説明

シート体洗浄装置

【課題】本発明は、噴射される洗浄液の運動エネルギーをシート体の洗浄作用に効率よく寄与させることができるシート体洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】布帛洗浄装置1は、布帛Fを洗浄するための洗浄部11、12及び13を備えている。洗浄部11は、支持ロール11aの周面に布帛Fを隙間なく密着した状態で支持するようにガイドロール11b及び11c並びにテンションローラ11d及び11eが設けられている。支持ロール11aの下方には、複数の噴射ノズルを備える噴射部21が配設されており、ウォーターカーテン状に洗浄液が噴射されて支持ロール11aの支持表面に当てられるようになっている。布帛Fが支持表面に密着した状態で洗浄液が噴射されるので、布帛Fが振動することがなく効率よく洗浄処理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛、カーペット等のシート体を搬送しながら洗浄するシート体洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
布帛等のシート体を製造する場合に、様々な処理工程において付与された薬剤等、又は処理工程中に発生した毛羽等を最終工程において洗浄する必要がある。例えば、精練や染色工程で使用される、薬剤、糊剤、染色助剤、未固着染料及び顔料の洗浄や繊維くず、毛羽等の汚れの洗浄が行われる。
【0003】
こうした布帛の洗浄装置としては、洗浄液を貯留する浸漬槽中において布帛を洗浄する洗浄装置が用いられている。こうした洗浄装置では、布帛から未固着染料、糊剤、助剤等が洗浄液中に排出されて溶解又は分散した状態となる。連続加工においては、この洗浄液から生地への再汚染が発生しやすい。また、汚染防止、洗浄効果促進の目的で洗浄薬剤併用、洗浄液の昇温といった処理が必要となり、繊維の種類によっては、薬剤や槽温度を変更しなければならない。洗浄薬剤としては、各種活性剤、pH調整剤、還元剤などの添加、さらにその中和、すすぎ工程が必要で複数の洗浄槽が必要となり、装置の大型化、複雑化が避けられない。
【0004】
こうした洗浄処理の外に、布帛に洗浄液を噴射して洗浄する洗浄装置が提案されている。例えば、特許文献1では、孔あきドラムに布帛をガイド移送させながらシャワーボックスからオーバーフローさせた洗浄水により布帛を洗浄するようにした点が記載されている。また、特許文献2では、多孔コンベヤにより拡布状の布帛を搬送しながら上下2列に配置された多数個の噴射管から洗浄液を噴射して布帛を洗浄するようにした点が記載されている。また、特許文献3では、走行する布帛の片側に洗浄液噴射器を設け、反対側に洗浄液の吸引装置を設け、洗浄液を布帛の厚さ方向に貫通させて脱液するようにした点が記載されている。また、特許文献4では、処理槽内に導入された布帛に対して複数の噴射ノズルからジェットシャワーを与えるようにした点が記載されている。
【特許文献1】特開平4−24270号公報
【特許文献2】特開平7−3612号公報
【特許文献3】特開2002−59103号公報
【特許文献4】特開2003−155654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した先行文献では、布帛全体に噴射により洗浄液を付与することができるが、布帛が弛んだ状態で洗浄液を噴射すると、噴射された洗浄液が当たる部分と当たらない部分が生じるためきれいに洗浄することが困難となる。
【0006】
また、弛んでいない状態の布帛に対しても、洗浄液が当たる部分と当たらない部分が生じるとその境界部分に皺が発生し、皺の部分では局所的に布帛が弛んだ状態となって洗浄効果が低下する。
【0007】
特許文献1のように、布帛を孔あきドラムで支持しながら洗浄する場合には、透孔部分の布帛が噴射作用により振動しやすくなり、布帛に噴射される洗浄液の運動エネルギーが振動により減殺されて十分な洗浄効果が得られなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、噴射される洗浄液の運動エネルギーをシート体の洗浄作用に効率よく寄与させることができるシート体洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシート体洗浄装置は、シート体を搬送しながら洗浄するシート体洗浄装置において、搬送されるシート体を支持表面において支持する支持部と、前記支持部に対してウォーターカーテン状に洗浄液を噴射する噴射部とを備え、前記洗浄液の噴射圧力が作用する前記支持表面の洗浄領域がシート体の全幅にわたって形成されるとともに少なくとも当該洗浄領域においてシート体の一方の面側全体が前記支持表面に密着した状態で支持されていることを特徴とする。さらに、前記支持部は、前記シート体を周面に密着して支持する支持ロールを備えていることを特徴とする。さらに、前記支持ロールは、前記シート体の搬送速度と同じ周速度で回転駆動されていることを特徴とする。さらに、前記噴射部は、前記洗浄領域に沿って配列された複数の噴射ノズルを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のような構成を有することで、洗浄領域においてシート体の一方の面側全体が支持表面に密着した状態でウォーターカーテン状に洗浄液を噴射して洗浄を行うので、噴射される洗浄液の運動エネルギーをシート体の洗浄作用に寄与させることができる。
【0011】
すなわち、シート体の一方の面側全体が支持表面に密着した状態となっているので、シート体と支持表面との間に空隙が生じることがなく、洗浄液の噴射作用によるシート体の振動が抑えられて洗浄液の運動エネルギーが洗浄作用に寄与するようになる。一般に、噴射による洗浄の場合洗浄液がシート体に対して激しく流動した方が薬剤等の汚れが洗浄されやすく、そのためには洗浄液に対してシート体が動かない方が好ましい。本願発明では、シート体を支持表面に密着した状態でできるだけ動かないように設定することで、洗浄液の洗浄効果を高めることが可能となる。
【0012】
また、支持表面の洗浄領域をシート体の全幅にわたって形成してウォーターカーテン状に洗浄液を噴射するので、シート体の全幅にわたって均一に洗浄液が当たるようになり、噴射による皺の発生を防止することができる。そのため、皺の発生による洗浄効果の低下を抑止することが可能となる。
【0013】
そして、支持部として、シート体を周面に密着して支持する支持ロールを用いることで、シート体を支持ロールで搬送しながら連続して洗浄でき、効率よく洗浄処理を行うことが可能となる。また、支持ロールをシート体の搬送速度と同じ周速度で回転駆動すれば、シート体を弛ませることなく搬送することができ、シート体を支持ロールの支持表面に確実に密着した状態で洗浄することが可能となる。
【0014】
また、噴射部として、洗浄領域に沿って配列された複数の噴射ノズルを用いることで、高圧で洗浄液を噴射させながらウォーターカーテン状に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。シート体である布帛を洗浄する布帛洗浄装置1は、搬入された布帛Fを搬送する搬入部10、3つの洗浄部11〜13、及び、搬出部14を備えている。搬入される布帛Fは、拡布ロール30により幅方向に拡げられて、搬送ローラ群31により布帛洗浄装置1に搬入される。また、布帛洗浄装置1から搬出された布帛Fは、搬送ローラ群40により次の工程に搬送される。
【0017】
搬入部10は、駆動ロール10aにより布帛Fを所定の搬送速度で搬送して洗浄部11に搬入させる。
【0018】
図2は、洗浄部11に関する概略構成図である。洗浄部11は、支持ロール11a並びにガイドロール11b及び11cを備えており、布帛Fはガイドロール11bにより下方の支持ロール11aに向かって案内される。そして、布帛Fは、支持ロール11aの周面に巻き付いた後上方のガイドロール11cに向かって案内され、ガイドロール11cにより次の洗浄部12に案内される。
【0019】
支持ロール11a及びガイドロール11bの間にはテンションローラ11dが配設され、支持ロール11a及びガイドロール11cの間にはテンションローラ11eが配設されており、テンションローラ11d及び11eにより布帛Fに張力が付与されるとともに布帛Fを所定長さだけ支持ロール11aの周面に巻き付け安定した状態で搬送することができる。そして、布帛Fは、その一方の面側が支持ロール11aの支持表面である周面に隙間なく密着した状態で支持されるようになる。
【0020】
また、支持ロール11aは、布帛Fの搬送速度と同じ周速度で回転駆動されるようになっており、布帛Fは支持ロール11aの周面に隙間なく密着した状態で連続搬送を安定して行うことができる。
【0021】
支持ロール11aは、周面が硬質で平滑な表面であることが好ましく、例えば、金属製で表面が滑面加工に仕上げたものが挙げられる。そして、支持ロール11aの周面には、凹凸や孔等は形成されておらず、布帛Fと密着した状態では空隙が形成されないように設定されている。
【0022】
洗浄部11は、支持ロール11aの下方に噴射部21を備えており、噴射部21は、本体部21bの上面に上方に向かって洗浄液を噴射する複数の噴射ノズル21aを備えている。図3は、噴射部21を支持ロール11aの軸方向と直交する方向からみた概略図であり、図4は、支持ロール11a及び噴射部21に関する一部拡大斜視図である。
【0023】
本体部21bの内部には、図示しない供給管路が全長にわたって配設されており、供給管路に接続された複数の分岐管路に各噴射ノズル21aが取り付けられている。そして、図示しない洗浄液供給装置に供給管路が接続されて供給管路に洗浄液が圧送されてくると、各噴射ノズル21aから一斉に洗浄液が噴射されるようになる。
【0024】
複数の噴射ノズル21aは、支持ロール11aの軸方向に沿って全長にわたって等間隔で配列されている。噴射ノズル21aから噴射される洗浄液は、図2及び図3の点線で示すように、支持ロール11aの軸方向には扇状に拡がるように所定の噴射角で噴射され、軸方向と直交する方向にはノズル径よりわずかに拡がる程度の所定幅でフラットに噴射されるようになっている。
【0025】
そのため、噴射ノズル21aから噴射された洗浄液が支持ロール11aの表面に当たる噴射領域は、支持ロール11aの軸方向に沿って所定長さの細長い短冊状に形成される。そして、隣接する噴射ノズル21aの噴射領域は、支持ロール11aの軸方向の両端部が重複するように設定されているので、すべての噴射ノズル21aの噴射領域全体かなる洗浄領域Rは、支持ロール11aの軸方向に沿って全幅にわたるとともに周方向に所定幅の帯状に設定される。こうして設定された洗浄領域Rでは、布帛Fの一方の面側全体が支持ロール11aの支持表面に密着した状態となっている。
【0026】
各噴射ノズル21aから噴射される噴流の形態は、上述したように扇状でフラットに形成され、隣接する噴射ノズルの噴流と両端部が重なり合うようになっているので、全噴射ノズルの噴流Wは、支持ロール11aの軸方向に沿ったウォーターカーテン状に形成される。噴流が重なり合った部分では互いの噴流が交差するものの支持ロール11aに向かって噴射されるため互いに大きく減殺されることはなく、支持ロール11aの表面に加わる噴射圧力は洗浄領域R全体でほぼ均一になる。
【0027】
こうしたウォーターカーテン状の噴流Wを形成するためには、例えば、各噴射ノズル21aの噴射角を20度〜40度、配列間隔を40mm〜60mmに設定し、支持ロール11aまでの間隔を80mm〜150mmに設定するとよい。
【0028】
噴射ノズル21aからの噴射圧力は、洗浄するシート体の種類、汚れの程度に応じて設定すればよく、例えば、0.5MPa〜7.0MPaの範囲に設定するのが好ましい。また、支持表面における噴射方向の角度は、85度〜95度に設定するとよい。
【0029】
このように支持表面に対してほぼ直交する方向にウォーターカーテン状の噴流Wを噴射部から噴射することで、支持表面に密着した状態で支持されている布帛Fに対して全幅にわたってほぼ均一に噴射圧力が加わり、布帛Fに皺が生じることがない。また、布帛Fと支持表面との間に隙間が形成されることがないため、噴射圧力により布帛が振動することがなく、噴射された洗浄液の運動エネルギーが布帛の振動等により減殺されずに洗浄作用に寄与するようになる。また、布帛Fの洗浄処理に使用された洗浄液は、そのまま下方に落下していくため、洗浄された汚れ等が布帛F内に残留することがほとんどなく、汚れ等を確実に洗い落とすことができる。そのため、支持表面の洗浄領域Rでは、布帛Fの洗浄処理を効率よく行うことができ、連続搬送される布帛Fが通過する際に短時間で有効な洗浄処理を行うことが可能となる。
【0030】
本実施形態では、洗浄部11において洗浄された布帛Fは、洗浄部12及び13において同様の洗浄処理が行われるようになっている。洗浄部12は、支持ロール12a、ガイドロール12b及び12c、テンションローラ12d及び12e、並びに噴射部22を備えており、洗浄部13は、支持ロール13a、ガイドロール13b及び13c、テンションローラ13d及び13e、並びに噴射部23を備えており、いずれも洗浄部11と同様にウォーターカーテン状の噴流により支持ロールに密着した布帛Fを洗浄する。
【0031】
こうして洗浄処理を3回繰り返して行うことで、汚れ等を完全に洗い落とすことができる。設置する洗浄部の数は、洗浄するシート体の汚れ等の程度により設定すればよい。上述したように、洗浄部は簡単な構造でコンパクトに構成されているため、簡単に増設することができる。
【0032】
以上説明した例では、シート体の支持部に支持ロールを用いているが、カーペット等の柔軟性の低いシート体の場合にはベットタイプの支持部材を用いてシート体の裏側に密着させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るシート体洗浄装置は、布帛、フィルム、皮革、カーペットといった柔軟性があって洗浄液の噴射により振動しやすいシート体に対する洗浄装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】洗浄部に関する概略構成図である。
【図3】噴射部を支持ロールの軸方向と直交する方向からみた概略図である。
【図4】支持ロール及び噴射部に関する一部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 布帛洗浄装置
11 洗浄部
11a 支持ロール
21 噴射部
21a 噴射ノズル
12 洗浄部
12a 支持ロール
22 噴射部
22a 噴射ノズル
13 洗浄部
13a 支持ロール
23 噴射部
23a 噴射ノズル
F 布帛
R 洗浄領域
W 噴流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体を搬送しながら洗浄するシート体洗浄装置において、搬送されるシート体を支持表面において支持する支持部と、前記支持部に対してウォーターカーテン状に洗浄液を噴射する噴射部とを備え、前記洗浄液の噴射圧力が作用する前記支持表面の洗浄領域がシート体の全幅にわたって形成されるとともに少なくとも当該洗浄領域においてシート体の一方の面側全体が前記支持表面に密着した状態で支持されていることを特徴とするシート体洗浄装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記シート体を周面に密着して支持する支持ロールを備えていることを特徴とする請求項1に記載の布帛洗浄装置。
【請求項3】
前記支持ロールは、前記シート体の搬送速度と同じ周速度で回転駆動されていることを特徴とする請求項2に記載の布帛洗浄装置。
【請求項4】
前記噴射部は、前記洗浄領域に沿って配列された複数の噴射ノズルを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の布帛洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−240989(P2009−240989A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92734(P2008−92734)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】