説明

シリコーンゴム組成物

シリコーンゴム組成物であって、25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、処理充填剤およびその組成物の硬化を生じさせるのに適する硬化剤を含み、充填剤はヒドロキシアパタイトを含み、補強用シリカ充填剤を実質的に含まない。本質的には、ヒドロキシアパタイトは存在する唯一の補強用充填材料である。シリコーンゴムでの補強用充填剤としてのヒドロキシアパタイトの使用も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ヒドロキシアパタイトを含有する充填剤配合シリコーンゴム組成物および処理ヒドロキシアパタイトを含有する充填剤高配合シリコーンゴム組成物の製造方法に関する。具体的には、シリコーンゴム組成物における実質的に唯一の充填剤として、ヒドロキシアパタイトを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、しばしばシリコーンエラストマーと呼ばれ、三つの必須成分からなる。それらの成分は、(i)実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマー、(ii)1種以上の充填剤、および(iii)硬化剤(架橋剤または加硫剤と時々呼ばれる)である。一般にシリコーンゴム組成物の二つのタイプ、熱加硫型(HTV)シリコーンゴムおよび室温加硫型(RTV)シリコーンゴムが存在する。さらに、熱加硫または高温加硫型(HTV)シリコーンゴム組成物は、組成物の未硬化の粘度に応じて、高稠度ゴム(HCR)または液状シリコーンゴム(LSR)としてしばしば区別されている。しかし、室温加硫型(RTV)シリコーンゴム組成物の名称は、多くのRTV組成物が反応を妥当な速度で進めるため若干の加熱が必要であることから、誤解させるかもしれない。
【0003】
HTVシリコーンゴム組成物は、実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマーを充填剤および他の所望の添加剤と混合してベースまたは未加工のストックを形成することにより一般に製造される。使用前に、ベースは、硬化剤、他の充填剤および顔料、粘着防止剤、可塑剤、および接着促進剤などの添加剤を配合して混ぜ合わせられ;プレス加硫、射出・トランスファー成形により、または連続的に押出により加硫されて、最終シリコーンゴム製品を形成することができる。例えば、ケーブル絶縁用途に用いられるシリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムが角型押出機ヘッド(angular extruder heads)にてケーブル芯に適用される独特な技術により押し出される。
【0004】
高稠度ゴム(HCR)について、最も幅広く使われている実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマーは非常に高粘度のポリシロキサンである。そのような直鎖状高分子量シリコーンポリマーは25℃で1,000,000mPa・s以上の粘度を有する。典型的にはこれら直鎖状高分子量シリコーンポリマーは25℃で非常に高粘度であるのでガム状材料の形態であり、それらは非常に高粘度であるので粘度測定が非常に困難であり、そのためそれらはよくウィリアムス可塑度(ASTM D926)を参照して言及される。高粘度ポリシロキサンガム状ポリマーのウィリアムス可塑度は一般に少なくとも30であり、典型的には約30〜250の範囲である。ここで用いられる可塑度は、体積2立方cmで高さおよそ10mmのシリンダー状試験片について、25℃で3分間49ニュートンの圧縮荷重後の厚さミリメートルx100として規定される。これらポリシロキサンガム状ポリマーは一般に実質的にシロキサン骨格(−Si−O−)を含有し、その骨格に例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびt−ブチル基などのアルキル基、および例えばアリル、1−プロペニル、イソプロペニル、またはヘキセニル基などのアルケニル基などの不飽和基が結合するが、ビニル基および/またはビニル基とヒドロキシル基との組合せがそれらの架橋を支援するため特に好ましい。そのようなポリシロキサンガム状ポリマーは典型的にポリマーの繰返し単位の数を表す重合度(DP)500〜20,000を有する。
【0005】
歴史的にみて、HTVシリコーンゴム組成物は1種以上の充填剤を含有する。用いられる充填剤は補強用充填剤および非補強用充填剤と一般に呼ばれる。補強用充填剤は加硫されたゴムに高強度を付与し、ヒュームドシリカおよび沈降シリカなどの微粉末非晶質シリカを含め得る。増量または非補強用充填剤は一般にシリコーンゴム組成物のコストを下げるために用いられ、一般に石英粉末、炭酸カルシウムおよび珪藻土などの安価充填材料を含む。補強用充填剤は典型的に単独で用いられるかまたは増量または非補強用充填剤と一緒に用いられる。補強用充填剤は、シリコーンゴム組成物の物理的および/または機械的特性、すなわち引張り強さおよび圧縮永久ひずみを改善するため、通常オルガノシラン、オルガノシロキサンまたはオルガノシラザンで処理されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開昭62−122670号は、生体組織に適合性のあるヒドロキシアパタイトをオルガノシロキサンポリマーとともに含む医療用物品におけるヒドロキシアパタイトの使用を記載する。特開昭63−242249号は、骨または歯用インプラントの使用のための弾性材料を記載する。その材料は強固なセラミックベース材料を含み、それはアパタイトセラミックを含有してよく、またシリコーンベース接着剤を用いてベース材料表面に接着された、リン酸カルシウムを主に含む繊維集合体を有する。特開平01−186806号は、液状シリコーンゴム(任意にヨードホルム、ヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウムおよびX線造影材をブレンドされた)を含む歯科用シーリング剤を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の実施態様によれば、シリコーンゴム組成物であって、
(i)25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、
(iii)前記組成物の硬化を生じさせるのに適する硬化剤
を含み、前記組成物は補強用シリカ充填剤を実質的に含まず、前記充填剤がヒドロキシアパタイトを含むことを特徴とするシリコーンゴム組成物を提供する。
【0008】
別段の表示がない限り、すべての粘度を25℃で測定する。本発明による組成物は液状シリコーンゴム(LSR)組成物として用いることができる。本発明による組成物がLSRであるなら、用いられるオルガノポリシロキサンポリマーの粘度は25℃で100〜150,000mPa・sである。本発明による組成物は高稠度ゴム(HCR)組成物として用いることができる。本発明による組成物がHCRであるなら、用いられるオルガノポリシロキサンポリマーの粘度は好ましくは25℃で少なくとも250,000mPa・sであるが、典型的には25℃で1,000,000mPa・sを超え、少なくとも30のウィリアムス可塑度を有する。25℃で150,000mPa・s〜250,000mPa・sまでの粘度を有するオルガノポリシロキサンの使用を当業者に阻むものではなく、その範囲はLSRおよびHCR型組成物それぞれにとって好ましい。
【0009】
上で記述されたとおり、本発明による組成物は、補強用シリカ充填剤を実質的に含まない。本発明のために、補強用シリカ充填剤は、沈降シリカおよびフュームドシリカならびに他の補強用シリカ(それ故、シリコーンゴム組成物に補強効果を与えないシリカ粉末(Ground silica)は除外される)を意味するよう意図されている。用語「実質的に含まない」とは、当然のことながらシリカ充填剤が単独でポリマー+処理ヒドロキシアパタイト充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量5重量部まで存在してもよいように、組成物が補強用シリカ充填剤を本質的に含まないということを意味するよう意図されていると理解すべきである。あるいは、補強用シリカ充填剤がポリマー+処理ヒドロキシアパタイト充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量3重量部まで存在する。あるいは、補強用シリカ充填剤がポリマー+処理ヒドロキシアパタイト充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量1重量部まで存在する。さらに代替的には、前記組成物が唯一の補強用充填剤としてヒドロキシアパタイトを含み、補強用シリカ充填剤を一切含まない。あるいは、ヒドロキシアパタイトが組成物中に存在する唯一の充填剤である。ポリマー100重量部あたり少なくとも25重量部の量で存在しないと、一般にシリコーンゴムの物理的特性で補強効果が分からないことに注目すべきである。従って、許容される水準で存在する補強用シリカ充填剤は、シリコーンゴムの物理的特性に僅かな補強効果があるかまたは何も補強効果がない。下記に詳細に述べるように、沈降シリカおよび/またはヒュームドシリカが存在するときは、それらはレオロジー調整剤の特性のために用いられる。本質的には本明細書で記載されているとおり組成物中に見ることのできる補強効果は、ヒドロキシアパタイトの補強特性により与えられている。
【0010】
前記オルガノポリシロキサンポリマーは、好ましくは、式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12
を有する1種以上のポリマーを含む。式中、各Rは同じまたは異なり、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基、フェニル基または3,3,3−トリフルオロアルキル基であり;各Zは同じまたは異なり、水素またはアルケニル基もしくはアルキニル基などの不飽和炭化水素基であり;各R1は同じまたは異なってもよく、硬化剤が前記ポリマーを硬化させ得るように用いられる硬化剤に適合する必要がある。R1はZ、R、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基から選択し得る。各R5は同じまたは異なってもよく、1〜6個の炭素原子を有する二官能性飽和炭化水素基であり;xは整数であり、yは0または整数であり;sは0または1〜50までの整数であり;x+y+sの合計は要求される最終製品に適するポリマー粘度をもたらす数である。HCR組成物の場合、好ましくはポリマーの粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・sである。あるいは、HCR組成物の場合、ポリマーの粘度は25℃で少なくとも1,000,000mPa・sである。yおよび/またはsが整数であれば、ポリマー鎖中の(R2SiO)基、(RZSiO)基および/または(R2Si−R5−(R2)SiO)基はランダム状に分布されるか、またはオルガノポリシロキサンポリマーはブロックポリマーの形態でもよい。
【0011】
好ましくは、各R基はアルキル基であり、最も好ましくは各Rはメチルまたはエチル基である。好ましくは、Zがアルケニル基であるなら、それは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜7個の炭素原子を有し、好ましい例はビニルまたはヘキセニル基である。R5は、例えば、−CH2−、−CH2CH2−および−CH2CH2CH2−であり得るが、最も好ましくは各R5は−CH2CH2−である。
【0012】
本発明の一つの好ましい実施態様(前記組成物がHCR組成物である)では、前記組成物のオルガノポリシロキサン成分は、次式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12 (1)
および
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s1(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12 (2)
を有する二成分混合物のような2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であり得る。式中、各Rは同じまたは異なり、上述されたとおりであり、および各R1は同じまたは異なり、上述されたとおりであり;x、yおよびsは先に定義されたとおりであり、x1、y1およびs1の値はx、yおよびsそれぞれと同じ範囲であるが、x、yおよびsの少なくとも1個はx1、y1およびs1それぞれの値と異なる値である。好ましくは、R1基の少なくとも25%はZ基であり、最も好ましくはアルケニル基であり、ポリマー混合物の粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sであり、ポリマー(1)は、少なくとも1,000の重合度(DP)、すなわちxの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値を有し且つポリマー(2)は、少なくとも100のDP、すなわちx1の値またはx1とy1および/もしくはs1(存在する場合)との合計値を有する。
【0013】
従って、前記組成物は、式:
Me2ViSiO[(Me2SiO)x(MeViSiO)y]SiMe2Vi
および
Me2ViSiO[(Me2SiO)x1]SiMe2Vi
を有する2種の高粘度オルガノポリシロキサンポリマーの混合物(式中、Meはメチル基(−CH3)を表し、Viはビニル基(CH2=CH−)を表し、xおよびyの合計値は少なくとも1,000であり、x1の値は少なくとも1000である)を含み得る。
【0014】
あるいは、他の好ましい実施態様では、前記オルガノポリシロキサンは、次式
RR12SiO[(R2SiO)x(RZSiO)y(R2Si−R5−(R2)SiO)s]SiRR12
および
RR12SiO[(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12
を有する二成分の混合物(各式中、R、ZおよびR1は上述されたとおりであり、x、y、s、x1およびy1は前に記述されたとおりであり、前記混合物の粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sの値を有し、xの値またはxとyおよび/またはs(いずれか一方または両方が存在する場合)との合計値は少なくとも1,000であり、x1およびy1の値は100〜1000までである。好ましくは、R1の少なくとも25%がZ基で、最も好ましくはアルケニル基である。xの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値が25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sのポリマー混合物の粘度を与える。典型的には、xの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値は少なくとも1,000である)を含む。
【0015】
発明者らは、意外にも、ヒドロキシアパタイトがシリコーンゴム組成物において唯一の補強用充填剤として用いられ得ることを確認した。ヒドロキシアパタイト(その他にデュラパイト、ヒドロキシルアパタイト、alveograf、ossopanおよびperiografとして知られているが、以下ヒドロキシアパタイトと称するものとする)は、一般実験式:
5(OH)(PO43
(あるいはこれは
3M3(PO42Ca(OH)2
または
10(PO46(OH)2
と書くことができる)を有する水和二価金属リン酸塩である。Mは、任意の適する二価金属イオン、例えばカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、銅、鉄、バリウム、マンガン、ニッケルおよびコバルトである。最も一般的な例はMがカルシウムであるものである。
【0016】
それはリン酸塩ベース岩石中の鉱物として存在し、またカルシウム種はエナメル質や骨などの天然生体物質で広く見られる。典型的には、それらは水に実質的に不溶性であるロゼットに配列した六角形針状結晶の形をとる。それは補綴補助およびカルシウム補足の良く知られた構成物質である。
【0017】
述べたように、充填剤を疎水化し、それにより本発明による組成物中の他の成分と均質な混合物を取扱い且つ得易くするために、処理ヒドロキシアパタイトを用いることが本発明の本質的な特徴である。ヒドロキシアパタイトの疎水化は、シリコーンポリマーに容易に湿潤される疎水化変性ヒドロキシアパタイトをもたらす。疎水化変性ヒドロキシアパタイトは凝集せず、よって容易にシリコーンポリマーに均質に取り入れられる。
【0018】
処理ヒドロキシアパタイト充填剤は前記組成物中に存在する充填剤の大部分を占め、ポリマー100重量部あたり約5〜200重量部、より好ましくはポリマー100重量部あたり30〜150重量部、最も好ましくはポリマー100重量部あたり50〜125重量部の量で存在する。
【0019】
ヒドロキシアパタイトの表面を疎水化する任意の適する処理剤が用いられ得る。例として、脂肪酸および/または脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸エステル)などの有機処理剤、またはオルガノシラン、ヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノシラザン、もしくは短鎖オルガノポリシロキサンポリマー(例えば短鎖シロキサンジオール)が挙げられる。
【0020】
ヒドロキシアパタイトの処理に最も適すると見出したシランは、一般式R3(4-n)Si(OR3n(式中、nは1〜3の値であり;各R3は同じまたは異なり、一価の有機基、例えばアルキル基、アリール基、またはアルケニル基(例としてビニルまたはアリル)、アミノ基もしくはアミド基などの官能基を表す)のアルコキシシランである。よって、いくつかの適するシランとしては、メチルトリエトキシシランおよびメチルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのフェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。所望なら、シラザンもヒドロキシアパタイト充填剤用処理剤として用いることができる。それらには、(以下に限定されないが)ヘキサメチルジシラザン;1,1,3,3−テトラメチルジシラザン;および1,3−ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。本発明に用いることができる他の適する処理剤には、本出願人の同時係属特許出願である国際公開第2008/034806号に記載されているものである。
【0021】
短鎖オルガノポリシロキサンには、例えば2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサンおよび少なくとも1個のSi−H基(末端基でもよいし、末端基でなくてもよい)を含むオルガノポリシロキサンが挙げられる。このオルガノポリシロキサンは、例として式:
4h3-hSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4h3-h
を有するものである(各式中、R4は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;Hは水素であり、hは0または1〜3の整数であり、fおよびgは独立して0または整数で、処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜5000mPa・sの粘度を有するものである)。
【0022】
好ましくは、処理される場合、処理ヒドロキシアパタイト充填剤のおよそ1〜10重量%が処理剤である。あるいは、処理剤は処理ヒドロキシアパタイト充填剤の2.5〜10重量%である。充填剤は組成物に添加する前に予め処理するか、またはポリマーと混合する間にその場処理することもできる。
【0023】
上で述べたように、硬化剤は必須であり、ここで用いることができる化合物として、ジアルキルペルオキシド、ジフェニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、パラメチルベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、第三級ブチルベンゾイルペルオキシド、モノクロロベンゾイルペルオキシド、ジ第三級ブチルペルオキシド、2,5−ビス−(第三級ブチル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、第三級ブチル−トリメチルペルオキシド、第三級ブチル−第三級ブチル−第三級トリフェニルペルオキシド、およびt−ブチルベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。最も適する過酸化物ベース硬化剤はベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、およびジクミルペルオキシドである。上記のような有機過酸化物が、上で定義されたポリマーのR1がアルキル基であるときに、特に用いられるが、1分子あたりいくらかの不飽和基が存在することが好ましい。R1が上で述べたZであるときに硬化剤としてまた用いられ得る。
【0024】
これら有機過酸化物は組成物へ容易に導入するためにシリコーンオイルに分散することにより、ペースト状に形成してもよい。ポリマー100重量部あたり、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜2.0重量部の量で用いられることが薦められる。
【0025】
1がヒドロキシ基またはアルコキシ基である場合は、硬化剤は適する縮合反応触媒単独でまたは加水分解性ポリマー末端基との縮合反応を進める架橋材料とともに縮合反応触媒を含んでもよい。典型的にはこの硬化手段は本発明では好ましくない。
【0026】
本組成物は、有機過酸化物に代えて硬化剤としてオルガノ水素シロキサンとともにヒドロシリル化反応触媒によって硬化および/または架橋することもできるが、ただし、各ポリマー分子はオルガノ水素シロキサンとともに架橋するのに適する少なくとも2個の不飽和基を含有する。それら基は典型的にアルケニル基、最も好ましくはビニル基である。本組成物の硬化をもたらすため、オルガノ水素シロキサンは1分子あたり2個を超えるケイ素結合水素原子を含有しなければならない。オルガノ水素シロキサンは例えば1分子あたり約4〜200個のケイ素原子、好ましくは1分子あたり約4〜50個のケイ素原子を有し、25℃で約10Pa・s以下の粘度を有するのがよい。オルガノ水素シロキサンに存在するケイ素結合有機基として、1〜4個の炭素原子を有する置換および非置換アルキル基を挙げることができ、その他ではエチレン性またはアセチレン性不飽和を含まない。好ましくは、各オルガノ水素シロキサン分子は、オルガノ水素シロキサン中のSi−H基とポリマー中のアルケニル基合計量とのモル比1/1〜10/1を与えるのに十分な量で、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を含む。
【0027】
好ましくは、ヒドロシリル化触媒は白金、ロジウム、イリジウム、パラジウムまたはルテニウム触媒から選択される白金族金属ベース触媒である。本組成物の硬化を触媒するのに有用な白金族金属含有触媒はケイ素結合水素原子とケイ素結合アルケニル基との反応を触媒するのに知られているあらゆるものであり得る。ヒドロシリル化により本組成物の硬化をもたらす触媒としての使用に好ましい白金族金属は白金である。本組成物の硬化用白金ベースヒドロシリル化触媒の好ましいいくつかは白金金属、白金化合物および白金錯体である。代表的な白金化合物として、クロロ白金酸、クロロ白金酸六水和物、二塩化白金、そのような化合物の、低分子量ビニル含有オルガノシロキサンを含有する錯体が挙げられる。本発明での使用に適する他のヒドロシリル化触媒としては、例えば[Rh(O2CCH322、Rh(O2CCH33、Rh2(C81524、Rh(C5723、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX3[(R32S]3、(R23P)2Rh(CO)X、(R23P)2Rh(CO)H、Rh224、HaRhbオレフィンcCld、Rh(O(CO)R33-n(OH)n(式中、Xは水素、塩素、臭素またはヨウ素であり、Yはアルキル基、例えばメチルまたはエチルなど、CO、C814または0.5C812であり、R3はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、R2はアルキル基、アリール基または酸素置換基であり、aは0または1であり、bは1または2でありcは1〜4の整数であり、dは2、3または4であり、nは0または1である)などのロジウム触媒が挙げられる。適するイリジウム触媒たとえばIr(OOCCH33、Ir(C5723、[Ir(Z1)(En)22、または[Ir(Z1)(Dien)]2、(式中、Z1は塩素、臭素、ヨウ素またはアルコキシであり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである)などが用いることができる。
【0028】
白金族金属含有触媒は、本組成物百万部あたり(ppm)元素状白金族金属のわずか0.001重量部に相当する量で組成物に加えられ得る。好ましくは、組成物中の白金族金属の濃度は、百万あたり元素状白金族金属少なくとも1部の当量を与えることができるものである。百万あたり元素状白金族金属約3〜50部の当量を与える触媒濃度が一般的に好ましい量である。
【0029】
より長い作業時間または「ポットライフ」を得るために、周囲条件下でヒドロシリル化触媒の活量を、適する抑制剤の添加により、遅らせまたは抑制することができる。公知の白金族金属触媒抑制剤として、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン性化合物がある。2−メチル−3−ブチン−2−オールおよび1−エチニル−2−シクロヘキサノールなどのアセチレンアルコールは25℃での白金ベース触媒の活量を抑制する抑制剤の好ましい種類を構成している。それら触媒を含有する組成物は典型的に実効速度で硬化するためには70℃以上の温度に加熱する必要がある。室温硬化は、二部式(架橋剤および抑制剤が二成分系の一つに、白金は他の一つにある)の使用により典型的に達成される。白金量は室温での硬化できるように増やされる。
【0030】
場合によっては、白金族金属1モルあたり抑制剤1モルぐらい低い抑制剤濃度で満足できる貯蔵安定性および硬化速度を与える。他の例では、白金族金属1モルあたり抑制剤最高500モルまたはそれ以上の抑制剤濃度を必要とする。所定の組成物中の所定の抑制剤の最適濃度は所定の実験により容易に決定できる。
【0031】
先に述べたように、本発明の組成物は補強用シリカ充填剤を実質的に含まない。しかし、組成物は、ポリマー+処理ヒドロキシアパタイト100重量部あたり最高5部のレオロジー調整剤を含むことができる。好ましくは、レオロジー調整剤が存在するなら、それはポリマー+処理ヒドロキシアパタイト100重量部あたり1〜3重量部の量で存在する。レオロジー調整剤はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ホウ酸、非晶質の沈降またはヒュームドシリカを含み得る。許容範囲で存在するシリカ量は、得られる組成物の物理的特性にごくわずかに影響するほどの少ない量で存在するようであると理解される。
【0032】
前記組成物は他の充填剤を全く含まなくてもよいが、組成物は、微粉末炭酸カルシウムなどの追加充填剤(シリカ補強用充填剤以外の)、または追加の非補強用充填剤、例えば破砕石英、ケイ藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタンおよびカーボンブラック、タルク、ケイ灰石などを含むことができる。ヒドロキシアパタイトに追加して用いられ得る他の充填剤として、バン土石、硫酸カルシウム(硬石膏)、セッコウ、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンなどのクレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(ブルース石)、グラファイト、炭酸銅(例えば孔雀石)、炭酸ニッケル(例えばザラカイト)、炭酸バリウム(例えば毒重石)、および/または炭酸ストロンチウム(例えばストロンチアン石)、ハロイサイト、海泡石および/またはアタパルジャイトなどが挙げられる。
【0033】
酸化アルミニウム、橄欖石群;ザクロ石群;アルミノケイ酸塩;環状ケイ酸塩;鎖状ケイ酸塩;層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩。橄欖石群はケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、苦土橄欖石およびMg2SiO4などを含む。ザクロ石群には粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、苦バンザクロ石;Mg3Al2Si312;灰バンザクロ石;およびCa2Al2Si312などを含む。アルミノケイ酸塩には、粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、ケイ線石;Al2SiO5;ムル石;3Al23・2SiO2;藍晶石;およびAl2SiO5などを含む。環状ケイ酸塩群にはケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、キン青石およびAl3(Mg、Fe)2[Si4AlO18]などを含む。鎖状ケイ酸塩群には、粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、ケイ灰石およびCa[SiO3]などを含む。
【0034】
層状ケイ酸塩群には、ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、雲母;K2Al14[Si6Al220](OH)4;葉ロウ石;Al4[Si820](OH)4;タルク;Mg6[Si820](OH)4;蛇紋岩例えばアスベスト;高陵石;Al4[Si410](OH)8;および蛭石などを含む。
【0035】
上記の充填剤は未処理で用いることもできるが、好ましくは使用する前に上述した疎水化処理剤の一つで処理される。
【0036】
前記組成物に含め得る他の成分には、以下に限定されないが、レオロジー調整剤;接着促進剤、顔料、着色剤、乾燥剤、熱安定剤、難燃性付与剤、紫外線安定剤、硬化調整剤、電気および/または熱伝導性充填剤、発泡剤、粘着防止剤、ハンドリング剤(handling agent)、カルボン酸金属塩およびアミンなどの過酸化物硬化助剤、酸受容体、水捕捉剤(典型的には、組成物が縮合硬化のときだけ)(典型的に、架橋剤またはシラザンとして用いられるものと同じ化合物)が挙げられる。当然のことながら、いつくかの添加剤は二以上の添加剤リストに含まれている。そのような添加剤は言及された色々な面で機能する能力を有することになる。
【0037】
任意の接着促進剤を本発明によるゴム組成物に取り入れることができる。それらには、例えばアミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン(例として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、メルカプトアルキルアルコキシシランおよびγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、エチレンジアミンとシリルアクリラートとの反応生成物が挙げられ得る。1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌラートなどのケイ素基含有イソシアヌラートも追加して用いられ得る。さらに、適する接着促進剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシアルキルアルコキシシランと、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ置換アルコキシシランならびに任意でメチルトリメトキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシランおよびそれらの誘導体などのアルコキシシランとの反応生成物がある。
【0038】
熱安定剤には、酸化鉄およびカーボンブラック、鉄カルボン酸塩、セリウム水和物、ジルコニウム酸バリウム、酸化マグネシウム、セリウムオクトエートおよびジルコニウムオクトエート、ならびにポルフィリンが挙げられ得る。
【0039】
難燃性付与剤には、例えばカーボンブラック、水酸化アルミニウム水和物、ケイ灰石などのケイ酸塩、白金および白金化合物が挙げられ得る。
【0040】
導電性充填剤には、カーボンブラック、銀粒子などの金属粒子、任意の適する導電性金属酸化物充填剤、例えばスズおよび/またはアンチモンで表面処理された酸化チタン粉末、スズおよび/またはアンチモンで表面処理されたチタン酸カリウム粉末、アンチモンで表面処理された酸化スズ、およびアルミニウムで表面処理された酸化亜鉛が挙げられ得る。
【0041】
熱伝導性充填剤には、粉状、フレーク状およびコロイダル銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウムおよびチタニウムなどの金属粒子、金属酸化物、特に酸化アルミニウム(Al23)および酸化ベリリウム(BeO);酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム;セラミック充填剤、例えば一炭化タングステン、炭化ケイ素および窒化アルミニウム、窒化ホウ素およびダイヤモンドが挙げられ得る。
【0042】
ハンドリング剤は生強度または加工性などのシリコーンゴムの未硬化特性を改変するために用いられ、種々の製品名で販売されている(例えば、ダウコーニングコーポレーションより販売されているSILASTIC(登録商標)HA−1、HA−2およびHA−3)。
【0043】
過酸化物硬化助剤は、硬化ゴムの引張り強さ、伸び、硬さ、圧縮永久ひずみ、反発(rebound)、接着および動的柔軟性(dynamic flex)などの特性を改変するために用いられる。それには、トリメチロールプロパントリアクリラートおよびエチレングリコールジメタクリラートなどのジ−またはトリ−官能性アクリラート;トリアリルイソシアヌラート、トリアリルシアヌラート、ポリブタジエンオリゴマー等が挙げられ得る。シリルヒドリド官能性シロキサンもまた過酸化物で触媒されるシロキサンゴムの硬化を改変する助剤として用いられ得る。
【0044】
前記酸受容体には、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられ得る。
【0045】
セラミック化剤(ceramifying agent)は、灰分安定剤とも呼ばれ、ケイ灰石などのケイ酸塩が挙げられ得る。
【0046】
従来のシリコーンゴム組成物と比べて、許容できる機械的特性を有するシリコーンゴム組成物を、加熱を必要とせず、補強用充填剤として高価なヒュームドシリカを用いる必要がない方法で、本発明により製造することができる。
【0047】
本発明による組成物は任意の適する方法で製造することができる。充填剤高配合シリコーンゴム組成物を調整する従来の手段は、最初にミキサー中で補強用充填剤(典型的に例えば、ヒュームドシリカ)、補強用充填剤(ヒュームドシリカ)用処理剤、およびオルガノポリシロキサン(例えばポリシロキサンガム)の混合物を加熱することによりシリコーンゴムベースを製法することである。シリコーンゴムベースは第一ミキサーから取り出されて、第二ミキサーに移され、そこで一般にシリコーンゴムベース100重量部あたり石英粉末などの非補強または増量用充填剤約150重量部が加えられる。典型的に他の添加剤、例えば硬化剤、顔料および着色剤、熱安定剤、粘着防止剤、可塑剤、ならびに接着促進剤などを第二ミキサーに供給する。この手段も補強用充填剤がヒドロキシアパタイトである本発明の組成物に利用することができる。
【0048】
しかし、本発明の好ましい実施態様では、(i)室温条件下でオルガノポリシロキサンと処理ヒドロキシアパタイトとを混合する工程であって、工程(i)で調製された混合物は補強用シリカ充填剤を含んでいない;(ii)工程(i)の混合物に硬化剤を添加する工程;および工程(ii)の混合物を加熱により室温よりも高い温度で硬化させる工程から本質的になる処理ヒドロキシアパタイト含有シリコーンゴム組成物の製造方法を提供する。
【0049】
室温条件とは、大気圧および20〜25℃の通常の周辺温度での室温を意味することを理解するべきである。本発明の場合、補強用充填剤のその場処理を始める際必要とするような、工程(i)の間での加熱が必要とされないことは大きな利点である。あらゆる混合プロセスにおいて、混合は熱を発生するので、本発明の場合における混合は如何なる追加の熱注入をも必要としない。
【0050】
ヒドロキシアパタイトはポリシロキサンガム中にヒュームドシリカよりもずっと容易に分散するので、全体の混合サイクルがかなり減少し、ミキサーの利用をとても多くすることになる。さらに、ヒドロキシアパタイトは準補強用充填剤であるので、十分な機械的特性を有する最終組成物を提供することができる。しかし、ヒドロキシアパタイトはただ準補強だけであるため、ヒュームドシリカの場合よりも高い投入レベルで用いる必要がある。他方では、シリカに比べてヒドロキシアパタイトは低コストなため、最終組成物について適正なレベルの経済的魅力を得るために多量のヒドロキシアパタイトを用いる必要はない。好ましくは、処理ヒドロキシアパタイトとオルガノポリシロキサンとの比は1:2〜2:1である。したがって、例えば100重量部のオルガノポリシロキサン(例えばポリシロキサンガム)に約100重量部のヒドロキシアパタイトを、ヒュームドシリカを使用することなく、用いることができる。
【0051】
それによってヒュームドシリカを含有する最終組成物と同じレベルの機械的特性を得ることができる。さらに、ヒュームドシリカの排除は、加熱が必要なく、全体の配合プロセスを一つのミキサーで行うことができることを意味する。さらに、ヒドロキシアパタイトについての取込み時間はヒュームドシリカの場合よりもはるかに速く、より速い処理能力を利用することによりミキサー生産量が増大するという結果となる。最後にヒドロキシアパタイトはヒュームドシリカよりずっと高いバルク密度を有し、それが非常に改善された扱い易さおよび貯蔵し易さを可能にする。
【0052】
これら最終ヒドロキシアパタイト含有シリコーンゴム組成物は、シリコーン異形押出品、ワイヤー・ケーブルコーティング、窓ガラスなどの用途に、また建築用ガスケット用に有用である。具体的例として、窓ガラス用ガスケット、プレナムまたは安全ケーブル・シース用途などのワイヤーおよびケーブル、複層ガラススペーサーガスケットでの本製品の使用がある。その使用に関連するただ一つの要求事項は、最終組成物が特定用途に許容される特性にほぼ等しい特性プロフィールを有することである。本発明の組成物は、適する発泡剤を添加してシリコーンゴムスポンジの製造にも用いることができる。任意の発泡剤を用いることができる。得られる製品は断熱窓ガラススペーサーガスケットの製造に特に有用である。
【0053】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するために与えられる。
【0054】
本明細書で、用語「室温」とは20〜25℃の通常の周辺温度を意味することを意図している。別段の表示がない限り、全ての粘度は25℃で測定された。実施例で用いられたヒドロキシアパタイトはカルシウムヒドロキシアパタイトであった。
【0055】
硬さを、米国試験材料協会規格、ASTM D2240(これは、機器および試験方法について認められた規格である)に記載されたデュロメータを用いて、ゴム、プラスチックおよびその他非金属材料の硬さ測定のための国際標準によって測定した。
【実施例】
【0056】
<処理ヒドロキシアパタイトの調製>
5μmの粒径および63m2/gの比表面積を有するヒドロキシアパタイトを普通の家庭用フードミキサーのミキシングボウルに入れた。選ばれた処理剤を、ヒドロキシアパタイト表面の所望の処理レベルを得るのに十分な量でミキシングボウルに導入した。ミキサーを10分間稼働したままにした。羽根やボウルの側壁に付着した残余材料をこすり落とした。サンプルをさらに15分混合し、その後ミキシングボウルの中身を金属トレイに移し、120℃の空気循環オーブン中に最短時間の12時間置いた。
【0057】
下記の方法Aまたは方法Bのいずれかによりポリマー/充填剤ベースを最初に製造して、その後本発明による組成物を製造した。
【0058】
<配合−手順A>
ブラベンダー密閉式ミキサー(internal mixer)内で、上述したように調製された処理充填剤を、選択されたポリジメチルシロキサンポリマー(PDMS)と混合した。どの場合においても、混合方法は同じであった。ミキサーの羽根を最大速度で回転するように起動し、所要量のPDMSをミキサーに入れ、所要量の処理充填剤を加え、ヒドロキシアパタイトの添加が完了したら、ミキサーをさらに30分間稼働させた。ヒドロキシアパタイトおよびPDMSの量を容積(PDMSの密度が1.0g/cm3で、処理ヒドロキシアパタイトの密度が3.08g/cm3であると仮定して)により計算して、ミキサーの充填レベルを一定に保持した。
【0059】
<配合−手順B>
Winkworth z−ブレードミキサー内で、上述したように調製された処理充填剤を、選択されたポリジメチルシロキサンポリマー(PDMS)と混合した。所要量のPDMSをミキサーに入れ、所要の処理充填剤を所要量全部が加えられるまで等間隔で混合中に加えた。処理充填剤の各導入工程に続いて、さらなる充填剤の添加が加えられる前に、混合物を点検し均質であることを確認した。充填剤の最後の添加後、ミキサーをさらに30分間稼働させた。上記手順Aと同じ方法で、容積によりヒドロキシアパタイトおよびPDMSの量を計算して、充填レベルを一定に保持した。
【0060】
<コンパウンドの試験>
得られたベースを2本ロール混練機で適する硬化剤と混合した。コンパウンドを、その後下記に示される硬化プログラムを用いて、適する金型で加熱および加圧して、試験用シートに架橋および/または硬化した。
【0061】
<実施例1−未処理ヒドロキシアパタイト>
各充填剤30部を、上述したように、
a)7000の平均重合度(dp)を有するジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー(ここで、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位のモル比が99.82:0.18である)35重量部;および
b)7000の平均dpを有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン35重量部と
混合した。
【0062】
得られたシリコーンゴム組成物を、
(i)混合物100gあたりガム(b)中に分散された2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド(50重量%)1.2部で、2MPa圧下で116℃5分間プレス成形し、加硫して、2mmの厚さのシリコーンゴムシートを形成した。その後それを200℃の熱循環型オーブン中に4時間置いた。
(ii)混合物100gあたりガム(b)中に分散された2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(50重量%)1.0部で、2MPa圧下で170℃10分間プレス成形し、加硫して、2mmの厚さのシリコーンゴムシートを形成した。
(iii)混合物100gあたりガム(b)中に分散されたジクミルペルオキシド(50重量%)1.5部で、2MPa圧下で170℃10分間プレス成形し、加硫して、2mmの厚さのシリコーンゴムシートを形成した。
【0063】
前記組成物の硬化成功度の違いが硬化剤の違いで生じた。未処理ヒドロキシアパタイトが2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド(50重量%)での硬化を妨げ、他の硬化剤を用いたときは、ある程度の硬化が見られたが、得られたエラストマー製品の物理的特性は下記表1に示すように不十分であった。
【0064】
【表1】

【0065】
<実施例2−処理ヒドロキシアパタイト>
手順Aで上述されたように調製された25℃で20mPa・sの粘度を有するトリメチルシリル末端メチル水素シロキサン5%処理レベルでの処理ヒドロキシアパタイト50重量部を、配合手順Bで記述されたように、
a)7000の平均重合度(dp)を有するジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー(ここで、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位のモル比が99.82:0.18である)25重量部;および
b)7000の平均dpを有し、ジメチルビニルシロキシ基で末端封鎖された分子鎖の両末端を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン25重量部と
混合した。
【0066】
得られたシリコーンゴム組成物を、
(a)混合物100gあたり2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド(50重量%)およびガム(b)の1.2部で、2MPa圧下で116℃5分間プレス成形し、加硫して、2mmの厚さのシリコーンゴムシートを形成した。その後それを200℃の熱循環型オーブン中に4時間置いた。
(b)100gあたり2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(45重量%)およびガム(b)の1.0部で、2MPa圧下で170℃10分間プレス成形し、加硫して、2mmの厚さのシリコーンゴムシートを形成した。
(c)100gあたり石灰粉中に分散されたジクミルペルオキシド(40重量%)1.5部で、2MPa圧下で170℃10分間プレス成形し、加硫して、2mmの厚さのシリコーンゴムシートを形成した。
【0067】
得られたシートから試験試料を切り取り、機械的特性を測定した。引張および伸びはDIN 53 504で測定した。デュロメータ(ショアA)はASTM D2240にて測定した。処理ヒドロキシアパタイトを用いたときは、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド硬化剤は、ヒドロキシアパタイトが未処理であったときと異なり、本発明による組成物をうまく硬化したことに注目すべきである。2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン過酸化物が、物理的試験に適した適当に硬化した試験試料を与えた。ジクミルペルオキシドが、物理的試験に適した適当に硬化した試験試料を与えた。結果は表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
引張り強さの結果は大幅に改善され、上述の一般に使われている補強用充填剤の非存在下それぞれの硬化シリコーンエラストマーでの適する補強レベルを与えていることに注目すべきである。
【0070】
この事実は、上記実施例1および2に記載されたように調製された未処理および処理ヒドロキシアパタイトを用いた硬化エラストマーの200℃での熱老化の結果により確認される。引張り強さおよび伸びについてもたらされた結果が、上記表1および2で示された未老化の初期値から表示された時間後の変動を%値で表3に示される。表3に示されているようにサンプルが比較され、Uは未処理ヒドロキシアパタイトを用いて調製された組成物(実施例1で上述された)を表し、Tは処理ヒドロキシアパタイトを用いて調製された組成物(実施例2で上述された)を表す。
【0071】
【表3】

【0072】
引張り強さの結果は、未処理ヒドロキシアパタイトを含有する組成物について老化とともに改善されたが、もとの値が使用に適さないほど貧弱であり、また老化による改善でさえ、意外ではあるものの、使用に適するエラストマー製品を与えなかったことに注目するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム組成物であって、
(i)25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、
(iii)前記組成物の硬化を生じさせるのに適する硬化剤
を含み、前記充填剤がヒドロキシアパタイトを含み、補強用シリカ充填剤を実質的に含まないことを特徴とするシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、好ましくは、式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12
を有する1種以上のポリマー(式中、各Rは同じまたは異なり、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基、フェニル基または3,3,3−トリフルオロアルキル基であり;各Zは同じまたは異なり、水素またはアルケニル基もしくはアルキニル基のような不飽和炭化水素基であり;各R1は同じまたは異なってもよく、前記硬化剤が前記ポリマーを硬化させ得るように用いられる硬化剤に適合する必要があり、R1は、Z、R、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基から選択されてよく;各R5は同じまたは異なってもよく、1〜6個の炭素原子を有する二官能性飽和炭化水素基であり;xは整数であり、yは0または整数であり;sは0または1〜50までの整数である)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、式:
Me2ViSiO[(Me2SiO)x(MeViSiO)y]SiMe2Vi
および
Me2ViSiO[(Me2SiO)x1]SiMe2Vi
を有する2種の高粘度オルガノポリシロキサンポリマーの混合物(式中、Meはメチル基(−CH3)を表し、Viはビニル基(CH2=CH−)を表し、xおよびyの合計値は少なくとも1,000であり、x1の値は少なくとも1000である)を含む二成分混合物である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが次式
RR12SiO[(R2SiO)x(RZSiO)y(R2Si−R5−(R2)SiO)s]SiRR12
および
RR12SiO[(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12
を有する二成分混合物(各式中、R、ZおよびR1は上述されたとおりであり、x、y、s、x1およびy1は前に記述されたとおりであり、前記混合物の粘度が25℃で少なくとも500,000mPa・sの値を有し、xの値またはxとyおよび/またはs(いずれか一方または両方が存在する場合)との合計値が少なくとも1,000であり、x1およびy1の値は100〜1000までである)である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシアパタイトが、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサンおよび式:
4d3-dSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4d3-d
を有する処理剤(各式中、R4は1〜6個のアルキル基を表し;Hは水素であり、dは0または1〜3の整数であり;ならびにfおよびgは独立して0または整数で、前記処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜500mPa・sの粘度を有するものである)の群から選択されるオルガノポリシロキサンで処理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシアパタイトが、式:
3(4-n)Si(OR3n
のアルコキシシラン(式中、nは1〜3の値を有し;R3はアルキル基、アリール基またはアルケニル基である)で処理されたヒドロキシアパタイトを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルコキシシランが、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランからなる群から選択される化合物である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ポリシロキサンガムおよびヒドロキシアパタイトをほぼ等しい量で含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記硬化剤が、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドおよびジクミルペルオキシドからなる群から選択される過酸化物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記硬化剤がオルガノ水素シロキサン硬化剤であり、白金族金属ヒドロシリル化触媒が前記組成物を硬化するのに十分な量で加えられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の処理ヒドロキシアパタイト含有シリコーンゴム組成物の製造方法であって、
(i)室温条件下でオルガノポリシロキサンと処理ヒドロキシアパタイトとを混合する工程、
(ii)工程(i)の混合物に硬化剤を添加する工程、および
工程(ii)の混合物を加熱により室温よりも高い温度で硬化させる工程
から本質的になるシリコーンゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
室温が20〜25℃の通常の周辺温度である請求項11に記載の製法。
【請求項13】
シリコーンゴム組成物における補強用充填剤として処理ヒドロキシアパタイトの使用。
【請求項14】
前記シリコーンゴム組成物がシリカを含まないことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
処理ヒドロキシアパタイトが前記シリコーンゴム組成物における唯一の補強用充填剤である請求項13に記載の使用。
【請求項16】
シリコーン異形押出品、ワイヤー・ケーブルコーティング、窓ガラス用ガスケットおよび建築用ガスケットでの、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンゴム組成物の使用。
【請求項17】
シリコーンゴム組成物であって、
(i)25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理補強用充填剤、
(iii)前記組成物の硬化を生じさせるのに適する硬化剤
を含み、前記補強用充填剤がヒドロキシアパタイトからなることを特徴とするシリコーンゴム組成物。

【公表番号】特表2011−521045(P2011−521045A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509021(P2011−509021)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050518
【国際公開番号】WO2009/138797
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】