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を左側に倒してNポジションに操作すればNレンジを選択できる。一方、Hポジションに復帰させることなくNポジションからさらに奥側に押し込んでRポジションに操作すればRレンジを選択できる。なお、シフトレバー21のシフトパターンは、本例には限定されず、様々なパターンを採用できる。
【0023】
このシフトレバー装置1では、図1〜図3に示すごとく、シフトレバー21が固定されたレバーブロック2、シフト方向に回動可能な状態でレバーブロック2を軸支する揺動台32等が筐体15の内部に収容されている。揺動台32は、装置の底面をなす基台31によりセレクト方向に回動可能な状態で軸支されている。
【0024】
次に、シフトレバー装置1を構成する各部品を説明する。基台31は、図1〜図5に示すごとく、装置の底部をなしている。略矩形状を呈する底面の中央部分には、高さ方向に突出する台座部312が設けられている。台座部312の上面には、磁気センサ11が実装されたセンサ基板10が固定されている。基台31の4隅には、筐体15を取り付けるためのねじ(図示略)を貫通配置するための取付孔318が穿孔されている。
【0025】
基台31の外周部には、台座部312を介して相互に対面する一対の支持部311が立設されている。支持部311は、台形状をなし、その上面を介してセレクト軸30に外接する。特に、セレクト軸30との外接箇所には、その軸方向に沿って延設された畝状の凸部310が設けられている。
【0026】
台座部312の両側、支持部311との間隙に当たる底面には、シフト方向に沿って配置された2箇所1組のばね孔316が穿孔され、その間隙に係止部315が形成されている。ばね孔316は、全て同じ仕様のシフト方向に沿う長孔であり、後述するトーションバー41が貫通配置される孔である。係止部315のシフト方向の両側面、すなわち一対のばね孔316の相互に対面する内周面は、内側に向かって傾斜する斜面によって形成されている(図5参照。)。これにより、係止部315の断面形状は、裏側に向かって末窄まりの台形状を呈している。
【0027】
センサ基板10は、図1〜図3に示すごとく、図示しないCPU、ROM、RAM等のほか、1チップの磁気センサ11を実装した基板である。CPUは、磁気センサ11の検出結果に基づいてデータ処理を実行するデータ処理部、シフトレバー21の操作を反映した電気信号を出力する信号出力部としての機能を備えている。ROMには、CPUで実行するソフトウェアプログラム等が格納されている。
【0028】
本例の磁気センサ11は、X軸、Y軸、Z軸(図1参照。)に沿う3軸方向の磁気成分の強度を計測し、マグネット230から作用する磁気の3次元的な作用方向を検出して出力するセンサである。マグネット230の磁気の3次元的な作用方向に基づけば、マグネット230の2次元的な回動位置を検知でき、これによりシフトレバー21の操作位置を検知可能である。CPUは、磁気センサ11が出力するセンサ信号を元にしてシフトレバー21が操作されたシフト位置を検知し、そのシフト位置に対応する電気信号を出力する。
【0029】
揺動台32は、図1〜図5に示すごとく、略矩形環状を呈する部材である。互いに反対側に面する2組の側面のうち、基台31の支持部311に対面する1組の側面には、外側に突出するセレクト軸30が対向配置されている。セレクト軸30の下側には、下方に向けて張り出す張出部327がそれぞれ設けられている。この張出部327には、外側に向けて突出する駆動片326が立設されている。他方の1組の側面には、シフト軸20が立設されている。シフト軸20及びセレクト軸30は、揺動台32の厚さ方向における同じ位置に立設あるいは立設固定されている。これにより、本例のシフトレバー装置1では、シフト方向の操作に応じた回動動作の中心軸121をなすシフト軸20、及びセレクト方向の操作に応じた回動動作の中心軸122をなすセレクト軸30の軸方向が同一平面内に属している。なお、本例に代えて、シフト軸20及びセレクト軸30の前記厚さ方向の位置を異ならせて、両者を段違いに設定することもできる。
【0030】
セレクト軸30は、図1及び図3〜図5に示すごとく、先端側の小径部301と、根元側の大径部302、とを組み合わせた軸である。大径部302は、トーションばね4の巻回部40を外挿する軸部分である。小径部301は、基台31の支持部311に外接する軸部分である。小径部301の外周面には、基台31側の凸部310に対応する凹部300が軸方向に沿って延設されている。凹部300は、シフトレバー21がHポジション(中立位置)151にあるときに凸部310を収容可能な周方向位置に設けられている。
【0031】
なお、本例の凸部310及び凹部300は、セレクト軸30に直交する断面形状が円弧をなすように形成され、凹部300の断面形状をなす円弧の曲率半径が、凸部310の断面形状をなす円弧の曲率半径よりも小さく設定されている。なお、図4では、理解の容易のため、セレクト軸30と支持部311とを離して図示してある。
【0032】
揺動台32の内側空間に当たるセンサ空間100を取り囲む4箇所の側壁部のうち、シフト軸20の一方が立設される側壁部は、他の3箇所の側壁部よりも肉厚に形成されている。その肉厚の側壁部の上面には、プランジャ322を進退可能な状態で保持する円筒状のピン保持部323が立設されている。プランジャ322は、ピン保持部323の内部に収容されたスプリング324の付勢力により突出方向に付勢されている。プランジャ322の突出方向の位置は、レバーブロック2に保持された節度部材325(図1及び図2を参照して後述する。)との当接により規制されている。
【0033】
トーションばね4は、図4及び図5のごとく、ばね用線材を略円筒状に巻回した巻回部40と、その両端の巻回端が外周側に延設された一対のトーションバー41と、を含む弾性部材である。なお、図4では、一対のトーションバー41が離隔する方向に弾性変形し、ばね孔316に挿入された状態における組付け時の形状を示している。また、図1及び図3では、トーションバー41の図示を省略してある。図5では、筐体15の図示を省略してある。
【0034】
組込み状態のトーションばね4は、セレクト軸30から遠ざかる側に向かって末窄まりの一対のトーションバー41により係止部315を挟み込んだ状態にある。このとき、トーションバー41には、回動方向の間隔を縮めようとする弾性力が生じている。仮に、その窄まり方向にトーションばね4全体が変位できれば、一対のトーションバー41の回動方向の間隔をより縮めることが可能である。そのため、一対のトーションバー41の回動方向の間隔を縮めようとする弾性力は、セレクト軸30から離れる方向、すなわち図5中の下方にトーションばね4全体を変位させようとする反力に変換される。
【0035】
レバーブロック2は、図1〜図3に示すごとく、先端にシフトノブ212が取り付けられるシフトレバー21の根本側の基部をなす部材である。レバーブロック2は、シフトレバー21の軸方向に沿って延設されたマグネットホルダ23と、マグネットホルダ23の付け根から直交する方向(セレクト方向に当たる方向)両方向に向けて延設された水平保持部24と、マグネットホルダ23を介して対面するように水平保持部24の両端から折れ曲がるように延設された一対のアーム部22と、を備えている。マグネットホルダ23の先端には、磁極方向がシフトレバー21の軸方向に略一致するようにマグネット230が保持されている。また、一方のアーム部22とマグネットホルダ23との間隙に当たる水平保持部24の下面には、前記プランジャ322の突出位置を規制する節度部材325が取り付けられている。
【0036】
プランジャ322が押し当たる節度部材325側の当接面325Sは、凹状に湾曲しており、シフト方向に沿う断面形状が円弧をなしている。そして、その凹状に湾曲する当接面325Sの深さは、Hポジション151に対応する位置が最も深くなっている。例えば、Hポジション151を含む中央の操作列であれば、Hポジション151のときにプランジャ322が最も突出し、+ポジション、−ポジションに操作されたときにピン保持部323側に最も押し込まれる。
【0037】
スプリング324に付勢されたプランジャ322が押し当たる当接面325Sは、Hポジション151に対応する位置に向かう斜面となっている。そのため、この当接面325Sでは、スプリング324の付勢力がレバーブロック2を回動させる回転方向の力に変換され、これにより、シフト方向においてシフトレバー21がHポジション151に向けて付勢される。
【0038】
節度部材325の当接面325Sには、さらに、シフト方向の操作に節度感(クリック感)を与えるための小さな窪み325D(図2参照。)が設けられている。この窪み325Dは、プランジャ322の先端のごく一部が収容される小さな円形状の窪みである。窪み325Dは、Hポジション151に対応する位置に設けられ、Hポジション151に位置するシフトレバー21に節度感を与えている。
【0039】
筐体15は、図1〜図3に示すごとく、天板155を有する一方、他端の開放端に基台31が取り付けられ、全体として箱状を呈する部材である。天板155には、シフトパターンに対応するゲート通路150が設けられている。各シフト位置には、シフトレンジを表すD、Rなどの記号が印刷されている。この筐体15の開放端の4隅には、基台31の取付孔318に貫通配置されたねじ(図示略)を螺入するねじ孔(図示略)が穿孔されている。ゲート通路150は、シフトレバー21の軸部分の外周面との当接によりシフトパターンを剛性高く規制可能なように形成されている。
【0040】
シフト方向に対面する両側の側壁部には、セレクト軸30を貫通配置するための軸孔と、基部31に設けられた支持部311の収容孔と、が一体化された切欠き154(図1参照。)が設けられている。基台31の支持部311が切欠き154に組み合わされたときの隙間に、セレクト軸30が貫通配置される。軸孔部分は、水平方向の幅がセレクト軸30の軸径と略一致している一方、高さがセレクト軸30の軸径よりも大きく設定されている。これにより、セレクト軸30が貫通配置されたとき、セレクト軸30の外周面と軸孔の内周面との間に上下方向(凸部310の突出方向)の隙間が形成される。
【0041】
以上のような構成の本例のシフトレバー装置1では、セレクト軸30の大径部302にトーションばね4の巻回部40が外挿されている。トーションばね4の一対のトーションバー41は、回動方向に他方から離隔するように弾性変形され、それぞれ、係止部315の両側のばね孔316に貫通配置されている。一対のトーションバー41は、シフト方向に隣り合う2箇所のばね孔316の間隙の係止部315を両側から付勢する状態で係止される。
【0042】
シフトレバー21がHポジション151に位置するとき、一対のトーションバー41が係止部315を弾性的に挟み込む状態にある。このとき、一対のトーションバー41の間隙には、揺動台32の駆動片326が配置される。シフトレバー21をセレクト方向に操作すると、その操作に応じて駆動片326が回動して一方のトーションバー41がセレクト方向に押し出される。このとき、ばね孔316がセレクト方向に長く形成されているため、セレクト方向のトーションバー41の変位が可能である。トーションバー41には、元の回動位置に戻ろうとする弾性復帰力が生じる。シフトレバー21は、この弾性復帰力によりHポジション151に向けて付勢される。
【0043】
一方、係止部315の両側面は、上記のごとく内側に向かう傾斜面によって形成され、係止部315の断面形状は、トーションバー41の先端側に向かって末窄まりのくさび状を呈している。Hポジション151のとき、一対のトーションバー41は、セレクト軸30から遠ざかる方向(図5中の下方)に向かって末窄まりの箇所で係止部315を挟み込んでいる。この一対のトーションバー41には、回動方向の間隔を縮めようとする弾性力が生じており、この弾性力に起因してトーションばね4には、図5中の下方に変位させようとする反力が作用する。この反力は、巻回部40を介してセレクト軸30に作用し、軸方向に直交する下方向にセレクト軸30を付勢する。
【0044】
本例のシフトレバー装置1では、シフトレバー21がHポジション151のとき、セレクト軸30側の凹部300に対して基台31側の凸部310が収容される構造が実現されている。さらに、この収容構造を介して当接するセレクト軸30と支持部311との当接箇所には、上記の反力に由来する当接荷重が作用している。この当接荷重は、凹部300に対して凸部310を押し込むように作用している。凹部300に凸部310が押し込まれる状態では、中立位置であるHポジション151にシフトレバー21が軽く固定される。セレクト方向にシフトレバー21を操作する際には、上記の当接荷重に打ち勝って凹部300から凸部310を離脱させる必要があり、ある程度の操作力を必要とする。本例のシフトレバー装置1では、このある程度の操作力によってHポジション151のシフトレバー21に節度感が付与されている。
【0045】
なお、本例では、筐体15の切欠き154と基台31の支持部311とにより形成される軸孔部分に、上下方向の隙間が形成されている。この隙間によれば、支持部311側の凸部310がセレクト軸30の凹部300に収容された状態から、凸部310がセレクト軸30の凹部300以外の外周面に当接する状態に移行した際のセレクト軸30の軸芯位置の変動を吸収可能である。
【0046】
以上のように、本例のシフトレバー装置1では、Hポジション151に向けてシフトレバー21が付勢されている。特に、セレクト方向では、セレクト軸30に外挿配置されたトーションばね4によってシフトレバー21が付勢されている。シフトレバー21のセレクト方向の操作量が大きくなるにつれてトーションバー41の弾性変形量が大きくなり、Hポジション151に向かうシフトレバー21の付勢力が大きくなる。一方、Hポジション151の周辺では、この付勢力が小さくなるため、セレクト方向の節度感が不足してしまい良好な操作フィーリングが阻害されるおそれもある。
【0047】
これに対して、本例のシフトレバー装置1では、係止部315を挟み込むトーションばね4にセレクト軸30に直交する上記の反力が生じるように工夫し、この反力を活用することでHポジション151周辺における良好な操作フィーリングを実現している。このシフトレバー装置1では、Hポジション151のときのセレクト軸30と支持部311との当接箇所に、凹部300と凸部310との収容構造が設けられている。そして、この収容構造を介在してセレクト軸30と支持部311とが当接する箇所に、上記の反力に由来する当接荷重を作用させている。これにより、Hポジション151に位置するシフトレバー21に適度な節度感を与え、良好な操作フィーリングを実現している。
【0048】
以上のように、本例のシフトレバー装置1は、シフトレバー21の中立位置が設けられたシフトレバー装置であって、中立位置であるHポジション151への付勢構造がシンプルであって、かつ、良好な操作フィーリングが実現された優れた特性の装置である。
【0049】
なお、本例では、トーションばね4を利用した付勢手段をセレクト方向に適用しているが、同様の付勢手段をシフト方向にも、あるいはシフト方向のみに適用することも良い。 また、係止部315の断面形状については、本例の末窄まり形状には限定されない。係止部315を挟み込む一対のトーションバー41が末窄まり形状であれば良く、係止部315の断面形状、特に、セレクト方向の両側面の傾斜角度については適宜設定できる。
また、本例のごとく、断面形状が末窄まりの係止部315であれば、図6のようなトーションバー41であっても、本例と同様の反力を生じさせ、同様の作用効果を実現できる。なお、同図では、筐体15の図示を省略してある。
【0050】
なお、本例では、支持部311に凸部310を設けると共に、支持部311に面するセレクト軸30の外周面に凹部300を設けている。これに代えて、図7のごとく、筐体15の切欠き154の最も奥に位置する内周面に凸部158を設けると共に、セレクト軸30の外周面の対応する位置に凹部309を設けることも良い。この場合には、一対のトーションバー41の末拡がりの箇所で係止部315が挟み込まれるように構成するのが良い。このように係止部315が挟み込まれたときには、一対のトーションバー41が回動方向の間隔を縮めようとして同図中の上方に向かってトーションばね4全体を変位させようとする反力が生じる。そして、図7の構成では、この上方の反力に由来する当接荷重が、凸部158と凹部309との収容構造を介在して当接するセレクト軸30と筐体15の内周面(外接部)との間に作用する。
【0051】
(実施例2)
本例は、トーションばね4の巻回部40に内挿する軸スリーブ45を採用した例である。この内容について、図8及び図9を参照して説明する。
本例の軸スリーブ45は、図8のごとく、略円筒状を呈する筒部451と、軸スリーブ45の周方向位置を規制するための回転止め455と、を有している。
【0052】
筒部451の内周面のうち、回転止め455とは反対側に当たる部分には、軸方向に沿う凸部452が形成されている。回転止め455は、筒部451の外周面に沿って軸方向に延設された断面円弧状の突出片である。回転止め455は、巻回部40に筒部451が内挿されたとき、一対のトーションバー41の回動方向の間隙に隙間無く収容される。この回転止め455によれば、軸スリーブ45の回転方向の位置を規制でき、凸部452の周方向位置を精度高く位置決めできる。
【0053】
本例のセレクト軸30では、大径部302の外周面に凹部308が設けられている。凹部308は、大径部302の外周面のうち、駆動片326の反対側に当たる部分に位置している。一方、小径部301は、その断面が完全に近い円形状をなしている。この小径部301は、図8では図示されない基台と筐体との合わせ目に形成された完全に近い円形状の軸孔(図示略)により回転支持される。
【0054】
本例のシフトレバー装置では、実施例1と同様、トーションばね4に作用する反力に由来する当接荷重が、軸スリーブ45の凸部452とセレクト軸30の凹部308との収容構造に作用する。これにより、実施例1と同様、中立位置であるHポジション151に好ましい節度感が与えられている。
【0055】
本例に代えて、軸スリーブ45を省略する一方、図9のごとく、3巻きの巻回部40の真ん中を内周側に屈曲させて凸部408を形成することも良い。この場合には、トーションばね4に形成された凸部408と、セレクト軸30の凹部308と、の組み合わせにより節度感を生成できる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0056】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0057】
1 シフトレバー装置
11 磁気センサ
121、122 中心軸
15 筐体
150 ゲート通路
151 Hポジション
155 天板
2 レバーブロック
20 シフト軸
21 シフトレバー
230 マグネット
30 セレクト軸(回動軸)
300 凹部
301 小径部
302 大径部
31 基台
310 凸部
311 支持部(外接部)
315 係止部
32 揺動台
325 節度部材
326 駆動片(駆動部)
4 トーションばね(弾性部材)
40 巻回部
41 トーションバー(延設部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーを回動可能に支持する軸支構造を含む車両用のシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの回動動作の中心をなす回動軸と、
前記シフトレバーの回動動作に従動することなく前記回動軸に外接する外接部と、
バネ用線材をコイル状に巻回した略円筒状の巻回部、及び前記バネ用線材の両端が外周側に延設された一対の延設部を含み、前記回動軸に対して前記巻回部を外挿して取り付けられる弾性部材と、
前記シフトレバーが中立位置にあるとき、前記巻回部の軸芯を中心として回動方向に互いに離隔するように弾性変形した状態の前記一対の延設部により挟み込まれる係止部と、
前記一対の延設部の間隙に配置されると共に、前記シフトレバーの回動動作に従動して前記回動軸の回りを回動し、前記中立位置に対して回動側に位置する延設部を従動させて他方から離れる方向に回動させる駆動部と、を含み、
前記シフトレバーが前記中立位置にあるとき、前記一対の延設部が前記係止部を挟み込み、これにより、前記回動軸の軸方向に直交する方向の反力が前記弾性部材に作用するように構成され、かつ、
前記シフトレバーが前記中立位置にあるとき、前記回動軸と前記外接部とが凸部と凹部との収容構造を介在して当接すると共に、当該当接箇所には前記反力に由来する当接荷重が作用しているシフトレバー装置。
【請求項2】
請求項1において、前記凸部及び前記凹部は、前記回動軸に直交する断面形状が円弧をなすように形成されており、前記凹部の断面形状をなす円弧の曲率半径が、前記凸部の断面形状をなす円弧の曲率半径よりも小さいシフトレバー装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記一対の延設部は、前記セレクト軸から遠ざかるにつれて前記セレクト方向の幅が次第に広く、あるいは次第に狭くなっている箇所で前記係止部を挟み込み、これにより上記の反力が生じるように構成されているシフトレバー装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、車体側に取り付けるための取付部が設けられる筐体と、
前記シフトレバーの基部をなし、シフト方向の操作に応じて前記シフトレバーと一体的に回動するレバーブロックと、
前記シフト方向の操作に応じて前記レバーブロックが回動可能なように該レバーブロックを軸支すると共に、シフト方向とは直交するセレクト方向の操作に応じて回動可能な状態で前記筐体側に軸支される揺動台と、を有し、
前記シフト方向及び前記セレクト方向のうちの少なくとも何れか一方に前記中立位置が設けられているシフトレバー装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項において、前記凸部は、前記巻回部をなすバネ用線材が内周側に屈曲されて形成され、前記凹部は、前記回動軸の外周面に形成されているシフトレバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−107508(P2013−107508A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254213(P2011−254213)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】