説明

シートリクライニング装置

【課題】リクライナの外部に、部品点数が少なく軸方向および半径方向の寸法が小さい衝撃吸収手段を備える。
【解決手段】機枠5と、該機枠5に対して相対回動自在な蓋体7と、機枠5に対して蓋体7が回動するのをロックあるいはロック解除するロックツース10とを設けてリクライナ1を構成し、シートバック3側に設けられたバック側アーム6にリクライナ1の蓋体7を結合し、機枠5には衝撃吸収プレート22を結合し、該衝撃吸収プレート22には円周方向に沿って略等間隔に複数の衝撃吸収孔22cを設け、該衝撃吸収孔22cの夫々には、円周方向に沿って移動することにより衝撃を吸収するピン21を挿通し、該ピン21には該ピン21が反リクライナ側1へ抜けるのを規制する大径部21aを形成し、該ピン21の先端部はシートクッション2側に設けられたクッション側アーム4に結合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートリクライニング装置に関し、車両が後方から衝突された場合に、衝撃吸収が行われるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
車両にはシートが設けられており、シートクッションに対するシートバックの傾きを任意の角度にしてロックできるように、シートリクライニング装置が設けられている。車両が後方から衝突された際には、車体が前方へ移動するため、車体に対して乗員が相対的に後方へ倒れ、乗員がシートバックに押し付けられることになる。このとき、シートバックを構成するバック側アームの弾性変形の量が大きいと、衝突荷重がなくなってバック側アームが復帰したときの反動も大きくなり、この大きな反動が乗員に作用するという問題がある。
【0003】
このため、特許文献1,2には、車両が後方から衝突された際に、シートクッションに対するシートバックの後方への傾きを徐々に大きくして衝撃を吸収する衝撃吸収構造を設けたものが開示されている。
【0004】
特許文献1は、図1に示すようにシートクッション11の座部フレーム7と、シートバック12の背部フレーム8との間に、リクライニング装置6と後突衝撃吸収ユニット5を設けたものであり、リクライニング装置6は座部フレーム7に回転を拘束して結合されている。一方、後突衝撃吸収ユニット5は、図2(b)に示すように一方側部材1,他方側部材2,補強部材3をカバー4により相対回転自在に一体化したものであり、一方側部材1の中心部は補強部材3の中心部を介して背部フレーム8に回転を拘束して結合され、他方側部材2の中心部は回転を拘束してリクライニング装置6に結合されており、一方側部材1と他方側部材2とが相対回転自在になっている。そして、一方側部材1と他方側部材2との相対的な回動範囲を規制するため、他方側部材2の回動限突起2dが一方側部材1の回動限孔1bの内部を円周方向へ移動可能であり、図5に示すように一方側部材1の凸部1aが他方側部材2の貫通孔2aの内周面と干渉して中心へ向って「へ」の字状に変形し、凸部1aが剪断される際のエネルギーの消費により、衝撃が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−1209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の発明は、後突衝撃吸収ユニット5として3枚のプレートの外周部をカバーで覆って一体化しているため、軸方向の寸法が大きいだけでなく部品点数も多く、更に、一方側部材1の凸部1aが中心へ向って「へ」の字状に変形するためのスペースが半径方向へ必要であり、後突衝撃吸収ユニット5の半径方向の寸法も大きくなる。
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、リクライナの外部に設ける部品点数が少なく軸方向および半径方向の寸法が小さい衝撃吸収手段を備えたシートリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ベース部材と、該ベース部材に対して相対回動自在な回動部材と、前記ベース部材に対して前記回動部材が回動するのをロックあるいはロック解除するロック手段とを設けてリクライナを構成し、
シートクッション側に設けられたクッション側アームとシートバック側に設けられたバック側アームとのいずれか一方に前記ベース部材と前記回動部材とのいずれか一方を結合し、前記ベース部材と前記回動部材との他方に衝撃吸収プレートを介して前記クッション側アームと前記バック側アームとの他方を結合したシートリクライニング装置において、
該衝撃吸収プレートには円周方向に沿って略等間隔に複数の衝撃吸収孔を設け、該衝撃吸収孔の夫々には、前記衝撃吸収孔の内部で円周方向に沿って移動することにより衝撃を吸収するピンを挿通し、該ピンには該ピンが反リクライナ側へ抜けるのを規制する大径部を形成し、該ピンの先端部は前記クッション側アームと前記バック側アームとの他方に結合し、
前記シートバックに衝撃が作用すると、前記ピンが前記衝撃吸収孔を塑性変形させながら移動することにより衝撃が吸収されることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、車両が後方から衝突されたときには、シートクッションに対してシートバックを後方へ倒す衝撃力が作用し、クッション側アームに対してバック側アームが後方へ回動されようとする。このため、シートクッション側に設けられたクッション側アームとシートバック側に設けられたバック側アームとの他方と衝撃吸収プレートとの間に相対的な回動が生じ、ピンが衝撃吸収孔の内部で円周方向へ相対移動し、ピンが衝撃吸収孔を塑性変形させることにより衝撃が吸収される。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシートリクライニング装置において、
前記衝撃吸収孔は円周方向に沿って形成し、前記衝撃吸収孔には前記衝撃吸収プレートの半径方向の外周側および中心側から前記衝撃吸収孔の内部へ向って突出する一対の凸部を形成したことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ピンが衝撃吸収孔の内部で円周方向へ相対移動する際に、ピンが衝撃吸収孔の内部へ向って突出する一対の凸部を押し広げ、衝撃吸収孔を塑性変形させる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のシートリクライニング装置において、
前記衝撃吸収孔としてピンが挿入される挿入孔とピンの円周方向への移動を可能にするための逃げ孔とを円周方向に並べて形成したことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、ピンが衝撃吸収孔の内部で円周方向へ相対移動する際に、挿入孔のピンが、挿入孔と逃げ孔との間の孔間部分を、逃げ孔へ向って押し出し、衝撃吸収孔を塑性変形させる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るシートリクライニング装置によれば、ピンが衝撃吸収孔の内部で円周方向へ相対移動することにより衝撃吸収孔を塑性変形させて衝撃を吸収するので、ピンと衝撃吸収孔とにより衝撃の吸収と回動範囲の規制とを同時に行なうことになり、従来のように衝撃の吸収を行う部分と回動範囲の規制を行う部分とを半径方向に並べて配置した場合に比べ、衝撃吸収プレートの半径方向の寸法を小さくできる。また、リクライナに加えて衝撃吸収プレートとピンだけを設ければよいので、部品点数を少なくでき、従来のように複数のプレートを設ける場合に比べて軸方向の寸法を小さくできると共に衝撃吸収プレートの外径寸法をリクライナの外径寸法と略同一に設定できるので、シートリクライニング装置の半径方向の寸法が従来よりも小さくなる。
【0015】
請求項2に係るシートリクライニング装置によれば、衝撃吸収孔の内部へ向って突出する一対の凸部をピンが押し広げて衝撃吸収孔を塑性変形させながら移動し、衝撃吸収孔の端部で停止するので、衝撃を確実に吸収できると共に作動範囲の規制が確実に行える。
【0016】
請求項3に係るシートリクライニング装置によれば、挿入孔と逃げ孔との間の孔間部分を挿入孔のピンが逃げ孔へ向って押し出しながら孔間部分を塑性変形させるので、衝撃吸収と作動範囲の規制が行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シートリクライニング装置の斜視図(実施の形態1)。
【図2】シートリクライニング装置の断面図(実施の形態1)。
【図3】リクライナを一部破断して示す正面図(実施の形態1)。
【図4】衝撃吸収プレートとピンとの位置関係を示しており、(a)は相対的に回動する前の状態を示す作用説明図、(b)は相対的に回動した後の状態を示す作用説明図(実施の形態1)。
【図5】シートとシートリクライニング装置との関係を示す構成図(実施の形態1)。
【図6】シートリクライニング装置の斜視図(実施の形態2)。
【図7】シートリクライニング装置の断面図(実施の形態2)。
【図8】衝撃吸収孔のその他の構成を示す説明図(実施の形態3)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるシートリクライニング装置の実施の形態を説明する。
【0019】
(a)実施の形態1
まず、実施の形態1について説明する。
(構成)
図5に示すように座る部分であるシートクッション2が設けられ、該シートクッション2に対してシートバック3が車両の前後方向へ回動可能に取り付けられている。シートクッション2側の図示しないフレームにはクッション側アーム4が結合される一方、シートバック3側の図示しないフレームにはバック側アーム6が結合されている。クッション側アーム4とバック側アーム6との間にリクライナ1を有するシートリクライニング装置が設けられている。そして、シートクッション2に対してシートバック3を車両の前方である左側へ倒す方向へ付勢する図示しないばねが設けられている。
【0020】
前記シートリクライニング装置は、図1に示すようにクッション側アーム4とバック側アーム6との間に配置されたリクライナ1とピン21と衝撃吸収プレート22とによって構成されている。
【0021】
前記リクライナ1は、図2,図3に示すようにベース部材としての機枠5と、該機枠5に対して相対回動自在な回動部材としての蓋体7と、機枠5に対する蓋体7の軸方向移動を規制するホルダリング23と、該蓋体7が回動するのをロックあるいはロック解除すると共に機枠5に設けられたロック手段とから構成されている。リクライナ1の詳細については後述する。
【0022】
図1に示すようにバック側アーム6にリクライナ1を構成する蓋体7の部分が結合されている。即ち、蓋体7の軸方向の外面には円柱形の6つの回り止め突起部7eが形成され、該回り止め突起部7eが前記バック側アーム6の中心孔6bの回りに形成された6つの回り止め孔6aに嵌合されて溶接されている。そして、リクライナ1を構成する機枠5の部分に衝撃吸収プレート22が結合されている。即ち、機枠5の外面には衝撃吸収プレート22へ向って突出する円柱形状の回り止め突起部5cが6つ設けられる一方、衝撃吸収プレート22の中心孔22pの回りに6つの回り止め孔22aが形成され、該回り止め孔22aに前記回り止め突起部5cが嵌合されている。また、衝撃吸収プレート22の外周部には、120度ごとに3箇所に切欠部22bが形成され、該切欠部22bの部分で、衝撃吸収プレート22と機枠5の外面とが溶接結合されている。
【0023】
該衝撃吸収プレート22の外周部には、円周方向に沿って略等間隔に本実施の形態では6つの衝撃吸収孔22cが形成されている。図1,図2に示すように、衝撃吸収プレート22の外周部であって円周方向の6箇所には、リクライナ1とは反対側へ向って半抜き形成することにより、リクライナ1側に凹部22qが形成されている。そして、半抜き形成された部分に、衝撃吸収孔22cが形成されている。該衝撃吸収孔22cは、図4(a)に示すように、円周方向に沿って長孔状に形成されており、衝撃吸収孔22cには、衝撃吸収プレート22の半径方向の外周側および中心側から衝撃吸収孔22cの内部へ向って突出する一対の凸部22dが形成されている。これにより、衝撃吸収孔22cは、ピン21が挿通される挿通孔部22eと、ピン21を円周方向に沿って移動可能にする逃げ孔部22fとが連通した形状になっている。衝撃吸収孔22cを形成したこの衝撃吸収プレート22の外径寸法は、図2に示すように、リクライナ1の外径寸法と略同一の値に設定されている。
【0024】
該衝撃吸収孔22cにおける挿通孔部22eの夫々には、前記衝撃吸収孔22cの内部で円周方向に沿って移動することにより衝撃を吸収するピン21が挿通されている。該ピン21には、該ピン21が反リクライナ1側へ抜けるのを規制する大径部21aが形成されている。この大径部21aは、半抜きにより形成された前記凹部22qの位置に収容され、衝撃吸収プレート22と機枠5との軸方向間に大径部21aが挟まれることにより、両者間に隙間が生じて軸方向寸法が増大するのを回避している。
【0025】
図1に示すように、クッション側アーム4には、中心孔4bの周りに、前記衝撃吸収孔22cと同一のピッチで6つの嵌合孔4aが形成されている。そして、前記ピン21には中径部21bと小径部21cとが形成されている。中径部21bの外径寸法は、図4(a)の前記挿通孔部22eの内径寸法と略同じ寸法に設定され、小径部21cの外径寸法は図1の前記嵌合孔4aの内径寸法と略同じ寸法に設定されている。中径部21bの長さ寸法は衝撃吸収プレート22の厚さ寸法と略同じ寸法に、小径部21cの長さ寸法はクッション側アーム4の厚さと略同じ寸法に夫々設定されている。
【0026】
クッション側アーム4に対して衝撃吸収プレート22の心出しをするため、衝撃吸収プレート22の中心孔22pの周りには、クッション側アーム4の中心孔4bに嵌合される円筒部22rが形成されている。該円筒部22rを中心孔4bに嵌合した状態で、前記ピン21の小径部21cがクッション側アーム4の嵌合孔4aに嵌合され、該小径部21cの端部とクッション側アーム4の端面とが溶接結合されている。
【0027】
前記リクライナ1の構成を、図2,図3に基づいて簡単に説明する。図2に示すように、機枠5には外周部に円筒部5bを形成することにより円形凹部5aが形成される一方、蓋体7には外周部に円筒部7bを形成することにより円形凹部7cが形成されると共に該円筒部7bの内周面には内歯ギヤ7aが形成されている。そして、機枠5の円筒部5bに、蓋体7の円筒部7bが相対回転自在に嵌め込まれている。機枠5と蓋体7との軸方向間の中央には、カム9が回動可能に配置され、該カム9を挟んで図3の上下位置には揺動自在に前記ロック手段としての一対のロックツース10が配置されている。
【0028】
該ロックツース10を円弧軌道に沿って揺動自在に案内するための円弧軌道の内周側には、軸突起部11が機枠5と一体成形されている。一方、円弧軌道の両端近傍の外周側には、一対の第1ガイド突起部12Aと第2ガイド突起部12Bとが機枠5と一体に成形されている。円弧軌道に沿って揺動するロックツース10の前記内歯ギヤ7aと対向する面には、外歯ギヤ10dが形成されている。
【0029】
ロックツース10を内歯ギヤ7aへ向かって押圧するため、前記カム9が設けられている。カム9は、中心孔9eを中心として図3中の反時計方向に回動させることにより、一対のロックツース10を半径方向外側へ押圧して外歯ギヤ10dを内歯ギヤ7aに噛合させるロックカム面9aと、逆に時計方向へ回動させることにより噛合を解除させるロック解除カム面9bとが設けられている。
【0030】
カム9をロック方向へ付勢するため、機枠5と一体に形成された半円柱形状の凸部14を介してロックスプリング19が設けられている。該ロックスプリング19の外端部は、カム9に形成されたばね掛け部9cに掛けられている。このロックスプリング19の付勢力に抗して前記カム9をロック解除方向へ回動させるため、カム9の中心孔9eには操作軸15が圧入固定されており、該操作軸15には、図5に示すように操作レバー20が取り付けられている。
(作用)
次に、シートリクライニング装置の作用を説明する。
【0031】
まず、リクライナ1の部分の作用について説明する。通常は図3に示すように、ロックスプリング19の付勢力によりカム9が反時計方向に回動した状態を占めており、ロックカム面9aによってロックツース10が押圧され、該ロックツース10が時計方向に揺動し、外歯ギヤ10dが蓋体7の内歯ギヤ7aに噛合した状態になっている。即ち、シートバック3の回動が規制された状態になっている。
【0032】
次に、操作レバー20を操作し、ロックスプリング19の付勢力に抗して操作軸15を図3中の時計方向に回動させると、カム9のロックカム面9aとロックツース10との係合が解かれると共に、ロック解除カム面9bがロックツース10を反時計方向へ押圧することになる。このため、ロックツース10は、軸突起部11を中心として反時計方向へ揺動し、外歯ギヤ10dと内歯ギヤ7aとの噛合が解かれてロック解除状態となり、蓋体7に取り付けられたバック側アーム6及びシートバック3が図示しないばねの付勢力により前倒し方向へ回動する。
【0033】
図示しないばねの付勢力に抗してシートバック3を後倒し方向へ向かって回動させ、希望するシートバック3の角度位置で操作レバー20から手を放すと、ロックスプリング19の付勢力によりカム9が反時計方向へ回動し、ロックカム面9aがロックツース10を押圧する。このため、ロックツース10の外歯ギヤ10dが内歯ギヤ7aと噛合し、再び図3のロック状態に戻る。
【0034】
次に、衝撃吸収を行う部分の作用について説明する。
【0035】
この発明によれば、車両が後方から衝突されたときには、シートクッション2に対してシートバック3を後方へ倒す衝撃力が作用し、クッション側アーム4に対してバック側アーム6が後方へ回動されようとする。このため、シートクッション2側に設けられたクッション側アーム4に対して衝撃吸収プレート22が図4(a)中の時計方向へ回動し、ピン21が衝撃吸収孔22cの内部で円周方向の反時計方向へ角度θ分だけ相対的に移動し、図4(b)に示すように衝撃吸収孔22cの内部へ向って突出する一対の凸部22dをピン21が押し広げ、ピン21が衝撃吸収孔22cを塑性変形させる。この衝撃吸収孔22cが塑性変形することにより、衝撃が吸収される。
【0036】
このシートリクライニング装置によれば、衝撃吸収孔22cの内部へ向って突出する一対の凸部22dをピン21が押し広げて衝撃吸収孔22cを塑性変形させながら移動し、衝撃吸収孔の端部で停止するので、衝撃を確実に吸収できると共に作動範囲の規制が確実に行える。更にピン21と衝撃吸収孔22cとにより衝撃の吸収と回動範囲の規制とを同時に行なうことになり、従来のように衝撃の吸収を行う部分と回動範囲の規制を行う部分とを半径方向に並べて配置した場合に比べ、衝撃吸収プレート22の半径方向の寸法を小さくできる。また、リクライナ1に加えて衝撃吸収プレート22とピン21だけを設ければよいので、従来のように複数のプレートを設ける場合に比べて軸方向の寸法を小さくでき、しかも部品点数が少なくて済む。
【0037】
この発明によれば、衝撃吸収孔22cと該衝撃吸収孔22cに挿入されたピン21とにより衝撃吸収部分と相対的な回動範囲を規制する部分との双方が一体に構成されているので、衝撃吸収部分と相対的な回動範囲を規制する部分とを従来のように半径方向の内側と外側とに分けて設ける必要がなく、従って、衝撃吸収プレート22の外径寸法を小さくしてリクライナ1の外径寸法と略同一に設定することが可能である。
【0038】
このシートリクライニング装置によれば、衝撃吸収プレート22の外径寸法をリクライナ1の外径寸法と略同一に設定できるので、シートリクライニング装置の半径方向の寸法が従来よりも小さくなる。
【0039】
本願のシートリクライニング装置では、トルクが大きくなるとピン21が衝撃吸収孔22cの内部で円周方向へ移動して一対の凸部22dを押し広げて塑性変形させるので、クッション側アーム4に対する衝撃吸収プレート22の相対的な回転と共に衝撃が吸収され乗員に作用する衝撃が低下する。
【0040】
(b)実施の形態2
次に、実施の形態2について説明する。なお、この実施の形態2は実施の形態1の一部を変更したものなので、同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0041】
図1,図2と対応する図面を図6,図7に示すように、シートクッション2側に設けられたクッション側アーム4に結合するためのピン支持プレート23が新たに設けられ、該ピン支持プレート23の一方の面に前記ピン21の先端部が結合されている。即ち、実施の形態1ではクッション側アーム4に形成していた6つの嵌合孔4aと同じ内径寸法の小径孔23aとこれよりも大きな大径孔23bとからなる段付孔23cがピン支持プレート23に6つ形成され、6つの段付孔23cの小径孔23aの部分に、前記ピン21の小径部21cが挿通され、該小径部21cの端部が大径孔23bの内部でピン支持プレート23に溶接固定されている。
【0042】
そして、該ピン支持プレート23の他方の面には円柱形の6つの回り止め突起部23dが突出形成される一方、前記クッション側アーム4には6つの回り止め孔4cが形成され、該回り止め孔4cに前記回り止め突起部23dが嵌合されて溶接されている。ピン支持プレート23の中心孔23eの部分には、衝撃吸収プレート22の中心孔22pに嵌め込んで心出しするための円筒部23fが形成されている。
【0043】
この発明によれば、リクライナ1に結合された衝撃吸収プレート22の衝撃吸収孔22cに挿通されたピン21の先端部がピン支持プレート23の一方の面に結合され、リクライナ1と衝撃吸収プレート22とピン支持プレート23とがユニット化されており、リクライナ1とピン支持プレート23とをクッション側アーム4とバック側アーム6とに結合することにより、シートリクライニング装置がシートに取り付けられる。
【0044】
このシートリクライニング装置によれば、ピン21の先端部がピン支持プレート23に結合されてリクライナ1と衝撃吸収プレート22とピン支持プレート23とがユニット化されているので、シートを組み立てる工程ではユニット化されたシートリクライニング装置を、シートクッション2側に設けられたクッション側アーム4とシートバック3側に設けられたバック側アーム6との間に取り付ければよく、シートリクライニング装置のシートへの取り付けが容易である。
【0045】
(c)実施の形態3
最後に、実施の形態3について説明する。なお、この実施の形態3は実施の形態1〜4の衝撃吸収孔の形状を変更したものなので、異なる部分のみを説明する。
【0046】
図8に示すように、前記衝撃吸収プレート22に形成された衝撃吸収孔22cとしてピン21が挿入される挿入孔22gとピン21の円周方向への移動を可能にするための逃げ孔22hとが円周方向に並べて形成されている。挿入孔22gは、ピン21の外径寸法と略同じ内径寸法の円形に形成されている。一方、逃げ孔22hは、中心孔22pを中心として半径方向に伸びる長孔に形成されている。
【0047】
この発明によれば、ピン21が衝撃吸収孔22cの内部で円周方向へ相対移動する際に、挿入孔22gのピン21が挿入孔22gと逃げ孔22hとの間の孔間部分22iを逃げ孔22hへ向って押し出し、ピン21が衝撃吸収孔22cを塑性変形させる。
【0048】
このシートリクライニング装置によれば、挿入孔22gと逃げ孔22hとの間の孔間部分22iを挿入孔22gのピン21が逃げ孔22hへ向って押し出しながら孔間部分22iを塑性変形させるので、通常の使用ではピン21が逃げ孔側へ移動することがなく、大きな衝撃が作用した場合には衝撃吸収と作動範囲の規制を行うことができる。
【0049】
その他の構成作用は実施の形態1または2と同じなので、説明を省略する。
【0050】
なお、これらの実施の形態ではバック側アーム6にリクライナ1の蓋体7の部分を結合し、クッション側アーム4にはピン21の先端部を結合し、リクライナ1の機枠5の部分には衝撃吸収プレート22を結合したが、クッション側アーム4にリクライナ1の蓋体7の部分を結合し、バック側アーム6にはピン21の先端部を結合してもよい。また、バック側アーム6やクッション側アーム4にリクライナ1の蓋体7の部分を結合したが、リクライナ1の機枠5の部分を結合し、蓋体7の部分に衝撃吸収プレート22を結合してもよい。更に、ピン21の小径部21cとクッション側アーム4またはピン支持プレート23との結合は、溶接によって行っているが、小径部21cをカシメて結合してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…リクライナ
2…シートクッション
3…シートバック
4…クッション側アーム
5…機枠(ベース部材)
6…バック側アーム
7…蓋体(回動部材)
10…ロックツース(ロック手段)
21…ピン
21a…大径部
22…衝撃吸収プレート
22c…衝撃吸収孔
22d…凸部
22g…挿入孔
22h…逃げ孔
23…ピン支持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、該ベース部材に対して相対回動自在な回動部材と、前記ベース部材に対して前記回動部材が回動するのをロックあるいはロック解除するロック手段とを設けてリクライナを構成し、
シートクッション側に設けられたクッション側アームとシートバック側に設けられたバック側アームとのいずれか一方に前記ベース部材と前記回動部材とのいずれか一方を結合し、前記ベース部材と前記回動部材との他方に衝撃吸収プレートを介して前記クッション側アームと前記バック側アームとの他方を結合したシートリクライニング装置において、
該衝撃吸収プレートには円周方向に沿って略等間隔に複数の衝撃吸収孔を設け、該衝撃吸収孔の夫々には、前記衝撃吸収孔の内部で円周方向に沿って移動することにより衝撃を吸収するピンを挿通し、該ピンには該ピンが反リクライナ側へ抜けるのを規制する大径部を形成し、該ピンの先端部は前記クッション側アームと前記バック側アームとの他方に結合し、
前記シートバックに衝撃が作用すると、前記ピンが前記衝撃吸収孔を塑性変形させながら移動することにより衝撃が吸収されることを特徴とするシートリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートリクライニング装置において、
前記衝撃吸収孔は円周方向に沿って形成し、前記衝撃吸収孔には前記衝撃吸収プレートの半径方向の外周側および中心側から前記衝撃吸収孔の内部へ向って突出する凸部を形成したことを特徴とするシートリクライニング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシートリクライニング装置において、
前記衝撃吸収孔としてピンが挿入される挿入孔とピンの円周方向への移動を可能にするための逃げ孔とを円周方向に並べて形成したことを特徴とするシートリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224211(P2012−224211A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93650(P2011−93650)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【Fターム(参考)】