説明

シリコン単結晶の製造方法及びそれに用いられるシリコン単結晶引上装置

【課題】冷却体の冷却能を低下させることなく、シリコン単結晶の製造時におけるCOP等の結晶欠陥の低減を図ることができ、かつ、シリコン単結晶に転位が発生した場合でも、クラックや割れの発生を抑制することができるシリコン単結晶の製造方法及びそれに用いられるシリコン単結晶引上装置を提供する。
【解決手段】ルツボ14の外周囲に設けられ、ルツボ14を加熱するヒータ18と、ルツボ14の上方に設けられ、シリコン単結晶Igの外周を包囲し、シリコン単結晶Igへの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体20と、熱遮蔽体20とシリコン単結晶Igとの間の空間領域に設けられ、シリコン単結晶Igを冷却する冷却体60と、シリコン単結晶Igの転位の発生を評価する評価手段70と、を備え、評価手段70により転位の発生を確認した場合には、前記シリコン単結晶Igを昇温させるために、前記冷却体60を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法という)によりシリコン単結晶を引上げるシリコン単結晶の製造方法及びそれに用いられるシリコン単結晶引上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン単結晶の製造時の生産性向上やCOP等の欠陥密度低減のため、シリコン単結晶の引上速度の高速化が要求されている(例えば、特許文献1)。
この引上速度の高速化を図るためには、シリコン単結晶に発生する凝固潜熱を固液界面からシリコン単結晶中を伝熱させて上方に逃がす、すなわち、引上方向の温度勾配Gを増大させる必要がある。
【0003】
この一手段として、坩堝内の融液の上方であって、且つ単結晶の引上げ域の周囲に配設され、上側から下側に向かうに従って縮径された筒状の金属製遮閉部材と、該金属製遮閉部材に付設された冷却手段と、前記金属製遮閉部材の外周面を溶融原料からの蒸発物及び輻射熱源から遮閉すべく前記外周面の外側に所要の間隙を隔てて配設された筒状の遮閉部材とを具備する単結晶成長装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の成長装置のように、引上げ中のシリコン単結晶を冷却手段により強制冷却した場合には、シリコン単結晶内部の熱応力が増加するため、引上げ終了後のシリコン単結晶の運搬中や後工程であるシリコン単結晶の切断中に、シリコン単結晶にクラックや割れが発生しやすい問題がある。
特に、近年のシリコンウェーハの大口径化に伴い、引上げるシリコン単結晶も大口径化し、これによって、引上げ中のシリコン単結晶の半径方向の温度差(シリコン単結晶内部の熱応力)も更に大きくなるため、この問題がより顕著となってきている。
【0005】
加えて、シリコン単結晶の引上げ中に、シリコン単結晶に転位が発生した場合には、転位が発生した部分に残留応力が集中するため、更にクラックや割れが発生しやすくなる。最悪の場合、シリコン単結晶の引上げ中に、シリコン単結晶にクラックや割れが発生し、欠けた又は割れたシリコン単結晶の一部がシリコン融液中に落下し、融液漏れ等の大事故が発生する危険性がある。
【0006】
このような問題に際し、冷却用筒体の内周面とシリコン単結晶の外周面とにより区画される空間領域に前記冷却用筒体の前記シリコン単結晶への冷却能を調整するための冷却遮蔽用筒体が設けられたシリコン単結晶の育成装置が提案されている(例えば、特許文献3)。
また、育成されつつある結晶の1100〜900℃ の温度域における熱応力が、ミーゼスの相当応力において40MPa未満となるように、引き上げ中の結晶の周囲に熱遮蔽体および冷却体が配置され、引き上げ途中で有転位化した場合、その有転位化位置からの多結晶部分の長さを結晶直径D(mm)に対し(1/D)×3×10(mm)以下として、融液から切り離すシリコン結晶の製造方法が提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−98047号公報
【特許文献2】特開昭63−256593号公報
【特許文献3】特開2005−231969号公報
【特許文献4】特開2006−213582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載のシリコン単結晶の育成装置は、冷却体の冷却能を調整する冷却遮蔽用筒体が設けられているため、冷却能が低下し、引上速度を高速化するには限界がある。すなわち、シリコン単結晶の製造時におけるCOP等の結晶欠陥を低減させるには限界がある。
【0009】
また、特許文献4に記載のシリコン結晶の製造方法は、CZ法により育成される大口径のシリコン結晶の割れ発生を有効に抑制することができるが、有転位化した転位の挙動を制御するものではないため、当該シリコン結晶の割れ発生の抑制には限界がある。
【0010】
更に、特許文献4に記載のシリコン結晶の製造方法は、引き上げ途中で転位が発生した場合、シリコン単結晶を融液から切り離してしまうため、ルツボ内にはシリコン原料が残留してしまう問題がある。なお、シリコン原料の有効利用を考えた場合は、この残留したシリコン原料を再利用することが要求されるが、このようにルツボ内に残留し、かつ、冷却されて固化された又は固化されなくとも長時間融液のままルツボ内で保持されたシリコン原料は金属系の不純物濃度が高くなるため、半導体用シリコン単結晶の原料として再利用することが難しい。
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、冷却体の冷却能を低下させることなく、シリコン単結晶の製造時におけるCOP等の結晶欠陥の低減を図ることができ、かつ、シリコン単結晶に転位が発生した場合でも、クラックや割れの発生及びシリコン単結晶の良品率の低下についても抑制することができるシリコン単結晶の製造方法及びそれに用いられるシリコン単結晶引上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシリコン単結晶の製造方法は、ルツボ内のシリコン原料を溶融してシリコン融液とし、チョクラルスキー法により前記シリコン融液からシリコン単結晶を引上げるシリコン単結晶の製造方法であって、前記ルツボの外周囲に設けられ、前記ルツボを加熱するヒータと、前記ルツボの上方に設けられ、前記シリコン単結晶の外周を包囲し、前記シリコン単結晶への輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体と、前記熱遮蔽体と前記シリコン単結晶との間の空間領域に設けられ、前記シリコン単結晶を冷却する冷却体と、前記シリコン単結晶の転位の発生を評価する評価手段と、を備え、前記評価手段により転位の発生を確認した場合に、前記シリコン単結晶を昇温させるために、前記冷却体を上昇させることを特徴とする。
【0013】
前記冷却体を上昇させる上昇速度は、前記シリコン単結晶を引上げる引上速度の20倍以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るシリコン単結晶引上装置は、ルツボ内のシリコン原料を溶融してシリコン融液とし、チョクラルスキー法により前記シリコン融液からシリコン単結晶を引上げるシリコン単結晶引上装置であって、前記ルツボの外周囲に設けられ、前記ルツボを加熱するヒータと、前記ルツボの上方に設けられ、前記シリコン単結晶の外周を包囲し、前記シリコン単結晶への輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体と、前記熱遮蔽体と前記シリコン単結晶との間の空間領域に設けられ、前記シリコン単結晶を冷却する冷却体と、前記シリコン単結晶の転位の発生を評価する評価手段と、前記評価手段により転位の発生を確認した場合に、前記シリコン単結晶を昇温させるために、前記冷却体を上昇させる上昇手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却体の冷却能を低下させることなく、シリコン単結晶の製造時におけるCOP等の結晶欠陥の低減を図ることができ、かつ、シリコン単結晶に転位が発生した場合でも、クラックや割れの発生及びシリコン単結晶の良品率の低下についても抑制することができるシリコン単結晶の製造方法及びそれに用いられるシリコン単結晶引上装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係わるシリコン単結晶の製造方法が適用されるシリコン単結晶引上装置の一例の概略を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係わるシリコン単結晶の製造方法に用いられるシリコン単結晶引上装置の一例の概略を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係わるシリコン単結晶の製造方法及びそれに用いられるシリコン単結晶引上装置について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わるシリコン単結晶の製造方法が適用されるシリコン単結晶引上装置の一例の概略を示す概略断面図である。
【0018】
本発明に係わるシリコン単結晶の製造方法は、図1に示すように、チャンバ12と、チャンバ12内に設けられ、シリコン原料(主に、ポリシリコン)を保持するルツボ14と、ルツボ14の外周囲に設けられ、ルツボ14を加熱し、ルツボ14内のシリコン原料を溶融してシリコン融液16とするヒータ18と、ルツボ14の上方に設けられ、CZ法によりシリコン融液16から引上げたシリコン単結晶Igの外周を包囲し、シリコン単結晶Igへの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体20と、熱遮蔽体20とシリコン単結晶Igとの間の空間領域に設けられ、シリコン単結晶Igを外周から冷却する冷却体60と、シリコン単結晶Igの転位の発生を評価する評価手段70と、を備えたシリコン単結晶引上装置10が用いられ、前記評価手段70によりシリコン単結晶Igに転位の発生を確認した場合に、前記シリコン単結晶Igを昇温させるために、前記冷却体60を上昇させることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るシリコン単結晶の製造方法は、上述したような構成を備えているため、冷却体の冷却能を低下させることなく、シリコン単結晶の製造時におけるCOP等の結晶欠陥の低減を図ることができ、かつ、シリコン単結晶に転位が発生した場合でも、クラックや割れの発生及びシリコン単結晶の良品率の低下についても抑制することができる。
【0020】
すなわち、本発明に係るシリコン単結晶の製造方法は、冷却体の冷却能を調整する冷却遮蔽用筒体等が設けられていないため、冷却体の冷却能を低下させることなく引上速度の高速化を図ることができる。従って、シリコン単結晶の製造時におけるCOP等の結晶欠陥の低減を図ることができる。更に、転位の発生が確認された場合に、前記冷却体を上昇させることによって、シリコン単結晶の転位が発生した部分の強制冷却を緩和させて(当該部分の温度を上昇させて)、当該部分の半径方向の温度差を緩和させることによって、シリコン単結晶のクラックや割れの発生を抑制することができる。
加えて、冷却体を上昇させることによって、当該転位が発生した部分の上方の部分の温度も上昇させて、当該転位を上方に伸張させることで、シリコン単結晶の冷却後の当該転位の残留応力が低減するため、引上げ終了後のシリコン単結晶の運搬中や後工程であるシリコン単結晶の切断中におけるシリコン単結晶のクラックや割れの発生を抑制することができる。
【0021】
すなわち、本発明に係るシリコン単結晶の製造方法を用いないで製造されたシリコン単結晶は、その冷却後にシリコン単結晶中にクラックが入っている場合は、上述したような転位の残留応力が低減されていないため、シリコン単結晶の運搬中や後工程であるシリコン単結晶の切断中に当該クラックが転位の無い部分まで伝播してしまい、良品率の低下を招いてしまうが、本発明に係るシリコン単結晶の製造方法を用いて製造されたシリコン単結晶は、その冷却後にシリコン単結晶中にクラックや割れが入っている場合でも、上述したように、転位の残留応力が低減されているため、このような良品率の低下を抑制することができる。
【0022】
また、本発明に係るシリコン単結晶の製造方法は、前記評価手段70によりシリコン単結晶Igに転位の発生を確認した場合に、前記シリコン単結晶Igを昇温させるために、前記冷却体60を上昇させた後、前記シリコン単結晶Igの引上げを継続することが好ましい。
【0023】
シリコン単結晶Ig引上げ中に、シリコン単結晶Igに転位が発生した場合は、その下方の部分は多結晶化するため製品として使用することは出来ないものの、本発明に係るシリコン単結晶の製造方法によって得られたシリコン単結晶は、上述したように、転位の残留応力が低減されているため、シリコン単結晶の引上げを継続し、最大シリコン融液16が無くなるまで引上げを行っても、シリコン単結晶のクラックや割れの発生及び良品率の低下を抑制することができる。
更に、このようなシリコン単結晶の引上げにおいて多結晶化した部分は、ルツボ内に残留し、かつ、冷却されて固化された又は固化されなくとも長時間融液のままルツボ内で保持されたシリコン原料よりもシリコンとしての純度が高く、金属系の不純物濃度が低いため、当該多結晶化した部分は、シリコン原料として再利用することができるため好ましい。
【0024】
ルツボ14は、シリコン融液16を保持する石英ルツボ14aと、石英ルツボ14aを収容するカーボンルツボ14bとで構成されている。
【0025】
ヒータ18の外周囲には第1保温部材22が設けられ、第1保温部材22の上部には、ヒータ18と一定の間隔を有して第2保温部材24が設けられている。
【0026】
熱遮蔽体20の上方には、熱遮蔽体20の内周側、熱遮蔽体20とシリコン融液16との間を通って、ルツボ14の下方に位置する排出口26からチャンバ12外に排出されるキャリアガスG1(好適にはアルゴンガス)を供給するキャリアガス供給口28が設けられている。
【0027】
また、チャンバ12内には、シリコン単結晶Igを育成するために用いられる種結晶50を保持するシードチャック32が取り付けられた引上用ワイヤ34が、ルツボ14の上方に設けられている。引上用ワイヤ34は、チャンバ12外に設けられた回転昇降自在なワイヤ回転昇降機構36に取り付けられている。
【0028】
ルツボ14は、チャンバ12の底部を貫通し、チャンバ12外に設けられたルツボ回転昇降機構38によって回転昇降可能なルツボ回転軸40に取付けられている。
【0029】
熱遮蔽体20は、第2保温部材24の上面に取付けられた熱遮蔽体支持部材42を介してルツボ14の上方に保持されている。
【0030】
キャリアガス供給口28には、調整弁43を介して、チャンバ12内にキャリアガスG1を供給するキャリアガス供給部44が接続されている。排出口26には、バタフライ弁46を介して、熱遮蔽体20の内周側、熱遮蔽体20とシリコン融液16との間を通ったキャリアガスG1を排出するキャリアガス排出部48が接続されている。調整弁43を調整することでチャンバ12内に供給するキャリアガスG1の供給量を、バタフライ弁46を調整することでチャンバ12内から排出する排出ガス(キャリアガスG1及びシリコン融液16から発生したSiOxガス等も含む)の排出量をそれぞれ制御する。
【0031】
冷却体60は、ワイヤ63により、熱遮蔽体20とシリコン単結晶Igとの間の空間領域に設けられており、ワイヤ63は、チャンバ12外に設けられた昇降自在なワイヤ昇降機構65に取り付けられている。
【0032】
評価手段70は、チャンバ12に設けられた窓12aからチャンバ12内を、例えば、CCDカメラで評価することで行うことができる。
【0033】
すなわち、本発明に係るシリコン単結晶の製造方法は、図1に示すようなシリコン単結晶引上装置10を用いて行う場合には、チャンバ12に設けられた窓12aからチャンバ12内のシリコン単結晶Igを確認し、シリコン単結晶Igに転位の発生を確認した場合には、前記ワイヤ昇降機構65によりワイヤ63を上昇させることで水冷体60を上昇させて行う。
【0034】
前記冷却体を上昇させる上昇速度は、前記シリコン単結晶を引上げる引上速度の20倍以上であることが好ましい。
前記上昇速度が20倍未満である場合には、当該転位が発生した部分の上方の部分の温度が上昇しにくく、当該シリコン単結晶が冷却されてしまうため、当該転位を上方に伸張させることが難しい場合がある。
前記上昇速度の上限値は、引上装置の設計上、100倍以下であることが好ましい。
【0035】
前記評価手段70により転位の発生を確認し、前記シリコン単結晶Igを昇温させるために、前記冷却体60を上昇させた後、シリコン単結晶Igをシリコン融液16から切り離す場合は、直胴部の直径を縮径させてテール部を形成した後に行ってもよく、テール部を形成しないでテールレスにより行っても良い。
【0036】
次に、前述したシリコン単結晶の製造方法に用いられるシリコン単結晶引上装置について説明する。
図2は、本発明に係わるシリコン単結晶の製造方法に用いられるシリコン単結晶引上装置の一例の概略を示す概略断面図である。
本発明に係わるシリコン単結晶引上装置10aは、図2に示すように、評価手段70によりシリコン単結晶Igに転位の発生を確認した場合に、前記シリコン単結晶を昇温させるために、前記冷却体60を上昇させる上昇手段75を備える。その他は、図1に示すシリコン単結晶引上装置10と同一であるため、説明を省略する。
【0037】
上昇手段75は、評価手段70(例えば、CCDカメラ)及びワイヤ昇降機構65に接続され、前記評価手段70により引上げ中のシリコン単結晶Igに転位の発生を確認した場合には、前記ワイヤ昇降機構65によりワイヤ63を上昇させることによって冷却体60を上昇させる。
【0038】
以上より、本発明に係るシリコン単結晶引上装置においても、前述したシリコン単結晶の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
【0040】
(実施例1)
図1に示すシリコン単結晶引上装置10を用いて、シリコン原料360kgにて、ネック部55を形成し、その後、P型、面方位<100>の直径310mmの直胴部の長さが400mmのシリコン単結晶Igを合計で10本引上げた。
その際、シリコン単結晶Igの引上速度を1.8mm/minとして、シリコン単結晶の直胴部の長さを250mm育成された時点で、故意に、異物をシリコン融液の液面上に投入し、シリコン単結晶の直胴部に転位を発生させると共に、チャンバ12の窓12aからCCDカメラにより、熱遮蔽体20の内周空間内であり、かつ冷却体60の下端よりも下方の領域を通過する位置(図1に示す位置)にてシリコン単結晶の転位の発生を評価しつつ、この領域で当該転位が確認された時に、上昇速度18mm/min(シリコン単結晶Igの引上速度の10倍)にて水冷体60を上昇させ、その後、直胴部の直径を縮径させてテール部を形成した後に、シリコン融液からシリコン単結晶を切り離し、チャンバ12内からシリコン単結晶Igを取り出し、シリコン単結晶Igを冷却させた。
なお、このときに使用した冷却体60の長さ(シリコン単結晶Igの引上方向の長さ)は70mmであった。
【0041】
得られた10本のシリコン単結晶Igについて、クラックや割れの発生を目視にて評価し、10本中のクラックや割れの発生率(以下、発生率1ともいう)を評価した。更に、当該シリコン単結晶Igを後工程であるシリコン単結晶の切断工程まで搬送し、かつ、シリコン単結晶の切断加工(直径300mm、厚さ800μm〜900μmのスライスウェーハの作製)を行い、その際に発生したシリコン単結晶引上げ時のクラックの原因によるスライスウェーハのクラックや割れの発生率(以下、発生率2ともいう)をそれぞれ評価した。
【0042】
(実施例2)
水冷体60の上昇速度を36mm/min(シリコン単結晶Igの引上速度の20倍)として、その他は実施例1と同様な条件にて、シリコン単結晶Igを合計で10本引上げた。
得られた10本のシリコン単結晶Igについて、実施例1と同様な方法で、クラックや割れの発生率(発生率1)及びシリコン単結晶引上げ時のクラックの原因によるスライスウェーハのクラックや割れの発生率(発生率2)をそれぞれ評価した。
【0043】
(実施例3)
水冷体60の上昇速度を90mm/min(シリコン単結晶Igの引上速度の50倍)として、その他は実施例1と同様な条件にて、シリコン単結晶Igを合計で10本引上げた。
得られた10本のシリコン単結晶Igについて、実施例1と同様な方法で、クラックや割れの発生率(発生率1)及びシリコン単結晶引上げ時のクラックの原因によるスライスウェーハのクラックや割れの発生率(発生率2)をそれぞれ評価した。
【0044】
(実施例4)
水冷体60の上昇速度を180mm/min(シリコン単結晶Igの引上速度の100倍)として、その他は実施例1と同様な条件にて、シリコン単結晶Igを合計で10本引上げた。
得られた10本のシリコン単結晶Igについて、実施例1と同様な方法で、クラックや割れの発生率(発生率1)及びシリコン単結晶引上げ時のクラックの原因によるスライスウェーハのクラックや割れの発生率(発生率2)をそれぞれ評価した。
【0045】
(比較例1)
水冷体60を上昇させないで、その他は実施例1と同様な条件にて、シリコン単結晶Igを合計で10本引上げた。
得られた10本のシリコン単結晶Igについて、実施例1と同様な方法で、クラックや割れの発生率(発生率1)及びシリコン単結晶引上げ時のクラックの原因によるスライスウェーハのクラックや割れの発生率(発生率2)をそれぞれ評価した。
【0046】
実施例1から4及び比較例1における試験条件及び試験結果を併せて表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、実施例1から4は、比較例1と比較して、水冷体60を上昇させることで、発生率1、2共に大きく低減することが認められる。 更に、水冷体の上昇速度が36mm/min以上の場合(引上速度より20倍以上の場合:実施例2〜4)は、発生率1、2共に更に大きく良化することが認められる。
【符号の説明】
【0049】
10 シリコン単結晶引上装置
10a シリコン単結晶引上装置
12 チャンバ
12a 窓
14 ルツボ
16 シリコン融液
18 ヒータ
20 熱遮蔽体
60 冷却体
70 評価手段
75 制御手段
Ig シリコン単結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルツボ内のシリコン原料を溶融してシリコン融液とし、チョクラルスキー法により前記シリコン融液からシリコン単結晶を引上げるシリコン単結晶の製造方法であって、
前記ルツボの外周囲に設けられ、前記ルツボを加熱するヒータと、
前記ルツボの上方に設けられ、前記シリコン単結晶の外周を包囲し、前記シリコン単結晶への輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体と、
前記熱遮蔽体と前記シリコン単結晶との間の空間領域に設けられ、前記シリコン単結晶を冷却する冷却体と、
前記シリコン単結晶の転位の発生を評価する評価手段と、を備え、
前記評価手段により転位の発生を確認した場合に、前記シリコン単結晶を昇温させるために、前記冷却体を上昇させることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記冷却体を上昇させる上昇速度は、前記シリコン単結晶を引上げる引上速度の20倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
ルツボ内のシリコン原料を溶融してシリコン融液とし、チョクラルスキー法により前記シリコン融液からシリコン単結晶を引上げるシリコン単結晶引上装置であって、
前記ルツボの外周囲に設けられ、前記ルツボを加熱するヒータと、
前記ルツボの上方に設けられ、前記シリコン単結晶の外周を包囲し、前記シリコン単結晶への輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体と、
前記熱遮蔽体と前記シリコン単結晶との間の空間領域に設けられ、前記シリコン単結晶を冷却する冷却体と、
前記シリコン単結晶の転位の発生を評価する評価手段と、
前記評価手段により転位の発生を確認した場合に、前記シリコン単結晶を昇温させるために、前記冷却体を上昇させる上昇手段と、
を備えることを特徴とするシリコン単結晶引上装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−219300(P2011−219300A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88949(P2010−88949)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】