説明

シートスイッチ、検出機構およびカードリーダ

【課題】上位装置からの下位装置の取り外しを検出するための検出機構に適したシートスイッチを提供すること。
【解決手段】シートスイッチ11は、導電性を有する金属によってドーム状に形成される接点電極15と、接点電極15に対向配置される対向電極21と、対向電極21の、接点電極15に対向する対向側と反対側に絶縁性部材18、25を介して配置される金属製の金属シート20とを備えている。このシートスイッチ11は、接点電極15と対向電極21とが接触すると、導通状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスイッチ、このシートスイッチを備える検出機構およびこの検出機構を備えるカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードやICカード等のカードに記録された情報の再生やカードへの情報の記録を行うカードリーダは、たとえば、ATM等の上位装置に下位装置として搭載されている。この種のカードリーダとして、偽造を目的としてカード内の情報を再生しようとする各種の不正行為(タンパー行為)を防止するための構成を備えたICカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のICカードリーダでは、上位装置からICカードリーダが取り外され、暗号ボードに対して物理的な攻撃が行われると、かかる攻撃がタンパースイッチによって検出され、暗号ボード内の鍵情報が自動的に消去される。
【0004】
また、近年、タンパー行為を防止するため、PCI−PED規格もしくはPCI−UPT規格に準拠したカードリーダが市場で求められている。PCI−PED規格もしくはPCI−UPT規格を満足するための要件として、カードリーダが上位装置から取り外されたことを検知しなければならないという要件が規定されている。
【0005】
なお、従来から、電気機器の操作部分に使用される薄くて軽いスイッチとして、シートスイッチが知られている(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載のシートスイッチは、接点電極が取り付けられる樹脂製の表面シートと、接点電極に対向配置される対向電極が取り付けられる樹脂製の対向シートとを備えている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−180244号公報
【特許文献2】特開2007−18887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、PCI−PED規格もしくはPCI−UPT規格を満足するためには、カードリーダが上位装置から取り外されたことを検知しなければならない。また、カードリーダのセキュリティ性能をより高めるために、カードリーダが上位装置の取付部からわずかに浮いただけで、上位装置からカードリーダが取り外されたことを検出できることが好ましい。
【0008】
そこで、本願発明者は、上述のようなシートスイッチを、上位装置からのカードリーダの取り外しを検出するための検出機構へ適用することを試みた。具体的には、接点電極と対向電極とが接触している状態で、カードリーダが上位装置に固定され、かつ、カードリーダが上位装置から取り外されると、接点電極と対向電極とが離れるように、シートスイッチを配置した。
【0009】
しかしながら、従来のシートスイッチをそのまま用いると、一定条件下においては、上位装置からカードリーダが取り外されたことを適切に検出できないことが本願発明者の検討によって明らかになった。具体的には、特に高温環境下では、表面シートや対向シートがクリープ変形してしまうため、カードリーダが上位装置から取り外されても、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0010】
そこで、本発明の課題は、上位装置からの下位装置の取り外しを検出するための検出機構に適したシートスイッチを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるシートスイッチを備える検出機構、および、かかる検出機構を備えるカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のシートスイッチは、導電性を有する金属によってドーム状に形成される接点電極と、接点電極に対向配置される対向電極と、対向電極の、接点電極に対向する対向側と反対側に絶縁性部材を介して配置される金属製の金属シートとを備え、接点電極と対向電極とが接触して導通することを特徴とする。
【0012】
本発明のシートスイッチでは、接点電極は、導電性を有する金属によってドーム状に形成されている。すなわち、接点電極は、樹脂製のシートに取り付けられていない。そのため、接点電極が取り付けられる樹脂製のシートがクリープ変形するといった問題が生じない。また、接点電極は金属で形成されているため、高温環境下でもクリープ変形しにくい。
【0013】
また、本発明のシートスイッチでは、金属シートが、対向電極の、接点電極に対向する対向側と反対側に絶縁性部材を介して配置されている。そのため、たとえば、対向電極が樹脂製のシートに取り付けられている(あるいは形成されている)場合であっても、このシートが変形しにくくなり、接点電極と対向電極とが接触しているときの圧力がこのシートの一部分に集中しにくくなる。したがって、対向電極が取り付けられるシートはクリープ変形しにくくなる。
【0014】
このように、本発明では、接点電極側でのクリープ現象の発生を防止しつつ、対向電極側でのクリープ現象の発生を抑制することができる。その結果、上位装置からの下位装置の取り外しを検出するための検出機構に本発明のシートスイッチを用いると、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を防止することが可能になる。すなわち、本発明のシートスイッチは、上位装置からの下位装置の取り外しを検出するための検出機構に適したものとなる。
【0015】
本発明において、シートスイッチは、接点電極の表面を覆う絶縁性の表面シートを備え、表面シートは、接点電極に接着されていない状態で接点電極に接触していることが好ましい。この場合には、たとえば、シートスイッチは、対向電極に接続される導電性パターンの表面を覆うカバーシートと、接点電極が配置される配置孔が形成され表面シートとカバーシートとの間に配置されるスペーサとを備え、表面シートは、スペーサに接着されている。
【0016】
このように構成すると、接点電極を保護するための表面シートがたとえクリープ変形したとしても、接点電極は、表面シートのクリープ変形の影響を受けにくくなる。したがって、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を確実に防止することが可能になる。
【0017】
本発明において、接点電極は、バネ性を有する金属材料で形成されていることが好ましい。このように構成すると、接点電極への押圧力を除去すれば、接点電極の弾性復帰力によって、接点電極と対向電極とを確実に離すことが可能になる。
【0018】
本発明において、接点電極および金属シートは、ステンレス鋼で形成されていることが好ましい。このように構成すると、接点電極は、よりクリープ変形しにくくなる。また、ステンレス鋼板のヤング率は比較的大きいため、このように構成すると、接点電極と対向電極とが接触しているときの圧力が金属シートにかかっても、金属シートは永久変形しにくくなる。したがって、たとえば、対向電極が樹脂製のシートに取り付けられている場合であっても、接点電極と対向電極とが接触しているときの圧力を樹脂製のシート上で分散させやすくなる。
【0019】
本発明のシートスイッチは、金属シートが当接する緩衝部材を備える検出機構に用いることができる。この検出機構では、接点電極側でのクリープ現象の発生を防止しつつ、対向電極側でのクリープ現象の発生を抑制することができる。したがって、上位装置からの下位装置の取り外しの検出にこの検出機構を用いると、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を防止することが可能になる。
【0020】
また、この検出機構は、金属シートに当接する緩衝部材を備えているため、たとえば、下位装置の取付面よりも突出させた状態でシートスイッチを配置しても、シートスイッチの破損を防止することが可能になる。そのため、下位装置の取付面よりも突出させた状態でシートスイッチを配置することができる。したがって、シートスイッチに当接する上位装置の当接部の寸法がばらついても、この当接部を確実にシートスイッチに接触させて、接点電極と対向電極とを接触させることが可能になる。
【0021】
本発明において、検出機構は、緩衝部材を保持するための保持部材を備え、保持部材には、緩衝部材が配置される配置凹部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、緩衝部材を容易に位置決めすることが可能になり、検出機構を容易に組み立てることが可能になる。
【0022】
本発明において、緩衝部材には、接点電極と対向電極との接触位置に対応する位置に配置される接触圧受け部と、緩衝部材の外周面の全周が配置凹部の壁面に接触するのを避けるための切欠部とが形成されていることが好ましい。このように構成すると、接点電極と対向電極とが接触しているときに、緩衝部材を変形させて、接触圧受け部にかかる応力を逃がすことが可能になる。したがって、対向電極が取り付けられるシートに過剰な応力がかかりにくくなり、対向電極が取り付けられるシートのクリープ変形を防止しやすくなる。
【0023】
本発明において、緩衝部材は、接触受け部を中心にして略十字形状に形成される十字形状部を備え、十字形状部の少なくとも一端は、配置凹部の壁面に接触可能となっていることが好ましい。このように構成すると、接触圧受け部にかかる応力を逃がしつつ、緩衝部材を容易に位置決めすることが可能になる。
【0024】
本発明の検出機構では、たとえば、上位装置に下位装置が取り付けられている状態では、接点電極と対向電極とが接触し、上位装置から下位装置が取り外されると、接点電極と対向電極とが離れる。この検出機構は、接点電極と対向電極とが接触している状態で、上位装置に取り付けられるカードリーダに用いることができる。このカードリーダでは、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を防止することができるため、上位装置からカードリーダが取り外されたことを確実に検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明のシートスイッチを、上位装置からの下位装置の取り外しを検出するための検出機構に用いると、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を防止することが可能になる。また、本発明の検出機構を上位装置からの下位装置の取り外しの検出に用いると、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を防止することが可能になる。さらに、本発明のカードリーダでは、接点電極と対向電極とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を防止することができるため、上位装置からカードリーダが取り外されたことを確実に検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の斜視図である。図2は、図1に示すカードリーダ1が取り付けられる上位装置5の概略構成を示す斜視図である。図3は、図1に示すカードリーダ1の背面の一部を示す斜視図である。
【0028】
本形態のカードリーダ1は、図1に示すように、カード2が挿入、排出されるカード挿入排出部3と、カード2に記録された情報の再生および/またはカード2への情報の記録を行うカード処理部4とを備えている。このカードリーダ1は、図2に示すように、ATMやKiosk端末等の上位装置5に取り付けられている。
【0029】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2の表面には、たとえば、磁気情報が記録される磁気ストライプが形成されている。また、たとえば、カード2の表面には、ICチップが固定されている。なお、カード2には、通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2の表面には、感熱方式によって印字が行われる印字部が形成されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0030】
カード挿入排出部3は、上位装置5のフロントパネル6に形成される開口に配置される露出部3aを備えている。露出部3aは、カード挿入排出部3の本体部3bから図1の紙面手前側に突出するように形成されている。また、露出部3aには、カード2が挿入、排出されるカード挿入排出口3cが形成されている。
【0031】
図1における露出部3aの左右両側には、カードリーダ1を上位装置5に取り付けるための取付部3dが形成されている。取付部3dには、カードリーダ1を上位装置5に固定するためのネジ(図示省略)が挿通される挿通孔3eが形成されている。
【0032】
カード処理部4は、磁気ヘッド、IC接点および/または通信用アンテナ等の情報の記録や再生を行うための記録再生手段を備えている。カード処理部4の本体フレームの背面(図1の紙面奥側の面)には、図3に示すように、本体フレームの背面から窪む取付凹部4aが形成されている。この取付凹部4aの底面は、カードリーダ1を上位装置5に取り付けるための取付面(取付基準面)4bとなっている。また、取付凹部4aの中には、上位装置5からカードリーダ1が取り外されたことを検出するための検出機構7が配置されている。検出機構7およびその周辺部の詳細な構成については後述する。
【0033】
なお、カード処理部4は、カード処理部4内でカード2を搬送するためのカード搬送機構を備えていても良いし、カード搬送機構を備えていなくても良い。すなわち、カードリーダ1は、カード自走式のカードリーダであっても良いし、手動式のカードリーダであっても良い。
【0034】
(検出機構およびその周辺部の構成)
図4は、図3のE部の分解斜視図である。図5は、図3のF−F断面の断面図である。図6は、図4に示すシートスイッチ11の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。図7は、図6(B)のG部の拡大図である。図8は、図7のH−H方向から対向電極21を示す平面図である。図9は、図4に示す緩衝部材12の平面図である。
【0035】
図4に示すように、取付面4bには、検出機構7を構成する後述の緩衝部材12が配置される略矩形状の配置凹部4cが窪むように形成されている。本形態では、図5に示すように、上位装置5に形成される当接突部5aの先端面が取付面4bに当接した状態で、カードリーダ1が上位装置5にネジで固定されている。
【0036】
検出機構7は、図4、図5に示すように、シートスイッチ11と、緩衝部材12とを備えている。
【0037】
シートスイッチ11は、図6(A)に示すように、図6の左端側に配置される幅広部11aと、長尺状に形成され幅広部11aよりも幅の狭い幅狭部11bとから構成されている。幅広部11aには、当接突部5aの先端面に押されて窪むスイッチ部が形成されており、この幅広部11aは、取付凹部4aの中に配置されている。また、幅狭部11bは、図5に示すように、カードリーダ1の内部に向かって引き回されている。
【0038】
このシートスイッチ11は、図6、図7に示すように、幅広部11aに形成される上述のスイッチ部の一部を構成する接点電極15と、接点電極15の表面(図7の上面)を覆う表面シート16と、導電性パターン17が表面に形成された対向シート18と、導電性パターン17の表面(図7の上面)を覆うカバーシート19と、対向シート18の裏面(図7の下面)側に配置される金属シート20とを備えている。図7に示すように、導電性パターン17の左端側は、カバーシート19によって覆われておらず露出している。この導電性パターン17の露出部分は、接点電極15に対向配置される対向電極21となっている。
【0039】
接点電極15は、導電性を有する金属材料で形成されている。また、接点電極15は、バネ性を有する金属材料で形成されている。具体的には、本形態の接点電極15は、薄いステンレス鋼板で形成されている。また、接点電極15は、ドーム状に形成されている。具体的には、接点電極15は、図7の上側に向かって膨らむドーム状に形成されており、上側から押されると、下側に向かって窪む。また、接点電極15は、上側からの押圧をやめると元のドーム形状に戻る。すなわち、接点電極15は、上側からの押圧をやめると元の形状に自己復帰する。換言すると、接点電極15に対する上側からの押圧力が除去されると、接点電極15の弾性復帰力によって、接点電極15が対向電極21から離れて、接点電極15と対向電極21とが接触しないオフ状態となる。なお、接点電極15はリン青銅等のバネ性を有する他の金属材料で形成されても良い。
【0040】
図7における接点電極15の下端の一部分は、薄いシート状に形成された絶縁シート22に接触し、接点電極15の下端の他の一部分は、カバーシート19に接触している。本形態では、図6(A)に示すように、2個の接点電極15が幅広部11aに配置されており、2個の接点電極15は、幅広部11aの一部を構成している。なお、幅広部11aに配置される接点電極11は、1個であっても良いし、3個以上であっても良い。
【0041】
表面シート16は、絶縁性材料によって薄いシート状に形成されている。具体的には、表面シート16は、PET等の樹脂で形成されている。この表面シート16は、図7に示すように、接点電極15が配置される配置孔23aが形成されたスペーサ23の上面に接着されて固定されている。スペーサ23は、PET等の樹脂で形成されており、カバーシート19および絶縁シート22の上面に接着されて固定されている。表面シート16およびスペーサ23は、幅広部11aに配置されており、表面シート16およびスペーサ23は、幅広部11aの一部を構成している。
【0042】
また、表面シート16は、図7に示すように、接点電極15に接触している。本形態では、表面シート16は、接点電極15に接着されていない。すなわち、表面シート16は、接点電極15に接着されていない状態で接点電極15に接触している。
【0043】
対向シート18は、絶縁性材料によって薄いシート状に形成されている。具体的には、対向シート18は、PET等の樹脂で形成されている。また、対向シート18は、図6の左右方向に長い長尺状に形成されており(具体的には、シートスイッチ11の左端から右端まで形成されており)、幅広部11aおよび幅狭部11bの両者の一部を構成している。対向シート18の右端側の上面には、図6(A)に示すように、コネクタ接続部18aが形成されている。また、対向シート18の右端側の下面には、図6(B)に示すように、PET等の樹脂で形成された補強板24が固定されている。
【0044】
導電性パターン17は、たとえば、印刷された銀ペーストによって形成されている。また、導電性パターン17は、図6(B)における接点電極15の下方から対向シート18の右端側まで形成されている。上述のように、導電性パターン17の露出部分(図7の左端側)は、接点電極15に対向配置される対向電極21となっている。すなわち、対向電極21は、図7に示すように、接点電極15の下方に配置されている。図8に示すように、対向電極21は、略半円状に形成されている。また、本形態では、1個の接点電極15の下方に、一対の(すなわち、2個の)対向電極21が互いに離れた状態で配置されている。
【0045】
カバーシート19は、絶縁性材料によって薄いシート状に形成されている。具体的には、カバーシート19は、PET等の樹脂で形成されている。また、カバーシート19は、図6の左右方向に長い長尺状に形成されており、幅広部11aおよび幅狭部11bの両者の一部を構成している。
【0046】
絶縁シート22は、カバーシート19と同様に、絶縁性材料によって薄いシート状に形成されている。具体的には、絶縁シート22は、PET等の樹脂で形成されている。また、絶縁シート22は、カバーシート19よりも厚く形成されている。
【0047】
本形態では、カバーシート19と絶縁シート22とは一体で形成されており、図8に示すように、カバーシート19および絶縁シート22には、開口部30が形成されている。また、円形状に形成される接点電極15の下端は、この開口部30の縁に載置されている。すなわち、接点電極15の下端は、カバーシート19および絶縁シート22の開口部30の縁に接触しており、接点電極15と導電性パターン17とは絶縁されている。なお、カバーシート19と絶縁シート22とは別体で形成されても良い。
【0048】
金属シート20は、薄いシート状に形成されている。本形態の金属シート20は、薄いステンレス鋼板で形成されている。この金属シート20は、粘着シート25によって、対向シート18の裏面に固定されている。粘着シート25は、樹脂等の絶縁性材料で形成されている。また、金属シート20は、幅広部11aのほぼ全域に配置されており、幅広部11aの一部を構成している。
【0049】
以上のように構成されたシートスイッチ11では、接点電極15が図7の上側から押されて下側に向かって窪み、接点電極15と一対の対向電極21とが接触するとシートスイッチ11が導通状態となる。すなわち、一対の対向電極21が接点電極15によって電気的に接続され、一対の対向電極21の一方から他方に向かって電流が流れる。
【0050】
なお、本形態では、2個の接点電極15が幅広部11aに配置され、1個の接点電極15の下方には、一対の対向電極21が配置されている。そのため、2個の接点電極15のうちのいずれか一方の接点電極15がその接点電極15の下方に配置される一対の対向電極21と接触したときにシートスイッチ11が導通状態となっても良いし、2個の接点電極15の両方がその接点電極15の下方に配置される一対の対向電極21と接触したときにシートスイッチ11が導通状態となっても良い。すなわち、2個の接点電極15の両方がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにシートスイッチ11が導通していない状態となっても良いし、2個の接点電極15のうちのいずれか一方の接点電極15がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにシートスイッチ11が導通していない状態となっても良い。
【0051】
緩衝部材12は、たとえば、ゴムで形成されている。本形態の緩衝部材12は、永久圧縮歪みがほとんどなく、耐熱性、耐寒性に優れるととともに、耐候性、耐オゾン性および絶縁性に優れるゴムで形成されている。たとえば、緩衝部材12は、シリコンゴムで形成されている。この緩衝部材12は、図4に示すように、取付面4bに形成される配置凹部4cの中に配置され、配置凹部4cに保持されている。本形態のカード処理部4の本体フレームは、緩衝部材12を保持するための保持部材である。
【0052】
また、緩衝部材12は、図9に示すように、略十字形状に形成される2個の十字形状部12aを備えている。本形態の緩衝部材12は、この2個の十字形状部12aの一端部同士が接続されることで形成されている。具体的には、図9の上側に配置される十字形状部12aの下端と図9の下側に配置される十字形状部12aの上端とが接続されることで、緩衝部材12が形成されている。すなわち、本形態の緩衝部材12には、緩衝部材12の外周面の全周が配置凹部4cの壁面4dに接触することがないように複数の矩形状の切欠部12bが形成されており(図4、図9参照)、この切欠部12bが形成されることで、緩衝部材12は、2個の十字形状部12aからなる形状に形成されている。
【0053】
図9の上側に配置される十字形状部12aの上端および左右両端は、配置凹部4cの壁面4dに接触可能となっている。また、図9の下側に配置される十字形状部12aの下端および左右両端は、配置凹部4cの壁面4dに接触可能となっている。また、十字形状部12aの中心は、接点電極15と対向電極21とが接触する位置に対応する位置(すなわち、図7における接点電極15の下方)に配置される接触圧受け部12cとなっている。
【0054】
シートスイッチ11は、図5に示すように、金属シート20が緩衝部材12に当接するように、取付凹部4aの中に固定されている。具体的には、カードリーダ1が上位装置5に取り付けられていないときには、シートスイッチ11の接点電極15側が取付面4bよりも突出するように、シートスイッチ11が取付凹部4aの中に固定されている(図5参照)。
【0055】
上述のように、上位装置5に形成される当接突部5aの先端面が取付面4bに当接した状態で、カードリーダ1が上位装置5に固定されている。カードリーダ1が上位装置5に固定された状態では、図5の上方向に緩衝部材12が縮む。また、この状態では、当接突部5aの先端面がシートスイッチ11の接点電極15側に当接しており、接点電極15と対向電極21とが接触してシートスイッチ11が導通状態となるまで、接点電極15が押圧されて窪んでいる。すなわち、接点電極15と対向電極21とが接触してシートスイッチ11が導通している状態で、カードリーダ1は、上位装置5に取り付けられている。
【0056】
この状態で、カードリーダ1が上位装置5から取り外されると、接点電極15への押圧力が除去されるため、接点電極15の弾性復帰力によって、接点電極15と対向電極21とが離れて、シートスイッチ11は導通しなくなる。すなわち、シートスイッチ11が導通状態でなくなることで、カードリーダ1が上位装置5から取り外されたことが検出される。
【0057】
なお、上述のように、2個の接点電極15の両方がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにシートスイッチ11が導通していない状態となっても良いし、2個の接点電極15のうちのいずれか一方の接点電極15がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにシートスイッチ11が導通していない状態となっても良い。すなわち、2個の接点電極15の両方がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにカードリーダ1が上位装置5から取り外されたことが検出されても良いし、2個の接点電極15のうちのいずれか一方の接点電極15がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにカードリーダ1が上位装置5から取り外されたことが検出されても良い。
【0058】
2個の接点電極15の両方がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにカードリーダ1が上位装置5から取り外されたことが検出される場合には、検出機構7での誤検知を防止することが可能になる。また、2個の接点電極15のうちのいずれか一方の接点電極15がその接点電極15の下方に配置される対向電極21から離れたときにカードリーダ1が上位装置5から取り外されたことが検出される場合には、一方の接点電極15(および/またはその接点電極15の下方に配置される対向電極21)に不良が発生しても、カードリーダ1が上位装置5から取り外されたことを検出することが可能になる。
【0059】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、接点電極15は、導電性を有する金属によってドーム状に形成されている。すなわち、接点電極15は、樹脂製のシートに取り付けられていない。そのため、接点電極15が取り付けられる樹脂製のシートがクリープ変形するといった問題が生じない。また、接点電極15はステンレス鋼板で形成されているため、高温環境下でもクリープ変形しにくい。
【0060】
また、本形態では、対向シート18の裏面に金属シート20が配置されている。そのため、カードリーダ1がフロントパネル6に固定されているときに縮んでいる緩衝部材12に生じる反発力が樹脂製の対向シート18の一部分に集中しにくくなる。したがって、対向シート18はクリープ変形しにくくなる。特に本形態の金属シート20は、ステンレス鋼板で形成されているため、緩衝部材12に生じる反発力が金属シート20にかかっても、金属シート20は永久変形しにくくなる。したがって、緩衝部材12に生じる反発力がより分散した状態で対向シート18に伝達されやすくなる。
【0061】
このように、本形態では、接点電極15側でのクリープ現象の発生を防止しつつ、対向電極21側でのクリープ現象の発生を抑制することができる。したがって、本形態の検出機構7では、接点電極15と対向電極21とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を防止することが可能になる。その結果、本形態では、上位装置5からカードリーダ1が取り外されたことを確実に検出することが可能になる。
【0062】
本形態では、接点電極15は、バネ性を有する金属材料で形成されている。そのため、接点電極15への押圧力を除去すれば、接点電極15の弾性復帰力により、接点電極15と対向電極21とを確実に離すことができる。すなわち、接点電極15への押圧力を除去すれば、確実に、接点電極15と対向電極21とが接触しない状態にすることができる。
【0063】
本形態では、表面シート16は、接点電極15に接着されていない。そのため、樹脂製の表面シート16がたとえクリープ変形したとしても、接点電極15は、表面シート16のクリープ変形の影響を受けにくくなる。したがって、接点電極15と対向電極21とが接触したままで離れなくなるといった問題の発生を確実に防止することが可能になる。
【0064】
本形態では、検出機構7は、金属シート20に当接する緩衝部材12を備えている。そのため、シートスイッチ11を破損させることなく、取付面4bよりも突出させた状態でシートスイッチ11を取付凹部4a内に配置することができる。したがって、シートスイッチ11に当接する上位装置5の当接突部5aの寸法がばらついても、当接突部5aを確実にシートスイッチ11に接触させて、接点電極15と対向電極21とを確実に接触させることが可能になる。
【0065】
本形態では、取付面4bに、緩衝部材12が配置される配置凹部4cが形成されている。また、図9の上側に配置される十字形状部12aの上端および左右両端は、配置凹部4cの壁面4dに接触可能となっており、かつ、図9の下側に配置される十字形状部12aの下端および左右両端は、配置凹部4cの壁面4dに接触可能となっている。そのため、カード処理部4に対して緩衝部材12を容易に位置決めすることができ、カードリーダ1の組立が容易になる。
【0066】
本形態では、緩衝部材12は、2個の十字形状部12aの一端部同士が接続されることで形成されており、緩衝部材12には、緩衝部材12の外周面の全周が配置凹部4cの壁面4dに接触しないように切欠部12bが形成されている。そのため、緩衝部材12が配置凹部4c内に配置される場合であっても、接点電極15と対向電極21とが接触しているときに、緩衝部材12を変形させて、接触圧受け部12cにかかる応力を逃がすことが可能になる。したがって、対向シート18に過剰な応力がかかりにくくなり、対向シート18のクリープ変形を防止しやすくなる。
【0067】
なお、本形態の検出機構7では、当接突部5aの先端面が取付面4bからたとえば0.2mm以上浮くと(すなわち、当接突部5aの先端面が取付面4bから0.2mm以上離れると)、接点電極15と対向電極21とが離れて、カードリーダ1が上位装置5から取り外されたことを検出することができる。すなわち、本形態では、カードリーダ1が上位装置5からわずかに浮いただけでも、上位装置5からカードリーダ1が取り外されたことを検出することができる。
【0068】
また、本形態では、当接突部5aの先端面が設計値に対して、たとえば、−0.2mm〜+0.3mmの範囲でばらついても、上位装置5にカードリーダ1が取り付けられている状態では、接点電極15と対向電極21とを確実に接触させ、かつ、上位装置5からカードリーダ1が取り外されると、接点電極15と対向電極21とを確実に離すことができる。すなわち、本形態では、当接突部5aの設計公差を大きくすることが可能になる。
【0069】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0070】
上述した形態では、緩衝部材12は、2個の十字形状部12aの一端部同士が接続されることで形成されているが、接点電極15と対向電極21との接触位置に対応する位置に配置される接触圧受け部と、緩衝部材12の外周面の全周が配置凹部4cの壁面4dに接触するのを避けるための切欠部とが形成されているのであれば、緩衝部材12は、その他の形状に形成されても良い。また、緩衝部材は、円柱状、多角柱状、円錐台状あるいは多角錐台状に形成されても良い。この場合には、この緩衝部材は、接点電極15と対向電極21とが接触する位置に対応する位置に配置される。
【0071】
上述した形態では、図8に示すように、対向電極21は、略半円状に形成されている。この他にもたとえば、図10に示すように、対向電極21は、複数の突出部21aと突出部21a間等に形成される凹部21bとからなる櫛歯状に形成されても良い。この場合には、一対の対向電極21のうちの一方の対向電極21の突出部21aが、他方の対向電極21の凹部21bに配置される。
【0072】
上述した形態では、シートスイッチ11は、上位装置5からカードリーダ1が取り外されたことを検出するための検出機構7に使用されている。この他にもたとえば、カードリーダ1以外の下位装置が上位装置から取り外されることを検出するための検出機構にシートスイッチ11を使用しても良い。また、通常、接点電極15と対向電極21とが接触するとともに、必要時に、接点電極15と対向電極21とが離れることで所定の状態を検出する検出機構にシートスイッチ11を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの斜視図である。
【図2】図1に示すカードリーダが取り付けられる上位装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示すカードリーダの背面の一部を示す斜視図である。
【図4】図3のE部の分解斜視図である。
【図5】図3のF−F断面の断面図である。
【図6】図4に示すシートスイッチの図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図7】図6(B)のG部の拡大図である。
【図8】図7のH−H方向から対向電極を示す平面図である。
【図9】図4に示す緩衝部材の平面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる対向電極の形状を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 カードリーダ(下位装置)
4 カード処理部(保持部材)
4c 配置凹部
4d 壁面
5 上位装置
7 検出機構
11 シートスイッチ
12 緩衝部材
12a 十字形状部
12b 切欠部
12c 接触圧受け部
15 接点電極
16 表面シート
18 対向シート(絶縁性部材)
19 カバーシート
20 金属シート
21 対向電極
23 スペーサ
23a 配置孔
25 粘着シート(絶縁性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する金属によってドーム状に形成される接点電極と、前記接点電極に対向配置される対向電極と、前記対向電極の、前記接点電極に対向する対向側と反対側に絶縁性部材を介して配置される金属製の金属シートとを備え、
前記接点電極と前記対向電極とが接触して導通することを特徴とするシートスイッチ。
【請求項2】
前記接点電極の表面を覆う絶縁性の表面シートを備え、
前記表面シートは、前記接点電極に接着されていない状態で前記接点電極に接触していることを特徴とする請求項1記載のシートスイッチ。
【請求項3】
前記対向電極に接続される導電性パターンの表面を覆うカバーシートと、前記接点電極が配置される配置孔が形成され前記表面シートと前記カバーシートとの間に配置されるスペーサとを備え、
前記表面シートは、前記スペーサに接着されていることを特徴とする請求項2記載のシートスイッチ。
【請求項4】
前記接点電極は、バネ性を有する金属材料で形成されていることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のシートスイッチ。
【請求項5】
前記接点電極および前記金属シートは、ステンレス鋼で形成されていることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のシートスイッチ。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載のシートスイッチと、前記金属シートが当接する緩衝部材とを備えることを特徴とする検出機構。
【請求項7】
前記緩衝部材を保持するための保持部材を備え、
前記保持部材には、前記緩衝部材が配置される配置凹部が形成されていることを特徴とする請求項6記載の検出機構。
【請求項8】
前記緩衝部材には、前記接点電極と前記対向電極との接触位置に対応する位置に配置される接触圧受け部と、前記緩衝部材の外周面の全周が前記配置凹部の壁面に接触するのを避けるための切欠部とが形成されていることを特徴とする請求項7記載の検出機構。
【請求項9】
前記緩衝部材は、前記接触受け部を中心にして略十字形状に形成される十字形状部を備え、前記十字形状部の少なくとも一端は、前記配置凹部の壁面に接触可能となっていることを特徴とする請求項8記載の検出機構。
【請求項10】
上位装置に下位装置が取り付けられている状態では、前記接点電極と前記対向電極とが接触し、前記上位装置から前記下位装置が取り外されると、前記接点電極と前記対向電極とが離れることを特徴とする請求項6から9いずれかに記載の検出機構。
【請求項11】
請求項10記載の検出機構を備え、
前記接点電極と前記対向電極とが接触している状態で、前記上位装置に取り付けられることを特徴とするカードリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−102980(P2010−102980A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273904(P2008−273904)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】