説明

シャットダウン機能を有する電池用微孔質ホイル

シャットダウン機能を有し、プロピレンホモポリマーとβ−成核剤とポリエチレンとを含んだ少なくとも1つのシャットダウン層Iを含む単層又は多層の二軸配向した微孔質ホイル。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、微孔質多層ホイル及びそのセパレータとしての使用に関する。
【0002】
現代のデバイスは、デバイスが場所に関して制限なく使用されることを可能にする電池又は蓄電池などのエネルギー源を必要とする。電池には、それらが処分される必要があるという短所がある。結果として、電源に接続された充電器によって繰り返し充填することができる蓄電池(二次電池)がますます使用されている。例えば、ニッケル−カドミウム蓄電池(NiCd蓄電池)は、正しく使用される場合、約1000回の充電サイクルにまで及ぶ実用寿命を提供し得る。
【0003】
電池及び蓄電池は、必ず、電解質溶液中に浸された2つの電極と、アノードとカソードとを隔てるセパレータとを含んでいる。種々の蓄電池のタイプは、使用される電極材料、電解質及び使用されるセパレータにおいて異なる。電池セパレータの役割は、電池においてはカソードをアノードから離しておくであり、蓄電池においては負極を正極から離しておくことである。セパレータは、内部短絡を防止するために2つの電極を互いに電気的に隔離する障壁でなければならない。しかしながら、同時に、セパレータは、電池内で電気化学反応を生ずることができるように、イオンに対して透過性でなければならない。
【0004】
電池セパレータは、内部抵抗が可能な限り低く、高い充填密度を達成できるように薄くなければならない。これは、良好な動作特性と高いキャパシタンスとを確実にする唯一の方法である。更に、セパレータは、電解質を吸収し、電池が満充電の場合にイオン交換を確実にする必要がある。以前は織物とそれと同種のものが使用されていたが、この機能は、現在では主に、フリース及び膜(membrane)などの細孔を有する材料が担っている。
【0005】
リチウム電池においては、短絡の発生が問題である。熱負荷の下、リチウムイオン電池における電池セパレータは、時折、溶融することがあり、これは、被害甚大な結果を伴う短絡につながる。リチウム電池が機械的に損傷を受けるか、又は充電器における劣等な電子機器回路によって過充電された場合にも、同様のリスクが存在する。
【0006】
リチウムイオン電池の安全性を増加させるために、過去にシャットダウンセパレータ(シャットダウン膜)が開発された。これらの特別なセパレータは、リチウムの融点又は引火点よりも著しく低い所定の温度でそれらの細孔を非常に迅速に閉じる。この方法で、リチウム電池における短絡の壊滅的な結果の殆どは予防される。
【0007】
しかしながら、同時に、セパレータは、大きな機械的強度を有していることが望ましく、これは、高い融点を有する材料によって保証される。従って、例えば、ポリプロピレン膜が、それらの良好な破壊抵抗のために有利であるが、ポリプロピレンの融点は約164℃であり、これはリチウムの引火点(170℃)と非常に近い。
【0008】
先行技術から、ポリプロピレン膜と、より低い融点を有する材料、例えば、ポリエチレンで構成される更なる層とを組み合わせることは既知である。当然のことながら、そのような変更は、セパレータの他の性質、例えば、多孔度などを損なうものであっても、イオン移動を妨害するものであってもならない。しかしながら、ポリエチレン層を取り付けることは、セパレータの透過度及び機械的強度に極めて有害な全体的影響を与える。さらに、ポリエチレン層のポリプロピレンに対する接着は、これらの層はラミネートによってのみ組み合わされ得るか、又はこれらの2つのクラスのうちの選択されたポリマーだけが共押出され得るため、問題がある。
【0009】
先行技術には、実質的に、高い多孔度を有するホイルを製造するための4つの異なる既知の方法:フィラー材法;低温延伸;抽出法及びβ−微結晶(crystallite)法がある。これらの方法の基本的な相違は、細孔が膜において生成される種々のメカニズムにある。
【0010】
例えば、多孔質ホイルは、非常に大量のフィラー材を添加することによって製造されてもよい。細孔は、延伸の間、フィラー材のポリマーマトリクスとの不相溶性によって形成される。多くの適用において、最大40重量%までの大量のフィラー材は、望ましくない副次的な作用を伴う。例えば、これら多孔質ホイルの機械的強度は、延伸にもかかわらず、大量のフィラー材によって損なわれる。細孔径分布も非常に広く、結果としてこれらの多孔質ホイルは、一般的にリチウムイオン電池における使用には適さない。
【0011】
「抽出法」において、細孔は、原則として、適切な溶媒によるポリマーマトリクスからの成分の放出によって形成される。この点において、広範囲の変形が開発され、これらは、添加剤及び適切な溶媒の性質において異なっている。有機添加剤及び無機添加剤の両方が抽出されてよい。この抽出は、ホイルを製造する最後の処理工程として行われてもよく、その後の延伸工程と組み合わされてもよい。
【0012】
より古い方法は、実際に好結果であることが証明されているが、これは、非常に低い温度でポリマーマトリクスを延伸すること(低温延伸)に基づいている。このために、ホイルは、まず通常の方法で押出され、次に、数時間、テンパー(temper)され、その結晶性成分を増加させる。次の処理工程において、ホイルは、非常に低い温度で長さ方向に延伸され、非常に小さなミクロの裂け目の形態の欠陥を多く生じる。次に、この欠陥のある、あらかじめ延伸されたホイルは、再び同じ方向に、より高温且つより高い倍率で延伸され、これは、ミクロの裂け目を、ネットワーク状構造を形成する細孔にまで拡大する。これらのホイルは、高い多孔度と、それらが延伸された方向、一般には長さ方向において良好な機械的強度を示す。しかしながら、それらの横断方向における機械的強度は不十分であるため、穿孔抵抗は不十分であり、それらは長さ方向の継ぎ合わせに対して非常に影響を受けやすい。全体として、当該方法はコストがかかる。
【0013】
多孔質ホイルを製造するための既知の別の方法は、β−成核剤をポリプロピレンに混合することに基づく。ポリプロピレンは、その溶融した塊が冷却されると、β−成核剤により、高濃度の「β−微結晶」を形成する。その後の長さ方向の延伸の間に、β−相は、ポリプロピレンのアルファ−変形に変換される。これらの異なる結晶形は異なる密度を有するため、この工程では初期に多数の微視的欠陥も形成され、これらは延伸によってさらに拡大されて、細孔を形成する。この方法に従って製造されたホイルは、高い多孔度と、長さ方向及び横断方向における良好な機械的強度を有し、それらは、非常に費用効率が良い。これらのホイルは、以下ではβ−ホイルと称される。
【0014】
抽出法に従って製造された微孔質ホイルは、低融点の成分を添加することによってシャットダウン機能が提供され得ることが既知である。この方法では、まず配向が行われ、次に、配向させたホイルにおいて抽出によって細孔が形成されるため、低融点の成分が細孔の形成を損なうことがない。従って、シャットダウン機能を有する膜は、この方法に従って製造されることが多い。
【0015】
シャットダウン機能のための低融点の成分は、低温延伸法において添加されてもよい。第1の延伸工程は、まずミクロの裂け目を形成するために、いかなる場合も非常に低い温度で行われなければならない。分子鎖は再配向を受けないため、第2の配向工程は、一般には、同じ方向、通常はMDで行われ、従って、比較的低い温度で行われてもよい。これらのホイルの機械的性質は、特に、横断方向において十分ではない。
【0016】
代替として、異なる機能を有する様々な単層ホイルが、まず別々に製造され、次にそれらが合わせられ、即ちラミネートされ、シャットダウン機能を有する膜を形成するある方法が開発された。この場合、シャットダウン機能が膜の多孔度を損ない得るという危険を冒すことなく、各々の層を、その望ましい機能に関して最適化することができる。当然のことながら、これらの方法は非常に費用がかかり、技術的にも複雑である。
【0017】
β−多孔質ホイルから作成された膜の不都合は、これまで、この方法でそれらをラミネートすることにより、相当するシャットダウン機能をそれらに備えさせることができるに過ぎなかったことである。β−微結晶とその後の二軸延伸を使用して満足な多孔度と望まれる機械的強度とをもたらすため、ホイルは、その長さ方向の配向の後、横断方向に延伸されなければならない。既に長さ方向に配向したホイルの横断方向の延伸は、実際には、ポリマー分子の配向の変化を必然的に伴い、未延伸ポリマーの長さ方向における第1の配向に必要とされるよりもかなり大きな、ポリマー鎖の動き易さに依存する。従って、既に長さ方向に配向されたポリプロピレンホイルの横断方向の延伸は、望まれるシャットダウン温度を上回る高温で行われなければならない。
【0018】
従って、本発明に関連する実験の間、長さ方向及び横断方向の延伸によって形成された細孔が、横断方向の延伸の間、シャットダウン層における低融点成分によって、同時に、多孔度が著しく損なわれ得る方法で再び塞がれることが予測される。長さ方向に延伸されたポリプロピレンは、少なくとも145℃の温度で横断方向に延伸され得るに過ぎず、一般的には150〜160℃の温度で横断方向に延伸されるため、横断方向の延伸温度を低下させることのできる程度は、機械的な制約によって制限される。従って、ラミネートを除いて、β−多孔質ホイルがシャットダウン機能を付与され得る先行技術から既知の方法はない。
【0019】
先行技術、例えば、WO2009/132802、WO2009/132803又はWO2009/132801には、ポリプロピレンホモポリマーに加え、ブロックコポリマーを含んだ微孔質ホイルが記載されている。一般には、このブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーよりも低い融点を有している。ブロックコポリマーの溶融範囲は、50℃〜120℃の範囲で始まる。より高い温度が電池内部で発生する場合、シャットダウン層における特別なブロックコポリマーの添加によって、ガス又はイオンの更なる通過を完全に不可能にし、連鎖反応を停止させる方法で、細孔が迅速に閉じられる。ブロックコポリマーは、ポリマー混合物の延伸される性能に有利な影響も与える。特に、十分なブロックコポリマーが存在する場合、横断方向の延伸温度を下げることを可能にする。これらの理由から、微孔質ホイルへのブロックコポリマーの添加は、不可欠な要素である。本発明に関する研究の間、ブロックコポリマーを含ませることなくシャットダウン機能を有する微孔質ホイルを製造することは不可能であると予測されていた。延伸温度、特に、横断方向の延伸温度は、シャットダウン層における細孔が、横断方向の延伸の間に閉じ、多孔度を著しく障害するほど高くなければならないであろうと予測されていた。
【0020】
既知の微孔質ホイルもまた、それらの収縮率に関して改善が必要であり、即ち、それらは、熱負荷の下、より低い収縮率を示すべきである。より高い弾性率とより大きな剛性も望まれる。
【0021】
本発明の目的は、多孔質ホイル又は電池用セパレータを提供することであり、これは、シャットダウン機能、高い多孔度及び優れた機械的強度、良好な剛性及び低い収縮率を有するべきである。さらに、単純で環境適合性のある安価な方法によって膜を製造することが可能であるべきである。
【0022】
本発明の基礎となる目的は、シャットダウン機能を有する二軸配向した単層又は多層のホイルによって解決され、微孔性は、ホイルが延伸される時、β−結晶性ポリプロピレンの変換によって生じ、ポリプロピレンホモポリマーと1重量%未満のプロピレンブロックコポリマーとβ−成核剤とポリエチレンとを含んだ少なくとも1つのシャットダウン層Iを有し、ガーレー数は50〜5000sであり、E−係数(E-modulus)は、長さ方向で>300N/mm、横断方向で>500N/mmであり130℃の温度に対する5分間の曝露の後、ホイルは少なくとも5000sのガーレー数を有し、ガーレー値はこの温度処理前よりも少なくとも1000s高い。
【0023】
驚くべきことに、本発明に従うホイルは、高い多孔度、非常に良好な機械的強度及び望まれるシャットダウン機能を有している。本発明に従うホイルのガーレー数は、一般的には、50〜5000s、好ましくは、100〜2000s、特に好ましくは、120〜800sである。ホイルの通気度は、ホイルが高温に曝された場合、著しく減少する。本発明の目的では、この機能は、「シャットダウン機能」と呼ばれる。原則として、これは、通気度を決定するために記載される方法に従って決定され、それによって、この測定は、130℃での熱負荷の前後にホイルにおいて行われる。例えば、ホイルのガーレー数は、130℃の温度に対する5分間の熱処理の後、少なくとも5000s、好ましくは、少なくとも8000s、特には、少なくとも10,000〜250,000s増加し、ガーレー数は、この熱処理の間、少なくとも1000s、好ましくは、5000〜250,000s、特には、10,000〜200,000s増加する。ガーレー数は、一定量の空気(100cm)が、ホイルの定められた領域を介して拡散する(1インチ)のにかかる時間を(秒で)示す。よって、最大値は、無限の期間であり得る。従って、第2のガーレー数、即ち、熱処理(その温度よりも上でシャットダウン機能が記述される)後のガーレー値は、上限値のない範囲である。理想的には、膜は、熱処理後、完全に不透過性であり、空気の通過を全く許容しない、即ち、ガーレー数は、無限である。本発明に従うe−係数は、長さ方向において、300〜1800N/mm2、好ましくは、400〜1500N/mm2、特には、600〜1200N/mm2、横断方向において、500〜3000N/mm2、好ましくは、800〜2500N/mm2、特には、1000〜2500N/mm2である。
【0024】
電池におけるその独創的な使用において、微孔質ホイルは、短絡の結果を効果的に防ぐことができる。電池の内部において、短絡の結果として高温が発生する場合、セパレータの細孔は、シャットダウン層によって、ガス及びイオンがもはや膜を通過することができず且つ連鎖反応が停止するような方法で、迅速に閉じられる。
【0025】
驚くべきことに、そのシャットダウン層にブロックコポリマーを含まないホイルは、ポリエチレンの添加にも関わらず非常に高い多孔度を示す。これは、2つの理由から驚くべきことである。シャットダウン層のポリマー混合物における、例えば、20重量%のポリエチレン成分は、シャットダウン層の冷却された未延伸のポリマー溶融物におけるβ−微結晶の割合の減少、及び、故に、ホイルにおけるβ−微結晶の含有率の減少も生じる。ポリエチレン添加物を含まないポリプロピレンホイルにおける多孔度は、β−微結晶成分に直接的に依存する。冷却されたポリプロピレンホイルがより少ないβ−微結晶を含むと、ポリプロピレンホイルが延伸された後に形成される多孔度はより低い。しかしながら、驚くべきことに、たとえ未延伸のプレフィルムにおけるβ−微結晶の含有率がより低い場合でも、シャットダウン層においてポリエチレンを含む本発明に従うホイルの多孔性は、同様の組成のポリプロピレンホイルに劣らず、シャットダウン層においてポリエチレンを含ませるのと同じ方法で作成された。シャットダウン層にブロックコポリマーが含まれない場合、横断方向の延伸温度は、シャットダウン層におけるポリエチレンが、横断方向の延伸の間、その低い融点のため細孔の閉鎖を生じ得るよう、高く設定されなければならず、よって、この理由のため、良好な多孔度が制限されることも予測されていた。驚くべきことに、ポリエチレンが多孔度に悪影響を与えないように、ポリプロピレンホイルを延伸するための横断方向の延伸温度を調節することが可能であるが、シャットダウン層にブロックコポリマーを含まないホイルは、良好な機械的強度が得られ、同時にホイルが驚くほど低い収縮率を示す温度まで延伸され得る。一般的には、ホイルの収縮値は、100℃/60分で、長さ及び/又は横断方向において、1%以上6%未満、好ましくは、1.5〜4%の範囲である。シャットダウン効果を誘発するために十分な量のポリエチレンは、多孔度も損なわないことが見出された。従って、驚くべきことに、β−微結晶の二軸延伸、良好な機械的強度、低い収縮率、良好な剛性及びシャットダウン効果によって、高い多孔度を有するホイルを形成することが可能である。
【0026】
本発明に従うホイルは、シャットダウン層Iと、場合によっては、少なくとも1つの更なる多孔質層IIとを含んでいる。
【0027】
ホイルのシャットダウン層は、プロピレンホモポリマー、少なくとも1つのβ−成核剤及びポリエチレン、並びに必要に応じて、効果的な量の通常の添加剤、例えば、安定化剤及び中和剤を含んでいる。
【0028】
シャットダウン層Iは、一般には、シャットダウン層の重量に対して、45〜85重量%、好ましくは、50〜70重量%のプロピレンホモポリマーと、15〜55重量%、好ましくは、30〜50重量%のポリエチレンと、0.001〜5重量%、好ましくは50〜10,000ppmの少なくとも1つのβ−成核剤と含んでいる。5%までのより多くの量の成核剤が使用される場合、プロピレンホモポリマーの割合は、それに応じて減少する。さらに、シャットダウン層は、通常の安定化剤及び中和剤並びに、必要であれば、2重量%未満の通常の少量の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
本発明の目的では、シャットダウン層における使用のために好ましいポリエチレンは、HDPE又はMDPEである。例えば、HDPE及びMDPEなどのこれらのポリエチレンは、一般には、ポリプロピレンとは不相溶であり、ポリプロピレンとの混合物において、それらは別々の相を形成する。別々の相の存在は、DSC測定において、例えば、ポリエチレンの融点の範囲、一般には、115〜140℃の範囲における別々の溶融ピークの存在によって明らかにされる。HDPEは一般には、DIN53 735に従って測定されたMFI(50N/190℃)が0.1〜50g/10分、好ましくは、0.6〜20g/10分であり、DIN 53 728 Part4又はISO1191に従って測定された粘度が100〜450cm/g、好ましくは、120〜280cm/gの範囲にある。結晶化度は、一般には、35〜80%、好ましくは50〜80%である。DIN 53 479法A又はISO 1183に従って23℃で測定された密度は、好ましくは、0.94を超え、0.97g/cmまでの範囲にある。DSCによって測定された融点(溶融曲線の最大、加熱速度10K/分)は、120乃至145℃、好ましくは、125乃至140℃である。適切なMDPEは、一般には、DIN 53 735に従って測定されたMFIが0.1〜50g/10分、好ましくは、0.6〜20g/10分である。DIN 53 479法A又はISO 1183に従って23℃で測定された密度は、0.925g/cmを超える0.94g/cmまでの範囲にある。DSC(溶融曲線の最大、加熱速度10K/min)によって測定された融点は、115〜130℃、好ましくは、120〜125℃である。
【0030】
本発明の目的では、分子量がMw700.0未満、特に、300,000以上500,000未満のポリエチレンが適切である。好ましいHDPE及びMDPEポリマーも、コモノマー成分を含まないか、又は2重量%未満の非常に少量のコモノマー成分を含んでいる。
【0031】
ポリエチレンが狭い溶融範囲を有していることも有利である。これは、ポリエチレンのDSCにおいて、溶融範囲の開始と溶融範囲の終了とが10K以下、好ましくは、3〜8K離れていることを意味する。この文脈において、外挿された開始は、溶融範囲の始まりと考えられ、同様に、溶融範囲の末端は、溶融曲線の外挿された末端と考えられる(加熱速度10K/分)。一般的に、HDPE又はMDPEの溶融範囲は、115〜130℃の温度、好ましくは、120〜125℃の温度で開始する。
【0032】
「融点」、「溶融範囲」及び「溶融範囲の始まり」のパラメータは、DSC測定により決定され、測定方法の説明において記載される通り、DSCプロットから読み取られる。
【0033】
シャットダウン層の適切なプロピレンホモポリマーは、98〜100重量%、好ましくは、99〜100重量%のプロピレン単位を含み、融点(DSC)は、150℃以上、好ましくは、155〜170℃であり、一般的に、メルトフローインデックスは、230℃、2.16kgの力で(DIN 53735)、0.5〜10g/10分、好ましくは2〜8g/10分である。当該層にとって好ましいプロピレンホモポリマーは、15重量%未満、好ましくは、1〜10重量%のn−ヘプタンの可溶性分画を含んだアイソタクチックプロピレンホモポリマーである。高い鎖アイソタクティシティが少なくとも96%、好ましくは、97〜99%(13C−NMR;トライアド法(triad method))であるアイソタクチックプロピレンホモポリマーが有利に使用されてもよい。これらの基本的な材料は、当該分野においてHIPP(高アイソタクチックポリプロピレン)又はHCPP(高結晶性ポリプロピレン)ポリマーとして既知であり、(使用され得る90%以上96%未満の13C−NMRアイソタクティシティプロピレンポリマーと比較して)それらのポリマー鎖の高度な立体規則性、より高い結晶化度及びより高い融点によって区別される。
【0034】
存在していてもよいホイルの多孔質層IIは、1つのプロピレンホモポリマー、少なくとも1つのβ−成核剤及び、場合によっては、プロピレンブロックコポリマー、並びに場合によっては、各々効果的な量の標準的な添加剤、例えば、安定化剤及び中和剤などを含んでいる。
【0035】
多孔質層IIは、それらが、性質、特に、多孔度、機械的強度及びシャットダウン機能を損なわないという条件で、プロピレンホモポリマー及びプロピレンブロックコポリマーに加え、他のポリオレフィンを含んでいてもよい。他のポリオレフィンは、例えば、エチレン含有率が20重量%以下のエチレンとプロピレンとのランダムコポリマー、オレフィン含有率が20重量%以下のプロピレンのC〜C−オレフィンとのランダムコポリマー、エチレン含有率が10重量%以下であり且つブチレン含有率が15重量%以下であるプロピレンとエチレンとブチレンとのターポリマー、又は例えば、LDPE、VLDPE及びLLDPEなどの他のポリエチレンである。
【0036】
多孔質層IIは、一般には、層の重量に対して、50重量%以上100重量%未満、好ましくは、60〜95重量%のプロピレンホモポリマーと、0〜50重量%、好ましくは、5〜40重量%のプロピレンブロックコポリマーと、0.001〜5重量%、好ましくは、50〜10,000ppmの少なくとも1つのβ−成核剤と、必要であれば、上記添加剤、例えば、安定化剤及び中和剤などを含んでいる。
【0037】
更なるポリオレフィンが多孔質層IIにおいて含まれている場合、プロピレンホモポリマー又はブロックコポリマーの割合は、それに応じて減少する。同様に、一般にそれが含まれている場合、更なるポリマーの量は、0重量%以上20重量%未満、好ましくは、0.5〜15重量%、特には、0〜10重量%である。同様に、5重量%までのより多量の成核剤が使用される場合、プロピレンホモポリマー又はプロピレンブロックコポリマーの割合は低減する。さらに、層が、標準的な安定化剤及び中和剤、並びに、必要であれば、2重量%未満の通常の少量の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
一般には、多孔質層は、この層IIの機械的強度を最適化するために、更なるHDPE及び/又はMDPEを含んでいない。しかしながら、他の添加されるポリマーと同様に、これらのHDPE及びMDPEについても、ホイルの特性、特に、多孔度、シャットダウン機能及び機械的強度に影響を与えない少しの量が含まれていてもよい。多孔質層IIにおけるHDPE及びMDPEの量は、5重量%未満であり、特には、0〜1重量%の範囲にある。
【0039】
一般には、ポリプロピレン溶融物の冷却の間にポリプロピレンβ−結晶の形成を促進する既知の添加剤は全て、層IとIIの両方のための成核剤として適切である。前記β−成核剤及びポリプロピレンマトリクスにおけるそれらの作用機構は、関連する技術において既知であり、以下において詳細に記載される。
【0040】
ポリプロピレンの種々の結晶相が既知である。溶融物が冷却される場合、その融点は、おおよそ158〜162℃の範囲にあるため、通常、より多量に形成されるのはα−微結晶のポリプロピレンである。ある温度制御によって冷却した場合、単斜晶系のα−変形体よりもかなり低い融点、148〜150℃で少量のβ−結晶性の相を生じてもよい。添加剤は、ポリプロピレンが冷却された場合、高い割合のβ−変形体をもたらす添加剤、例えば、γ−キナクリドン、ジヒドロキナクリドン又はフタル酸のカルシウム塩が関連分野において既知である。
【0041】
本発明の目的では、プロピレンホモポリマー溶融物(ポリプロピレン分画100%)が冷却される場合、40〜95%、好ましくは、50〜85%(DSC)のβ−分画を好ましく生じる高活性なβ−成核剤が、好ましく使用される。β−分画は、冷却されたプロピレンホモポリマー溶融物について、DSCから決定される。例えば、引用によりここに明確に含まれるDE3610644に記載される通り、カルシウムカルボネート及び有機ジカルボン酸の2成分のβ−成核システムが好ましい。引用によりここに明確に含まれるDE4420989に記載される通り、ジカルボン酸のカルシウム塩、例えば、カルシウムピメレート又はカルシウムスベレートなどが特に有利である。EP−0557721に記載されるジカルボキシアミド、特に、N,N−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドもまた、適切なβ−成核剤である。
【0042】
高い割合のβ−結晶性のポリプロピレンを得るためには、β−成核剤に加え、溶融フィルムが冷却されている間、ある温度範囲及びこれらの温度で滞留時間を維持することが重要である。溶融フィルムは、好ましくは、60〜140℃、特に、80〜130℃で冷却される。β−微結晶の成長もまた、緩やかな冷却により促進され、よって、引取り速度、即ち、溶融フィルムが第1の冷却ローラ上を通過する速度は、選択された温度での必要な滞留時間が十分に長くなるように緩やかであるべきである。引取り速度は、好ましくは、25m/分未満、特には、1〜20m/分である。各々の冷却ローラ温度での滞留時間は、これに対応して、20〜100s、好ましくは、30〜90sである。
【0043】
本発明に従う微孔質ホイルの特に好ましい実施形態は、50〜10,000ppm、好ましくは、50〜5000ppm、特には、50〜2,000ppmのカルシウムピメレート又はカルシウムスベレートを、β−成核剤として各々の層において含んでいる。
【0044】
プロピレンホモポリマー、場合によってはプロピレンブロックコポリマー、β−成核剤及びポリエチレンの独創的なホイル組成物は、第2加熱相の間、DSC測定において第2溶融物における少なくとも3つの特徴的なピークのパターンを示す。これらのピークは、プロピレンホモポリマーのα−結晶質の相、プロピレンのβ−結晶質の相及びポリエチレンに帰属する。従って、DSC測定において、本発明に従うホイルは、115〜145℃の範囲にポリエチレンの1つのピーク、140〜155℃の範囲にβ−結晶質のポリプロピレンの第2のピーク、及び155〜175℃の範囲におけるα−結晶質のポリプロピレンの第3のピークを有する。
【0045】
微孔質の膜ホイルは、単一層又は多層を含んでいる。単層の形態は、シャットダウン層のみから構成される。多層の形態は、シャットダウン層と少なくとも1つの多孔質層IIとから構成される。膜ホイルの厚さ又は単一層形態のためのシャットダウン層の厚さは、10〜100μm、好ましくは、15〜80μmの範囲にある。微孔質ホイルは、電解質による充填を改善するためにコロナ処理、火炎処理又はプラズマ処理に供される。
【0046】
多層の形態において、多孔質層IIは、厚さが9〜60μm、好ましくは、15〜50μmであり、シャットダウン層Iは、厚さが1〜40μm、好ましくは、3〜30μmである。
【0047】
必要な場合には、多層の多孔質ホイルは、多孔質層IIと同様の構成の他の多孔質層を含んでいてもよく、この場合、これらの更なる多孔質層の組成は、多孔質層IIの組成と同一であってもよいが、同一でなければならないわけではない。三層のホイルは、好ましくは、多孔質層IIによって両側が覆われた内側のシャットダウン層Iを有する。
【0048】
単層又は多層の微孔質ホイルの密度は、一般的には、0.1〜0.6g/cm、好ましくは、0.2〜0.5g/cmである。電池においてセパレータとしての使用が意図されるホイルについては、ホイルは、ガーレー数が50〜5000s、好ましくは、100〜2500sである。ホイルのバブルポイントは、350nm以下であり、好ましくは、50〜300nmであるべきであり、平均細孔径は、50〜100nm、好ましくは、60〜80nmの範囲にあるべきである。
【0049】
本発明に従う多孔質ホイルは、好ましくは、当該分野において既知であるフラットフィルム押出法又は共押出(多層ホイルの場合)法に従って製造される。この方法の間、各々の層又は層のプロピレンホモポリマー、場合によってはプロピレンブロックコポリマー及びβ−成核剤の混合物と、シャットダウン層用のポリエチレンとが混合され、押出機において溶融され、必要であれば、フラットダイによって且つβ−微結晶の形成により単層又は多層の溶融フィルムが固化し且つ冷却する引取りローラ上に一緒且つ同時に(共)押出される。冷却温度及び冷却時間は、プレフィルムにおいて可能な最高の割合のβ−結晶性ポリプロピレンを形成することを確実にするために選択される。シャットダウン層におけるポリエチレン分画のため、β−結晶の含有率は、β−成核剤を含んだ純粋なポリプロピレンホイル中よりもわずかに低い。一般には、プレフィルムにおけるβ−微結晶の割合は、30〜80%、好ましくは、40〜70%である。次に、高い割合のβ−結晶性のポリプロピレンを含んだこのプレフィルムは、β-微結晶が、延伸プロセスの間にα−ポリプロピレンに変換され、網目状の多孔質構造が生じるように二軸延伸される。二軸延伸されたホイルは、最終的に、熱で固化され、必要な場合は、プラズマ処理、コロナ処理又は火炎処理に供される。
【0050】
二軸延伸(配向)は、一般には、順次行われ、この場合、好ましくは、まず長さ方向(流れ方向)に、次に、横断方向(流れ方向に対して垂直)に行われる。
【0051】
引取りローラ又はローラは、60〜135℃、好ましくは、100〜130℃の温度に維持され、両側又は全ての層における高い割合のβ−結晶性ポリプロピレンの形成を促進する。
【0052】
長さ方向の延伸の間、温度は、140℃よりも低く、好ましくは、70〜120℃である。長さ方向の延伸率は、2:1〜5:1、好ましくは、3:1〜4.5:1である。横断方向の延伸は、120〜145℃の温度で行われ、横断方向の延伸温度がポリエチレンの融点と著しく異ならないように選択されるべきである。一般には、横断方向の延伸温度は、ポリエチレンの融点から0〜5℃、好ましくは、1〜3℃、特には、2℃それていてもよく、即ち、より高いか又は低いかのいずれかであってよい。横断方向の延伸率は、2:1〜9:1、好ましくは、3:1〜8:1の範囲である。
【0053】
長さ方向の延伸は、最も現実的には、望まれる延伸率に対応する異なる2つのローラを使用して行われ、横断方向の延伸は、適切な幅出機を使用して行われる。
【0054】
ホイルの二軸延伸の後、一般に、熱による固定(熱処理)が行われ、ホイルは、110〜140℃の温度に約0.5〜500s、好ましくは、10〜300s、例えば、ローラ又は熱空気ボックス(air hot box)によって曝される。次に、ホイルが、巻き取り機構を有する通常の方法で巻き取られる。熱による固定が行われる温度は、固定領域を通過するときにホイルが達する温度が、ポリエチレンの融点よりも低いか、又はそれよりも1〜2℃以下高くなるように調節されるべきである。次にホイルは、巻き取り機構を有する通常の方法で巻き取られる。
【0055】
上記の通り、二軸延伸後、ホイルの一方の面が、既知の方法の1つに従ってコロナ処理、プラズマ処理又は火炎処理に供されてもよい。
【0056】
原料及びホイルの特性を決定するために以下の測定方法が使用される。
【0057】
メルトフローインデックス
メルトフローインデックスが、DIN 53 735に従って、ポリプロピレンポリマーについては、230℃、2.16kgの荷重で、ポリエチレンについては、190℃、2.16kgの荷重で測定された。
【0058】
融点及び溶融範囲
それらの異なる結晶範囲又は結晶相のため、例えば、プロピレンポリマーなどの半結晶性の熱可塑性ポリマーは、溶融範囲を有する代わりに固定した融点を持たない。従って、融点及び溶融範囲は、各々のポリマーのDSC曲線からの正確に定められた方法で導かれる値である。DSC測定において、単位時間あたりの熱量は、定められた加熱速度でポリマーに適用され、熱流束が温度に対してプロットされ、即ち、エンタルピーの変化がベースラインからの熱流束の偏差として測定される。ベースラインは、相転移が起こらない曲線の(直線状の)部分であると理解される。ここで、直線関係は、適用された熱と温度との間に存在する。溶融プロセスが生じる範囲において、要求される溶融エネルギーにより増加された熱流束及びDSC曲線は、上昇する傾向がある。微結晶のほとんどが溶融している範囲では、曲線は極大点を通過し、微結晶の全てが溶融した後、ベースラインに降下する。本発明の目的では、融点は、DSC曲線の極大である。本発明の目的では、溶融範囲の始まりは、DSC曲線がベースラインから逸れ、DSC曲線の上昇が生じる(開始)温度である。同様に、溶融範囲の終わりは、DSC曲線が、再びベースラインに降下した温度である。
【0059】
融点、溶融範囲の幅及び始まりを決定するために、DSC曲線が、20〜200℃の範囲で、加熱冷却速度10K/1分で記録される。第1加熱サイクルの後、200〜20℃の範囲で速度10K/1分で冷却が行われ、次に、第2曲線(10K/1分、20〜200℃)が記録され、この加熱曲線が評価される。
【0060】
プレフィルムのβ−含有率
プレフィルムのβ−含有率もまた、DSC測定によって決定され、これは、以下の方法で、プレフィルム上で行われる:プレフィルムはまず220℃に加熱され、DSCにおいて加熱速度10K/分で溶融され、次に、再び冷却される。この第1加熱曲線から、結晶化度Kβ,DSCが、β−及びα−結晶性の相(Hβ+Hα)の溶融エンタルピーの合計に対するβ−結晶性の相(Hβ)の溶融エンタルピーの比として決定される。
【0061】
密度
密度は、DIN 53 479、方法Aに従って決定される。
【0062】
透過度/通気度(ガーレー数)
ホイルの透過度は、ガーレーテスター4110を使用して、ASTM D 726−58に従って測定された。100cmの空気が試料の1インチ(6.452cm)の面積を透過するために必要な時間(秒)が決定される。ホイルに亘る圧力差は、12.4cmの高さの水柱の圧力に相当する。必要とされる時間はガーレー数に相当する。
【0063】
シャットダウン機能
シャットダウン機能は、温度130℃の熱処理の前後で行われるガーレー測定に基づき決定される。ホイルのガーレー数は、上記のようにして測定される。次に、ホイルは、5分間、加熱オーブン中で130℃の温度に曝される。次いで、ガーレー数が、上述のようにして、再度決定される。ホイルが少なくとも5000sのガーレー値を有し、熱処理後に少なくとも1000s増加した場合に、シャットダウン機能が作用する。
【0064】
収縮率
長さ方向及び横断方向の収縮値は、収縮プロセスの前のホイルの各々の直線状長さ(縦L及び横Q)を言及する。長さ方向は、機械方向であり、従って、横断方向は、機械方向に直交する方向として定義される。寸法が10*10cmの試験片が、循環空気オーブンにおいて、温度100℃で60分収縮させられる。次に、試験片の残った直線状長さを再び、長さ方向及び横断方向(L及びQ)について決定される。最初の長さL及びQに対する測定した直線状長さ間の差に100を乗じて収縮率をパーセントで表す。
【数1】

【0065】
この長さ方向及び横断方向の収縮率を決定する方法は、DIN 40634に相当する。
【0066】
本発明は、以下の例を参照して、説明される。
【0067】
例1
押出プロセスにおいて、単層プレフィルムは、フラットダイから、押出温度240〜250℃で押出された。このプレフィルムは、まず、冷却ローラ上で延伸され、冷却される。次に、プレフィルムは、長さ方向及び横断方向に配向され、最後に固定される。ホイルは、以下の組成を有する:
13C−NMRアイソタティシティが97%であり、n−ヘプタン溶解性分画が2.5重量%(100%PPに対して)であり、融点165℃;2.16kgの荷重、230℃のメルトフローインデックスが2.5g/10分(DIN 53 735)の約80重量%の高アイソタクチックプロピレンホモ重合体(PP)と、
密度が0.954(ISO 1183)であり、MFIが190℃、2.16kgの荷重で0.4g/10分(ISO 1133/D)であるか、21.6kgの荷重で27g/10分(ISO 1333/G)であり、融点が130℃(DSC:10℃/minの加熱速度でのピーク)、溶融範囲が125℃で開始する約20重量%のHDPE(高密度ポリエチレン)と、
β−成核剤としての0.04重量%のカルシウムピメレート。
【0068】
フィルムはまた、通常の定量の安定化剤及び中和剤を含んでいた。
【0069】
押出後、溶融したポリマー混合物は、延伸され、第1引取りローラ及び更なるローラトリオ(roller trio)上で固化され、次に、長さ方向に延伸され、横断方向に延伸され、以下の選択された条件下で固定される:
押出:押出温度235℃
引取りローラ:125℃、
引取り速度:4m/分
滞留時間:40s長さ方向の延伸:
延伸ローラ T=90℃
倍率3.0での長さ方向の延伸
横断方向の延伸:加熱領域 T=132℃
延伸領域 T=132℃
倍率5.0での横断方向の延伸
固定: T=130℃
このようにして製造された多孔質ホイルは、厚さが約25μmであり、密度が0.38g/cmであり、平坦な白色の不透明な外観を有する。
【0070】
例2
共押出プロセスにおいて、2層のプレフィルム(多孔質層II及びシャットダウン層I)は、フラットダイから共押出され、各々の層の押出温度は240〜250℃である。このプレフィルムは、まず、冷却ローラ上で延伸され、冷却される。次に、プレフィルムは、長さ方向及び横断方向に配向され、最後に固定される。ホイルは、以下の組成を有していた。
【0071】
シャットダウン層I:
13C−NMRアイソタクティシティが97%であり、n−ヘプタン溶解性分画が2.5重量%(100%のPPに対して)であり、融点が165℃であり;230℃、2.16kgの荷重でのメルトフローインデックスが2.5g/10分(DIN 53 735)の約80重量%の高アイソタクチックプロピレンホモ重合体(PP)と、
密度が0.954(ISO 1183)、MFIが190℃、2.16kgの荷重で0.4g/10分(ISO 1133/D)であるか、190℃、21.6kgの荷重で27g/10分であり(ISO 1333/G)、融点が130℃であり(DSC:10℃/分の加熱速度でのピーク)、溶融範囲が125℃で開始し、133℃で終了する約20重量%のHDPE(高密度ポリエチレン)と、
0.04重量%のβ−成核剤としてのカルシウムピメレート。
【0072】
多孔質層II:
13C−NMRアイソタクティシティが97%であり、n−ヘプタン溶解性分画が2.5重量%(100%PPに対して)であり、融点が165℃であり、メルトフローインデックスが、230℃、2.16kgの荷重で2.5kg/10分(DIN 53 735)である約80重量%の高アイソタクチックプロピレンホモ重合体(PP)と、
ブロックコポリマーに対して5重量%のエチレン成分を含み、MFIが6g/10分(230℃で2.16kg)であり、融点(DSC)が165℃である約20重量%のプロピレンエチレンブロック共重合体と、
β−成核剤としての0.04重量%のカルシウムピメレート。
【0073】
フィルムはまた、両方の層に、標準的な低量の安定化剤及び安定化剤を含んでいた。
【0074】
詳細には、ホイルの製造のために、以下の条件及び温度が選択された:
押出: 押出温度235℃
引取りローラ: 温度125℃、
引取り速度: 4m/分
長さ方向の延伸: 延伸ローラ T=90℃
倍率4.3での長さ方向の延伸
横断方向の延伸:加熱領域 T=129℃
延伸領域 T=129℃
倍率5.0での横断方向の延伸
固定: T=130℃
この方法で製造された多孔質ホイルは、厚さが約25μmであり、そのシャットダウン層の総厚さは12μmであった。ホイルは、密度が0.38g/cmであり、平坦な白色の不透明な外観を有していた。
【0075】
例3
例3
2層のホイルが例2に記載された通り製造された。例2とは対照的に、シャットダウン層においてポリプロピレンホモポリマーの分画は、75重量%に減少され、HDPEの分画は、25重量%に増加された。多孔質層IIの組成及びプロセス条件は変化させなかった。この方法で製造された多孔質ホイルは、厚さが約28μmであり、その各々の層の厚さは、14μmであった。ホイルは、密度が0.42g/cmであり、平坦な白色の不透明な外見を有していた。
【0076】
例4
2層のホイルが例2に記載する通り製造された。例2とは対照的に、シャットダウン層におけるHDPEは、密度が0.954(ISO 1183)のMDPEに置き換えられ、これは、MFIが190℃、2.16kgの荷重で0.4g/10分であるか(ISO 1133/D)、又は190℃、21.6kgの荷重で27g/10分であり(ISO 1333/G)、融点は125℃(DSC:10℃/分の加熱速度でのピーク)である。MDPEの溶融範囲は、120〜127℃である。さらに、横断方向の延伸温度(加熱領域)を128℃と、例2よりも低く設定された。多孔質層IIの残りの組成と、他の全てのプロセス条件は変更しなかった。延伸ホイルは、厚さが30μmであり、その各々の層の厚さは15μmであった。ホイルは、密度が0.42g/cmであり、平坦で白色の不透明な外観を有していた。
【0077】
比較例1
ホイルは、例2に記載される通り製造された。例2とは対照的に、ホイルは、シャットダウン層を含まず、多孔質層IIのみから構成され、それに従ってその厚さを増加させた。従って、ホイルは単層ホイルとして製造された。多孔質層IIの組成及びプロセス条件は変更しなかった。ホイルは、白色の不透明な外観を有しており、厚さが25μmであり、密度が0.38g/cmであった。
【0078】
比較例2
ホイルは、例1に記載された通り製造された。ホイルの組成は変更されなかった。例1とは対照的に、この場合、ホイルを横断方向に、温度135℃で延伸した。従って、多孔質ホイルの厚さは25μmであり、密度は0.38g/cmであり、白色の不透明な外観を有していた。
【0079】
比較例3
ホイルは例1に記載された通り製造された。例1とは対照的に、ホイルは、更に20重量%のポリプロピレンエチレンブロック共重合体を含み、これはブロックコポリマーに対して5重量%のエチレン分画を含み、MFI(230℃及び2.16kg)が6g/10分であり、融点(DSC)が165℃であった。プロピレンホモポリマーの分画は、それに従って80から60重量%に減少された。横断方向の延伸温度も125℃に下げられた。組成物の残りの部分と、他のプロセスパラメータは変更しなかった。この方法で製造された多孔質ホイルは、厚さが約25μmであり、密度が0.38g/cmであり、平坦で、白色の不透明な外観を示した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャットダウン機能を有する単層又は多層の二軸配向した微孔質ホイルであって、その微孔性は、ホイルが延伸された時に、β−結晶性ポリプロピレンの変換によって生じたものであり、プロピレンホモポリマーと1重量%未満のプロピレンブロックコポリマーとβ−成核剤とポリエチレンとを含んだ少なくとも1つのシャットダウン層Iを含み、ガーレー数が50〜5000sであり、E−係数は長さ方向で>300N/mm、横断方向で>500N/mmであり、130℃の温度に対する5分間の曝露後、ガーレー数は少なくとも5000sであり、この温度での処理後、処理前よりも当該ガーレー数が少なくとも1000s高いホイル。
【請求項2】
シャットダウン層Iにおける当該ポリエチレンは、115〜140℃の融点を有することを特徴とする請求項1に記載のホイル。
【請求項3】
シャットダウン層Iにおける当該ポリエチレンの溶融範囲は、10K以下の幅を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のホイル。
【請求項4】
シャットダウン層Iにおける当該ポリエチレンは、HDPE又はMDPEであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項5】
シャットダウン層Iは、シャットダウン層Iの重量に対して15〜55重量%のポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項6】
シャットダウン層Iは、45〜85重量%のプロピレンホモポリマーと、50〜10,000ppmのβ−成核剤とを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項7】
当該プロピレンホモポリマーは、96〜99%の鎖アイソタキシー(13C−NMR)を有する高アイソタクチックポリプロピレンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項8】
当該プロピレンホモポリマーは、90%以上96%未満の鎖アイソタキシー(13C−NMR)を有するアイソタクチックポリプロピレンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項9】
当該成核剤は、ピメリン酸又はスベリン酸のカルシウム塩であるか又はカルボキシアミドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項10】
当該ホイルは、少なくとも1つの更なる多孔質層IIを有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項11】
多孔質層IIは、50〜85重量%のプロピレンホモポリマーと、15〜50重量%のプロピレンブロックコポリマーと、50〜10,000ppmのβ−成核剤とを含むことを特徴とする請求項10に記載のホイル。
【請求項12】
多孔質層IIは、0〜5重量%のHDPE及び/又はMDPEを含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項13】
プロピレンホモポリマーとプロピレンブロックコポリマーとβ−成核剤とを含んだ更なる多孔質層を含むことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項14】
当該ホイルの密度は0.1〜0.6g/cmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項15】
ガーレー数は50〜5000sであり、130℃の温度に5分間曝露された後、ガーレー数は少なくとも8000sであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項16】
厚さが10〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のホイル。
【請求項17】
当該ホイルは、フラットフィルム押出法に従って製造され、引取りローラ温度は、60〜130℃の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至16の1項以上に記載のホイルを製造する方法。
【請求項18】
延伸されていないプレフィルムは、β−微結晶の含有率が30〜80%であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
当該ホイルは、当該ポリエチレンの融点よりも、2℃を超えて高くも低くもない温度で、横断方向に延伸されることを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のホイルの電池又は蓄電池におけるセパレータとしての使用。

【公表番号】特表2012−531009(P2012−531009A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515375(P2012−515375)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003439
【国際公開番号】WO2010/145770
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(504422379)トレオファン・ジャーマニー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (17)
【Fターム(参考)】