説明

シリルエチニル化されたヘテロアセン類およびそれで作製された電子装置

【課題】シリルエチニル化されたヘテロアセン類およびそれで作製された電子装置を提供する。
【解決手段】新規なシリルエチニル化されたヘテロアセン類、およびそれらの化合物で作製された配合物および電子装置が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、有機半導体の分野、およびより特には、シリルエチニル化されたヘテロアセン類ならびにこれらの化合物で作製された配合物および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術は、将来、ハイテク産業の有力な部門になるものと期待されている。また、有機半導体を使用することで、安価、柔軟、軽量、完全に携帯可能なフラットパネルディスプレイを、それらの大きさを明らかには制限することなく製造できるようになり、フラットパネルディスプレイ技術に革命がもたらされるとも期待されている。製造コストがより低いため、いずれは、有機半導体系ディスプレイが非晶質シリコン系の対応するディスプレイよりも優勢となり、それぞれの市場シェアは2007年までに16億ドルに成長するものと予想されている。しかしながら、これらの目的を実現するためには、有機半導体材料および装置加工の分野において大幅な飛躍的進歩が起きなければならない。
【0003】
ディスプレイ、センサーおよび他の面積が大きい電子的用途で使用可能な有機薄膜トランジスタ(OTFT)に対する関心が、急速に増加してきた。報告された有機薄膜トランジスタ(OTFT)装置のなかで最も優れるものの性能は、水素化非晶質シリコン装置のそれに匹敵または勝るものであり、OTFTの加工温度が低いため、布、紙または低温重合体基材を含む表面領域上での製造を行える。
【0004】
OTFTにおいて使用するための有機半導体は、概して、高および低移動度材料として2つのグループに分けることができる。高移動度材料は0.1cm/V・sを超える移動度を有し、キャリアの広いエネルギー帯域幅(>0.1eV)を有用に有し、温度による移動度の活性化が弱いか、しばしば存在しない。これまで、最も高い移動度の有機半導体は小分子材料(最も注目に値する例としてペンタセンによる)であり、ほとんどが、真空昇華によるか、溶液前駆体より高温(>150℃)の転化工程によって沈積される。低移動度材料は約10−5〜10−1cm/V・sの移動度を有し、典型的にはホッピングによる輸送キャリアを有し、温度によって移動度が強く活性化される。ほとんどの重合体有機半導体はこのグループに該当し、多くは溶液より沈積できる潜在的な利点を有する。
【0005】
これまで、低温の溶液で加工された高移動度の有機半導体の報告は僅かである。加えて、低移動度材料についてすら、真空蒸着技術と比較して、現在の溶液沈積技術により材料の構造、厚みおよび特性を制御することは立証されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.Payne、S.Odom、R.Parkin、J.Anthony、Org.Lett.2004年、6巻、19号、3325〜3328頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有利な特性、特に、比較的低いOTFT加工温度および比較的高い移動度の新規な有機半導体化合物を提供することを本発明の目的とした。本発明のもう一つ目的は、当業者が入手可能な有機半導体化合物の蓄積を広げることであった。本発明の他の目的は、以下の詳細な記載より、当業者には直ちに明らかである。
【0008】
本発明において特許請求される通りの新規でシリルエチニル化されたヘテロアセン類を提供することで、これらの目的を達成できることが見出された。
【0009】
M.Payne、S.Odom、R.Parkin、J.Anthony、Org.Lett.2004年、6巻、19号、3325〜3328頁(非特許文献1)にはシリルエチニル化されたヘテロアセン類が開示されているが、本発明による化合物は開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式Iの化合物に関する。
【0011】
【化1】

式中、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
Xは、−O−、−S−、−Se−または−NR”’−であり、
Rは、1〜20個、好ましくは、1〜8個のC原子を有し、環状、直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、または2〜30個のC原子を有するアリールであり、それら全てはフッ素化またはペルフッ素化されていてもよく、SiRは、好ましくは、トリアルキルシリルであり、
R’は、H、F、Cl、Br、I、CN、1〜20個、好ましくは、1〜8個のC原子を有しフッ素化またはペルフッ素化されていてもよい直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、6〜30個のC原子を有しフッ素化またはペルフッ素化されていてもよいアリール、好ましくは、C、またはCOR”であり、ただし、R”は、H、1〜20個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキル、または2〜30個、好ましくは5〜20個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアリールであり、
R”’は、H、または1〜10個のC原子で、環状、直鎖状または分岐状のアルキルであり、好ましくは、Hであり、
mは、0または1であり、
nは、0または1である。
【0012】
更に、本発明は、式Iの1種類以上の化合物を含み、1種類以上の有機溶媒を更に含む配合物に関する。
【0013】
更に、本発明は、式Iの1種類以上の化合物またはそれを含む配合物を含む電子装置、特に、トランジスタ、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機光起電(OPV)装置、集積回路(ICs)、センサー、無線識別(RFID)タグおよび太陽電池に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に組み込まれ一部を形成する添付の図面は本発明の幾つかの態様を図解し、記載と共に本発明の特定の原理を説明するのに役立つ。
【図1a】本発明の電界効果トランジスタのための可能な実施形態の概略的な説明図である。
【図1b】本発明の電界効果トランジスタのための可能な実施形態の概略的な説明図である。
【図1c】本発明の電界効果トランジスタのための可能な実施形態の概略的な説明図である。
【図2a】本発明の光起電装置の可能な実施形態を図解する概略的な表示図である。
【図2b】本発明の光起電装置の可能な実施形態を図解する概略的な表示図である。 ここで、添付の図面図に図解される通りに、本発明の好ましい本実施形態を詳細に引用する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の新規化合物は、広く、シリルエチニル化されたヘテロアセン類(アントラ(ジヘテロ環類)、テトラ(ジヘテロ環類)およびペンタ(ジヘテロ環類)化合物)として記載できる。
【0016】
式Iの好ましい化合物は、Y=YおよびY=Yのもの、およびY=YおよびY=Yのものである。
【0017】
式Iの好ましい化合物は、以下の式より選択される。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

式中、R、R’およびXは、上で定義される通りである。
【0020】
本発明の更なるもう一つの態様によれば、式I、A1、A2、B1、B2、C1またはC2の1種類以上の新規化合物と、1種類以上の溶媒とを含む配合物が提供される。溶媒は、好ましくは、有機溶媒、非常に好ましくは、トルエンおよびキシレンなどのアルキル化および/またはフッ素化または塩素化されたベンゼン類、アニソールまたはそれのアルキル化および/またはフッ素化された誘導体、テトラリン、インダン、デカリン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはピリジンより選択される。
【0021】
本発明の更なるもう一つの態様によれば、トランジスタが提供される。トランジスタは、好ましくは、ゲート電極と、本発明の新規な化合物または配合物から構成される半導体と、前記ゲート電極および前記半導体間の絶縁体と、ソース電極と、ドレイン電極とを含む。
【0022】
本発明の更なるもう一つの態様によれば、光起電装置が提供される。光起電装置は、好ましくは、透明アノードと、本発明の新規な化合物または配合物から構成される半導体と、n型材料と、カソードとを含む。
【0023】
トランジスタおよび光起電装置などの電子装置、およびそれらの部品、例えば、ゲート、ソースまたはドレイン電極、カソード、アノードまたはn型材料(電子輸送体)などを調製するための適切な方法および材料は当業者に既知で文献に記載されており、例えば、国際特許出願公開第02/45184号パンフレット、国際特許出願公開第03/052841号パンフレット、国際特許出願公開第2004/013922号パンフレットおよびそこで引用されている文献である。
【0024】
非常に好ましくは、式I、A1、A2、B1、B2、C1またはC2において、
−Xが、−O−、−Se−または−NH−である化合物、
−Xが、−S−である化合物、
−R’が、Hではない化合物、
−R’が、F、Cl、BrまたはCOOH、非常に好ましくは、F、ClまたはBr、最も好ましくは、Fである化合物、
−Rが、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルであるプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルまたはtert−ブチルであるブチルである化合物、
−R”’が、Hである化合物、
−m=n=0である化合物、
−XがSの場合、R’はHではない化合物、
−m=n=0およびXがSの場合、R’は、6〜30個のC原子を有しフッ素化またはペルフッ素化されていてもよいアリール、好ましくは、C、F、Cl、Br、I、CNおよびCOR”より、非常に好ましくは、F、ClおよびBrより選択される化合物である。
【0025】
シリルエチニル化されたヘテロアセン類は、通常、異性体の混合物として調製される。よって、式Iは、第1の異性体がY=YおよびY=Y、および第2の異性体がY=YおよびY=Yである異性体の組を網羅する。
【0026】
式AおよびAは、アントラ(ジヘテロ環類)の2種類の異性体を表す。式BおよびBは、テトラ(ジヘテロ環類)の2種類の異性体を表す。式CおよびCは、ペンタ(ジヘテロ環類)の2種類の異性体を表す。本発明の新規化合物は、式A1、A2;B1、B2;またはC1、C2の異性体の混合物と、純粋な異性体A1、A2、B1、B2、C1またはC2との両者を含む。
【0027】
式A1、A2;B1、B2;またはC1、C2の異性体の混合物より、異性体A1、A2、B1、B2、C1またはC2を、当業者に既知の方法によって精製でき、限定することなく、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が挙げられる。
【0028】
本発明の新規化合物は、比較的単純および直接的な方法により調製できる。具体的には、アルキニルリチウムを対応するアセンキノンに付加し、続いてHIまたは塩化スズ(II)のいずれかによる還元操作により、シリルエチニル化されたヘテロアセン類を容易に作製する。
【0029】
【化4】

このタイプの反応は、Miller、G.P.;Mack、J.;Briggs、J.Org.Lett.2000年、2巻、3983頁、Anthony、J、E、;Eaton、D.L.;Parkin、S.R.Org.Lett、2002年、4巻、15頁、Anthony、J.E.;Brooks、J.S.;Eaton、D.L.;Parkin、S.J.Am.Chem.Soc.2001年、123巻、9482頁、Payne、M.M.;Odom、S.A.;Parkin、S.R.;Anthony、J.E.Org.Lett.2004年、6巻、3325頁に良く記載されている。
【0030】
アセンキノンは、ジアルデヒドおよび商業的に入手可能な1,4−シクロヘキサンジオンの間で4倍アルドール縮合により非常に容易に調製できる。
【0031】
【化5】

この縮合は、De la Cruz、P.;Martin、N.;Miguel、F.;Seoane、C;Albert、A.;Cano、H.;Gonzalez、A.;Pingarron、J.M.J.Org.Chem.1992年、57巻、6192頁に良く記載されている。
【0032】
典型的には、これらのジアルデヒドの「R」基を、以下の順序で導入する。
【0033】
【化6】

この手順は、チオフェンジアルデヒドについて、Laquindanura、J.G.;Katz、H.E.;Lovinger、A.J.J.Am.Chem.Soc.1998年、120巻、664頁に詳細に記載されている。
【0034】
R’がハロゲン、例えば、FまたはBrである本発明の化合物は、反応スキーム1および2に類似することで調製できる。
【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

よって、これらの材料の全てにとって、「基礎単位」はヘテロ環ジアルデヒドである。これらのヘテロ環ジアルデヒドの多くは文献で既知であり、いくつかは商業的に入手可能ですらある。
【0037】
チオフェン2,3−ジアルデヒドは、Aldrich社およびAcros化学社より商業的に入手可能である。
【0038】
フラン2,3−ジアルデヒドは、Zaluski、M.C;Robba、M.;Bonhomme、M.Bull.Chim.Soc.Fr.1970年、4巻、1445頁に記載される通りに調製される。
【0039】
セレノフェン2,3−ジアルデヒドは、Paulmier、C;Morel、J.;Pastour、P.;Scmard、D.Bull.Chim.Soc.Fr.1969年、7巻、2511頁に記載される通りに調製される。
【0040】
他のヘテロ環ジアルデヒドは、フランおよびセレノフェン化合物を合成するために概要を述べたものと同一の方法によって調製できる。以下の合成および例は本発明を更に例示するために用意されるもので、本発明を限定するとは考えない。
【0041】
多くの有用な電子装置を、本発明の新規化合物より構築できる。図1aに、本発明による典型的な電界効果トランジスタ(FET)(10)を図解する。FET(10)は、当該技術で既知のタイプのゲート電極(12)、当該技術で既知のタイプの絶縁体またはゲート誘電体(14)および本発明の化合物の薄層または膜の形態の半導体(16)から成っている。加えて、FET(10)は導電性ソース電極(18)およびドレイン電極(20)を含み、両者とも半導体(16)に動作可能に接続されている。
【0042】
絶縁体(14)は、例えば、誘電体または酸化金属または更にポリ(メチルメタクリレート)などの絶縁性ポリマーでよい。導電性ソースおよびドレイン電極(18)、(20)は、当該技術において電極として有用であることが知られている金属、高度にドープされたシリコンなどの半導体または更に導電性ポリマーでよい。
【0043】
図1aに図解されるFETは、ボトム−ゲート・トップ−コンタクト配置として知られている。本発明のFET(10)の別の実施形態が、図1bに図解されている。この配置は、ボトム−ゲート・ボトム−コンタクト配置として知られている。
【0044】
本発明のFET(10)のもう一つの別の実施形態が、図1cに図解されている。この配置はトップ−ゲート配置として知られており、当該技術で既知のタイプの基体(22)、導電性ソース電極(18)およびドレイン電極(20)から成っており、両者とも本発明の化合物の薄層または膜の形態の半導体(16)に動作可能に接続されており、当該技術で既知のタイプの絶縁体またはゲート誘電体(14)、および当該技術で既知のタイプのゲート電極(12)から成っている。
【0045】
ゲート電極(12)、ソース電極(18)およびドレイン電極(20)も任意の種類の導電体でよく:金、銀、アルミニウム、白金、高度にドープされたシリコンまたは有機導電性ポリマーである。絶縁体またはゲート誘電体(14)は、酸化アルミニウムまたは酸化シリコンなどの酸化物、またはポリ(メチルメタクリレート)などの絶縁性ポリマーでよい。いずれの配置においても、半導体(16)を形成するための溶液または蒸気法のいずれかによって、本発明の化合物を適用できる。
【0046】
場合により、半導体(16)は1つ以上の有機バインダーを含んでおり、好ましくは、例えば、国際特許出願公開第2005/055248号パンフレットに記載されているような重合体バインダーであり、レオロジー特性を調節し、好ましくは、バインダーの半導体に対する比率は、重量で、20:1〜1:20、好ましくは、10:1〜1:10、より好ましくは、5:1〜1:5である。バインダーポリマーは、半導電性でもよい。
【0047】
図2aに、本発明による典型的な光起電装置(22)を図解する。光起電装置(22)は、透明導電性電極またはアノード(24)、本発明の化合物の薄層または膜の形態の半導体(26)およびボトム電極またはカソード(28)を含む。
【0048】
図2aで図解される光起電装置の実施形態において、n型材料の層(30)は半導体(26)およびカソード(28)の間に提供されている。図2bで図解される光起電装置(22)においては、半導体(26)が、n型材料と混合された本発明の化合物を含む。
【0049】
有機太陽電池の場合、典型的には、本発明の化合物を正孔輸送体(「p型」材料)として使用する。この材料はn型材料と連結して(即ち、混合体として)使用しなければならず、任意の電子受容化合物として定義される。n型または受容体材料として適切および好ましい例は、C60などのフラーレン類、またはそれらの可溶化された誘導体、またはPTCBI(3,4,9,10−ペリレン四酢酸ビスベンズイミダゾール)などのペリレンジイミド類である。
【0050】
光起電装置(22)は、典型的には、図2aおよび2bで図解される2通りに構築できる。図2aに図解される通り、逐次の工程において蒸気または溶液よりp型化合物およびn型化合物の両者を沈積し、単一のヘテロ接合界面とする。あるいは、図2bに図解される通り、カソード材料を沈積する前に、p型材料およびn型材料を混合し溶液よりアノード上に沈積することもできる。この実施形態においては、p型およびn型材料相が分離し、大量の複数のヘテロ接合となる。両者の場合において、典型的には、アノード材料は高い作業性能を有し、透明である(ITO、またはガラスまたはプラスチック上の酸化物(10))。これに対し、カソード(28)は作業性能の低い導電体で、典型的には、効率を向上するために反射性とする(アルミニウム、銀またはインジウム−ガリウム共晶混合物)。いずれかの場合、電荷注入効率を向上するために、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))またはPEDOT:PSS(ポリ(スチレンスルホネート))混合体など市販の導電性ポリマーでアノード層を事前に被覆できる。
【実施例】
【0051】
以下の例は、本発明を限定することなく説明することを意図する。また、以降に記載される方法、構造および特性を、本発明において特許請求されているが先述の明細書または例において明らかには記載されていない材料にも、適用または転用できる。
【0052】
他に明言しない限り、上および下のパーセンテージは重量による百分率であり、温度は摂氏度で与えられる。
【0053】
<例1>
5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3:−b:7,6−b’]ジチオフェン
オーブンで乾燥されN下で冷却された撹拌棒を備える250mLの丸底フラスコにヘキサン(20ml)および0.38mLのトリエチルシリルアセチレン(2.0mmol)を加え、続いて、0.73mlのn−BuLi(1.8mmol、ヘキサン中2.46M溶液)を滴下により加えた。混合物を1時間撹拌し、次いで、ヘキサン(80ml)およびアントラジチオフェンキノン(De la Cruz、P.ら、J.Org.Chem.1992年、57巻、6192頁に記載される方法によって調製)(0.16g、0.34mmol)を加えた。混合物を60℃で一晩加熱し、次いで、0.5mLの水により反応を停止した。10%HCl水溶液(1mL)中のSnCl・2HO(0.50g、2.2mmol)を加え、混合物を60℃で2時間撹拌した。溶液をMgSO上で乾燥し、次いで、シリカの厚手パッドに装填した。シリカをヘキサン(500ml)で濯ぎ、次いで、生成物をヘキサン:DCM(5:1)を使用して溶離した。溶媒を除去し、0.18g(0.31mmol、91%)の赤みがかった粉体を生じた。ヘキサンより再結晶し、粘稠な濃い赤色の板状物を生じた。ヘキサンより3回再結晶した。収率:91%。融点:151℃。H−NMR(400MHz、CDCl)δ=9.18(s、2H)、9.13(s、2H)、7.57(d、J=5.6Hz、2H、対称異性体)、7.57(d、J=5.2Hz、2H、反対称異性体)、7.47(d、J=5.6Hz、2H)、1.27(tt、J=8.0Hz、1.6Hz、18H)、0.94(q、J=8.0Hz、1.2H)。13C−NMR(400MHz、CDCl)δ=140.27、140.18、1.39.82、139.68、133.70、130.11(2C)、130.01(2C)、129.92(2C)、129.81、129.17、123.95、121.50、121.44、120.20、118.05、117.69、8.04(2C)、7.82、4.93(2C)、4.50。解析的計算値、C:72.02%、H:6.75%。実測値、C:71.68%、H:6.75%。
【0054】
別の「R」基の系を調製するために、上の調製においてトリエチルシリルアセチレンを異なるアセチレンに置き換える。「R’」が「H」と異なる系を調製するためには、不可欠となる前駆体キノンを、Laquindanum、J.G.ら、J.Am.Chem.Soc、1998年、120巻、664頁における記載通りに調製できる。
【0055】
<例2>
テトラ[2,3−b:8,9−b’]ジチオフェン−5,13−ジオンおよびテトラ[2,3−b:9,8−b’]ジチオフェン−5,13−ジオン
撹拌棒を備える500mlの丸底フラスコ中において、2,3−チオフェンジカルボキサルデヒド(0.85g、6.07mmol)およびベンゾ[1,2−b]チオフェン−4,5−ジカルボキサルデヒド(1.66g、8.70mmol)の1:2混合物をTHF(200ml)に溶解し、次いで、1,4−シクロヘキサンジオン(0.83g、7.40mmol)を加え、均一になるまで溶液を撹拌した。15%KOH(2ml)を添加後、直ちに沈殿の形成が始まり、激しい撹拌を一晩続けた。溶液を濾過して、不溶性のキノン類で構成される3.87gの薄茶色の粉体を生じ、次の工程で直接使用した:MS(70eV、El)m/z 370(100%、M)。
【0056】
5,13−ビス(トリス(トリメチルシリル)シリルエチニル)テトラ[2,3−b:8,9−b’]ジチオフェンおよび5,13−ビス(トリス(トリメチルシリル)シリルエチニル)テトラ[2,3−b:9,8−b’]ジチオフェン
オーブンで乾燥されN下で冷却された撹拌棒を備える500mLの丸底フラスコに、ヘキサン(150ml)およびトリス((トリエチルシリル)シリルアセチレン(14g、51.1mmol)を加えた。n−BuLi(19.5ml、47,9mmol、ヘキサン中2.6M)を滴下により加え、混合物を2時間撹拌した。上のキノン混合物(3.87g)を加え、撹拌を一晩続け、次いで、無水のTHF(20ml)を加え、更に2日間撹拌した。水(2ml)および10%HCl(20ml)中のSnCl・HO(10.0g、44mmol)を加え、溶液を2時間撹拌した。次いで、DCM(100ml)を加え、有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、シリカの厚手パッドを通して濯いだ(DCM)。体積10mlまで溶媒を濃縮し、次いで、ヘキサン(200ml)で希釈し、シリカの厚手パッド上で濯いだ。シリカをヘキサン(600ml)で濯ぎ、次いで生成混合物を溶離するためヘキサン:DCM(1:1)で濯ぎ、この2回目の画分より溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(9:1))を使用して、0.82gの所望のテトラジチオフェンを単離した。テトラジチオフェンをアセトンより再結晶し、濃い青色の針状物を生じた。H−NMR(400MHz、CDCI)δ=9.53(s、1H)、9.45(s、1H)、9.16(s、1H)、9.13(s、1H)、8.53(s、1H)、8.49(s、1H)、7.54(d、J=5.6Hz、1H)、7.50(d、J=6.2Hz、1H)、7.41(s、1H)、7.40(s、1H)、1.08(s、54H)。13C−NMR(400MHz、CDCl)δ=140.49、140.46、140.20、140.19、139.92、139.86、138.98、138.90、130.27、129.74、129.61、126.84、125.35、124.02、123.72、122.34、122.29、121.64、121.04、120.99、120.29、107.05、106.72、105.64、104.85、104.76、11.5。UV−VIS(DCM):γabs(ε):244(18700)、300(32400)、328(61800)、372(6940)、392(5610)、465(2110)、528(766)、555(1340)、599(2810)、653(4960)。IR(KBr)νmax(cm−1):2956(m)、2945(m)、2860(s)、2129(m)、1460(m)、1400(m)、1366(s)、1061(m)、997(w)、882(s)、752(s)、720(vs)、661(s)、586(m)。
【0057】
<例3>
ペンタ[2,3−b:9,10−b’]ジチオフェン−6,14−ジオンおよびペンタ[2,3−b:10,9−b]ジチオフェン−6,14−ジオン
撹拌棒を備える500mLの丸底フラスコ中において、ベンゾ[1,2−b]チオフェン−4,5−ジカルボキサルデヒド(2.35g、12.4mmol)をTHF(200ml)中に溶解した。1,4−シクロヘキサンジオン(0.70g、6.2mmol)を加え、溶液が均一になるまで撹拌し、次いで、15%KOH(2ml)を添加した。激しい撹拌を一晩続け、次いで、溶液を濾過し、エーテル(20ml)およびDCM(20ml)で濯いだ。茶色の固体をDMF(400ml)中で2時間加熱して還流し、次いで、冷却および濾過し、薄茶色の不溶性の粉体として1.6g(3.8mmol)の所望のキノンを得た。MS(70eV、El)m/z 420(42%、M)。
【0058】
6,14−ビス(トリ(t−ブチル)シリルエチニル)−ペンタ[2,3−b:9,10−b’]ジチオフェンおよび6,14−ビス(トリ(t−ブチル)シリルエチニル)−ペンタ[2,5−b:10,9−b’]ジチオフェン(6b)
オーブンで乾燥されN下で冷却された撹拌棒を備える250mlの丸底フラスコに、無水のTHF(40mL)およびトリ(t−ブチル)シリルアセチレン(3.59g、16,0mmol)を加えた。n−BuLi(5.7ml、14mmol、ヘキサン中2.6M)を滴下により加え、溶液を1時間撹拌し、次いで、上述のキノン(1.6g、3,8mmol)を加えた。24時間撹拌後、追加の無水のTHF(40ml)を加え、撹拌を3日間続けた。水(2ml)および10%HCl(2ml)中のSnCl・HO(1.0g、4.4mmol)を加え、溶液を2時間撹拌した。DCM(200ml)を加え、有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、シリカの厚手パッドを通して濯いだ(DCM)。体積10mlまで溶媒を濃縮し、次いで、ヘキサン(200ml)で希釈した。この溶液をシリカの厚手パッド上に注ぎ、ヘキサン(500ml)で濯ぎ、生成物を溶離するためにヘキサン:DCM(1:1)で濯いだ。溶媒を除去して、難溶性で緑色の粉体として0.44g(0.53mmol、14%)の生成物を生じた。トルエン、次いで、CSより再結晶し、細長く濃い緑色の針状物として6bを生じた。H−NMR(400MHz、CDCl)δ=9.49(s、2H)、9.41(s、2H)、8.41(s、2H)、8.38(s、2H)、7.46(d、J−5.6Hz、2H)、7.36(s、J=5.6Hz、2H)、1.50(s、54H)。13C−NMR(400MHz、CS/C)δ=140.52、138.91、130.98、130.86、130.67、130.55、129.57、128.92、128.88、128.78、128.75、128.26、127.96、127.94、127.59、126.11、124.08、122.94、121.61、109.10、106.70、97.94、31.12、30.81、28.89、22.73。UV−VIS(DCM):λabs、(ε):277(42500)、342(69500)、373(6350)、398(2770)、416(2740)、441(2220)、475(1730)、577(145)、623(474)、690(1170)、762(2600)。IR(KBr)νmax(cm−1):(cmol):3400(w)、2972(m)、2935(m)、2859(5)、2133(5)、1648(w)、1385(s)、1115(m)、1032(w)、890(s)、820(s)、748(s)、619(s)。C5466Si・HOに対する解析的計算値、C:75.99%、H:8.03%。実測値、C:75.61%、H:7.93%。MS(70eV、El)m/z 834(100%、M)、777(63%、M−C)。融点:268℃(度)。
【0059】
<例4>
2,8−ジブロモ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび2,8−ジブロモ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン
<工程1:5−ブロモ−チオフェン−2,3−ジカルバルデヒド>
2,3−ビス(1,3−ジオキソラン−2−イル)チオフェン(13.51g、59.2mmol)をTHF(200ml)中に溶解し、続いて、N−ブロモコハク酸イミド(11.0g、61.2mmol)を添加した。この混合物を遮光して一晩(15時間程度)撹拌し、次いで、水(300ml)を加え、生成物をエーテルで抽出(200mlで3回)した。有機相を合わせて、飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄し、次いで、NaSO上で乾燥した。溶媒を減圧下で除去した。残渣をTHF(150ml)中に溶解し、次いで、2NのHCl溶液(40ml)を加えた。この混合物を、還流で1時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を水中(300ml)に注ぎ、エーテルで抽出した(200mlで3回)。抽出物を合わせて、飽和NaHCO水溶液、水および塩水で洗浄し、次いで、NaSO上で乾燥した。溶媒を減圧下で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、石油エーテル/酢酸エチル(10:0〜7:3)で溶離し、茶色の固体(1.43g、11%)を与えた。H NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)10.38(s、1H、CHO)、10.26(s、1H、CHO)、7.60(s、1H、Ar−H);13C NMR(75MHz、CDCl):δ(ppm)183.3、181.4、148.4、143.6、132.4、123.9;MS(m/e):220(M)、218(M)、191、189、161、163、111、82、57、39。
【0060】
<工程2:2,8−ジブロモアントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェン−5,11−ジオンおよび2,8−ジブロモアントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン−5,11−ジオン>
5−ブロモ−チオフェン−2,3−ジカルボキサルデヒド(0.91g、4.2mmol)をEtOH(150ml)中に溶解し、続いて、1,4−シクロヘキサンジオン(0.24g、2.1mmol)を加えた。強く撹拌しながら15%KOH溶液(5ml)を加えると、直ちに沈殿が形成し始めた。混合物を更に1時間撹拌した。沈殿を回収し、水およびエタノールで洗浄し、次いで、真空下で乾燥して、溶解度の低い黄色の固体(0.85g、86%)を与えた。IR(cm−1):1668(C=O)、1574、1488、1317、1253。
【0061】
<工程3:2,8−ジブロモ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび2,8−ジブロモ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン>
ジオキサン(70ml)中のトリエチルシリルアセチレン(1.20g、8.55mmol)の溶液に、BuLi(ヘキサン中1.6M、5.3ml、8.48mmol)を滴下で室温において加えた。この溶液を30分撹拌し、続いて、2,8−ジブロモアントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェン−5,11−ジオン(0.80g、1.67mmol)を加えた。結果として生じた混合物を、還流で3時間加熱した。冷却後、固体のSnCl(5g)を加え、次いで、濃HCl溶液(10ml)を加え、混合物を30分撹拌した。沈殿を濾過によって回収し、水およびアセトンで洗浄し、濃い紫色の固体を与え、アセトン/THFで再結晶して紫色の結晶を与えた(0.59g、49%)。H NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)8.93(m、4H、Ar−H)、7.45(s、1H、Ar−H)、7.46(s、1H、Ar−H)、1.23(m、18H、CH)、0.91(m、12H、CH);13C NMR(75MHz、CDCl):δ(ppm)140.7、140.6、139.8、139.7、130.0、129.9、129.6、129.5、126.4、120.3、120.2、119.64、119.59、119.12、119.06、117.7、107.3、102.9、7.85、4.70;IR:2126cm−1(C≡C)。
【0062】
<例5>
2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェンおよび2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラ[2,3−b:7,6−b’]ジチオフェン
例4に記載される通りに合成を行ったが、臭化物の代わりに対応するフッ化物を使用した。
【0063】
H NMR(300MHz、CDCl):δ(ppm)8.91(s、2H)、8.84(s、2H)、6.81(d、2H)、1.22(m、18H)、0.90(m、12H);13C NMR(75MHz、CDCl):δ(ppm)167.83、163.86、136.66、136.61、136.57、133.89、130.14、129.94、129.58、129.40、120.80(CH)、120.68(CH)、120.59(CH)、120.46(CH)、120.36(CH)、102.75(CH)、102.60(CH)、7.82(CH3)、4.67(CH2);IR:2133cm−1(C≡C)。MS(m/e):602(M)。
【0064】
本発明の化合物は、卓越した物理的および電子的特性を明示する。内部の芳香族環上に置換されたシリルアセチレン単位は、2つの重要な目的に役立つ。第一に、シリルアセチレン単位は分子を可溶とし、簡易で溶液を基礎とする方法による加工を可能とする。第二に、および恐らくより重要なこととして、この官能基のために分子がπ積層配列に自己集合し、このことは改良された装置性能にとって決定的な意味を有する。より具体的には、この分子配列によって導電性が改良され、バンドギャップが低減され、0.001〜1.0cm/Vsを超える正孔移動度の電界効果トランジスタ(FET)装置に至る。
【0065】
<例6>
図1aに示される通りの電界効果トランジスタを与えた。電界効果トランジスタ用の基体は熱的に成長させた酸化物層(370ran)を有する高度にドープされたSiウエハーから成るもので、ゲート電極および誘電体として機能させた。金製のソースおよびドレインコンタクトを蒸着し、チャネル長が22μmおよびチャネル幅が340μmの装置を得た。次いで、金製電極をペンタフルオロベンゼンチオールで処理し、電極接触面を改良した。例1のトリエチルシリルアントラジチオフェン誘導体のトルエン中1〜2重量%溶液を、プラスチックブレードを使用して装置表面の全体に広げ、放置して溶媒を蒸発させた。次いで、装置を空気中において90℃で2分間加熱し、残存する溶媒を除去した。
【0066】
例1のトリエチルシリルアントラジチオフェン誘導体は優れた品位の均一なフィルムを形成し、優れたオン/オフ電流比(10)と共に1.0cm/Vsの正孔移動度を生じた。この材料の性能は、結晶中における密接なπ積層相互作用による可能性が高い。トリエチルシリルアントラジチオフェン誘導体は、π面が約3.25Å離れている2次元π積層配列をとっている。また、トリエチルシリルアントラジチオフェン誘導体は、1.57Åのπ重複および2.75、1.76Åの横ズレによっても特徴付けられた。全ての測定は空気中で室温において行い、移動度は飽和電流より計算した。
【0067】
<例7>
図1cに示される通りの電界効果トランジスタを以下の通り与えた:パターン化されたAuソースおよびドレイン電極を、ガラス基体上にシャドーマスクにより与えた。ペンタフルオロベンゼンチオールの自己集合単分子層(電極注入層)をAu電極上にスピンコートし、IPAで洗浄した。4−メチルアニソール中に2重量%の濃度で例5のジフルオロトリエチルシリルアントラジチオフェン誘導体を溶解して、半導体配合物を調製した。次いで、空気中、室温で、500rpmにおいて18秒間、続いて、2000rpmにおいて60秒間で半導体溶液を基体上にスピンコートし、溶媒を蒸発させた。絶縁体材料(サイトップ(登録商標)809M、旭硝子社より入手可能)の3部を2部のペルフッ素溶媒(FC75、Acros社カタログ番号12380)に混合し、次いで、半導体上にスピンコートし、約1μmの厚みを与え、溶媒を蒸発させた。シャドーマスクを通して蒸着により、装置のチャネル領域上に金製のゲートコンタクトを配置した。
【0068】
電気計測のために、トランジスタのサンプルをサンプルホルダーに搭載した。Karl Suss PH100小型プローブヘッドを使用して、ゲート、ドレインおよびソース電極にマイクロプローブを接続した。これらをHewlett−Packard 4155Bパラメータ分析計に連結した。ドレイン電圧を−5Vに設定し、ゲート電圧を+20〜−60Vに走査し、1Vずつ+20Vに戻した。電界効果移動度の値を、線形域(線形移動度)および飽和域(飽和移動度)において特性付けられるV(ゲート電圧)に対するISD(ソース−ドレイン電流)の勾配より計算した。全ての測定は、空気中で室温において行った。結果を下にまとめる。
【0069】
線形移動度=1.7cm/Vs
飽和移動度=2.2cm/Vs
オン/オフ比 10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
Xは、−O−、−S−、−Se−または−NR”’−であり、
Rは、1〜20個のC原子を有し、環状、直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、または2〜30個のC原子を有するアリールであり、それら全てはフッ素化またはペルフッ素化されていてもよく、
R’は、H、F、Cl、Br、I、CN、1〜20個のC原子を有しフッ素化またはペルフッ素化されていてもよい直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、6〜30個のC原子を有しフッ素化またはペルフッ素化されていてもよいアリール、またはCOR”であり、ただし、R”は、H、1〜20個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキル、または2〜30個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアリールであり、
R”’は、H、または1〜10個のC原子で、環状、直鎖状または分岐状のアルキルであり、
mは、0または1であり、
nは、0または1である。)
【請求項2】
以下の式より選択される請求項1に記載の化合物。
【化2】

【化3】

(式中、R、R’およびXは、請求項1において定義される通りである。)
【請求項3】
以下の式の異性体の混合物である請求項1または2に記載の化合物。
【化4】

(式中、R、R’およびXは、請求項1において定義される通りである。)
【請求項4】
以下の式の異性体の混合物である請求項1または2に記載の化合物。
【化5】

(式中、R、R’およびXは、請求項1において定義される通りである。)
【請求項5】
以下の式の異性体の混合物である請求項1または2に記載の化合物。
【化6】

(式中、R、R’およびXは、請求項1において定義される通りである。)
【請求項6】
R’が、1〜8個のC原子を有するアルキル、ペルフルオロアルキルまたはアルコキシ、5〜30個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアリール、F、Cl、Br、I、CN、COR”またはペルフルオロアリールであり、ただし、R”は、H、C1〜20アルキルまたはC5〜30アリールである請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物または異性体の混合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物または異性体の混合物を含み、1種類以上の有機溶媒を更に含む配合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物、異性体の混合物または配合物を含む電子装置。
【請求項9】
ゲート電極;
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物、混合物または配合物を含む半導体;
前記ゲート電極および前記半導体間の絶縁体;
ソース電極;および
ドレイン電極
を含むトランジスタである請求項8に記載の電子装置。
【請求項10】
透明アノード;
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物、混合物または配合物を含む半導体;
n型材料;および
カソード
を含む光起電装置である請求項8に記載の電子装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2010−520241(P2010−520241A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552094(P2009−552094)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001482
【国際公開番号】WO2008/107089
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507365086)ユニバーシティ オブ ケンタッキー リサーチ ファウンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF KENTUCKY RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】A144  ASTeCC Building, Lexington, Kentucky 40506−0286, U.S.A.
【Fターム(参考)】