説明

シート及び半導体ウエハ加工用粘着テープ

【課題】帯電防止性に優れ、ダイシング時の切り屑の発生が少ないポリオレフィン系半導体ウエハ加工用粘着テープを提供する。
【解決手段】半導体ウエハ加工用粘着テープの基材として用いるシートであって、高分子型帯電防止剤5〜30重量%、ポリオレフィン系樹脂30〜85重量%、ゴム状弾性体10〜40重量%含まれる事を特徴とするシート及び該シートを基材として用い、該シートの片面に粘着層を施したポリオレフィン系半導体ウエハ加工用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート及び半導体ウエハ加工用粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する工程において、半導体ウエハやパッケージ等を切断する際に半導体ウエハ加工用の粘着テープが用いられている。この粘着テープは、半導体ウエハやパッケージ等に貼り付け、ダイシング、エキスパンティング等を行い、半導体ウエハやパッケージ等を切断して得られた半導体素子をピックアップするために用いられる。
【0003】
このような粘着テープは、基材シートと、基材シートの片面に設けられた粘着層とで構成されている。
基材シートとしては、主にポリ塩化ビニル(PVC)樹脂シートが用いられていた。しかし、PVC樹脂の使用に対する環境問題、PVC樹脂に用いる可塑剤等の添加剤のブリードによる半導体素子の汚染の可能性等を理由として、最近はポリプロピレン系シート、エチレンビニルアルコール系シートやエチレンメタクリル酸アクリレート系のシート等のポリオレフィン系材料を用いた基材シートが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
近年、半導体素子の小型化・薄型化が進みこれまでは問題になっていなかった、静電気によるデバイス破壊の問題が顕在化してきている。また、特にエチレンビニルアルコール系シートやエチレンメタクリル酸アクリレート系のシートで切り屑(基材シートのカットラインから伸びたヒゲ状の切り残査)のデバイスへの付着が問題になっている。そのため、半導体ウエハ加工用粘着テープにおいて、帯電防止性能が優れ切り屑の発生が少ないポリオレフィン系シートへの要求が高まっている。
【0005】
【特許文献1】特開平09−008111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、帯電防止性に優れ、ダイシング時の切り屑の発生が少ない、ポリオレフィン系シート及びそれを基材シートとして用いたポリオレフィン系半導体ウエハ加工用粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)半導体ウエハ加工用粘着テープの基材として用いるシートであって、高分子型帯電防止剤が5〜30重量%、ポリオレフィン系樹脂が30〜85重量%、ゴム状弾性体が10〜40重量%、含まれる事を特徴とするシート、
(2)前記高分子型帯電防止剤がイオン伝導型帯電防止剤である(1)項に記載のシート、
(3)前記高分子型帯電防止剤がポリエーテルポリオレフィン共重合体を主成分とするものである(1)項又は(2)項に記載のシート、
(4)ポリオレフィン系樹脂がホモポリプロピレン樹脂である(1)項〜(3)項のいずれかに記載のシート、
(5)23℃−50%RHの環境下でシートのMD方向に5000Vに強制帯電させ、その後、帯電圧が0Vまで減衰する時間が、0.5秒以下である(1)項〜(4)項のいずれかに記載のシート、
(6)(1)項〜(5)項のいずれかに記載のシートの片面に粘着層を施した半導体ウエハ加工用粘着テープ、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、得られたポリオレフィン系シートを基材として用いることにより、帯電防止性に優れ、ダイシング時の切り屑の発生が少ない、半導体ウエハ加工用粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、半導体ウエハ加工用粘着テープの基材として用いるポリオレフィン系シートであって、高分子型帯電防止剤が5〜30重量%、ポリオレフィン系樹脂が30〜85重量%、ゴム状弾性体が10〜40重量%、含まれる事を特徴とするシートである。
【0010】
シート基材に煉り込むことで、シート基材の表面に水酸基等の極性基を付与し、空気中の水分と結合する事により帯電防止性を有する一般的な低分子型帯電防止剤は、低湿度下での性能の低下や、帯電防止成分のブリードアウト、水洗等による帯電防止性の低下の問題があるため、高分子型帯電防止剤が好ましく使うことができる。
高分子型帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミドやポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマー等がある。
その中でも、ポリエーテルポリオレフィン共重合体を用いたイオン伝導型帯電防止剤が特に好ましく使う事ができる。
ポリエーテルポリオレフィン共重合体を用いたイオン伝導型帯電防止剤とは、ポリエーテル部及びイオン部による導電機構を有し帯電防止性があり、ポリエーテル部と共重合したオレフィン部により、他のポリオレフィン系樹脂との混練性が優れている。
【0011】
高分子型帯電防止剤の配合量は5〜30重量%であり、好ましくは10〜20重量%である。高分子型帯電防止剤の配合量が下限値未満になると基材シートの十分な帯電防止性能が得られず、上限値を超えると基材シートの切り屑の増加や、基材シートのシーティング性の低下を引き起こす。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に機械的強度の観点からポリプロピレン系樹脂が好ましい。更に、ポリプロピレン系樹脂の中でも粘着テープダイシング時の切り屑の発生が少ないのは、ホモポリプロピレン樹脂である。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂の配合量は30〜85重量%、好ましくは40〜60重量%である。ポリオレフィン系樹脂の配合量が下限値未満になると十分な機械的強度が得られず、上限値を超えるとエキスパンド性の悪化を引き起こす。
【0014】
ゴム状弾性体とは、室温において弾性を示す天然および合成の重合体樹脂である。半導体ウエハ加工用粘着テープの基材として用いるシート中のゴム状弾性体は、特に規定しないが、ブタジエンやイソプレンを主成分とした、スチレンブタジエン共重合体樹脂やスチレンイソプレン共重合体樹脂等の熱可塑性エラストマーが好ましい。また、耐熱性や耐候性を向上させるために、二重結合部を水素添加したものを用いても良い。ゴム状弾性体中のゴム成分は多いほど復元性に優れるため良いが、ゴム状弾性体がブロッキングして扱いにくい等の問題が起こるため、ゴム状弾性体中のゴム成分の含有率は50〜95重量%のものが好ましい。また、ブロッキング防止剤を添加したゴム状弾性体を用いても良い。
【0015】
ゴム状弾性体の配合量は10〜40重量%であり、好ましくは20〜30重量%である。配合量が下限値未満になると基材シートのエキスパンド性が低下する。また、上限値を超えると基材シートの切り屑が増加すると共に、基材シートのシーティング性も悪化する。
【0016】
23℃−50%RHの環境下でシートのMD方向に5000Vに強制帯電させ、その後、帯電圧0Vまで減衰する時間が、0.5秒以下、好ましくは0.1秒以下、更に好ましくは0.05秒以下である。減衰時間が0.5秒を超えると帯電防止性が悪くなり、発生した静電気によるデバイスの破壊、ゴミの付着等の恐れがある。
【0017】
本シートには、特性を損なわない範囲で、目的に合わせて、各種樹脂や添加剤等を添加することができる。
【0018】
本発明のシートを基材層とした半導体ウエハ加工用粘着テープを用いる場合には、基材層の片面に粘着層を付与する必要がある。粘着層についてここでは特に規定しないが、目的に合わせて粘着力等の特性を選ぶ事ができる。
【0019】
切り屑(基材シートのカットラインから伸びたヒゲ状の切り残査)の発生に関しては、帯電防止剤、ゴム状弾性体を添加すると増加し、悪化する傾向にある。しかしながら、ウエハの破壊等を防止するために帯電防止性が必要であり、また、エキスパンド工程や、デバイスをピックアップした後に粘着テープを収納する際の粘着テープの弛みを防止するために、ゴム状弾性体は必須である。そこで、ポリオレフィン系樹脂、その中でもプロピレン系樹脂、更にその中でもホモポリプロピレン樹脂を用いる事により、帯電防止性に優れ、切り屑の発生が少ない、基材シート及びそれを用いた半導体ウエハ加工用粘着テープを提供することができる。なお、問題となる切り屑(基材シートのカットラインから伸びたヒゲ状の切り残査)が発生するのは基材シートからであり、粘着剤からは発生しない。
【0020】
ダイシングテープとして用いる場合の基材シート厚みとしては、30〜300μ、好ましくは50〜200μ、更に好ましくは70〜150μである。また粘着層の厚みとしては、3〜50μ、好ましくは、5〜30μ、更に好ましくは5〜20μである。
【実施例】
【0021】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれにより限定されるものではない。
<基材シートの作製>
下記に示す原料を表1に示す配合比で用い、厚み100μのシートを得た。
・高分子型帯電防止剤
高分子型帯電防止剤1 ペレスタット230(三洋化成工業(株)製)
高分子型帯電防止剤2 サンコノールTBX−310(三光化学工業(株)製)
・ポリオレフィン系樹脂
ホモポリプロピレン1 ノーブレンFS2016(住友化学(株)製)
(MFR:2.1g/10min 引張弾性率:1300MPa)
ホモポリプロピレン2 ノバテックEA7A(日本ポリプロ(株)製)
(MFR:1.4g/10min 引張弾性率:1500MPa)
ホモポリプロピレン3 ノバテックSA4L(日本ポリプロ(株)製)
(MFR:5.3g/10min 引張弾性率:2050MPa)
ランダムポリプロピレン プライムポリプロF327(プライムポリマー(株)製)
(MFR:7.0g/10min 引張弾性率: 850MPa)
ブロックポリプロピレン サンアロマーPB270A(サンアロマー(株)製)
(MFR:0.7g/10min 引張弾性率: 950MPa)
低密度ポリエチレン スミカセンF238−1(住友化学(株)製)
(MFR:2.0g/10min 引張弾性率: 200MPa)
線状低密度ポリエチレン スミカセンEFV202(住友化学(株)製)
(MFR:1.9g/10min 引張弾性率: 310MPa)
・ゴム状弾性体
スチレンイソプレン共重合体 ハイブラー7125((株)クラレ製)
スチレンブタジエン共重合体 タフプレン125(旭化成ケミカルズ(株)製)
スチレンエチレンプロピレン共重合体 セプトン2007(((株)クラレ製)
オレフィン系熱可塑性エラストマー ゼラス7053(三菱化学(株)製)
【0022】
<粘着層の作製>
2−エチルヘキシルアクリレート30重量%、酢酸ビニル70重量%および2−ヒドロキシエチルメタクリレート1重量%をトルエン溶媒中にて溶液重合させ重量平均分子量150,000のベース樹脂を得た。
このベース樹脂100重量部に対して、エネルギー線硬化型樹脂として2官能ウレタンアクリレート100重量部(三菱レイヨン社製、重量平均分子量が11,000)と、架橋剤としてトリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体(コロネートL、日本ポリウレタン社製)15重量部と、エネルギー線重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン5重量部とを酢酸エチルに溶解した後、剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ38μm)に乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、80℃で5分間乾燥して、粘着層を得た。
【0023】
<粘着テープの作製>
上述の粘着層を30℃でラミネートロールを用いて、表1の配合比で得られた厚み100μのシートにラミネートして半導体ウエハ加工用粘着テープを得た。
【0024】
得られた粘着テープを以下の項目で評価を実施した。
<1>切り屑
ダイシング条件
ダイシングブレード:NBC−ZH2050−SE 27HEDD(株式会社ディスコ製)、
ブレード回転数:40000rpm
カット速度:100mm/sec
ブレードハイト:60μ
ブレードクーラー:2L/min
シリコンミラーウエハを貼り付けた(ミラー面貼付け)半導体ウエハ加工用粘着テープを、ウエハ貼付け後20分間放置し、上記ダイシング条件で5mm□にダイシングを実施した。ダイシング後のテープをUV照射し、ウエハを剥離後、カットラインを顕微鏡で観察した。任意の隣接する10チップ(5×2)のダイシングラインの各辺の切り屑を観察した。切り屑の最大長さが15μ以下のものは◎、15μ〜30μのものは○、30〜50μのものは△、50μより長いものは×とした。そして、50μ以下の切り屑の長さのものを合格とした。
【0025】
<2>減衰時間
STATIC DECAY METER MODEL 406C(electro−tech systems,inc.製)を用いて、23℃−50%RHの環境下で帯電減衰時間の測定を行った。粘着テープのMD方向に電圧がかかるように機械にセットし、5000Vに強制帯電させ、その後、帯電圧が0Vまで減衰する時間を測定し、0.05秒以下であるものは◎、0.05秒〜0.1秒であるものは○、0.1秒〜0.5秒であるものは△、0.5秒より長いものは×とした。そして、減衰時間が0.5秒以下のものを合格とした。
【0026】
<3>エキスパンド性
半導体ウエハ加工用粘着テープを6インチリングに貼付け、エキスパンダーMODEL HS−1010/190(ヒューグルエレクトロニクス株式会社製)で20mmエキスパンドした時にテープの破れが無いものを○、テープが破れるものを×とした。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のポリオレフィン系シートを基材として用いることにより、帯電防止性に優れ、切り屑の発生が少ないポリオレフィン系半導体ウエハ加工用粘着テープを提供する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ加工用粘着テープの基材として用いるシートであって、高分子型帯電防止剤が5〜30重量%、ポリオレフィン系樹脂が30〜85重量%、ゴム状弾性体が10〜40重量%、含まれる事を特徴とするシート。
【請求項2】
前記高分子型帯電防止剤がイオン伝導型帯電防止剤である請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記高分子型帯電防止剤がポリエーテルポリオレフィン共重合体を主成分とするものである請求項1又は2に記載のシート。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂がホモポリプロピレン樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のシート。
【請求項5】
23℃−50%RHの環境下でシートのMD方向に5000Vに強制帯電させ、その後、帯電圧が0Vまで減衰する時間が、0.5秒以下である請求項1〜4のいずれかに記載のシート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のシートの片面に粘着層を施した半導体ウエハ加工用粘着テープ。

【公開番号】特開2008−244377(P2008−244377A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86303(P2007−86303)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】