説明

シフト切替装置

【課題】簡単な構造で、正確なシフトポジションを得るとともに、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができるシフト切替装置を提供すること。
【解決手段】電動機12と、シフト切替機構14と、動力伝達機構13とを備え、シフト切替機構14が、シフトポジションに対応した凹部および凸部とを有し回動するディテント回動プレート51と、凹部と係合しディテント回動プレート51の回動位置を決めるディテントスプリング52とを有し、動力伝達機構13が、電動機12の動力を受ける大径側ギヤ47と、大径側ギヤ47から動力を受けディテント回動プレート51に動力を伝達するアジャストレバー48とを有し、ディテント回動プレート51に所定の位置で動力が伝達されないよう、大径側ギヤ47とアジャストレバー48との間に第1の遊び部分が形成されるとともに、大径側ギヤ47に第2の遊び部分が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者のシフト操作に応じて駆動される電動機を備えたシフト切替装置、特に自動車などの車両に搭載される変速機のシフト切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシフト切替装置として、電動機と、電動機の出力軸に設けられたウォームと、ウォームと噛み合うウォームホイールと、ウォームホイールと同軸線上に配置されたコントロール軸と、コントロール軸に固定されたディテントレバーと、ディテントレバーの回動位置を決めるディテント機構と、ディテントレバーに連結されディテントレバーの回動位置に応じてレンジポジションが切り替わるレンジ切替弁とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のシフト切替装置においては、コントロール軸がウォームホイールと結合する結合部を備えており、この結合部はウォームホイールの回転軸心となるボス部にコントロール軸の端部が相対回転可能に係合した構造になっている。この結合部においては、ボス部とコントロール軸との間に所定の遊び量を有する遊び部分が設けられており、この遊び量の範囲内で両者が相対回転できるようになっている。
【0004】
そして、この遊び量は、いわゆるディテントレバーの自走を許容できる寸法に設定されている。すなわち、この遊び量の範囲内においては、ディテント機構におけるディテントスプリングのローラが、ディテントレバーにシフトポジションに対応する位置に形成された凹部および凸部のうちの一つの凸部の頂部から隣の凹部の谷部へ、ディテントスプリングの押圧力のみで係合するというディテントレバーの自走が許容される。
この遊び量の範囲内では、電動機の動力がウォームホイールおよびコントロール軸を介してディテントレバーに伝達されないようになっている。
【0005】
このように、結合部に遊び部分を設けることにより、電動機の動力によりディテントレバーが目標の回転位置で正確に停止しなくても、ディテントレバーのレンジポジションをディテント機構の自走機能により正確に決定することができる。その結果、電動機の回転制御を簡易化することができ、電動機の種類の選択の自由度が高まることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−118436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来のシフト切替装置においては、電動機への通電が停止しても、なお電動機の慣性により、電動機が回転し動力がディテントレバーに伝達されてしまう。このように通電停止後の電動機の動力が、前述のディテントレバーの自走の開始とともに、ディテントレバーに作用すると、ディテントレバーの凹部がディテント機構におけるディテントスプリングのローラに係合する際、凹部がローラに勢いよく接触することになる。すなわち、電動機の動力の伝達が先行してしまい、ディテントレバーの自走に加えて、電動機の動力によりディテントレバーが回動してしまうので、凹部とローラとが勢いよく接触し、凹部およびローラに過大な負荷がかかってしまう可能性があった。
【0008】
この接触により凹部とローラに過大な負荷が発生するとともに、電動機がロックしてしまい、過大なトルクが凹部とローラとの間に生じ、周辺の構成要素、例えば、電動機、減速ギヤ、ウォームホイールが、衝撃や過大なトルクにより損傷してしまうおそれがあり、耐久性が低下してしまうおそれがあるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、簡単な構造で、正確なシフトポジションを得ることができるとともに、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができるシフト切替装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシフト切替装置は、上記課題を解決するため、(1)シフト操作に応じて動力を出力する電動機と、パーキングポジションと前記パーキングポジション以外の非パーキングポジションとからなるシフトポジションを切り替えるシフト切替機構と、前記電動機の動力を、前記シフト切替機構に伝達する動力伝達機構と、を備えたシフト切替装置において、前記シフト切替機構が、前記シフトポジションに対応した凹部および前記凹部間に形成された凸部とを有し回動するディテント回動プレートと、前記凹部と係合し前記ディテント回動プレートの回動位置を決めるディテントスプリングとを有し、前記動力伝達機構が、前記電動機の動力を受ける第1の動力伝達部材と、前記第1の動力伝達部材から動力を受け、前記ディテント回動プレートに動力を伝達する第2の動力伝達部材とを有し、前記ディテントスプリングが前記ディテント回動プレートの前記凸部へ係合する所定の回動位置にあるとき、前記第1の動力伝達部材と前記第2の動力伝達部材との間に、前記第2の動力伝達部材に前記第1の動力伝達部材の動力が伝達されない第1の遊び部分が形成されるとともに、前記第1の動力伝達部材に前記電動機の動力が伝達されない第2の遊び部分が形成されたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、シフト切替装置が非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わる途中で、電動機の通電が停止した後に、その慣性により電動機の回転が持続して動力が出力されても、その動力は、第1の動力伝達部材に設けられた第2の遊び部分により、第1の動力伝達部材に伝達されないので、ディテントスプリングとディテント回動プレートの凹部との当接で生ずる過大な駆動力による衝撃作用が回避される。すなわち、第1の動力伝達部材に設けられた第2の遊び部分により、第1の動力伝達部材に動力が伝達されない間は、電動機の動力がディテント回動プレートに伝達される。そして、ディテント回動プレートは、ディテントスプリングの押圧力のみで回動するので、ディテントスプリングが凹部に係合する際に、ディテント回動プレートに衝撃が加わることがなく速やかに係合する。
【0012】
また、パーキングポジションから非パーキングポジションに切り替わる場合においても、電動機の通電が停止した後に動力が出力されても、その動力は、第1の動力伝達部材に設けられた他の第2の遊び部分により、第1の動力伝達部材に伝達されないので、ディテントスプリングとディテント回動プレートの凹部との当接で生ずる過大な駆動力による衝撃作用が回避される。すなわち、第1の動力伝達部材に設けられた他の第2の遊び部分により、第1の動力伝達部材に伝達されない間は、電動機の動力がディテント回動プレートに伝達される。そして、ディテント回動プレートは、ディテントスプリングの押圧力のみで回動するので、ディテントスプリングが凹部に係合する際に、ディテント回動プレートに衝撃が加わることがなく速やかに係合する。
【0013】
すなわち、いずれのシフト切替動作においても、切替完了時に本発明に係るシフト切替装置に衝撃が生ずることがなく、速やかにシフトを切り替えることができる。したがって、本発明に係るシフト切替装置においては、第1の動力伝達部材に第2の遊び部分を形成するだけの、簡単な構造で、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、第1の動力伝達部材と第2の動力伝達部材との間に動力が伝達されない第1の遊び部分が形成されているので、この第1の遊び部分の範囲で、ディテント回動プレートがディテントスプリングの押圧力のみで回動することができ、パーキングポジションおよび非パーキングポジションの正確な回動位置が得られ、正確なシフトポジションを得ることができる。すなわち、ディテントスプリングの押圧力により、ディテントスプリングがパーキングポジションとなる凹部に正確に係合することができる。また、ディテントスプリングの押圧力により、ディテントスプリングが非パーキングポジションとなる凹部に正確に係合することができる。
【0015】
上記(1)に記載のシフト切替装置において、(2)前記動力伝達機構が、前記電動機の出力軸に連結された駆動歯車を有するとともに、前記第1の動力伝達部材が、前記駆動歯車に噛み合って駆動される従動歯車を有し、前記第2の遊び部分が、前記従動歯車の所定の歯が欠除された欠歯部によって構成されることを特徴とする。
【0016】
この構成により、動力伝達機構が、電動機の出力軸に連結された駆動歯車を有するとともに、第1の動力伝達部材が、駆動歯車に噛み合って駆動される従動歯車を有しているので、電動機の動力が確実に第1の動力伝達部材に伝達される。また、第2の遊び部分が、従動歯車の所定の歯が欠除された欠歯部によって構成されているので、簡単な構造により、電動機から出力される動力は、第2の遊び部分の範囲で、その伝達が確実に回避され、ディテント回動プレートは、電動機の動力伝達に先行してディテントスプリングの押圧力のみで回動することができる。その結果、ディテントスプリングが凹部に係合する際に、衝撃が加わることがなく速やかに係合する。したがって、本発明に係るシフト切替装置においては、第1の動力伝達部材に第2の遊び部分として欠歯部を形成するだけの、簡単な構造で、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができる。
【0017】
上記(1)に記載のシフト切替装置において、(3)前記動力伝達機構が、前記電動機の出力軸に連結された駆動輪を有するとともに、前記第1の動力伝達部材が、前記駆動輪に摩擦接触する従動輪を有し、前記第2の遊び部分が、前記従動輪の所定の外周位置で、前記外周の半径よりも小さい半径を有する小径部によって構成されることを特徴とする。
【0018】
この構成により、動力伝達機構が、電動機の出力軸に連結された駆動輪を有するとともに、第1の動力伝達部材が、駆動輪に噛み合って駆動される従動輪を有しているので、電動機の動力が摩擦接触により第1の動力伝達部材に伝達される。また、第2の遊び部分が、従動輪の外周位置で、外周の半径よりも小さい半径を有する小径部によって構成されているので、簡単な構造により、電動機から出力される動力は、第2の遊び部分の範囲で、その伝達が確実に回避され、ディテント回動プレートは、電動機の動力伝達に先行してディテントスプリングの押圧力のみで回動することができる。その結果、ディテントスプリングが凹部に係合する際に、衝撃が加わることがなく速やかに係合する。したがって、本発明に係るシフト切替装置においては、第1の動力伝達部材に第2の遊び部分として欠歯部を形成するだけの、簡単な構造で、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、この第1の動力伝達部材は、小径部を有しているので、動力伝達機構を組み付ける際は、第1の動力伝達部材の従動輪および駆動輪に余分な負荷を掛けずに容易に組み付けることができる。すなわち、従動輪とディテント回動プレートなどの他の構成要素との所定の位置関係を保った状態で、駆動輪が小径部に接触する位置で、従動輪を組み込むと、従動輪および駆動輪を変形せずに組み込むことができ、適度の接触圧を保って組み付けることができる。このように組み付けることにより、最適な摩擦力で駆動輪から従動輪に動力が伝達される。
【0020】
また、上記(1)ないし(3)に記載のシフト切替装置において、(4)前記第1の動力伝達部材が、前記第2の動力伝達部材と係合する係合孔を有し回動軸の周りを回動するよう前記回動軸に連結され、前記第2の動力伝達部材が、前記係合孔に挿入される係合突起を有し前記回動軸と一緒に回動するよう前記回動軸に連結されるとともに、前記ディテント回動プレートと一緒に回動するよう前記ディテント回動プレートに連結され、前記係合孔を囲む前記第1の動力伝達部材の内壁と前記係合突起とが係合することにより、第1の動力伝達部材から前記第2の動力伝達部材に動力が伝達され、前記第1の遊び部分が、前記係合突起と前記内壁との間に画成された隙間によって構成されることを特徴とする。
【0021】
この構成により、第1の遊び部分が、第2の動力伝達部材に形成された係合突起と第1の動力伝達部材に形成された係合孔を囲む内壁との間に画成された隙間によって形成されているので、第1の遊び部分で、第1の動力伝達部材から第2の動力伝達部材への動力の伝達がより確実に回避される。したがって、この第1の遊び部分の範囲で、ディテント回動プレートがディテントスプリングの押圧力のみで回動することができ、パーキングポジションおよび非パーキングポジションの正確な回動位置が得られ、正確なシフトポジションを得ることができる。すなわち、ディテントスプリングの押圧力により、ディテントスプリングがパーキングポジションとなる凹部に正確に係合することができる。また、ディテントスプリングの押圧力により、ディテントスプリングが非パーキングポジションとなる凹部に正確に係合することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡単な構造で、正確なシフトポジションを得ることができるとともに、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができるシフト切替装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置が搭載されたトランスアクスルおよびエンジンを示す車両の前方部の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置のカバーを取り外した状態の平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の小径側ギヤの平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の大径側ギヤの平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置のアジャストレバーの平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置のディテント回動プレートの平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置のディテント回動プレートの一部を拡大した拡大平面図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の動作の状態を示す動作チャートである。
【図12】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置の非パーキングロック状態を示し、(b)は、非パーキングロック状態の解除が開始された状態を示す。
【図13】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置のアジャストレバーがリミットスイッチSW1から離隔した状態を示し、(b)は、ディテントスプリングのローラ部がディテント回動プレートの頂部の手前にある状態を示す。
【図14】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置のディテントスプリングのローラ部がディテント回動プレートの頂部の直後にある状態を示し、(b)は、ディテントスプリングのローラ部が自走を開始した状態を示す。
【図15】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置のディテントスプリングのローラ部が自走の途中にある状態を示し、(b)は、小径側ギヤの動力伝達がカットされた状態を示す。
【図16】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置がパーキングロックにある状態を示し、(b)は、パーキングロックの解除が開始された状態を示す。
【図17】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置のアジャストレバーがリミットスイッチSW2から離隔した状態を示し、(b)は、ディテントスプリングのローラ部がディテント回動プレートの頂部の手前にある状態を示す。
【図18】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置のディテントスプリングのローラ部がディテント回動プレートの頂部の直後にある状態を示し、(b)は、ディテントスプリングのローラ部が自走途中にある状態を示す。
【図19】本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図であり、(a)は、シフト切替装置のディテントスプリングのローラ部が自走の途中にあり小径側ギヤの動力伝達がカットされた状態を示し、(b)は、シフト切替装置のパーキングロック状態を示す。
【図20】本発明の第2実施形態に係るシフト切替装置の分解斜視図である。
【図21】本発明の第2実施形態に係るシフト切替装置のカバーを取り外した状態の平面図である。
【図22】本発明の第2実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す側面図である。
【図23】本発明の第2実施形態に係るシフト切替装置の一部を示す平面図である。
【図24】本発明の第2実施形態に係るシフト切替装置の小径側ギヤの平面図である。
【図25】本発明の第2実施形態に係るシフト切替装置の大径側ギヤの平面図である。
【図26】本発明の第3実施形態に係るシフト切替装置が適用される自動変速機の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るシフト切替装置の第1実施形態ないし第3実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1ないし図19(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係るシフト切替装置10を示す図である。
シフト切替装置10は、図1に示すように、車両1のエンジン2に連結されたトランスアクスル3に設けられており、車両1の運転者のシフト操作に応じて、車両1の出力軸の回転をロックおよびアンロックするパーキングロック機構20に連結されている。
【0026】
このシフト切替装置10は、運転者のシフト操作入力をセンサやスイッチによって検出し、その検出信号に応じたシフトポジションを選択するという、いわゆるシフトバイワイヤ方式のシフト制御システムを構成しており、パーキングポジションとパーキングポジション以外の非パーキングポジションとからなるシフトポジションを切り替えるようになっている。
【0027】
このシフト切替装置10においては、車両1の運転席に設けられたパーキングスイッチ4が操作されてONになると、パーキングポジションに切り替えられ、車両1のパーキングロック機構20により出力軸がロックされ、車両1の停止状態が維持されるよう構成されている。また、パーキングスイッチ4の解除操作がなされると、非パーキングポジションに切り替えられ、車両1のパーキングロック機構20により出力軸がアンロックされ、車両1が走行可能な状態になるよう構成されている。
【0028】
本発明に係るシフト切替装置においては、運転者のシフト操作入力がパーキングスイッチを操作する構造以外の構造によりシフト操作がなされるようにしてもよい。例えば、車両1の運転席に設けられたシフトレバーを運転者がスライドさせてパーキングレンジにすると、選択されたパーキングレンジに基づいて、パーキングロック機構により出力軸がロック状態となる構造でシフト操作がなされるようにしてもよい。
【0029】
第1実施形態に係るシフト切替装置10の構成について説明する。
シフト切替装置10は、図2および図3に示すように、ケース11と、電動機12と、動力伝達機構13と、シフト切替機構14と、リミットスイッチSW1、SW2と、図示しない電動機12を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)と、電動機12をケース11に固定する固定ねじ15とを含んで構成されている。
【0030】
なお、電子制御ユニットは、CPU(Central Processing Unit)と、処理プログラムなどを記憶するROMと、一時的にデータを記憶するRAMと、電気的に書換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROMと、A/D変換器やバッファなどを含む入力ポート、出力ポートとを含んで構成されている。
【0031】
ケース11は、ケース本体21と、動力伝達機構13を支持する支持プレート22と、基板23と、カバー24と、ケース本体21に支持プレート22を固定する固定ねじ25と、支持プレート22に基板23を固定する固定ねじ26とを含んで構成されている。
【0032】
ケース本体21は、一端が開口された箱形に形成され、電動機12および動力伝達機構13を支持する支持壁31と、支持壁31の縁から垂直に突出した側壁32、33、34、35、36と、側壁32に設けられ貫通孔37aを有する取付部37Aと、側壁34に設けられ貫通孔37bを有する取付部37Bと、側壁35と側壁36の角部に設けられ貫通孔37cを有する取付部37Cと、側壁33と側壁34との間に設けられた接続部39とを含んで構成されている。
【0033】
この貫通孔37a、38aに図示しない取付ボルトが挿入され、ケース本体21が車両1のトランスアクスル3に取付られるようになっている。
また、ケース本体21は、側壁32と側壁33との結合部に設けられたスタッド21aと、側壁33と側壁34との結合部に設けられたスタッド21bと、側壁34と側壁35との結合部に設けられたスタッド21cと、側壁36と側壁32との結合部に設けられたスタッド21dとを有している。
【0034】
支持壁31は、支持部31a、31b、31cと、取付ボス31d、31e、31fと、スイッチ取付部31g、31hとを有している。
支持部31aには、電動機12が固定ねじ15により固定され、支持壁31に支持されるようになっている。
【0035】
また、支持部31b、31cには、動力伝達機構13が支持されるようになっている。取付ボス31d、31e、31fには、それぞれ固定ねじ25がねじ結合されるようになっており、この固定ねじ25により、取付ボス31d、31e、31fに支持プレート22が固定されるようになっている。
【0036】
接続部39は、図示しない接続端子などを備えたコネクタを収容するよう構成されており、電動機12、リミットスイッチSW1、SW2などのリード線がコネクタを介して接続されるようになっている。
【0037】
支持プレート22は、支持部22aを有しており、ケース本体21に固定され、支持部22aで動力伝達機構13の一端を支持するようになっている。
【0038】
基板23は、導体の配線パターンが形成されたプリント配線板からなり、支持プレート22とカバー24との間に装着され、図示しない電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)が実装されるとともに、電動機12、リミットスイッチSW1、SW2などの電子部品の接続回路として機能するようになっている。
本発明に係るシフト切替装置においては、基板23の代わりにリード線などの配線部材によって、電動機12、リミットスイッチSW1、SW2などの電子部品の接続回路を構成するようにしてもよい。
【0039】
カバー24は、一端が開口された箱形に形成され、各コーナーに取付部24aが設けられ、この取付部24aに、ケース本体21のスタッド21a、21b、21c、21dがそれぞれ挿入され、カバー24がケース本体21に固定されるようになっている。
【0040】
電動機12は、DCブラシ付きモータ、SRモータ(Switched Reluctance Motor)などのモータで構成されており、通電を受けることにより、出力軸12aから動力を出力するようになっている。
電動機12は、他の構造を有するもので構成するようにしてもよい。例えば、内部に偏心板、外歯ギヤ、内歯ギヤを有するサイクロイド減速機などの減速機構を備えたものであってもよい。
【0041】
動力伝達機構13は、小径側ヘリカルギヤ41と、大径側ヘリカルギヤ42と、回転軸43と、ベアリング44、45と、回動軸46と、第1の動力伝達部材としての大径側ギヤ47と、第2の動力伝達部材としてのアジャストレバー48と、装着リング49とを含んで構成されている。
【0042】
小径側ヘリカルギヤ41は、電動機12の出力軸12aに固定されており、出力軸12aから出力される動力を大径側ヘリカルギヤ42に伝達するようになっている。
【0043】
大径側ヘリカルギヤ42は、ギヤ42aおよびギヤ42aと一体的に形成された駆動歯車としての小径側ギヤ42bとを有しており、小径側ヘリカルギヤ41と噛み合って小径側ヘリカルギヤ41から伝達される動力を大きく減速し、小径側ギヤ42bを介して大径側ギヤ47に伝達するようになっている。
【0044】
小径側ギヤ42bは、図4ないし図6に示すように、n1ないしn13の13個の歯数を有する平歯車で構成され、大径側ギヤ47と噛み合っている。
【0045】
回転軸43は、大径側ヘリカルギヤ42に挿入され大径側ヘリカルギヤ42とともに回転するよう構成され、ケース本体21の支持部31bに装着されたベアリング44と、支持プレート22の支持部22aに装着されたベアリング45とにより回転自在に支持されている。
【0046】
回動軸46は、シフト切替機構14と連結される連結部46aと、大径側ギヤ47を回動自在に支持する支持部46bと、連結部46aと支持部46bとの間でアジャストレバー48とスプライン結合する結合部46cと、結合部46cと連結部46aとの間で、ケース本体21の支持部31cに支持されて回動する回動部46dとを有している。
【0047】
大径側ギヤ47は、図5および図7に示すように、回動軸46の支持部46bが挿入される貫通孔47aが形成され、支持部46bの周りを回動する回動部と、支持部47bと、扇状に形成され従動歯車としての平歯部47cと、平歯部47cに貫通して形成された係合孔47dとを有している。
【0048】
平歯部47cは、円弧状の外周部に形成された歯a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、m、n、o、p、q、r、sの19個の平歯のうち、e歯がカットされた欠歯部47eと、o歯がカットされた欠歯部47oとを有している。この平歯部47cと小径側ギヤ42bとが噛み合うようになっている。
【0049】
大径側ギヤ47の欠歯部47eおよび欠歯部47oは、本発明に係るシフト切替装置における第2の遊び部分を構成している。
【0050】
アジャストレバー48は、図4および図8に示すように、回動軸46の結合部46cとスプライン結合するようスプライン結合孔48aが形成された結合部48bと、大径側ギヤ47の係合孔47dに挿入される係合突起48cと、結合部46cおよびその反対側の端部の各中央を結ぶ線に直交する方向に突出して形成された一対の突出部48d、48eを有している。
【0051】
アジャストレバー48の係合突起48cが大径側ギヤ47の係合孔47dに挿入された際、係合突起48cと係合孔47dを囲む大径側ギヤ47の内壁47nとの間に、隙間S、Sが形成されるようになっており、この隙間S、Sが本発明に係るシフト切替装置における第1の遊び部分を構成している。
【0052】
アジャストレバー48が回動軸46とともに回動した際、この突出部48d、48eがそれぞれリミットスイッチSW1、SW2と係合するようになっている。また、アジャストレバー48が回動軸46とともに回動した際、係合突起48cと大径側ギヤ47の係合孔47dを囲む内壁47nとが係合し、係合した後は、アジャストレバー48と大径側ギヤ47とが一緒に回動するようになっている。
【0053】
このアジャストレバー48は、本発明に係るシフト切替装置における第2の動力伝達部材を構成している。
【0054】
装着リング49は、図2および図3に示すように、回動軸46の支持部46bに装着され、大径側ギヤ47が回動軸46から抜け出るのを規制している。
【0055】
シフト切替機構14は、ディテント回動プレート51と、ディテントスプリング52と、スプリングリテーナ53と、ディテントスプリング52およびスプリングリテーナ53をトランスアクスル3に取り付ける取付ボルト54とを含んで構成されている。
【0056】
ディテント回動プレート51は、図4、図5、図9および図10に示すように、回動軸46の連結部46aと連結する連結部51aと、ディテントスプリング52と係合する係合部51bと、パーキングロック機構20と連結される連結部51cとを有している。
【0057】
連結部51aは、回動軸46の連結部46aに形成された突起が挿入される切欠51dを有する連結孔51eが形成されており、回動軸46の連結部46aが挿入され、回動軸46と相対回転不能に連結するようになっている。
係合部51bは、ディテントスプリング52と係合した際、非パーキングポジションとなる凹部51fと、パーキングポジションとなる凹部51gと、凹部51fと凹部51gとの間に形成された凸部51hを有している。
【0058】
凹部51fは、半径rの半円状の凹みを有しており、凹部51gも凹部51fと同様、半径rの半円状の凹みを有している。
凸部51hは、その頂部51tの曲率半径がrで形成されており、頂部51tと凹部51fとを結ぶ凸状のカーブCfと、頂部51tと凹部51gとを結ぶ凸状のカーブCgとを有している。
【0059】
連結部51cは、連結部51aに対して屈曲して一体的に形成されており、切欠を有する貫通孔51kを有している。
【0060】
ディテントスプリング52は、図2ないし図4に示すように、本体52aと、取付部52bと、ローラ部52cとを有しており、ローラ部52cがディテント回動プレート51の凹部51f、51gに係合した際、所定の接触押圧力(N)でローラ部52cと凹部51f、51gとが係合するようになっている。
【0061】
本体52aは、弾性材料からなる板ばねで形成されており、その一端が取付部52bと、他端がローラ部52cと一体的に形成されている。
取付部52bには貫通孔が形成されており、取付ボルト54が挿通されるようになっている。
ローラ部52cは、ローラ52rと、ローラ52rを回転自在に支持する支持軸52sと、支持軸52sの両端部を支持する支持部52uとを有している。
【0062】
スプリングリテーナ53は、ディテントスプリング52の取付部52bをトランスアクスル3に固定するとともに、ディテントスプリング52の本体52aが弾性変形した際に、本体52aの変形が過度にならないよう規制している。
この構成により、ディテント回動プレート51が回動軸46とともに回動した際、ディテントスプリング52のローラ52rが、ディテント回動プレート51の凸部51hおよび凹部51f、51gの接触面に所定の押圧力をもって接触しローラ52rが接触面上で回転しつつ滑らかに移動することができる。
【0063】
リミットスイッチSW1は、図2に示すように、ヒンジレバーを備えたリミットスイッチで構成されている。このヒンジレバーが所定のストロークだけ押圧されたときにONとなり検出信号が出力され、押圧が解除されたときにOFFとなるよう構成されている。
リミットスイッチSW1は、ケース本体21のスイッチ取付部31gに取り付けられており、アジャストレバー48が回動軸46とともに回動し、突出部48dがヒンジレバーを押圧した際に、ONとなり、シフト切替機構14がパーキングロック状態にあることが検出されるようになっている。
【0064】
リミットスイッチSW2は、リミットスイッチSW1と同様に構成され、ケース本体21のスイッチ取付部31hに取り付けられており、アジャストレバー48が回動軸46とともに回動し、突出部48eがヒンジレバーを押圧した際に、ONとなり、シフト切替機構14が非パーキングロック状態にあることが検出されるようになっている。
【0065】
なお、これらのリミットスイッチSW1、SW2は、ヒンジレバーを備えたリミットスイッチ以外のスイッチで構成するようにしてもよい。例えば、プッシュ構造のリミットスイッチであってもよく、電気的に被検出物の位置を検出する非接触式位置検出用スイッチであってもよい。
【0066】
パーキングロック機構20は、図2および図3に示すように、パーキングロッド61と、パーキングカム62と、カムスプリング63と、パーキングポール64と、パーキングギヤ65とを含んで構成されている。
【0067】
パーキングロッド61は、棒状の部材からなり、その軸線方向に直交するよう屈曲して形成されディテント回動プレート51の連結部51cと連結される連結端部61aと、トランスアクスル3に軸線方向に移動可能に支持される支持端部61bと、カムスプリング63を支持するスプリング支持部61cとを有している。
【0068】
連結端部61aは、ディテント回動プレート51の連結部51cの切欠を有する貫通孔51kの切欠と係合するよう圧入された図示しない係合ピンを有しており、この係合ピンを介して連結部51cに回動不能に連結されている。
スプリング支持部61cは、連結端部61aと支持端部61bとの間で、パーキングロッド61の軸線方向に直交するよう突出して形成されており、カムスプリング63の端部を支持している。
【0069】
パーキングカム62は、パーキングポール64に係合する傾斜係合面を有し円錐台形状に形成されている。また、パーキングカム62は、その軸線方向に貫通する貫通孔を有しており、この貫通孔にパーキングロッド61が挿通され、パーキングロッド61に、その軸線方向に移動可能に取り付けられている。
【0070】
カムスプリング63は、圧縮コイルばねからなり、パーキングロッド61に装着され、一端がパーキングロッド61のスプリング支持部61cに支持され、他端がパーキングカム62をパーキングロッド61の支持端部61b側に押圧している。
【0071】
パーキングポール64は、パーキングカム62と係合するカム係合部64aと、トランスアクスル3に回動可能に支持される支持部64bと、パーキングギヤ65と噛み合う噛合部64cとを有している。
このパーキングポール64は、ディテント回動プレート51が回動し、パーキングロッド61が、その支持端部61b側に移動したとき、パーキングカム62に押圧され、支持部64bを中心として回動し、噛合部64cがパーキングギヤ65に噛み合うようになっている。
【0072】
パーキングギヤ65は、トランスアクスル3を構成しエンジン2の動力が出力される出力軸に連結された歯車機構に一体的に設けられた歯車65aを有している。
この歯車65aは、パーキングポール64の噛合部64cと噛み合うよう円周上に等間隔に形成された複数の凹部65bと、この凹部65b間に形成された複数の凸部65cを有している。
【0073】
次に、第1実施形態におけるシフト切替装置10の切替動作について説明する。
図11の上段に記載の状態図は、図12(a)、(b)ないし図16(a)、(b)を縮小して表示したもので、シフト切替装置10の動作の状態を示している。また、下段の塗りつぶしされた横枠は、左側の枠に記載の構成要素の動作状態を示しており、横軸方向は時間の経過を表し、縦軸方向は、通電状態、作動状態を示している。
【0074】
この図11においては、図12(a)に示すシフト切替装置10のディテント回動プレート51が非パーキングポジションの回動位置から、図16(b)に示すシフト切替装置10のディテント回動プレート51がパーキングポジションの回動位置になるまでの動作が示されている。なお、図11に示す動作とは逆に、シフト切替装置10のディテント回動プレート51が、パーキングポジションの回動位置から非パーキングポジションの回動位置になるまでの動作は、回動方向が逆方向になるだけで、ほぼ図11に示す動作と同様に行われる。
【0075】
図11、図12(a)は、車両1が、走行中またはアイドリング中にある運転状態であって、パーキングスイッチ4が解除され、シフト切替装置10が非パーキングポジションの回動位置に決定されている状態にあることを示している。
【0076】
この非パーキングロックの状態においては、アジャストレバー48の係合突起48cと係合孔47dを囲む大径側ギヤ47の内壁47nとの間に、隙間S、Sの第1の遊び部分が画成されている。この第1の遊び部分の範囲内においては、電動機12の動力がアジャストレバー48に伝達されず、アジャストレバー48は、電動機12と切り離されて、ディテントスプリング52の弾性変形による押圧力のみで回動することができ、非パーキングポジションの回動位置が高精度で決定される。
【0077】
車両1が停止し、運転者により図1に示すパーキングスイッチ4が押されると、電子制御ユニットにより、電動機12に通電され、電動機12が作動すると出力軸12aが回転し、動力伝達機構13の小径側ヘリカルギヤ41を介して大径側ギヤ47が回動を開始する。
このとき、図11の下段に示すように、電動機12に大径側ギヤ47を回動するだけの比較的小さな負荷が加わる。そして、リミットスイッチSW2はONの状態にあり、リミットスイッチSW1はOFFの状態にあり、シフト切替装置10が非パーキングロックの状態であることが検出されている。
【0078】
続いて、図11、図12(b)に示すように、大径側ギヤ47が矢印で示す方向に回動を開始し、アジャストレバー48の係合突起48cと係合孔47dを囲む大径側ギヤ47の内壁47nとが接触すると、すなわち、隙間Sがゼロになると、大径側ギヤ47に押されて、アジャストレバー48が大径側ギヤ47と同じ方向に回動を開始する。
続いて、ディテント回動プレート51が、アジャストレバー48の回動開始の後、僅かなタイムラグを有して回動を開始する。ディテント回動プレート51と回動軸46との連結部分に僅かなクリアランスがあるので僅かなタイムラグが生ずることになる。
【0079】
ディテント回動プレート51が回動を開始すると、ディテントスプリング52の本体52aの押圧力に抗して、ディテント回動プレート51が、その凸部51hでをローラ52rを押し上げる方向に摺動を開始するので、電動機12に加わる負荷が最大となる。このとき、リミットスイッチSW2はONの状態にあり、リミットスイッチSW1はOFFの状態にあり、シフト切替装置10が、依然として非パーキングロックの状態であることが検出されている。
【0080】
続いて、図11、図13(a)に示すように、アジャストレバー48の係合突起48cと係合孔47dを囲む大径側ギヤ47の内壁47nとが接触した状態で、アジャストレバー48が、大径側ギヤ47に押されて、大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51が、その凸部51hでディテントスプリング52のローラ52rを徐々に押し上げる。このとき、リミットスイッチSW2はONの状態にあり、リミットスイッチSW1はOFFの状態にあり、シフト切替装置10が、依然として非パーキングロックの状態であることが検出されている。
【0081】
続いて、図11、図13(b)に示すように、アジャストレバー48が、大径側ギヤ47に押されて、さらに大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51が、その凸部51hでディテントスプリング52のローラ52rを徐々に押し上げる。
ディテント回動プレート51の凸部51hとローラ52rとの接触位置が、凸部51hの頂部51tに近づく程、図10に示すカーブCfの傾斜が緩やかになるので、電動機12に加わる負荷が低下する。
【0082】
このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48と離隔し、OFFの状態になり、リミットスイッチSW1も依然としてOFFの状態にあるので、シフト切替装置10が、非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わる途中の状態であることが検出されている。
【0083】
続いて、図11、図14(a)に示すように、アジャストレバー48が、大径側ギヤ47に押されて、さらに大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51の凸部51hとローラ52rとの接触位置が、凸部51hの頂部51tに到達し通過する。ディテント回動プレート51の凸部51hと電動機12に加わる負荷が、さらに低下する。
【0084】
このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48と離隔し、OFFの状態になり、リミットスイッチSW1も依然としてOFFの状態にあるので、シフト切替装置10が、非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わる途中の状態であることが検出されている。
【0085】
続いて、図11、図14(b)に示すように、アジャストレバー48は、大径側ギヤ47に押されて、さらに大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51の凸部51hとローラ52rとの接触位置が、凸部51hの下り方向の傾斜部分に移る。
このとき、ローラ52rは、ディテントスプリング52の本体52aにより、ディテント回動プレート51の凹部51gの方向に押圧される。すなわち、ローラ52rは凹部51gの方向に吸い込まれることになり、ディテント回動プレート51の凸部51hと電動機12に加わる負荷は最小の状態になる。
【0086】
このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48と離隔したOFFの状態が維持され、リミットスイッチSW1も依然としてOFFの状態にあるので、シフト切替装置10が、非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わる途中の状態であることが検出されている。
【0087】
図11、図15(a)は、アジャストレバー48が、続いて、大径側ギヤ47に押されて、さらに大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51の凸部51hとローラ52rとの接触位置が、凸部51hの傾斜部分に移った状態を示している。
【0088】
このとき、ローラ52rは、ディテントスプリング52の本体52aにより、ディテント回動プレート51の凹部51gの方向に押圧されて、凹部51gの方向に吸い込まれるとともに、なお、大径側ギヤ47のn歯と小径側ギヤ42bの3n歯が噛み合っており、電動機12の動力がディテント回動プレート51に伝達されている。
【0089】
すなわち、ローラ52rは、電動機12の動力およびディテントスプリング52の本体52aの弾性力により、図10に示すカーブCgの傾斜を下る状態になる。
このとき、リミットスイッチSW1が、アジャストレバー48の突出部48dに押されONとなるとともに、リミットスイッチSW2は依然としてOFFの状態にあるので、シフト切替装置10が、非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わったことが検出される。この検出に基づいて、電子制御ユニットにより電動機12の通電が停止される。
【0090】
図11、図15(b)は、電動機12の通電が停止した後も、その慣性により電動機12はその回転が持続し、出力軸12aから慣性力による動力が出力されるが、大径側ギヤ47に形成されている欠歯部47oにより大径側ギヤ47には動力が伝達されないため、ディテント回動プレート51が大径側ギヤ47に対して先行して、隙間S´が生じている状態を示している。
【0091】
このとき、ディテント回動プレート51の電動機12の動力による回動が回避される。その結果、ディテントスプリング52のローラ52rは、その弾性力のみで、ディテント回動プレート51の凹部51gに向かってカーブCg上を摺動する。
【0092】
すなわち、ディテント回動プレート51は、ディテントスプリング52のローラ52rが凹部51gの回動位置に収まるまで、吸い込まれることになり、いわゆる自走する状態となるため、ディテント回動プレート51が大径側ギヤ47に対して先行し、隙間S´が確保される。このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48と離隔したOFFの状態が維持され、リミットスイッチSW1はONの状態にあるので、シフト切替装置10が、非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わったことが検出されている。
【0093】
図11、図16(a)は、電動機12の通電が停止した後、その慣性により電動機12の出力軸12aから出力された動力の伝達が回避され、電動機12の動力伝達に先行してディテントスプリング52のローラ52rが、その弾性力のみで、ディテント回動プレート51の凹部51gに向かってカーブCg上を摺動し、ローラ52rが、凹部51gに係合した状態を示している。
【0094】
ローラ52rが、凹部51gに係合する直前で、大径側ギヤ47のp歯と小径側ギヤ42bの5歯が噛み合い、再度、電動機12の動力が大径側ギヤ47に伝達されるが、隙間S´によりディテント回動プレート51に動力は伝達されない。したがって、ローラ52rは、ディテントスプリング52の本体52aの弾性力のみで、凹部51gに押圧されて係合することになる。この係合により、ディテント回動プレート51の回動が停止する。
このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48と離隔したOFFの状態が維持され、リミットスイッチSW1はONの状態にあるので、シフト切替装置10が、パーキングロックの状態であることが検出されている。
【0095】
そして、ディテント回動プレート51の回動の停止後、電動機12の慣性による回転が停止し、隙間S´´(<S´)を残した状態で大径側ギヤ47が停止する状態を示している。
図11、図16(b)は、この電動機12の回転の停止により、電動機12に加わる負荷が無負荷の状態となり、シフト切替装置10における、非パーキングポジションからパーキングポジションへのシフト切替がなされた状態を示しており、シフト切替動作が完了する。
【0096】
このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48と離隔したOFFの状態が維持され、リミットスイッチSW1はONの状態にあるので、シフト切替装置10が、パーキングロックの状態であることが検出されている。
【0097】
このように、ディテント回動プレート51が、その凹部51fとローラ52rとが係合する非パーキングポジションから凹部51gとローラ52rとが係合するパーキングポジションに切り替わる際、回動軸46を中心として回動する。この回動により、図2および図3に示すパーキングロッド61が、パーキングポール64側に移動し、パーキングカム62がパーキングポール64のカム係合部64aを押圧する。
【0098】
このとき、パーキングポール64は、その支持端部61bを中心として回動し、パーキングポール64の噛合部64cが、パーキングギヤ65の凹部65bと係合する。この係合によりパーキングロック機構20がロック状態となり、車両1の出力軸の回転がロックされて、車輪の回転が阻止される。
【0099】
次いで、パーキングポジションから非パーキングポジションへのシフト切替動作について、図17(a)、(b)ないし図20を参照して説明する。
【0100】
図17(a)は、シフト切替装置10が、図16(b)に示すパーキングロックの状態で、運転者により図1に示すパーキングスイッチ4が解除された状態を示している。
この状態で、電子制御ユニットにより電動機12に通電され、電動機12が作動して出力軸12aが回転し、動力伝達機構13の小径側ヘリカルギヤ41を介して大径側ギヤ47が矢印方向に回動する。そして、係合孔47dを囲む大径側ギヤ47の内壁47nとアジャストレバー48の係合突起48cとが接触すると、すなわち、隙間Sがゼロになると、アジャストレバー48が大径側ギヤ47に押されて、大径側ギヤ47と同じ方向に回動を開始する。
【0101】
このとき、ディテント回動プレート51の図10に示す51hのカーブCgでディテントスプリング52のローラ52rが本体52aの押圧力に抗して押し上げられる。続いて、アジャストレバー48からリミットスイッチSW1が離隔して、OFFとなり、シフト切替装置10のパーキングロックの状態が解除されたことが検出される。
【0102】
続いて、図17(b)に示すように、アジャストレバー48の係合突起48cと係合孔47dを囲む大径側ギヤ47の内壁47nとが接触した状態で、アジャストレバー48が、大径側ギヤ47に押されて、大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51が、その凸部51hでディテントスプリング52のローラ52rをさらに押し上げる。このとき、リミットスイッチSW1、SW2はOFFの状態にあり、シフト切替装置10が、非パーキングロックの状態であることが検出されている。
【0103】
続いて、図11、図18(a)に示すように、アジャストレバー48が、大径側ギヤ47に押されて、さらに大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51が、凸部51hとローラ52rとの接触位置が、凸部51hの頂部51tを越えると、電動機12に加わる負荷が低下し、ディテントスプリング52のローラ52rがディテント回動プレート51の凹部51fに向かって下降する。
【0104】
続いて、図18(b)に示すように、アジャストレバー48は、大径側ギヤ47に押されて、さらに大径側ギヤ47と同じ方向に回動し、ディテント回動プレート51の凸部51hとローラ52rとの接触位置が、凸部51hの下り方向のカーブCfで示す傾斜部分に移る。
【0105】
このとき、ローラ52rは、ディテントスプリング52の本体52aにより、ディテント回動プレート51の凹部51gの方向に押圧される。すなわち、ローラ52rは凹部51gの方向に吸い込まれることになる。そして、小径側ギヤ42bの歯6nと大径側ギヤ47の歯fとが噛み合っており、ディテント回動プレート51の凸部51hと電動機12に加わる負荷は最小の状態になる。
【0106】
このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48と離隔したOFFの状態が維持され、リミットスイッチSW1も依然としてOFFの状態にあるので、シフト切替装置10が、非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わる途中の状態であることが検出されている。
【0107】
図19(a)は、電動機12の通電が停止した後も、その慣性により電動機12はその回転が持続し、出力軸12aから慣性力による動力が出力されるが、大径ギヤ47に形成される欠歯部47eにより、大径側ギヤ47に動力が伝達されないため、ディテント回動プレート51が大径側ギヤ47に対して先行して隙間S´が生じている状態を示している。
【0108】
このとき、ディテント回動プレート51の電動機12の動力による回動が回避される。その結果、電動機12の動力伝達に先行してディテントスプリング52のローラ52rは、その弾性力のみで、ディテント回動プレート51の凹部51fに向かってカーブCf上を摺動する。
【0109】
すなわち、ディテント回動プレート51は、ディテントスプリング52のローラ52rが凹部51gの回動位置に収まるまで、吸い込まれることになり、いわゆる自走する状態となるため、ディテント回動プレート51が大径側ギヤ47に対して先行し、隙間S´が確保される。このとき、アジャストレバー48がリミットスイッチSW2をキックしてONとなり、シフト切替装置10が、パーキングポジションから非パーキングポジションに切り替わったことが検出される。
【0110】
図19(b)は、ディテントスプリング52のローラ52rが、ディテント回動プレート51の凹部51fに押圧されつつ係合し、ディテント回動プレート51の回動が停止した状態を示している。ディテント回動プレート51の回動の停止後、電動機12の慣性による回転が停止し、S´´(<S´)を残した状態で大径側ギヤ47が停止する。
【0111】
この電動機12の回転の停止により、電動機12に加わる負荷が無負荷の状態となり、シフト切替装置10におけるパーキングポジションから非パーキングポジションへのシフト切替動作が完了する。
このとき、リミットスイッチSW2は、アジャストレバー48に押されたONの状態が維持されるので、シフト切替装置10が、非パーキングロックの状態であることが検出されている。
【0112】
シフト切替装置10における、パーキングポジションから非パーキングポジションへのシフト切替動作の完了により、パーキングロック機構20がアンロック状態となり、車両1の出力軸の回転がアンロックされて、車輪の回転の阻止が解除され、車輪が回転し得る状態となる。
【0113】
第1実施形態に係るシフト切替装置10は、前述のように構成されているので、以下の効果が得られる。
【0114】
すなわち、シフト切替装置10は、シフト操作に応じて動力を出力する電動機12と、パーキングポジションと非パーキングポジションとからなるシフトポジションを切り替えるシフト切替機構14と、電動機12の動力を、シフト切替機構14に伝達する動力伝達機構13とを備えている。
【0115】
そして、シフト切替機構14は、シフトポジションに対応した凹部51f、51gおよび凸部51hとを有し回動するディテント回動プレート51と、凹部51f、51gと係合しディテント回動プレート51の回動位置を決めるディテントスプリング52とを有している。
【0116】
さらに、動力伝達機構13は、電動機12の動力を受ける大径側ギヤ47と、大径側ギヤ47から動力を受け、ディテント回動プレート51に動力を伝達するアジャストレバー48とを有し、ディテントスプリング52がディテント回動プレート51の凸部51hへ係合する所定の回動位置にあるとき、大径側ギヤ47とアジャストレバー48との間に動力が伝達されない第1の遊び部分としての隙間S、Sが形成されるとともに、大径側ギヤ47に電動機12の動力が伝達されない第2の遊び部分としての欠歯部47e、47oが形成されたことを特徴としている。
【0117】
その結果、シフト切替装置10が非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わる途中で、電動機12の通電が停止した後に、その慣性により電動機12の回転が持続し、出力軸12aから動力が出力されても、その動力は、大径側ギヤ47に設けられた欠歯部47oにより、大径側ギヤ47に伝達されないので、ディテントスプリング52のローラ52rとディテント回動プレート51の凹部51gとの当接で生ずる過大な駆動力による衝撃作用が回避される。すなわち、大径側ギヤ47に設けられた欠歯部47oにより、大径側ギヤ47に動力が伝達されない間は、ディテント回動プレート51は、電動機12の動力伝達に先行してディテントスプリング52の本体52aの押圧力のみで回動するので、ローラ52rが凹部51gに係合する際に、衝撃が加わることがなく、速やかに係合するという効果が得られる。
【0118】
また、パーキングポジションから非パーキングポジションに切り替わる場合においても、電動機12の通電が停止した後に出力軸12aから動力が出力されても、その動力は、大径側ギヤ47に設けられた欠歯部47eにより、大径側ギヤ47に伝達されないので、ディテントスプリング52のローラ52rとディテント回動プレート51の凹部51fとの当接で生ずる過大な駆動力による衝撃作用が回避される。すなわち、大径側ギヤ47に設けられた欠歯部47eにより、大径側ギヤ47に伝達されない間は、ディテント回動プレート51は、電動機12の動力伝達に先行してディテントスプリング52の本体52aの押圧力のみで回動するので、ローラ52rが凹部51fに係合する際に、衝撃が加わることがなく、速やかに係合するという効果が得られる。
【0119】
すなわち、いずれのシフト切替動作においても、切替完了時に衝撃が加わることがなく、速やかにシフトを切り替えることができるという効果が得られる。
したがって、第1実施形態におけるシフト切替装置10においては、大径側ギヤ47に欠歯部47e、47oを形成するだけの、簡単な構造で、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができるという効果が得られる。
【0120】
また、大径側ギヤ47とアジャストレバー48との間に動力が伝達されない第1の遊び部分としての隙間S、Sが形成されているので、この第1の遊び部分の範囲で、ディテント回動プレート51がディテントスプリング52の押圧力のみで回動することができ、パーキングポジションおよび非パーキングポジションの正確な回動位置が得られ、正確なシフトポジションを得ることができる。すなわち、ディテントスプリング52の押圧力により、ローラ52rがパーキングポジションとなる凹部51gに正確に係合することができる。また、ディテントスプリング52の押圧力により、ローラ52rが非パーキングポジションとなる凹部51fに正確に係合することができる。
【0121】
(第2実施形態)
図20ないし図25は、本発明に係るシフト切替装置の第2実施形態を示す図であり、第1実施形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0122】
第2実施形態におけるシフト切替装置70は、図20および図21に示すように、第1実施形態と同様、ケース11と、電動機12と、動力伝達機構71と、シフト切替機構14と、スイッチSW1、SW2と、図示しない電動機12を制御する電子制御ユニット(ECU)と、電動機12をケース11に固定する固定ねじ15とを含んで構成されている。シフト切替装置70は、第1実施形態に対して、動力伝達機構71のみ異なる構造で構成されている。
【0123】
動力伝達機構71は、小径側ヘリカルギヤ41と、大径側ヘリカルギヤ72と、回転軸43と、ベアリング44、45と、回動軸46と、第1の動力伝達部材としての従動輪からなる大径側リング73と、第2の動力伝達部材としてのアジャストレバー48と、装着リング49とを含んで構成されている。
【0124】
大径側ヘリカルギヤ72は、ギヤ72aおよびギヤ72aと一体的に形成された駆動輪としての小径側リング72bとを有しており、小径側ヘリカルギヤ41と噛み合って小径側ヘリカルギヤ41から伝達される動力を大きく減速し、小径側リング72bを介して大径側リング73に伝達するようになっている。
【0125】
小径側リング72bは、図22ないし図24に示すように、表面が滑らかなリングで構成され、大径側リング73と互いに摩擦接触している。
【0126】
大径側リング73は、図22ないし図25に示すように、回動軸46の支持部46bが挿入される貫通孔73aが形成され、支持部46bの周りを回動する回動部と73bと、扇状に形成され従動輪としての接触部73cと、貫通して形成された係合孔73dとを有している。
【0127】
接触部73cは、貫通孔73aを中心として所定の曲率半径を有する円弧状に形成され、小径側リング72bと部分的に非接触となる切欠部73e、73fとを有している。
この切欠部73eは、第1実施形態における大径側ギヤ47に形成された欠歯部47eと同じ位置に形成されており、切欠部73fは、第1実施形態における大径側ギヤ47に形成された欠歯部47oと同じ位置に形成されている。
【0128】
この切欠部73e、73fは本発明に係るシフト切替装置における第2の遊び部分を構成しており、第1実施形態における大径側ギヤ47の欠歯部47e、47oと同様の作用効果を有している。また、この切欠部73e、73fは本発明に係るシフト切替装置における接触部73cの外周の半径よりも小さい半径を有する小径部を構成している。
【0129】
なお、この大径側リング73は、小径部としての切欠部73e、73fを有しているので、動力伝達機構71を組み付ける際は、大径側リング73および小径側リング72bに余分な負荷を掛けずに容易に組み付けることができる。
【0130】
すなわち、大径側リング73とアジャストレバー48およびディテント回動プレート51との所定の位置関係を保った状態で、小径側リング72bが切欠部73e、73fに接触する位置で、大径側リング73を組み込むと、大径側リング73および小径側リング72bを変形せずに組み込むことができ、適度の接触圧を保って組み付けることができる。このような組み付け方法により、最適な摩擦力で小径側リング72bから大径側リング73に動力を伝達することができる。
【0131】
なお、第2実施形態におけるシフト切替装置70の切替動作は、前述した第1実施形態におけるシフト切替装置10の図11ないし図19(a)、(b)に示す切替動作とほぼ同様に行われるので、その説明を省略する。
【0132】
第2実施形態に係るシフト切替装置70は、前述のように構成されているので、以下の効果が得られる。
【0133】
すなわち、シフト切替装置70は、シフト操作に応じて動力を出力する電動機12と、パーキングポジションと非パーキングポジションとからなるシフトポジションを切り替えるシフト切替機構14と、電動機12の動力を、シフト切替機構14に伝達する動力伝達機構71とを備えている。
【0134】
そして、シフト切替機構14は、シフトポジションに対応した凹部51f、51gおよび凸部51hとを有し回動するディテント回動プレート51と、凹部51f、51gと係合しディテント回動プレート51の回動位置を決めるディテントスプリング52とを有している。
【0135】
さらに、動力伝達機構71は、電動機12の動力を受ける大径側リング73と、大径側リング73から動力を受け、ディテント回動プレート51に動力を伝達するアジャストレバー48とを有し、ディテントスプリング52がディテント回動プレート51の凸部51hへ係合する所定の回動位置にあるとき、大径側リング73とアジャストレバー48との間に動力が伝達されない第1の遊び部分としての隙間S、Sが形成されるとともに、大径側リング73に電動機12の動力が伝達されない第2の遊び部分としての切欠部73e、73fが形成されたことを特徴としている。
【0136】
その結果、その結果、シフト切替装置70が非パーキングポジションからパーキングポジションに切り替わる途中で、電動機12の通電が停止した後に、その慣性により電動機12の回転が持続し、出力軸12aから動力が出力されても、その動力は、大径側リング73に設けられた切欠部73fにより、大径側リング73に伝達されないので、ディテントスプリング52のローラ52rとディテント回動プレート51の凹部51gとの当接で生ずる過大な駆動力による衝撃作用が回避される。
【0137】
すなわち、大径側リング73に設けられた切欠部73fにより、大径側リング73に動力が伝達されない間は、ディテント回動プレート51は、電動機12の動力伝達に先行してディテントスプリング52の本体52aの押圧力のみで回動するので、ローラ52rが凹部51gに係合する際に、衝撃が加わることがなく、速やかに係合するという効果が得られる。
【0138】
また、パーキングポジションから非パーキングポジションに切り替わる場合においても、電動機12の通電が停止した後に出力軸12aから動力が出力されても、その動力は、大径側リング73に設けられた切欠部73eにより、大径側リング73に伝達されないので、ディテントスプリング52のローラ52rとディテント回動プレート51の凹部51fとの当接で生ずる過大な駆動力による衝撃作用が回避される。すなわち、大径側リング73に設けられた切欠部73eにより、大径側リング73に伝達されない間は、ディテント回動プレート51は、電動機12の動力伝達に先行してディテントスプリング52の本体52aの押圧力のみで回動するので、ローラ52rが凹部51fに係合する際に、衝撃が加わることがなく、速やかに係合するという効果が得られる。
【0139】
すなわち、いずれのシフト切替動作においても、切替完了時に衝撃が加わることがなく、速やかにシフトを切り替えることができるという効果が得られる。
したがって、第2実施形態におけるシフト切替装置10においては、大径側リング73に切欠部73e、73fを形成するだけの、簡単な構造で、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができるという効果が得られる。
【0140】
また、第1実施形態と同様に、大径側リング73とアジャストレバー48との間に動力が伝達されない第1の遊び部分としての隙間S、Sが形成されているので、この第1の遊び部分の範囲で、ディテント回動プレート51がディテントスプリング52の押圧力のみで回動することができ、パーキングポジションおよび非パーキングポジションの正確な回動位置が得られ、正確なシフトポジションを得ることができる。すなわち、ディテントスプリング52の押圧力により、ローラ52rがパーキングポジションとなる凹部51gに正確に係合することができる。また、ディテントスプリング52の押圧力により、ローラ52rが非パーキングポジションとなる凹部51fに正確に係合することができる。
【0141】
(第3実施形態)
図26は、本発明に係るシフト切替装置の第3実施形態を示す図であり、第1実施形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0142】
第3実施形態におけるシフト切替装置100は、図26に示すように、車両の自動変速機101に設けられている。
この自動変速機101は、ケース102と、車両の停車時に自動変速機101の出力軸101aの回転をロックおよびアンロックするパーキングロック機構103と、車両の走行時に変速段を形成する図示しない変速機構と、この変速機構を油圧で制御する油圧制御装置104とを含んで構成されている。
【0143】
このシフト切替装置100は、第1実施形態と同様、運転者のシフト操作入力をセンサやスイッチによって検出し、その検出信号に応じたシフトポジションを選択するという、いわゆるシフトバイワイヤ方式のシフト制御システムを構成している。このシフト切替装置100においては、第1実施形態と異なり、パーキングポジションとパーキングポジション以外のドライブポジション(D)、ニュートラルポジション(N)およびリバースポジション(R)などの非パーキングポジションとからなるシフトポジションを切り替えるようになっている。
【0144】
このシフト切替装置100は、第1実施形態と同様、電動機111と、シフト切替機構112と、この電動機111から出力される動力を受けシフト切替機構112に動力を伝達する動力伝達機構113とを含んで構成されている。
【0145】
電動機111は、第1実施形態の電動機12と同様に構成されている。
【0146】
シフト切替機構112は、ディテント回動プレート121と、ディテントスプリング122とを含んで構成されている。このシフト切替機構112は、運転者によるシフトレバーの操作に応じて、パーキングポジション(P)および非パーキングポジションに切り替えるよう構成されている。非パーキングポジションは、例えば、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)およびドライブポジション(D)からなり、運転者によるシフトレバーの操作に応じて、いずれかのポジションに対応した変速段を成立させるために、油圧制御装置104に設けられたマニュアルバルブ104aを作動させるようになっている。
【0147】
ディテント回動プレート121は、第1実施形態と同様、シフトレバーにより選択されるパーキングポジション(P)、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)およびドライブポジション(D)それぞれに対応する凹部が一端側121aに形成されている。また、ディテント回動プレート121の他端側121bには、パーキングロック機構103の一方の端部が連結されており、また突片121cには、マニュアルバルブ104aのスプール104bの端部が連結されている。
【0148】
また、ディテント回動プレート121は、動力伝達機構113の一端に一体回転可能に固定されており、パーキングポジション(P)、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)およびドライブポジション(D)のうち、シフトレバーにより選択されたポジションに対応して動力伝達機構113が動作すると、4段階に傾動されるようになっている。また、ディテント回動プレート121は、その傾動に応じてマニュアルバルブ104aのスプール104bを軸方向に移動させるようになっている。
【0149】
ディテントスプリング122は、油圧制御装置104のマニュアルバルブ104aに取り付けられる取付部122aと、ディテント回動プレート121の各凹部と係合するローラ部122bとを含んで構成されている。
ローラ部122bがディテント回動プレート121のいずれかの凹部と係合すると、ディテント回動プレート121の回動位置が決定される。すなわち、パーキングポジション(P)、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)およびドライブポジション(D)のうちいずれかのポジションに決定される。
【0150】
動力伝達機構113は、第1実施形態の動力伝達機構13と同様に構成されており、図示を略するが、本発明に係るシフト切替装置の動力伝達機構を構成している。
すなわち、動力伝達機構113は、電動機111の動力を受ける第1の動力伝達部材と、第1の動力伝達部材から動力を受け、シフト切替機構112のディテント回動プレート121に動力を伝達する第2の動力伝達部材とを有している。そして、ディテント回動プレート121が、ディテントスプリング122がディテント回動プレート121の凸部へ係合する所定の回動位置にあるとき、第1の動力伝達部材と第2の動力伝達部材との間に第2の動力伝達部材に第1の動力伝達部材の動力が伝達されない第1の遊び部分が形成されるとともに、第1の動力伝達部材に電動機111の動力が伝達されない第2の遊び部分が形成されている。また、動力伝達機構113は、電動機111の出力軸に連結された駆動歯車を有するとともに、第1の動力伝達部材が、この駆動歯車に噛み合って駆動される従動歯車を有し、第2の遊び部分が、従動歯車の所定の歯が欠除された欠歯部によって構成されている。
【0151】
この動力伝達機構113は、第1実施形態の動力伝達機構13と同様に構成することにより、少なくとも2個の凹部と、この凹部間に形成された凸部、例えば、パーキングポジション(P)、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)およびドライブポジション(D)のうち、隣り合う2箇所のポジションに適用することができる。
【0152】
すなわち、動力伝達機構113は、第1実施形態の動力伝達機構13と同様に、小径側ヘリカルギヤ41と、大径側ヘリカルギヤ42と、回転軸43と、ベアリング44、45と、回動軸46と、第1の動力伝達部材としての大径側ギヤ47と、第2の動力伝達部材としてのアジャストレバー48と、装着リング49とを含んで構成することにより、隣り合う2箇所のポジションに適用することができる。
【0153】
さらに、この小径側ヘリカルギヤ41と、大径側ヘリカルギヤ42と、第1の動力伝達部材としての大径側ギヤ47と、第2の動力伝達部材としてのアジャストレバー48とを、パーキングポジション(P)、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)およびドライブポジション(D)の4箇所のポジションに適用できるよう、それぞれ形成することもできる。例えば、大径側ギヤ47に前述の4箇所のポジションに対応して欠歯部を形成することにより、第1実施形態の動力伝達機構13と同様に前述の各ポジションに対応して、電動機111から出力される動力の伝達を部分的に回避することができる。
【0154】
パーキングロック機構103は、パーキングギヤ131と、パーキングポール132と、パーキングロッド133とを含んで構成されており、運転者により図示しないシフトレバーが操作され、パーキングレンジが選択されると、自動変速機101の出力軸101aの回転が阻止されて車両の停止状態が維持されるようになっている。
【0155】
パーキングギヤ131は、自動変速機101の出力軸101aに相対回転不能に固定され、出力軸101aとともに回転するようになっている。また、パーキングギヤ131は、その外周面に複数の嵌合歯が設けられている。
【0156】
パーキングポール132は、パーキングギヤ131の外周面と対向する位置に設けられ、パーキングギヤ131の嵌合歯に嵌合する係止部132aが形成されている。また、パーキングポール132は、係止部132aがパーキングギヤ131の嵌合歯に選択的に嵌合可能なように構成されている。すなわち、パーキングポール132は、その一端側が例えば自動変速機101のケース102に回動可能に取り付けられ、前述の一端側を支点にパーキングギヤ131に接近および離間するいずれかの方向に回動できるようになっている。
【0157】
パーキングロッド133は、一端がシフト切替機構112に連結され、他端にテーパコーン状のパーキングカム134が取り付けられている。パーキングロッド133は、シフト切替機構112の傾動に応じて、パーキングカム134を軸方向に摺動させるようになっている。
【0158】
また、パーキングロッド133は、シフト切替機構112の傾動に応じて、パーキングカム134をパーキングポール132側に押圧することにより、パーキングポール132がパーキングギヤ131側に近接して、パーキングポール132の係止部132aをパーキングギヤ131の嵌合歯に嵌合させるようになっている。
【0159】
第1実施形態に係るシフト切替装置10においては、駆動歯車としての小径側ギヤ42bを13個の歯数を有する歯車で構成し、従動歯車としての大径側ギヤ47を、aないしsの19個の歯数のうち2箇所の欠歯部を有するもので構成した場合について説明した。しかしながら、本発明に係るシフト切替装置においては、駆動歯車および従動歯車を第1実施形態の構造以外の構造で構成するようにしてもよい。
【0160】
例えば、駆動歯車としての小径側ギヤの歯数を13個未満のもので構成するようにしてもよい。また、駆動歯車としての小径側ギヤを第1実施形態のものよりも大きく形成し、13個よりも多い歯数のもので構成するようにしてもよい。これらの場合、これらの小径側ギヤに対応する歯数および形状のもので従動歯車としての大径側ギヤを構成するようにしてもよい。
【0161】
以上説明したように、本発明に係るシフト切替装置は、簡単な構造で、正確なシフトポジションを得ることができるとともに、電動機や動力伝達機構などの構成要素の耐久性を向上させることができるという効果を奏するものであり、自動車などの車両のシフト切替装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0162】
10、70、100 シフト切替装置
11、102 ケース
12、111 電動機
12a、101a 出力軸
13、71、113 動力伝達機構
14、112 シフト切替機構
20、103 パーキングロック機構
41 小径側ヘリカルギヤ
42、72 大径側ヘリカルギヤ
42a、72a ギヤ
42b 小径側ギヤ(駆動歯車)
43 回転軸
46 回動軸
47 大径側ギヤ(第1の動力伝達部材)
47c 平歯部(従動歯車)
47d 係合孔
47e、47o 欠歯部(第2の遊び部分)
47n 内壁
48 アジャストレバー(第2の動力伝達部材)
48c 係合突起
51、121 ディテント回動プレート
51f 凹部(非パーキングポジション)
51g 凹部(パーキングポジション)
51h 凸部
51t 頂部
52、122 ディテントスプリング
52r ローラ
61 パーキングロッド
72b 小径側リング(駆動輪)
73 大径側リング(第1の動力伝達部材)
73c 接触部(従動輪)
73e、73f 切欠部(第2の遊び部分、小径部)
、S 隙間(第1の遊び部分)
SW1、SW2 リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト操作に応じて動力を出力する電動機と、
パーキングポジションと前記パーキングポジション以外の非パーキングポジションとからなるシフトポジションを切り替えるシフト切替機構と、
前記電動機の動力を、前記シフト切替機構に伝達する動力伝達機構と、
を備えたシフト切替装置において、
前記シフト切替機構が、前記シフトポジションに対応した凹部および前記凹部間に形成された凸部とを有し回動するディテント回動プレートと、前記凹部と係合し前記ディテント回動プレートの回動位置を決めるディテントスプリングとを有し、
前記動力伝達機構が、前記電動機の動力を受ける第1の動力伝達部材と、前記第1の動力伝達部材から動力を受け、前記ディテント回動プレートに動力を伝達する第2の動力伝達部材とを有し、
前記ディテントスプリングが前記ディテント回動プレートの前記凸部へ係合する所定の回動位置にあるとき、前記第1の動力伝達部材と前記第2の動力伝達部材との間に、前記第2の動力伝達部材に前記第1の動力伝達部材の動力が伝達されない第1の遊び部分が形成されるとともに、前記第1の動力伝達部材に前記電動機の動力が伝達されない第2の遊び部分が形成されたことを特徴とするシフト切替装置。
【請求項2】
前記動力伝達機構が、前記電動機の出力軸に連結された駆動歯車を有するとともに、前記第1の動力伝達部材が、前記駆動歯車に噛み合って駆動される従動歯車を有し、前記第2の遊び部分が、前記従動歯車の所定の歯が欠除された欠歯部によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のシフト切替装置。
【請求項3】
前記動力伝達機構が、前記電動機の出力軸に連結された駆動輪を有するとともに、前記第1の動力伝達部材が、前記駆動輪に摩擦接触する従動輪を有し、前記第2の遊び部分が、前記従動輪の所定の外周位置で、前記外周の半径よりも小さい半径を有する小径部によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のシフト切替装置。
【請求項4】
前記第1の動力伝達部材が、前記第2の動力伝達部材と係合する係合孔を有し回動軸の周りを回動するよう前記回動軸に連結され、
前記第2の動力伝達部材が、前記係合孔に挿入される係合突起を有し前記回動軸と一緒に回動するよう前記回動軸に連結されるとともに、前記ディテント回動プレートと一緒に回動するよう前記ディテント回動プレートに連結され、
前記係合孔を囲む前記第1の動力伝達部材の内壁と前記係合突起とが係合することにより、第1の動力伝達部材から前記第2の動力伝達部材に動力が伝達され、
前記第1の遊び部分が、前記係合突起と前記内壁との間に画成された隙間によって構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載のシフト切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−31902(P2012−31902A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170555(P2010−170555)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】