説明

シート搬送装置、画像形成装置、駆動制御プログラム及びシート搬送モータ制御システム

【課題】各回転体の回転を適切に制御し、3つ以上の互いに干渉し合う回転体の干渉を低減させることが可能とする。
【解決手段】第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置であって、前記第1の回転体を回転させる第1のモータの駆動を制御する第1制御要素を検出する第1検出手段と、前記第2の回転体を回転させる第2のモータの駆動を制御する第2制御要素を検出する第2検出手段と、前記第3の回転体を回転させる第3のモータの回転速度を制御するモータ制御手段と、前記第1制御要素と前記第2制御要素との和に基づき前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度の変更を指示する速度制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置、画像形成装置、駆動制御プログラム及びシート搬送モータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、互いに干渉しあうローラを別々の駆動源で回転させる構成において、2つのローラの電流等を監視して干渉の影響を低減させる技術が知られている。
【0003】
例えば画像形成装置では、中間転写ベルトと二次転写ローラは互いに接触しており、且つ別々の駆動源で駆動されるため、干渉が生じる。また二次転写ローラと斥力ローラは、別々の駆動源で駆動されるため、シート状媒体を介して干渉し合う。このような画像形成装置では、中間転写ベルトを搬送する中間転写ローラと二次転写ローラの電流や、二次転写ローラと斥力ローラの電流等を監視し、干渉を低減させることで、駆動電流低下等により制御が不安定になることを抑制している。
【0004】
例えば特許文献1には、駆動源の異なる2つの電流を検出し、駆動源の速度を干渉が小さくなるように制御することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、駆動源の異なる2つの回転体の電流等を監視して制御するものであり、異なる駆動源で駆動する回転体が3つあった場合の干渉については考慮されていない。このため、例えばレジストローラ、中間転写ローラ、二次転写ローラと言った別々の駆動源で駆動される3つ以上の回転体を有する画像形成装置では、互いの干渉を低減するための制御はなされていない。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みて成されたものであり、各回転体の回転を適切に制御し、3つ以上の互いに干渉し合う回転体の干渉を低減させることが可能なシート搬送装置、画像形成装置、駆動制御プログラム及びシート搬送モータ制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を達成すべく、以下の如き構成を採用した。
【0008】
本発明は、第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置であって、前記第1の回転体を回転させる第1のモータの駆動を制御する第1制御要素を検出する第1検出手段と、前記第2の回転体を回転させる第2のモータの駆動を制御する第2制御要素を検出する第2検出手段と、前記第3の回転体を回転させる第3のモータの回転速度を制御するモータ制御手段と、前記第1制御要素と前記第2制御要素との和に基づき前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度の変更を指示する速度制御手段と、を有する。
【0009】
また本発明は、上記のシート搬送装置を有する画像形成装置である。
【0010】
また本発明は、第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置において実行される駆動制御プログラムであって、前記シート搬送装置に、前記第1の回転体を回転させる第1のモータの駆動を制御する第1制御要素を検出する第1検出手段による第1検出ステップと、前記第2の回転体を回転させる第2のモータの駆動を制御する第2制御要素を検出する第2検出手段による第2検出ステップと、前記第3の回転体を回転させる第3のモータの回転速度を制御するモータ制御手段によるモータ制御ステップと、前記第1制御要素と前記第2制御要素との和に基づき前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度の変更を指示する速度制御ステップとを実行させる。
【0011】
また本発明は、第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置と、前記シート搬送装置と接続されたコンピュータとを備えるシート搬送モータ制御システムであって、前記シート搬送装置は、前記第1の回転体を回転させる第1のモータの駆動を制御する第1制御要素を検出する第1検出手段と、前記第2の回転体を回転させる第2のモータの駆動を制御する第2制御要素を検出する第2検出手段と、前記第3の回転体を回転させる第3のモータの回転速度を制御するモータ制御手段と、を備え、前記コンピュータは、前記第1制御要素と前記第2制御要素との和に基づき前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度の変更を指示する速度制御手段を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各回転体の回転を適切に制御し、3つ以上の互いに干渉し合う回転体の干渉を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態の画像形成装置の構成の概略を説明する図である。
【図2】第一の実施形態の画像形成装置の中間転写ベルトを駆動するための周辺の構成を説明する図である。
【図3】第一の実施形態のモータ制御部を説明する図である。
【図4】第一の実施形態における駆動電流の和とレジストモータの回転速度との関係を示す図である。
【図5】第一の実施形態のモータ制御部による基準値の算出を説明するフローチャートである。
【図6】第一の実施形態の速度制御部の処理を説明するフローチャートである。
【図7】第二の実施形態のモータ制御部を説明する図である。
【図8】第二の実施形態におけるトルク指令値の和とレジストモータの回転速度との関係を示す図である。
【図9】第二の実施形態のモータ制御部による基準値の算出を説明するフローチャートである。
【図10】第二の実施形態の速度制御部の処理を説明するフローチャートである。
【図11】第三の実施形態における合計駆動電流とレジストモータの回転速度との関係を示す図である。
【図12】第三の実施形態のモータ制御部による基準値の算出を説明するフローチャートである。
【図13】第三の実施形態の速度制御部の処理を説明するフローチャートである。
【図14】第四の実施形態のモータ制御部の処理を説明するフローチャートである。
【図15】第五の実施形態におけるモータ制御部の動作を説明するフローチャートである。
【図16】第六の実施形態のシート搬送モータ制御システムの外観を説明する図である。
【図17】第六の実施形態の画像形成装置及びサーバ装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態では、第1の回転体と第2の回転体を駆動させる制御要素の変動に基づき、第3の回転体を駆動させるモータの速度を制御する。
【0015】
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。図1は、第一の実施形態の画像形成装置の構成の概略を説明する図である。
【0016】
本実施形態の画像形成装置100は、スキャン部21により光源を原稿に照射しながら原稿を走査し、原稿からの反射光を3ラインCCD(Charge Coupled Device)センサにより画像を読み取る。読み取られた画像は、画像処理ユニットによりスキャナγ補正、色変換、画像分離、階調補正処理等の画像処理が施された後、画像書き込みユニット20へ送られる。画像書き込みユニット20では、画像データに応じてLD(Laser Diode)の駆動を変調する。感光体ユニット30では、一様に帯電された回転する感光体ドラム31にLDからのレーザビームにより静電潜像が書き込まれ、現像ユニット40によりトナーが付着されて顕像化される。
【0017】
感光体ドラム上に形成された画像は、中間転写部50の中間転写ユニットの中間転写ベルト51上に転写される。画像形成装置100においてフルカラーコピーが実行された場合、中間転写ベルト51上には4色(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)のトナー像が順次重ねられる。全ての色の作像と転写が終了した時点で、中間転写ベルト51とタイミングを合わせてトレイ60からシート状媒体が供給され、二次転写部70で中間転写ベルト51からシート状媒体へトナー像が二次転写される。トナー像が転写されたシート状媒体は、搬送部80を経て定着部90へ送られ、定着ローラと加圧ローラによりトナー像がシート状媒体に定着された後に排出される。本実施形態のシート状媒体とは、例えば記録紙等である。
【0018】
図2は、第一の実施形態の画像形成装置の中間転写ベルトを駆動するための周辺の構成を説明する図である。本実施形態の画像形成装置100では、図2に示す構成によりシート状媒体を搬送する。すなわち本実施形態の画像形成装置100は、シート搬送装置を含む。
【0019】
中間転写ベルト51は、中間転写ローラ60、斥力ローラ61の回転により回動されてシート状媒体80へトナー像を転写する。
【0020】
中間転写ローラ60は、中間転写モータ64により駆動される。中間転写モータ64と中間転写ローラ60との間にはギヤによる減速機構が設けられており、中間転写モータ64による駆動力は、モータ軸速度をギヤ比の分だけ減速した速度で中間転写ローラ60に伝達される。
【0021】
二次転写ローラ62は二次転写モータ65により駆動される。二次転写ローラ62と二次転写モータ65の間には、減速機構が設けられている。本実施形態では、シート状媒体80がレジストローラ66により、斥力ローラ61と二次転写ローラ62の圧接部81まで搬送され、圧接部81において中間転写ベルト51からトナー像がシート状媒体81に転写される。
【0022】
レジストローラ66は、シート状媒体80の搬送経路において、圧接部81の直前に配置されたローラであり、レジストモータ67により駆動される。レジストローラ66とレジストモータ67の間には、減速機構が設けられている。
【0023】
中間転写ローラ60の軸には、エンコーダ82が設けられており、二次転写ローラ65の軸にはエンコーダ83が設けられている。またレジストローラ66の軸にはエンコーダ84が設けられている。本実施形態の画像形成装置100は、エンコーダ82、83により検出された値と、中間転写ベルト51のベルトスケール検出を行うセンサ85の値等に基づき、中間転写ベルト51の表面速度が一定の目標の速度になるように制御を行う。
【0024】
本実施形態では、中間転写ローラ60を第1の回転体とし、二次転写ローラ62を第2の回転体とし、レジストローラ66を第3の回転体とする。
【0025】
本実施形態の画像形成装置100では、中間転写ローラ60の駆動電流と二次転写ローラ62の駆動電流とに基づき、レジストローラ66を駆動するレジストモータ67の速度を制御する。
【0026】
以下に中間転写ベルト51、二次転写ローラ62、レジストローラ66の干渉について説明する。
【0027】
レジストローラ66は、シート状媒体80の種類や搬送速度によって、中間転写ベルト51と二次転写ローラ62への干渉の度合いが異なる。例えばレジストローラ66の表面速度が目標速度より速ければ、シート状媒体80は圧接部81に押し込まれる。このため中間転写ベルト51と二次転写ローラ62の回転に影響を及ぼす。レジストローラ66の表面速度が目標速度より速くなるときとは、例えばレジストローラ66が熱等により膨張した場合等である。
【0028】
また例えばレジストローラ66の表面速度が目標速度より遅い場合、二次転写ローラ62と中間転写ベルト51は、シート状媒体80を介してレジストローラ66側に引っ張られる。レジストローラ66の表面速度が目標速度より遅くなるときとは、例えばレジストローラ66の表面が低温状態となり縮小した場合等である。
【0029】
本実施形態では、レジストローラ66の膨張や縮小等により、レジストローラ66と中間転写ベルト51及び二次転写ローラ62の干渉状態が変化することによる不具合を防止する。この不具合とは、例えばレジストローラ66を駆動するレジストモータ67、二次転写ローラを駆動する二次転写モータ65、中間転写ローラ60を駆動する中間転写モータ64の何れかのモータ駆動電流が小さくなることによる制御不安定状態もしくはモータ駆動電流が大きくなりすぎる過負荷状態を示す。
【0030】
以下に図3を参照して本実施形態の画像形成装置100の有するモータ制御部200について説明する。図3は、第一の実施形態のモータ制御部を説明する図である。
【0031】
本実施形態の画像形成装置100において、モータ制御部200は、画像形成装置100全体を制御するメイン制御部110と接続されており、中間転写モータ64、二次転写モータ65、レジストモータ67を制御する。メイン制御部110は、画像形成装置100の操作部120から画像データの出力指示等が操作されると、モータ制御部200に対して各モータの駆動指示を行う。具体的にはメイン制御部110は、画像データの出力指示等を受けると、モータ制御部200へ各モータの目標速度を指示する。モータ制御部200は、この指示を受けて各モータの駆動を制御する。
【0032】
本実施形態のモータ制御部200は、レジストモータ67へ駆動電流を供給するFET部210、中間転写モータ64へ駆動電流を供給するFET部220、二次転写モータ65へ駆動電流を供給するFET部230を有する。またモータ制御部200は、モータ制御用CPU(Central Processing Unit)300とメモリ240を有する。
【0033】
本実施形態のモータ制御用CPU300は、レジストモータ制御部310、中間転写モータ制御部320、二次転写モータ制御部330、速度制御部340を有する。
【0034】
レジストモータ制御部310は、制御コントローラ311、PWM生成部312を有する。制御コントローラ311は、エンコーダ84から検出されるレジストモータ67の回転速度に基づき、レジストモータ67の回転速度をメイン制御部110から指示された目標速度とするトルク指令値をPWM生成部312へ供給する。PWM生成部312は、トルク指令値に基づきPWM信号を生成し、FET部210へこのPWM信号を供給する。FET部210は、PWM信号に従ってレジストモータ67へ駆動電流を供給する。
【0035】
またレジストローラ制御部310は、FET部210に接続されたシャント抵抗R1に流れる電流値をA/D313により検出し、メモリ240へ格納する。A/D313により検出される電流値は、レジストモータ67に供給される駆動電流である。
【0036】
中間転写モータ制御部320は、中間転写モータ64を制御する。中間転写モータ制御部320において、制御コントローラ321、PWM生成部322、A/D323は、レジストローラ制御部310と同様の動作を行うため、説明を省略する。
【0037】
二次転写モータ制御部330は、二次転写モータ65を制御する。二次転写モータ制御部330において、制御コントローラ331、PWM生成部332、A/D333は、レジストローラ制御部310と同様の動作を行うため、説明を省略する。
【0038】
このように本実施形態では、3つの回転体をそれぞれ制御する制御部を1つのモータ制御用CPU300に含まれる。
【0039】
次にモータ制御用CPU300の有する速度制御部340について説明する。本実施形態の速度制御部340は、中間転写モータ64の駆動電流(以下、中転駆動電流)と二次転写モータ65の駆動電流(以下、二次転駆動電流)とに基づき、レジストモータ67の回転速度を変更する指示を行う。具体的には本実施形態の速度制御部340は、メモリ240に格納された中転駆動電流と、二次転駆動電流との和が所定範囲外となったとき、制御コントローラ311に対してこの2つの駆動電流の和に基づきレジストモータ67の回転速度を変更する指示を行う。
【0040】
尚本実施形態の速度制御部340による指示は、例えばレジストローラ制御部310、中間転写モータ制御部320、二次転写モータ制御部330において用いられる値の書き換えや、上記各モータ制御部と対応するモータの回転速度の制御に関する実行命令等を含んでも良い。
【0041】
以下に図4を参照して本実施形態における中転駆動電流と二次転駆動電流の和の所定範囲について説明する。
【0042】
図4は、第一の実施形態における駆動電流の和とレジストモータの回転速度との関係を示す図である。
【0043】
図4では、縦軸は中転駆動電流と二次転駆動電流の和(以下、合計駆動電流)を示しており、横軸はレジストモータ67の回転速度を示している。
【0044】
本実施形態では、レジストローラ66の膨張や縮小の無い状態におけるレジストモータ67の回転速度をVとし、合計駆動電流Iaとして説明する。回転速度Vは、レジストモータ67の目標回転速度である。またこのときの中転駆動電流は、中間転写モータ64の回転速度が目標回転速度であるときの駆動電流であり、二次転駆動電流は二次転写モータ65の回転速度が目標回転速度であるときの駆動電流である。
【0045】
レジストモータ67の回転速度Vと合計駆動電流Iaは、シート状媒体81の種類や搬送速度によって干渉度合いは異なってくるが、概ね図4に示す関係となる。
【0046】
例えばレジストローラ66が膨張するとレジストローラ66の表面速度が速くなり、シート状媒体81を介して中間転写ベルト51と二次転写ローラ62を押し込むことになるため、二次転写ローラ62に係る負荷が小さくなる。よって合計駆動電流Iaは小さくなる。このため合計駆動電流Iaとレジストモータ67の回転速度Vとの関係は点P1と点P2を通るような関係となる。
【0047】
またレジストローラ66が縮小するとレジストローラ66の表面速度が遅くなり、シート状媒体81を介して中間転写ベルト51と二次転写ローラ62を引っ張ることになるため、二次転写ローラ62に係る負荷が大きくなる。よって合計駆動電流Iaは大きくなる。このため合計駆動電流Iaとレジストモータ67の回転速度Vとの関係は点Q1と点Q2を通るような関係となる。
【0048】
本実施形態では、レジストモータ67の回転速度Vと、合計駆動電流Iaとの関係に着目し、合計駆動電流Iaの変化に基づきレジストモータ67の回転速度Vを制御する。具体的には本実施形態では、合計駆動電流Iaが第一閾値(A+Am)以上となったとき、又は合計駆動電流Iaが第二閾値(A−An)以下となった場合に、合計駆動電流Iaが(A−An)<A<(A+Am)となるようにレジストモータ67の回転速度Vを制御する。
【0049】
以下に、第一閾値(A+Am)と第二閾値(An−A)について説明する。本実施形態では、値Am,Anは、実験や評価により予め設定された値であり、速度制御部340に保持されている。また値Aは、レジストローラ66の膨張や縮小の無い状態で取得した合計駆動電流Iaの値である。この値Aは、合計駆動電流Iaの変化を検出する際の基準値となる。
【0050】
値Amは、二次転写ローラ62の負荷増大による二次転写モータ65の駆動電流の増加の許容最大値である。本実施形態では、例えばモータ制御部200の評価実験等において、FET部230等の駆動素子に流れる電流を計測しながら、二次転写ローラ62の回転速度を徐々に速くする。そして本実施形態では、FET部230等の駆動素子に流れる電流が駆動素子の定格の8割程度となった時点の合計駆動電流Iaから、基準値Aを引いた値を値Amとする。
【0051】
このように第一閾値(A+Am)を設定すれば、二次転写モータ65の駆動電流の増加による駆動素子の破損を防止できる。
【0052】
値Anは、二次転写ローラ62の負荷減少による二次転写モータ65の駆動電流の減少の許容最大値である。本実施形態では、例えば二次転写モータ65に対するトルク指令値を変化させ、二次転写モータ65に係る負荷を徐々に小さくしながら二次転写モータ65の駆動電流を監視する実験を行う。負荷を小さくしていくと、二次転写モータ65の駆動電流はやがて不感帯へ入り、制御不能状態となる。本実施形態では、二次転写モータ65の駆動電流が不感帯に入る前の合計駆動電流Iaから基準値Aを引いた値の絶対値を値Anとする。尚値Anを設定する際の合計駆動電流Iaを、二次転写モータ65の駆動電流が不感帯に入るときの電流値よりも少し大きい電流値を用いても良い。このように二次転写モータ65の駆動電流が不感帯に入るときの電流値に余裕を持たせた電流値を用いれば、負荷の軽減により制御不能状態になることを防止できる。
【0053】
尚本実施形態では、二次転写モータ65の駆動電流に基づき第一閾値(A+Am),第二閾値(A−An)を設定するものとして説明したが、中間転写モータ64の駆動電流を基準として第一閾値(A+Am),第二閾値(A−An)を設定しても良い。本実施形態において、中間転写モータ64の状態と二次転写モータ65の状態とは相対するものであるから、何れか一方の駆動電流を基準とすれば良い。
【0054】
本実施形態では、速度制御部340は、合計駆動電流Iaが第一閾値(A+Am)より大きくなると、レジストモータ67の回転速度が遅くなったものと判断し、レジストモータ67の回転速度を速くするように制御する。また速度制御部340は、合計駆動電流Iaが第二閾値(A−An)より小さくなると、レジストモータ67の回転速度が速くなったものと判断し、レジストモータ67の回転速度を遅くするように制御コントローラ311に対して回転速度の変更指示を行う。
【0055】
次に図5を参照して本実施形態のモータ制御部200による基準値Aの算出を説明する。図5は、第一の実施形態のモータ制御部による基準値の算出を説明するフローチャートである。
【0056】
本実施形態のモータ制御部200は、メイン制御部110から受けた指示が初期値取得モードであるか否かを判断する(ステップS51)。初期値取得モードとは、画像形成装置100が初期状態であることを示す。初期状態とは、具体的には例えば画像形成装置100の完成直後やメントナンス終了後等である。
【0057】
ステップS51において、初期値取得モードであった場合、モータ制御部200は、レジストモータ制御部310、中間転写モータ制御部320、二次転写モータ制御部330により、レジストモータ67と中間転写モータ64と二次転写モータ65とを起動させる(ステップS52)。次にモータ制御部200は、シート状媒体81が通紙されたことを検知する(ステップS53)。尚本実施形態における通紙とは、図2に示すようにレジストローラ66から二次転写ローラ62までシート状媒体81が搬送された状態である。この通紙は、例えば図示しないセンサ等により検知されても良い。
【0058】
次にモータ制御部200は、中間転写モータ64の駆動電流である中転駆動電流と、二次転写モータ65の駆動電流である二次転駆動電流とを取得し、メモリ240に格納する(ステップS54)。中転駆動電流は、シャント抵抗R2とA/D323により検出され、メモリ240に格納される。二次転駆動電流は、シャント抵抗R3とA/D333により検出されてメモリ240に格納される。
【0059】
続いてモータ制御部200は、速度制御部340において、メモリ240に格納された中転駆動電流と二次転駆動電流との和を算出して基準値Aとし、この基準値Aをメモリ240に格納する(ステップS55)。
【0060】
尚本実施形態では、例えば、シート状媒体81が二次転写ローラ62通過するタイミングを含めた任意の期間で一定間隔毎に第一駆動電流と第二駆動電流とを取得し、その和の平均値を基準値Aとしても良い。例えば10ms毎に第一駆動電流と第二駆動電流の和を1000回取得し、この和の平均値を基準値Aとしても良い。
【0061】
次に図6を参照して本実施形態の速度制御部340の処理を説明する。図6は、第一の実施形態の速度制御部の処理を説明するフローチャートである。
【0062】
図6のステップS61からステップS63までの処理は、図5のステップS52からステップS54までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0063】
ステップS63に続いて速度制御部340は、メモリに格納された基準値Aと値Anとに基づいて第二閾値(A−An)を算出し、中転駆動電流と二次転駆動電流の合計駆動電流Iaが第二閾値(A−An)より大きいか否かを判断する(ステップS64)。ステップS64において、合計駆動電流Iaが第二閾値(A−An)より大きい場合、速度制御部340はステップS65へ進む。
【0064】
速度制御部340は、メモリに格納された基準値Aと値Amとに基づいて第一閾値(A+Am)を算出し、中転駆動電流と二次転駆動電流の合計駆動電流Iaが第一閾値(A+Am)より小さいか否かを判断する(ステップS65)。
【0065】
ステップS65において、合計駆動電流Iaが第一閾値(A+Am)より小さい場合、速度制御部340は処理を終了する。
【0066】
ステップS64において、合計駆動電流Iaが第二閾値(A−An)以下であるとき、速度制御部340は、レジストモータ67の回転速度Vを遅くするように制御コントローラ311に対して回転速度の変更を指示する。具体的には速度制御部340は、レジストモータ制御部310の制御コントローラ311に対し、レジストモータ67の回転速度Vを遅くするように変更する指示を行う(ステップS66)。
【0067】
本実施形態の制御コントローラ311は、図示しないカウンタを有しており、このカウンタにより、エンコーダ84から出力されるパルス数をカウントしている。本実施形態の速度制御部340は、制御コントローラ311へレジストモータ67の速度を遅くするように変更の指示を行う場合、例えばこのカウンタのカウント値を参照し、制御コントローラ311へカウント値を所定数減らす指示を行っても良い。制御コントローラ311は、このカウント値にしたがったトルク指令値を生成し、PWM生成部312へ出力する。
【0068】
ステップS65において、速度制御部340によりレジストモータ67の回転速度Vを遅くするように変更する指示が終了すると、モータ制御部200はステップS62の処理へ戻る。本実施形態では、ステップS64において合計駆動電流Iaが第二閾値(A−An)以下である場合、ステップS64の条件を満たすまでステップS65の処理を繰り返す。
【0069】
例えばレジストモータ67の回転速度VをYだけ遅くするように変更すると、図4の点P2に示されるように、ステップS64の条件を満たすようになる。
【0070】
またステップS65において、合計駆動電流Iaが第一閾値(A+Am)以上であるとき、速度制御部340は、レジストモータ67の回転速度Vを速くするように回転速度の変更指示を行う(ステップS67)。具体的には速度制御部340は、制御コントローラ311のカウンタのカウント値を参照し、制御コントローラ311へカウント値を所定数増やす指示を行い、レジストモータ67の回転速度Vを速めるように変更する指示を行う。制御コントローラ311は、このカウント値にしたがったトルク指令値を生成し、PWM生成部312へ出力する。
【0071】
ステップS67において、速度制御部340によりレジストモータ67の回転速度Vを速くするように変更する指示が終了すると、モータ制御部200はステップS62の処理へ戻る。本実施形態では、ステップS65において合計駆動電流Iaが第一閾値(A+Am)以上である場合、ステップS65の条件を満たすまでステップS67の処理を繰り返す。
【0072】
例えばレジストモータ67の回転速度VをXだけ速くするよう変更すると、図4の点Q2に示されるように、ステップS65の条件を満たすようになる。
【0073】
尚本実施形態のステップS66及びステップS67において増減させるカウント値は、予め設定されているものである。このカウント値は、通常の通紙や画質に影響を与えない程度の任意の値で良い。
【0074】
また本実施形態の画像形成装置100は、所定ページ数の画像形成処理を行う毎に図6の処理を行っても良い。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態では、中転駆動電流と二次転駆動電流との和である合計駆動電流Iaと、レジストモータ67の回転速度Vに着目し、合計駆動電流Iaの変動に基づきレジストモータ67の回転速度を変更する。本実施形態では、この構成により、合計駆動電流Iaの変動を一定の範囲内に保つことができる。よって本実施形態によれば、中間転写ローラ60、二次転写ローラ62、レジストローラ66の回転を適切に制御し、3つ以上の互いに干渉し合う回転体の干渉を低減させることができる。
【0076】
また本実施形態では、上記3つのローラを制御するレジストモータ制御部310、中間転写モータ制御部320、二次転写モータ制御部330を1つのモータ制御用CPU300内に有する構成とした。本実施形態では、この構成により、2つの回転体の駆動電流に基づく3つ目の回転体の回転速度の制御を即時に行うことができる。3つ以上の互いに干渉し合う回転体の回転を適切に制御し、互いの干渉を低減させることができる。
【0077】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態は、中間転写モータ64と二次転写モータ62の駆動電流の代わりにトルク指令値を用いる点のみ第一の実施形態と相違する。よって以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点のついてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0078】
図7は、第二の実施形態のモータ制御部を説明する図である。
【0079】
本実施形態のモータ制御部200Aは、モータ制御用CPU300Aを有する。モータ制御用CPU300Aは、レジストモータ制御部310A、中間転写モータ制御部320A、二次転写モータ制御部330A、速度制御部340Aを有する。
【0080】
本実施形態のレジスタモータ制御部310Aは、制御コントローラ311、PWM生成部312を有する。本実施形態では、制御コントローラ311からPWM生成部312へ出力されるトルク指令値がメモリ240へ格納される。中間転写モータ制御部320A、二次転写モータ制御部330Aは、同様の構成であるから説明を省略する。
【0081】
本実施形態の速度制御部340Aは、メモリ240に格納されたトルク指令値に基づき、レジストローラ67の回転速度Vを変更する指示を制御コントローラ311に対して行う。
【0082】
図8は、第二の実施形態におけるトルク指令値の和とレジストモータの回転速度との関係を示す図である。
【0083】
図8では、縦軸は中間転写モータ64のトルク指令値と二次転写モータ62のトルク指令値の和を示しており、横軸はレジストモータ67の回転速度を示している。
【0084】
本実施形態では、レジストローラ66の膨張や縮小の無い状態におけるレジストモータ67の回転速度をVとし、中間転写モータ64のトルク指令値と二次転写モータ62のトルク指令値の和(以下、合計トルク指令値)をTaとして説明する。
【0085】
図8における合計トルク指令値Tは、合計駆動電流Iaが基準値Aのときの合計トルク指令値であり、本実施形態おけるレジストモータ67の速度制御の際に用いられる基準値である。また第一閾値(T+Tm)は、合計駆動電流Iaが(A+Am)のときの合計トルク指令値及びであり、第二閾値(T−Tn)は、合計駆動電流Iaが(A−An)のときの合計トルク指令値である。
【0086】
次に図9を参照して本実施形態のモータ制御部200Aによる基準値Tの算出を説明する。図9は、第二の実施形態のモータ制御部による基準値の算出を説明するフローチャートである。
【0087】
図9のステップS91〜ステップS93までの処理は、図5のステップS51〜ステップS53までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0088】
本実施形態のモータ制御部200Aは、ステップS93に続いて、中間転写モータ64のトルク指令値である中転Mトルク指令値と、二次転写モータ65のトルク指令値である二次転Mトルク指令値とを取得し、メモリ240に格納する(ステップS94)。具体的には制御コントローラ321は、出力された中転Mトルク指令値をPWM生成部322に出力すると共に、メモリ240へ格納する。また制御コントローラ331は、出力された二次転Mトルク指令値をPWM生成部332に出力すると共に、メモリ240へ格納する。
【0089】
続いてモータ制御部200Aは、速度制御部340Aにおいて、メモリ240に格納された中転Mトルク指令値と二次転Mトルク指令値との和を算出して基準値Tとし、この基準値Tをメモリ240に格納する(ステップS95)。
【0090】
次に図10を参照して本実施形態の速度制御部340Aの処理を説明する。図10は、第二の実施形態の速度制御部の処理を説明するフローチャートである。図10のステップS101からステップS103までの処理は、図9のステップS92からステップS94までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0091】
ステップS103に続いて速度制御部340Aは、メモリに格納された基準値Tと値Tnとに基づいて第二閾値(T−Tn)を算出し、中転Mトルク指令値と二次転Mトルク指令値の合計トルク指令値Taが第二閾値(T−Tn)より大きいか否かを判断する(ステップS104)。ステップS104において、合計トルク指令値Taが第二閾値(T−Tn)より大きい場合、速度制御部340AはステップS105へ進む。
【0092】
速度制御部340Aは、メモリに格納された基準値Tと値Tmとに基づいて第一閾値(T+Tm)を算出し、中転Mトルク指令値と二次転Mトルク指令値の合計トルク指令値Taが第一閾値(T+Tm)より小さいか否かを判断する(ステップS105)。
【0093】
ステップS105において、合計トルク指令値Taが第一閾(T+Tm)より小さい場合、速度制御部340Aは処理を終了する。
【0094】
ステップS104において、合計トルク指令値Taが第二閾値(T−Tn)以下であるとき、速度制御部340Aは、レジストモータ67の回転速度Vを遅くするように制御コントローラ311に対して回転速度の変更指示を行う。
【0095】
またステップS105において、合計トルク指令値Taが第一閾値(T+Tm)以上であるとき、速度制御部340Aは、制御コントローラ311に対してレジストモータ67の回転速度Vを速くするように変更する指示を行う(ステップS107)。
【0096】
本実施形態では、上記構成により、第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
(第三の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第三の実施形態について説明する。本発明の第三の実施形態は、合計駆動電流からレジストモータ67の駆動電流を引いた電流値を用いてレジストモータ67の回転速度を変更する点が第一の実施形態と相違する。よって以下の第三の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点のついてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0098】
図11は、第三の実施形態における合計駆動電流とレジストモータの回転速度との関係を示す図である。
【0099】
図11では、中転駆動電流と二次転駆動電流の和からレジストモータ67の駆動電流を減算した電流を速度制御用電流Ipとして縦軸に示す。
【0100】
本実施形態では、合計駆動電流Iaからレジストモータ67の駆動電流を減算した電流を速度制御用電流Ipすることで、速度制御用電流Ipとレジストモータ67の回転速度との関係を示すグラフの傾きを大きくすることができる。
【0101】
例えば合計駆動電流Iaの変化がレジストモータ67の回転速度に対してなだらかであった場合、合計駆動電流Iaの細かい変動に対して回転速度を変更するか否かの判断が困難となることが考えられる。
【0102】
そこで本実施形態では、合計駆動電流Iaからレジスタモータ67の駆動電流を減算したもの速度制御用電流Ipを用いることにより、レジストモータ67の回転速度に対する速度制御用電流Ipの傾きを大きくした。本実施形態では、これにより、合計駆動電流Iaの細かい変動に対しても、レジストモータ67の回転速度の変更を行うか否かを判断できる。
【0103】
次に図12を参照して本実施形態のモータ制御部200による基準値Dの算出を説明する。図12は、第三の実施形態のモータ制御部による基準値の算出を説明するフローチャートである。
【0104】
図12のステップS121〜ステップS123までの処理は、図5のステップS51〜ステップS53までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0105】
本実施形態のモータ制御部200は、ステップS123に続いて、中転駆動電流と、二次転駆動電流と、レジストモータ67の駆動電流とを取得し、メモリ240に格納する(ステップS124)。続いてモータ制御部200は、速度制御部340において、メモリ240に格納された中転駆動電流と二次転駆動電流との和を算出し、この和からレジストモータ67の駆動電流を減算して基準値Dとし、この基準値Dをメモリ240に格納する(ステップS125)。
【0106】
次に図13を参照して本実施形態の速度制御部340の処理を説明する。図13は、第三の実施形態の速度制御部の処理を説明するフローチャートである。
【0107】
図13のステップS131からステップS133までの処理は、図12のステップS122からステップS124までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0108】
ステップS133に続いて速度制御部340は、メモリに格納された基準値Dと値Dnとに基づいて第二閾値(D−Dn)を算出し、速度制御用電流Ipが第二閾値(D−Dn)より大きいか否かを判断する(ステップS134)。ステップS134において、速度制御用電流Ipが第二閾値(D−Dn)より大きい場合、速度制御部340はステップS135へ進む。
【0109】
速度制御部340は、メモリに格納された基準値Dと値Dmとに基づいて第一閾値(D+Dm)を算出し、速度制御用電流Ipが第一閾値(D+Dm)より小さいか否かを判断する(ステップS135)。
【0110】
ステップS135において、速度制御用電流Ipが第一閾(D+Dm)より小さい場合、速度制御部340は処理を終了する。
【0111】
ステップS134において、速度制御用電流Ipが第二閾値(D−Dn)以下であるとき、速度制御部340は、レジストモータ67の回転速度Vを遅くするように変更する指示を制御コントローラ311に対して行う(ステップS136)。
【0112】
またステップS135において、速度制御用電流Ipが第一閾値(D+Dm)以上であるとき、速度制御部340は、レジストモータ67の回転速度Vを速くするように変更する指示を制御コントローラ311に対して行う(ステップS137)。
【0113】
以上のように本実施形態では、レジストモータ67の回転速度を変更する度に、中間転写モータ64、二次転写モータ65、レジストモータ67の駆動電流を取得して基準値Dを算出する。よって本実施形態では、より細やかにリアルタイムにレジストモータ67の回転速度の変更することができる。
【0114】
(第四の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第四の実施形態について説明する。本発明の第四の実施形態は、レジストモータ67の回転速度の制御を行う前に、中間転写モータ64と二次転写モータ65の速度制御を行う点が第一の実施形態と相違する。よって以下の第四の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点のついてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0115】
図14は、第四の実施形態のモータ制御部の処理を説明するフローチャートである。本実施形態のモータ制御部200は、中間転写モータ64と二次転写モータ65を起動させる(ステップS1401)。続いてモータ制御部200は、モータ制御用CPU300により、A/D323から中間転写モータ64の中転駆動電流を取得し、A/D333から二次転写モータ64の二次転駆動電流を取得する(ステップS1402)。
【0116】
次に速度制御部340は、メモリに格納された中転駆動電流が、中転駆動電流の下限値Jより小さいか否かを判断する(ステップS1403)。ステップS1403において中転駆動電流が下限値Jより小さい場合、速度制御部340は二次転写モータ制御部330に対して二次転写モータ65の回転速度を遅くするように変更する指示を行う(ステップS1404)。
【0117】
ステップS1403において中転駆動電流が下限値J以上の場合、速度制御部340は、二次転駆動電流が下限値Kよりも小さいか否かを判断する(ステップS1405)。ステップS1405において二次転駆動電流が下限値Kより小さい場合、速度制御部340は二次転写モータ制御部330に対して二次転写モータ65の回転速度を速くするように変更する指示を行う(ステップS1406)。
【0118】
尚本実施形態における中転駆動電流の下限値Jと二次転駆動電流の下限値Kは、予め設定された値である。下限値Jは、例えば二次転写モータ65の速度を速くすることにより中転駆動電流を小さくしていく実験を行った際に、中間転写モータ64が制御不能状態となったときの中転駆動電流の値であっても良い。また下限値Kは、例えば二次転写モータ65の速度を遅くすることにより二次転駆動電流を小さくしていく実験を行った際に、二次転写モータ65が制御不能状態となったときの二次転駆動電流の値であっても良い。
【0119】
ステップS1405において二次転駆動電流が下限値K以上の場合、モータ制御部200はレジストモータ67を起動させる(ステップS1407)。
【0120】
以下のステップS1408からステップS1413までの処理は、図6のステップS62からステップS67までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0121】
以上のように本実施形態では、レジストモータ67を起動する前に、中間転写モータ64と二次転写モータ65の回転速度を変更するため、中転駆動電流と二次転駆動電流それぞれを適切な範囲を維持しつつ、レジストモータ67との関係についても最適化することができる。
【0122】
(第五の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第五の実施形態について説明する。本発明の第五の実施形態は、レジストモータ67の回転速度を変更できない状態となった場合の実施形態である。以下の第五の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点のついてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0123】
図15は、第五の実施形態におけるモータ制御部の動作を説明するフローチャートである。
【0124】
図15のステップS1501からステップS1507までの処理は、図6のステップS61からステップS67までの処理と同様であるから説明を省略する。
【0125】
速度制御部340は、ステップS1506に続いてレジストモータ67の回転速度が下限値となったか否かを判断する(ステップS1508)。ステップS1508において、下限値となっていない場合、速度制御部340はステップS1502へ戻る。ステップS1508において、レジストモータ67の回転速度が下限値となった場合、速度制御部340は、干渉制御不能通知をメイン制御部110へ通知する(ステップS1509)。
【0126】
また速度制御部340は、ステップS1507に続いてレジストモータ67の回転速度が上限値となったか否かを判断する(ステップS1510)。ステップS1510において、上限値となっていない場合、速度制御部340はステップS1502へ戻る。ステップS1510において、レジストモータ67の回転速度が上限値となった場合、速度制御部340は、干渉制御不能通知をメイン制御部110へ通知する(ステップS1511)。
【0127】
メイン制御部110は、干渉制御不能通知を受けると、その旨を操作部120に表示させても良い。
【0128】
本実施形態は、レジストモータ67の回転速度の上限値と下限値を設け、それを超えた場合には操作部120に異常状態であることを表示させる。これにより本実施形態では、レジストローラ67の回転速度の減速による制御不安定状態や回転速度を加速による過電流状態となることを防止できる。
【0129】
尚レジストモータ67の回転速度の上限値と下限値は、例えば第四の実施形態で説明したように中間転写モータ64と二次転写モータ65の回転速度の変更を行った後に、レジストモータ67の回転速度を変動させる実験を行い設定しても良い。例えば、レジストモータ67の速度を減速していき、制御不安定状態となったときの回転速度を下限値としても良い。またレジストモータ67の速度を加速していき、過電流状態となったときの回転速度を上限値としても良い。過電流状態とは、例えばFET部210等の駆動素子に流れる電流が駆動素子の定格の近くとなった状態である。
【0130】
また上記各実施形態では、レジストローラ66を第3の回転体として説明したが、これに限定されない。上記各実施形態では、第1の回転体と第2の回転体と干渉し合う回転体を第3の回転体としても良い。
【0131】
(第六の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第六の実施形態について説明する。本発明の第六の実施形態は、レジストモータ67の回転速度の変更を指示する処理を画像形成装置と接続されたサーバ装置が有する形態である。
【0132】
図16は、第六の実施形態のシート搬送モータ制御システムの外観を説明する図である。
【0133】
本実施形態のシート搬送モータ制御システム400は、画像形成装置100Aと、サーバ装置500とを有する。本実施形態の画像形成装置100Aは、第一の実施形態の画像形成装置のモータ制御用CPU300が有する速度制御部340とメモリ240とを有していない点のみ、第一の実施形態の画像形成装置100と相違する。本実施形態では、速度制御部340とメモリ240は、サーバ装置500内に含まれる。
【0134】
図17は、第六の実施形態の画像形成装置及びサーバ装置のハードウェア構成例を示す図である。
【0135】
サーバ装置500は、ネットワークI/F部51、CPU52、I/F部53、表示部54、HDD55、ROM56、RAM57を有し、それぞれがバスで相互に接続されたコンピュータである。またサーバ装置500は、専用線501を介して画像形成装置100Aに接続される。尚本実施形態のサーバ装置500と画像形成装置100Aとの接続は、適切な方法で接続されていれば良く、専用線501を介する形態に限定されない。
【0136】
CPU52は、コンピュータの中で制御やデータの演算、加工を行い、ROM56及びRAM57等に記憶されたプログラムを実行する演算装置である。また、CPU52は、プログラムを実行することで装置全体を制御する。また本実施形態のCPU52は、速度制御部340を有する。本実施形態のCPU52は、速度制御部340により、中間転写モータ制御部320、二次転写モータ制御部330から得られる中転駆動電流と、二次転駆動電流とに基づきレジストモータ67の回転速度の変更を指示するか否かを判断する。そしてCPU52は、レジストモータ67の回転速度を変更すると判断した場合には、この変更の指示をレジストモータ制御部310に対して行う。
【0137】
HDD55は、各種プログラム及びデータを格納する不揮発性の記憶装置である。格納されるプログラム及びデータとしては、例えば、OS(Operating System))や各種機能を提供するアプリケーション等がある。
【0138】
ROM56は、電源を切っても内部データを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。また、RAM57は、プログラムやデータ等を一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。本実施形態のRAM57は、例えば中転駆動電流と、二次転駆動電流とを含む値が格納されるメモリ240が設けられている。
【0139】
ネットワークI/F部51は、有線及び/又は無線回線等のデータ伝送路により構築されたLAN、WAN等のネットワークNを介して接続される通信機能を有する例えばPC410等の周辺機器とのインターフェースである。
【0140】
I/F部53は、サーバ装置500を画像形成装置100Aと接続するための手段であり、専用線501により画像形成装置100AのI/F部11に接続される。
【0141】
サーバ装置500と専用線501を介して接続される画像形成装置100Aは、I/F部11、表示部12、操作部13、画像形成部14、モータ制御部200、その他I/F部15を有し、それぞれがバスで相互に接続されている。
【0142】
I/F部11は、サーバ装置500に接続するための手段であり、専用線501によりサーバ装置500のI/F部53に接続される。
【0143】
表示部12及び操作部13は、例えばキースイッチ(ハードキー)とタッチパネル機能(GUIのソフトウェアキーを含む:Graphical User Interface)を備えたLCD(Liquid Crystal Display)で構成される。表示部12及び操作部13は、画像形成装置100Aが有する機能を利用する際のUI(User Interface)として機能する表示及び/又は入力装置である。
【0144】
画像形成部14は、感光体ユニット、定着装置等を有し、シートSの表面に画像データに基づいて画像を形成する。
【0145】
本実施形態のサーバ装置500で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0146】
さらに、本実施形態のサーバ装置500で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また本実施形態のサーバ装置500で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配信する様にすることもできる。
【0147】
また本実施形態のシート搬送モータ制御システム400では、サーバ装置500が速度制御部340を有する構成としたが、速度制御部340は、例えば画像形成装置100AとネットワークNを介して接続されたPC410上に設けられていても良い。
【0148】
また本実施形態のサーバ装置500の有する速度制御部340は、レジストモータ67の回転速度が上限値又は下限値を超えた場合に、表示部54に異常状態であることを表示させても良い。
【0149】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0150】
51 中間転写ベルト
60 中間転写ローラ
62 二次転写ローラ
64 中間転写モータ
65 二次転写モータ
66 レジストローラ
100 画像形成装置
110 メイン制御部
120 操作部
200 モータ制御部
300 モータ制御用CPU
340 速度制御部
400 シート搬送モータ制御システム
500 サーバ装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0151】
【特許文献1】特開2008−304801号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置であって、
前記第1の回転体を回転させる第1のモータの駆動を制御する第1制御要素を検出する第1検出手段と、
前記第2の回転体を回転させる第2のモータの駆動を制御する第2制御要素を検出する第2検出手段と、
前記第3の回転体を回転させる第3のモータの回転速度を制御するモータ制御手段と、
前記第1制御要素と前記第2制御要素との和に基づき前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度の変更を指示する速度制御手段と、を有するシート搬送装置。
【請求項2】
前記速度制御手段は、
前記第1制御要素と前記第2制御要素との和が、所定範囲内であるか否かを判断し、
前記和が前記所定範囲より小さい場合、前記和が前記所定範囲に入るように前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度を遅くさせ、
前記和が前記所定範囲より大きい場合、前記和が前記所定範囲に入るように前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度を速くさせる請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記所定範囲の最大値は、
前記第1のモータの回転速度が目標速度であるときの前記第1制御要素と、前記第2のモータの回転速度が目標速度であるときの前記第2制御要素との和を基準値としたとき、
前記基準値に、前記第1のモータ又は前記第2のモータの何れか一方の負荷を増大させたときの前記第1制御要因又は第2制御要因の増大の許容最大値を加算した値であり、
前記所定範囲の最小値は、
前記基準値から、前記第1のモータ又は前記第2のモータの何れか一方の負荷を軽減させたときの前記第1制御要因又は第2制御要因の減少の許容最大値を減算した値である請求項1又は2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記基準値を
前記第1のモータの回転速度が目標速度であるときの前記第1制御要素と、前記第2のモータの回転速度が目標速度であるときの前記第2制御要素との和から、前記第3のモータの回転速度が目標速度であるときの前記第3のモータの駆動を制御する第3制御要素を減算した値とする請求項3記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第3のモータの前記第3制御要因の上限値及び下限値が予め設定されおり、
前記速度制御手段による前記第3のモータの回転速度の制御により、前記第3制御要因が前記上限値又は上記下限値を越えたとき、表示操作手段に制御不能通知を表示させる請求項4の何れか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第1制御要因は、前記第1のモータを駆動させる第1駆動電流であり、
前記第2制御要因は、前記第2のモータを駆動させる第2駆動電流である請求項1ないし5の何れか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第1制御要因は、前記第1のモータのトルク指令値であり、
前記第2制御要因は、前記第2のモータのトルク指令値である請求項1ないし5の何れか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載のシート搬送装置を備える画像形成装置。
【請求項9】
第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置において実行される駆動制御プログラムであって、
前記シート搬送装置に、
前記第1の回転体を回転させる第1のモータの駆動を制御する第1制御要素を検出する第1検出手段による第1検出ステップと、
前記第2の回転体を回転させる第2のモータの駆動を制御する第2制御要素を検出する第2検出手段による第2検出ステップと、
前記第3の回転体を回転させる第3のモータの回転速度を制御するモータ制御手段によるモータ制御ステップと、
前記第1制御要素と前記第2制御要素との和に基づき前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度の変更を指示する速度制御ステップとを実行させる駆動制御プログラム。
【請求項10】
第1の回転体と第2の回転体と第3の回転体とを有し、前記第1の回転体ないし第3の回転体のうち少なくとも何れか一つの回転体によりシート状媒体の搬送を行うシート搬送装置と、前記シート搬送装置と接続されたコンピュータとを備えるシート搬送モータ制御システムであって、
前記シート搬送装置は、
前記第1の回転体を回転させる第1のモータの駆動を制御する第1制御要素を検出する第1検出手段と、
前記第2の回転体を回転させる第2のモータの駆動を制御する第2制御要素を検出する第2検出手段と、
前記第3の回転体を回転させる第3のモータの回転速度を制御するモータ制御手段と、
を備え、
前記コンピュータは、
前記第1制御要素と前記第2制御要素との和に基づき前記モータ制御手段に前記第3のモータの回転速度の変更を指示する速度制御手段を備えるシート搬送モータ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−29807(P2013−29807A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109953(P2012−109953)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】