説明

シリンダ式弁装置

【課題】駆動軸部からシリンダ弁体に対して回転を伝達する回転伝達部が摩耗等により損耗するのを抑制でき、従来に増して弁装置の寿命を高寿命化することのできるシリンダ式弁装置を提供する。
【解決手段】シリンダ弁体42と、シリンダ弁体42を回転可能に内嵌させる弁ケースと、シリンダ弁体42を回転駆動する駆動軸部72と、駆動軸部72の回転をシリンダ弁体42に伝達する回転伝達部と、駆動軸部72を抜止めする抜止め部とを有するシリンダ式弁装置において、駆動軸部72には、シリンダ弁体42の内部をハンドル側の軸方向の一端部から反対側の他端部まで軸方向に貫通する貫通部115を設け、シリンダ弁体42の他端部及び貫通部115の対応する後端部との一方に切欠部104〜112を、他方に係合突部116〜124を設けて、それらにより回転伝達部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシリンダ式弁装置に関し、詳しくはシリンダ弁体と、これを回転駆動する駆動軸部とが別体をなすシリンダ式弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通水用の弁体側開口を有する円筒形状のシリンダ弁体と、通水用のケース側開口を有し、シリンダ弁体を回転可能に内嵌させる弁ケースと、ハンドルの回転操作によりシリンダ弁体を回転駆動する駆動軸部とを有し、シリンダ弁体の回転により弁体側開口とケース側開口とを重合状態として通水を行う一方、非重合状態として止水を行うシリンダ式弁装置が水栓等の弁装置として用いられている。
【0003】
この種シリンダ式弁装置において、シリンダ弁体と駆動軸部とを樹脂の一体成形品としておくと、シリンダ弁体の肉厚が必然的に厚くなるとともに、樹脂製のシリンダ弁体はその外周面即ちシール面に、成形時の樹脂の収縮等に起因して凹凸が生じ易く、また外面が砂等の異物を噛み込むことによって傷付き易く、そしてその外面にそのような凹凸形状が生じたり傷付きが生じたりすると、このことが水漏れの原因となり、シールの信頼性を損なう原因となる。
【0004】
そこでシリンダ式弁装置において、シリンダ弁体と駆動軸部とを別体となして、駆動軸部を樹脂で構成する一方、シリンダ弁体を金属で構成してそれらを組付け、結合したものが各種提案されている。
【0005】
このシリンダ式弁装置では、駆動軸部の回転をシリンダ弁体に伝達する回転伝達部と、駆動軸部がシリンダ弁体からハンドル側に抜けるのを防止する抜止め部と、を設けておくことが必要であり、従来にあっては、シリンダ弁体と駆動軸部とを軸方向に突き合わせて結合し、そしてその結合部分、つまり突合せ側の同一の軸方向端部に上記の回転伝達部と抜止め部とを設けていた。
【0006】
図10はその具体例を示している。
図10において200は金属製のシリンダ弁体、202は樹脂製の駆動軸部で、ここではシリンダ弁体200の同じ軸方向端部(図中上端部)に切欠部204と掛止穴206とを設け、また駆動軸部202にも、同じ軸方向端部(図中下端部)に係合突部208と弾性爪210とを設け、そして駆動軸部202の図中下向きの押込みにより、弾性爪210を弾性変形させて先端の爪部212をシリンダ弁体200の掛止穴206に掛止させ、また係合突部208を切欠部204に嵌入させることで、シリンダ弁体200と駆動軸部202とを軸方向に突合せ状態に結合するようにしている。
【0007】
ここで切欠部204と係合突部208とは回転伝達部を成すもので、それらの係合に基づいて駆動軸部202の回転がシリンダ弁体200に伝達される。
一方掛止穴206と弾性爪210は抜止め部をなすもので、ここでは爪部212が掛止穴206に引っ掛かることによって、詳しくは掛止穴206の上側の抜止め面に対して爪部212の上面の当り面が当接することで、駆動軸部202がシリンダ弁体200から図中上側即ちハンドル側に抜けるのが防止される。
【0008】
しかしながらこのように駆動軸部202の一部、ここでは弾性爪210を弾性変形させながら駆動軸部202を押し込み、組み付けを行うものの場合、組付けに強い力を要してしまう。
また軸方向の同じ端部で回転伝達部と抜止め部とを設けることとなるため、回転伝達部のためのスペース(周方向のスペース)を十分に拡く確保できず、限られた狭いスペースに回転伝達部を設けざるを得ない問題がある。
【0009】
具体的には、抜止め部としての掛止穴206及び弾性爪210が占めているスペース以外の周方向スペースに回転伝達部のための切欠部204,係合突部208を設けなければならず、しかも上記の弾性爪210及び掛止穴206は、十分な耐抜け力を確保するために周方向にある程度幅広に形成する必要があり、その結果、切欠部204及び係合突部208を設けるためのスペースが大きく制限されてしまう。
【0010】
そのために切欠部204及び係合突部208を数多く設けたり幅広に設けたりすることが難しく、しかも駆動軸部202にてシリンダ弁体200を回転させる際、シリンダ弁体200に加わるシール部材の強い摺動抵抗に打ち勝ってシリンダ弁体200を回転駆動しなければならないため、その回転の際に樹脂製の係合突部208に局部的に強い力が加わり、繰り返しシリンダ弁装置を使用していると係合突部208が切欠部204で削られたり摩耗したりして損耗し、且つその損耗の程度が長期に亘って使用しているうちに大きく進行してしまう。
【0011】
而して係合突部208の摩耗等による損耗が進行すると、シリンダ弁体200に対して駆動軸部202からの回転の駆動力が良好に伝わらないようになり、このことがシリンダ式弁装置の寿命低下に繋がるといった問題があった。
【0012】
またこのシリンダ式弁装置では、シリンダ弁体200と駆動軸部202とが軸方向の突合せ端部で結合されているに過ぎないため、シリンダ弁体200と駆動軸202とを突き合せて組み付けたときに、それらが結合部で多少折れ曲った状態となったりして、シリンダ弁体200及び駆動軸部202が厳密に直線状に組み付かない場合が生じ、組付性の点でも改善の余地があった。
【0013】
以上はシリンダ弁体を金属製、駆動軸部を樹脂製とした場合であるが、同様の問題はシリンダ弁体,駆動軸部を別体に構成してそれらを組み付ける場合に一般的に生じ得、特に互いを異なった材質で構成して一方を他方よりも硬い材質で構成した場合にこのような問題がより生じ易い。
【0014】
尚、本発明に関連する先行技術として下記特許文献1,特許文献2に開示されたものがある。
但しこれら特許文献に開示のものは、何れも駆動軸部をシリンダ弁体に対して軸方向に押し込んで突合せ状態に結合し、そしてその結合部分に回転伝達部と抜止め部を設けたもので、本発明の解決課題をそのまま内包したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−185156号公報
【特許文献2】特開2004−190768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、駆動軸部からシリンダ弁体に回転を伝達する回転伝達部が摩耗等により損耗するのを抑制でき、従来に増して弁装置の寿命を高寿命化することのできるシリンダ式弁装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、(a)通水用の弁体側開口を有する円筒形状のシリンダ弁体と、(b)通水用のケース側開口を有し、該シリンダ弁体を回転可能に内嵌させる弁ケースと、(c)ハンドルの回転操作により前記シリンダ弁体を回転駆動する、該シリンダ弁体とは別体に構成された駆動軸部と、(d)該駆動軸部の回転を該シリンダ弁体に伝達する回転伝達部と、(e)該駆動軸部が該シリンダ弁体から前記ハンドル側に抜けるのを防止する抜止め部と、を有し、前記シリンダ弁体の回転により前記弁体側開口と前記ケース側開口とを重合状態として通水を行う一方、非重合状態として止水を行うシリンダ式弁装置において、前記駆動軸部には、前記シリンダ弁体の内部を前記ハンドル側の一端部から反対側の他端部まで軸方向に貫通する貫通部を設け、該シリンダ弁体の該他端部及び前記貫通部の対応する後端部との一方に切欠部を、他方に該切欠部に係合する係合突部を設けて、それら切欠部と係合突部とで前記回転伝達部を構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記他端部とは軸方向の異なった位置で前記シリンダ弁体に抜止め面を設ける一方、該抜止め面に対して軸方向に当接する状態に前記貫通部に当り面を設け、それら抜止め面と当り面とで前記抜止め部を構成したことを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項1において、前記駆動軸部が、前記シリンダ弁体の前記ハンドル側の一端部とは反対側の他端部の側から該シリンダ弁体の内部に挿通可能な形状となしてあるとともに、前記切欠部と係合突部とは、該シリンダ弁体に対する前記駆動軸部の前記他端部の側からの挿通時に、該切欠部に対して係合突部が嵌入する形状となしてあり、且つ前記抜止め部が、前記シリンダ弁体の前記他端部の軸端面若しくは該シリンダ弁体の内面から径方向内向きに突出した面を抜止め面とし、該抜止め面に対して軸方向に当接する状態に前記貫通部に設けた当り面と該抜止め面とで構成してあることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項3において、前記シリンダ弁体は前記一端部が径方向内向きに曲げられて、曲げ部の内面が前記抜止め面となしてあり、前記貫通部には該曲げ部の軸方向内側位置に、該抜止め面に対して軸方向に当接する状態に当り面が設けてあり、それら抜止め面と当り面とで前記抜止め部が構成してあることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項3において、前記貫通部の前記後端部には径方向外向きに張り出した鍔状部が設けてあり、該鍔状部の前記ハンドル側の面が前記抜止め部における前記当り面となしてあるとともに、前記シリンダ弁体の前記軸端面のうちの、該シリンダ弁体に設けた前記切欠部の底面又は前記係合突部の突出側端面以外の部分が前記抜止め部における前記抜止め面となしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項6のものは、請求項3において、前記切欠部が前記シリンダ弁体に、前記係合突部が前記貫通部に夫々設けてあって、該シリンダ弁体の前記軸端面のうちの該切欠部の底面が前記抜止め面となしてあり、該係合突部の突出側端面が前記当り面となしてあるか、又は前記切欠部が前記貫通部に、前記係合突部が前記シリンダ弁体に夫々設けてあって、前記軸端面のうちの該係合突部の突出側端面が前記抜止め面となしてあり、該切欠部の底面が前記当り面となしてあることを特徴とする。
【0023】
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記貫通部が円筒形状をなしていて前記シリンダ弁体に内嵌状態に嵌合しており、該貫通部は前記後端部で開口した軸方向の開口部を有しているとともに、前記弁体側開口に対応した位置で筒壁を貫通する径方向の開口部を有していることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0024】
以上のように本発明は、従来において回転伝達部と抜止め部とを、ともにシリンダ弁体と駆動軸部との結合部であるシリンダ弁体のハンドル側の軸方向の端部の側に設けていたのを、シリンダ弁体のハンドル側とは反対側の軸方向の端部(他端部)の側に回転伝達部を設けたものである。
詳しくは、シリンダ弁体の内部をハンドル側の一端部から反対側の他端部まで軸方向に貫通する貫通部を駆動軸部に具備させて、その他端部の側において切欠部と係合突部とを有する回転伝達部とを設けたもので、本発明によれば、回転伝達部及び抜止め部を設けるに当って位置的,スペース的,形態的な自由度が高く、このことにより回転伝達部の摩耗等による損耗を抑制して、シリンダ式弁装置の寿命を効果的に高めることができる。
【0025】
即ち本発明では、駆動軸部の貫通部がシリンダ弁体を軸方向に貫通し、その貫通部がシリンダ弁体に対しその全長に亘り重複して位置していることから、回転伝達部を上記の他端部の側、即ちシリンダ弁体のハンドル側とは軸方向の反対側の他端部の側に設けた上で、例えば請求項2に従い抜止め部をこれとは軸方向の異なった位置に設けることが可能である。
【0026】
而してこのようにすれば、抜止め部によるスペース的な制約を受けることなく、駆動軸部(貫通部)及びシリンダ弁体の全周に亘るスペースを回転伝達部のためのスペースとして用いることができるため、回転伝達部における係合突起及び切欠部の数を自在に多くしたり或いはまたその幅(周方向幅)を大きくしたりすることができ、これにより回転伝達部の摩耗等による損耗を抑制し得て、シリンダ式弁装置の寿命を高めることができる。
【0027】
尚この請求項2に従って抜止め部を回転伝達部とは軸方向の異なった位置に設ける場合において、抜止め部(抜止め面,当り面)を様々な形態で設けることが可能である。
例えばシリンダ弁体に掛止穴を設け、また駆動軸部の貫通部に爪部を設けて、これを掛止穴に掛止させ、掛止穴の抜止め面に対し爪部の当り面を軸方向に当接させるようになすこと、或いはその他形態で抜止め部を構成することが可能である。
【0028】
本発明ではまた、回転伝達部をシリンダ弁体のハンドル側とは反対側の他端部の側に設けることによって、例えば請求項3に従い駆動軸部の形状を、シリンダ弁体の上記ハンドル側の一端部とは反対側の他端部の側からシリンダ弁体の内部に挿通可能な形状となした上で、回転伝達部における切欠部及び係合突部の形状を、駆動軸部を上記の方向にシリンダ弁体に挿通したときに係合突部が切欠部に嵌り込む形状となしておくことが可能となり、この場合、単に駆動軸部をシリンダ弁体に挿通するだけで、回転伝達部をなす切欠部と係合突部とを係合させることができる。
【0029】
例えば切欠部をシリンダ弁体の側に設ける場合において、その切欠部を軸方向外向きに開口する形状となしておくことで、シリンダ弁体に対する駆動軸部の挿通時に、駆動軸部の側の(貫通部の側の)係合突部を、その切欠部に対して上記の挿通方向に嵌入させることができ、係合突部と切欠部とを容易に回転方向に係合させることができる。
【0030】
またこの請求項3に従って、シリンダ弁体の上記他端部の軸端面若しくはシリンダ弁体の内面より径方向内向きに突出した面を抜止め面とし、そしてこの抜止め面に対して軸方向に当接する状態に貫通部に当り面を設けて、それら抜止め面と当り面とで上記の抜止め部を構成するようになすことが可能となる。
【0031】
そしてこの請求項3によれば、駆動軸部をシリンダ弁体に対し上記の他端部の側から挿通するだけで、回転伝達部をなす切欠部と係合突部とを係合状態とするのと併せて、シリンダ弁体の抜止め面に対し駆動軸部の当り面を当接させること(押し当てること)ができ、駆動軸部をシリンダ弁体に対し抜止め状態とすることができる。
【0032】
この請求項3では、シリンダ弁体の上記ハンドル側の軸方向の一端部を径方向内向きに曲げて、その曲げ部の内面を上記抜止め面と成す一方、駆動軸部の上記の貫通部には、その曲げ部の軸方向内側位置に、その抜止め面に対し軸方向に当接する状態に当り面を設け、それら抜止め面と当り面とで抜止め部を構成するようになすことができる(請求項4)。
この場合において、抜止め面及び当り面は全周に亘り設けておくことができる。
【0033】
この請求項3においてはまた、駆動軸部における貫通部の上記の後端部に径方向外向きに張り出した鍔状部を設けて、この鍔状部の上記ハンドル側の面を抜止め部における当り面となす一方、シリンダ弁体の軸端面のうちの一部、詳しくは上記の切欠部の底面(切欠部をシリンダ弁体の側に設け、係合突部を貫通部に設ける場合)若しくは係合突部の突出側端面(係合突部をシリンダ弁体側に設け、切欠部を貫通部の側に設ける場合)以外の部分を、抜止め部における抜止め面となしておくことができる(請求項5)。
【0034】
この請求項5では、従来のように駆動軸部の側に弾性爪を設けて、これをシリンダ弁体の側に設けた掛止穴に掛止させて抜止めする場合と異なり、抜止め部を成す抜止め面及び当り面を周方向に幅広く形成しておかなくても十分に抜止めの機能を持たせることができ、従って周方向の広いスペースを用いて回転伝達部を形成することが可能となる。
【0035】
一方、請求項6に従って切欠部の底面若しくは係合突部の突出側端面を上記の抜止め面となし、切欠部に嵌入する係合突部の突出側端面若しくは切欠部の底面を上記の当り面となしておくこともできる。
この請求項6によれば、切欠部と係合突部とで回転伝達部を構成できると同時に、それらにて抜止め部を併せて構成することが可能となる。
【0036】
本発明では、請求項5と請求項6とを組み合わせてシリンダ式弁装置を構成することも可能であり、この場合にはシリンダ弁体における上記の他端部の側に回転伝達部と抜止め部とをともに設けているにも拘らず、周方向の全スペースを回転伝達部のためのスペースとしても、また抜止め部のためのスペースとしても用いることが可能となる。
【0037】
本発明では、駆動軸部における上記の貫通部を円筒形状となして、これをシリンダ弁体に対して内嵌状態に嵌合させるようにし、そしてその貫通部を上記の他端部の側、つまり貫通部の後端部で軸方向に開口した開口部を有するとともに、弁体側開口に対応した位置で筒壁を径方向に貫通する開口部を有するものとなしておくことができる(請求項7)。
【0038】
このようにすれば、図10に示す従来のシリンダ式弁装置のようにシリンダ弁体と回転軸部とを各端部で突合せ状態に組付け結合した場合と異なって、シリンダ弁体をその内側に嵌合する円筒形状の貫通部にて径方向の内側から支持することが可能となり、駆動軸部によるシリンダ弁体の保持姿勢を安定化することができ、また駆動軸部とシリンダ弁体とを曲りのない直線状に組み付けておくことができる。
【0039】
しかもそのようになした場合であっても、円筒部に設けた上記の軸方向の開口部と径方向の開口部とによって、シリンダ弁体の弁体側開口をケース側開口に重合状態としたときの通水を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態のシリンダ式弁装置としての切替弁装置を内蔵した混合水栓の外観図である。
【図2】図1の混合水栓の要部の内部構造を示した図である。
【図3】図2の切替弁装置の外観図である。
【図4】図3の切替弁装置の断面図である。
【図5】図4の切替弁装置のV−V断面図である。
【図6】(A)駆動軸部の外観図である。(B)シリンダ弁体の外観図である。
【図7】同実施形態における切替弁装置の回転伝達部を分離状態で示した図である。
【図8】同実施形態における駆動軸とシリンダ弁体を組み付け手順とともに示した図である。
【図9】本発明の他の実施形態の要部を示した図である。
【図10】従来のシリンダ式弁装置の要部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は壁付の混合水栓で、図中左右方向に長手形状をなす水栓本体12を有している。
水栓本体12の下面からは、先端に吐水口14を備えた略L字状をなす吐水管16が延び出しており、また背面からはシャワー側の流出口部18が後方に突出して、そこにシャワーエルボ20が接続されている。
このシャワーエルボ20には、図示を省略するシャワーヘッドが可撓性のシャワーホースを介して接続される。
【0042】
水栓本体12の長手方向の一端側(図中左端側)には、温調ハンドル22が設けられており、また他端側(図中右端側)には、吐水管16の側とシャワー側とで流路の切替えを行い、且つ吐水の流量調節を行う切替ハンドル24が設けられている。
ここで切替ハンドル24は、吐水から止水若しくはその逆への切替えも行う。
【0043】
水栓本体12からはまた、給水管を兼ねた水側のクランク脚26、及び給湯管を兼ねた湯側のクランク脚28がそれぞれ後方に延び出している。
混合水栓10は、これら一対のクランク脚26,28によって後方の壁に取り付けられている。
【0044】
図2に示しているように、水栓本体12は横断面の内面形状が円形をなす略円筒状の金属製のハウジング30を本体ボデーとして有しており、その内部且つ図1中の右端側に、ハウジング30の内部を図中右向きに流れて来た混合水を、吐水管16側又はシャワー側に流路切替えするための、シリンダ式弁装置から成る切替弁装置34が設けられている。
【0045】
尚、ハウジング30には吐水管16側の流出開口36が設けられていて、この流出開口36から吐水管16側の流出口部38が突き出しており、この流出口部38に対して吐水管16が締結ナット40によって回転可能に連結されている。
【0046】
上記切替弁装置34は、図2及び図4に示しているように円筒形状をなす金属製のシリンダ弁体42と、これを回転可能に内嵌させる樹脂製の円筒形状の弁ケース44とを有している。
シリンダ弁体42は、周方向所定個所に筒壁を貫通する吐水管16側の通水用の弁体側開口46と、シャワー側の通水用の弁体側開口48とを有している。
【0047】
尚、図5に示しているように弁ケース44の内面には周方向にリブ41が複数設けられており、シリンダ弁体42はこれらリブ41によって径方向外方から支持されている。
図5において、43は上記のケース側開口50,54を形成する開口形成部材で、弁ケース44に嵌込状態に設けられている。
【0048】
シリンダ弁体42は、回転により吐水管16側の弁体側開口46を弁ケース44の対応するケース側開口50に重合させた状態で、ハウジング30の内部を図中右方向に流れてきた混合水を、弁体側開口46からケース側開口50を通じてハウジング30の内部の流路51へと流出させる。
流路51に流出した混合水は、次いで軸方向の流路52を流通し、その後上記の流出開口36を通じて吐水管16へと流出し、その先端の吐水口14から外部に吐水される。
【0049】
一方シャワー側の弁体側開口48を弁ケース44の対応するケース側開口54に重合させた状態で、混合水をその弁体側開口48からケース側開口54を通じ、ハウジング30の内部の流路56へと流出させる。
流路56に流出した混合水は、図示を省略する軸方向の流路に沿って図中左側の流路58へと到り、更にそこから図1のシャワー側の流出口部18を経てシャワーヘッドから吐水される。
ここで吐水管16側の弁体側開口46とシャワー側の弁体側開口48とは、周方向に180°異なった位置に設けられている。
尚、切替弁装置34の弁ケース44とハウジング30との間は、弁ケース44の外周面に装着されたOリング60にて水密にシールされている。
【0050】
図2,図4及び図5において、62はケース側開口50,54を取り囲むようにしてシリンダ弁体42と弁ケース44との間に設けられたシール部材で、このシール部材62によって、シリンダ弁体42と弁ケース44との間がケース側開口50,54周りにおいて水密にシールされている。
【0051】
上記弁ケース44には、図3に示しているように図中右端側に径方向外方に突出した環状の突出部64が一体に設けられており、この突出部64が、図2に示すハウジング30の段付部66とハウジング30にねじ込まれたナット68とにより軸方向に挟まれることで、弁ケース44がハウジング30に対し軸方向に固定されている。
【0052】
尚この突出部64には、図3に示しているように周方向において部分的に軸方向に突出した回転方向の位置決め突部70が設けられおり、この位置決め突部70が、ハウジング30に設けられた対応する位置決め凹部に図中左方向に嵌り込むことによって、弁ケース44全体がハウジング30に対し回転方向(周方向)に位置決めされている。
【0053】
上記シリンダ弁体42からは、切替ハンドル24の回転操作によりシリンダ弁体42を回転駆動する樹脂製の駆動軸部72が、切替ハンドル24側の図中右方に延び出している。
駆動軸部72には、軸方向所定個所にセレーション部74が設けられており、このセレーション部74において駆動軸部72が切替ハンドル24に一体回転状態にセレーション結合されている。
【0054】
ここで切替ハンドル24は、駆動軸部72に対して抜止め部材を兼ねたキャップ76の押込みにより軸方向に抜止め状態に固定されている。
詳しくは、切替ハンドル24には弾性片から成る固定部78が一体に設けられており、キャップ76の脚部80をこの固定部78の外周側の溝に押し込むことで、固定部78が駆動軸部72の球状部82に押圧され、その押圧作用によって切替ハンドル24が駆動軸部72から軸方向に抜止めされている。
【0055】
84は、切替ハンドル24の回転時にこれと一体回転する回転部材で、駆動軸部72のセレーション部86に一体回転状態にセレーション結合されている。
この回転部材84は、切替ハンドル24の回転時に所定角度位置でクリック感を発生させるための部材で、図中左端側の周方向所定個所に、図中左向きに突出した突部(図示省略)を有しており、この突部を、コイルばね88にて図中右向きに付勢された円板状部材90の対応する凹部に嵌入させることで、そこでクリック感を発生させる。
この回転部材84は、駆動軸部72の環状溝98に嵌着された止め輪94と、駆動軸部72の段付部96とで挟まれることにより、駆動軸部72に対し軸方向に固定されている。
【0056】
図2に示しているように、駆動軸部72はこの回転部材84が円板状部材90を介して弁ケース44の円筒部45に図中左向きに当たることにより、更には切替ハンドル24がリング状部材92を介しハウジング30に当ることによって、弁ケース44に対し図中左方向に一定の微小距離以上相対移動不能となっている。
ここで駆動軸部72は、シリンダ弁体42の外部において環状溝95に保持されたOリング100により、弁ケース44に対し水密にシールされている。
【0057】
上記シリンダ弁体42は、図4及び図6に示しているように切替ハンドル24側の軸方向の端部に、径方向内方に曲り形状をなす曲げ部102が全周に亘り環状に設けられている。
シリンダ弁体42は、この曲げ部102を除いた部分の全体が内面,外面ともに同一内径,同一外径で軸方向にストレート形状で延びる円筒形状とされている。
このシリンダ弁体42には、切替ハンドル24とは反対側の他端部に、軸方向外方に向けて開口した切欠部104,106,108,110,112が周方向に間隔を隔てて同じ深さで形成されている。
【0058】
一方駆動軸部72は、シリンダ弁体42から外部に露出した本体部114と、シリンダ弁体42の内部を切替ハンドル24側の一端部から反対側の他端部に到るまで軸方向に貫通する貫通部115とを一体に有しており、その本体部114に上記のセレーション部74,86,球状部82及び環状溝98が設けられている。
【0059】
この実施形態において、貫通部115は全体が円筒形状をなしており、シリンダ弁体42に対して内嵌状態に嵌合している。
この円筒形状をなす貫通部115もまた、内面,外面が同一内径,同一外径で軸方向にストレート形状で延びる面とされている。
【0060】
この実施形態において、駆動軸部72は本体部114に対して貫通部115が大径をなしており、その全体がシリンダ弁体42の内部を図中右方向に、即ち上記複数の切欠部104〜112を設けた他端部の側から上記曲げ部102を設けた一端部の側に挿通可能な形状とされている。
【0061】
この貫通部115には、シリンダ弁体42の上記の他端部の外部で径方向外方に全周に亘り環状に張り出した鍔状部117が一体に設けられている。
この鍔状部117には図中右方、即ちシリンダ弁体42の切欠部104,106,108,110,112に向って軸方向に突出する係合突部116,118,120,122,124が、切欠部104,106,108,110,112に対応する周方向間隔で一体に設けられており、それら係合突部116,118,120,122,124が、シリンダ弁体42の各対応する切欠部104,106,108,110,112のそれぞれに軸方向に嵌入して、各対応する切欠部に対し周方向即ちシリンダ弁体42の回転方向に係合し、駆動軸部72の回転をシリンダ弁体42に伝達するようになっている。
ここではシリンダ弁体42に設けられた切欠部104,106,108,110,112と、貫通部115に設けられた係合突部116,118,120,122,124とが回転伝達部126(図4,図8参照)を構成している。
【0062】
尚この実施形態において、図7に示しているようにシリンダ弁体42の軸端面136は、周方向に凹凸形状をなしている。
具体的には、この軸端面136は切欠部104,106,108,110,112の各底面138と、それら切欠部以外の部分の端面140とで全体が形成されている。
尚この実施形態では、各切欠部104,106,108,110,112が何れも同じ深さで切り欠かれており、従って切欠部の底面138は何れも軸方向の同一位置である。
これに対応して係合突部116,118,120,122,124の突出側端面142もまた、軸方向の同一位置に位置している。
尚この実施形態では、組付状態で各切欠部の底面138と各係合突部の突出側端面142とは直接当接しておらず、それらの間には微小な隙間(0.1〜0.2mm程度の隙間)が形成されている。
【0063】
また同様に、図8に示しているように鍔状部117におけるシリンダ弁体42側の軸方向の内面144と、シリンダ弁体42における端面140との間にも、ほぼ同程度の隙間が形成されている。
尚、シリンダ弁体42の軸端面136、及び貫通部115の鍔状部117の軸方向の内面144、更には切欠部の底面138,突出側端面142は何れも軸直角方向の面、即ちシリンダ弁体42及び貫通部115の軸方向に対して直角方向の面を成している。
【0064】
この円筒形状をなす貫通部115は、図4に示しているように後端部(図中左端部)で開口した軸方向の開口部128と、シリンダ弁体の弁体側開口46,48にそれぞれ対応した位置で筒壁を貫通する径方向の開口部130,132、及び内部の流路134を有しており、図4中右方向に流れて来た混合水を開口部128から内部の流路134に流入させた上、径方向の開口部130,132を通じて弁体側開口46又は48へと流出させるようになっている。
【0065】
この実施形態において、貫通部115はシリンダ弁体42の内面に嵌合して、シリンダ弁体42を内側から支持する支持部としての働きを成しつつ、軸方向の開口部128、及び径方向の開口部130,132,更に内部の流路134によって、シリンダ弁体42の弁体側開口46,48を通じての通水を確保している。
この実施形態では、貫通部115がシリンダ弁体42の内面に嵌合状態に組み付けられることにより、その組付状態でシリンダ弁体42と駆動軸部72とが曲りのない直線形状に形状保持される。
【0066】
シリンダ弁体42における上記の曲げ部102の内面は、図4に示しているように軸直角方向の抜止め面146を成しており、そしてこの抜止め面146に対して、駆動軸部72における貫通部115の肩部148の径方向の面(軸直角方向の面)が当り面150として軸方向に当接せしめられている。
【0067】
この実施形態において、駆動軸部72は抜止め面146に対する当り面150の軸方向の当接より図中右方向、即ち切替ハンドル24側にシリンダ弁体42から抜け防止されている。
本実施形態では、これら抜止め面146と当り面150とで抜止め部152(図4参照)が構成されている。
即ちこの実施形態は、回転伝達部126に対して軸方向の異なった位置に抜止め部152を設けた例である。
【0068】
この実施形態では、駆動軸部72をシリンダ弁体42に対して図中左端の側からシリンダ弁体42内に挿通し、そしてそれらを図2のハウジング30内部の所定位置にセットした状態で、ナット68をハウジング30にねじ込むことでハウジング30に固定し、更に駆動軸部72に円板状部材90,コイルばね88,回転部材72,止め輪94を組み付けるとともに、更に駆動軸部72に切替ハンドル24を組み付けることで、切替弁装置34をハウジング30内部に組み込むことができる。
【0069】
以上のような本実施形態では、駆動軸部72がシリンダ弁体42を軸方向全長に亘り貫通し、そして回転伝達部126がシリンダ弁体42の、切替ハンドル24とは反対側の他端部の側に設けられていることから、回転伝達部126及び抜止め部152を設けるに当って位置的,スペース的,形態的な自由度が高い。
【0070】
具体的には、ここでは駆動軸部72の貫通部115がシリンダ弁体42を軸方向に貫通し、その貫通部115がシリンダ弁体42に対しその全長に亘り重複して位置していることから、シリンダ弁体42の切替ハンドル24とは軸方向の反対側の他端部の側に回転伝達部126を設けた上で、抜止め部152をこれとは軸方向の異なった位置に、具体的にはここではシリンダ弁体42の切替ハンドル24側の端部の側に設けている。
【0071】
そしてこのようにすることで、抜止め部152によるスペース的な制約を受けることなく、駆動軸部72(貫通部115)及びシリンダ弁体42の全周亘るスペースを回転伝達部126のためのスペースとして用いることができるため、回転伝達部126における係合突部116,118,120,122,124及び切欠部104,106,108,110,112の数を多くし、またその幅(周方向幅)を大きくすることができる。
これにより回転伝達部126の摩耗等による損耗を抑制し得て、シリンダ式弁装置の寿命を高めることができる。
【0072】
本実施形態ではまた、駆動軸部72の形状を、シリンダ弁体42の図中左端側、即ち上記切替ハンドル24とは反対側の他端部の側からシリンダ弁体42の内部に挿通するようになし、そしてシリンダ弁体42の図中左端側に設けた回転伝達部126における切欠部104,106,108,110,112及び係合突部116,118,120,122,124の形状を、駆動軸部72を上記方向にシリンダ弁体42に挿通したときに係合突部116,118,120,122,124が切欠部104,106,108,110,112に嵌り込む形状となしてあることから、単に駆動軸部72をシリンダ弁体42に挿通するだけで、回転伝達部126をなす切欠部104,106,108,110,112と係合突部116,118,120,122,124とを係合させることができる。
また併せて、シリンダ弁体42の抜止め面146に対し、駆動軸部72の当り面150を当接させ、駆動軸部72をシリンダ弁体42から図中右方に、即ち切替ハンドル24側に抜止め状態とすることができる。
【0073】
本実施形態ではまた、駆動軸部72における貫通部115を円筒形状となして、これをシリンダ弁体42に内嵌状態に嵌合させ、そしてその貫通部115の後端部に軸方向の開口部128を設け、また弁体側開口46,48に対応した位置に径方向の開口部130,132を設けており、そしてこのようにすることで、シリンダ弁体42を貫通部115にて内側から支持することが可能となり、駆動軸部72によるシリンダ弁体42の保持姿勢を安定化することができ、また駆動軸部72とシリンダ弁体42とを曲りの無い直線状に組み付けておくことができる。
【0074】
しかもそのようになした場合であっても、貫通部115に設けた軸方向の開口部128と径方向の開口部130,132及び内部の流路134によって、シリンダ弁体42の弁体側開口46,48をケース側開口50,54に重合状態としたときの通水を確保することができる。
【0075】
上記実施形態では、シリンダ弁体42の切替ハンドル24側の軸方向の端部に曲げ部102を設けて、その軸方向の内面を抜止め面146となし、そこに駆動軸部72における貫通部115の当り面150を当接させることで抜止め部152を構成しているが、本発明では抜止め部をこれとは異なった形態で構成することが可能である。
【0076】
例えば図7に示すシリンダ弁体42の軸端面136のうち、端面140を抜止め面となして、これに対し駆動軸部72の貫通部115における鍔状部117の内面144を当り面として当接させ、それら端面140から成る抜止め面と、内面144から成る当り面とで抜止め部を構成するといったことも可能である。
【0077】
このようにすれば、従来のように駆動軸部の側に弾性爪を設けて、これをシリンダ弁体の側に設けた掛止穴に掛止させて抜止めする場合と異なり、抜止め部における抜止め面としての端面140及び当り面としての内面144を周方向に幅広く形成しておかなくても、十分に抜止めの機能をもたせることが可能であり、従って周方向の拡いスペースを用いて回転伝達部126を形成することが可能である。
【0078】
或いは図7におけるシリンダ弁体42の各切欠部104,106,108,110,112のそれぞれの底面138を抜止め面とし、これに対応する係合突部116,118,120,122,124の各突出側端面142を当り面として抜止め部を構成するといったことも可能である。
【0079】
このようにすれば、切欠部104,106,108,110,112と係合突部116,118,120,122,124とで回転伝達部126を構成できると同時に、それらにて抜止め部を併せて構成することが可能となる。
【0080】
更には、図7の切欠部104,106,108,110,112の底面138及び端面140から成る全体の軸端面136を抜止め面となし、それらに対して各係合突部116,118,120,122,124の突出側端面142及び鍔状部117の内面144を当り面として当接させることで、抜止め部を構成するといったことも可能である。
【0081】
この場合には、シリンダ弁体42における上記の他端部の側に回転伝達部126と抜止め部とをともに設けているにも拘らず、周方向の全スペースを回転伝達部126のためのスペースとしても、また抜止め部のためのスペースとしても用いることが可能となる。
【0082】
尚ここでは切欠部106,108,110,112,114の全ての底面138を抜止め面となし、係合突部116,118,120,122,124の全ての突出側端面142を当り面として抜止め部を構成するものとしたが、場合によって何れかの切欠部の底面138及びこれに対応する何れかの係合突部の突出側端面142を当り面として抜止め部を構成するといったことも可能である。
【0083】
また上記では端面140全てを抜止め面とし、鍔状部117の内面144全てを当り面として抜止め部を構成するとしているが、場合によって端面140の一部を抜止め面となし、また内面144の対応する一部をもって当り面となし、それらにより抜止め部を構成するといったことも可能である。
【0084】
以上の例では、シリンダ弁体42の側に切欠部を設け、貫通部115の側に係合突部を設けているが、図9に示しているようにこれとは逆に貫通部115における鍔状部117に切欠部154を、またシリンダ弁体42の側に係合突部156を設け、そして係合突部156の突出側端面142にて抜止め面を形成し、また切欠部154の底面138にて当り面を形成し、それら突出側端面142と底面138とで抜止め部を構成するといったことも可能である。
【0085】
尚上記の実施形態において、シリンダ弁体42の切欠部104,106,108,110,112を形成している、各切欠部の周方向両側の部分を係合突部として、また貫通部115側の各係合突部116,118,120,122,124を形成している、各係合突部の間の部分を切欠部として考えることもできる。
【0086】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上例以外の形態で回転伝達部,抜止め部を構成することも可能であるし、またシリンダ弁体及び駆動軸部を上記とは異なった材質から成るものの組み合せとして構成することも可能である。
また本発明は上記の切替弁装置以外の用途に用いられるシリンダ式弁装置に適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0087】
24 切替ハンドル
34 切替弁装置
42 シリンダ弁体
46,48 弁体側開口
50,54 ケース側開口
72 駆動軸部
102 曲げ部
104,106,108,110,112,154 切欠部
115 貫通部
116,118,120,122,124 係合突部
117 鍔状部
126 回転伝達部
128,130,132 開口部
136 軸端面
138 底面
140 端面
142 突出側端面
144 内面
146 抜止め面
150 当り面
152 抜止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)通水用の弁体側開口を有する円筒形状のシリンダ弁体と、
(b)通水用のケース側開口を有し、該シリンダ弁体を回転可能に内嵌させる弁ケースと、
(c)ハンドルの回転操作により前記シリンダ弁体を回転駆動する、該シリンダ弁体とは別体に構成された駆動軸部と、
(d)該駆動軸部の回転を該シリンダ弁体に伝達する回転伝達部と、
(e)該駆動軸部が該シリンダ弁体から前記ハンドル側に抜けるのを防止する抜止め部と、
を有し、前記シリンダ弁体の回転により前記弁体側開口と前記ケース側開口とを重合状態として通水を行う一方、非重合状態として止水を行うシリンダ式弁装置において、
前記駆動軸部には、前記シリンダ弁体の内部を前記ハンドル側の一端部から反対側の他端部まで軸方向に貫通する貫通部を設け、
該シリンダ弁体の該他端部及び前記貫通部の対応する後端部との一方に切欠部を、他方に該切欠部に係合する係合突部を設けて、それら切欠部と係合突部とで前記回転伝達部を構成したことを特徴とするシリンダ式弁装置。
【請求項2】
請求項1において、前記他端部とは軸方向の異なった位置で前記シリンダ弁体に抜止め面を設ける一方、該抜止め面に対して軸方向に当接する状態に前記貫通部に当り面を設け、それら抜止め面と当り面とで前記抜止め部を構成したことを特徴とするシリンダ式弁装置。
【請求項3】
請求項1において、前記駆動軸部が、前記シリンダ弁体の前記ハンドル側の一端部とは反対側の他端部の側から該シリンダ弁体の内部に挿通可能な形状となしてあるとともに、
前記切欠部と係合突部とは、該シリンダ弁体に対する前記駆動軸部の前記他端部の側からの挿通時に、該切欠部に対して係合突部が嵌入する形状となしてあり、
且つ前記抜止め部が、前記シリンダ弁体の前記他端部の軸端面若しくは該シリンダ弁体の内面から径方向内向きに突出した面を抜止め面とし、該抜止め面に対して軸方向に当接する状態に前記貫通部に設けた当り面と該抜止め面とで構成してあることを特徴とするシリンダ式弁装置。
【請求項4】
請求項3において、前記シリンダ弁体は前記一端部が径方向内向きに曲げられて、曲げ部の内面が前記抜止め面となしてあり、
前記貫通部には該曲げ部の軸方向内側位置に、該抜止め面に対して軸方向に当接する状態に当り面が設けてあり、それら抜止め面と当り面とで前記抜止め部が構成してあることを特徴とするシリンダ式弁装置。
【請求項5】
請求項3において、前記貫通部の前記後端部には径方向外向きに張り出した鍔状部が設けてあり、該鍔状部の前記ハンドル側の面が前記抜止め部における前記当り面となしてあるとともに、前記シリンダ弁体の前記軸端面のうちの、該シリンダ弁体に設けた前記切欠部の底面又は前記係合突部の突出側端面以外の部分が前記抜止め部における前記抜止め面となしてあることを特徴とするシリンダ式弁装置。
【請求項6】
請求項3において、前記切欠部が前記シリンダ弁体に、前記係合突部が前記貫通部に夫々設けてあって、該シリンダ弁体の前記軸端面のうちの該切欠部の底面が前記抜止め面となしてあり、該係合突部の突出側端面が前記当り面となしてあるか、
又は前記切欠部が前記貫通部に、前記係合突部が前記シリンダ弁体に夫々設けてあって、前記軸端面のうちの該係合突部の突出側端面が前記抜止め面となしてあり、該切欠部の底面が前記当り面となしてあることを特徴とするシリンダ式弁装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記貫通部が円筒形状をなしていて前記シリンダ弁体に内嵌状態に嵌合しており、
該貫通部は前記後端部で開口した軸方向の開口部を有しているとともに、前記弁体側開口に対応した位置で筒壁を貫通する径方向の開口部を有していることを特徴とするシリンダ式弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−247038(P2012−247038A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121035(P2011−121035)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】