説明

シュードモナスの非マルトース産生性エキソアミラーゼ改変体を含む食品添加剤

本発明者らは、PS4改変体ポリペプチドを含む食品添加剤を開示する。この食品添加剤において、そのPS4改変体ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する親ポリペプチドに由来し、そのPS4改変体ポリペプチドは、配列番号1として示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の位置番号付けに関して134位、141位、157位、223位、307位、および334位における置換を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド、およびそのポリペプチドをコードする核酸、および食品を製造する際の非マルトース産生性エキソアミラーゼとしてのそれらの使用に関する。詳細には、上記ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性(特に、グルカン1,4−α−マルトテトラヒドロラーゼ(EC3.2.1.60)活性)を有するポリペプチドに由来する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(要旨)
本発明の第一の局面に従って、本発明者らは、PS4改変体ポリペプチドを含む食品添加剤を提供する。上記PS4改変体ポリペプチドは、非マルトース産生性(maltogenic)エキソアミラーゼ活性を有する親ポリペプチドに由来し、このPS4改変体ポリペプチドは、配列番号1として示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の位置番号付けに関して134位における置換、141位における置換、157位における置換、223位における置換、307位における置換、および334位における置換を含む。
【0003】
好ましくは、上記PS4改変体ポリペプチドは、121位における置換および223位における置換(好ましくはG121Dおよび/もしくはG223A)の一方または両方を含む。上記223位における置換はまた、G223Lを含み得る。より好ましくは、上記PS4改変体ポリペプチドは、33位における置換(好ましくはN33、より好ましくはN33Y)、34位における置換(好ましくはD34、より好ましくはD34N)、178位における置換、および179位における置換のうちの1つ以上を含む。
【0004】
好ましくは、上記親ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ(好ましくはグルカン1,4−α−マルトテトラヒドロラーゼ(EC3.2.1.60))を含む。好ましくは、上記親ポリペプチドは、Pseudomonas種(好ましくはPseudomonas saccharophiliaまたはPseudomonas stutzeri)であるかまたはこれに由来する。好ましい実施形態において、上記親ポリペプチドは、配列番号1または配列番号5として示される配列を有する、Pseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ由来の非マルトース産生性エキソアミラーゼである。非常に好ましい実施形態において、上記親ポリペプチドは、配列番号7または配列番号11として示される配列を有する、Pseudomonas stutzeri由来の非マルトース産生性エキソアミラーゼである。
【0005】
非常に好ましい実施形態において、上記PS4改変体ポリペプチドは、同じ条件下で試験した場合に上記親ポリペプチドと比較して高い熱安定性を有する。好ましくは、その半減期(t1/2)、好ましくは60℃における半減期は、上記親ポリペプチドに対して、15%以上、好ましくは50%以上、最も好ましくは100%以上増加している。
【0006】
あるいは、またはさらに、上記PS4改変体ポリペプチドは、好ましくは、同じ条件下で試験した場合に上記親ポリペプチドと比較して高いエキソ特異性を有する。好ましくは、上記PS4改変体ポリペプチドは、上記親ポリペプチドと比較して、10%以上、好ましくは20%以上、好ましくは50%以上のエキソ特異性を有する。
【0007】
さらなる好ましい実施形態において、上記PS4改変体ポリペプチドは、上記134位における置換がG134Rを含む、ポリペプチドである。上記141位における置換は、好ましくは、A141Pを含む。さらに、上記334位における置換は、好ましくは、S334Pを含む。
【0008】
好ましくは、上記PS4改変体ポリペプチドは、(a)上記33位における置換がN33Yを含むポリペプチド;(b)上記34位における置換がD34Nを含むポリペプチド;(c)上記157位における置換がI157Lを含むポリペプチド;(d)上記178位における置換がL178Fを含むポリペプチド;(e)上記179位における置換がA179Tを含むポリペプチド;(f)上記223位における置換がG223Aを含むポリペプチド;または(g)上記307位における置換がH307Lを含むポリペプチドである。
【0009】
非常に好ましい実施形態において、上記PS4改変体ポリペプチドは、置換G134R、置換A141P、置換I157L、置換G223A、置換H307L、および置換S334Pを、178位におけるフェニルアラニンもしくは179位におけるスレオニンまたはその両方とともに、必要に応じてN33YおよびD34Nのうちの一方または両方とともに含む。
【0010】
上記PS4改変体ポリペプチドはさらに、121位における置換を含み得る。上記PS4改変体ポリペプチドは、配列PSac−D34(配列番号2)または配列PStu−D34(配列番号8)を有し得る。上記PS4改変体ポリペプチドはさらに好ましくは、上記121位における置換がG121Dを含むポリペプチドであり得る。好ましくは、上記PS4改変体ポリペプチドは、配列PSac−D20(配列番号3)または配列PStu−D20(配列番号9)を有し得る。
【0011】
さらなる置換が、可能である。例えば、上記PS4改変体ポリペプチドは、87位における置換をさらに含み得る。上記87位における置換は、好ましくはG87Sを含む。好ましくは、上記PS4改変体ポリペプチドは、配列PSac−D14(配列番号4)または配列PStu−D14(配列番号10)を有する。上記PS4改変体ポリペプチドは、配列PSac−pPD77d33を有し得る。
【0012】
本発明の第二の局面に従って、本発明者らは、食品添加剤としての、本発明の第一の局面に記載されるPS4改変体ポリペプチドの使用を提供する。
【0013】
本発明の第三の局面に従って、本発明者らは、デンプンを処理するためのプロセスを提供する。このプロセスは、上記デンプンを、上記PS4改変体ポリペプチドと接触させる工程;および上記ポリペプチドが上記デンプンから1つ以上の直鎖状生成物を生成するのを許容する工程、を包含する。
【0014】
本発明の第四の局面に従って、本発明者らは、食品を調製することにおける、本発明の第一の局面に記載されるPS4改変体ポリペプチドの使用を提供する。
【0015】
本発明の第五の局面に従って、本発明者らは、食品を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、本発明の第一の局面に記載されるポリペプチドを、食品成分と混合する工程、を包含する。
【0016】
好ましい実施形態において、上記食品は、生地(dough)または生地製品(好ましくは、加工された生地製品)を含む。好ましくは、上記食品は、パン製品(bakery product)である。
【0017】
本発明の第六の局面に従って、本発明者らは、パン製品を製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、(a)デンプン媒体(medium)を提供する工程;(b)上記デンプン媒体に、本発明の第一の局面に記載されるPS4改変体ポリペプチドを添加する工程;および(c)工程(b)の間または工程(b)の後に上記デンプン媒体に熱を適用して、パン製品を製造する工程、を包含する。
【0018】
本発明の第七の局面に従って、本発明者らは、上記のプロセスによって得られる、食品、生地製品、またはパン製品を提供する。
【0019】
本発明の第八の局面に従って、本発明者らは、生地のための改良剤組成物を提供する。この改良剤組成物は、本発明の第一の局面に記載されるPS4改変体ポリペプチドと、少なくとも1種のさらなる生地成分または生地添加剤と、を含む。
【0020】
本発明の第九の局面に従って、本発明者らは、小麦粉と、本発明の第一の局面に記載のPS4改変体ポリペプチドと、を含む、組成物を提供する。
【0021】
本発明の第十の局面に従って、本発明者らは、生地製品における、その生地製品の老化(好ましくは、有害な老化)を遅延または低減するための、本発明の第一の局面に記載のPS4改変体ポリペプチドの使用を提供する。
【0022】
本発明の第十一の局面に従って、本発明者らは、上記のPS4改変体ポリペプチドと、ノバミル、またはマルトース産生性α−アミラーゼ活性を有するその改変体、ホモログ、もしくは変異体との組み合わせを提供する。
【0023】
本発明の第十二の局面に従って、本発明者らは、上記の適用のための、上記ノバミルの組合せの使用を提供する。
【0024】
本発明の第十三の局面に従って、本発明者らは、上記組合せで処理することにより製造される、食品を提供する。
【0025】
本発明の第十四の局面に従って、PS4改変体ポリペプチドを含む食品添加剤が提供される。このPS4改変体ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する親ポリペプチドに由来し、このPS4改変体ポリペプチドは、配列番号1として示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の位置番号付けに関して置換G121D、134位における置換、141位における置換、157位における置換、G223A、307位における置換、および334位における置換を含む。
【0026】
(配列表)
配列番号1は、PS4参照配列を示し、これは、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列に由来する。
【0027】
配列番号2は、PSac−D34配列を示す。これは、11個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号3は、PSac−D20配列を示す。これは、13個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号4は、PSac−D14配列を示す。これは、14個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号5は、Pseudomonas saccharophilaのグルカン1,4−α−マルトヒドロラーゼ前駆体(EC3.2.1.60)(G4−アミラーゼ)(マルトテトラオース形成アミラーゼ)(エキソマルトテトラヒドロラーゼ)(マルトテトラオース形成エキソアミラーゼ)を示す。SWISS−PROT登録番号P22963。
【0031】
配列番号6は、マルトテトラヒドロラーゼ(EC番号=3.2.1.60)をコードするP.saccharophila mta遺伝子を示す。GenBank登録番号X16732。
【0032】
配列番号7は、PS4参照配列を示し、これは、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列に由来する。
【0033】
配列番号8は、PStu−D34配列を示す。これは、9個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号9は、PStu−D20配列を示す。これは、11個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である
配列番号10は、PStu−D14配列を示す。これは、12個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号11は、Pseudomonas stutzeri(Pseudomonas perfectomarina)のグルカン1,4−α−マルトヒドロラーゼ前駆体(EC3.2.1.60)(G4−アミラーゼ)(マルトテトラオース形成アミラーゼ)(エキソマルトテトラヒドロラーゼ)(マルトテトラオース形成エキソアミラーゼ)を示す。SWISS−PROT登録番号P13507。
【0036】
配列番号12は、P.stutzeriのマルトテトラオース形成アミラーゼ(amyP)遺伝子の完全cdsを示す。GenBank登録番号M24516。
【0037】
配列番号13は、PSac−pPD77d33配列を示す。これは、10個の置換(N33Y、D34N、G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L、S334P)と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号14は、PSac−D34(Y33N)配列を示す。これは、10個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0039】
配列番号15は、PSac−D20(Y33N)配列を示す。これは、12個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号16は、PSac−D14(Y33N)配列を示す。これは、13個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0041】
配列番号17は、PStu−D34(Y33N)配列を示す。これは、8個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号18は、PStu−D20(Y33N)配列を示す。これは、10個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号19は、PStu−D14(Y33N)配列を示す。これは、11個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号20は、PSac−pPD77d33(Y33N)配列を示す。これは、9個の置換(D34N、G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L、S334P)と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号21は、PSac−D34(N34D)配列を示す。これは、10個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0046】
配列番号22は、PSac−D20(N34D)配列を示す。これは、12個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号23は、PSac−D14(N34D)配列を示す。これは、13個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号24は、PStu−D34(N34D)配列を示す。これは、8個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0049】
配列番号25は、PStu−D20(N34D)配列を示す。これは、10個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号26は、PStu−D14(N34D)配列を示す。これは、11個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号27は、PSac−pPD77d33(N34D)配列を示す。これは、9個の置換(N33Y、G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L、S334P)と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号28は、PSac−D34(Y33N−N34D)配列を示す。これは、9個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0053】
配列番号29は、PSac−D20(Y33N−N34D)配列を示す。これは、11個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号30は、PSac−D14(Y33N−N34D)配列を示す。これは、12個の置換と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号31は、PStu−D34(Y33N−N34D)配列を示す。これは、7個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号32は、PStu−D20(Y33N−N34D)配列を示す。これは、9個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号33は、PStu−D14(Y33N−N34D)配列を示す。これは、10個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号34は、PSac−pPD77d33(Y33N−N34D)配列を示す。これは、8個の置換(G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L、S334P)と、デンプン結合ドメインの欠失とを含む、Pseudomonas saccharophilaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列である。
【0059】
他の配列もまた、配列表に示される。これらの他の配列ならびに配列番号1〜34(但し、配列番号1、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号11、および配列番号12を除く)の各々は、本明細書中に記載される方法および組成物に従ってPS4改変体ポリペプチドとして使用され得る。これらの配列の各々は、親配列として使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
(発明の詳細な説明)
以下の記載および例において、文脈が他に示さなければ、PS4改変体ポリペプチドの投薬量は、粉末のppm(mg/g)で記載される。例えば、表2に記載されるような「1D34」は、重量/重量に基づいたpSac−D34のppmを表す。好ましくは、酵素の量(quantity)または量(amount)は、Bradford(1976、A rapid and sensitive method for the quantification of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein−dye binding.Anal.Biochem.72:248〜254)に記載されるアッセイを用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準として用いて測定される純粋な酵素タンパク質の等価物として、活性のアッセイに基づいて決定される。
【0061】
本発明の実施は、他に示されない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来技術を用いる。これらの従来技術は、当業者の能力の範囲内である。このような技術は、文献中に説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.FritschおよびT.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,第1巻〜第3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら(1995および定期補遺;Current Protocols in Molecular Biology,第9章,第13章および第16章,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);B.Roe,J.CrabtreeおよびA.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.PolakおよびJames O’D.McGee,1990,In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(編),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,Irl Press;D.M.J.LilleyおよびJ.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Press;Using Antibodies:A Laboratory Manual:Edward Harlow,David Lane,Ed HarlowによるPortable Protocol NO.I(1999,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−544−7);Ed Harlow(編)、David Lane(編)によるAntibodies:A Laboratory Manual(1988,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−314−2),1855,Lars−Inge Larsson「Immunocytochemistry:Theory and Practice」,CRC Press inc.,Baca Raton,Florida,1988,ISBN 0−8493−6078−1,John D.Pound(編);「Immunochemical Protocols,vol 80」、シリーズで;「Methods in Molecular Biology」,Humana Press,Totowa,New Jersey,1998,ISBN 0−89603−493−3,Ramakrishna Seethala,Prabhavathi B.Fernandesにより編集された、Handbook of Drug Screening(2001,New York,NY,Marcel Dekker,ISBN 0−8247−0562−9);ならびにLab Ref:Jane RoskamsおよびLinda Rodgers編集の、A Handbook of Recipes,Reagents,and Other Reference Tools for Use at the Bench,2002,Cold Spring Harbor Laboratory,ISBN 0−87969−630−3、を参照のこと。これらの一般的な教科書の各々は、本明細書中に参考として援用される。
【0062】
(PS4改変体)
本発明者らは、非マルトース産生性エキソアミアラーゼ活性を有するポリペプチドの改変体であるポリペプチドを含有する組成物、ならびにこのような改変体ポリペプチドおよび上記組成物の使用を提供する。この組成物は、別の成分とともにポリペプチド改変体を含有する。特に、本発明者らは、このポリペプチドを含む食品添加剤を提供する。
【0063】
このような改変体ポリペプチドは、この文献中で、「PS4改変体ポリペプチド」と呼ばれる。このような改変体ポリペプチドをコードする核酸は、便宜上、「PS4改変体核酸」と呼ばれる。PS4改変体ポリペプチドおよびPS4改変体核酸は、以下にさらに詳細に記載されている。
【0064】
具体的には、本発明者らは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ配列においてアミノ酸置換を含む配列変さらを有するPS4改変体ポリペプチドを提供する。このアミノ酸置換は、配列番号1に示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の位置番号付けを参照して、134位、141位、157位、223位、307位および334位の任意の一つ以上に存在し得る。33位および34位の一方または両方においてさらなる置換が、存在し得る。178位および179位でのなおさらなる置換でさえもまた、含まれ得る。
【0065】
33位での残基は、好ましくは野生型(すなわち、N)であり;同様に、34位での残基は、好ましくは野生型(すなわち、D)である。
【0066】
121位での置換が存在する場合、121位での置換は、有利には、G121Dを含む。同様に、223位での置換が存在する場合、223位での置換は、有利には、G223Aを含む。あるいは、223位での置換は、G223Lを含み得る。従って、いくつかの実施形態では、本発明者らは、PS4改変体ポリペプチドを含有する食品添加剤を開示し、このPS4改変体ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する親ポリペプチドから得ることができ、このPS4改変体ポリペプチドは、配列番号1に示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の位置番号付けを参照して、以下の位置:G121D、134、141、157、G223A、307、および334に置換を含む。
【0067】
PS4改変体ポリペプチドの例が、配列表中に示され、そしてこれらは、以下に詳細に記載される。
【0068】
このような改変体ポリペプチドは、上記親ポリペプチドの特徴を保持し、そしてさらに好ましくは、追加の有益な特性(例えば、活性もしくは熱安定性の増強、またはpH抵抗性、あるいはこれらの組み合わせ(好ましくは全て))を有する。
【0069】
本明細書中に記載されるPS4置換変異体は、この親酵素が適切である任意の目的のために使用され得る。特に、これらの変異体は、エキソ−マルトテトラヒドロラーゼが使用される任意の適用において使用され得る。非常に好ましい実施形態において、これらは、より高い熱安定性、またはより高いエキソアミラーゼ活性もしくはより高いpH安定性、あるいは任意の組み合わせという付加的な利点を有する。このPS4改変体ポリペプチドおよびPS4改変体核酸の適切な使用の例としては、食品生産(特に、焼成(baking))ならびに食料品の生産が挙げられる;さらなる例は、以下に詳細に記載される。
【0070】
上記「親」配列(すなわち、上記PS4改変体ポリペプチドおよびPS4改変体核酸が基づく配列)は、好ましくは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有するポリペプチドである。用語「親酵素」および「親ポリペプチド」は、上記に従って解釈されるべきであり、PS4改変体ポリペプチドが基づく酵素およびポリペプチドを意味すると見なされるべきである。
【0071】
特に好ましい実施形態において、上記親配列は、非マルトース産生性エキソアミラーゼ酵素であり、好ましくは、細菌の非マルトース産生性エキソアミラーゼ酵素である。非常に好ましい実施形態では、この親配列は、グルカン1,4−α−マルトテトラヒドロラーゼ(EC 3.2.1.60)を含む。好ましくは、この親配列は、Pseudomonas種(例えば、Pseudomonas saccharophiliaまたはPseudomonas stutzeri)由来である。
【0072】
好ましい実施形態では、この親ポリペプチドは、配列番号1に示される配列を有するPseudomonas saccharophilia非マルトース産生性エキソアミラーゼを含むか、またはこれと相同である。配列番号1に示されるPseudomonas saccharophilia非マルトース産生性エキソアミラーゼPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列に関連するタンパク質または核酸、好ましくは、この配列を有するかもしくは機能的相同性を有するタンパク質または核酸は、この文献中で、「PS4ファミリー」のメンバーと呼ばれる。上記PS4改変体ポリペプチドまたはPS4改変体核酸を生成する際に用いるのに適切な「PS4ファミリー」非マルトース産生性エキソアミラーゼ酵素の例は、以下にさらに詳細に開示される。
【0073】
いくつかの好ましい実施形態において、この親ポリペプチドは、配列番号1に示される配列、またはSWISS−PROT登録番号P22963を有する、Pseudomonas saccharophilia非マルトース産生性エキソヌクレアーゼ由来の非マルトース産生性エキソヌクレアーゼを含む。他の好ましい実施形態では、この親ポリペプチドは、配列番号11に示されるような配列を有するPseudomonas stutzeri由来の非マルトース産生性エキソアミラーゼ、またはSWISS−PROT登録番号P13507を有するPseudomonas stutzeri非マルトース産生性エキソアミラーゼを含む。
【0074】
このPS4改変体ポリペプチドおよびPS4改変体核酸は、多くの変異を含むことにより、親配列とは異なる。換言すれば、このPS4改変体ポリペプチドまたはPS4改変体核酸の配列は、多くの位置または残基が親の配列とは異なる。好ましい実施形態では、この変異は、アミノ酸置換、つまり、一アミノ酸残基の別のアミノ酸残基への変さらを含む。従って、このPS4改変体ポリペプチドは、この親配列の一以上の位置にて、アミノ酸残基の性質における多くの変化を含む。
【0075】
産生されたかまたはこの文献により包含されることが企図された、種々のPS4改変体ポリペプチド改変体を記載する際、参照の容易性のために、以下の命名法が採用される:[元のアミノ酸/番号付けシステムに従う位置/置換アミノ酸]。従って、例えば、141位のアラニンのプロリンへの置換は、A141Pと表記される。複数の変異は、スラッシュ記号「/」により区切ることにより表記され得る。例えば、A141P/G223Aは、141位および223位において、アラニンをプロリンと、そしてグリシンをアラニンとそれぞれ置換する変異を表す。
【0076】
本文献において、番号付けにより言及される全ての位置は、以下に示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ基準配列(配列番号1)の番号付けをいう。
【0077】
【化1】

この基準配列は、SWISS−PROT登録番号P22963を有するが、シグナル配列MSHILRAAVLAAVLLPFPALAを有さないPseudomonas saccharophiliaの配列に由来する。
【0078】
本明細書中に記載されるPS4改変体ポリペプチド改変体は、好ましくは、以下の位置:G134、A141、I157、G223、H307、S334、N33およびD34に置換を含む。好ましくは、これらのPS4改変体ポリペプチド改変体は、L178およびA179の一方または両方に、さらなる置換を含み得る。さらに好ましい実施形態では、134位のグリシンは、PS4改変体ポリペプチドにおいて、アルギニンにより置換される。さらに特に好ましい実施形態では、141位のアルギニンは、プロリンにより置換される。さらに、このような特に好ましい実施形態において、334位のセリンは、プロリンにより置換される。
【0079】
従って、好ましい実施形態では、このPS4改変体ポリペプチドは、134位にて置換アルギニンを、141位にて置換プロリンを、そして334位にて置換プロリンを含む(例えば、G134R、A141P、およびS334P)。157位、223位、307位、33位、34位、178位および179位における残基は、多くの残基により置換され得る(例えば、I157VもしくはI157NまたはG223LもしくはG223IもしくはG223SもしくはG223TまたはH307IもしくはH307VまたはD34GもしくはD34AもしくはD34SもしくはD34TまたはA179V)。
【0080】
しかし、このPS4改変体ポリペプチドは、好ましくは、置換I157L、置換L178F、置換A179T、置換G223Aおよび置換H307Lを含む。33位および/または34位における置換が存在する場合、これらは、好ましくは、N33YまたはD34Nである。
【0081】
非常に好ましい実施形態では、このPS4改変体ポリペプチドは、L178FおよびA179Tの一方または両方と一緒に、以下の置換:G134R、A141P、I157L、G223A、H307L、およびS334Pを含む。必要に応じて、置換N33Yおよび置換D34Nもまた、含まれ得る。
【0082】
一つの実施形態では、このPS4改変体は、Pseudomonas saccharophila非マルトース産生性酵素配列に由来する。従って、そして好ましくは、このPS4改変体ポリペプチド改変体は、配列PSac−D34(配列番号2)を含む。
【0083】
1以上の更なる置換は、親配列(特にG121もしくはG87、または両位置)へと導入され得る。このG121置換は、好ましくは、G121Dを含み、そしてG87置換は、好ましくは、G87Sを含む。
【0084】
従って、本発明者らは、Pseudomonas saccharophiliaに基づいたPS4改変体ポリペプチドであって以下の置換:L178FおよびA179Tの一方または両方と一緒に、G134R、A141P、I157L、G121D、G223A、H307L、およびS334Pを含み、また必要に応じて、N33Yおよび/またはD34Nを含むPseudomonas saccharophiliaに基づいたPS4改変体ポリペプチド、ならびに、PS4改変体ポリペプチドであって以下の置換:L178FおよびA179Tの一方または両方と一緒に、G87S、G121D、G134R、A141P、I157L、G223A、H307L、およびS334Pを含み、そして必要に応じて、N33Yおよび/またはD34Nを含むPS4改変体ポリペプチドを開示する。
【0085】
従って、Pseudomonas saccharophila非マルトース産生性酵素配列に基づくPS4改変体は、G121Dを含む配列PSac−D20(配列番号3)を有し得るか、または、さらにG87Sを含む配列PSac−D14(配列番号4)を有し得る。このPS4改変体ポリペプチドは、配列PSac−pPD77d33を有し得る。
【0086】
別の実施形態では、このPS4改変体は、Pseudomonas stutzeri非マルトース産生性酵素配列、好ましくは以下の配列番号7:
【0087】
【化2】

に示される配列に由来する。
【0088】
従って、このPS4改変体ポリペプチドは、配列PStu−D34(配列番号8)を含み得る。本発明者らは、Pseudomonas stutzeri非マルトース産生性酵素配列が元になっていて、かつG121置換および/またはG87置換を含むPS4改変体ポリペプチドをさらに開示する。これらは、L178FおよびA179Tの一方または両方と共に、以下の置換:N33Y(33位での置換が存在する場合)、D34N(34位での置換が存在する場合)、G121D、G134R、A141P、I157L、G223A、H307LおよびS334Pを含み得、ならびに、L178FおよびA179Tの一方または両方と共に、以下の置換:N33Y(33位での置換が存在する場合)、D34N(34位での置換が存在する場合)、G87S、G121D、G134R、A141P、I157L、G223A、H307LおよびS334Pを含むPS4改変体ポリペプチドを含み得る。
【0089】
Pseudomonas stutzeri非マルトース産生性酵素配列に基づいたPS4改変体は、G121Dを含む配列PStu−D20(配列番号9)、またはG87Sをさらに含む配列PStu−D14(配列10)を有し得る。
【0090】
この番号付けシステムは、特定の配列を塩基基準点として使用し得るとしても、関係する全ての相同配列にもまた適用可能である。例えば、この位置番号付けは、他のPseudomonas種からの相同配列、または他の細菌からの相同配列に適用され得る。好ましくは、このような相同配列は、上記の基準配列(配列番号1)と、またはSWISS−PROT登録番号P22963もしくはP13507を有する配列と、好ましくはこれらの全ての配列と、60%以上の相同性(例えば、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の相同性)を有する。タンパク質間の配列相同性は、本明細書中に記載の周知のアライメントプログラムおよびハイブリダイゼーション技術を用いて確かめられ得る。このような相同配列は、この明細書の中で「PS4ファミリー」と呼ばれる。
【0091】
さらに、上記のように、本明細書において使用される番号付けシステムは、基準配列(配列番号1)へ参照をさせる。基準配列(配列番号1)は、SWISS−PROT登録番号P22963を有するが、シグナル配列MSHILRAAVLAAVLLPFPALAを有さないPseudomonas saccharophilia配列に由来する。このシグナル配列は、基準配列のN末端に存在し、そして21アミノ酸残基からなる。従って、このシグナル配列を含む対応する配列、または、N末端もしくはC末端の、他の任意の延長もしくは欠失を含む確かに対応する配列において、変異されるかもしくは置換されるべき特定の残基を同定することは平凡なことである。例えば、SWISS−PROT登録番号P22963を有するPseudomonas saccharophilia非マルトース産生性エキソアミラーゼ配列またはSWISS−PROT登録番号P13507を有するPseudomonas stutzeri非マルトース産生性エキソアミラーゼを有するエキソアミラーゼの配列。
【0092】
このPS4改変体ポリペプチドは、上に示される変異に加えて、1個以上の更なる変異を含み得る。すでに示されている変異に加えて、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個またはそれ以上の変異(好ましくは置換)が存在し得る。一つ以上の他の位置における他の変異(例えば、欠失、挿入、置換、トランスバージョン、転移および転位がまた、包含され得る。さらに、このPS4改変体は、列挙された位置における全ての置換を有する必要はない。実際に、これらは、1個、2個、3個、4個、または5個の置換欠失を有し得る(すなわち、野生型アミノ酸残基は、このような位置にて存在する)。
【0093】
本発明者らはまた、本明細書中に記載される目的のために、このようなポリペプチドを産生する際に使用するためのPS4改変体ポリペプチド配列における変更に対応するかまたはこれをコードする配列を有するPS4核酸を記載する。当業者は、核酸配列とポリペプチド配列との間の関係、特に、遺伝コードとこのコードの縮重を知っており、そして障害なくこのようなPS4核酸を構築し得る。例えば、当業者は、PS4改変体ポリペプチド配列における各アミノ酸の置換に関して、置換アミノ酸をコードする一種以上のコドンが存在し得ることを知っている。従って、特定のアミン酸残基に関するこの遺伝コードの縮重に依存して、PS4改変体ポリペプチド配列に対応する1以上のPS4核酸配列が生成され得ることが明らかである。さらに、このPS4改変体ポリペプチドが1以上の置換(例えば、A141P/G223A)を含む場合、対応するPS4核酸は、それぞれ2つのアミノ酸の変更をコードするコドンの対の組み合わせを包含し得る。
【0094】
従って、例えば、PS4核酸配列は、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有し、かつ、配列番号1に示されるPseudomonoas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の番号付けした位置に関して、L178およびA179の一方または両方と共に、以下の位置:G134、A141、I157、G223、H307、S334、そして必要に応じて、N33およびD34の一方または両方にアミノ酸置換をコードするコドンを含むポリペプチドをコードする親配列に由来し得る。本発明者らはまた、親配列、非マルトース産生性エキソアミラーゼをコードし得る親配列に由来する核酸配列を記載し、この非マルトース産生性エキソアミラーゼをコードし得る親配列に由来する核酸配列は、1個以上の残基にて置換基を含み、その結果、この核酸配列は、特定の位置における以下の変異(配列番号1に示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の番号付けした位置に関して、G134、A141、I157、G223、H307、S334、そして必要に応じて、L178およびA179の一方または両方と一緒に、N33およびD34の一方または両方、の1個以上をコードする。
【0095】
特定のPS4改変体核酸配列と同一ではないがこれらに関連する核酸配列(例えば、PS4改変体核酸配列の改変体、ホモログ、誘導体、もしくは断片、または相補体あるいはこれらをハイブリダイズし得る配列)が、明細書に記載の方法および組成物にとって有用であることが、理解される。文脈が他に示さない限り、用語「PS4改変体核酸」は、上に列挙されたこれらの存在の各々を包含すると解釈されるべきである。
【0096】
アミノ酸配列および核酸配列における変異は、当該分野において公知の多くの技術のいずれかにより作製され得る。特に好ましい実施形態では、この変異は、実施例において例示されているように、適切なプライマーを用いたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の手段によって親配列に導入される。従って、アミノ酸置換(L178およびA179の一方または両方と一緒に、G134、A141、I157、G223、H307、S334、必要に応じてN33および/またはD34を含む)を非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する親ポリペプチド中に(例えば、Pseudomonas saccharophiliaまたはPseudomonas stutzeriエキソアミラーゼ配列中に)記載されたように導入することにより、アミノ酸レベルまたは核酸レベルでポリペプチドの配列を変更することは可能である。本発明者らは、非マルトース産生性エキソアミラーゼの配列が、上記非マルトース産生性エキソアミラーゼをコードする核酸配列を変更することにより変更される方法を記載する。
【0097】
このPS4改変体ポリペプチドおよび核酸は、当該分野において公知の任意の方法により産生され得る。特に、これらは、発現システムから発現され得、この発現システムは、本質的に、インビトロまたはインビボであり得る。特に、本発明者らは、PS4核酸配列を含むプラスミドおよび発現ベクター、好ましくはPS4改変体ポリペプチドを発現し得るものを記載する。このようなPS4核酸、プラスミド、およびベクターを含み、そして好ましくは、これらを用いて形質転換された、細胞および宿主細胞もまた開示され、そしてこれらはまた、本明細書中に包含されることが明らかにされるべきである。
【0098】
好ましい実施形態では、上記PS4改変体ポリペプチド配列は、単離された形態で食品添加剤として使用される。用語「単離された」は、少なくとも実質的に、この配列が本質的に結合し、そして本質的に見出される少なくとも一の他の成分がないことを意味する。一つの局面では、好ましくは、この配列は、精製形態である。用語「精製された」は、この配列が比較的純粋な状態(例えば、少なくとも純度約90%、または少なくとも純度約95%、または少なくとも純度約98%)にあることを意味する。
【0099】
(親酵素)
上記PS4改変体ポリペプチドは、「親酵素」、「親ポリペプチド」または「親配列」として公知の別の配列に由来するか、またはこれの改変体である。
【0100】
本明細書中で用いられる場合、用語「親酵素」は、生じた改変体(すなわち、PS4改変体のポリペプチドまたは核酸)に対して、近い、好ましくは最も近い化学構造を有する酵素を意味する。この親酵素は、前駆体酵素(すなわち、実際に変異を入れられた酵素)であり得るか、またはデノボで調製され得る。この親酵素は、野生型酵素であり得る。
【0101】
本明細書中で用いられる場合、用語「前駆体」とは、この酵素に先立つ酵素を意味し、この先立つ酵素が改変されてこの酵素が生じる。従って、この前駆体は、変異誘発により改変された酵素であり得る。同様に、この前駆体は、野生型酵素、改変体野生型酵素またはすでに変異した酵素であり得る。
【0102】
用語「野生型」は、当業者に理解されている技術用語であり、そして天然に存在して変異体の表現型と対照的である種のメンバーのほとんどに特徴的である表現型を意味する。従って、本文脈では、野生型酵素は、関連する種のほとんどのメンバーにおいて、天然に見出される酵素の一形態である。一般的に、本明細書中に記載される改変体ポリペプチドに対して、関連する野生型酵素は、配列相同性の観点から非常に密接に関連した対応する野生型酵素である。しかし、特定の野生型配列が、本明細書中に記載される通りに改変体PS4ポリペプチドを産生するための基礎として使用される場合、これは、より密接に関連している別の野生型配列の存在に関わらず、アミノ酸配列相同性の観点から、対応する野生型配列である。
【0103】
親酵素は、好ましくは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を示すポリペプチドである。好ましくは、この親酵素は、非マルトース産生性エキソアミラーゼそのものである。例えば、この親酵素は、Pseudomonas saccharophila非マルトース産生性エキソアミラーゼ(例えば、SWISS−PROT登録番号P22963を有するポリペプチド)であり得るか、またはPseudomonas stutzeri非マルトース産生性エキソアミラーゼ(例えば、SWISS−PROT登録番号P13507を有するポリペプチド)であり得る。このPS4ファミリーの他のメンバーは、親酵素として使用され得る(例えば、PS4ファミリーメンバーは、一般的に、これら2つのいずれかの酵素と類似しているか、相同性があるか、または機能的に等価であり、そして標準的な方法(例えば、プローブを用いた適切なライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングまたはゲノム配列分析)により、同定され得る。
【0104】
特に、これらの2種類の酵素のいずれかの機能的等価物および「PS4ファミリー」の他のメンバーはまた、本明細書に記載されるようなPS4改変体ポリペプチドの生成のための開始点または親ポリペプチドとして使用され得る。
【0105】
あるタンパク質の「機能的等価物」とは、そのタンパク質の1つ以上、好ましくは、実質的に全ての機能を有する物をいう。好ましくは、このような機能は、生物学的機能、好ましくは酵素学的機能(例えば、アミラーゼ活性、好ましくは非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性)である。
【0106】
Pseudomonas saccharophila非マルトース産生性エキソアミラーゼ(例えば、SWISS−PROT登録番号P22963を有するポリペプチド)または、Pseudomonas stutzeri非マルトース産生性エキソアミラーゼ(例えば、SWISS−PROT登録番号P13507を有するポリペプチド)である親酵素に関して用語「機能的等価物」とは、機能的等価物が、他の供給源から得られ得ることを意味する。機能的等価物である酵素は、種々のアミノ酸配列を有し得るが、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する。
【0107】
非常に好ましい実施形態において、上記機能的等価物は、上記のPseudomonas saccharophila非マルトース産生性エキソアミラーゼおよびPseudomonas stutzeri非マルトース産生性エキソアミラーゼのいずれか、好ましくは両方に相同な配列を有する。上記機能的等価物は、配列番号1〜12、好ましくは配列番号1もしくは配列番号7または両方として示される配列のいずれかと相同な配列を有し得る。このような配列間の配列相同性は、好ましくは少なくとも60%、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。このような配列相同性は、当該分野で公知の多くのコンピュータプログラム(例えば、BLASTまたはFASTAなど)によって作られ得る。このようなアラインメントを実行するための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A;Devereuxら,1984,Nucleic Acids Research 12:387)。配列比較を達成し得る他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら,1999同書第18章)、FASTA(Atschulら,1990,J.Mol.Biol.,403−410を参照のこと)および比較ツールのGENEWORKSスイートが挙げられるが、これらに限定されない。BLASTおよびFASTAの両方は、オフライン検索およびオンライン検索に利用可能である(Ausubelら,1999同書、7−58〜7−60頁を参照のこと)。しかしながら、GCG Bestfitプログラムを使用することが、好ましい。
【0108】
他の実施形態において、上記機能的等価物は、上記に示される任意の配列に特異的にハイブリダイズし得る。1つの配列が、別の配列にハイブリダイズし得るか否かを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、Sambrookら(前出)およびAusubel,F.M.ら(前出)に記載される。非常に好ましい実施形態において、上記機能的等価物は、ストリンジェントな条件(例えば、65℃および0.1×SSC{1×SSC=0.15M NaCl,0.015Mクエン酸Na pH 7.0})下でハイブリダイズし得る。
【0109】
例えば、Pseudomonas saccharophila非マルトース産生性エキソアミラーゼおよびPseudomonas stutzeri非マルトース産生性エキソアミラーゼに対して相同な配列を有する機能的等価物は、親酵素としての使用に適切である。このような配列は、任意の1つ以上の位置でPseudomonas saccharophila配列と異なり得る。さらに、Pseudomonas種の他の株(例えば、ATCC17686)はまた、親ポリペプチドとして使用され得る。PS4改変体ポリペプチド残基は、上記改変体PS4ポリペプチド配列を生じるように、任意のこれらの親配列中に挿入され得る。
【0110】
親酵素は、アミノ酸レベルまたは核酸レベルで改変されて、本明細書に記載されるPS4改変体配列を生じ得る。従って、本発明者らは、非マルトース産生性エキソアミラーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列中の1つ以上の対応するコドン変更を導入することによって、PS4改変体ポリペプチドの生成を提供する。
【0111】
核酸番号付けは、好ましくは、配列番号6として示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼヌクレオチド配列の位置の番号付けを参照するべきである。あるいは、またはさらには、参照は、GenBank登録番号X16732を有する配列に対して作成され得る。好ましい実施形態において、上記核酸の番号付けは、配列番号6として示されるヌクレオチド配列を参照するべきである。しかしながら、アミノ酸残基の番号付けのように、上記配列の残基の番号付けは、参照の目的のためにのみ使用されるべきである。特に、上記コドン変更は、任意のPS4ファミリー核酸配列中に作成され得ることが認識される。例えば、配列変更は、Pseudomonas saccharophila非マルトース産生性エキソアミラーゼ核酸配列またはPseudomonas stutzeri非マルトース産生性エキソアミラーゼ核酸配列(例えば、X16732,配列番号6またはM24516,配列番号12)に対して作成され得る。
【0112】
親酵素は、「完全な」酵素(すなわち、親酵素が、天然に存在するような(または、変異されたような)その全長の酵素)を含んでもよいし、またはその切断された形態を含んでもよい。従って、このようなものに由来するPS4改変体は、そのように切断されてもよいし、または「全長」であってもよい。上記切断は、N末端またはC末端、好ましくはC末端であり得る。親酵素またはPS4改変体は、1つ以上の部分(例えば、部分配列、シグナル配列、ドメインまたは部分(活性があってもなくても)、など)を欠失し得る。例えば、親酵素またはPS4改変体ポリペプチドは、上記のようなシグナル配列を欠失し得る。あるいは、またはさらには、親酵素またはPS4改変体は、1つ以上の触媒ドメインもしくは結合ドメインを欠失し得る。
【0113】
非常に好ましい実施形態において、上記親酵素またはPS4改変体は、非マルトース産生性エキソアミラーゼ中に存在するドメインのうちの1つ以上(例えば、デンプン結合ドメイン)を欠失し得る。例えば、上記PS4ポリペプチドは、配列番号1として示されるPseudomonas saccharophilia非マルトース産生性エキソアミラーゼの番号付けと関連して、429位までの配列のみを有し得る。これは、PS4改変体である、pSac−d34、pSac−D20およびpSac−D14についての場合であることは、注意されるべきである。
【0114】
(アミラーゼ)
PS4改変体ポリペプチドは、概して、アミラーゼ活性を有する。
【0115】
用語「アミラーゼ」は、その通常の意味(例えば、とりわけ、デンプンの分解を触媒し得る酵素)で使用される。特に、これらは、デンプン中のα−D−(1→4)O−グリコシド結合を切断し得るヒドロラーゼである。
【0116】
アミラーゼは、デンプン分解性酵素であり、ヒドロラーゼとして分類され、これは、デンプン中のα−D−(1→4)O−グリコシド結合を切断する。一般的に、α−アミラーゼ(E.C.3.2.1.1,α−D−(1→4)−グルカングルカノヒドロラーゼ)は、ランダム様式でデンプン分子内のα−D−(1→4)O−グリコシド結合を切断するエンド作用性酵素として定義される。対照的に、エキソ作用性デンプン分解酵素(例えば、(β−アミラーゼ(E.C.3.2.1.2,α−D−(1→4)−グルカンマルトヒドロラーゼ))、およびいくつかの産物特異的アミラーゼ様マルトース産生性α−アミラーゼ(E.C.3.2.1.133)は、基質の非還元末端からデンプンを切断する。β−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.20,α−D−グルコシドグルコヒドロラーゼ)、グルコアミラーゼ(E.C.3.2.1.3,α−D−(1→4)−グルカングルコヒドロラーゼ)、および産物特異的アミラーゼは、デンプンから特異的長さのマルトオリゴ糖を生成し得る。
【0117】
(非マルトース産生性エキソアミラーゼ)
本明細書中に記載されるPS4改変体ポリペプチドは、好ましくは非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を示すポリペプチド(またはこれらの改変体)に由来する。好ましくは、これらの親酵素は、非マルトース産生性エキソアミラーゼ自体である。非常に好ましい実施形態におけるPS4改変体ポリペプチド自体はまた、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を示す。
【0118】
非常に好ましい実施形態において、本明細書中で使用される場合、用語「非マルトース産生性(maltogenic)エキソアミラーゼ酵素」は、この酵素が、デンプンを、本明細書中に記載されるような産物決定手順に従って分析されるような実質的な量のマルトースに最初に分解しないことを意味するように用いられるべきである。
【0119】
非常に好ましい実施形態において、上記非マルトース産生性エキソアミラーゼは、エキソ−マルトテトラヒドロラーゼを含む。エキソ−マルトテトラヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.60)は、より正式には、グルカン1,4−α−マルトテトラヒドロラーゼとして公知である。この酵素は、デンプン様多糖中の1,4−α−D−グルコシド結合を加水分解して、非還元鎖末端から連続的なマルトテトロース残基を除去する。
【0120】
非マルトース産生性エキソアミラーゼおよびその使用は、米国特許第6,667,065号およびWO99/50399に詳細に記載され、これらは、本明細書中に参考として援用される。
【0121】
(非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性についてのアッセイ)
以下の系は、本明細書に記載される方法および組成物に従う使用に適切な非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有するポリペプチドを特徴づけるために使用される。このシステムは、例えば、本明細書に記載されるPS4親ポリペプチドまたは改変体ポリペプチドを特徴づけるために使用され得る。
【0122】
初めの背景情報として、waxyトウモロコシアミロペクチン(Roquette,FranceからWAXILYS 200として入手可能)は、非常に高いアミロペクチン含有量(90%超)を有するデンプンである。20mg/mlのwaxyトウモロコシデンプンは、50mM MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、2mM塩化カルシウム、pH 6.0の緩衝液中で3分間煮沸され、次いで、50℃でインキュベートされ、そして半時間以内に使用される。
【0123】
非マルトース産生性エキソアミラーゼの1単位は、上記のように調製された50mM MES、2mM塩化カルシウム、pH 6.0中4mlの10mg/mlのwaxyトウモロコシデンプンとともに試験管中で50℃にてインキュベートした場合の、1分あたりに1μmolの還元糖と等価な加水分解産物を放出する酵素の量として定義される。還元糖は、標準物質としてマルトースを使用し、そしてBernfeld,Methods Enzymol.,(1954),1,149−158のジニトロサリチル酸法または還元糖を定量するための当該分野で公知の別の方法を使用して測定される。
【0124】
非マルトース産生性エキソアミラーゼの加水分解産物パターンは、上記のように調製した緩衝液中4mlの10mg/mlのwaxyトウモロコシデンプンとともに、試験管中で50℃にて、15分または300分間0.7単位の非マルトース産生性エキソアミラーゼをインキュベートすることによって決定される。この反応は、沸騰している水槽で3分間試験管を浸すことによって停止される。
【0125】
加水分解産物は、溶離剤として酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水を用い、パルス電流検出を用い、そして標準物質としてグルコースからマルトヘプタオースまでの公知の直線マルトオリゴ糖を用いたDionex PA 100カラムを使用したアニオン交換HPLCによって分析され、そして定量される。マルトオクタオースからマルトデカオースについて使用された応答因子は、マルトヘプタオースに見出される応答因子である。
【0126】
好ましくは、上記PS4改変体ポリペプチドは、0.7単位量の上記非マルトース産生性エキソアミラーゼが、50mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸および2mMの塩化カルシウムを含む1mlの緩衝溶液あたり10mgの予め煮沸したwaxyトウモロコシデンプン4mlの水溶液中で50℃の温度、pH 6.0にて15分間インキュベートされる場合に上記酵素が、2〜10個のD−グルコピラノシル単位の1つ以上の直線マルト−オリゴ糖および必要に応じてグルコースからなる加水分解産物を生じるように非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有し;その結果、上記加水分解産物の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%および最も好ましくは少なくとも85重量%は、3〜10個のD−グルコピラノシル単位の直線マルトオリゴ糖、好ましくは4〜8個のD−グルコピラノシル単位からなる直線マルトオリゴ糖で構成される。
【0127】
参照の容易さのための、および本発明の目的のための、上記0.7単位量の非マルトース産生性エキソアミラーゼを、50mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸および2mMの塩化カルシウムを含む1mlの緩衝溶液あたり10mgの予め煮沸したwaxyトウモロコシデンプン4mlの水溶液中で50℃の温度、pH 6.0にて15分間インキュベートする特徴は、「Waxyトウモロコシデンプンインキュベーション試験(Waxy Maize Starch Incubation Test)」と呼ばれ得る。
【0128】
従って、代替的に表現すると、非マルトース産生性エキソアミラーゼである好ましいPS4改変体ポリペプチドは、2〜10個のD−グルコピラノシル単位の1つ以上の直線マルト−オリゴ糖および必要に応じてグルコースからなる加水分解産物を生じるためのwaxyトウモロコシデンプンインキュベーション試験における能力を有すると特徴付けられ;その結果、上記加水分解産物のうちの少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%および最も好ましくは少なくとも85重量%は、3〜10個のD−グルコピラノシル単位の直線マルトオリゴ糖、好ましくは4〜8個のD−グルコピラノシル単位からなる直線マルトオリゴ糖で構成される。
【0129】
waxyトウモロコシデンプンのインキュベーション試験における加水分解生成物は、2〜10個のD−グルコピラノシル単位の1種以上の直鎖状マルト−オリゴ糖、および必要に応じてグルコースを含み得る。waxyトウモロコシデンプンのインキュベーション試験における加水分解生成物はまた、他の加水分解生成物を含み得る。それにも拘らず、3〜10個のD−グルコピラノシル単位の直鎖状マルトオリゴサッカライドの重量%は、2〜10個のD−グルコピラノシル単位の1種以上の直鎖状マルトオリゴサッカライド、および必要に応じてグルコースからなる加水分解生成物の量に基づく。換言すると、3〜10個のD−グルコピラノシル単位の直鎖状マルトオリゴサッカライドの重量%は、2〜10個のD−グルコピラノシル単位の1種以上の直鎖状マルト−オリゴ糖およびグルコース以外の加水分解生成物の量に基づかない。
【0130】
上記加水分解生成物は、任意の適切な手段により分析され得る。例えば、上記加水分解生成物は、Dionex PA 100カラムを使用するアニオン交換HPLCにより、パルス化電流測定検出で、および例えば、標準物質として、グルコースからマルトヘプタオースまでの公知の直鎖状マルトオリゴサッカライドを使用して、分析され得る。
【0131】
参照を簡略化するために、および本発明の目的で、Dionex PA 100カラムを使用するアニオン交換HPLCにより、パルス化電流測定検出で、および例えば、標準物質として、グルコースからマルトヘプタオースまでの公知の直鎖状マルトオリゴサッカライドを使用して加水分解生成物を分析する特性は、「アニオン交換によって分析する」と称され得る。もちろん、このように、他の分析技術、および他の特定のアニオン交換技術も十分である。
【0132】
従って、代替的に発現された、好ましいPS4改変体ポリペプチドは、waxyトウモロコシデンプンのインキュベーション試験において、2〜10個のD−グルコピラノシル単位の1種以上の直鎖状マルトオリゴサッカライド、および必要に応じてグルコースからなる加水分解生成物を生じる能力を有するような、非マルトース産生性エキソアミラーゼを有するものであり(上記加水分解生成物は、アニオン交換によって分析され得る);その結果、上記加水分解生成物の、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、および最も好ましくは少なくとも85重量%は、3〜10個のD−グルコピラノシル単位の直鎖状マルトオリゴサッカライドからなり、好ましくは、4〜8個のD−グルコピラノシル単位の直鎖状マルトオリゴサッカライドからなる。
【0133】
本明細書中で使用される場合、用語「直鎖状マルト−オリゴ糖」は、α−(1→4)結合によって結合した、2〜10単位のα−D−グルコピラノースを意味するような通常の意味で使用される。
【0134】
非常に好ましい実施形態において、本明細書中で記載されるPS4ポリペプチドは、親ポリペプチドと比較された場合、好ましくは同条件下で試験された場合、向上したエキソアミラーゼ活性を有し、好ましくは非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する。特に、非常に好ましい実施形態において、PS4改変体ポリペプチドは、好ましくはwaxyトウモロコシデンプン試験において試験された場合、それらの親と比較して10%以上の、好ましくは20%以上の、好ましくは50%以上の、エキソアミラーゼ活性を有する。
【0135】
上記加水分解生成物は、任意の適切な手段によって分析され得る。例えば、上記加水分解生成物は、Dionex PA 100カラムを使用するアニオン交換HPLCにより、パルス化電流測定検出で、および例えば、標準物質として、グルコースからマルトヘプタオースまでの公知の直鎖状マルトオリゴサッカライドを使用して、分析され得る。
【0136】
本明細書中で使用される場合、用語「直鎖状マルト−オリゴ糖」は、α−(1→4)結合によって結合した、2〜20単位のα−D−グルコピラノースを意味するような通常の意味で使用される。
【0137】
(向上した特性)
本明細書中で記載されるPS4改変体は、好ましくは、それらの親酵素と比較される場合、向上した特性(例えば、向上した熱安定性、向上したpH安定性、または向上したエキソ特異性のうちのいずれか1つ以上)を有する。
【0138】
いずれの特定の理論によっても制約されることを望むことなく、本発明者らは、特定の位置における変異は、そのような変異を含むポリペプチドの特性に対する、個々の効果および累積の効果を有すると考える。従って、例えば、本発明者らは、134位、141位、157位、223位、334位、および必要に応じて178位もしくは179位、またはその両方は、そのような変化を含むPS4ポリペプチドの熱安定性に影響を与えると考える。特に、および好ましくは、上向きの効果または有用な効果は、これらの位置、特に存在する場合、134R、141P、157L、223A、307L、334P、178Fおよび179Tの置換に存在する。
【0139】
他方、本発明者らは、307位および121位は、PS4ポリペプチドのエキソ特異性対して効果(好ましくは上向きの効果)を有すると考える。
【0140】
(熱安定性およびpH安定性)
好ましくは、PS4改変体ポリペプチドは、熱安定性であり;好ましくは、PS4改変体ポリペプチドは、その親酵素よりも高い熱安定性を有する。
【0141】
コムギおよび他の穀物において、アミロペクチン中の外部側鎖は、DP12〜19の範囲である。従って、例えば、記載されたような非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有するPS4改変体ポリペプチドによるアミロペクチン側鎖の酵素的加水分解は、それらの結晶化傾向を顕著に低下し得る。
【0142】
パンを焼く目的で使用される小麦および他の穀物中のデンプンは、アミラーゼによる酵素攻撃に対して一般的に耐性である、デンプン顆粒の形態で存在する。従って、デンプンの改変は、主に、損傷されるデンプンに限定され、そして生地の加工および最初のパン焼成の間、糊化が約60℃で始まるまで、非常にゆっくりと進行する。その結果として、高程度の熱安定性を有するアミラーゼのみが、デンプンをパン焼成の間に効率的に改変し得る。そして一般的に、アミラーゼの効率は、熱安定性が増加するに伴って増加される。これは、酵素がより熱安定であるほど、その酵素はより長時間パン焼成の間に活性であり得るからであり、それによって、より防腐性の効果をその酵素は提供する。
【0143】
従って、本明細書中で記載されるようなPS4改変体ポリペプチドの使用は、食品への加工の任意の段階(例えば、パンを焼成する前後)でデンプンに加えられる場合、劣化を遅延させるか、または妨害し得るか、または減速させ得る。このような使用は、以下にさらに詳細に記載される。
【0144】
本明細書中で使用される場合、用語「熱安定性」は、酵素が高温への曝露後に活性を保持する能力に関する。好ましくは、PS4改変体ポリペプチドは、約55℃〜約80℃以上の温度においてデンプンを分解し得る。適切には、上記酵素は、約95℃までの温度への曝露の後に、その活性を保持する。
【0145】
非マルトース産生性エキソアミラーゼのような酵素の熱安定性は、その半減期によって測定される。従って、本明細書中で記載されるPS4改変体ポリペプチドは、好ましくは55℃〜約95℃以上の高温にて、好ましくは約80℃にて、親酵素に対して、好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%またはそれ以上延長された半減期を有する。
【0146】
本明細書中で使用される場合、半減期(t1/2)は、酵素活性の半分が規定された熱条件下で不活化される時間(分)である。好ましい実施形態において、半減期は、80℃でアッセイされる。好ましくは、サンプルは、1〜10分間、80℃以上で加熱される。次いで、半減期の値は、本明細書中で記載される任意の方法で、残りのアミラーゼ活性を測定することによって計算される。好ましくは、半減期アッセイは、実施例でより詳細に記載されたように実施される。
【0147】
好ましくは、本明細書中で記載されたPS4改変体は、パン焼成の間活性であり、そして約55℃の温度で始まるデンプン顆粒の糊化の間およびその後に、デンプンを加水分解する。非マルトース産生性アミラーゼがより熱安定であるほど、それはより長時間パン焼成の間に活性であり得、従って、より防腐性の効果をその酵素は提供する。しかし、約85℃の温度以上でのパン焼成の間、酵素不活化が起こり得る。これが起こる場合、非マルトース産生性エキソアミラーゼは、徐々に不活化され得、その結果、最終的なパンのパン焼成加工の後に実質的に不活性となる。従って、好ましくは、記載されたような使用に適切な非マルトース産生性エキソアミラーゼは、50℃より上〜98℃より下の最適温度を有する。
【0148】
本明細書中で記載されたPS4改変体の熱安定性は、タンパク質工学を使用することによって向上されてより熱安定になり得、従って、本明細書中で記載された使用により適切である;従って、本発明者らは、タンパク質工学によってより熱安定となるように改変されたPS4改変体の使用を包含する。
【0149】
好ましくは、PS4改変体ポリペプチドは、pH安定である;より好ましくは、PS4改変体ポリペプチドは、その同族の親ポリペプチドよりも高いpH安定性を有する。本明細書中で使用される場合、用語「pH安定」は、酵素が広範囲のpHにわたって活性を保持する能力に関する。好ましくは、PS4改変体ポリペプチドは、約5〜約10.5のpHにおいてデンプンを分解し得る。1つの実施形態において、pH安定性の程度は、特定のpH条件において、酵素の半減期を測定することによってアッセイされ得る、別の実施形態において、pH安定性の程度は、特定のpH条件において、酵素の活性または比活性を測定することによってアッセイされ得る。特定のpH条件は、pH5〜pH10.5の任意のpHであり得る。
【0150】
従って、PS4改変体ポリペプチドは、同一の条件下で親ポリペプチドと比較される場合、(アッセイに依存して)より長い半減期、またはより高い活性を有し得る。PS4改変体ポリペプチドは、同一のpH条件下でそれらの親ポリペプチドと比較される場合、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%またはそれより長い半減期を有し得る。あるいは、またはさらに、それらは、同一のpH条件下でそれらの親ポリペプチドと比較される場合、そのような高い活性を有し得る。
【0151】
(エキソ特異性)
いくつかの非マルトース産生性エキソアミラーゼは、ある程度のエンドアミラーゼ活性を有し得ることが公知である。いくつかの場合、この型の活性は、低下されるかまたは排除されることが必要とされ得る。なぜなら、エンドアミラーゼ活性は、分枝デキストリンの蓄積に起因して、粘着性またはゴム質のパンの中身を生成することによって最終的なパン製品の品質に悪影響を与え得る可能性があるからである。
【0152】
エキソ特異性は、通常、全体的なエンドアミラーゼ活性に対する全体的なアミラーゼ活性の割合を決定することによって、測定され得る。この割合は、本明細書中で、「エキソ特異性指数」と称される。好ましい実施形態において、酵素は、20以上のエキソ特異性指数を有する場合、すなわち、その全体的なアミラーゼ活性(エキソアミラーゼ活性を含む)がそのエンドアミラーゼ活性よりも20倍以上大きい場合、エキソアミラーゼであると考えられる。非常に好ましい実施形態において、エキソアミラーゼのエキソ特異性指数は、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、または100以上である。非常に好ましい実施形態において、エキソ特異性指数は、150以上、200以上、300以上、または400以上である。
【0153】
全体的なアミラーゼ活性およびエンドアミラーゼ活性は、当該分野で公知の任意の手段によって測定され得る。例えば、全体的なアミラーゼ活性は、デンプン基質から遊離した還元末端の合計数をアッセイすることによって測定され得る。あるいは、ベタミル(Betamyl)アッセイの使用は、実施例にさらに詳細に記載され、便宜上、実施例でアッセイされたようなアミラーゼ活性は、表および図において「ベタミル単位」の用語で記載される。
【0154】
エンドアミラーゼ活性は、Phadebas Kit(PharmaciaおよびUpjohn)を使用することによって、アッセイされ得る。これは、青色に標識された架橋デンプン(アゾ色素で標識されている)を利用する;デンプン分子の内部の切断のみが、標識を放出し、他方外部の切断は、標識を放出しない。色素の放出は、分光測光法によって測定され得る。従って、Phadebas Kitにより、エンドアミラーゼ活性を測定し、便宜上、(実施例に記載される)そのようなアッセイの結果は、本明細書中で「Phadebas単位」と称される。
【0155】
従って、非常に好ましい実施形態において、エキソ特異性指数は、ベタミル(Betamyl)単位/Phadebas単位の用語で表される。
【0156】
エキソ特異性はまた、先行技術(例えば、本発明者らの国際特許公開番号WO99/50399)に記載される方法に従って、アッセイされ得る。これは、エキソアミラーゼ活性に対するエンドアミラーゼ活性の比率によって、エキソ特異性を測定する。従って、好ましい局面において、本明細書中に記載されるPS4改変体は、エキソアミラーゼ活性1単位あたり、0.5未満のエンドアミラーゼ単位(EAU)を有する。好ましくは、本発明に従う使用に適切な非マルトース産生性エキソアミラーゼは、エキソアミラーゼ活性1単位あたり、0.05未満のEAUを有し、より好ましくは、エキソアミラーゼ活性1単位あたり、0.01未満のEAUを有する。
【0157】
本明細書中に記載のPS4改変体は、好ましくはエキソ特異性を有し、本エキソ特異性は、例えば、それらがエキソアミラーゼであることと合わせて、上に記載されるようなエキソ特異性指数によって測定される。さらに、PS4改変体は、それらが由来する親の酵素またはポリペプチドと比較された場合、好ましくはより高いエキソ特異性かまたはより上昇したエキソ特異性を有する。従って、例えば、上記PS4改変体ポリペプチドは、それらの親のポリペプチドと比較された場合、好ましくは同一の条件下で10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、またはより高いエキソ特異性指数を有し得る。上記PS4改変体ポリペプチドは、それらの親のポリペプチドと比較した場合、好ましくは同一の条件下で、1.5×以上、2×以上、5×以上、10×以上、50×以上、100×以上のエキソ特異性指数を有し得る。
【0158】
(PS4改変体のポリペプチドおよび核酸の使用)
上記PS4改変体のポリペプチド、核酸、宿主細胞、発現ベクターなどは、アミラーゼが使用され得る任意の適用において、使用され得る。特に、これらは、任意の非マルトース産生性エキソアミラーゼを置換するために使用され得る。これらは、単独でも、あるいは他の公知のアミラーゼまたは非マルトース産生性エキソアミラーゼと組み合わせても、アミラーゼ活性または非マルトース産生性エキソヌクレアーゼ活性を補完するために使用され得る。
【0159】
本明細書中に記載されるPS4改変体配列は、食品産業(例えば、パン製品および飲料製品)における種々の適用において使用され得、これらはまた、例えば薬学的組成物としての他の適用において、または化学工業における適用においてさえも、使用され得る。特に、上記PS4改変体のポリペプチドおよび核酸は、パン焼成(baking)(WO 99/50399において開示される)および小麦粉の標準化(体積の増大または体積の改良)を含む、種々の産業的適用に有用である。これらを使用して、デンプンおよび他の基質からマルトテトラオースを生成し得る。
【0160】
上記PS4改変体ポリペプチドを使用して、パン製品(例えば、パン)の体積を増大し得る。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望まないが、本発明者らは、このことは、エキソアミラーゼがアミロース分子を短縮することの結果として、加熱(例えば、パン焼成)する間に生地の粘度が減少することから生じると考える。このことは、発酵によって生じる二酸化炭素が、ほとんど障害を伴わずにパンの大きさを増大することを可能にする。
【0161】
従って、PS4改変体ポリペプチドを含むかまたはPS4改変体ポリペプチドで処理された食品は、そのように処理されていない食品または親のポリペプチドで処理された食品と比較した場合、体積が増す。つまり、上記食品は、食品の体積あたり、空気体積が大きい。あるいは、またはさらに、PS4改変体ポリペプチドで処理された食品は、体積の比あたりの密度または重量(もしくは質量)が低い。特に好ましい実施形態において、上記PS4改変体ポリペプチドを使用して、パンの体積を増大し得る。体積の増大または拡大は有益である。なぜなら、食品の粘着性またはデンプン質を減少させるからである。軽食は、消費者によって好まれ、消費者の経験は増強される。好ましい実施形態において、PS4改変体ポリペプチドの使用は、上記体積を10%、20%、30%、40%、50%以上増大する。
【0162】
食品の体積を増加させるためのPS4改変体ポリペプチドの使用は、実施例において詳細に記載される。
【0163】
(食品での用途)
本明細書中に記載されるPS4改変体のポリペプチドおよび核酸は、食品として、または食品の調製の際に、使用され得る。特に、これらは食品に(すなわち、食品添加剤として)添加され得る。用語「食品(food)」は、調製食品、および食品の成分(例えば、小麦粉)の両方を含むことが意図される。好ましい局面において、上記食品は、ヒトによる消費のためである。上記食品は、溶液の形態であり得るか、固体であり得、これは、用途および/または適用様式および/または投与様式に依存する。
【0164】
上記PS4改変体のポリペプチドおよび核酸は、食品成分として使用され得る。本明細書中で使用される場合、用語「食品成分」は、機能性食品または食料品に添加されるか、あるいは添加され得る処方物を包含する。用語「食品成分」は、例えば、酸化または乳化に必要とされる多種多様な製品中で低いレベルにおいて使用され得る処方物を包含する。上記食品成分は、溶液の形態であり得るか、固体であり得、これは、用途および/または適用様式および/または投与様式に依存する。
【0165】
本明細書中で開示されるPS4改変体のポリペプチドおよび核酸は、食品サプリメントであり得るか、または食品サプリメントに添加され得る。本明細書中で開示されるPS4改変体のポリペプチドおよび核酸は、機能性食品であり得るか、または機能性食品に添加され得る。本明細書中で使用される場合、用語「機能性食品」は、栄養効果および/または味覚の満足を提供し得るだけでなく、消費者に対してさらなる有益な効果を送達し得る、食品を意味する。機能性食品の法律上の規定はないが、この領域に関心を有する団体の大部分は、機能性食品が、特定の健康効果を有するものとして市販される食品であることに同意する。
【0166】
上記PS4改変体ポリペプチドはまた、食品または食料品を製造する際にも、使用され得る。代表的な食料品としては、乳製品、肉製品、鶏肉製品、魚製品、および生地製品が挙げられる。上記生地製品は、任意の処理された生地製品(フライにした(fried)生地、揚げた(deep fried)生地、あぶった(roasted)生地、焼いた(baked)生地、蒸した(steamed)生地およびゆでた(boiled)生地(例えば、蒸しパンおよびライスケーキ)を含む)であり得る。非常に好ましい実施形態において、上記食品は、パン製品である。
【0167】
好ましくは、上記食料品は、パン製品である。代表的なパン(焼いた)製品は、パン(例えば、パン、ロール、バン、ピザ生地など、ペイストリー、プレッツェル、トルティーヤ、ケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカーなど)が挙げられる。
【0168】
(老化(retrogradation)/老化(staling))
本発明者らは、デンプン媒体(例えば、デンプンゲル)の老化を遅延させ得るPS4改変体タンパク質の使用を記載する。上記PS4改変体ポリペプチドは、特に、デンプンの有害な老化を遅延させ得る。
【0169】
大部分のデンプン顆粒は、2種のポリマー(実質的に直鎖状のアミロースおよび高度に分岐したアミロペクチン)の混合物から構成される。アミロペクチンは、(1−4)結合によって連結されたα−D−グルコピラノシル単位の鎖からなる、非常に大きな分岐した分子であって、ここで上記鎖は、α−D−(1−6)結合によって結合されて分岐を形成する。アミロペクチンは、すべての天然のデンプン中に存在し、もっとも一般的なデンプンの約75%を構成する。アミロースは、α−D−(1−6)分岐をほとんど含まない、(1−4)結合型α−D−グルコピラノシル単位の本質的に直鎖状の鎖である。大部分のデンプンは、約25%のアミロースを含む。
【0170】
水の存在下で加熱されたデンプン顆粒は、ゲル化と呼ばれる秩序−無秩序相転移(order−disorder phase transition)を受け、ここで液体は、膨張した顆粒によって取り込まれる。ゲル化温度は、異なるデンプンについて異なる。新しく焼成されたパンを冷却すると、アミロース画分が、数時間以内に老化して網目構造を生じる。このプロセスは、低い程度の堅さを有しスライス特性が改良された所望のパン構造を生み出す点において有益である。より徐々にアミロペクチンの結晶化が、パン焼成の後の日の間、ゲル化したデンプン顆粒の中で生じる。このプロセスにおいて、アミロペクチンは、デンプン顆粒が包埋されるアミロース網目構造を強化すると考えられる。この強化は、パン粉の堅さを増加させる。この強化は、パンの老化の主な原因の一つである。
【0171】
焼成された製品(baked product)の質は、保管する間に徐々に悪化することが公知である。デンプンの再結晶化(老化とも呼ばれる)の結果として、パン粉の保水力は、感能特性および食事特性と重要に関連して変化する。パン粉は、柔らかさおよび弾力性を失い、堅くかつもろくなる。パン粉の堅さの増大は、パンの老化プロセスの尺度として使用される場合が多い。
【0172】
アミロペクチンの有害な老化の速度は、アミロペクチンの側鎖の長さに依存する。従って、例えば、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有するPS4改変体ポリペプチドによる、アミロペクチン側鎖の酵素的加水分解は、それらの結晶化傾向を著しく減少させ得る。
【0173】
従って、本明細書中に記載のPS4改変体ポリペプチドの使用は、デンプンを食品へと加工する任意の段階においてデンプン中に添加される(例えば、パン焼成の間またはパン焼成の後にパンに添加される)場合、老化を遅延し得るか、または妨げ得るか、遅らせ得る。このような使用は、下記にさらに詳細に記載される。
【0174】
(老化(retrogradation)(老化(staling)を含む)の測定のためのアッセイ)
本明細書中に記載される非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有するPS4改変体ポリペプチドの老化防止効果を評価するために、パン粉の堅さが、Instron 4301 Universal Food Texture Analyzerまたは当該分野で公知の同様の機器によって、パン焼成の1日後、3日後、および7日後に測定され得る。
【0175】
当該分野で伝統的に使用され、そして非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有するPS4改変体ポリペプチドのデンプン老化に対する効果を評価するために使用される別の方法は、DSC(示差走査熱量分析)に基づく。ここで、酵素と一緒にか、または酵素なしで(コントロール)パン焼成されたモデル系生地由来のパンのパン粉またはパン粉における老化したアミロペクチンの融解エンタルピーが、測定される。記載される実施例において使用されるDSC機器は、20℃から95℃まで1分間あたり10℃の温度勾配で運転するMettler−Toledo DSC 820である。サンプルの調製のために、10〜20mgのパン粉が測量され、Mettler−Toledoアルミニウムパンに移され、次いで、密封してシールされる。
【0176】
記載される実施例において使用されるモデル系生地は、標準的な小麦粉と、最適な量の水または緩衝液とを、非マントース産生性PS4改変体エキソアミラーゼを含むか、もしくは含まずに含む。これらは、10gまたは50gのBrabender Farinograph中で、それぞれ6分間または7分間混合される。生地のサンプルは、蓋付きのガラスの試験チューブ(150.8cm)中に配置される。これらの試験チューブは、水浴中で以下のパン焼成プロセスに供される;33℃で30分間のインキュベーションから開始し、続いて、1.1℃/分の勾配で33℃から95℃まで加熱し、そして最後に95℃で5分間のインキュベーションする。続いて、そのチューブは、DSC分析の前に、20℃のサーモスタットに保管される。
【0177】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるPS4改変体は、コントロールと比較して融解エンタルピーが減少している。非常に好ましい実施形態において、上記PS4改変体は、10%以上減少した融解エンタルピーを有する。好ましくは、上記PS4改変体は、コントロールと比較した場合、20%以上、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少した融解エンタルピーを有する。
【0178】
【表1】

(表2)
上記の表2は、7日間の保管の後に異なる用量のPSac−D34で調製されたモデル生地系のDSC値を示す。0.5ppm、1ppm、および2ppm(またはmg/g)の小麦が、試験される。
【0179】
(デンプン生成物の調製)
本発明者らは、食品、特にデンプン生成物の調製におけるPS4改変体ポリペプチドの使用を提供する。この方法は、非マルトース産生性エキソアミラーゼ酵素(例えば、PS4改変体ポリペプチド)をデンプン媒体に添加することによりデンプン生成物を形成する工程を包含する。デンプン媒体が、生地である場合、その生地は、小麦粉、水、非マルトース産生性エキソアミラーゼ(これは、PS4改変体ポリペプチドである)および必要に応じて他の可能な成分および添加剤を混合することにより調製される。
【0180】
用語「デンプン」は、デンプン自体またはその成分、特にアミロペクチンを意味するととられるべきである。用語「デンプン媒体」は、デンプンを含有する任意の適切な培地を意味する。用語「デンプン生成物」は、デンプンを含むか、デンプンに基づくか、デンプンに由来する任意の生成物を意味する。好ましくは、このデンプン生成物は、小麦粉から得たデンプンを含むか、それに基づくか、それに由来する。用語「小麦粉」は、本明細書中で使用される場合、細かくすりつぶした、小麦または他の穀類の食物と同義語である。しかし、好ましくは、この用語は、別の穀類ではなく、小麦自体から得られた小麦粉を意味する。従って、他に表現されない場合、「小麦粉」に対する言及は、本明細書中で使用される場合、好ましくは、小麦粉自体に対する言及ならびに培地に存在する小麦粉(例えば、生地)に対する言及を意味する。
【0181】
好ましい小麦粉は、小麦粉もしくはライ麦粉、または小麦粉とライ麦粉との混合物である。しかし、他の型の穀類(例えば、稲、トウモロコシ、大麦およびアズキモロコシ)に由来する粉末を含む生地もまた、企図される。好ましくは、このデンプン生成物は、パン製品(bakery product)である。より好ましくは、このデンプン生成物は、パン製品(bread product)である。さらにより好ましくは、このデンプン生成物は、焼いたデンプン質のパン製品である。用語「焼いたデンプン質のパン製品」とは、小麦粉、水および発酵剤を、生地を形成する条件下で混合することにより得られる生地に基づいた任意の焼いた製品である。さらなる成分が、当然のことながらこの生地混合物に添加され得る。
【0182】
従って、このデンプン生成物が、焼いたデンプン質のパン製品である場合、そのプロセスは、小麦粉、水および発酵剤を、生地を形成する条件下で任意の適切な順序で混合する工程、さらに、必要に応じてプレミックスの形態で、PS4改変体ポリペプチドを添加する工程を包含する。この発酵剤は、化学的発酵剤(例えば、重炭酸ナトリウム)またはSaccharomyces cerevisiae(パン製造業者の酵母)の任意の株であり得る。
【0183】
PS4改変体非マルトース産生性エキソアミラーゼは、水または生地成分混合物を含む任意の生地成分と一緒に、または任意の添加剤もしくは添加剤混合物と一緒に添加され得る。この生地は、パン産業または小麦粉生地に基づいた製品を製造する他の産業で一般的な任意の従来の生地調製方法により調製され得る。
【0184】
デンプン質のパン製品(例えば、白パン、ふるいにかけたライ麦および小麦粉から製造したパン、ロールパンなど)を焼く工程は代表的に、180℃〜250℃の範囲のオーブン温度で、約15分間〜60分間パン生地を焼く工程により達成される。焼くプロセスの間、急速な温度勾配(200℃→120℃)は、外部生地層に広がり、そこに、焼いた製品の特徴的な堅い皮が形成される。しかし、蒸気発生に起因する熱の消費によって、パンの中身の温度は、焼くプロセスの終了時に、100℃近くにしかならない。
【0185】
従って、本発明者らは、以下を包含するパン製品を製造するためのプロセスを記載する:(a)デンプン媒体を提供する工程;(b)このデンプン媒体に、本明細書中に記載されるPS4改変体ポリペプチドを添加する工程;および(c)パン製品を製造するために、工程(b)の間および後にこのデンプン媒体を加熱する工程。本発明者らはまた、デンプン媒体に、記載されるPS4改変体ポリペプチドを添加する工程を包含するパン製品を製造するためのプロセスを記載する。
【0186】
非マルトース産生性エキソアミラーゼPS4改変体ポリペプチドは、単独の活性成分として酵素を含有するか、または一種以上のさらなる生地成分または生地添加剤との混合物中に酵素を含有する液体調製物として、または乾燥微粉組成物として添加され得る。
【0187】
(改良組成物)
本発明者らは、パン改良組成物および生地改良組成物を含む改良組成物を記載する。これらは、必要に応じて、さらなる成分もしくはさらなる酵素またはその両者を一緒にPS4改変体ポリペプチドに含む。
【0188】
本発明者らはまた、パン焼成におけるパン改良組成物および生地改良組成物の使用を提供する。さらなる局面において、本発明者らは、パン改良組成物または生地改良組成物から得たパン製品または生地を提供する。別の局面において、本発明者らは、パン改良組成物または生地改良組成物の使用から得たパン製品または生地を記載する。
【0189】
(生地調製)
生地は、小麦粉、水、(上記の)PS4改変体ポリペプチドならびに必要に応じて他の成分および添加剤を含有する生地改良組成物を混合することにより調製され得る。
【0190】
この練粉改良組成物は、小麦粉、水または必要に応じて他の成分もしくは添加剤を含む任意の生地成分と一緒に添加され得る。この練粉改良組成物は、小麦粉、水または必要に応じて他の成分および添加剤の前に、添加され得る。この生地改良組成物は、小麦粉または水、または必要に応じて他の成分および添加剤の後に、添加され得る。この生地は、パン産業または小麦粉生地ベースの製品を製造する任意の他の産業で一般的な任意の従来の生地調製方法により調製され得る。
【0191】
この生地改良組成物は、単独の活性成分として、または一種以上の他の生地成分または添加剤との混合物中に上記組成物を含む液体調製物としてまたは乾燥粉末組成物の形態で添加され得る。
【0192】
添加されるPS4改変体ポリペプチド非マルトース産生性エキソアミラーゼの量は、通常、小麦粉1kgあたり50〜100,000単位、好ましくは小麦粉1kgあたり100〜50,000単位の、完成した生地中の存在を生じる量である。好ましくは、その量は、小麦粉1kgあたり200〜20,000単位の範囲である。
【0193】
本発明の文脈において、1単位の非マルトース産生性エキソアミラーゼは、50℃で、後述する50mM MES、2mM 塩化カルシウム、pH6.0中4mlの10mg/mlのwaxyトウモロコシデンプンとともに試験管でインキュベートされる場合の1分間あたり1μmolの還元糖に相当する加水分解産物を放出する酵素の量として定義される。
【0194】
本明細書中で記載される生地は概して、小麦全粒または小麦粉および/または他の型のミール、小麦粉、デンプン(例えば、トウモロコシ粉(corn flour)、トウモロコシデンプン、トウモロコシ粉(maize flour)、米粉、ライ麦ミール、ライ麦粉、オート麦粉、オートミール、大豆粉、サトウモロコシミール、サトウモロコシ粉、ジャガイモミール、ジャガイモ粉またはジャガイモデンプン)を含む。この生地は、新鮮なもの、凍結したものまたは一部焼いたものであり得る。
【0195】
この生地は、発酵した生地または発酵に供されるべき生地であり得る。この生地は、種々の方法(例えば、化学発酵剤(例えば、重炭酸ナトリウム)を添加することにより、または発酵したもの(発酵した生地)を添加することにより)で発酵され得るが、適切な酵母培養物(例えば、Saccharomyces cerevisiae(パン製造業者の酵母)(例えば、S.cerevisiaeの市販される株))を添加することにより生地を発酵することが好ましい。
【0196】
この生地は、脂肪(例えば、顆粒状脂肪またはショートニング)を含み得る。この生地は、乳化剤(例えば、モノグリセリドまたはジグリセリド、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、モノグリセリドの脂肪酸エステル、モノグリセリドの酢酸エステル、ポリオキシエチレンステアレートまたはリソレシチン)をさらに含み得る。
【0197】
本発明者らはまた、小麦粉を、本明細書中に記載される組合せと一緒に含むプレミックスを記載する。このプレミックスは、他の生地改良添加剤および/またはパン改良添加剤(例えば、本明細書中で述べた、酵素を含む任意の添加剤)を含み得る。
【0198】
(さらなる生地添加剤または成分)
焼いた製品の特性をさらに改良し、焼いた製品に特有の品質を与えるために、さらなる生地成分および/または生地添加剤が、生地中に組み込まれ得る。代表的に、このようなさらなる添加された成分は、生地成分(例えば、塩、穀物、脂肪および油、糖またはスイートバー(sweetber)、食餌繊維、タンパク質供給源(例えば、粉乳)、グルテン、大豆または卵)および生地添加剤(例えば、乳化剤、他の酵素、親水コロイド、矯味矯臭剤、酸化剤、ミネラルおよびビタミン))を含み得る。
【0199】
乳化剤は、生地強化剤およびパンの軟化剤として有用である。生地強化剤として、乳化剤は、静止時間に関して許容性および加工の間の衝撃に対する許容性を提供し得る。さらに、生地強化剤は、所定の生地の許容性を発酵時間中、改変物に改良する。ほとんどの生地強化剤はまた、オーブンスプリングを改良し、これは、プルーフした商品から焼いた商品への体積の増加を意味する。最後に、生地増強剤は、レシピ混合物に存在する任意の脂肪を乳化する。
【0200】
適した乳化剤としては、レシチン、ポリオキシエチレンステアレート、食用脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、食用脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酢酸エステル、食用脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸エステル、食用脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル、食用脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、食用脂肪酸のショ糖エステル、ステアロイル−2−ラクチレートナトリウムおよびステアロイル−2−ラクチレートカルシウムが挙げられる。
【0201】
さらなる生地添加剤または成分は、小麦粉、水または任意の他の成分もしくは添加剤、または生地改良組成物を含む任意の生地成分と一緒に添加され得る。さらなる生地添加剤または成分は、小麦粉、水、任意の他の成分もしくは添加剤または生地改良組成物の前に添加され得る。さらなる生地添加剤または成分は、小麦粉、水、任意の他の成分もしくは添加剤または生地改良組成物の後に添加され得る。
【0202】
さらなる生地添加剤または成分は、好都合なことに、液体調製物であり得る。しかし、さらなる生地添加剤または成分は、好都合なことに、乾燥組成物の形態であり得る。
【0203】
好ましくは、さらなる生地添加剤または成分は、生地の小麦粉成分の少なくとも1重量%である。より好ましくは、さらなる生地添加剤または成分は、少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、好ましくは少なくとも4%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも6%である。添加剤が脂肪である場合、代表的に、脂肪は、1〜5%、代表的に1〜3%、より代表的には、約2%の量で存在し得る。
【0204】
(さらなる酵素)
PS4改変体ポリペプチドに加えて、一種以上のさらなる酵素が使用され得、例えば、食品、生地調製物、食品原料またはデンプン組成物に添加され得る。
【0205】
生地に添加され得るさらなる酵素としては、酸化還元酵素、ヒドロラーゼ(例えば、リパーゼ、エステラーゼ)およびグリコシダーゼ様α−アミラーゼ、プルラナーゼ、ならびにキシラナーゼが挙げられる。酸化還元酵素(例えば、グルコース酸化酵素およびヘキソース酸化酵素)は、生地強化および焼いた製品の体積の制御のために使用され得、キシラナーゼおよび他のヘミセルラーゼは、生地取り扱い特性、パンの柔らかさおよびパンの体積を改良するために添加され得る。リパーゼは、生地の強化剤およびパンの軟化剤として有用であり、α−アミラーゼおよび他のデンプン分解酵素は、パンの体積を制御するためおよびパンの固さを減少するために生地に組み入れられ得る。
【0206】
使用され得るさらなる酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、デンプン分解酵素、プロテアーゼ、リポキシゲナーゼからなる群より選択され得る。
【0207】
有用な酸化還元酵素の例としては、マルトース酸化酵素、グルコース酸化酵素(EC 1.1.3.4)、炭水化物酸化酵素、グリセロール酸化酵素、ピラノース酸化酵素、ガラクトース酸化酵素(EC1.1.3.10)およびヘキソース酸化酵素(EC1.1.3.5)が挙げられる。
【0208】
デンプン分解酵素のうち、アミラーゼは、生地改良添加剤として特に有用である。α−アミラーゼは、デンプンをデキストリンに分解し、これはさらに、β−アミラーゼによってマルトースに分解される。生地組成物に添加され得る他の有用なデンプン分解酵素としては、グルコアミラーゼおよびプルラナーゼが挙げられる。
【0209】
好ましくは、さらなる酵素は、少なくともキシラナーゼおよび/または少なくともアミラーゼである。用語「キシラナーゼ」とは、本明細書中で使用される場合、キシロース(xylosidic)連結を加水分解するキシラナーゼ(EC 3.2.1.32)をいう。
【0210】
用語「アミラーゼ」とは、本明細書中で使用される場合、α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、β−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)およびγ−アミラーゼ(EC 3.2.1.3)のようなアミラーゼをいう。
【0211】
さらなる酵素は、小麦粉、水もしくは任意の他の成分または添加剤、あるいは生地改良組成物を含む任意の生地成分と一緒に添加され得る。さらなる酵素は、小麦粉、水および必要に応じて他の成分および添加剤または生地改良組成物の前に添加され得る。さらなる酵素は、小麦粉、水および必要に応じて他の成分および添加剤または生地改良組成物の後に添加され得る。さらなる酵素は、便利には、液体調製物であり得る。しかし、この組成物は、便利には、乾燥組成物の形態であり得る。
【0212】
生地改良組成物のいくつかの酵素は、小麦粉生地のレオロジー特性および/または処理可能特性ならびに/あるいはこの酵素により生地から作製された生成物の品質の改良に対する効果が、相加的であるだけでなく、この効果が相乗的である程度まで、生地条件下で、互いと相互作用し得る。
【0213】
生地から作製される生成物(最終生成物)の改良に関連して、この組み合わせは、パン粉構造(crumb structore)に関して実質的な相乗効果を生じることが見出され得る。また、特定容量の焼成された生成物に関して、相乗的効果が見出され得る。
【0214】
さらなる酵素は、カルボン酸エステル結合を加水分解してカルボキシレートを放出し得るリパーゼ(EC 3.1.1)であり得る。リパーゼの例としては、トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)、ガラクトリパーゼ(EC 3.1.1.26)、ホスホリパーゼ A1(EC 3.1.1.32)、ホスホリパーゼ A2(EC 3.1.1.4)およびリポタンパク質リパーゼA2(EC 3.1.1.34)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
(アミラーゼの組み合わせ)
本発明者らは、PS4改変体ポリペプチドとアミラーゼ(特に、マルトース産生性アミラーゼ)との特定の組み合わせを開示する。マルトース産生性α−アミラーゼ(グルカン 1,4−a−マルトヒドロラーゼ、E.C.3.2.1.133)は、アミロースおよびアミロペクチンをマルトースに、α−構成で加水分解することが可能である。
【0216】
Bacillus(EP 120 693)からのマルトース産生性α−アミラーゼは、商品名ノバミル(Novamyl)(Novo Nordisk A/S、Denmark)で市販され、デンプンの劣化を減少させるその能力に起因して、老化防止(anti−staling)剤としてパン焼成工業において幅広く使用されている。ノバミル(Novamyl)は、国際特許公報WO91/04669に詳細に記載される。マルトース産生性α−アミラーゼであるノバミル(Novamyl)は、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)といくつかの特性を共有し、配列相同性(Henrissat B,Bairoch A;Biochem.J.,316,695−696(1996))およびトランスグリコシル化生成物の形成(Christophersen,C.,ら,1997,Starch,50巻、No.1,39−45)を含む。
【0217】
非常に好ましい実施形態において、本発明者らは、ノバミル(Novamyl)または任意のその改変体と一緒にPS4改変体ポリペプチドを含む組み合わせを開示する。このような組み合わせは、ベーキングのような食品生産に有用である。ノバミル(Novamyl)は、特に、ノバミル(Novamyl) 1500 MGを含む。
【0218】
ノバミル(Novamyl)およびその使用を記載する他の文献としては、Christophersen,C.,Pedersen,S.,and Christensen,T.,(1993)Method for production of maltose an a limit dextrin,the limit dextrin,and use of the limit dextrin.Denmark、ならびにWO 95/l0627が挙げられる。これはさらに、米国特許第4,598,048号および米国特許第4,604,355号に記載される。これらの文献のそれぞれは、本明細書によって参考として援用され、そこに記載されるノバミル(Novamyl)ポリペプチドのいずれかが、本明細書中に記載される任意のPS4改変体ポリペプチドと組み合わされて使用され得る。
【0219】
ノバミル(Novamyl)の改変体、ホモログ、および変異体は、αアミラーゼ活性を保持する組み合わせのために使用され得る。例えば、米国特許第6,162,628号(この開示全体が、本明細書中で参考として援用される)に開示される任意のノバミル(Novamyl)改変体は、本明細書中に記載されるPS4改変体ポリペプチドとともに使用され得る。特に、その文献に記載される任意のポリペプチド、特に、Q13、I16、D17、N26、N28、P29、A30、S32、Y33、G34、L35、K40、M45、P73、V74、D76、N77、D79、N86、R95、N99、I100、H103、Q119、Nl20、N131、S141、T142、A148、N152、A163、H169、Nl71、G172、I174、N176、N187、F188、A192、Q201、N203、H220、N234、G236、Q247、K249、D261、N266、L268、R272、N275、N276、V279、N280、V281、D285、N287、F297、Q299、N305、K316、N320、L321、N327、A341、N342、A348、Q365、N371、N375、M378、G397、A381、F389、N401、A403、K425、N436、S442、N454、N468、N474、S479、A483、A486、V487、S493、T494、S495、A496、S497、A498、Q500、N507、I510、N513、K520、Q526、A555、A564、S573、N575、Q581、S583、F586、K589、N595、G618、N621、Q624、A629、F636、K645、N664および/またはT681に対応する任意の1つ以上の位置での、米国特許第6,162,628号の配列番号1の改変体が使用され得る。
【0220】
(アミノ酸配列)
本発明は、PS4改変体核酸を利用し、そしてこのようなPS4改変体核酸のアミノ酸配列は、本明細書中に記載される方法および組成物によって包含される。
【0221】
本明細書中で使用される場合、「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」および/または用語「タンパク質」と同義語である。いくつかの場合において、用語「アミノ酸配列」は、用語「ペプチド」と同義語である。いくつかの場合において、用語「アミノ酸配列」は、用語「酵素」と同義語である。
【0222】
アミノ酸配列は、適切な供給源から調製/単離され得るか、または合成的に作製され得るか、または組換えDNA技術の使用によって調製され得る。
【0223】
本明細書中に記載されるPS4改変体酵素は、他の酵素とともに使用され得る。従って、本発明者らは、酵素の組み合わせをさらに開示し、ここで、この組み合わせは、本明細書中に記載されるPS4改変体ペプチド酵素および別の酵素を含み、この別の酵素自体が、別のPS4改変体ポリペプチド酵素であり得る。
【0224】
(PS4改変体ヌクレオチド配列)
上記のように、本発明者らは、記載される特定の特性を有するPS4改変体酵素をコードするヌクレオチド配列を開示する。
【0225】
用語「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」は、本明細書中で使用される場合、オリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列、ならびにその改変体、ホモログ、フラグメント、および誘導体(例えば、その一部)をいう。ヌクレオチド配列は、ゲノム起源、合成起源または組換え起源であり得、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかを表す二本鎖または一本鎖であり得る。
【0226】
用語「ヌクレオチド配列」は、本明細書で使用される場合、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、およびRNAを含む。好ましくは、この用語は、DNA配列、より好ましくは、PS4改変体ポリペプチドをコードするcDNA配列を意味する。
【0227】
代表的には、PS4改変体ヌクレオチドは、組換えDNA技術を使用して調製される(すなわち、組換えDNA)。しかし、代替の実施形態において、ヌクレオチド配列は、当該分野で周知の化学方法を使用して、全体的にまたは一部、合成され得る(Caruthers MHら、(1980)Nuc Acids Res Symp Ser 215−23およびHorn Tら、(1980)Nuc Acids Res Symp Ser 225−232を参照のこと)。
【0228】
(核酸配列の調製)
本明細書中に規定される特定の特性を有する酵素(例えば、PS4改変体ポリペプチド)または改変に適切な酵素(例えば、親酵素)のいずれかをコードするヌクレオチド配列は、この酵素を産生する任意の細胞または生物から同定および/または単離および/または精製され得る。ヌクレオチド配列の同定および/または単離および/または精製のための種々の方法が当該分野において周知である。例として、一旦適切な配列が同定および/または単離および/または精製されると、1つより多くの配列を調製するためのPCR増幅技術が、使用され得る。
【0229】
さらなる例として、ゲノムDNAライブラリーおよび/またはcDNAライブラリーは、酵素を産生する生物から、染色体DNAまたはメッセンジャーRNAを使用して構築され得る。この酵素のアミノ酸配列またはこの酵素のアミノ酸配列の一部が公知である場合、標識されたオリゴヌクレオチドプローブが合成され得、その生物から調製されたゲノムライブラリーから酵素をコードするクローンを同定するために使用され得る。あるいは、別の公知の酵素遺伝子に相同な配列を含む標識化オリゴヌクレオチドプローブが、酵素コードクローンを同定するため使用され得る。後者の場合、低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件が使用される。
【0230】
あるいは、酵素をコードするクローンは、ゲノムDNAのフラグメントを、プラスミドのような発現ベクター内に挿入し、酵素ネガティブな細菌を、得られるゲノムDNAライブラリーで形質転換し、次いで、形質転換された細菌を、酵素の基質(すなわち、マルトース)を含む寒天プレート上にプレートし、それによって、酵素を発現するクローンが同定され得ることによって、同定され得る。
【0231】
なおさらなる代替法において、上記酵素をコードするヌクレオチド配列は、確立された標準的方法(例えば、Beucage S.L.ら、(1981)Tetrahedron Letters 22、p1859〜1869によって記載されるホスホロアミダイト法、またはMatthesら、(1984)EMBO J.3、p801−805によって記載される方法)によって合成的に調製され得る。ホスホロアミダイト法において、オリゴヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成機において合成され、精製され、アニールされ、連結され、そして適切なベクター中にクローニングされる。
【0232】
ヌクレオチド配列は、標準的な技術に従って、合成起源、ゲノム起源またはcDNA起源のフラグメントを適切に連結することによって調製される、混合ゲノムおよび合成起源、混合合成およびcDNA起源、または混合ゲノムおよびcDNA起源であり得る。各連結されたフラグメントは、ヌクレオチド配列全体の種々の部分に対応する。DNA配列はまた、例えば、米国特許第4,683,202号、またはSaiki RKら、(Science(1988)239,pp487−491)に記載されるように、特異的プライマーを使用した、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって調製され得る。
【0233】
(改変体/ホモログ/誘導体)
本発明者らは、酵素の任意のアミノ酸配列またはこのような酵素をコードする任意のヌクレオチド配列の改変体、ホモログおよび誘導体(例えば、PS4改変体ポリペプチドもしくはPS4改変体核酸)の使用をさらに記載する。内容が他を示さない限り、用語「PS4改変体核酸」は、以下に記載される核酸の実態の各々を含むようにとられるべきであり、そして用語「PS4改変体ポリペプチド」は、同様に、以下に記載されるポリペプチドまたはアミノ酸の実態の各々を含むようにとられるべきである。
【0234】
ここで、用語「ホモログ」は、目的のアミノ酸配列および目的のヌクレオチド配列と特定の相同性を有する実態を意味する。ここで、用語「相同性」は、「同一性」と等価であり得る。
【0235】
本文脈において、相同配列は、目的の配列に対して、少なくとも75%、80%、85%、または90%同一であり得、好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であり得るアミノ酸配列を含むようにとられる。
【0236】
好ましくは、従って、本明細書中に記載される方法および組成物における使用のためのPS4改変体ポリペプチドは、配列表に記載される配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%相同なまたは同一の配列を有するポリペプチドを含む。
【0237】
代表的に、ホモログは、対象のアミノ酸配列と同じ活性部位などを含む。相同性はまた、類似性(すなわち、類似の化学的特性/化学的機能を有するアミノ酸残基)の点でも考慮され得るが、本明細書の文脈においては、配列同一性の点で相同性を表現することが好ましい。
【0238】
本明細書の文脈において、ホモログ配列は、PS4改変体ポリペプチド酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、PS4改変体核酸)に対して、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、もしくは少なくとも90%同一であり得る(好ましくは少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、もしくは少なくとも99%同一であり得る)ヌクレオチド配列を包含すると解釈される。代表的に、上記ホモログは、活性部位などについてコードする、対象配列と同じ配列を包含する。相同性はまた、類似性(すなわち、類似の化学的特性/化学的機能を有するアミノ酸残基)の点でも考慮され得るが、本明細書の文脈においては、配列同一性の点で相同性を表現することが好ましい。
【0239】
相同性比較は、眼で見ることによって行われ得るか、より通常には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて行われ得る。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列の間での相同性%を計算し得る。
【0240】
相同性%は、連続配列上で計算され得る。すなわち、1つの配列は、他の配列にアラインメントされ、1つの配列中の各アミノ酸は、他の配列の対応するアミノ酸と、一度に1残基、直接比較される。これは、「ギャップなし」アラインメントと呼ばれる。代表的に、このようなギャップなしアラインメントは、比較的少数の残基上でのみ行われる。
【0241】
これは、非常に簡単かつ一貫性のある方法であるが、これは、例えば、全体的アラインメントが行われる場合、他の同一な配列の対において、1つの挿入もしくは欠失が、その後のアミノ酸残基をアラインメントから締め出し、相同性%における大幅な低下を生じる可能性があることを考慮に入れていない。結果的に、ほとんどの配列比較法は、全体的相同性スコアに過度に不利益を科すことなく、可能性のある挿入および欠失を考慮に入れた、最適なアラインメントを作製するように設計されている。これは、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して、局所的相同性を最大化するようにすることによって達成される。
【0242】
しかし、これらのより複雑な方法は、アラインメントに生じた各ギャップに「ギャップペナルティー」を割当てる。これによって、同じ数の同一なアミノ酸について、可能な限り少ないギャップを有する配列アラインメント(2つの比較される配列間でのより高い関連性を反映する)は、多くのギャップを有するアラインメントより高いスコアを達成する。「アフィン(Affine)ギャップコスト」が、代表的に使用される。これは、ギャップの存在に対して相対的に高いコストを負わせ、そしてそのギャップ中の後に続く残基の各々に対してより低いペナルティーを負わせる。これは、最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、当然、より少ないギャップを有する最適化されたアラインメントを作製する。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティーを修正することを許容する。しかし、このようなソフトウェアが配列比較に対して使用される場合、デフォルト値が使用されることが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列に対するデフォルトのギャップペナルティーは、1つのギャップに対して−12であり、各伸長に対して−4である。
【0243】
最大相同性%の計算は、したがって、最初に、ギャップペナルティーを考慮に入れた最適なアラインメントを作製することを必要とする。このようなアラインメントを実行するために適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(Devereuxら 1984 Nuc.Acids Research 12 p387)である。配列比較を実行し得る他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら,1999 Short Protocols in Molecular Biology,第4版−第18章を参照のこと)、FASTA(Altschulら,1990 J.Mol.Biol.403−410)、およびGENEWORKSの比較ツール一式が挙げられるが、これらに限定されない。BLASTおよびFASTAの両方は、オフライン検索およびオンライン検索で利用可能である(Ausubelら,1999,Short Protocols in Molecular Biology,7−58〜7−60頁を参照のこと)。
【0244】
しかし、いくつかの用途については、上記GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新しいツールもまた、タンパク質配列およびヌクレオチド配列を比較するために利用可能である(FEMS Microbiol Lett 1999 174(2):247−50;FEMS Microbiol Lett 1999 177(1):187−8、およびtatiana@ncbi.nlm.nih.govを参照のこと)。
【0245】
最終的な相同性%は、同一性の点で測定され得るが、アラインメントプロセスそのものは、代表的に、対があるか否か(all−or−nothing pair)の比較に基づいている。代わりに、規模を合わせた類似性スコアマトリクス(scaled similarity score matrix)が一般的に使用される。これは、化学的類似もしくは進化距離に基づいて対での比較の各々に対してスコアを割当てる。一般的に使用されるこのようなマトリクスの例は、BLOSUM62マトリクス(BLASTプログラム一式に対するデフォルトマトリクス)である。GCG Wisconsinプログラムは、公共のデフォルト値か、もしくは、供給される場合、特別記号比較表(custom symbol comparison table)のいずれかを一般的に使用する(さらなる詳細は利用者マニュアル参照)。いくつかの用途に関して、GCGパッケージについての公共のデフォルト値を使用することが好ましく、または、他のソフトウェアの場合、BLOSUM62のようなデフォルトマトリクスを使用することが好ましい。
【0246】
あるいは、相同性%は、DNASISTM(Hitachi Software)における複数アラインメント機能を用いて計算され得る。これは、CLUSTAL(Higgins DG & Sharp PM(1988),Gene 73(1),237−244)に類似するアルゴリズムに基づいている。
【0247】
一旦ソフトウェアが最適なアラインメントを作製すれば、相同性%(好ましくは配列同一性%)を計算することが可能である。このソフトウェアは、代表的に、配列比較の一部としてそれを行い、多くの結果を算出する。
【0248】
上記配列はまた、サイレント変化を生じて機能的に等価の物質を生む、アミノ酸残基の欠失、挿入もしくは置換を有し得る。計画的なアミノ酸置換は、アミノ酸特性(例えば、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性および/もしくは両親媒性性質)の類似性に基づいてなされ得、したがって、アミノ酸を官能基でまとめることは、有用である。アミノ酸は、それらの側鎖の特性のみに基づいてまとめられ得る。しかし、変異データも含むと、より有用である。したがって、このようにして誘導されたアミノ酸のセットは、構造的理由のために保存されている可能性がある。これらのセットは、ベン図の形態で記載され得る(Livingstone C.D.およびBarton G.J.(1993)「Protein sequence alignments:a strategy for the hierarchical analysis of residue conservation」Comput.Appl Biosci.9:745−756)(Taylor W.R.(1986)「The classification of amino acid conservation」J.Theor.Biol.119;205−218)。保存的置換は、例えば、一般的に受け入れられているアミノ酸のベン図分類を記載する以下の表に従って、行われ得る。
【0249】
【表2】

本発明者らは、ホモログ置換(すなわち、類似するもの同士の(like−for−like)置換(例えば、塩基性に対して塩基性の置換、酸性に対して酸性の置換、極性に対して極性の置換など)を生じ得る)を含む配列をさらに開示する(置換(substitution)および置き換え(replacement)の両方は、本明細書において、存在するアミノ酸残基の代替的残基との交換を意味するために使用される)。非ホモログ置換もまた生じ得る(すなわち、1つの残基の分類から別の分類への置換、あるいは、オルニチン(本明細書において今後、Zと称される)、ジアミノブチル酸オルニチン(本明細書において今後、Bと称される)、ノルロイシンオルニチン(本明細書において今後、Oと称される)、ピリルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシンのような非天然アミノ酸を含有することを含む)。
【0250】
改変体アミノ酸配列は、配列の任意の2アミノ酸残基の間に挿入され得る適切なスペーサー基を含み得る。これらのスペーサー基としては、例えば、メチル基、エチル基もしくはプロピル基のようなアルキル基が挙げられ、さらにグリシン残基もしくはβ−アラニン残基のようなアミノ酸スペーサー基が挙げられる。変異のさらなる形態(ペプトイド形態における一以上のアミノ酸残基の存在に関する)は、当業者によく理解されている。疑いを避けるため、「ペプトイド形態」は、改変体アミノ酸残基を指すために使用される。ここで、α炭素置換基は、α炭素よりもむしろ、その残基の窒素原子上にある。ペプトイド形態でのペプチドを調製するためのプロセスは、当該分野で公知である(例えば、Simon RJら,PNAS(1992)89(20),9367−9371およびHorwell DC,Trends Biotechnol.(1995)13(4),132−134)。
【0251】
本明細書において記載されるヌクレオチド配列、および本明細書において記載される方法および組成物においての使用に適切なヌクレオチド配列(例えば、PS4改変体核酸)は、それらの中に、合成ヌクレオチドもしくは改変ヌクレオチドを包含し得る。オリゴヌクレオチドへの、多くの異なる型の改変は、当該分野で公知である。これらとしては、メチルホスホネート骨格およびホスホロチオエート骨格ならびに/またはこの分子の3’末端および/もしくは5’末端におけるアクリジン鎖もしくはポリリジン鎖の付加が挙げられる。本明細書の目的のため、本明細書において記載されるヌクレオチド配列が、当該分野で利用可能な任意の方法によって改変され得ることを理解すべきである。このような改変は、ヌクレオチド配列のインビボでの活性もしくは寿命を増強するために行われ得る。
【0252】
本発明者らは、本明細書において提示される配列に相補的なヌクレオチド配列の使用、または任意の誘導体、フラグメントもしくはそれらの誘導体の使用をさらに記載する。配列が、そのフラグメントに相補的である場合、その配列は、他の生体などにおいて同様なコード配列を同定するためのプローブとして使用され得る。
【0253】
PS4改変体配列と100相同性%ではないポリヌクレオチドは、多くの方法で得ることができる。本明細書において記載される配列の他の改変体は、例えば、種々の個体群(individuals)(例えば、異なる集団由来の個体群)から作製されたDNAライブラリをプローブすることによって得ることができる。さらに、他のホモログを得ることができ、このようなホモログおよびそれらのフラグメントは、一般的に、本明細書の配列表に示される配列と選択的にハイブリダイズし得る。このような配列は、他種から作製されたcDNAライブラリまたは他種由来のゲノムDNAライブラリをプローブすること、および添付の配列表中の配列のいずれか1つの全部もしくは一部を含むプローブでこのようなライブラリを、中〜高ストリンジェント条件下でプローブすることによって、得ることができる。同様の考慮が、本明細書において記載されるポリペプチド配列もしくはヌクレオチド配列の種ホモログおよび対立遺伝子改変体を得ることに適用される。
【0254】
改変体および株/種ホモログもまた、保存的アミノ酸配列をコードする改変体およびホモログ内の標的配列に対して設計されたプライマーを使用する縮重PCRを用いて得ることができる。 保存的配列は、例えば、いくつかの改変体/ホモログ由来のアミノ酸配列をアラインメントすることによって予測され得る。配列アラインメントは、当該分野で公知のコンピュータソフトウェアを用いて行われ得る。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広く使用されている。
【0255】
縮重PCRに使用されるプライマーは、1つ以上の縮重位置を含み、そして既知の配列に対する単一配列プライマーを用いて配列をクローニングするために使用される条件よりは、低いストリンジェント条件で使用される。
【0256】
あるいは、このようなポリヌクレオチドは、特徴的配列の部位特異的変異誘発によって得ることができる。これは、例えば、サイレントコドン配列変化が上記ポリヌクレオチド配列が発現されるべき特定の宿主細胞にとって好ましいコドンを最適化するために必要とされる場合に、有用であり得る。他の配列変化は、制限酵素認識部位を導入するため、または上記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの特性もしくは機能を変化させるために所望され得る。
【0257】
本明細書に記載される、PS4改変体核酸のようなポリヌクレオチド(ヌクレオチド配列)は、プライマー(例えば、PCRプライマー、代替的増幅反応のためのプライマー)、プローブ(例えば、放射性もしくは非放射性標識を用いた従来の手段によって顕示する標識(revealing label)で標識されたもの)を作製するために使用され得るか、または上記ポリヌクレオチドは、ベクターにクローニングされ得る。このようなプライマー、プローブ、および他のフラグメントは、少なくとも15ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも20ヌクレオチド長(例えば、少なくとも25ヌクレオチド長、少なくとも30ヌクレオチド長、もしくは少なくとも40ヌクレオチド長)であり、やはり用語「ポリヌクレオチド」に包含される。
【0258】
ポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドおよびDNAプローブ)は、組み換えによって、合成によって、または当業者が利用可能な任意の手段によって作製され得る。これらはまた、標準的技術によってクローニングされ得る。一般的に、プライマーは、合成法によって作製される。この方法は、所望の核酸配列の、一度に1ヌクレオチドでの段階的な製造を包含する。これを達成するため、自動化技術を用いた技術は、当該分野において容易に利用可能である。
【0259】
より長いポリヌクレオチドは、一般的に、組み換え手段を用いて(例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いて)作製される。プライマーは、適切な制限酵素認識部位を含み、したがって増幅されたDNAが適切なクローニングベクター内にクローニングされ得るように、設計され得る。好ましくは、この改変体配列などは、少なくとも本明細書中で提示される配列と同程度に、生物学的に活性である。
【0260】
本明細書中で使用される場合、「生物学的に活性」とは、天然に存在する配列と類似の構造的機能(しかし、必ずしも同程度ではない)、および/または類似の調節機能(しかし、必ずしも同程度ではない)、および/または類似の生化学的機能(しかし、必ずしも同程度ではない)を有する配列を指す。
【0261】
(ハイブリダイゼーション)
本発明者らは、PS4改変体の核酸配列に相補的な配列、またはこのPS4改変体配列にハイブリダイズし得る配列もしくはこの配列に相補的な配列にハイブリダイズし得る配列を記載する。
【0262】
用語「ハイブリダイゼーション」は、本明細書で使用される場合、「核酸の1つの鎖が塩基対合を介して相補鎖と結合するプロセス」ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術において行われる場合の増幅プロセスを含むものとする。従って、本発明者らは、本明細書で示される配列に相補的な配列にハイブリダイズし得るヌクレオチド配列、またはその任意の誘導体、フラグメントもしくは誘導体の使用を開示する。
【0263】
用語「改変体」とはまた、本明細書に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズし得る配列に相補的な配列を包含する。
【0264】
好ましくは、用語「改変体」は、本明細書に示されるヌクレオチド配列にストリンジェントな条件(例えば、50℃および0.2×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015M クエン酸Na、pH7.0})下でハイブリダイズし得る配列に相補的な配列を包含する。より好ましくは、用語「改変体」は、本明細書に示されるヌクレオチド配列に高ストリンジェントな条件(例えば、65℃および0.1×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015M クエン酸Na、pH7.0})下でハイブリダイズし得る配列に相補的な配列を包含する。
【0265】
本発明者らはさらに、PS4改変体のヌクレオチド配列(本明細書に示される配列に対する相補配列を含む)にハイブリダイズし得るヌクレオチド配列、ならびにPS4改変体のヌクレオチド配列(本明細書に示される配列に対する相補配列を含む)にハイブリダイズし得る配列に相補的なヌクレオチド配列を開示する。本発明者らはさらに、中間から最大のストリンジェンシーの条件下で本明細書に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズし得るポリヌクレオチド配列を記載する。
【0266】
好ましい局面において、本発明者らは、ストリンジェントな条件下(例えば、50℃および0.2×SSC)でPS4改変体核酸のヌクレオチド配列、またはその相補鎖にハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を開示する。より好ましくは、そのヌクレオチド配列は、PS4改変体のヌクレオチド配列、またはその相補鎖に高ストリンジェントな条件下(例えば、65℃および0.1×SSC)でハイブリダイズし得る。
【0267】
(部位特異的変異誘発)
一旦、酵素をコードするヌクレオチドが配列が単離されると、または推定の酵素をコードするヌクレオチド配列が同定されると、酵素を調製するためにその配列を変異させることが望ましくあり得る。従って、PS4改変体配列は、親配列から調製され得る。変異は、合成オリゴヌクレオチドを使用して導入され得る。これらのオリゴヌクレオチドは、望ましい変異部位に隣接するヌクレオチド配列を含む。
【0268】
適切な方法は、Morinagaら(Biotechnology(1984)2、p646−649)に開示される。酵素をコードするヌクレオチド配列に変異を導入する別の方法は、NelsonおよびLong(Analytical Biochemistry(1989)、180、p147−151)に記載される。さらなる方法は、SarkarおよびSommer(Biotechniques(1990),8,p404−407「The megaprimer method of site directed mutagenesis」)に記載される。
【0269】
一局面において、本明細書に記載される方法および組成物において使用するための配列は、組換え配列(すなわち、組換えDNA技術を使用して調製された配列)である。これらの組換えDNA技術は、当業者の能力の範囲内である。このような技術は、文献、例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Books 1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Pressにおいて説明されている。
【0270】
一局面において、本明細書に記載される方法および組成物において使用するための配列は、合成配列(すなわち、インビトロでの化学合成または酵素的合成により調製された配列)である。これらの配列としては、宿主生物(例えば、メチル資化性酵母であるPichaおよびHansenula)の最適なコドン使用法で行われた配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0271】
本明細書で記載される方法および組成物において使用するためのヌクレオチド配列は、組換え複製ベクターに組み込まれ得る。このベクターは、酵素形態で、適合性の宿主細胞中でおよび/またはこの宿主から、ヌクレオチド配列を複製および発現するために使用され得る。発現は、制御配列(例えば、調節配列)を使用して制御され得る。ヌクレオチド配列の発現によって宿主組換え細胞により生成される酵素は、使用される配列および/またはベクターに依存して、分泌されてもよいし、細胞内に含まれてもよい。このコード配列は、特定の原核生物細胞膜または真核生物細胞膜を介して物質のコード配列の分泌を指向するシグナル配列とともに設計され得る。
【0272】
(PS4核酸およびPS4ポリペプチドの発現)
PS4ポリヌクレオチドおよびPS4核酸は、合成起源および天然起源両方のDNAおよびRNAを含み得る。これらのDNAまたはRNAは、改変または非改変のデオキシヌクレオチドもしくはジデオキシヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドもしくはジデオキシリボヌクレオチドまたはこれらのアナログを含み得る。このPS4核酸は、一本鎖または二本鎖のNDAまたはRNAとして、あるいはRNA/DNAヘテロ二重鎖としてまたはRNA/DNAコポリマーとして存在し得る。ここで用語「コポリマー」とは、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの両方を含む単一の核酸鎖をいう。PS4核酸は、さらに、発現をさらに増加させるために最適化されたコドンであり得る。
【0273】
用語「合成」とは、本明細書で使用される場合、インビトロでの化学合成または酵素的合成によって生成されるものとして規定される。この合成のものとしては、宿主生物(例えば、メチル資化性酵母PichaおよびHansenula)にとって最適なコドン使用法で作製されたPS4核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0274】
ポリヌクレオチド(例えば、本明細書で記載される改変体PS4ポリヌクレオチド)は、組換え複製可能ベクターに組み込まれ得る。このベクターは、適合性の宿主細胞において核酸を複製するために使用され得る。このポリヌクレオチド配列を含むベクターは、適切な宿主細胞に形質転換され得る。適切な宿主としては、細菌、酵母、昆虫、真菌の細胞が挙げられ得る。
【0275】
用語「形質転換細胞」は、組換えDNA技術の使用によって形質転換された細胞を包含する。この形質転換は、代表的には、1以上のヌクレオチド配列を形質転換されるべき細胞に挿入することによって起こる。この挿入されるヌクレオチド配列は、異種ヌクレオチド配列(すなわち、形質転換されるべき細胞に対して天然でない配列)であり得る。さらに、または代わりに、この挿入されるヌクレオチド配列は、同種ヌクレオチド配列(すなわち、形質転換されるべき細胞に対して天然である配列である)であってもよい。その結果、細胞は、そこに既に存在しているヌクレオチド配列の1以上の余分なコピーを受ける。
【0276】
従って、さらなる実施形態において、本発明者らは、複製可能ベクターにポリヌクレオチドを導入し、このベクターを適合性の宿主細胞に導入し、そしてこの宿主細胞を、このベクターの複製をもたらす条件下で増殖させることによって、PS4改変体ポリペプチドおよびPS4改変体ポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。このベクターは、宿主細胞から回収され得る。
【0277】
(発現構築物)
PS4核酸は、目的の宿主細胞において活性な転写調節エレメントおよび翻訳調節エレメントに作動可能に連結され得る。このPS4核酸はまた、シグナル配列(例えば、Schwanniomyces occidentalisのグルコアミラーゼ遺伝子由来のもの)、Saccharomyces cerevisiaeのα因子接合型遺伝子およびAspergillus oryzaeのTAKA−アミラーゼを含む融合タンパク質をコードし得る。あるいは、このPS4核酸は、膜結合ドメインを含む融合タンパク質をコードし得る。
【0278】
(発現ベクター)
PS4核酸は、発現ベクターを使用して、宿主生物において望ましいレベルで発現され得る。
【0279】
PS4核酸を含む発現ベクターは、選択された宿主生物においてPS4核酸をコードする遺伝子を発現し得る任意のベクターであり得、ベクターの選択は、導入される宿主細胞に依存する。従って、このベクターは、自律的に複製するベクター(すなわち、エピソーム実体として存在するベクター)(このベクターの複製は、染色体複製とは独立している)であり得、例えば、プラスミド、バクテリオファージまたはエピソームエレメント、ミニ染色体または人工染色体が挙げられる。あるいは、このベクターは、宿主細胞に導入される場合、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、染色体と一緒に複製され得る。
【0280】
(発現ベクターの構成要素)
発現ベクターは、代表的には、クローニングベクターの構成要素(例えば、選択された宿主生物におけるベクターの自律的複製を可能にする要素および選択目的で表現型的に検出可能な1つ以上のマーカー)を含む。この発現ベクターは、通常、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナルおよび必要に応じてリプレッサー遺伝子または1以上のアクチベーター遺伝子をコードする制御ヌクレオチド配列を含む。さらに、発現ベクターは、宿主細胞オルガネラ(例えば、ペルオキシソーム)にまたは特定の宿主細胞構成要素にPS4改変体ポリペプチドを標的化し得るアミノ酸配列をコードする配列を含み得る。このような標的化配列としては、SKL配列が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の文脈において、用語「発現シグナル」とは、上記の制御配列、リプレッサーまたはアクチベーター配列のいずれかを含む。制御配列の指向の下での発現に関して、PS4改変体ポリペプチドの核酸配列は、発現に関して適切な様式で制御配列に作動可能に連結される。
【0281】
好ましくは、ベクター中のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現を提供し得る制御配列に作動可能に連結される。すなわち、このベクターは、発現ベクターである。用語「作動可能に連結される」とは、記載される構成要素が、それらの意図される様式で機能することを可能にする関係にあることを意味する。コード配列に「作動可能に連結される」調節配列は、そのコード配列の発現が、制御配列と適合性の条件下で達成される様式で、連結される。
【0282】
その制御配列は、例えば、さらなる転写調節要素の付加によって改変されて、制御配列によって指向される転写のレベルを、転写モジュレーターに対してより応答性であるようにし得る。この制御配列は、特に、プロモーターを含み得る。
【0283】
(プロモーター)
ベクターにおいて、改変体PS4ポリペプチドをコードする核酸配列は、適切なプロモーター配列と作動可能に組み合わせられる。このプロモーターは、選択された宿主生物において転写活性を有する任意のDNA配列であり得、この宿主生物に対して同種または異種である遺伝子に由来し得る。
【0284】
(細菌プロモーター)
細菌宿主において改変ヌクレオチド配列(例えば、PS4核酸)の転写を指向するために適したプロモーターの例としては、E.coliのlacオペロンのプロモーター、Streptomyces coelicolorアガラーゼ(agarase)遺伝子dagAプロモーター、Bacillus licheniformis α−アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、Bacillus stearothermophilusマルトース産生性アミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、Bacillus amyloliquefaciensα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)のプロモーター、Bacillus subtilisのxylA遺伝子およびxylB遺伝子プロモーター、ならびにLactococcus sp.由来プロモーター(p170プロモーターを含む)が挙げられる。PS4改変体ポリペプチドをコードする遺伝子が細菌種(例えば、E.coli)において発現される場合、例えば、バクテリオファージプロモーター(T7プロモーターおよびファージλプロモーターが挙げられる)から、適切なプロモーターが選択され得る。
【0285】
(真菌プロモーター)
真菌種における転写に関して、有用なプロモーターの例は、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、Aspergillus niger中性α−アミラーゼ、A.niger酸安定性α−アミラーゼ、A.nigerグルコアミラーゼ、Rhizomucor mieheiリパーゼ、Aspergillus oryzaeアルカリプロテアーゼ、Aspergillus oryzaeトリオースホスフェートイソメラーゼまたはAspergillus nidulansアセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーターである。
【0286】
(酵母プロモーター)
酵母種における発現に適したプロモーターの例としては、Saccharomyces cerevisiaeのGal 1プロモーターおよびGal 10プロモーター、ならびにPicha pastoris AOX1プロモーターまたはAOX2プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0287】
(宿主生物)
((I)細菌宿主生物)
適切な細菌宿主生物の例は、グラム陽性細菌種(例えば、Bacillaceae(Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus lentus、Bacillus brevis、Bacillus stearothermophilus、Bacillus alkalophilus、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus coagulans、Bacillus lautus、Bacillus megateriumおよびBacillus thuringiensisが挙げられる)、Streptomyces種(例えば、Streptomyces murinus)、乳酸細菌種(Lactococcus spp.(例えば、Lactococcus lactis)、Lactobacillus spp.(Lactobacillus reuteriが挙げられる)、Leuconostoc spp.、Pediococcus spp.およびStreptococcus spp.が挙げられる)である。あるいは、Enterobacteriaceaeに属する(E.coliが挙げられる)かまたはPseudomonadaceaeに属するグラム陰性細菌種の株は、宿主生物として選択され得る。
【0288】
((II)酵母宿主生物)
適切な酵母宿主生物は、生物工学的に関連する酵母種から選択され得、これらは、例えば、Pichia sp.、Hansenula spまたはKluyveromyces、Yarrowinia種またはSaccharomycesの種(Saccharomyces cerevisiaeが挙げられる)またはSchizosaccharomyceに属する種(例えば、S.Pombe種)のような酵母種であるが、これらに限定されない。
【0289】
好ましくは、メチロトローフ酵母種Pichia pastorisの株が、宿主生物として使用される。好ましくは、この宿主生物は、Hansenula種である。
【0290】
((III)真菌宿主生物)
繊維状真菌のうちで適切な宿主生物としては、Aspergillusの種(例えば、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Aspergillus tubigensis、Aspergillus awamoriまたはAspergillus nidulans)が挙げられる。あるいは、Fusarium種の株(例えば、Fusarium oxysporum)またはRhizomucor種(例えば、Rhizomucor miehei)が、宿主生物として使用され得る。他の適切な株としては、Thermomyces種およびMucor種が挙げられる。
【0291】
(タンパク質の発現および精製)
ポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、ポリペプチド(例えば、改変体PS4ポリペプチド、そのフラグメント、ホモログ、改変体または誘導体)を発現するために使用され得る。宿主細胞は、これらのタンパク質の発現を可能にする、適切な条件下で培養され得る。ポリペプチドの発現は、これらのポリペプチドが連続的に生成され得るように、構成的であり得るか、または発現を開始するための刺激を必要として、誘導的であり得る。誘導的発現の場合、タンパク質の生成は、必要とされる場合に、例えば、誘導物質(例えば、デキサメタゾンまたはIPTG)を培養培地に添加することによって開始され得る。
【0292】
ポリペプチドは、当該分野において公知である種々の技術(酵素溶解、化学的溶解および/または浸透圧溶解、ならびに物理的破壊が挙げられる)によって、宿主細胞から抽出され得る。ポリペプチドはまた、インビトロ無細胞系(例えば、TnTTM(Promega)ウサギ網状赤血球系)において、組換え的に生成され得る。
【実施例】
【0293】
(実施例1.PS4のクローニング)
Pseudomonas sacharophiaを、LB培地で一晩増殖させ、そして染色体DNAを、標準的な方法(Sambrook,1989)によって単離する。PS4のオープンリーディングフレームを含む2190bpのフラグメント(Zhouら、1989)を、P.sacharophila染色体DNAから、プライマーP1およびP2(表3を参照のこと)を使用するPCRによって増幅する。得られたフラグメントを、P3およびP4を用いるネステッドPCRにおいて、テンプレートとして使用し、PS4のオープンリーディングフレームを、そのシグナル配列なしで増幅し、そしてこの遺伝子の5’末端におけるNcoI部位および3’末端におけるBamHI部位を導入する。NcoI部位と一緒に、N末端メチオニンに対するコドンを導入し、PS4の細胞内発現を可能にする。1605bpのフラグメントを、pCRBLUNT TOPO(Invitrogen)中にクローニングし、そしてその構築物の一体性を、配列決定によって分析する。E.coli BacillusシャトルベクターpDP66K(Penningaら、1996)を修飾して、P32プロモーターおよびctgaseシグナル配列の制御下でのPS4の発現を可能にする。得られたプラスミドpCSmta用いて、B.subtilisを形質転換する。
【0294】
PS4のデンプン結合ドメインが除去された、第二の発現構築物を作製する。プライマーP3およびP6(表3)を用いる、pCSmtaに対するPCRにおいて、mta遺伝子の短縮バージョンが発生する。pCSmtaの全長mta遺伝子を、この短縮バージョンで置き換え、これにより、プラスミドpSCmta−SBDを生じる。
【0295】
(実施例2.PS4の部位特異的変異誘発)
変異を、2つの方法によって、mta遺伝子に導入する。2段階PCRベースの方法またはQuick Exchange方法(QE)のいずれかによる。簡便なために、mta遺伝子を、3つの部分(PvuI−FspIフラグメント、FspI−PstIフラグメントおよびPstI−AspIフラグメント)に分離し、さらに、それぞれフラグメント1、フラグメント2、およびフラグメント3と称する。
【0296】
2段階PCRベースの方法において、変異を、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用して導入する。第一のPCRを、コード鎖に対する変異誘発プライマー(表4)および低次鎖(表3の2Rまたは3Rのいずれか)に対する下流のプライマーを用いて実施する。その反応生成物を、第二のPCRにおけるプライマーとして、コード鎖の上流のプライマーと一緒に使用する。最後の反応の生成物を、pCRBLUNTtopo(Invitrogen)にクローニングし、そして配列決定後、そのフラグメントを、pCSmtaにおける対応するフラグメントと置き換える。
【0297】
Quick Exchange方法(Stratagene)を使用して、変異を、PCRにおいて2つの相補的プライマーを使用して、mta遺伝子またはmta遺伝子の一部分を含むプラスミドに導入する。
【0298】
この目的で、好都合なプラスミドのセット(3SDMプラスミドおよび3pCSΔプラスミドを含む)を構築する。SDMプラスミドは、上述のように、それぞれ、mta遺伝子のフラグメントのうちの1つを保有し、ここに、所望の変異が、QEによって導入される。配列決定による評価後、これらのフラグメントを、対応するレシピエントpCSΔプラスミドにクローニングする。pCSΔプラスミドは、pCSmta由来の不活性誘導体である。活性は、SDMプラスミド由来の対応するフラグメントをクローニングすることによって回復され、容易なスクリーニングを可能にする。
【0299】
(表3.mta遺伝子のクローニングにおいて使用されるプライマー、および2段階PCR方法を用いる部位特異的変異体の構築物において使用される標準的なプライマー)
【0300】
【表3】

(表4:部位特異的変異をmtaに導入するために使用されるプライマー)
【0301】
【表4】

(表5.SDMプラスミドおよびpCSΔプラスミドの特徴)
【0302】
【表5】

(実施例3.多重SDM)
記載されるようないくらかの改変を伴うPS4改変体を、製造業者のプロトコルに従ってQuickChange(登録商標)Multi Site Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を使用して、生成した。
【0303】
(工程1:変異体鎖合成反応(PCR))
− 3mlのLB(22g/l Lennox L Broth Base,Sigma)および抗生物質(0.05μg/mlカナマイシン、Sigma)を、10mlのFalconチューブに接種する
− 一晩37℃、約200rpmでインキュベートする
− 遠心分離(5000rpm/5分)によって、細胞を沈殿させる
− 培地を大まかに(poor off)除去する
− ds−DNAテンプレートを、QIAGEN Plasmid Mini Purification Protocolを使用して調製する。
【0304】
1.サーマルサイクリングのための変異体鎖合成反応を、以下のように準備した:
PCR混合物:
2.5μl 10×QuickChange(登録商標)Multi反応緩衝液
0.75μl QuickSolution
Xμl プライマー
【0305】
【化3】

1μl dNTP混合物
Xμl ds−DNAテンプレート(200ng)
1μl QuickChange(登録商標)Multi酵素ブレンド(2.5U/μl)(PfuTurbo(登録商標)DNAポリメラーゼ)
Xμl dHO(25μlの最終体積まで)
ピペッティングによって全ての成分を混合し、そしてその反応混合物を、穏やかに遠心分離により沈殿させる。
【0306】
2.以下のパラメータを使用して、反応をサイクルさせる:
35サイクルの変性(96℃/1分)
プライマーアニーリング(62.8℃/1分)
伸長(65℃/15分)
次いで、4℃で保持。
【0307】
PCR機の蓋を105℃まで予熱し、そしてプレートを95℃まで予熱し、その後、PCRチューブを、その機械(エッペンドルフサーマルサイクラー)に静置する。
【0308】
(工程2:Dpn I消化)
1. 2μlのDpn I制限酵素(10U/μl)を、各増幅反応物に添加し、ピペッティングによって混合し、そして混合物を遠心分離により沈殿させる
2. 37℃で約3時間インキュベートする。
【0309】
(工程3:XL10−Gold(登録商標)超コンピテント細胞の形質転換)
1. XL10−Gold細胞を、氷上で融解する。1回の変異誘発反応あたり45μlの細胞を、予冷したFalconチューブにアリコートとして取る
2. 水浴(42℃)をオンにし、そしてNZYブロスを含むチューブを、この浴に入れて予熱する
3. 2μlのβ−メルカプトエタノール混合物を、各チューブに添加する。穏やかにかきまぜ、そして叩いて、氷上で10分間インキュベートし、2分おきにかきまぜる
4. 1.5μlのDpn I処理したDNAを、細胞の各アリコートに添加し、かきまぜて混合し、そして氷上で30分間インキュベートする
5. 42℃の水浴中で30秒間、このチューブを熱パルスし、そして氷上に2分間置く
6. 0.5mlの予熱したNZYブロスを各チューブに添加し、そして37℃で1時間、225〜250rpmで震盪しながらインキュベートする
7. 200μlの各形質転換反応物を、1%デンプンおよび0.05μg/mlカナマイシンを含むLBプレート(33.6g/l Lennox L Agar,Sigma)上にプレートする
8. この形質転換プレートを、37℃で一晩インキュベートする。
【0310】
(表6.pPD77d14に対するプライマー表)
【0311】
【表6】

(表7.pPD77d20に対するプライマー表)
【0312】
【表7】

(表8.pPD77d34(pSac−D34)に対するプライマー表)
【0313】
【表8】

(pPD77に基づくベクター系)
pPD77のために使用するベクター系は、pCRbluntTOPOII(invitrogen)に基づく。ゼオシン耐性カセットを、pmIIによって除去し、393bpのフラグメントを除去した。次いで、pCCベクター由来の発現カセット(P32−ssCGTase−PS4−tt)を、このベクターに挿入した。
【0314】
(PS4改変体のpCCMiniへのライゲーション)
関連する変異体を含むプラスミド(MSDMによって作製した)を、制限酵素Nco 1およびHind III(Biolabs)で切断する:
3μgのプラスミドDNA、Xμlの10×緩衝液2、10単位のNco1,20単位のHindIII、37℃で2時間のインキュベーション。
【0315】
消化産物を1%アガロースゲルで泳動。1293bpの大きさのフラグメント(PS4)を、このゲルから切り出し、そしてQiagenゲル精製キットを使用して精製する。
【0316】
次いで、ベクターpCCMiniを、制限酵素Nco 1およびHind IIIで切断し、そしてその消化産物を、次いで、1%アガロースゲルで泳動する。3569bpの大きさのフラグメントを、このゲルから切り出し、そしてQiagenゲル精製キットを使用して精製する。
【0317】
ライゲーション:Rapid DNAライゲーションキット(Roche)を使用。
【0318】
ベクターに対して2倍の量のインサートを使用
例えば、2μlのインサート(PS4遺伝子)
1μlのベクター
5μlのT4 DNAライゲーション緩衝液(2倍濃度)
1μlのdH
1μlのT4 DNAリガーゼ。
【0319】
5分/室温でライゲーション。
【0320】
このライゲーション産物を用いて、One Shot TOPOコンピテント細胞を、製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従って形質転換。5μlのライゲーション産物を形質転換に使用。
【0321】
50μlの形質転換混合物を、1%デンプンおよび0.05μg/mlカナマイシンを含むLBプレート(33.6g/l Lennox L Agar,Sigma)上にプレート。インサートを含むベクター(PS4改変体)が、デンプンプレート上でのハロ形成によって、認識され得る。
【0322】
(実施例4.Bacillus subtilisへの形質転換(プロトプラスト形質転換))
Bacillus subtilis(株DB104A;Smithら、1988;Gene 70,351−361)を、変異したpCS−プラスミドで、以下のプロトコルに従って形質転換する:
(A.プロトプラストおよび形質転換のための培地)
2×SMM
1リットル当たり:342gスクロース(1M);4.72gマレイン酸ナトリウム(0.04M);8.12g MgCl,6HO(0.04M);濃NaOHでpH6.5にする。50mlの部分に分け、そして10分間オートクレーブ処理する
4×YT(1/2 NaCl)
100mlあたり2g酵母抽出物+3.2g トリプトン+0.5g NaCl
SMMP
等体積の2×SMMと4×YTとを混合する
PEG
25mlの1×SMM中10gのポリエチレングリコール6000(BDH)またはポリエチレングリコール8000(Sigma)(10分間オートクレーブ処理)。
【0323】
(B.プレーティング/再生のための培地)
寒天
4% Difco最小寒天。15分間オートクレーブ処理
コハク酸ナトリウム
270g/l(1M)、HClでpH7.3にする。15分間オートクレーブ処理
リン酸緩衝液
100mlあたり3.5g KHPO+1.5g KHPO。15分間オートクレーブ処理
MgCl
100mlあたり20.3g MgCl,6HO(1M)
カスアミノ酸(casaminoacid)
5%(w/v)溶液。15分間オートクレーブ処理
酵母抽出物
100mlあたり10g、15分間オートクレーブ処理
グルコース
20%(w/v)溶液。10分間オートクレーブ処理。
【0324】
DM3再生培地:60℃で混合(水浴:500ml瓶):
250mlコハク酸ナトリウム
50mlカスアミノ酸
25ml酵母抽出物
50mlリン酸緩衝液
15mlグルコース
10ml MgCl
100ml溶融寒天。
【0325】
適切な抗生物質(クロラムフェニコールおよびテトラサイクリン、5ug/ml;エリスロマイシン、1ug/ml)を添加。カナマイシンでの選択は、DM3培地中において問題がある:250ug/mlの濃度が必要とされ得る。
【0326】
(C.プロトプラストの調製)
1.全体を通して洗剤のないプラスチックまたはガラス器具を使用する。
【0327】
2.単一のコロニーから100mlフラスコ中の10mlの2×YT培地に接種する。振盪器(200rev/分)で、25〜30℃にて一晩培養物を増殖する。
【0328】
3.一晩培養物を100mlの新しい2×YT培地(250mlフラスコ)に20倍希釈し、そしてOD600=0.4〜0.5になるまで(約2時間)、振盪器(200〜250rev/分)で37℃にて増殖する。
【0329】
4.遠心分離(9000g、20分、4℃)により、細胞を回収する。
【0330】
5.ピペットで上清を取り除き、その細胞を5mlのSMMP+5mgリゾチームで再懸濁し、滅菌濾過する。
【0331】
6.水浴振盪器(100rev/分)で37℃にてインキュベートする。
【0332】
30分後、その後15分の間隔で、25μlのサンプルを顕微鏡により検査する。99%の細胞がプロトプラスト化(球状の外観)するまでインキュベーションを継続する。遠心分離(4000g、20分、RT)により、プロトプラストを回収し、そして、上清を除去する。1〜2mlのSMMP中でペレットを静かに再懸濁する。
【0333】
ここで、プロトプラストは、使用準備が整っている。(一部(例えば、0.15ml)は、後の使用のために−80℃にて凍結しても良い(グリセロールの添加は、必要ない)。これは、形質転換能のいくばくかの減少を生じ得るが、DNA 1μgあたり106の形質転換体を、凍結したプロトプラストで得ることが出来る)。
【0334】
(D.形質転換)
1.450μlのPEGをマイクロチューブに移す。
【0335】
2.1〜10μlのDNA(0.2g)を150μlのプロトプラストと混合し、その混合物をPEGを含むマイクロチューブに添加する。すぐに、ただし静かに混合する。
【0336】
3.2分間室温で静置し、次いで、1.5mlのSMMPを添加し、混合する。
【0337】
4.微量遠心(10分間、13,000rev/分(10〜12,000g))によりプロトプラストを回収し、上清を取り除く。ティッシュで残った小滴を除去する。
【0338】
300μlのSMMPを添加し(ボルテックスしない)、水浴振盪器(100rev/分)で37℃にて60〜90分間インキュベートして抗生物質抵抗性マーカーの発現を可能にする。(プロトプラストは、水浴の振盪動作を通して十分に再懸濁される)。1×SSMで適切に希釈し、そしてDM3プレート上に0.1mlをプレートする。
【0339】
(実施例5.振盪フラスコにおけるPS4改変体の発酵)
振盪フラスコの基質を、以下のとおりに調製する。
【0340】
【表9】

その基質を、オートクレーブする前に、4N硫酸または水酸化ナトリウムでpH6.8に調節する。100mlの基質を、1つのバッフルを備えた500mlフラスコに置き、30分間オートクレーブする。その後、6mlの滅菌デキストロースシロップを添加する。そのデキストロースシロップを、1容量の50%(w/v)デキストロースを1容量の水と混合し、続いて、20分間オートクレーブすることにより調製する。
【0341】
振盪フラスコに、改変体を接種し、インキュベーター中で、24時間35℃/180rpmにてインキュベートする。インキュベーション後、遠心分離(10分間、10,000×g)により培地から細胞を分離し、最終的にその上清を、0.2μmでの精密濾過により、無菌にする。無菌上清を、アッセイ検定および適用検定に使用する。
【0342】
(実施例6.アミラーゼアッセイ)
(Betamylアッセイ)
Betamylの1単位を、1分間あたり0.0351mmolのPNPが、アッセイ混合物中の過剰α−グルコシダーゼにより遊離し得るように、1分間あたり0.0351mmolのPNP結合マルトペンタオースを分解する活性として定義する。そのアッセイ混合物は、25μlの酵素試料およびMegazyme,IrelandからのBetamly基材(Glc5−PNPおよびα−グルコース)(1瓶を10mlの水に溶解)25μlと共に50μlの50mMクエン酸Na、5mM CaCl(pH6.5)を含む。そのアッセイ混合物を30分間40℃にてインキュベートし、次いで、150μlの4%トリスを添加することにより停止する。420nmにおける吸光を、ELISAリーダーを使用して測定し、Betamyl活性を、アッセイした酵素試料のBetamyl単位/mlで、活性=A420dに基づいて計算する。
【0343】
(エンドアミラーゼアッセイ)
エンドアミラーゼアッセイは、製造者(Pharmacia & Upjohn Diagnostics AB)による Phadebasアッセイの実施と同じである。
【0344】
(エキソ特異性)
Phadebas活性に対するエキソアミラーゼ活性の比を、エキソ特異性を評価するのに使用した。
【0345】
(比活性)
PSac−D14改変体、PSac−D20改変体およびPSac−D34改変体について、本発明者らは、Bradford(1976;Anal.Biochem.72,248)に従って計測された、精製タンパク質1μgあたり10Betamyl単位の平均比活性を見出している。この比活性は、適用検定において使用される用量を計算するための活性に基づいて使用する。
【0346】
(実施例7.半減期の決定)
1/2を、酵素活性の半分が、規定された熱条件下で不活性化する時間(分)として定義する。上記酵素の半減期を決定するために、試料を、60〜90℃の一定温度にて1〜10分間加熱する。その半減期を、残ったBetamylアッセイに基づいて計算する。
【0347】
(手順)
Eppendorf容器中で、1000μlの緩衝液を、少なくとも10分間、60℃以上に前もって加熱する。加熱インキュベーター(EppendorfからのThermomixer comfort)中のEppendorf容器を連続して混合(800rpm)する条件下で、100μlの試料を、前もって加熱した緩衝液に添加して、その試料の熱処理を開始する。インキュベーションの0分後、2分後、4分後、6分後、8分後、そして9分後に、45μlの試料を20℃に平衡化した1000μlの緩衝液に移し、20℃にて1500rpmで1分間インキュベートすることにより、反応を停止する。残った活性を、Betamylアッセイで測定する。
【0348】
(計算)
1/2の計算を、残ったBetamyl活性対インキュベーション時間のlog10(底が10の対数)の傾きに基づいて計算する。t1/2を、傾き/0.301=t1/2として計算する。
【0349】
(実施例8.結果)
(表9.野生型PSac−cc1と比較したPSac改変体の生物化学的特性)
【0350】
【表10】

実験を、上記表に列挙される改変体の各々の変形を使用するが、33位の変異は使用せずに(すなわち、この位置において野生型の残基Nを有する)行う。同様の結果は、変異N33Yを有するような変形について得られる。
【0351】
また、実験を、上記表に列挙される改変体の各々の変形を使用するが、34位の変異は使用せずに(すなわち、この位置において野生型の残基Dを有する)行う。同様の結果は、変異D34Nを有するような変形について得られる。
【0352】
(実施例9.モデル系のパン焼成試験)
ファリノグラフ(Farinograph)中で30℃にて、生地を製造する。10.00gの改良小麦粉を計量し、ファリノグラフに添加する;1分後、基準/試料を混合したもの(基準=緩衝液または水、試料=酵素+緩衝液または水)を、捏ね桶(kneading vat)の穴を通して、滅菌ピペットで添加する。30秒後、その小麦粉を、(また捏ね桶の穴を通して)その端をこそげ取る。その試料を、7分間捏ねる。
【0353】
緩衝液または水を使用した検定を、最後に基準を実施する前に、ファリノグラフで実施する。FUは、基準に対して400であるべきであり、もしそうでない場合、これは、例えば、液体の量で調節するべきである。その基準/試料を、スパーテルで取り出し、(使い捨て手袋を着けた)手の中に置き、その後、(約4.5cm長の)小さなガラスチューブに充填し、これをNMRチューブに入れ、栓をする。1つの生地あたり7つのチューブを作製する。
【0354】
全てのサンプルを調製したとき、そのチューブを、33℃にて(栓をせず)、25分間水浴(変更可能)中に置き、その後、水浴を、33℃にて5分間維持するように設定し、次いで、56分間にわたって98℃に加熱し(1分間あたり1.1℃)、最終的に、96℃にて5分間維持する。
【0355】
そのチューブを、温熱器(thermo cupboard)中で、20.0℃にて貯蔵する。そのパン粉の固形分を、Bruker NMS 120 Minispec NMR分析器を使用して、1日目、3日目、および7日目に、プロトンNMRにより測定した(図2において、0ppm、0.5ppm、1ppm、および2ppmのPSacD34を使用して調製されたパン粉試料について示される)。固形分の増加が、経時的に低くなることで、アミロペクチンのもどり(retrogradation)の減少が示される。温熱器中で20.0℃での7日間の貯蔵後、パン粉の10〜20mgの試料を計量し、40μlのアルミニウム標準のDSCカプセル中に入れ、20℃に維持した。
【0356】
そのカプセルを、Mettler Toledo DSC820器具の示差走査熱量計に使用する。パラメーターとして、1分間あたり10℃加熱する20〜95℃の加熱サイクル、およびガス/流量:N/80ml/分を使用する。結果を分析し、そして、もどったアミロペクチンの融解エンタルピーを、J/gで計算する。
【0357】
(実施例10.老化防止(antistaling)効果)
実施例8に従って、モデルパン粉を調製し、計測する。表2に示されるように、PS4改変体は、示差走査熱量計により計測されるように、コントロールと比較してパン焼成後のアミロペクチンのもどりの強力な減少を示す。PS4改変体は、明白な添加効果を示す。
【0358】
(実施例11.焼成検定における堅さの効果)
焼成検定を、標準的な白パンスポンジおよびアメリカのトーストについての生地製法を使用して実行した。スポンジ生地を、1600gのSisco Mills USAからの「All Purpose Classic」小麦粉、950gの水、40gのダイズ油、および32gの乾燥酵母から調製する。そのスポンジを、Hobart回転ミキサーで、1分間低速で混合し、次に3分間スピード2で混合する。その後、そのスポンジを、2.5時間、35℃にて、85% RHで発酵させ、その後、5℃にて0.5時間発酵させる。
【0359】
その後、400gの小麦粉、4gの乾燥酵母、40gの塩、2.4gのプロピオン酸カルシウム、240gの高濃度フルクトーストウモロコシシロップ(Isosweet)、5gのPANODAN205乳化剤、5gの酵素活性なダイズ粉、30gの不活性なダイズ粉、220gの水、および30gのアスコルビン酸溶液(500gの水中に溶解した4gのアルコルビン酸から調製)を、そのスポンジに添加する。得られた生地を、Diosnaミキサーで、1分間低速で混合し、次いで6分間スピード2で混合する。その後、生地を、周囲温度にて5分間休ませ、次いで、550gの生地片を量り、5分間休ませ、次いで、各辺を1:4、2:4、3:15、4:12および10の設定で、Glimekシート状にし、焼成形態に変形させる。43℃にて90% RHで60分間盛り上がらせた後、その生地を、29分間、218℃にて焼く。
【0360】
堅さおよび弾性を、TA−XT2テクスチャー分析器を使用して測定した。柔らかさ、凝集性、および弾性を、Stable Micro Systems、UK.からのテクスチャー分析器を使用して、テクスチャープロフィール分析によりパン切れを分析することにより決定する。以下の設定を使用した:
検定前の速度:2mm/s
検定速度:2mm/s
検定後の速度:10mm/s
破裂検定差(rupture test distance):1%
差(distance):40%
力:0.098N
時間:5.00秒
回数:5回
ロードセル(load cell):5kg
トリガー型:自動−0.01N。
【0361】
結果を、図3および図4に示す。
【0362】
(実施例12.デニッシュロール(Danish Roll)の体積の制御)
デニッシュロールを、2000gのデンマーク改良小麦(Cerealiaより)、120gの圧縮酵母、32gの塩、および32gのスクロースを元にして生地から調製した。事前の水分最適化を優先して、生地に水を添加する。
【0363】
その生地を、Diosnaミキサーで混合する(低速で2分間、そして高速で5分間)。混合後のその生地の温度を26℃に維持する。1350gの生地を量り、加熱キャビネット中で30℃にて10分間休ませる。そのロールを、Fortuna型に流し込み、34℃、相対湿度85%にて45分間盛り上がらせる。その後、そのロールを、最初の13秒間蒸して、Bago2オーブン中で、18分間250℃にて焼く。焼き上がり後、計量および体積の測定前に、そのロールを、25分間冷却する。
【0364】
そのロールを、パン皮の外観、パン粉の均質性、表面の堅さ、アオスブント(ausbund)、および比容積(菜種置換法でその体積を計測する)に関して評価する。
【0365】
これらの判定に基づいて、PS4改変体は、比容積を増やし、デニッシュロールの品質パラメータを改良することが見出されている。従って、PS4改変体は、パン製品の体積を制御可能である。
【0366】
(実施例13.化学的に発酵させたバニラケーキドーナッツ)
バニラケーキドーナッツを、以下のような標準的なレシピを使用して調製する。
【0367】
【表11】

(混合物の調製手順)
1.へらおよび20クォートのボウルを備えたHobart A−200ミキサーを使用する。工程1の成分を合わせ、10分間スピード1にてブレンドする。2.2分間にわたりスピード1にて工程2の成分を添加し、次いで、さらに18分間ブレンドする。3.ケーキの仕上げ機械を介して混合物を滑らかにし、そして塊を取り除く。
【0368】
(バターの調製手順)
1.へらおよび12クォートのボウルを備えたHobart A−200ミキサーを使用する。混合物:2000グラム;水:900グラム。水をボウルの底部に添加する。2.頂部に混合物を添加する。1分間、スピード1で混合し、それらを2分間スピード2で混合する。3.標的のバターの温度は、開口なべ型揚げ鍋(open kettle fryer)中で調理されるドーナツのために72°Fであるはずである。
【0369】
(揚げ物の手順)
揚げ鍋の温度を、ドーナッツを揚げるために十分に調整されたドーナッツショートニングを使用して375°Fに設定する(油も汎用ショートニング(all−purpose shortening)も使用しない)。
【0370】
(開口やかん型揚げ鍋について)
直径1.75インチのカッターを使用してドーナッツ1個あたり43グラムの重量を標的とする。第1の面を50秒間揚げ、ひっくり返し、次いで50〜60秒間以上揚げる。揚げ鍋から取り出し、そして油分を切って、ドーナッツを冷却する。
【0371】
(実施例14.バニラケーキドーナッツにおける新鮮さの維持効果)
PSac−D34をバニラケーキドーナッツ(実施例13)に添加し、焼成後8日目に評価するとおりに新鮮さの維持を改良する。
【0372】
【表12】

(表10.PSac−D34を含まないドーナッツおよび含むドーナッツにおいて評価された新鮮さのパラメータ)
堅さ、凝集性、および弾性を、実施例11に記載されるとおりにTPAに対して測定する。
【0373】
新鮮さと、粘着性と、全体的嗜好(overall liking)を、1が下位であり、9が最良である1〜9のスケールの官能評価によって、評点付けする。
【0374】
全ての質的パラメータは、PSac−D34の添加に起因して改良されている;堅さが、減少し、粘着性および弾性が増加し、そして官能評価に基づく新鮮さ、ガム性、および全体嗜好が、改良されていることが観察される。
【0375】
(参考文献)
Penninga,D.,van der Veen,B.A.,Knegtel,R.M.,van Hijum,S.A.,Rozeboom,H.J.,Kalk,K.H.Dijkstra,B.W.,Dijkhuizen,L.(1996).The raw starch binding domain of cyclodextrin glycosyltransferase from Bacillus circulans strain 251.J.Biol.Chem.271,32777−32784。
【0376】
Sambrook J,F.E.M.T.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor NY。
【0377】
Zhou,J.H.,Baba,T.,Takano,T.,Kobayashi,S.,Arai,Y.(1989).Nucleotide sequence of the maltotetraohydrolase gene from Pseudomonas saccharophila.FEBS Lett.255,37−41。
【0378】
本文書において言及される出願および特許の各々、ならびに上記出願および特許の各々において引用または参照される各々の文書(上記出願及び特許の各々の実施(「文書に引用された出願」)、ならびに上記出願および特許の各々において、ならびに文書に引用される任意の出願において引用または言及される任意の製造物についての任意の製造者の指示書またはカタログを包含する)は、本明細書により、本明細書中で参照として援用される。さらに、本文書において引用される全ての文書、および本文書において引用される文書中で引用、または参照される全ての文書、ならびに本文書において引用、または言及される任意の製造物についての任意の製造者の指示書またはカタログは、本明細書により、本明細書中で参照として援用される。
【0379】
本発明の記載された方法およびシステムの種々の変更および改変は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態において関して記載されているが、特許請求の範囲としての本発明が、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことが、理解されるべきである。実際に、分子生物学または関連分野における当業者に明らかである本発明を実施するために、記載された態様の種々の変更は、特許請求の範囲内であることが意図される。
【0380】
(配列表)
(配列番号1)
Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列由来の、PS4参照配列。
【0381】
【化4】

(配列番号2)
PSac−D34配列;11個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0382】
【化5】

(配列番号3)
PSac−D20配列;13個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0383】
【化6】

(配列番号4)
PSac−D14配列;14個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0384】
【化7】

(配列番号5)
Pseudomonas saccharophilia グルカン、1,4−α−マルトテトラヒドロラーゼ前駆体(EC3.2.1.60)(G4−アミラーゼ)(マルトテトラオース形成アミラーゼ)(エキソ−マルトテトラヒドロラーゼ)(マルトテトラオース形成エキソ−アミラーゼ)。SWISS−PROT登録番号P22963。
【0385】
【化8】

(配列番号6)
マルトテトラヒドロラーゼをコードするP.saccharophilia mta遺伝子(EC番号=3.2.1.60)。GenBank登録番号X16732。
【0386】
【化9】

(配列番号7)
Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列由来のPS4参照配列。
【0387】
【化10】

(配列番号8)
PStu−D34配列;9個の置換を含むPseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0388】
【化11】

(配列番号9)
PStu−D20配列;11個の置換を含むPseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0389】
【化12】

(配列番号10)
PStu−D14配列;12個の置換を含むPseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0390】
【化13】

(配列番号11)
Pseudomonas stutzeri(Pseudomonas perfectomarina)。グルカン1,4−α−マルトテトラヒドロラーゼ前駆体(EC3.2.1.60)(G4−アミラーゼ)(マルトテトラオース形成アミラーゼ)(エキソ−マルトテトラヒドロラーゼ)(マルトテトラオース形成エキソ−アミラーゼ)。SWISS−PROT登録番号P13507。
【0391】
【化14】

(配列番号12)
P.stutzeriマルトテトラオース形成アミラーゼ(amyP)遺伝子、cds。GenBank登録番号M24516。
【0392】
【化15】

(配列番号13)
PSac−pPD77d33配列;10個の置換(N33Y、D34N、G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L,S334P)、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0393】
【化16】

(配列番号14)
PSac−D34(Y33N)配列;10個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0394】
【化17】

(配列番号15)
PSac−D20(Y33N)配列;12個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0395】
【化18】

(配列番号16)
PSac−D14(Y33N)配列;13個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0396】
【化19】

(配列番号17)
PStu−D34(Y33N)配列;8個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0397】
【化20】

(配列番号18)
PStu−D20(Y33N)配列;10個の置換を含むPseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0398】
【化21】

(配列番号19)
PStu−D14(Y33N)配列;11個の置換を含むPseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0399】
【化22】

(配列番号20)
PSac−pPD77d33(Y33N)配列;9個の置換(D34N、G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L,S334P)、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0400】
【化23】

(配列番号21)
PSac−D34(N34D)配列;10個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0401】
【化24】

(配列番号22)
PSac−D20(N34D)配列;12個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0402】
【化25】

(配列番号23)
PSac−D14(N34D)配列;13個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0403】
【化26】

(配列番号24)
PStu−D34(N34D)配列;8個の置換、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0404】
【化27】

(配列番号25)
PStu−D20(N34D)配列;10個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0405】
【化28】

(配列番号26)
PStu−D14(N34D)配列;11個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0406】
【化29】

(配列番号27)
PSac−pPD77d33(N34D)配列;9個の置換(N33Y、G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L,S334P)、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0407】
【化30】

(配列番号28)
PSac−D34(Y33N−N34D)配列;9個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0408】
【化31】

(配列番号29)
PSac−D20(Y33N−N34D)配列;11個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0409】
【化32】

(配列番号30)
PSac−D14(Y33N−N34D)配列;12個の置換、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0410】
【化33】

(配列番号31)
PStu−D34(Y33N−N34D)配列;7個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0411】
【化34】

(配列番号32)
PStu−D20(Y33N−N34D)配列;9個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0412】
【化35】

(配列番号33)
PStu−D14(Y33N−N34D)配列;10個の置換を含む、Pseudomonas stutzeriマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0413】
【化36】

(配列番号34)
PSac−pPD77d33(Y33N−N34D)配列;8個の置換(G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、H307L,S334P)、およびデンプン結合ドメインの欠失を含む、Pseudomonas saccharophiliaマルトテトラヒドロラーゼのアミノ酸配列。
【0414】
【化37】

(他の配列)
親ポリペプチドとしての使用にさらに適切である他のPS4改変体ポリペプチドを、以下に示す。
【0415】
【化38】

【図面の簡単な説明】
【0416】
【図1】図1は、上記PS4改変体の熱安定性改良を示すグラフである。PS4cc1は、Pseudomonas saccharophilia由来の発現制御酵素であり、シグナル配列を含まず、デンプン結合ドメインを欠く。半減期(分間)が、PS4cc1、PSac−D3、PSac−D20、およびPSac−D14に関して、温度(℃)に対してプロットされている。
【図2】図2は、モデルパン焼成系試験におけるPSac−D34の用量効果を示すグラフである。パン粉の固体含量が、NMRにより測定された。そのパン粉の固体含量として測定された老化に対する影響が、コントロール、0.5ppmのD34、1ppmのD34、2ppmのD34についてのパン焼成後の日数に対してプロットされている。
【図3】図3は、パン焼成試験の結果を示すグラフであり、これは、1kgの小麦粉当たり1mgの用量でPSac−D3およびPsac−D14を添加した際の減少した堅さおよび硬化率を示す。hPaにより測定した堅さが、コントロールについてパン焼成後の日数に対してプロットされている。
【図4】図4は、N33Y、D34N、K71R、L178F、A179Tを含まないPsac−D3と比較した、PSac−D3(N33Y、D34N、K71R、G134R、A141P、I157L、L178F、A179T、G223A、A307L、D343E、S334P)の増加した軟化効果を示す、パン焼成試験を示す。前者は、75℃において9.3分間であるPSac−D3のt1/2−75とは対照的に、t1/2−75 3.6分間を有する。同様の結果が、N33Y,D34Nにおける変異を欠くPSac−D3改変体を用いて得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PS4改変体ポリペプチドを含む食品添加剤であって、
該PS4改変体ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する親ポリペプチドに由来し、
該PS4改変体ポリペプチドは、配列番号1として示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の位置番号付けに関して134位における置換、141位における置換、157位における置換、223位における置換、307位における置換、および334位における置換を含む、
食品添加剤。
【請求項2】
請求項1に記載の食品添加剤であって、121位における置換および223位における置換の一方または両方、好ましくはG121Dおよび/もしくはG223Aの一方または両方をさらに含む、食品添加剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の食品添加剤であって、33位における置換、好ましくはN33、より好ましくはN33Y、34位における置換、好ましくはD34、より好ましくはD34N、178位における置換、および179位における置換のうちの、1つ以上をさらに含む、食品添加剤。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の食品添加剤であって、
前記親ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ、好ましくはグルカン1,4−α−マルトテトラヒドロラーゼ(EC3.2.1.60)を含み、より好ましくはPseudomonas種に由来し、好ましくはPseudomonas saccharophiliaまたはPseudomonas stutzeriに由来する、
食品添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
前記親ポリペプチドは、配列番号1または配列番号5として示される配列を有する、Pseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼからの非マルトース産生性エキソアミラーゼである、
食品添加剤。
【請求項6】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
前記親ポリペプチドは、配列番号7または配列番号11として示される配列を有する、Pseudomonas stutzeri由来の非マルトース産生性エキソアミラーゼである、
食品添加剤。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
該食品添加剤は、同じ条件下で試験した場合に前記親ポリペプチドと比較して高い熱安定性を有する、
食品添加剤。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
半減期(t1/2)、好ましくは60℃における半減期が、前記親ポリペプチドに対して、15%以上、好ましくは50%以上、最も好ましくは100%以上増加している、
食品添加剤。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
同じ条件下で試験した場合に前記親ポリペプチドと比較して高いエキソ特異性を有する、
食品添加剤。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
前記親ポリペプチドと比較して、10%以上、好ましくは20%以上、好ましくは50%以上のエキソ特異性を有する、
食品添加剤。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
前記134位における置換は、G134Rを含む、
食品添加剤。
【請求項12】
請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
前記141位における置換は、A141Pを含む、
食品添加剤。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
前記334位における置換は、S334Pを含む、
食品添加剤。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
(a)前記33位における置換は、N33Yを含み;
(b)前記34位における置換は、D34Nを含み;
(c)前記157位における置換は、I157Lを含み;
(d)前記178位における置換は、L178Fを含み;
(e)前記179位における置換は、A179Tを含み;
(f)前記223位における置換は、G223Aを含み;または
(g)前記307位における置換は、H307Lを含む、
食品添加剤。
【請求項15】
請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
置換G134R、置換A141P、置換I157L、置換G223A、置換H307L、および置換S334Pを、178位におけるフェニルアラニンもしくは179位におけるスレオニンまたはその両方とともに、必要に応じてN33YおよびD34Nとともに含む、
食品添加剤。
【請求項16】
請求項1〜15のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
配列PSac−D34(配列番号2)または配列PStu−D34(配列番号8)を有する、
食品添加剤。
【請求項17】
請求項1〜16のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
121位における置換、好ましくはG121Dをさらに含む、
食品添加剤。
【請求項18】
請求項17に記載の食品添加剤であって、
配列PSac−D20(配列番号3)または配列PStu−D20(配列番号9)を有する、
食品添加剤。
【請求項19】
請求項1〜18のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
87位における置換、好ましくはG87Sをさらに含む、
食品添加剤。
【請求項20】
請求項19に記載の食品添加剤であって、
配列PSac−D14(配列番号4)を有する、
食品添加剤。
【請求項21】
請求項19に記載の食品添加剤であって、
配列PStu−D14(配列番号10)を有する、
食品添加剤。
【請求項22】
請求項1〜21のうちのいずれか1項に記載の食品添加剤であって、
配列PSac−pPD77d33を有する、
食品添加剤。
【請求項23】
食品添加剤としての、請求項1〜22のうちのいずれか1項に記載されるPS4改変体ポリペプチドの使用。
【請求項24】
デンプンを処理するためのプロセスであって、該プロセスは、
該デンプンを、請求項1〜23のうちのいずれか1項に記載されるPS4改変体ポリペプチドと接触させる工程;および
該ポリペプチドが該デンプンから1つ以上の直鎖状生成物を生成するのを許容する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項25】
食品を調製することにおける、請求項1〜23のうちのいずれか1項に記載されるPS4改変体ポリペプチドの使用。
【請求項26】
食品を調製するためのプロセスであって、
請求項1〜23のうちのいずれか1項に記載されるポリペプチドを、食品成分と混合する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項27】
請求項25に記載の使用または請求項26に記載のプロセスであって、
前記食品は、生地または生地製品、好ましくは、加工された生地製品を含む、
プロセス。
【請求項28】
請求項25〜7のうちのいずれか1項に記載の使用またはプロセスであって、
前記食品は、パン製品である、
プロセス。
【請求項29】
パン製品を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)デンプン媒体を提供する工程;
(b)該デンプン媒体に、請求項1〜23のうちのいずれか1項に記載されるPS4改変体ポリペプチドを添加する工程;および
(c)工程(b)の間または工程(b)の後に該デンプン媒体に熱を適用して、パン製品を製造する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項30】
請求項25〜29のうちのいずれか1項に記載のプロセスによって得られる、食品、生地製品、またはパン製品。
【請求項31】
生地のための改良剤組成物であって、該改良剤組成物は、
請求項1〜23のうちのいずれか1項に記載されるPS4改変体ポリペプチドと、
少なくとも1種のさらなる生地成分または生地添加剤と、
を含む、組成物。
【請求項32】
組成物であって、
小麦粉と、
請求項1〜23のうちのいずれか1項に記載のPS4改変体ポリペプチドと、
を含む、組成物。
【請求項33】
生地製品における、該生地製品の老化、好ましくは、有害な老化を、遅延または低減するための、請求項1〜23のうちのいずれか1項に記載のPS4改変体ポリペプチドの使用。
【請求項34】
請求項1〜33のうちのいずれか1項に記載のPS4改変体ポリペプチドと、ノバミル、またはマルトース産生性α−アミラーゼ活性を有するその改変体、ホモログ、もしくは変異体との組み合わせ。
【請求項35】
請求項1〜33のうちのいずれか1項に記載の適用のための、請求項34に記載の組合せの使用。
【請求項36】
請求項34に記載の組合せで処理することにより製造される、食品。
【請求項37】
PS4改変体ポリペプチドを含む食品添加剤であって、
該PS4改変体ポリペプチドは、非マルトース産生性エキソアミラーゼ活性を有する親ポリペプチドに由来し、
該PS4改変体ポリペプチドは、配列番号1として示されるPseudomonas saccharophiliaエキソアミラーゼ配列の位置番号付けに関して置換G121D、134位における置換、141位における置換、157位における置換、223位における置換、307位における置換、および334位における置換を含む、
食品添加剤。
【請求項38】
実質的には、添付の図面を参照して本明細書中に記載され、かつ添付の図面に示される、PS4改変体ポリペプチドの使用。
【請求項39】
実質的には、添付の図面を参照して本明細書中に記載され、かつ添付の図面に示される、PS4核酸を含む組合せ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−526752(P2007−526752A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518405(P2006−518405)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002487
【国際公開番号】WO2005/003339
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】