説明

シロキサン化合物およびその硬化物

【課題】従来のシルセスキオキサンに比較して、より耐熱性を高め、低温で流動性を有し、成形が容易なシロキサン化合物および硬化させた硬化物を提供。
【解決手段】繰り返し数3〜8のSi−O結合を持つ環状シロキサン化合物の少なくとも一つの珪素基上に、末端に二重結合基、三重結合基、マレイミド基等の架橋基を有し繰り返し数0〜9のSi−O結合を持つ直鎖状シロキサン結合を有する置換基を導入したシロキサン化合物およびこの化合物を加熱等の手段により架橋させた硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有する樹脂、特にシロキサン系化合物およびその硬化物に関する。本発明のシロキサン化合物を硬化させた硬化物は、半導体用など耐熱性を要求される種々の封止材、接着剤等、さらには無色透明な場合は光学部材用封止材、レンズ材料または光学用薄膜等にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の半導体用封止材は、動作中の半導体の発熱に耐える耐熱性が要求される。
【0003】
従来、耐熱性樹脂であるエポキシ樹脂またはシリコーンが、半導体の封止材として用いられてきた。しかしながら、ケイ素(Si)を用いた半導体に比べ耐電圧性が高い、炭化ケイ素(SiC)を用いたパワー半導体に代表される高性能な半導体に用いると、パワー半導体の発熱量が多いため、従来のエポキシ樹脂またはシリコーンによる封止材は耐熱性が十分でなく、半導体の動作中に熱分解を起こし易いという問題があった。
【0004】
エポキシ樹脂またはシリコーンに比べて耐熱性の高い樹脂に、ポリイミドが挙げられる。特許文献1には、ポリイミド前駆体組成物膜を230℃〜300℃に加熱して硬化させ形成する半導体素子の表面保護膜が開示される。しかしながら、ポリイミド前駆体組成物は室温(20℃)付近の低温領域において固体であるために成形性に乏しいという問題があった。
【0005】
他に、耐熱性を有する材料として、例えば、アルキルトリアルコキシシラン等を加水分解し縮重合させてなるネットワーク状ポリシロキサンであるシルセスキオキサンが挙げられる。シルセスキオキサンにおいては、無機物であるシロキサン骨格の持つ高耐熱性とそれに結合する有機基の特性を生かした分子設計が可能であり、様々な用途に使用される。また、シルセスキオキサンは、常温で液体のものもあり、基材表面に垂らした後に、加熱または紫外線照射で縮重合させて硬化させるポッティング加工が可能である。
【0006】
シルセスキオキサンの合成方法は、例えば、特許文献2〜5、非特許文献1〜6に開示されている。
【0007】
耐熱性と成形性を兼ね備えたシルセスキオキサンを用いた封止材料は、種々検討されている。しかしながら、250℃以上の高温下で、数千時間に渡って加熱しても劣化しない材料は、未だ得られていない。
【0008】
半導体等を封止する際に、ポッティング加工可能な常温付近で液体のシルセスキオキサンの合成には、ヒドロシリル化反応を用いる場合が多く、ヒドロシリル化反応によって形成されたシルセスキオキサン末端のアルキレン鎖、例えばプロピレン鎖が耐熱性の劣化の原因となる問題があった。(非特許文献5および非特許文献6を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−270611号公報
【特許文献2】特開2004−143449号公報
【特許文献3】特開2007−15991号公報
【特許文献4】特開2009−191024号公報
【特許文献5】特開2009−269820号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】I. Hasegawa et al., Chem. Lett., pp.1319(1988)、
【非特許文献2】V. Sudarsanan et al., J. Org. Chem., pp1892(2007)
【非特許文献3】M. A. Esteruelas, et al., Organometallics, pp3891(2004)
【非特許文献4】A. Mori et al., Chemistry Letters, pp107(1995)
【非特許文献5】J.Mater.Chem.,2007,17,3575−3580
【非特許文献6】Proc. of SPIE Vol. 6517 651729-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は従来のシルセスキオキサンに比べ、より低温で流動性を有し成形が容易なシロキサン化合物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、特定のシロキサン骨格に特定の架橋基を結合させることにより得られたシロキサン化合物は、60℃以下で液体であり、150℃以上、350℃以下に加熱することで硬化物が得られ、低温でも良好な成形性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の発明1〜5を含む。
【0014】
[発明1]
一般式(1):
【化1】

【0015】
(式(1)中、Xはそれぞれ独立にX1またはX2で表わされ、Xのうち少なくとも1個はX1であり、
X1およびX2中、R〜R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、フェニル基またはピリジル基であり、炭素原子は酸素原子に置換されていてもよく、構造中にエーテル結合、カルボニル基、またはエステル結合を含んでいてもよい。mは3〜8の整数、nは0〜9の整数、pは0または1であり、Yは架橋基である。)
で表されるシロキサン化合物。
【0016】
[発明2]
Yがそれぞれ独立に構造式(2)〜(12):
【化2】

【0017】
で表される基からなる群から選ばれた架橋基である、発明1のシロキサン化合物。
【0018】
[発明3]
〜Rが全てメチル基であり、nおよびpが1である発明1または発明2のシロキサン化合物。
【0019】
[発明4]
発明1〜3のシロキサン化合物の架橋基が反応して得られた硬化物。
【0020】
[発明5]
発明4の硬化物を含む封止材。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシロキサン化合物は、60℃以下で液体であり、成形、塗布またはポッティング加工が可能である。また、本発明のシロキサン化合物は、単独または他の組成物を加えた組成物として加熱することで、架橋基が互いに架橋結合し、耐熱性に優れた硬化物を与える。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のシロキサン化合物、その合成方法およびその特徴、並びにシロキサン化合物の半導体封止材用途への応用について、順を追って説明する。
【0023】
1.シロキサン化合物
本発明は、
【化3】

【0024】
(式(1)中、Xはそれぞれ独立にX1またはX2で表わされ、Xのうち少なくとも1個はX1であり、
X1およびX2中、R〜R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、フェニル基またはピリジル基であり、炭素原子は酸素原子に置換されていてもよく、構造中にエーテル結合、カルボニル基、またはエステル結合を含んでいてもよい。mは3〜8の整数、nは0〜9の整数、pは0または1であり、Yは架橋基である。)で表されるシロキサン化合物である。尚、本発明において、式(1)で表わされるシロキサン化合物を「シロキサン化合物(1)」と称することがある。
【0025】
炭素数1〜8のアルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基またはsec−ブチル基等が挙げられる。本発明において、特にメチル基を含有するシロキサン化合物(1)が合成しやすく、より好ましくは、メチル基が好ましい。
【0026】
また、炭素数1〜8のアルケニル基は、具体的には、ビニル基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、スチレニル基またはノルボルネニル基が挙げられる。本発明において、特にビニル基またはメタクリロイル基を含有するシロキサン化合物(1)が合成しやすく、アルケニル基としては、ビニル基またはメタクリロイル基が好ましい。
【0027】
また、炭素数1〜8のアルキニル基は、具体的には、エチニル基、フェニルエチニル基などが挙げられる。本発明において、特に中でもフェニルエチニル基を含有するシロキサン化合物(1)が合成しやすく、アルキニル基としては、フェニルエチニル基が好ましい。
【0028】
同様の理由で、フェニル基は炭素数6個のフェニル基、ピリジル基は炭素数5個のピリジル基が好ましい。フェニル基、ピリジル基は置換基を有していてもよいが、未置換のものが好ましい。
【0029】
また、粘度等の調整のために、炭素原子は酸素原子に置換されていてもよく、構造中にエーテル結合、カルボニル基、またはエステル結合を含んでもよい。これらは粘度を調整するために有用である。
【0030】
本発明のシロキサン化合物(1)において、架橋基Yは、耐熱性のために、芳香環、ヘテロ環に代表される環状構造を含むことが好ましく、反応性部位は2重結合または3重結合である基である。
【0031】
また、本発明は、上記のシロキサン化合物(1)であって、架橋基Yがそれぞれ独立に構造式(2)〜(12)
【化4】

【0032】
で表される群からから選ばれた架橋基であるシロキサン化合物(1)であることが好ましい。
【0033】
これら構造式(2)〜(12)で表される架橋基は、環状構造による耐熱性を有し、シロキサン化合物(1)の耐熱性を低下させることがない。また、構造式(2)〜(12)で表される架橋基は、二重結合または三重結合を有することにより、結合が容易で、少なくともX1を2個、好ましくは3個以上有するシロキサン化合物(1)同士が加熱により架橋し、硬化物となる。
【0034】
即ち、構造式(2)〜(12)で表される架橋基YをX2に結合させることで、本発明のシロキサン化合物(1)が得られた。当該シロキサンを加熱し、架橋基Yを架橋硬化させることで、極めて耐熱性の高い硬化物が得られる。
【化5】

【0035】
尚、式(1)中のX、即ち、X1およびX2において、R〜Rが全てメチル基であり、nおよびpが2であり、Yが前記架橋基であるシロキサン化合物(1)は、有機合成により単一組成物としとして得ることが容易である。また、当該シロキサン化合物(1)は、室温(20℃)以上、60℃以下で液体であり、半導体の封止材料として用いるのに好適である。
【0036】

2.シロキサン化合物(1)の合成
2.1.シロキサン化合物前駆体(A)の合成
最初に、以下の反応スキームに示すように、構造式(13)で表されるシロキサン化合物のクロル化を行う。
【化6】

【0037】
当該クロル化は、トリクロロイソシアヌル酸と反応させること(非特許文献2参照)、ロジウム触媒の存在下、ヘキサクロロシクロヘキサンと反応させること(非特許文献3参照)、または塩素ガスと反応させて行うことができる。例えば、公知文献(Journal of Organic Chemistry, vol.692, pp1892−1897(2007)、S.Varaprathら著)に記載のクロル化手法は制限無く使用出来るが、中でも副生成物が少なく、経済性において実用的であることより、トリクロロイソシアヌル酸または塩素ガスと反応させることが好ましい。
【0038】
具体的には、以下の反応スキームに示すように、テトラメチルテトラヒドロシクロテトラシロキサンにトリクロロイソシアヌル酸を有機溶媒中で反応させることにより、クロル化できる。
【化7】

【0039】
2.2.シロキサン化合物(1)の合成
シロキサン化合物前駆体(A)に、構造式(2)〜(12)で表される架橋基を付加させることで、シロキサン化合物(1)が得られる。
【0040】
例えば、4−ブロモベンゾシクロブテンに有機金属試薬を反応させハロゲン−金属交換したのち、前述のシロキサン化合物前駆体(A)と反応させることで、シロキサン化合物(1)である、構造式(7)で表される架橋基、即ち、ベンゾシクロブテニル基を含有したシロキサン化合物(1)を得ることができる。
【0041】
詳しくは、以下の反応スキームに示すように、4−ブロモベンゾシクロブテンにアルキルリチウム塩、具体的にはn−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムまたはメチルリチウムを反応させ、構造式(7)で表される架橋基を与える前駆体化合物としての、ベンゾシクロブテニルーリチウム体とする。(非特許文献5参照)
【化8】

【0042】
前記有機金属試薬としては、入手の容易さなどからn−ブチルリチウムが好適に用いられる。リチウム化後、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサンと作用させることで、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサンの環開裂反応を経由して、結果としてベンゾシクロブテニル基を含有したシロキシリチウム化合物が得られる。
【0043】
前述した同様の操作を行い反応を進行させることによって、ブロモ化合物(a)〜(e)から、シロキシリチウム化合物(A)〜(E)が得られる。
【化9】

【0044】
次いで、以下の反応スキームに示すように、シロキサン化合物前駆体(A)とベンゾシクロブテニル基を含有したシロキシリチウム化合物と反応させることで、シロキサン化合物(1)である、構造式(7)に示されるベンゾシクロブテニル基を含有したシロキサン化合物を得ることができる。
【化10】

【0045】
前記と同様の操作にて、シロキシリチウム化合物(A)〜(E)から、それぞれ対応するシロキサン化合物(AA)〜(EE)が得られる。
【化11】

【0046】
3.シロキサン化合物(1)の半導体封止材用途への応用
半導体用途の封止材用途では、広い温度範囲において金属配線材料との強い密着性が求められ、封止材の線膨張係数を金属配線材料とできるだけ近い値に調整することが必要でなる。その解決策として、以下の方策を挙げることができる。
【0047】
先ず、シロキサン化合物(1)と無機フィラーとの混合である。シリカやアルミナ等の無機フィラーを、本発明のシロキサン組成物(1)と混合することで、任意の線膨張係数に調整することができる。尚、シロキサン化合物(1)は、60℃までの温度範囲で液体であり、上記無機フィラーと容易に混合することが可能である。
【0048】
次に、熱不可重合の採用である。重合反応については、ゾルゲル反応に代表されるシリコンアルコキシドを用いた加水分解、脱水縮重合を最終硬化反応とすると、発泡および体積収縮が問題となるために、本発明では付加重合架橋基による熱付加重合を採用する。熱付加重合は紫外線や硬化触媒を用いない点で、封止材に適した硬化システムである。本発明において、最も好適な付加重合性架橋基として、架橋基Yが挙げることができる。これらの架橋基Yは、パワー半導体に用いる材料の耐熱温度範囲である350℃以下で硬化反応が完了し、且つ250℃の長期耐熱性試験において質量減少が10質量%以下となる非常に耐久性が高いものである。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例および比較例で得られたシロキサン化合物およびその硬化物の品質評価は、以下に示す方法でおこなった。
【0050】
[評価方法]
<粘度測定>
回転粘度計(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ・インク製、品名、DV−II+PRO」と温度制御ユニット(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ・インク、品名、THERMOSEL)を用い25℃における試料の粘度を測定した。
【0051】
<5質量%減少温度の測定>
熱質量・示差熱分析計(株式会社リガク製、品名、TG8120)を用い、空気、50ml/minの気流下で、各々のシロキサン化合物の硬化物を、30℃から昇温速度5℃/minで昇温し、測定前の質量を基準として、5質量%減少した時点の温度を測定した。
【0052】
1.架橋基前駆体化合物の合成
前記シロキサン化合物前駆体(A)に構造式(7)で表される架橋基を含有させるための前駆体化合物Aの合成(合成例1)、構造式(10)で表される架橋基を含有させるための前駆体化合物Bの合成(合成例2)を行った。以下、詳細に示す。
【0053】
[合成例1:構造式(7)で表される架橋基を含有させるための前駆体化合物(A)の合成]
温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコに4−ブロモベンゾシクロブテン14.6g(80.0mmol)、ジエチルエーテル50gを入れ、攪拌しながら−78℃に冷却した。内温が−78℃に達した後に1.6mol/Lブチルリチウムヘキサン溶液56ml(90mmol)を30分間で滴下した。滴下終了後に30分間攪拌した後に、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン6.89g(26.7mmol)を加えた。攪拌しながら室温までの昇温し、室温で12時間攪拌し、以下の反応スキームにおいて、構造式(14)で表される化合物のジエチルエーテル溶液を得た。
【化12】

【0054】
[合成例2:構造式(10)で表される架橋基を含有させるための前駆体化合物(B)の合成]
温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコに4−ブロモジフェニルアセチレン20.6g(80.0mmol)、ジエチルエーテル50gを入れ、攪拌しながら−78℃に冷却した。内温が−78℃に達した後に1.6mol/Lブチルリチウムヘキサン溶液56ml(90mmol)を30分間で滴下した。滴下終了後に30分間攪拌した後に、ヘキサメチルシクロトリシロキサン5.94g(26.7mmol)を加えた。攪拌しながら室温までの昇温し、室温で12時間攪拌し、以下の反応スキームにおいて、構造式(15)で表される前駆体化合物Bのジエチルエーテル溶液を得た。
【化13】

【0055】
2.シロキサン化合物(1)の合成
次いで、前記前駆体化合物(A)(合成例1)および前駆体化合物(B)(合成例2)を各々用い、シロキサン化合物前駆体Aと反応させて、シロキサン化合物(1)を合成した。以下、実施例1および実施例2に詳細に示す。
【0056】
[実施例1:シロキサン化合物の合成]
温度計、還流冷却器を備えた300mLの三口フラスコに、テトラヒドロフランを50.0g、テトラメチルテトラヒドロシクロテトラシロキサンを4.88g(20.0mmol)を入れ、攪拌しがながら−78℃に冷却した。次いで、内温が−78℃に達した後にトリクロロイソシアヌル酸6.28g(27.0mmol)を加えた。添加終了後に−78℃で30分間攪拌した後に、攪拌しながら室温まで昇温した。析出した不溶物を濾別し、テトラヒドロフラン溶液を得た。
【0057】
次いで得られたテトラヒドロフラン溶液を、3℃に冷却した合成例1で得られた前駆値化合物Aのジエチルエーテル溶液に10分間かけて、少量ずつ滴下した。滴下終了後に攪拌しながら室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。攪拌終了後にジイソプロピルエーテル50g、上水50gを加え30分間攪拌後、2層分離した。その後、水層を除去し、有機層を蒸留水50gで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に、150℃/0.1mmHgで減圧濃縮し、無色透明油状物として、以下の反応スキームに示すように、構造式(16)で表されるシロキサン組成物(R=CH、R=CH、R=Vinyl,Y=構造式(7)で表わされる架橋基、m=4,n=0)16.5gを収率83%で得た。粘度測定を行ったところ、当該油状物の粘度は1700mPa・sであった。
【化14】

【0058】
得られたシロキサン化合物をシリコーン(信越シリコーン製SH 9555)の型枠に流し込み、大気圧下250℃で1時間加熱することで、泡・クラックのない厚さ2mmの硬化物を得た。この硬化物の5%質量減少温度は430℃であった。
【0059】
[実施例2]
合成例2で得られた前駆体化合物Bのジエチルエーテル溶液を用いて、実施例1と同様の手順にて、無色透明油状物として、以下の反応スキームに示すように、構造式(17)で表されるシロキサン組成物(R、R、R=CH,Y=構造式(10)で表わされる架橋基、m=4,n=0)19.9gを収率80%で得た。粘度測定を行ったところ、当該油状物の粘度は3600mPa・sであった。
【化15】

【0060】
得られたシロキサン化合物をシリコーン(信越シリコーン製SH9555)の型枠に流し込み、大気圧下330℃で1時間加熱することで、泡・クラックのない厚さ2mmの硬化物を得た。この硬化物の5%質量減少温度は450℃であった。
【0061】
比較例1
温度計を備えた300mLの三口フラスコにテトラヒドロフラン、50.0g、テトラメチルテトラヒドロシクロテトラシロキサン、4.88g(20.0mmol)、4−ビニルベンゾシクロブテン、10.42g(80.0mmol)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン混合物のキシレン溶液(2%白金含有)0.10gを加え、室温下で3時間攪拌した。150℃/0.1mmHgで減圧濃縮し、無色透明油状物として、以下の反応スキームに示すように、構造式(18)で表されるシロキサン組成物12.2gを収率80%で得た。粘度測定を行ったところ、当該油状物の粘度は2800mPa・sであった。
【化16】

【0062】
得られたシロキサン化合物をシリコーン(信越シリコーン製SH9555)の型枠に流し込み、大気圧下250℃で1時間加熱することで、泡・クラックのない厚さ2mmの硬化物を得た。この硬化物の5質量%減少温度は400℃であった。
【0063】
[5質量%減少温度の比較]
【表1】

【0064】
表に1示した結果から、本発明の実施例1および実施例2で得られたシロキサン化合物(1)の硬化物の5質量%減少温度は、比較例1で得られた硬化物の5質量%減少温度よりも高くなることがわかった。この理由として、本発明の実施例1および実施例2のシロキサン化合物(1)は、耐熱性が劣るエチレン結合を含有しないため、比較例1で得られた硬化物よりも耐熱性が高くなったものと思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式(1)中、Xはそれぞれ独立にX1またはX2で表わされ、Xのうち少なくとも1個はX1であり、
X1およびX2中、R〜R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、フェニル基またはピリジル基であり、炭素原子は酸素原子に置換されていてもよく、構造中にエーテル結合、カルボニル基、またはエステル結合を含んでいてもよい。mは3〜8の整数、nは0〜9の整数、pは0または1であり、Yは架橋基である。)
で表されるシロキサン化合物。
【請求項2】
Yがそれぞれ独立に構造式(2)〜(12)
【化2】

で表される群から選ばれた架橋基である、請求項1に記載のシロキサン化合物。
【請求項3】
〜Rが全てメチル基であり、nおよびpが1である請求項1または請求項2に記載のシロキサン化合物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシロキサン化合物の架橋基が反応して得られた硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物を含む封止材。

【公開番号】特開2012−232975(P2012−232975A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90666(P2012−90666)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】