説明

シート状プローブおよびその製造方法並びにその応用

【課題】 径が小さい表面電極部を形成することができ、小さいピッチで電極が形成された回路装置にも安定な電気的接続状態が確実に達成され、電極構造体が絶縁膜から脱落せず、高い耐久性が得られるシート状プローブおよびその製造方法並びにその応用の提供。【解決手段】 本発明のシート状プローブは、柔軟な絶縁膜に、その厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体が当該絶縁膜の面方向に互いに離間して配置されてなる接点膜を有し、電極構造体の各々は、絶縁膜の表面に露出し、当該絶縁膜の表面から突出する表面電極部と、絶縁膜の裏面に露出する裏面電極部と、表面電極部および裏面電極部の各々に直結されてこれらを電気的に接続する、絶縁膜の厚み方向に伸びる短絡部と、表面電極部の基端部分に形成された、前記絶縁膜の面方向に伸びる保持部とよりなり、保持部は、その少なくとも一部が絶縁膜に埋め込まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集積回路などの回路の電気的検査において、当該回路に対する電気的接続を行うためのシート状プローブおよびその製造方法並びにその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多数の集積回路が形成されたウエハや、半導体素子等の電子部品などの回路装置の電気的検査においては、被検査回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って配置された検査電極を有するプローブカードが用いられている。かかるプローブカードとしては、従来、ピンまたはブレードよりなる検査電極(プローブ)が配列されてなるものが使用されている。
然るに、被検査回路装置が多数の集積回路が形成されたウエハである場合において、当該ウエハを検査するためのプローブカードを作製する場合には、非常に多数の検査電極を配列することが必要となるので、当該プローブカードは極めて高価なものとなり、また、被検査電極のピッチが小さい場合には、プローブカードを作製すること自体が困難となる。更に、ウエハには、一般に反りが生じており、その反りの状態も製品(ウエハ)毎に異なるため、当該ウエハにおける多数の被検査電極に対して、プローブカードの検査電極の各々を安定にかつ確実に接触させることは実際上困難である。
【0003】
以上のような理由から、近年、ウエハに形成された集積回路を検査するためのプローブカードとして、一面に被検査電極のパターンに対応するパターンに従って複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、この検査用回路基板の一面上に配置された異方導電性シートと、この異方導電性シート上に配置された、柔軟な絶縁膜にその厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体が配列されてなるシート状プローブとを具えてなるものが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
図39は、検査用回路基板、異方導電性シートおよびシート状プローブを具えてなる従来のプローブカードの一例における構成を示す説明用断面図である。このプローブカードにおいては、一面に被検査回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って形成された多数の検査電極86を有する検査用回路基板85が設けられ、この検査用回路基板85の一面上に、異方導電性シート80を介してシート状プローブ90が配置されている。
【0005】
異方導電性シート80は、厚み方向にのみ導電性を示すもの、または厚み方向に加圧されたときに厚み方向にのみ導電性を示す加圧導電性導電部を有するものであり、かかる異方導電性シートとしては、種々の構造のものが知られており、例えば特許文献2等には、金属粒子をエラストマー中に均一に分散して得られる異方導電性シート(以下、これを「分散型異方導電性シート」という。)が開示され、また、特許文献3等には、導電性磁性体粒子をエラストマー中に不均一に分布させることにより、厚み方向に伸びる多数の導電部と、これらを相互に絶縁する絶縁部とが形成されてなる異方導電性シート(以下、これを「偏在型異方導電性シート」という。)が開示され、更に、特許文献4等には、導電部の表面と絶縁部との間に段差が形成された偏在型異方導電性シートが開示されている。
【0006】
シート状プローブ90は、例えば樹脂よりなる柔軟な絶縁膜91を有し、この絶縁膜91に、その厚み方向に伸びる複数の電極構造体95が被検査回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って配置されて構成されている。この電極構造体95の各々は、絶縁膜91の表面に露出する突起状の表面電極部96と、絶縁膜91の裏面に露出する板状の裏面電極部97とが、絶縁膜91をその厚み方向に貫通して伸びる短絡部98を介して一体に連結されて構成されている。
【0007】
このようなシート状プローブ90は、一般に、以下のようにして製造される。
先ず、図40(a)に示すように、絶縁膜91の一面に金属層92が形成されてなる積層体90Aを用意し、図40(b)に示すように、絶縁膜91にその厚み方向に貫通する貫通孔98Hを形成する。
次いで、図40(c)に示すように、絶縁膜91の金属層92上にレジスト膜93を形成したうえで、金属層92を共通電極として電解メッキ処理を施すことにより、絶縁膜91の貫通孔98Hの内部に金属の堆積体が充填されて金属層92に一体に連結された短絡部98が形成されると共に、当該絶縁膜91の表面に、短絡部98に一体に連結された突起状の表面電極部96が形成される。
その後、金属層92からレジスト膜93を除去し、更に、図40(d)に示すように、表面電極部96を含む絶縁膜91の表面にレジスト膜94Aを形成すると共に、金属層92上に、形成すべき裏面電極部のパターンに対応するパターンに従ってレジスト膜94Bを形成し、当該金属層92に対してエッチング処理を施することにより、図40(e)に示すように、金属層92における露出する部分が除去されて裏面電極部97が形成され、以て電極構造体95が形成される。
そして、絶縁膜91および表面電極部96上に形成されたレジスト膜94Aを除去すると共に、裏面電極部97上に形成されたレジスト膜94Bを除去することにより、シート状プローブ90が得られる。
【0008】
上記のプローブカードにおいては、被検査回路装置例えばウエハの表面に、シート状プローブ90における電極構造体95の表面電極部96が当該ウエハの被検査電極上に位置するよう配置され、この状態で、ウエハがプローブカードによって押圧されることにより、異方導電性シート80が、シート状プローブ90における電極構造体95の裏面電極部97によって押圧され、これにより、当該異方導電性シート80には、当該裏面電極部97と検査用回路基板85の検査電極86との間にその厚み方向に導電路が形成され、その結果、ウエハの被検査電極と検査用回路基板85の検査電極86との電気的接続が達成される。そして、この状態で、当該ウエハについて所要の電気的検査が実行される。
そして、このようなプローブカードによれば、ウエハがプローブカードによって押圧されたときに、当該ウエハの反りの大きさに応じて異方導電性シートが変形するため、ウエハにおける多数の被検査電極の各々に対して良好な電気的接続を確実に達成することができる。
【0009】
しかしながら、上記のプローブカードにおけるシート状プローブには、以下のような問題がある。
上記のシート状プローブの製造方法における短絡部98および表面電極部96を形成する工程においては、電解メッキによるメッキ層が等方的に成長するため、図41に示すように、得られる表面電極部96においては、当該表面電極部96の周縁から短絡部98の周縁までの距離wは、当該表面電極部96の突出高さhと同等の大きさとなる。従って、得られる表面電極部96の径Rは、突出高さhの2倍を超えて相当に大きいものとなる。そのため、被検査回路装置における被検査電極が微小で極めて小さいピッチで配置されてなるものである場合には、互いに隣接する電極構造体95間の離間距離を十分に確保することができず、その結果、得られるシート状プローブにおいては、絶縁膜91による柔軟性が失われるため、被検査回路装置に対して安定した電気的接続を達成することが困難となる。
また、電解メッキ処理において、金属層92の全面に対して電流密度分布が均一な電流を供給することは実際上困難であり、この電流密度分布の不均一性により、絶縁膜91の貫通孔98H毎にメッキ層の成長速度が異なるため、形成される表面電極部96の突出高さhや、表面電極部96の周縁から短絡部98の周縁までの距離wすなわち径Rに大きなバラツキが生じる。そして、表面電極部96の突出高さhに大きなバラツキがある場合には、被検査回路装置に対して安定した電気的接続が困難となり、一方、表面電極部96の径に大きなバラツキがある場合には、互いに隣接する表面電極部96同士が短絡する恐れがある。
【0010】
以上において、得られる表面電極部96の径を小さくする手段としては、当該表面電極部96の突出高さhを小さくする手段、短絡部98の径(断面形状が円形でない場合には、最短の長さを示す。)rを小さくする、すなわち絶縁膜91の貫通孔98Hの径を小さくする手段が考えられるが、前者の手段によって得られるシート状プローブにおいては、被検査電極に対して安定な電気的接続を確実に達成することが困難となり、一方、後者の手段では、電解メッキ処理によって短絡部98および表面電極部96を形成すること自体が困難となる。
【0011】
このような問題を解決するため、特許文献5および特許文献6において、それぞれ基端から先端に向かって小径となるテーパ状の表面電極部を有する多数の電極構造体が配置されてなるシート状プローブが提案されている。
【0012】
特許文献5に記載されたシート状プローブは、以下のようにして製造される。
図42(a)に示すように、絶縁膜91の表面にレジスト膜93Aおよび表面側金属層92Aがこの順で形成され、当該絶縁膜91の裏面に裏面側金属層92Bが積層されてなる積層体90Bを用意し、図42(b)に示すように、この積層体90Bにおける裏面側金属層92B、絶縁膜91およびレジスト膜93Aの各々に互いに連通する厚み方向に伸びる貫通孔を形成することにより、当該積層体90Bの裏面に、形成すべき電極構造体の短絡部および表面電極部に適合するテーパ状の形態を有する電極構造体形成用凹所90Kを形成する。次いで、図42(c)に示すように、この積層体90Bにおける表面側金属層92Aを電極としてメッキ処理することにより、電極構造体形成用凹所90Kに金属を充填して表面電極部96および短絡部98を形成する。そして、この積層体における裏面側金属層にエッチング処理を施してその一部を除去することにより、図42(d)に示すように、裏面電極部97を形成し、以てシート状プローブが得られる。
【0013】
また、特許文献6に記載されたシート状プローブは、以下のようにして製造される。
図43(a)に示すように、形成すべきシート状プローブにおける絶縁膜より大きい厚みを有する絶縁膜材91Aの表面に表面側金属層92Aが形成され、当該絶縁膜材91Aの裏面に裏面側金属層92Bが積層されてなる積層体90Cを用意し、図43(b)に示すように、この積層体90Cにおける裏面側金属層92Bおよび絶縁膜材91Aの各々に互いに連通する厚み方向に伸びる貫通孔を形成することにより、当該積層体90Cの裏面に、形成すべき電極構造体の短絡部および表面電極部に適合するテーパ状の形態を有する電極構造体形成用凹所90Kを形成する。次いで、この積層体90Cにおける表面側金属層92Aを電極としてメッキ処理することにより、図43(c)に示すように、電極構造体形成用凹所90Kに金属を充填して表面電極部96および短絡部98を形成する。その後、この積層体90Cにおける表面側金属層92Aを除去すると共に、絶縁膜材91Aをエッチング処理して当該絶縁膜の表面側部分を除去することにより、図43(d)に示すように、所要の厚みの絶縁膜91を形成すると共に、表面電極部96を露出させる。そして、裏面側金属層92Bをエッチング処理することにより、図43(e)に示すように、裏面電極部97を形成し、以てシート状プローブが得られる。
【0014】
このようなシート状プローブによれば、表面電極部がテーパ状のものであるため、径が小さくて突出高さが高い表面電極部を、隣接する電極構造体の表面電極部との離間距離が十分に確保された状態で形成することができると共に、当該電極構造体の各々の表面電極部は、積層体に形成された電極構造体形成用凹所をキャビティとして成形されるため、表面電極部の突出高さのバラツキが小さい電極構造体が得られる。
しかしながら、これらのシート状プローブにおいては、電極構造体における表面電極部の径が短絡部の径すなわち絶縁膜に形成された貫通孔の径と同等またはそれより小さいものであるため、電極構造体が絶縁膜の裏面から脱落してしまい、当該シート状プローブを実際上使用することは困難である。
【0015】
このような問題を解決するため、特許文献7には、電極構造体に表面電極部の基端部分から連続して絶縁膜の表面に沿って外方に伸びる保持部が形成されたシート状プローブが提案されている。
このシート状プローブの電極構造体における保持部は、絶縁膜の表面に形成された金属層をエッチングすることによって形成されている。
しかしながら、このようなシート状プローブにおいては、電極構造体における保持部が絶縁膜の表面から早期に剥離し、更に、剥離した保持部が破損する結果、保持部としての機能を失うため、高い耐久性を得ることが困難である。
【0016】
また、上記のプローブカードにおけるシート状プローブにおいては、以下のような問題がある。
電極構造体における短絡部98は、良好な導電性を得るために、電気抵抗が比較的小さい材料例えば銅やニッケルなどの金属によって形成されていることが好ましい。一方、電極構造体における表面電極部96は、検査対象である回路装置の被検査電極の材質によって要求される性能が異なる。例えば、被検査電極が半田よりなるものである場合には、表面電極部は半田によって変質しにくい材料よりなることが好ましく、また、被検査電極がアルミニウムよりなるものである場合には、当該被検査電極の表面に酸化膜が形成されているため、表面電極部は被検査電極の酸化膜を突き破る程度の硬度を有する材料よりなることが好ましい。
然るに、上記のシート状プローブの製造方法においては、メッキ処理によって短絡部および表面電極部を連続して形成することにより、両者は互いに同一の材料よりなるものとなるため、表面電極部および短絡部に要求される性能の両方を満足する電極構造体を形成することは困難である。
【0017】
このような問題を解決するため、表面電極部の表面に複数の金属層を積層し、最外金属層を硬度の高い金属により形成する手段(例えば特許文献8参照。)、表面電極部の表面に微細粒子を含有する被覆層を形成する手段(例えば特許文献9参照。)が提案されている。
しかしながら、このような手段においては、表面電極部の最表面部に異なる金属の薄層を形成しており、表面電極部全体の硬度を高いものにするのは困難であるため繰り返し使用における加圧接触により表面電極部自体の形状が変化して接触安定性が低下しやすく、更に微細で微小ピッチの電極構造体を有するシート状プローブにおいては、このような表面層のメッキを行った場合、隣接する電極構造体と電気的に短絡した表面メッキ層が形成されてしまう問題があり、微細で微小ピッチの電極構造体を有するシート状プローブの製造に適用するのが困難であるという問題点があった。
【0018】
一方、表面電極部が他の部分と異なる材料よりなる電極構造体を形成する方法としては、表面電極部を他の部分とは別個に形成し、低融点金属または接着性樹脂によって、表面電極部を絶縁膜に形成された他の部分に接合する方法が提案されている(例えば特許文献10および特許文献11参照。)
然るに、このような方法においては、表面電極部と他の部分との位置合わせが必要であるため、形成すべき電極構造体のピッチが小さくなるに従って位置合わせが困難となる、という問題がある。
また、低融点金属によって表面電極部を他の部分に接合する場合には、当該低融点金属は硬度が低いものであるため、繰り返して使用したときには接合部分に変形が生じやすい、という問題がある。
また、接着性樹脂によって表面電極部を他の部分に接合する場合には、表面電極部と他の部分との間に接着性樹脂が残存することとなるが、当該接着性樹脂は絶縁性のものであるため、良好な導電性を有する電極構造体を形成することが困難となる、という問題がある。
【0019】
更に、従来のプローブカードにおけるシート状プローブにおいては、以下のような問題がある。
例えば直径が8インチ以上のウエハにおいては、5000個または10000個以上の被検査電極が形成されており、当該被検査電極のピッチは160μm以下である。このようなウエハの検査を行うためのシート状プローブとしては、当該ウエハに対応した大面積のものであって、5000個または10000個以上の電極構造体が160μm以下のピッチで配置されてなるものを用いることが必要となる。
而して、ウエハを構成する材料例えばシリコンの線熱膨張係数は3.3×10-6/K程度であり、一方、シート状プローブにおける絶縁膜を構成する材料例えばポリイミドの線熱膨張係数は4.5×10-5/K程度である。従って、例えば25℃において、それぞれ直径が30cmのウエハおよびシート状プローブの各々を、20℃から120℃までに加熱した場合には、理論上、ウエハの直径の変化は99μmにすぎないが、シート状プローブにおける絶縁膜の直径の変化は1350μmに達し、両者の熱膨張の差は、1251μmとなる。
このように、ウエハとシート状プローブにおける絶縁膜との間で、面方向における熱膨張の絶対量に大きな差が生じると、絶縁膜の周縁部をウエハの線熱膨張係数と同等の線熱膨張係数を有する支持部材によって固定しても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれを確実に防止することは困難であるため、良好な電気的接続状態を安定に維持することができない。
また、検査対象が小型の回路装置であっても、その被検査電極のピッチが50μm以下のものである場合には、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれを確実に防止することは困難であるため、良好な電気的接続状態を安定に維持することができない。
【0020】
このような問題点に対して、特許文献12には、絶縁膜に張力を作用させた状態で保持部材に固定することにより、当該絶縁膜の熱膨張を緩和する手段が提案されている。
然るに、このような手段においては、絶縁膜に対してその面方向における全ての方向について均一に張力を作用させることは極めて困難であり、また、電極構造体を形成することによって絶縁膜に作用する張力のバランスが変化し、その結果、当該絶縁膜は熱膨張について異方性を有するものとなるため、面方向における−方向の熱膨張を抑制することが可能であっても、当該一方向と交差する他の方向の熱膨張を抑制することができず、結局、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれを防止することができない。
【0021】
【特許文献1】特開平7−231019号公報
【特許文献2】特開昭51−93393号公報
【特許文献3】特開昭53−147772号公報
【特許文献4】特開昭61−250906号公報
【特許文献5】特開平11−326378号公報
【特許文献6】特開2002−196018号公報
【特許文献7】国際公開第2004/038433号パンフレット
【特許文献8】特開平7−321169号公報
【特許文献9】特開2002−148281号公報
【特許文献10】特開平7−50113号公報
【特許文献11】特開平6−308162号公報
【特許文献12】特開2001−15565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その第1の目的は、径が小さい表面電極部を有する電極構造体を形成することが可能で、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、電極構造体が絶縁膜から脱落することがなく、高い耐久性が得られるシート状プローブを提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記の第1の目的に加えて更に、導電性が高い電極構造体を有するシート状プローブを提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記の第2の目的に加えて更に、電極構造体における表面電極部および短絡部の各々に要求される性能を付与することができるシート状プローブを提供することにある。
本発明の第4の目的は、上記の目的に加えて更に、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハや被検査電極のピッチが極めて小さい回路装置であっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれを確実に防止することができ、従って、良好な電気的接続状態を安定に維持することができるシート状プローブを提供することにある。
本発明の第5の目的は、径が小さくて突出高さのバラツキが小さい表面電極部を有する電極構造体を形成することができ、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、電極構造体が絶縁膜から脱落することがなく、高い耐久性が得られ、更に、導電性が高い電極構造体を有し、電極構造体における表面電極部および短絡部の各々に要求される性能を付与することが可能なシート状プローブを製造することができる方法を提供することにある。
本発明の第6の目的は、上記の第5の目的に加えて更に、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハや被検査電極のピッチが極めて小さい回路装置であっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれが確実に防止され、従って、良好な電気的接続状態が安定に維持されるシート状プローブを製造することができる方法を提供することにある。
本発明の第7の目的は、上記のシート状プローブを具えたプローブカードを提供することにある。
本発明の第8の目的は、上記のプローブカードを具えた回路装置の検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のシート状プローブは、柔軟な絶縁膜に、その厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体が当該絶縁膜の面方向に互いに離間して配置されてなる接点膜を有するシート状プローブであって、
前記電極構造体の各々は、前記絶縁膜の表面に露出し、当該絶縁膜の表面から突出する表面電極部と、前記絶縁膜の裏面に露出する裏面電極部と、前記表面電極部および前記裏面電極部の各々に直結されてこれらを電気的に接続する、前記絶縁膜の厚み方向に伸びる短絡部と、前記表面電極部の基端部分に形成された、前記絶縁膜の面方向に伸びる保持部とよりなり、
前記保持部は、その少なくとも一部が絶縁膜に埋め込まれていることを特徴とする。
【0024】
本発明のシート状プローブにおいては、絶縁膜は、樹脂よりなる基層と、この基層上に一体的に積層された接着性樹脂またはその硬化物よりなる表層とにより構成されていることが好ましい。
【0025】
また、本発明のシート状プローブにおいては、短絡部は、表面電極部の基端に対してメッキ処理することによって形成されたものであることが好ましい。
このようなシート状プローブにおいては、表面電極部と短絡部とは互いに異なる金属よりなるものであってもよい。
また、表面電極部を構成する金属のビッカース硬度(Hv)が40以上であってもよい。
【0026】
また、本発明のシート状プローブにおいては、開口が形成された金属よりなる支持膜を有し、接点膜は、その電極構造体の各々が前記支持膜の開口内に位置するよう当該支持膜の表面上に支持されていることが好ましい。
また、支持膜は複数の開口を有することが好ましい。
また、それぞれ支持膜に支持された複数の接点膜を有するものであってもよい。
【0027】
また、本発明のシート状プローブにおいては、電極構造体における表面電極部は、その基端から先端に向かうに従って小径となる形状のものであることが好ましい。
【0028】
また、本発明のシート状プローブにおいては、電極構造体における表面電極部の基端の径R1 に対する表面電極部の突出高さhの比h/R1 の値が0.2〜3であることが好ましい。
【0029】
本発明のシート状プローブの製造方法は、上記のシート状プローブを製造する方法であって、
形成すべき電極構造体における表面電極部の形状に適合する形状の複数の凹所が当該電極構造体のパターンに対応するパターンに従って形成された電極部材配列板と、樹脂よりなる基層上に接着性の表層が形成されてなる絶縁膜とを用意し、
前記電極部材配列板の凹所の各々およびその周辺部に金属を堆積させることにより、表面電極部およびその基端部分から電極部材配列板の面方向に伸びる保持部からなる電極部材を形成し、
この電極部材配列板に形成された電極部材の各々を、前記絶縁膜の表層に対接するよう配置して圧着処理することによって当該絶縁膜に接着し、
前記絶縁膜に、それぞれ厚み方向に伸びて前記電極部材における表面電極部に通ずる複数の貫通孔を形成し、
前記表面電極部の各々にメッキ処理を施して前記絶縁膜の貫通孔の各々に金属を充填することにより、当該表面電極部に連結された短絡部を形成する工程を有することを特徴とする。
【0030】
また、本発明のシート状プローブの製造方法は、上記の支持膜を有するシート状プローブを製造する方法であって、
形成すべき電極構造体における表面電極部の形状に適合する形状の複数の凹所が当該電極構造体のパターンに対応するパターンに従って形成された電極部材配列板と、金属膜およびこの金属膜の表面に一体的に積層された、樹脂よりなる基層上に接着性の表層が形成されてなる絶縁膜よりなる積層体とを用意し、
前記電極部材配列板の凹所の各々およびその周辺部に金属を堆積させることにより、表面電極部およびその基端部分から電極部材配列板の面方向に伸びる保持部からなる電極部材を形成し、
この電極部材配列板に形成された電極部材の各々を、前記積層体における絶縁膜の表層に対接するよう配置して圧着処理することによって当該絶縁膜に接着し、
前記積層体に、それぞれ厚み方向に伸びて前記電極部材における表面電極部に通ずる複数の貫通孔を形成し、
前記表面電極部の各々にメッキ処理を施して前記絶縁膜の貫通孔の各々に金属を充填することにより、当該表面電極部に連結された短絡部を形成し、
前記積層体における金属膜をエッチング処理することにより、開口が形成された支持膜を形成する工程を有することを特徴とする。
【0031】
本発明のシート状プローブの製造方法においては、電極部材配列板に形成された凹所の各々は、当該電極部材配列板の表面から裏面に向かうに従って小径となる形状であることが好ましい。
【0032】
本発明のプローブカードは、検査対象である回路装置とテスターとの電気的接続を行うためのプローブカードであって、
検査対象である回路装置の被検査電極に対応して複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、この検査用回路基板上に配置された異方導電性コネクターと、この異方導電性コネクター上に配置された、上記のシート状プローブとを具えてなることを特徴とする。
【0033】
また、本発明のプローブカードは、検査対象である回路装置とテスターとの電気的接続を行うためのプローブカードであって、
検査対象である回路装置の被検査電極に対応して複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、この検査用回路基板上に配置された異方導電性コネクターと、この異方導電性コネクター上に配置された、上記の方法によって製造されたシート状プローブとを具えてなることを特徴とする。
【0034】
本発明のプローブカードにおいては、検査対象である回路装置が多数の集積回路が形成されたウエハである場合には、異方導電性コネクターは、検査対象であるウエハに形成された全ての集積回路または一部の集積回路における被検査電極が配置された電極領域に対応して複数の開口が形成されたフレーム板と、このフレーム板の各開口を塞ぐよう配置された異方導電性シートとを有してなることが好ましい。
【0035】
本発明の回路装置の検査装置は、上記のプローブカードを具えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明のシート状プローブによれば、電極構造体には、表面電極部の基端部分に絶縁膜の面方向に伸びる保持部が形成されているため、当該表面電極部の径が小さいものであっても、当該電極構造体が絶縁膜から脱落することがなく、しかも、保持部は、少なくともその一部が絶縁膜に埋め込まれているため、当該絶縁部から剥離することがなく、従って、高い耐久性が得られる。
また、小さい径の表面電極部を形成することが可能であることにより、隣接する表面電極部の間の離間距離が十分に確保されるため、絶縁膜による柔軟性が十分に発揮され、その結果、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができる。
【0037】
また、表面電極部の基端に対してメッキ処理することによって短絡部を形成することにより、高い導電性を有する電極構造体が得られると共に、表面電極部と短絡部とを互いに異なる材料により形成することができるので、表面電極部および短絡部の各々に要求される性能を付与することができる。例えば、表面電極部を硬度の高い金属によって形成することにより、酸化膜が形成された被検査電極に対しても確実に電気的接続を達成することができる。また、表面電極部を半田に対して変質しにくい材料よって形成することにより、半田よりなる被検査電極を有する回路装置の検査に使用した場合でも、長期間にわたって安定した導電性が得られる。一方、短絡部を電気抵抗値の低い金属によって形成することにより高い導電性が得られる。
【0038】
また、接点膜を支持する支持膜を設けることにより、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハや被検査電極のピッチが極めて小さい回路装置であっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれを確実に防止することができ、従って、良好な電気的接続状態を安定に維持することができる。
【0039】
本発明のシート状プローブの製造方法によれば、予め電極部材配列板の凹所に表面電極部および保持部よりなる電極部材を形成するため、表面電極部の形状および寸法の制御が容易となり、これにより、径が小さくて突出高さのバラツキが小さい表面電極部を形成することができる。
また、表面電極部の基端部分に保持部を形成することにより、絶縁膜から脱落することがない電極構造体を形成することができ、しかも、電極部材を圧着処理によって絶縁膜に接着するため、当該電極部材における保持部は、少なくともその一部が絶縁膜に埋め込まれた状態となり、これにより、絶縁膜から剥離することがない保持部を形成することができる。従って、高い耐久性を有するシート状プローブを製造することができる。
また、絶縁膜に接着された電極部材における表面電極部の基端にメッキ処理することによって短絡部を形成するため、表面電極部と短絡部とは一体に形成され、これにより、両者の間に良好な電気的接続状態が達成される結果、高い導電性を有する電極構造体を形成することができる。また、表面電極部と短絡部とを異なる材料によって形成することができるので、表面電極部および短絡部の各々に要求される性能を付与することができる。
【0040】
また、金属膜の表面に絶縁膜が積層されてなる積層体を用い、当該積層体における金属膜をエッチング処理することにより、絶縁膜を支持する金属よりなる支持膜を形成することができるので、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハや被検査電極のピッチが極めて小さい回路装置であっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれが確実に防止され、従って、良好な電気的接続状態が安定に維持されるシート状プローブを製造することができる。
【0041】
本発明のプローブカードによれば、上記のシート状プローブを具えてなるため、径が小さい表面電極部を有する電極構造体を形成することが可能で、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、電極構造体が絶縁膜から脱落することがなく、高い耐久性が得られる。
本発明の回路装置の検査装置によれば、上記のプローブを具えてなるため、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、多数の回路装置の検査を行う場合でも、長期間にわたって信頼性の高い検査を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔シート状プローブ〕
図1は、本発明に係るシート状プローブの第1の例を一部を破断して示す平面図であり、図2は、第1の例のシート状プローブにおける接点膜を拡大して示す平面図、図3は、第1の例のシート状プローブにおける接点膜を拡大して示す説明用断面図である。
この第1の例のシート状プローブ10は、例えば複数の集積回路が形成されたウエハについて当該集積回路の各々の電気的検査をウエハの状態で行うために用いられるものであって、複数の開口11Hが形成された金属よりなる支持膜11を有する。この支持膜11の開口11Hは、検査対象であるウエハにおける集積回路の被検査電極が形成された電極領域のパターンに対応して形成されている。また、この例における支持膜11には、後述するプローブカードにおける異方導電性コネクターおよび検査用回路基板との位置決めを行うための位置決め孔11Kが形成されている。
【0043】
支持膜11を構成する金属としては、鉄、銅、ニッケル、チタン、またはこれらの合金若しくは合金鋼を用いることができるが、後述する製造方法において、エッチング処理によって容易に開口11Hを形成することができる点で、42合金、インバー、コバールなどの鉄−ニッケル合金鋼が好ましい。
また、支持膜11としては、その線熱膨張係数が3×10-5/K以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは−1×10-7〜1×10-5/K、特に好ましくは−1×10-6〜8×10-6/Kである。
このような支持膜11を構成する材料の具体例としては、インバーなどのインバー型合金、エリンバーなどのエリンバー型合金、スーパーインバー、コバール、42合金などの合金または合金鋼が挙げられる。
【0044】
また、支持膜11の厚みは、3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μmである。
この厚みが3μm未満である場合には、接点膜12を支持する支持膜として必要な強度が得られないことがある。一方、この厚みが100μmを超える場合には、後述する製造方法において、エッチング処理によって開口11Hを容易に形成することが困難となることがある。
【0045】
この支持膜11の表面(図3において上面)上には、当該支持膜11の径より小さい径の円形の単一の接点膜12が当該支持膜11に一体的に設けられて支持されている。
この接点膜12は、柔軟な絶縁膜13を有し、この絶縁膜13には、当該絶縁膜13の厚み方向に伸びる複数の電極構造体15が、検査対象であるウエハに形成された全ての集積回路における被検査電極のパターンに対応するパターンに従って、当該絶縁膜13の面方向に互いに離間して配置されており、当該接点膜12は、電極構造体15の各々が、支持膜11の各開口11H内に位置するよう配置されている。
電極構造体15の各々は、絶縁膜13の表面に露出し、当該絶縁膜13の表面から突出する突起状の表面電極部16と、絶縁膜13の裏面に露出する矩形の平板状の裏面電極部17と、表面電極部16の基端から前記絶縁膜13をその厚み方向に貫通して伸びて裏面電極部17に連結された短絡部18と、表面電極部16の基端部分の周面から連続して絶縁膜13の面方向に放射状に伸びる円形リング板状の保持部19とにより構成されており、保持部19は、その一部が絶縁膜13に埋め込まれている。この例の電極構造体15においては、表面電極部16が、短絡部18に連続して基端から先端に向かうに従って小径となるテーパ状とされて全体が円錐状に形成され、当該表面電極部16の基端に連続する短絡部18が、絶縁膜13の裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状とされて全体が円錐台状に形成されている。また、短絡部18は、表面電極部16の基端にメッキ処理することによって、当該表面電極部16に連続して一体に形成されている。
【0046】
絶縁膜13は、樹脂よりなる基層13Kと、この基層13Kと、この基層13K上に一体的に積層された接着性樹脂またはその硬化物よりなる表層13Sとにより構成されている。
絶縁膜13における基層13Kを形成する樹脂としては、絶縁性を有する柔軟なものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエステル、フッ素系樹脂、繊維を編んだクロスに上記の樹脂を含浸したものなどを用いることができるが、短絡部18を形成するための貫通孔をエッチングにより容易に形成することができる点で、エッチング可能な材料よりなることが好ましく、特にポリイミド樹脂が好ましい。
絶縁膜13における表層13Sを形成する接着性樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、放射線硬化性樹脂などを用いることができ、その具体例としては、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン系樹脂等などが挙げられる。
これらの中では、耐熱性および耐久性が良好で、短絡部18を形成するための貫通孔をエッチングにより容易に形成することができる点で、熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましい。
絶縁膜13における表層13Sの厚みは、3〜30μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。
また、絶縁膜13の厚みは、当該絶縁膜11が柔軟なものであれば特に限定されないが、10〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜25μmである。
【0047】
電極構造体15における表面電極部16を構成する金属としては、当該表面電極部16に要求される性能に応じて種々のものを選択して用いることができる。例えば表面電極部16に高い硬度を有するものであることが要求される場合には、ビッカース硬度(Hv)が好ましくは40以上、より好ましくは150以上、さらに好ましくは300以上、特に好ましくは500以上の高硬度の金属を用いることができる。また、表面電極部16を2層以上の積層体により構成する場合には、最外層を形成する金属をビッカース硬度(Hv)が40以上、より好ましくは150以上、さらに好ましくは300以上、特に好ましくは500以上の高硬度のものとすればよい。
表面電極部16を高硬度の金属により形成する場合には、単一の金属であっても2種以上の金属からなるものであってもよい。また、2種類以上の金属により形成する場合には、ビッカース硬度(Hv)が40以上の金属のみを用いる必要はなく、全体としてのビッカース硬度(Hv)が40以上であれば、ビッカース硬度(Hv)が40以上の金属とそれ以外の金属例えば金との合金よりなるものであってもよく、ビッカース硬度(Hv)が40以上の金属よりなる金属相がそれ以外の金属例えば金よりなる金属相中に分散された相分離構造を有するものであってもよい。
高硬度の金属としては、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、白金、タングステン、ニッケル、コバルト、クロムまたはこれらの合金などを用いることができ、これらの中では、化学的に安定でかつ高い導電率を有する点でパラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、白金、ニッケルを用いるが好ましい。
また、ビッカース硬度(Hv)が40以上の金属と金との合金としては、金・パラジウム合金、金・銅合金、白金・金合金、ニッケルやコバルトを0.1〜1.0%含有する硬質金、リン・ニッケル合金などを用いることができる。
【0048】
電極構造体15における短絡部18および裏面電極部17を構成する金属としては、電気抵抗値の低いものが好ましく、例えばニッケル、銅、金、銀、パラジウム、鉄などを用いることができる。
また、裏面電極部17の表面には、当該電極部の酸化を防止すると共に、接触抵抗の小さい電極部を得るために、金、銀、パラジウムなどの化学的に安定で高導電性を有する金属被膜が形成されていてもよい。
また、電極構造体15における保持部19は、種々の金属を用いることができる。
【0049】
このように、電極構造体15における表面電極部16、裏面電極部17、短絡部18および保持部19は、異なる金属により形成することができるが、同一の金属により形成することもできる。
表面電極部16、裏面電極部17、短絡部18および保持部19を同一の金属により形成する場合には、表面電極部16に要求される性能を考慮して金属を選択することが好ましく、例えはビッカース硬度(Hv)が40以上の高導電性金属を用いることが好ましい。
【0050】
電極構造体15において、表面電極部16の基端の径R1 は、当該電極構造体15のピッチの30〜70%であることが好ましく、より好ましくは35〜60%である。
また、表面電極部16の基端における径R1 に対する突出高さhの比h/R1 は、0.2〜3であることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.6である。このような条件を満足することにより、検査対象であるウエハがピッチが小さくて微小な被検査電極を有するものであっても、当該被検査電極のパターンに対応するパターンの電極構造体15を容易に形成することができ、当該ウエハに対して安定な電気的接続状態が一層確実に得られる。
表面電極部16の基端の径R1 は、上記の条件や検査対象であるウエハの被検査電極の直径などを勘案して設定されるが、例えば30〜80μmであり、好ましくは30〜50μmである。
表面電極部16の突出高さhの高さは、検査対象であるウエハの被検査電極に対して安定な電気的接続を達成することができる点で、15〜50μmであることが好ましく、より好ましくは15〜30μmである。
【0051】
また、裏面電極部17の外径R5 は、当該裏面電極部17に連結された短絡部18の他端の径R4 より大きく、かつ、電極構造体15のピッチより小さいものであればよいが、可能な限り大きいものであることが好ましく、これにより、例えば異方導電性シートに対しても安定な電気的接続を確実に達成することができる。
また、裏面電極部17の厚みD2 は、強度が十分に高くて優れた繰り返し耐久性が得られる点で、10〜40μmであることが好ましく、より好ましくは15〜35μmである。
また、短絡部18の他端の径R4 に対する一端の径R3 の比R3 /R4 は、0.45〜1であることが好ましく、より好ましくは0.7〜0.9である。
また、短絡部18の一端の径R3 は、当該電極構造体15のピッチの30〜70%であることが好ましく、より好ましくは35〜60%である。
また、保持部19の径R6 は、当該電極構造体15のピッチの30〜70%であることが好ましく、より好ましくは40〜60%である。
また、保持部19の厚みD1 は、3〜12μmであることが好ましく、より好ましくは5〜9μmである。
【0052】
このような第1の例のシート状プローブ10によれば、電極構造体15には、表面電極部16の基端部分に絶縁膜13の面方向に伸びる保持部19が形成されているため、当該表面電極部16の径が小さいものであっても、当該電極構造体16が絶縁膜13から脱落することがなく、しかも、保持部19は、その一部が絶縁膜13に埋め込まれているため、当該絶縁部13から剥離することがなく、従って、高い耐久性が得られる。
また、小さい径の表面電極部16を形成することが可能であることにより、隣接する表面電極部16の間の離間距離が十分に確保されるため、絶縁膜13による柔軟性が十分に発揮され、その結果、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができる。
【0053】
また、表面電極部16の基端に対してメッキ処理することによって短絡部18を表面電極部16に連続して一体に形成することにより、高い導電性を有する電極構造体が得られると共に、表面電極部16と短絡部18とを互いに異なる材料により形成することができるので、表面電極部16および短絡部18の各々に要求される性能を付与することができる。例えば、表面電極部18を高硬度の金属によって形成することにより、酸化膜が形成された被検査電極に対しても確実に電気的接続を達成することができる。また、表面電極部16を半田に対して変質しにくい材料よって形成することにより、半田よりなる被検査電極を有する回路装置の検査に使用した場合でも、長期間にわたって安定した導電性が得られる。一方、短絡部18を電気抵抗値の低い金属によって形成することにより高い導電性が得られる。
【0054】
また、支持膜11には、検査対象であるウエハの被検査電極が形成された電極領域に対応して複数の開口11Hが形成され、この支持膜11上には、電極構造体15の各々が支持膜11の各開口11H内に位置するよう接点膜12が配置されることにより、この接点膜12は、その全面にわたって支持膜11に支持されるため、当該接点膜12が大面積のものであっても、その絶縁膜13の面方向における熱膨張を支持膜11によって確実に規制することができる。従って、検査対象であるウエハが例えば直径が8インチ以上の大面積で被検査電極のピッチが極めて小さいものであっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体15と被検査電極との位置ずれを確実に防止することができ、その結果、ウエハに対する良好な電気的接続状態を安定に維持することができる。
【0055】
上記の第1の例のシート状プローブ10は、例えば以下のようにして製造することができる。
この方法においては、図4に示すような電極部材配列板40が用いられる。この例の電極部材配列板40は、異方性エッチングが可能な材料よりなり、その一面(図4において上面)には、製造すべきシート状プローブ10における表面電極部16のパターンに対応するパターンに従って凹所41が形成されている。この凹所41は、異方性エッチングによって形成されたものであり、当該凹所41の形状は、表面電極部16の形状に適合する形状すなわち当該電極部材配列板40の一面から他面に向かうに従って小径となる円錐状である。また、この例においては、電極部材配列板40の一面における凹所41以外の領域および当該電極部材配列板40の他面には、保護膜42,43が形成されている。この保護膜42,43は、凹所41を異方性エッチングによって形成するためのレジストとして利用されたものである。
【0056】
電極部材配列板40を構成する材料としては、異方性エッチングが可能なものであれば特に限定されず、例えば単結晶シリコン、ゲルマニウムなどを用いることができるが、異方性エッチングによって所期の寸法精度を有する凹所41が確実に得られると共に、高い耐久性が得られる点で、単結晶シリコンを用いることが好ましく、さらに、異方性エッチングによって一層高い寸法精度を有する凹所41が得られ、かつ面精度の高い表面が得られる点で、純度の高いものを用いることが好ましく、特に、電極部材配列板40としては、結晶面(1,0,0)を表面とするシリコンウエハを加工することにより得られるものを用いることが好ましい。電極部材配列板40の厚み(凹所41が形成されていない個所の厚み)は、例えば0.2〜1mm、好ましくは0.25〜0.6mmである。また、凹所41の深さは、形成すべき表面電極部16の高さに応じて適宜設定される。保護膜42,43を形成する材料としては、二酸化珪素(SiO2 )、窒化珪素(Si3 4 )、クロム(Cr)、金(Au)などを用いることができるが、最も使用しやすい点で、二酸化珪素(SiO2 )を用いることができる。
【0057】
この電極部材配列板40は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、図5に示すように、両面に二酸化珪素よりなる保護膜42,43が形成された、単結晶シリコンよりなる結晶面(1,0,0)を表面とする板状の配列板形成材料40Aを用意し、図6に示すように、この配列板形成材料40Aの両面に形成された保護膜42,43の各々の表面に、フォトリソグラフィーの手法により、当該保護膜42,43をエッチング処理するためのレジスト膜45,46を形成する。
その後、図7に示すように、配列板形成材料40Aの一面(図7において上面)側に形成されたレジスト膜45に、形成すべき凹所41に対応して複数のパターン孔45Kを形成する。
次いで、図8に示すように、配列板形成材料40Aの一面に形成された保護膜42に対して、レジスト膜45のパターン孔45Kを介してエッチング処理を行うことにより、当該保護膜42にレジスト膜45のパターン孔45Kに連通するパターン孔42Kを形成する。そして、図9に示すように、レジスト膜45,46を除去した後、配列板形成材料40Aの一面に対して、保護膜42,43をレジストとして利用し、当該保護膜42のパターン孔42Kを介して異方性エッチング処理を行うことにより、円錐状の凹所41を形成し、以て、図4に示す表面電極部材配列板40が得られる。
【0058】
以上において、配列板形成材料40Aとしては、結晶面(1,0,0)を表面とするシリコンウエハをそのままの状態で或いは適宜の形状に加工した状態で用いることが好ましい。保護膜42をエッチング処理するためのエッチング液としては、フッ酸などを用いることができる。配列板形成材料40Aを異方性エッチング処理するためのエッチング液としては、水酸化カリウム、エチレンジアミンなどの水溶液を用いることができる。また、配列板形成材料40Aの異方性エッチング処理の条件、例えば処理温度、処理時間は、エッチング液の種類、形成すべき表面電極部材形成用凹所41の深さなどに応じて適宜設定されるが、例えば処理温度は60〜85℃である。
【0059】
そして、上記のような構成の電極部材配列板40を用い、以下のようにしてシート状プローブが製造される。
先ず、図10に示すように、電極部材配列板40の一面における凹所41以外の領域に、形成すべき保持部19に対応するパターンのパターン孔47Kを有するレジスト膜47を形成する。その後、レジスト膜47の表面および電極部材配列板40の一面におけるレジスト膜47のパターン孔47Kによって露出した領域に、メッキ処理、スパッタ処理あるいは蒸着処理を行うことにより、図11に示すように、金属層50が形成される。そして、図12に示すように、金属層50におけるレジスト膜47上に位置する部分に、当該レジスト膜47の各パターン孔47Kに連通するパターン孔48Kを有するレジスト膜48を形成する。
次いで、電極部材配列板40の凹所41の各々およびその周辺部すなわちレジスト膜47,48のパターン孔47Kおよび48K内に金属を堆積させることにより、図13に示すように、表面電極部16およびその基端部分から連続して電極部材配列板40の面方向に伸びる保持部19からなる電極部材16Aを形成する。
以上において、電極部材配列板40の凹所41の各々およびその周辺部に金属を堆積させる方法としては、金属層50を共通電極として電解メッキ処理、化学メッキ処理、スパッタ処理あるいは蒸着処理などを利用することができるが、電解メッキ処理、化学メッキ処理が好ましく、より好ましくは電解メッキ処理である。
そして、電極部材配列板40の一面からレジスト膜48、金属層50およびレジスト膜47を除去することにより、図14に示すように、電極部材配列板40に、形成すべき電極構造体15のパターンに対応するパターンに従って複数の電極部材16Aが配列されてなる中間複合体40Bが得られる。
【0060】
一方、図15に示すように、円形の金属膜11Aと、この金属膜11Aの表面に一体的に積層された、樹脂よりなる基層13K上に接着性樹脂よりなる表層13Sが一体的に積層されてなる絶縁膜13とを有する積層体10Aを用意する。
この積層体10Aにおいて、金属膜11Aは、形成すべき支持膜11を形成するためのものであって、当該支持膜11と同一の材質であって、当該支持膜11の厚みと同等の厚みを有するものとされる。
また、絶縁膜13における基層13Kを形成する樹脂としては、エッチング可能な高分子材料を用いることが好ましく、より好ましくはポリイミド樹脂である。
また、絶縁膜13における表層13Sを形成する接着性樹脂としては、エッチング可能な高分子材料を用いることが好ましく、より好ましくは熱可塑性ポリイミド樹脂である。 このような積層体10Aは、一面に例えば42合金よりなる金属層が積層された積層ポリイミドシートと、熱可塑性ポリイミドシートとを用意し、積層ポリイミドシートにおける樹脂面上に、熱可塑性ポリイミドシートを配置し、両者を熱圧着処理する方法、上記の積層ポリイミドシートにおける樹脂面に、例えばポリイミドが溶解されたワニスを塗布して乾燥処理する方法などによって得ることができる。
【0061】
このような積層体10Aにおける絶縁膜13の表層13Sに、図16に示すように、中間複合体40Bをその電極部材16Aの各々が対接するよう配置して熱圧着処理することにより、電極部材16Aの各々を絶縁膜13に接着する。このとき、電極部材16Aの各々における保持部19およびこの保持部19が形成された表面電極部16の基端部分は、熱圧着処理による圧力によって、少なくともその一部が絶縁膜13の表層13Sに埋め込まれた状態となる。
【0062】
次いで、積層体10Aにおける金属膜11Aの裏面に、図17に示すように、形成すべき電極構造体15のパターンに対応するパターンに従って複数のパターン孔K1が形成されたレジスト膜14Aを形成し、金属膜11Aに対し、レジスト膜14Aのパターン孔K1を介して露出した部分にエッチング処理を施して当該部分を除去することにより、図18に示すように、金属膜11Aに、それぞれレジスト膜14Aのパターン孔K1に連通する複数の貫通孔17Hが形成される。その後、絶縁膜13に対し、レジスト膜14Aの各パターン孔K1および金属膜11Aの各貫通孔17Hを介して露出した部分にエッチング処理を施して当該部分を除去することにより、図19に示すように、絶縁膜13に、それぞれ金属膜11Aの貫通孔17Hに連通する、当該絶縁膜13の裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状の複数の貫通孔13Hが形成され、以て、積層体10Aに、それぞれ厚み方向に伸びて電極部材16Aにおける表面電極部16に通ずる複数の貫通孔(17Hおよび13H)が形成される。
【0063】
以上において、金属膜11Aをエッチング処理するためのエッチング剤としては、これらの金属層を構成する材料に応じて適宜選択され、例えば塩化第二鉄水溶液を用いることができる。
また、絶縁膜13をエッチング処理するためのエッチング液としては、例えば絶縁膜13がポリイミドよりなるものである場合は、ヒドラジン系水溶液や水酸化カリウム水溶液等を用いることができ、エッチング処理条件を選択することにより、絶縁膜13に、それぞれ裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状の貫通孔13Hを形成することができる。
【0064】
このようにして貫通孔(17Hおよび13H)が形成された積層体10Aからレジスト膜14Aを除去し、その後、図20に示すように、積層体10Aの貫通孔13Hの内壁面に例えばスパッタリングなどによって金属薄層13Mを形成すると共に、当該積層体10Aの金属膜11Aの裏面に、形成すべき電極構造体15における裏面電極部17のパターンに対応するパターンに従って複数のパターン孔K2が形成されたレジスト膜14Bを形成する。ここで、金属膜11Aおよび電極部材16Aは、金属薄層13Mを介して互いに連結された状態である。
次いで、金属膜11Aを共通電極として用い、電極部材16Aにおける表面電極部16の基端面、金属薄層13Mおよび金属膜11Aにおける露出した部分に電解メッキ処理を施して絶縁膜13の貫通孔13H、金属膜11Aの開口11Hおよびレジスト膜14Bのパターン孔K2内に金属を充填することにより、図21に示すように、表面電極部16の各々の基端に連続して絶縁膜11をその厚み方向に貫通して伸びる短絡部18および当該短絡部18の各々の他端に連結された裏面電極部17が形成される。ここで、裏面電極部17の各々は、金属膜11Aを介して互いに連結された状態である。
このようにして短絡部18および裏面電極部17が形成された積層体10Aからレジスト膜14Bを除去することにより、図22に示すように、金属膜11Aの裏面を露出させ、その後、図23に示すように、裏面電極部17および金属膜における支持膜11となる部分を覆うよう、パターニングされたレジスト膜14Cを形成する。そして、金属膜11Aにおける露出した部分にエッチング処理を施すことにより、金属膜11Aにおける露出した部分を除去し、これにより、図24に示すように、互いに分離した複数の裏面電極部17が形成されると共に、検査対象であるウエハに形成された集積回路の電極領域に対応する複数の開口11Hを有する支持膜11が形成される。
そして、レジスト膜14Cを除去すると共に、電極部材配列板40を除去することにより、図1〜図3に示すシート状プローブ10が得られる。
【0065】
このような方法によれば、予め電極部材配列板40の凹所41に表面電極部16および保持部19よりなる電極部材16Aを形成するため、表面電極部16の形状および寸法の制御が容易となり、これにより、径が小さくて突出高さのバラツキが小さい表面電極部16を形成することができる。
また、表面電極部16の基端部分に保持部19を形成することにより、絶縁膜13から脱落することがない電極構造体15を形成することができ、しかも、電極部材16Aを熱圧着処理によって絶縁膜13に接着するため、当該電極部材16Aにおける保持部19は、少なくともその一部が絶縁膜13に埋め込まれた状態となり、これにより、絶縁膜13から剥離することがない保持部19を形成することができる。従って、高い耐久性を有するシート状プローブ10を製造することができる。
また、絶縁膜13に接着された電極部材16Aにおける表面電極部16の基端にメッキ処理することによって短絡部18を形成するため、表面電極部16と短絡部18とは一体に形成され、これにより、両者の間に良好な電気的接続状態が達成される結果、高い導電性を有する電極構造体15を形成することができる。また、表面電極部16と短絡部18とを異なる材料によって形成することができるので、表面電極部16および短絡部18の各々に要求される性能を付与することができる。
【0066】
また、金属膜11Aの表面に絶縁膜13が積層されてなる積層体10Aを用い、当該積層体10Aにおける金属膜11Aをエッチング処理することにより、絶縁膜13を支持する金属よりなる支持膜11を形成することができるので、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハや被検査電極のピッチが極めて小さい回路装置であっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれが確実に防止され、従って、良好な電気的接続状態が安定に維持されるシート状プローブ10を製造することができる。
【0067】
図25は、本発明に係るシート状プローブの第2の例を示す平面図であり、図26は、第2の例のシート状プローブにおける接点膜の要部を拡大して示す平面図、図27は、第2の例のシート状プローブの要部を拡大して示す説明用断面図である。
この第2の例のシート状プローブ10は、例えば複数の集積回路が形成されたウエハについて当該集積回路の各々の電気的検査をウエハの状態で行うために用いられるものであって、第1の例のシート状プローブ10と同様の構成の支持膜11を有する。
【0068】
この支持膜11の表面(図27において上面)上には、その表面に沿って並ぶよう互いに独立した状態で配置された複数(図示の例では9つ)の接点膜12aが、当該支持膜11に一体的に設けられて支持されている。
この接点膜12aの各々は、柔軟な絶縁膜13aを有し、この絶縁膜13aには、当該絶縁膜13aの厚み方向に伸びる複数の電極構造体15が、検査対象であるウエハに形成された一部の集積回路における被検査電極のパターンに対応するパターンに従って、当該絶縁膜13aの面方向に互いに離間して配置されており、当該接点膜12aは、電極構造体15の各々が、支持膜11の各開口11H内に位置するよう配置されている。
電極構造体15の各々は、絶縁膜13aの表面に露出し、当該絶縁膜13aの表面から突出する突起状の表面電極部16と、絶縁膜13aの裏面に露出する矩形の平板状の裏面電極部17と、表面電極部16の基端から連続して前記絶縁膜13aをその厚み方向に貫通して伸びて裏面電極部17に連結された短絡部18と、表面電極部16の基端部分の周面から連続して絶縁膜13aの表面に沿って外方に放射状に伸びる円形リング板状の保持部19とにより構成されており、保持部19は、その一部が絶縁膜13aに埋め込まれている。この例の電極構造体15においては、表面電極部16が、短絡部18に連続して基端から先端に向かうに従って小径となるテーパ状とされて全体が円錐状に形成され、当該表面電極部16の基端に連続する短絡部18が、絶縁膜13aの裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状とされて全体が円錐台状に形成されている。また、短絡部18は、表面電極部16の基端にメッキ処理することによって、当該表面電極部16に連続して一体に形成されている。
この第2の例のシート状プローブ10において、絶縁膜13aの材質および層構成並びに電極構造体15の構成は、第1の例のシート状プローブの絶縁膜13および電極構造体15と同様である。
【0069】
この第2の例のシート状プローブ10は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、前述の第1の例のシート状プローブ10の製造方法と同様にして、図4に示す構成の電極部材配列板40を用い、電極部材16Aを形成する(図10乃至図14参照)と共に、図15に示す構成の積層体10Aから支持膜11および電極構造体15を形成する(図16乃至図24参照。)。
次いで、レジスト膜14Cおよび電極部材配列板40を除去した後、図28に示すように、絶縁膜13の表面、表面電極部16および保持部19に、形成すべき接点膜12aのパターンに対応するパターンに従ってレジスト膜14Dを形成すると共に、支持膜の裏面、絶縁膜13の裏面および裏面電極部17を覆うようレジスト膜14Eを形成し、絶縁膜13に対してエッチング処理を施して露出した部分を除去することにより、絶縁膜13が分割されて、図29に示すように、互いに独立した複数の絶縁膜13aが形成され、これにより、それぞれ絶縁膜13aにその厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体15が配置されてなる複数の接点膜12aが形成される。
そして、絶縁膜13aの表面、表面電極部16および保持部19からレジスト膜14Dを除去すると共に、支持膜11の裏面、絶縁膜13aの裏面および裏面電極部17からレジスト膜14Eを除去することにより、図25〜図27に示す第2の例のシート状プローブ10が得られる。
【0070】
このような第2の例のシート状プローブ10によれば、電極構造体15には、表面電極部16の基端部分に絶縁膜13aの面方向に伸びる保持部19が形成されているため、当該表面電極部16の径が小さいものであっても、当該電極構造体16が絶縁膜13から脱落することがなく、しかも、保持部19は、その一部が絶縁膜13aに埋め込まれているため、当該絶縁部13aから剥離することがなく、従って、高い耐久性が得られる。
また、小さい径の表面電極部16を形成することが可能であることにより、隣接する表面電極部16の間の離間距離が十分に確保されるため、絶縁膜13aによる柔軟性が十分に発揮され、その結果、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができる。
【0071】
また、表面電極部16の基端に対してメッキ処理することによって短絡部18を表面電極部16に連続して一体に形成することにより、高い導電性を有する電極構造体が得られると共に、表面電極部16と短絡部18とを互いに異なる材料により形成することができるので、表面電極部16および短絡部18の各々に要求される性能を付与することができる。例えば、表面電極部18を高硬度の金属によって形成することにより、酸化膜が形成された被検査電極に対しても確実に電気的接続を達成することができる。また、表面電極部16を半田に対して変質しにくい材料よって形成することにより、半田よりなる被検査電極を有する回路装置の検査に使用した場合でも、長期間にわたって安定した導電性が得られる。一方、短絡部18を電気抵抗値の低い金属によって形成することにより高い導電性が得られる。
【0072】
また、支持膜11には,検査対象である回路装置の被検査電極が形成された電極領域に対応して複数の開口11Hが形成され、この支持膜11の表面上には、互いに独立した複数の接点膜12aが、電極構造体15の各々が支持膜11の各開口11H内に位置するよう配置されることにより、接点膜12aの各々は、その全面にわたって支持膜11に支持されるため、当該接点膜12aが大面積のものであっても、その絶縁膜13aの面方向における熱膨張を支持膜11によって確実に規制することができる。従って、検査対象であるウエハが例えば直径が8インチ以上の大面積で被検査電極のピッチが極めて小さいものであっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体17と被検査電極との位置ずれを確実に防止することができ、その結果、ウエハに対する良好な電気的接続状態を安定に維持することができる。
【0073】
図30は、本発明に係るシート状プローブの第3の例を示す平面図であり、図31は、第3の例のシート状プローブにおける接点膜の要部を拡大して示す平面図、図32は、第3の例のシート状プローブの要部を拡大して示す説明用断面図である。
この第3の例のシート状プローブ10は、例えば複数の集積回路が形成されたウエハについて当該集積回路の各々の電気的検査をウエハの状態で行うために用いられるものであって、第1の例のシート状プローブ10と同様の構成の支持膜11を有する。
【0074】
支持膜11の表面上には、複数の接点膜12bが、それぞれ支持膜11の開口11Hの各々を塞ぐよう当該開口縁部に支持された状態で、かつ、隣接する接点膜12bと互いに独立した状態で配置されている。
接点膜12bの各々は、柔軟な絶縁膜13bを有し、当該絶縁膜13bには、当該絶縁膜13bの厚み方向に伸びる金属よりなる複数の電極構造体15が、検査対象であるウエハに形成された一の集積回路の電極領域における被検査電極のパターンに対応するパターンに従って、当該絶縁膜13bの面方向に互いに離間して配置されており、当該接点膜12bは、電極構造体15の各々が、支持膜11の開口11H内に位置するよう配置されている。
電極構造体15の各々は、絶縁膜13bの表面に露出し、当該絶縁膜13bの表面から突出する突起状の表面電極部16と、絶縁膜13bの裏面に露出する矩形の平板状の裏面電極部17と、表面電極部16の基端から連続して前記絶縁膜13bをその厚み方向に貫通して伸びて裏面電極部17に連結された短絡部18と、表面電極部16の基端部分の周面から連続して絶縁膜13bの表面に沿って外方に放射状に伸びる円形リング板状の保持部19とにより構成されており、保持部19は、その一部が絶縁膜13bに埋め込まれている。この例の電極構造体15においては、表面電極部16が、短絡部18に連続して基端から先端に向かうに従って小径となるテーパ状とされて全体が円錐状に形成され、当該表面電極部16の基端に連続する短絡部18が、絶縁膜13bの裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状とされて全体が円錐台状に形成されている。また、短絡部18は、表面電極部16の基端にメッキ処理することによって、当該表面電極部16に連続して一体に形成されている。
この第3の例のシート状プローブ10において、絶縁膜13bの材質および層構成並びに電極構造体15の構成は、第1の例のシート状プローブの絶縁膜13および電極構造体15と同様である。
【0075】
この第3の例のシート状プローブ10は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、前述の第1の例のシート状プローブ10の製造方法と同様にして、図4に示す構成の電極部材配列板40を用い、電極部材16Aを形成する(図10乃至図14参照)と共に、図15に示す構成の積層体10Aから支持膜11および電極構造体15を形成する(図16乃至図24参照。)。
次いで、レジスト膜14Cおよび電極部材配列板40を除去した後、図33に示すように、絶縁膜13の表面、表面電極部16および保持部19に、形成すべき接点膜12bのパターンに対応するパターンに従ってレジスト膜14Fを形成すると共に、支持膜の裏面、絶縁膜13の裏面および裏面電極部17を覆うようレジスト膜14Gを形成し、絶縁膜13に対してエッチング処理を施して露出した部分を除去することにより、絶縁膜13が分割されて、図34に示すように、互いに独立した複数の絶縁膜13bが形成され、これにより、それぞれ絶縁膜13bにその厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体15が配置されてなる複数の接点膜12bが形成される。
そして、絶縁膜13bの表面、表面電極部16および保持部19からレジスト膜14Fを除去すると共に、支持膜11の裏面、絶縁膜13bの裏面および裏面電極部17からレジスト膜14Gを除去することにより、図30〜図32に示す第3の例のシート状プローブ10が得られる。
【0076】
このような第3の例のシート状プローブ10によれば、電極構造体15には、表面電極部16の基端部分に絶縁膜13bの面方向に伸びる保持部19が形成されているため、当該表面電極部16の径が小さいものであっても、当該電極構造体16が絶縁膜13bから脱落することがなく、しかも、保持部19は、その一部が絶縁膜13bに埋め込まれているため、当該絶縁部13bから剥離することがなく、従って、高い耐久性が得られる。
また、小さい径の表面電極部16を形成することが可能であることにより、隣接する表面電極部16の間の離間距離が十分に確保されるため、絶縁膜13bによる柔軟性が十分に発揮され、その結果、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができる。
【0077】
また、表面電極部16の基端に対してメッキ処理することによって短絡部18を表面電極部16に連続して一体に形成することにより、高い導電性を有する電極構造体が得られると共に、表面電極部16と短絡部18とを互いに異なる材料により形成することができるので、表面電極部16および短絡部18の各々に要求される性能を付与することができる。例えば、表面電極部18を高硬度の金属によって形成することにより、酸化膜が形成された被検査電極に対しても確実に電気的接続を達成することができる。また、表面電極部16を半田に対して変質しにくい材料よって形成することにより、半田よりなる被検査電極を有する回路装置の検査に使用した場合でも、長期間にわたって安定した導電性が得られる。一方、短絡部18を電気抵抗値の低い金属によって形成することにより高い導電性が得られる。
【0078】
また、支持膜11には,検査対象であるウエハにおける被検査電極が形成された電極領域に対応して複数の開口11Hが形成されており、これらの開口11Hの各々に配置される接点膜12bは面積の小さいものでよく、面積の小さい接点膜12bは、その絶縁膜13bの面方向における熱膨張の絶対量が小さいため、絶縁膜13bの熱膨張を支持膜11によって確実に規制することが可能となる。従って、検査対象であるウエハが直径が8インチ以上の大面積で被検査電極のピッチが極めて小さいものであっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体17と被検査電極との位置ずれを確実に防止することができ、その結果、ウエハに対する良好な電気的接続状態を安定に維持することができる。
【0079】
〔プローブカードおよび回路装置の検査装置〕
図35は、本発明に係る回路装置の検査装置の一例における構成を示す説明用断面図であり、この回路装置の検査装置は、ウエハに形成された複数の集積回路の各々について、当該集積回路の電気的検査をウエハの状態で行うためのウエハ検査装置である。
この検査装置は、被検査回路装置であるウエハ6の被検査電極7の各々とテスターとの電気的接続を行うプローブカード1を有する。このプローブカード1の裏面(図において上面)には、当該プローブカード1を下方に加圧する加圧板3が設けられ、プローブカード1の下方には、ウエハ6が載置されるウエハ載置台4が設けられており、加圧板3およびウエハ載置台4の各々には、加熱器5が接続されている。
【0080】
プローブカード1は、図36にも拡大して示すように、ウエハ6に形成された全ての集積回路における被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って複数の検査電極21が表面(図において下面)に形成された検査用回路基板20と、この検査用回路基板20の表面上に配置された異方導電性コネクター30と、この異方導電性コネクター30の表面(図において下面)上に配置された、図1に示す構成のシート状プローブ10とにより構成されている。
シート状プローブ10における電極構造体15は、ウエハ6に形成された全ての集積回路における被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って配置されている。
異方導電性コネクター30は、図37に示すように、ウエハ6に形成された全ての集積回路における被検査電極7が配置された電極領域に対応して複数の開口32が形成されたフレーム板31と、このフレーム板31に、それぞれ一の開口32を塞ぐよう配置され、当該フレーム板31の開口縁部に固定されて支持された複数の異方導電性シート35とにより構成されている。異方導電性シート35の各々は、弾性高分子物質によって形成されており、被検査回路装置であるウエハ6に形成された一の電極領域の被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って形成された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電部36と、これらの導電部36の各々を相互に絶縁する絶縁部37とにより構成されている。また、図示の例では、異方導電性シート35の両面には、導電部36およびその周辺部分が位置する個所に、それ以外の表面から突出する突出部38が形成されている。異方導電性シート35における導電部36の各々には、磁性を示す導電性粒子Pが厚み方向に並ぶよう配向した状態で密に含有されている。これに対して、絶縁部37は、導電性粒子Pが全く或いは殆ど含有されていないものである。
そして、異方導電性コネクター30は、検査用回路基板20の表面上に、導電部36の各々が検査電極21上に位置するよう配置され、シート状プローブ10は、異方導電性コネクター30の表面上に、電極構造体15の裏面電極部17の各々が導電部36上に位置するよう配置されている。図示の例では、シート状プローブ10における支持膜11に形成された位置決め孔(図示省略)並びに異方導電性コネクター30におけるフレーム板31に形成された位置決め孔(図示省略)の各々に、ガイドピン2が挿通され、この状態で、シート状プローブ10および異方導電性コネクター30が互いに固定されている。
【0081】
検査用回路基板20を構成する基板材料としては、従来公知の種々の基板材料を用いることができ、その具体例としては、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂、ガラス繊維補強型フェノール樹脂、ガラス繊維補強型ポリイミド樹脂、ガラス繊維補強型ビスマレイミドトリアジン樹脂等の複合樹脂材料、ガラス、二酸化珪素、アルミナ等のセラミックス材料などが挙げられる。
また、WLBI(Wafer Lebel Burn−in)試験を行うための検査装置を構成する場合には、線熱膨張係数が3×10-5/K以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは1×10-7〜1×10-5/K、特に好ましくは1×10-6〜6×10-6/Kである。
このような基板材料の具体例としては、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられる。
【0082】
異方導電性コネクター30におけるフレーム板31を構成する材料としては、当該フレーム板31が容易に変形せず、その形状が安定に維持される程度の剛性を有するものであれば特に限定されず、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料などの種々の材料を用いることができ、フレーム板31を例えば金属材料により構成する場合には、当該フレーム板31の表面に絶縁性被膜が形成されていてもよい。
フレーム板31を構成する金属材料の具体例としては、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、マグネシウム、マンガン、モリブデン、インジウム、鉛、パラジウム、チタン、タングステン、アルミニウム、金、白金、銀などの金属またはこれらを2種以上組み合わせた合金若しくは合金鋼などが挙げられる。
フレーム板31を構成する樹脂材料の具体例としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
また、この検査装置がWLBI試験を行うためのものである場合には、フレーム板31を構成する材料としては、線熱膨張係数が3×10-5/K以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは−1×10-7〜1×10-5/K、特に好ましくは1×10-6〜8×10-6/Kである。
このような材料の具体例としては、インバーなどのインバー型合金、エリンバーなどのエリンバー型合金、スーパーインバー、コバール、42アロイなどの磁性金属の合金または合金鋼などが挙げられる。
フレーム板31の厚みは、その形状が維持されると共に、異方導電性シート35を支持することが可能であれば、特に限定されるものではなく、具体的な厚みは材質によって異なるが、例えば25〜600μmであることが好ましく、より好ましくは40〜400μmである。
【0083】
異方導電性コネクター30における異方導電性シート35の全厚(図示の例では導電部36における厚み)は、50〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは70〜1000μm、特に好ましくは80〜500μmである。この厚みが50μm以上であれば、当該異方導電性シート35には十分な強度が得られる。一方、この厚みが2000μm以下であれば、所要の導電性特性を有する導電部36が確実に得られる。
突出部38の突出高さは、その合計が当該突出部38における厚みの10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上である。このような突出高さを有する突出部38を形成することにより、小さい加圧力で導電部36が十分に圧縮されるため、良好な導電性が確実に得られる。
また、突出部38の突出高さは、当該突出部38の最短幅または直径の100%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以下である。このような突出高さを有する突出部38を形成することにより、当該突出部38が加圧されたときに座屈することがないため、所期の導電性が確実に得られる。
【0084】
異方導電性シート35を形成する弾性高分子物質としては、架橋構造を有する耐熱性の高分子物質が好ましい。かかる架橋高分子物質を得るために用いることができる硬化性の高分子物質形成材料としては、種々のものを用いることができるが、液状シリコーンゴムが好ましい。
液状シリコーンゴムは、付加型のものであっても縮合型のものであってもよいが、付加型液状シリコーンゴムが好ましい。この付加型液状シリコーンゴムは、ビニル基とSi−H結合との反応によって硬化するものであって、ビニル基およびSi−H結合の両方を含有するポリシロキサンからなる一液型(一成分型)のものと、ビニル基を含有するポリシロキサンおよびSi−H結合を含有するポリシロキサンからなる二液型(二成分型)のものがあるが、本発明においては、二液型の付加型液状シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0085】
異方導電性シート35を液状シリコーンゴムの硬化物(以下、「シリコーンゴム硬化物」という。)によって形成する場合において、当該シリコーンゴム硬化物は、その150℃における圧縮永久歪みが10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。この圧縮永久歪みが10%を超える場合には、得られる異方導電性コネクターを多数回にわたって繰り返し使用したとき或いは高温環境下において繰り返し使用したときには、導電部36に永久歪みが発生しやすく、これにより、導電部36における導電性粒子Pの連鎖に乱れが生じる結果、所要の導電性を維持することが困難となる。
ここで、シリコーンゴム硬化物の圧縮永久歪みは、JIS K 6249に準拠した方法によって測定することができる。
【0086】
また、シリコーンゴム硬化物は、その23℃におけるデュロメーターA硬度が10〜60のものであることが好ましく、さらに好ましくは15〜55、特に好ましくは20〜50のものである。
このデュロメーターA硬度が10未満である場合には、加圧されたときに、導電部36を相互に絶縁する絶縁部37が過度に歪みやすく、導電部36間の所要の絶縁性を維持することが困難となることがある。一方、このデュロメーターA硬度が60を超える場合には、導電部36に適正な歪みを与えるために相当に大きい荷重による加圧力が必要となるため、被検査回路装置であるウエハに大きな変形や破壊が生じやすくなる。
また、シリコーンゴム硬化物として、デュロメーターA硬度が上記の範囲外のものを用いる場合には、得られる異方導電性コネクターを多数回にわたって繰り返し使用したときには、導電部36に永久歪みが発生しやすく、これにより、導電部36における導電性粒子の連鎖に乱れが生じる結果、所要の導電性を維持することが困難となる。
【0087】
また、WLBI試験を行うための検査装置を構成する場合には、異方導電性シート35を形成するシリコーンゴム硬化物は、その23℃におけるデュロメーターA硬度が25〜40のものであることが好ましい。
シリコーンゴム硬化物として、デュロメーターA硬度が上記の範囲外のものを用いる場合には、WLBI試験を繰り返し行ったときに、導電部36に永久歪みが発生しやすく、これにより、導電部36における導電性粒子の連鎖に乱れが生じる結果、所要の導電性を維持することが困難となる。
ここで、シリコーンゴム硬化物のデュロメーターA硬度は、JIS K 6249に準拠した方法によって測定することができる。
【0088】
また、シリコーンゴム硬化物は、その23℃における引き裂き強度が8kN/m以上のものであることが好ましく、さらに好ましくは10kN/m以上、より好ましくは15kN/m以上、特に好ましくは20kN/m以上のものである。この引き裂き強度が8kN/m未満である場合には、異方導電性シート35に過度の歪みが与えられたときに、耐久性の低下を起こしやすい。
ここで、シリコーンゴム硬化物の引き裂き強度は、JIS K 6249に準拠した方法によって測定することができる。
【0089】
本発明においては、付加型液状シリコーンゴムを硬化させるために適宜の硬化触媒を用いることができる。このような硬化触媒としては、白金系のものを用いることができ、その具体例としては、塩化白金酸およびその塩、白金−不飽和基含有シロキサンコンプレックス、ビニルシロキサンと白金とのコンプレックス、白金と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとのコンプレックス、トリオルガノホスフィンあるいはホスファイトと白金とのコンプレックス、アセチルアセテート白金キレート、環状ジエンと白金とのコンプレックスなどの公知のものが挙げられる。
硬化触媒の使用量は、硬化触媒の種類、その他の硬化処理条件を考慮して適宜選択されるが、通常、付加型液状シリコーンゴム100重量部に対して3〜15重量部である。
また、付加型液状シリコーンゴム中には、付加型液状シリコーンゴムのチクソトロピー性の向上、粘度調整、導電性粒子の分散安定性の向上、或いは高い強度を有する基材を得ることなどを目的として、必要に応じて、通常のシリカ粉、コロイダルシリカ、エアロゲルシリカ、アルミナなどの無機充填材を含有させることができる。
【0090】
導電部36に含有される導電性粒子Pとしては、磁性を示す芯粒子(以下、「磁性芯粒子」ともいう。)の表面に高導電性金属が被覆されてなるものを用いることが好ましい。 ここで、「高導電性金属」とは、0℃における導電率が5×106 Ω-1-1以上のものをいう。
【0091】
導電性粒子Pを得るための磁性芯粒子は、その数平均粒子径が3〜40μmのものであることが好ましい。
ここで、磁性芯粒子の数平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定されたものをいう。
上記数平均粒子径が3μm以上であれば、加圧変形が容易で、抵抗値が低くて接続信頼性の高い導電部36が得られやすい。一方、上記数平均粒子径が40μm以下であれば、微細な導電部36を容易に形成することができ、また、得られる導電部36は、安定な導電性を有するものとなりやすい。
また、磁性芯粒子は、そのBET比表面積が10〜500m2 /kgであることが好ましく、より好ましくは20〜500m2 /kg、特に好ましくは50〜400m2 /kgである。
このBET比表面積が10m2 /kg以上であれば、当該磁性芯粒子はメッキ可能な領域が十分に大きいものであるため、当該磁性芯粒子に所要の量のメッキを確実に行うことができ、従って、導電性の大きい導電性粒子Pを得ることができると共に、当該導電性粒子P間において、接触面積が十分に大きいため、安定で高い導電性が得られる。一方、このBET比表面積が500m2 /kg以下であれば、当該磁性芯粒子が脆弱なものとならず、物理的な応力が加わった際に破壊することが少なく、安定で高い導電性が保持される。
また、磁性芯粒子は、その粒子径の変動係数が50%以下のものであることが好ましく、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下のものである。
ここで、粒子径の変動係数は、式:(σ/Dn)×100(但し、σは、粒子径の標準偏差の値を示し、Dnは、粒子の数平均粒子径を示す。)によって求められるものである。
上記粒子径の変動係数が50%以下であれば、粒子径の均一性が大きいため、導電性のバラツキの小さい導電部36を形成することかできる。
磁性芯粒子を構成する材料としては、鉄、ニッケル、コバルト、これらの金属を銅、樹脂によってコーティングしたものなどを用いことができるが、その飽和磁化が0.1Wb/m2 以上のものを好ましく用いることができ、より好ましくは0.3Wb/m2 以上、特に好ましくは0.5Wb/m2 以上のものであり、具体的には、鉄、ニッケル、コバルトまたはそれらの合金などが挙げられる。
【0092】
磁性芯粒子の表面に被覆される高導電性金属としては、金、銀、ロジウム、白金、クロムなどを用いることができ、これらの中では、化学的に安定でかつ高い導電率を有する点で金を用いるが好ましい。
【0093】
導電性粒子Pは、芯粒子に対する高導電性金属の割合〔(高導電性金属の質量/芯粒子の質量)×100〕が15質量%以上とされ、好ましくは25〜35質量%とされる。
高導電性金属の割合が15質量%未満である場合には、得られる異方導電性コネクターを高温環境下に繰り返し使用したとき、当該導電性粒子Pの導電性が著しく低下する結果、所要の導電性を維持することができない。
また、導電性粒子Pは、そのBET比表面積が10〜500m2 /kgであることが好ましい。
このBET比表面積が10m2 /kg以上であれば、被覆層の表面積が十分に大きいものであるため、高導電性金属の総重量が大きい被覆層を形成することができ、従って、導電性の大きいを粒子を得ることができると共に、当該導電性粒子P間において、接触面積が十分に大きいため、安定で高い導電性が得られる。一方、このBET比表面積が500m2 /kg以下であれば、当該導電性粒子が脆弱なものとならず、物理的な応力が加わった際に破壊することが少なく、安定で高い導電性が保持される。
また、導電性粒子Pの数平均粒子径は、3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは6〜25μmである。
このような導電性粒子Pを用いることにより、得られる異方導電性シート35は、加圧変形が容易なものとなり、また、導電部36において導電性粒子P間に十分な電気的接触が得られる。
また、導電性粒子Pの形状は、特に限定されるものではないが、高分子物質形成材料中に容易に分散させることができる点で、球状のもの、星形状のものあるいはこれらが凝集した2次粒子による塊状のものであることが好ましい。
【0094】
導電性粒子Pの含水率は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。このような条件を満足することにより、異方導電性シート35の形成において、硬化処理する際に気泡が生ずることが防止または抑制される。
また、導電性粒子Pは、その表面がシランカップリング剤などのカップリング剤で処理されたものあってもよい。導電性粒子Pの表面がカップリング剤で処理されることにより、当該導電性粒子Pと弾性高分子物質との接着性が高くなり、その結果、得られる異方導電性シート35は、繰り返しの使用における耐久性が高いものとなる。
カップリング剤の使用量は、導電性粒子Pの導電性に影響を与えない範囲で適宜選択されるが、導電性粒子Pの表面におけるカップリング剤の被覆割合(導電性粒子の表面積に対するカップリング剤の被覆面積の割合)が5%以上となる量であることが好ましく、より好ましくは上記被覆率が7〜100%、さらに好ましくは10〜100%、特に好ましくは20〜100%となる量である。
【0095】
このような導電性粒子Pは、例えば以下の方法によって得ることができる。
先ず、強磁性体材料を常法により粒子化し或いは市販の強磁性体粒子を用意し、この粒子に対して分級処理を行うことにより、所要の粒子径を有する磁性芯粒子を調製する。
ここで、粒子の分級処理は、例えば空気分級装置、音波ふるい装置などの分級装置によって行うことができる。
また、分級処理の具体的な条件は、目的とする磁性芯粒子の数平均粒子径、分級装置の種類などに応じて適宜設定される。
次いで、磁性芯粒子の表面を酸によって処理し、更に、例えば純水によって洗浄することにより、磁性芯粒子の表面に存在する汚れ、異物、酸化膜などの不純物を除去し、その後、当該磁性芯粒子の表面に高導電性金属を被覆することによって、導電性粒子が得られる。
ここで、磁性芯粒子の表面を処理するために用いられる酸としては、塩酸などを挙げることができる。
高導電性金属を磁性芯粒子の表面に被覆する方法としては、無電解メッキ法、置換メッキ法等を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0096】
無電解メッキ法または置換メッキ法によって導電性粒子を製造する方法について説明すると、先ず、メッキ液中に、酸処理および洗浄処理された磁性芯粒子を添加してスラリーを調製し、このスラリーを攪拌しながら当該磁性芯粒子の無電解メッキまたは置換メッキを行う。次いで、スラリー中の粒子をメッキ液から分離し、その後、当該粒子を例えば純水によって洗浄処理することにより、磁性芯粒子の表面に高導電性金属が被覆されてなる導電性粒子が得られる。
また、磁性芯粒子の表面に下地メッキを行って下地メッキ層を形成した後、当該下地メッキ層の表面に高導電性金属よりなるメッキ層を形成してもよい。下地メッキ層およびその表面に形成されるメッキ層を形成する方法は、特に限定されないが、無電解メッキ法により、磁性芯粒子の表面に下地メッキ層を形成し、その後、置換メッキ法により、下地メッキ層の表面に高導電性金属よりなるメッキ層を形成することが好ましい。
無電解メッキまたは置換メッキに用いられるメッキ液としては、特に限定されるものではなく、種々の市販のものを用いることができる。
【0097】
また、磁性芯粒子の表面に高導電性金属を被覆する際に、粒子が凝集することにより、粒子径の大きい導電性粒子が発生することがあるため、必要に応じて、導電性粒子の分級処理を行うことが好ましく、これにより、所期の粒子径を有する導電性粒子が確実に得られる。
導電性粒子の分級処理を行うための分級装置としては、前述の磁性芯粒子を調製するための分級処理に用いられる分級装置として例示したものを挙げることができる。
【0098】
導電部36における導電性粒子Pの含有割合は、体積分率で10〜60%、好ましくは15〜50%となる割合で用いられることが好ましい。この割合が10%未満の場合には、十分に電気抵抗値の小さい導電部36が得られないことがある。一方、この割合が60%を超える場合には、得られる導電部36は脆弱なものとなりやすく、導電部36として必要な弾性が得られないことがある。
【0099】
以上のような異方導電性コネクターは、例えば特開2002−324600号公報に記載された方法によって製造することができる。
【0100】
上記の検査装置においては、ウエハ載置台4上に検査対象であるウエハ6が載置され、次いで、加圧板3によってプローブカード1が下方に加圧されることにより、そのシート状プローブ10の電極構造体15における表面電極部16の各々が、ウエハ6の被検査電極7の各々に接触し、更に、当該表面電極部16の各々によって、ウエハ6の被検査電極7の各々が加圧される。この状態においては、異方導電性コネクター30の異方導電性シート35における導電部36の各々は、検査用回路基板20の検査電極21とシート状プローブ10の電極構造体15の裏面電極部17とによって挟圧されて厚み方向に圧縮されており、これにより、当該導電部36にはその厚み方向に導電路が形成され、その結果、ウエハ6の被検査電極7と検査用回路基板20の検査電極21との電気的接続が達成される。その後、加熱器5によって、ウエハ載置台4および加圧板3を介してウエハ6が所定の温度に加熱され、この状態で、当該ウエハ6における複数の集積回路の各々について所要の電気的検査が実行される。
【0101】
上記のプローブカード1によれば、以下の効果が奏される。
(1)図1に示すシート状プローブ10を具えてなるため、小さいピッチで被検査電極7が形成されたウエハ6に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、シート状プローブ10における電極構造体15が脱落することがないので、高い耐久性が得られる。
(2)シート状プローブ10における接点膜12全体が支持膜11に支持されているため、温度変化による電極構造体15と被検査電極7との位置ずれを確実に防止することができる。
また、異方導電性コネクター30におけるフレーム板31の開口32の各々は、検査対象であるウエハ6における全ての集積回路の被検査電極7が形成された電極領域に対応して形成されており、当該開口32の各々に配置される異方導電性シート35は面積が小さいものでよく、面積の異方導電性シート35は、その面方向における熱膨張の絶対量が少ないため、異方導電性シート35の面方向における熱膨張がフレーム板31によって確実に規制される結果、温度変化による導電部36と電極構造体15および検査電極21との位置ずれを確実に防止することができる。
従って、検査対象であるウエハ6が直径が8インチ以上の大面積で被検査電極のピッチが極めて小さいものであっても、バーンイン試験において、ウエハに対する良好な電気的接続状態を安定に維持することができる。
【0102】
そして、このようなプローブカード1を有する検査装置によれば、小さいピッチで被検査電極7が形成されたウエハ6に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、プローブカード1が高い耐久性を有するため、多数のウエハの検査を行う場合でも、長期間にわたって信頼性の高い検査を実行することができ、更に、ウエハ6が、直径が8インチ以上の大面積で被検査電極7のピッチが極めて小さいものであっても、バーンイン試験において、ウエハ6に対する良好な電気的接続状態を安定に維持することができ、ウエハ6における複数の集積回路の各々について所要の電気的検査を確実に実行することができる。
【0103】
本発明の回路装置の検査装置は、上記の例のウエハ検査装置に限定されず、以下のように、種々の変更を加えることが可能である。
(1)図35および図36に示すプローブカード1は、ウエハ6に形成された全ての集積回路の被検査電極7に対して一括して電気的接続を達成するものであるが、ウエハ6に形成された全ての集積回路の中から選択された複数の集積回路の被検査電極7に電気的に接続されるものであってもよい。選択される集積回路の数は、ウエハ6のサイズ、ウエハ6に形成された集積回路の数、各集積回路における被検査電極の数などを考慮して適宜選択され、例えば16個、32個、64個、128個である。
このようなプローブカード1を有する検査装置においては、ウエハ6に形成された全ての集積回路の中から選択された複数の集積回路の被検査電極7に、プローブカード1を電気的に接続して検査を行い、その後、他の集積回路の中から選択された複数の集積回路の被検査電極7に、プローブカード1を電気的に接続して検査を行う工程を繰り返すことにより、ウエハ6に形成された全ての集積回路の電気的検査を行うことができる。
そして、このような検査装置によれば、直径が8インチまたは12インチのウエハに高い集積度で形成された集積回路について電気的検査を行う場合において、全ての集積回路について一括して検査を行う方法と比較して、用いられる検査用回路基板の検査電極数や配線数を少なくすることができ、これにより、検査装置の製造コストの低減化を図ることができる。
【0104】
(2)シート状プローブ10においては、図38に示すように、支持膜11の周縁部にリング状の保持部材60が設けられていてもよい。
このような保持部材60を構成する材料としては、インバー、スーパーインバーなどのインバー型合金、エリンバーなどのエリンバー型合金、コバール、42アロイなどの低熱膨張金属材料、またはアルミナ、炭化珪素、窒化珪素などのセラミックス材料などを用いることができる。
【0105】
(3)表面電極部16の形状は円錐形に限られるものでなく、例えは円錐台状、角錐状、角錐台状、その他の形状であってもよいが、ウエハの被検査電極に対して小さい加圧力で安定した電気的接続が達成される点で、円錐状、角錐状などの錐状の形状が好ましい。表面電極部16の形状は、電極部材配列板40の凹所41の形状を変えることによって変更することができる。
例えば電極部材配列板40に角錐状の凹所41を形成するためには、配列板形成材料40Aの表面に形成されるレジスト膜45のパターン孔45Kの形状を多角形とすればよい。
また、電極部材配列板40に錐台状の凹所41を形成するためには、配列板形成材料40Aに一旦錐状の凹所を形成し、この凹所内に適量の液状レジスト等を充填し硬化させればよい。
【0106】
(4)異方導電性コネクター30における異方導電性シート35には、被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って形成された導電部36の他に、被検査電極7に電気的に接続されない非接続用の導電部が形成されていてもよい。
(5)本発明の検査装置は、ウエハ検査装置に限定されるものではなく、半導体チップや、BGA、CSPなどのパッケージLSI、MCMなどの半導体集積回路装置などに形成された回路の検査装置として構成することができる。
【0107】
(6)シート状プローブの製造方法においては、電極部材配列板に電極部材を形成した後、当該電極部材配列板の表面に形成された金属層を除去せずに、当該電極部材を絶縁膜に圧着することにより、当該金属層を共通電極として、短絡部を電解メッキにより形成することができる。このような方法において、圧着処理によって絶縁膜に接着した金属層は、エッチング処理によって除去することができる。
(7)電極部材16Aと、短絡部18および裏面電極部17とは、それぞれ同一のメッキ法によって形成しても異なるメッキ法によって形成してもよい。例えば電極部材16Aを電解ニッケルメッキによって形成することにより、硬質なニッケルメッキによる表面電極部16が得られると共に、短絡部18および裏面電極部17を化学ニッケルメッキによって形成することにより、硬度の比較的に低い短絡部18および裏面電極部17が得られ、これにより、互いに物性の異なる表面電極部16と短絡部18および裏面電極部17とを構成することができる。
(8)電極部材16Aと短絡部18および裏面電極部17と、互いに同一の金属を主体とし、その他の微量金属成分が互いに異なる合金により形成することができる。例えば電極部材16Aを、ニッケルにコバルト等を添加された合金によって形成することにより、硬質な表面電極部16が得られると共に、短絡部18および裏面電極部17をニッケルによって形成することにより、硬度の比較的に低い短絡部18および裏面電極部17が得られ、これにより、互いに物性の異なる表面電極部16と短絡部18および裏面電極部17とを構成することができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
〔試験用ウエハの作製〕
図44に示すように、直径が8インチのシリコン(線熱膨張係数3.3×10-6/K)製のウエハ6上に、それぞれ寸法が6.5mm×6.5mmの正方形の集積回路Lを合計で393個形成した。ウエハ6に形成された集積回路Lの各々は、図45に示すように、その中央に被検査電極領域Aを有し、この被検査電極領域Aには、図46に示すように、それぞれ50μm×50μmの矩形の50個のアルミニウムよりなる被検査電極7が120μmのピッチで横方向に一列に配列されている。
また、図47に示すように、集積回路における被検査電極7が配置された個所以外の領域には、厚みが約10μmのポリイミドよりなる絶縁層8が形成されている。
このウエハ6全体の被検査電極7の総数は19650個であり、被検査電極7は、集積回路Lにおける50個の被検査電極のうち最も外側の被検査電極7から数えて1個おきに2個ずつを互いに電気的に接続されている。
以下、このウエハを「試験用ウエハW」という。
【0110】
〈実施例1〉
(1)電極部材配列板の作製:
両面に厚みが750オングストロームの二酸化珪素(SiO2 )よりなる保護膜(42,43)が形成された、単結晶シリコンよりなる結晶面(1,0,0)を表面とする直径が200mmのシリコンウエハよりなる配列板形成材料(40A)を用意した(図5参照)。
この配列板形成材料(40A)に形成された保護膜(42,43)の各々の表面に、ネガ型厚膜フォトレジスト「THB−124N」(JSR(株)製)を塗布し、この塗布膜に対して、オーブンによって100℃で15分間の条件でプリベークを行うことにより、厚みが15μmのレジスト膜(45、46)を形成した(図6参照)。
次いで、レジスト膜(45)に対して、フォトマスクを介して高圧水銀灯を用いて1500mJ/cm2 (365nm)の紫外線を照射することによって露光処理を行い、その後、0.5容量%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液に90秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって現像処理を行い、更に、130℃で20分間の条件でポストベークを行った後、2000mJ/cm2 (365nm)でポスト露光を行うことにより、試験用ウエハWに形成された被検査電極のパターンに対応するパターンに従って、縦方向の寸法が50μm、横方向の寸法が50μmの矩形のパターン孔45Kを形成した(図7参照)。一方、レジスト膜(46)に対しては、その全面に上記と同様の露光処理を行い、その後、130℃、20分間の条件でポストベークを行った。
次いで、レジスト膜(45、46)が形成された配列板形成材料(40A)を4.6容量%のフッ酸水溶液に室温で10分間浸漬させ、配線板形成材料(40A)の一面に形成された保護膜(42)に、レジスト膜(45)のパターン孔(45K)を介してエッチング処理を施すことにより、当該保護膜(42)にレジスト膜(45)のパターン孔(45K)に連通するパターン孔(42K)を形成した(図8参照)。その後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を2容量%含有するDMSO(ジメチルスルホキシド)溶液に、40℃で2分間浸漬させることにより、保護膜(42,43)の表面に形成されたレジスト膜(45,46)を溶解除去した。
そして、配列板形成材料(40A)に対して、保護膜(42,43)をレジストとして利用し、当該保護膜(42)のパターン孔(42K)を介して異方性エッチング処理を行うことにより、配列板形成材料(40A)に、その表面における開口の縦方向の寸法が50μm、横方向の寸法が50μm、深さが35μm、表面に対するテーパ面の角度が47°の角錐状の凹所(41)を形成した(図4参照)。
以上において、異方性エッチング処理は、40重量%の水酸化カリウムを80℃に加温した水溶液に40分間振とう、浸漬させることにより行った。
このようにして、製造すべきシート状プローブにおける表面電極部のパターンに対応するパターンに従って凹所(41)が形成された電極部材配列板(40)を得た。
【0111】
(2)中間複合体の作製:
電極部材配列板(40)における凹所(41)が形成された一面に、ネガ型厚膜フォトレジスト「THB−124N」(JSR(株)製)を厚みが25μmとなるように塗布し、この塗布膜に対して、オーブンによって100℃で20分間の条件でプリベークを行い、得られた塗膜に、フォトマスクを介して高圧水銀灯を用いて1700mJ/cm2 (365nm)の紫外線を照射することによって露光処理を行った。その後、塗膜が形成された電極部材配列板(40)を0.5容量%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液に120秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって、塗膜の現像処理を行った。そして、130℃で20分間のポストベークを行い、更に、2500mJ/cm2 (365nm)の紫外線を照射してポスト露光処理を行うことにより、電極部材配列板(40)の凹所(41)に連通する横方向の寸法が70μm、縦方向の寸法が220μmの矩形のパターン孔(47K)を有する厚み10μmのレジスト膜(47)を形成した(図10参照)。
次いで、レジスト膜(47)の表面および電極部材配列板(40)の一面におけるレジスト膜(47)のパターン孔(47K)によって露出した領域に、スパッタリング装置(アネルバ(株)製)を用いて0.25kWで15分間の条件でスパッタ処理を行うことにより、銅よりなる金属層(50)を形成した(図11参照)。そして、金属層(50)の表面に、ネガ型厚膜フォトレジスト「THB−124N」(JSR(株)製)を厚み25μmとなるように塗布し、この塗布膜に対して、オーブンによって100℃で20分間の条件でプリベークを行い、得られた塗膜に、フォトマスクを介して高圧水銀灯を用いて1700mJ/cm2 (365nm)の紫外線を照射することによって露光処理を行った。その後、当該塗膜が形成された電極部材配列板(40)を0.5容量%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液に120秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって、塗膜の現像処理を行った。そして、130℃で20分間の条件でポストベークを行い、更に、2500mJ/cm2 (365nm)の紫外線を照射してポスト露光を行うことにより、金属層(50)におけるレジスト膜(47)上に位置する部分に、当該レジスト膜(47)の各パターン孔(47K)に連通するパターン孔(48K)を有するレジスト膜(48)を形成した(図12参照)。
次いで、当該レジスト膜(48)が形成された電極部材配列板(40)を、硬質ニッケル(ニッケル−リン合金)被膜形成用のメッキ液「ナイホロイ プロセス」(キザイ(株)製)に浸漬させ、電極部材配列板(40)の表面に形成された金属層(50)を共通電極とし、55℃、2A/dm2 、35分間の条件で電解メッキ処理を施すことにより、表面電極部(16)およびその基端部分から連続して電極部材配列板(40)の面方向に伸びる厚みが10μmの保持部(19)により構成された、ニッケル−リン合金よりなる電極部材(16A)を形成した。
そして、電極部材配列板(40)をTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)が2容量%含有されたDMSO(ジメチルスルホキシド)溶液に、40℃で5分間浸漬させることにより、当該電極部材配列板(40)の一面からレジスト膜(48)、金属層(50)およびレジスト膜(47)を除去することにより、電極部材配列板(40)に、形成すべき電極構造体のパターンに対応するパターンに従って複数の電極部材(16A)が配列されてなる中間複合体(40B)を作製した(図14参照)。
【0112】
(3)積層体の作製:
厚みが10μmで直径が22cmの42アロイよりなる円形の金属膜(11A)と、直径が20cmで厚みが25μmの円形のポリイミドシートとが一体的に積層されてなる積層ポリイミドシートを用意し、この積層ポリイミドシートの金属膜(11A)の周縁部分におけるポリイミドシートが積層された一面に、内径が20.4cmで、外径が22cmのポリエチレンテレフタレートよりなる保護テープを配置した。そして、ポリイミドシートの表面に、ポリイミドワニス(宇部興産社製 商品名「U- ワニス」)を塗布して乾燥処理する操作を繰り返すことにより、金属膜(11A)と、この金属膜(11A)の表面に一体的に積層された、ポリイミド樹脂よりなる基層(13K)上に厚みが15μmの接着性のポリイミド樹脂よりなる表層(13S)が一体的に積層されてなる絶縁膜(13)とを有する積層体(10A)を作製した(図15参照)。
この積層体(10A)における絶縁膜(13)の表層(13S)に、中間複合体(40B)をその電極部材(16A)の各々が対接するよう配置し、この状態で熱圧着処理することにより、電極部材(16A)の各々を絶縁膜(13)に接着した(図16参照)。熱圧着処理後における絶縁膜(13)の厚みは37μmであった。
【0113】
(4)シート状プローブの製造:
積層体(10A)における金属膜(11A)の裏面に、厚みが25μmのドライフィルムレジスト「H−K350」(日立化成製)によって、試験用ウエハWに形成された被検査電極のパターンに対応するパターンに従って直径が80μmの円形の19650個のパターン孔(K1)が形成されたレジスト膜(14A)を形成した(図17参照)。ここで、レジスト膜(14A)の形成において、露光処理は、高圧水銀灯によって80mJの紫外線を照射することによって行い、現像処理は、1%水酸化ナトリウム水溶液よりなる現像剤に40秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって行った。
次いで、金属膜(11A)におけるレジスト膜(14A)のパターン孔(K1)を介して露出した部分に、塩化第二鉄系エッチング液を用い、50℃、30秒間の条件でエッチング処理を施して当該部分を除去することにより、金属膜(11A)に、それぞれレジスト膜(14A)のパターン孔(K1)に連通する19650個のパターン孔(17H)を形成した(図18参照)。その後、絶縁膜(13)に対し、アミン系ポリイミドエッチング液「TPE−3000」(東レエンジニアリング株式会社製)を用い、80℃、15分間の条件でエッチング処理を施すことにより、絶縁膜(13)に、それぞれ金属膜(11A)のパターン孔(17H)に連通した19650個の貫通孔(13H)を形成した(図19参照)。この貫通孔(13H)の各々は、絶縁膜(13)の裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状のものであって、裏面側の開口径が80μm、表面側の開口径が35μmのものであった。
【0114】
次いで、貫通孔(13H)が形成された積層体(10A)を、45℃の水酸化ナトリウム溶液に2分間浸漬させることにより、積層体(10A)からレジスト膜(14A)を除去した。その後、積層体(10A)に対して、スパッタリング装置(アネルバ(株)製)を用いて、0.25kWで15分間の条件でスパッタ処理を行うことにより、積層体(10A)の貫通孔(13H)の内壁面に銅よりなる金属薄層(13M)を形成した。そして、積層体(10A)の金属膜(11A)の裏面全面を覆うよう、厚みが25μmのドライフィルムレジスト「H−K350」(日立化成製)を配置して露光処理および現像処理を施すことにより、金属膜(11A)の裏面に、絶縁膜(13)の貫通孔(13H)に連通する寸法が200μm×80μmの矩形の19650個のパターン孔(K2)を有するレジスト膜(14B)を形成した(図20参照)。ここで、レジスト膜(14B)の形成において、露光処理は、高圧水銀灯によって80mJの紫外線を照射することにより行い、現像処理は、1%水酸化ナトリウム水溶液よりなる現像剤に40秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって行った。
次いで、積層体(10A)をスルファミン酸ニッケルを含有するメッキ浴中に浸漬し、当該積層体(10A)に対し、金属膜(11A)を電極として電解メッキ処理を施して絶縁膜(13)の貫通孔(13H)、金属膜(11A)のパターン孔(17H)およびレジスト膜(14B)のパターン孔(K2)内に金属を充填することにより、表面電極部(16)の基端に連続して絶縁膜(13)の厚み方向に伸びる短絡部(18)およびこの短絡部(18)に連結された裏面電極部(17)を形成し、以て、電極構造体(15)を形成した(図21参照)。
【0115】
次いで、電極構造体(15)が形成された積層体(10A)を、45℃の水酸化ナトリウム溶液に2分間浸漬させることにより、当該積層体(10A)からレジスト膜(14B)を除去した(図22参照)。その後、裏面電極部(17)を含む金属膜(11A)の裏面全面を覆うよう、厚みが25μmのドライフィルムレジスト「H−K350」(日立化成製)を配置して露光処理および現像処理を施すことにより、金属膜(11A)における支持膜となる部分および裏面電極部(17)を覆うよう、パターニングされたレジスト膜(14C)を形成した(図23参照)。ここで、レジスト膜(14C)の形成において、露光処理は、高圧水銀灯によって80mJの紫外線を照射することにより行い、現像処理は、1%水酸化ナトリウム水溶液よりなる現像剤に40秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって行った。
そして、金属膜(11A)における露出した部分に、アンモニア系エッチング液を用い、50℃で30秒間の条件でエッチング処理を施して当該部分を除去することにより、裏面電極部(17)の各々を互いに分離させると共に、試験用ウエハWに形成された集積回路における電極領域のパターンに対応するパターンに従って形成された393個の開口(11H)を有する支持膜(11)を形成した(図24参照)。ここで、支持膜(11)の開口(11H)の各々の寸法は、横方向が3600μm、縦方向が1000μmであった。
【0116】
次いで、支持膜(11)が形成された積層体(10A)を45℃の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬することにより、支持膜(11)の裏面および裏面電極部(17)からレジスト膜(14C)を除去し、その後、電極部材配列板(40)を除去した。その後、厚みが25μmのドライフィルムレジスト「H−K350」(日立化成製)によって、支持膜(11)の裏面、絶縁膜(13)の裏面および裏面電極部(17)を覆うよう、レジスト膜(14G)を形成した。一方、絶縁膜(13)の表面、表面電極部(16)および保持部(19)を覆うよう、厚みが25μmのドライフィルムレジスト「H−K350」(日立化成製)を配置して露光処理およひ現像処理を施すことにより、形成すべき接点膜(12b)のパターンに対応するパターンに従ってパターニングされたレジスト膜(14F)を形成した(図33参照)。
次いで、絶縁膜(13)に対して、アミン系ポリイミドエッチング液(東レエンジニアリング株式会社製、「TPE−3000」)を用い、80℃、10分間の条件でエッチング処理を施すことにより、絶縁膜(13)を分割して互いに独立した393個の絶縁膜(13b)を形成し、以て、393個の接点膜(12b)を形成した(図34参照)。その後、45℃の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬することにより、レジスト膜(14F)およびレジスト膜(14G)を除去した。
そして、支持膜(11)における周縁部分から保護テープを除去し、支持膜(11)における周縁部分の表面に、2液型アクリル接着剤「Y−620」(セメダイン(株)製)を塗布し、外径が22cm、内径が20.5cmで、厚みが2mmのリング状の窒化シリコンよりなる保持部材を配置し、保持部材と支持膜(11)とを50kgの荷重で加圧して25℃で8時間保持することにより、保持部材を支持膜(11)に固定することにより、本発明に係るシート状プローブ(10)を製造した(図30乃至図32参照)。
【0117】
得られたシート状プローブ(10)の各部の形状および寸法は、以下のとおりであった。
絶縁膜(13b)は、横方向の寸法が4800μm、縦方向の寸法が2000μm、全体の厚みが約37μmで、基層(13K)の厚みが25μm、表層(13S)の厚みが約12μmであった。
電極構造体(15)の表面電極部(16)の形状は四角錐状で、その基端の寸法(R1)が50μm×50μm、突出高さ(h)が35μmであった。短絡部(18)の形状は円錐台状で、その表面側の一端の径(R3 )が35μm、裏面側の他端の径(R4 )が80μmであった。裏面電極部(17)の形状は矩形の平板状で、その横幅(R5 )が80μm、縦幅が200μm、厚み(D2 )が35μmであった。保持部(19)の形状は矩形の平板状で、その横幅(R6 )が80μm、縦幅が220μm、その厚み(D1 )が10μmであり、この保持部(19)の一部が絶縁膜(13)の表層(13S)に埋め込まれていた。
また、オージェ電子分光装置によって、表面電極部(16)を構成する材料の組成を分析したところ、ニッケルが85重量%、リンが15重量%であった。
また、表面電極部(16)の形成と同様の条件の電解メッキ処理によって、シリコンウエハ上に厚みが5μmの金属薄膜を形成し、当該金属薄膜のビッカース硬度を「ダイナミック超微小硬度計」(島津製作所)によって測定したところ、800であった。
【0118】
〈実施例2〉
実施例1の電極部材(16)の形成において、メッキ液として、「ナイホロイ プロセス」(キザイ(株)製)の代わりにニッケル−リンメッキ液「ニッケリンB」(奥野製薬工業株式会社製)を用い、電解メッキ処理の処理温度を55℃から65℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明に係るシート状プローブ(10)を製造した。
得られたシート状プローブ(10)の各部の形状および寸法は、実施例1に係るシート状プローブ(10)と同様であった。
また、オージェ電子分光装置によって、表面電極部(16)を構成する材料の組成を分析したところ、ニッケルが90重量%、リンが10重量%であった。
また、表面電極部(16)の形成と同様の条件の電解メッキ処理によって、シリコンウエハ上に厚みが5μmの金属薄膜を形成し、当該金属薄膜のビッカース硬度を「ダイナミック超微小硬度計」(島津製作所)によって測定したところ、500であった。
【0119】
〈実施例3〉
実施例1の電極部材(16)の形成において、メッキ液として、「ナイホロイ プロセス」(キザイ(株)製)の代わりにスルファミン酸ニッケルを含有するメッキ液「ニッケルサルファイト」(日本化学産業(株)製)を用い、電解メッキ処理の処理温度を55℃から40℃に変更し、処理時間を35分間から30分間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明に係るシート状プローブ(10)を製造した。
得られたシート状プローブ(10)の各部の形状および寸法は、実施例1に係るシート状プローブ(10)と同様であった。
また、オージェ電子分光装置によって、表面電極部(16)を構成する材料の組成を分析したところ、ニッケルが100重量%であった。
また、表面電極部(16)の形成と同様の条件の電解メッキ処理によって、シリコンウエハ上に厚みが5μmの金属薄膜を形成し、当該金属薄膜のビッカース硬度を「ダイナミック超微小硬度計」(島津製作所)によって測定したところ、300であった。
【0120】
〈比較例1〉
図40に示す工程に従い、以下のようにして比較用のシート状プローブを製造した。
厚みが12.5μmのポリイミドよりなる絶縁膜(91)の一面に厚みが5μmの銅よりなる金属層(92)が積層されてなる積層材料(90A)を用意し、この積層材料(90A)における絶縁膜(91)に対してレーザ加工を施すことによって、それぞれ絶縁膜(91)の厚み方向に貫通する直径が30μmの19650個の貫通孔(98H)を、試験用ウエハWにおける被検査電極のパターンに対応するパターンに従って形成した。次いで、この積層材料(90A)に対してフォトリソグラフィーおよびスルファミン酸ニッケルを含有するメッキ液「ニッケルサルファイト」(日本化学産業(株)製)を用いた電解メッキ処理を施すことによって、絶縁膜(91)の貫通孔(91H)内に金属層(92)に一体に連結された短絡部(98)を形成すると共に、当該絶縁膜(91)の表面に、短絡部(98)に一体に連結された突起状の表面電極部(96)を形成した。この表面電極部(96)の基端の径は70μmであり、絶縁膜(91)の表面からの高さは20μmであった。
その後、積層材料(90A)における金属層(92)に対してフォトエッチング処理を施してその一部を除去することにより、80μm×200μmの矩形の裏面電極部(97)を形成すことによって電極構造体(95)を形成した。
そして、絶縁膜(91)における周縁部分の表面に、2液型アクリル接着剤「Y−620」(セメダイン(株)製)を塗布し、外径が22cm、内径が20.5cmで、厚みが2mmのリング状の窒化シリコンよりなる保持部材を配置し、保持部材と絶縁膜(91)とを50kgの荷重で加圧して25℃で8時間保持することにより、保持部材を絶縁膜(91)に固定することにより、比較用のシート状プローブを製造した。
得られたシート状プローブの電極構造体(95)の形状および寸法は、以下のとおりであった。
表面電極部(96)の形状は半球状で、直径が70μmで突出高さが20μmであった。
短絡部(98)の形状は円柱状で、その直径が30μmであった。
裏面電極部(97)の形状は矩形の平板状で、その横幅が80μm、縦幅が200μm、厚みが5μmであった。
また、オージェ電子分光装置によって、表面電極部(16)を構成する材料の組成を分析したところ、ニッケルが100重量%であった。
また、表面電極部(16)の形成と同様の条件の電解メッキ処理によって、シリコンウエハ上に厚みが5μmの金属薄膜を形成し、当該金属薄膜のビッカース硬度を「ダイナミック超微小硬度計」(島津製作所)によって測定したところ、300であった。
【0121】
〈比較例2〉
図48に示す工程に従い、以下のようにして比較用のシート状プローブを製造した。
厚みが37.5μmのポリイミドよりなる絶縁膜(71)の表面に、厚みが4μmの銅よりなる第1の表面側金属層(79A)、厚みが12.5μmのポリイミドよりなる絶縁層(76B)および厚みが4μmの銅よりなる第2の表面側金属層(76A)がこの順で積層され、当該絶縁膜(71)の裏面に、厚みが10μmの42アロイよりなる裏面側金属層(77A)が積層されてなる積層体(70A)を用意した(図48(a)参照)。
この積層体(70A)に対してエッチング処理を施すことにより、裏面側金属層側(77A)、絶縁膜(71)、第1の表面側金属層(79A)および絶縁層(76B)の厚み方向に貫通して伸び、第2の表面側金属層(76A)の裏面に到達する、19650個の電極構造体形成用凹所(70K)を形成した(図48(b)参照)。この電極構造体形成用凹所(70K)の各々は、裏面側金属層(77A)から絶縁層(71)に向かって小径となる円錐台状の形状を有し、裏面側金属層(77A)における開口の直径が90μm、絶縁層(76B)の表面における開口の直径が平均で13μmであった。
次いで、電極構造体形成用凹所(70K)が形成された積層体(70A)の表面および裏面にフォトリソグラフィーによりレジスト膜を形成したうえで、この積層体(70A)をスルファミン酸ニッケルを含有するメッキ液「ニッケルサルファイト」(日本化学産業(株)製)に浸漬し、当該積層体(70A)に対し、第2の表面側金属層(76A)を電極としてを用いた電解メッキ処理を施して各電極構造体形成用凹所(70K)内に金属を充填することにより、絶縁膜(71)の表面から突出する表面電極部(76)、この表面電極部(76)の基端から連続して絶縁膜(71)の厚み方向に貫通する短絡部(78)、およびこの短絡部(78)に連結された、絶縁膜(71)の裏面に露出する裏面電極部(77)を形成した(図48(c)参照)。ここで、裏面電極部(77)の各々は、裏面側金属層(77A)によって互いに連結された状態である。
次いで、第2の表面側金属層(76A)および絶縁層(76B)を、それぞれエッチング処理によって除去し(図48(d)参照)、その後、第1の表面側金属層(79A)に対してフォトリソグラフィーおよびエッチング処理を施すことにより、表面電極部(76)の基端部分の周面から連続して絶縁膜(71)の表面に沿って外方に放射状に伸びる円板リング状の保持部(79)を形成すると共に、裏面側金属層(77A)に対してフォトリソグラフィーおよびエッチング処理を施してその全部を除去することにより、裏面電極部(77)を互いに分離させ、以て、電極構造体(75)を形成した(図48(e)参照)。
そして、絶縁膜(71)における周縁部分の表面に、2液型アクリル接着剤「Y−620」(セメダイン(株)製)を塗布し、外径が22cm、内径が20.5cmで、厚みが2mmのリング状の窒化シリコンよりなる保持部材を配置し、保持部材と絶縁膜(71)とを50kgの荷重で加圧して25℃で8時間保持することにより、保持部材を絶縁膜(71)に固定することにより、比較用のシート状プローブを製造した。
得られたシート状プローブの電極構造体(75)の形状および寸法は、以下のとおりであった。
表面電極部(76)の形状は円錐台状で、その基端の直径が37μm、先端の直径が平均で13μm、突出高さが12、5μmであった。
短絡部(78)の形状は円錐台状で、その表面側の一端の径が37μm、裏面側の他端の径が90μmであった。
裏面電極部(77)の形状は矩形の平板状で、その横幅が90μm、縦幅が200μm、厚みが20μmであった。
保持部(79)の形状は円板状で、その直径が60μm、厚みが4μmであった。
また、オージェ電子分光装置によって、表面電極部(76)を構成する材料の組成を分析したところ、ニッケルが100重量%であった。
また、表面電極部(76)の形成と同様の条件の電解メッキ処理によって、シリコンウエハ上に厚みが5μmの金属薄膜を形成し、当該金属薄膜のビッカース硬度を「ダイナミック超微小硬度計」(島津製作所)によって測定したところ、300であった。
【0122】
〈異方導電性コネクターの作製〉
(1)磁性芯粒子の調製:
市販のニッケル粒子(Westaim社製,「FC1000」)を用い、以下のようにして磁性芯粒子を調製した。
日清エンジニアリング株式会社製の空気分級機「ターボクラシファイア TC−15N」によって、ニッケル粒子2kgを、比重が8.9、風量が2.5m3 /min、ローター回転数が2,250rpm、分級点が15μm、ニッケル粒子の供給速度が60g/minの条件で分級処理し、粒子径が15μm以下のニッケル粒子0.8kgを捕集し、更に、このニッケル粒子0.8kgを、比重が8.9、風量が2.5m3 /min、ローター回転数が2,930rpm、分級点が10μm、ニッケル粒子の供給速度が30g/minの条件で分級処理し、ニッケル粒子0.5kgを捕集した。
得られたニッケル粒子は、数平均粒子径が7.4μm、粒子径の変動係数が27%、BET比表面積が0.46×103 2 /kg、飽和磁化が0.6Wb/m2 であった。
このニッケル粒子を「磁性芯粒子[A]」とする。
【0123】
(2)導電性粒子の調製:
粉末メッキ装置の処理槽内に、磁性芯粒子[A]100gを投入し、更に、0.32Nの塩酸水溶液2Lを加えて攪拌し、磁性芯粒子[A]を含有するスラリーを得た。このスラリーを常温で30分間攪拌することにより、磁性芯粒子[A]の酸処理を行い、その後、1分間静置して磁性芯粒子[A]を沈殿させ、上澄み液を除去した。
次いで、酸処理が施された磁性芯粒子[A]に純水2Lを加え、常温で2分間攪拌し、その後、1分間静置して磁性芯粒子[A]を沈殿させ、上澄み液を除去した。この操作を更に2回繰り返すことにより、磁性芯粒子[A]の洗浄処理を行った。
そして、酸処理および洗浄処理が施された磁性芯粒子[A]に、金の含有割合が20g/Lの金メッキ液2Lを加え、処理層内の温度を90℃に昇温して攪拌することにより、スラリーを調製した。この状態で、スラリーを攪拌しながら、磁性芯粒子[A]に対して金の置換メッキを行った。その後、スラリーを放冷しながら静置して粒子を沈殿させ、上澄み液を除去することにより、導電性粒子を調製した。
このようにして得られた導電性粒子に純水2Lを加え、常温で2分間攪拌し、その後、1分間静置して導電性粒子を沈殿させ、上澄み液を除去した。この操作を更に2回繰り返し、その後、90℃に加熱した純水2Lを加えて攪拌し、得られたスラリーを濾紙によって濾過して導電性粒子を回収した。そして、この導電性粒子を、90℃に設定された乾燥機によって乾燥処理した。
得られた導電性粒子は、数平均粒子径が7.3μm、BET比表面積が0.38×103 2 /kg、(被覆層を形成する金の質量)/(磁性芯粒子[A]の質量)の値が0.3であった。
この導電性粒子を「導電性粒子(a)」とする。
【0124】
(3)フレーム板の作製:
図36および図37に示す構成に従い、下記の条件により、上記の試験用ウエハWにおける各被検査電極領域に対応して形成された393個の開口(32)を有する直径が8インチのフレーム板(31)を作製した。
このフレーム板(31)の材質はコバール(線熱膨張係数5×10-6/K)で、その厚みは、60μmである。
開口(32)の各々は、その横方向(図37において上下方向)の寸法が6400μmで縦方向(図37において左右方向)の寸法が320μmである。
【0125】
(4)異方導電性シート用成形材料の調製:
付加型液状シリコーンゴム100重量部に、導電性粒子[a]30重量部を添加して混合し、その後、減圧による脱泡処理を施すことにより、異方導電性シート用の成形材料を調製した。
以上において、使用した付加型液状シリコーンゴムは、それぞれ粘度が250Pa・sであるA液およびB液よりなる二液型のものであって、その硬化物の圧縮永久歪みが5%、デュロメーターA硬度が32、引裂強度が25kN/mのものである。
ここで、付加型液状シリコーンゴムおよびその硬化物の特性は、以下のようにして測定されたものである。
(i)付加型液状シリコーンゴムの粘度は、B型粘度計により、23±2℃における値を測定した。
(ii)シリコーンゴム硬化物の圧縮永久歪みは、次のようにして測定した。
二液型の付加型液状シリコーンゴムにおけるA液とB液とを等量となる割合で攪拌混合した。次いで、この混合物を金型に流し込み、当該混合物に対して減圧による脱泡処理を行った後、120℃、30分間の条件で硬化処理を行うことにより、厚みが12.7mm、直径が29mmのシリコーンゴム硬化物よりなる円柱体を作製し、この円柱体に対して、200℃、4時間の条件でポストキュアを行った。このようにして得られた円柱体を試験片として用い、JIS K 6249に準拠して150±2℃における圧縮永久歪みを測定した。
(iii)シリコーンゴム硬化物の引裂強度は、次のようにして測定した。
上記(ii)と同様の条件で付加型液状シリコーンゴムの硬化処理およびポストキュアを行うことにより、厚みが2.5mmのシートを作製した。このシートから打ち抜きによってクレセント形の試験片を作製し、JIS K 6249に準拠して23±2℃における引裂強度を測定した。
(iv)デュロメーターA硬度は、上記(iii)と同様にして作製されたシートを5枚重ね合わせ、得られた積重体を試験片として用い、JIS K 6249に準拠して23±2℃における値を測定した。
【0126】
(5)異方導電性コネクターの作製:
上記(1)で作製したフレーム板(31)および上記(4)で調製した成形材料を用い、特開2002−324600号公報に記載された方法に従って、フレーム板(31)に、それぞれ一の開口(32)を塞ぐよう配置され、当該フレーム板(31)の開口縁部に固定されて支持された、図36に示す構成の393個の異方導電性シート(35)を形成することにより、異方導電性コネクターを製造した。ここで、成形材料層の硬化処理は、電磁石によって厚み方向に2Tの磁場を作用させながら、100℃、1時間の条件で行った。
得られた異方導電性シート(35)について具体的に説明すると、異方導電性シート(35)の各々は、横方向の寸法が7000μm、縦方向の寸法が1200μmであり、50個の導電部(36)が120μmのピッチで横方向に一列に配列されており、導電部(36)の各々は、横方向の寸法が40μm、縦方向の寸法が200μm、厚みが150μm、突出部(38)の突出高さが25μm、絶縁部(37)の厚みが100μmである。また、横方向において最も外側に位置する導電部(36)とフレーム板の開口縁との間には、非接続用の導電部が配置されている。非接続用の導電部の各々は、横方向の寸法が60μm、縦方向の寸法が200μm、厚みが150μmである。
また、各異方導電性シート(35)における導電部(36)中の導電性粒子の含有割合を調べたところ、全ての導電部(36)について体積分率で約25%であった。
このようにして、異方導電性コネクターを製造した。
【0127】
〈検査用回路基板の作製〉
基板材料としてアルミナセラミックス(線熱膨張係数4.8×10-6/K)を用い、試験用ウエハWにおける被検査電極のパターンに対応するパターンに従って検査電極(21)が形成された検査用回路基板(20)を作製した。この検査用回路基板(20)は、全体の寸法が30cm×30cmの矩形であり、その検査電極は、横方向の寸法が60μmで縦方向の寸法が200μmである。得られた検査用回路基板を「検査用回路基板T1」とする。
【0128】
〈シート状プローブの評価〉
(1)接続安定性試験:
実施例1〜3および比較例1〜2に係るシート状プローブについて、以下のようにして接続安定性試験を行った。
先ず、恒温槽によって、試験用ウエハWを150℃で3時間加熱し、当該試験用ウエハWのアルミニウムよりなる被検査電極の表面に酸化アルミニウムよりなる酸化膜を形成した。
次いで、室温(25℃)下において、試験用ウエハWを試験台に配置し、この試験用ウエハWの表面上に、シート状プローブをその表面電極部の各々が当該試験用ウエハWの被検査電極上に位置するよう位置合わせして配置し、このシート状プローブ上に、異方導電性コネクターをその導電部の各々が当該シート状プローブの裏面電極部上に位置するよう位置合わせして配置し、この異方導電性コネクター上に、検査用回路基板T1をその検査電極の各々が当該異方導電性コネクターの導電部上に位置するよう位置合わせして配置し、更に検査用回路基板T1を下方に20kgの荷重(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約1g)で加圧した。
そして、検査用回路基板T1における19650個の検査電極について、シート状プローブ、異方導電性コネクターおよび試験用ウエハWを介して互いに電気的に接続された2個の検査電極の間の電気抵抗を順次測定し、測定された電気抵抗値の2分の1の値を、検査用回路基板T1の検査電極と試験用ウエハWの被検査電極との間の電気抵抗(以下、「導通抵抗」という。)として記録した。
次いで、検査用回路基板T1を下方に40kgの荷重(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約2g)で加圧し、この状態で、導通抵抗を測定した。
さらに、検査用回路基板T1に加える荷重を60kg(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約3g)、80kg(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約4g)、100kg(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約5g)に変化させ、導通抵抗を測定した。
以上の結果を表1に示す。
【0129】

【表1】

【0130】
(2)耐久性試験:
実施例1〜3および比較例2に係るシート状プローブについて、以下のようにして耐久性試験を行った。
試験用ウエハWを、電熱ヒーターを具えた試験台に配置し、この試験用ウエハWの表面上に、シート状プローブをその表面電極部の各々が当該試験用ウエハWの被検査電極上に位置するよう位置合わせして配置し、このシート状プローブ上に、異方導電性コネクターをその導電部の各々が当該シート状プローブの裏面電極部上に位置するよう位置合わせして配置し、この異方導電性コネクター上に、検査用回路基板T1をその検査電極の各々が当該異方導電性コネクターの導電部上に位置するよう位置合わせして配置し、更に検査用回路基板T1を下方に60kgの荷重(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約3g)で加圧した。そして、試験台を85℃に加熱し、この状態で、30秒間保持した。その後、試験台の温度を85℃に保持したまま、検査用回路基板T1に対する加圧を解除し、この状態で、30秒間保持した。以上の操作を1サイクルとして、合計で2万サイクル行った。
上記の耐久性試験が終了した後、シート状プローブ電極構造体における保持部を観察した。
その結果、実施例1〜3に係るシート状プローブにおいては、いずれの電極構造体の保持部も絶縁膜から全く剥離しておらず、一方、比較例2に係るシート状プローブにおいては、一部の電極構造体における保持部が絶縁膜から剥離していた。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係るシート状プローブの第1の例を示す平面図である。
【図2】第1の例のシート状プローブにおける接点膜の一部を拡大して示す平面図である。
【図3】第1の例のシート状プローブにおける接点膜の一部を拡大して示す説明用断面図である。
【図4】第1の例のシート状プローブを製造するために用いられる電極部材配列板の構成を示す説明用断面図である。
【図5】両面に保護膜が形成された配列板形成材料を示す説明用断面図である。
【図6】配列板形成材料の保護膜上にレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図7】配列板形成材料の保護膜上のレジスト膜にパターン孔が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図8】配列板形成材料の保護膜にパターン孔が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図9】配列板形成材料の保護膜からレジスト膜が除去された状態を示す説明用断面図である。
【図10】電極部材配列板の保護膜上にレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図11】電極部材配列板の凹所の内面およびレジスト膜上に金属層が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図12】電極部材配列板に形成された金属層上にレジスト膜が形成された状態をしめす説明用断面図である。
【図13】電極部材配列板の凹所に電極部材が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図14】電極部材配列板よりレジスト膜および金属層が除去された状態を示す説明用断面図である。
【図15】第1のシート状プローブを製造するために用いられる積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図16】積層体における絶縁膜に電極部材が圧着処理された状態を示す説明用断面図である。
【図17】積層体における金属膜の裏面にパターン孔を有するエッチング用のレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図18】積層体における金属膜に貫通孔が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図19】積層体における絶縁膜に貫通孔が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図20】積層体における金属膜上にパターン孔を有するメッキ用のレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図21】表面電極部の基端に短絡部および裏面電極部が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図22】積層体における金属膜の裏面からレジスト膜が除去された状態を示す説明用断面図である。
【図23】積層体における金属膜の裏面にエッチング用のレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図24】金属膜の一部が除去されて互いに分離した複数の裏面電極部が形成されると共に支持膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図25】本発明に係るシート状プローブの第2の例を示す平面図である。
【図26】第2の例のシート状プローブにおける接点膜の一部を拡大して示す平面図である。
【図27】第2の例のシート状プローブにおける接点膜の一部を拡大して示す説明用断面図である。
【図28】絶縁膜の一部の表面、表面電極部および保持部を覆うようレジスト膜が形成され、支持膜の裏面、絶縁膜の裏面および裏面電極部を覆うようレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図29】絶縁膜の一部が除去されて分割された複数の絶縁膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図30】本発明に係るシート状プローブの第3の例を示す平面図である。
【図31】第3の例のシート状プローブにおける接点膜の一部を拡大して示す平面図である。
【図32】第3の例のシート状プローブにおける接点膜の一部を拡大して示す説明用断面図である。
【図33】絶縁膜の一部の表面、表面電極部および保持部を覆うようレジスト膜が形成され、支持膜の裏面、絶縁膜の裏面および裏面電極部を覆うようレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図34】絶縁膜の一部が除去されて分割された複数の絶縁膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図35】本発明に係る回路装置の検査装置の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図36】図35に示す検査装置におけるプローブカードを拡大して示す説明用断面図である。
【図37】プローブカードにおける異方導電性コネクターの平面図である。
【図38】本発明に係るシート状プローブの他の例を示す平面図である。
【図39】従来のプローブカードの一例における構成を示す説明用断面図である。
【図40】従来のシート状プローブの製造工程を示す説明用断面図である。
【図41】図39に示すプローブカードにおけるシート状プローブを拡大して示す説明用断面図である。
【図42】従来のシート状プローブの他の製造例を示す説明用断面図である。
【図43】従来のシート状プローブの更に他の製造例を示す説明用断面図である。
【図44】実施例で作製した試験用ウエハを示す平面図である。
【図45】試験用ウエハに形成された集積回路の被検査電極領域の位置を示す説明図である。
【図46】試験用ウエハに形成された集積回路の被検査電極領域を示す平面図である。
【図47】試験用ウエハに形成された集積回路の被検査電極領域の一部を拡大して示す説明用断面図である。
【図48】比較例2におけるシート状プローブの製造工程を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0132】
1 プローブカード
2 ガイドピン
3 加圧板
4 ウエハ載置台
5 加熱器
6 ウエハ
7 被検査電極
8 絶縁層
10 シート状プローブ
10A 積層体
11 支持膜
11A 金属膜
11H 開口
11K 位置決め孔
12,12a,12b 接点膜
13,13a,13b 絶縁膜
13K 基層
13M 金属薄層
13S 表層
13H 貫通孔
14A,14B,14C,14D,14E,14F,14G レジスト膜
15 電極構造体
16 表面電極部
16A 電極部材
17 裏面電極部
17H 貫通孔
18 短絡部
19 保持部
20 検査用回路基板
21 検査電極
30 異方導電性コネクター
31 フレーム板
32 開口
35 異方導電性シート
36 導電部
37 絶縁部
38 突出部
40 電極部材配列板
40A 配列板形成材料
40B 中間複合体
41 凹所
42,43 保護膜
42K パターン孔
45,46,47,48 レジスト膜
45K,47K,48K パターン孔
50 金属層
60 保持部材
70A 積層体
70K 電極構造体形成用凹所
71 絶縁膜
75 電極構造体
76 表面電極部
76A 第2の表面側金属層
76B 絶縁層
77 裏面電極部
77A 裏面側金属層
78 短絡部
79 保持部
79A 第1の表面側金属層
80 異方導電性シート
85 検査用回路基板
86 検査電極
90 シート状プローブ
90A,90B,90C 積層体
90K 電極構造体形成用凹所
91 絶縁膜
91A 絶縁膜材
92,92A,92B 金属層
93,93A レジスト膜
94A,94B レジスト膜
95 電極構造体
96 表面電極部
97 裏面電極部
98 短絡部
98H 貫通孔
A 被検査電極領域
K1,K2 パターン孔
L 集積回路
P 導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な絶縁膜に、その厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体が当該絶縁膜の面方向に互いに離間して配置されてなる接点膜を有するシート状プローブであって、
前記電極構造体の各々は、前記絶縁膜の表面に露出し、当該絶縁膜の表面から突出する表面電極部と、前記絶縁膜の裏面に露出する裏面電極部と、前記表面電極部および前記裏面電極部の各々に直結されてこれらを電気的に接続する、前記絶縁膜の厚み方向に伸びる短絡部と、前記表面電極部の基端部分に形成された、前記絶縁膜の面方向に伸びる保持部とよりなり、
前記保持部は、その少なくとも一部が絶縁膜に埋め込まれていることを特徴とするシート状プローブ。
【請求項2】
絶縁膜は、樹脂よりなる基層と、この基層上に一体的に積層された接着性樹脂またはその硬化物よりなる表層とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート状プローブ。
【請求項3】
短絡部は、表面電極部の基端に対してメッキ処理することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート状プローブ。
【請求項4】
表面電極部と短絡部とは互いに異なる金属よりなることを特徴とする請求項3に記載のシート状プローブ。
【請求項5】
表面電極部を構成する金属のビッカース硬度(Hv)が40以上であることを特徴とする請求項4に記載のシート状プローブ。
【請求項6】
開口が形成された金属よりなる支持膜を有し、接点膜は、その電極構造体の各々が前記支持膜の開口内に位置するよう当該支持膜の表面上に支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載のシート状プローブ。
【請求項7】
支持膜は複数の開口を有することを特徴とする請求項6に記載のシート状プローブ。
【請求項8】
それぞれ支持膜に支持された複数の接点膜を有することを特徴とする請求項7に記載のシート状プローブ。
【請求項9】
電極構造体における表面電極部は、その基端から先端に向かうに従って小径となる形状のものであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載のシート状プローブ。
【請求項10】
電極構造体における表面電極部の基端の径R1 に対する表面電極部の突出高さhの比h/R1 の値が0.2〜3であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一に記載のシート状プローブ。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一に記載のシート状プローブを製造する方法であって、
形成すべき電極構造体における表面電極部の形状に適合する形状の複数の凹所が当該電極構造体のパターンに対応するパターンに従って形成された電極部材配列板と、樹脂よりなる基層上に接着性樹脂よりなる表層が形成されてなる絶縁膜とを用意し、
前記電極部材配列板の凹所の各々およびその周辺部に金属を堆積させることにより、表面電極部およびその基端部分から電極部材配列板の面方向に伸びる保持部からなる電極部材を形成し、
この電極部材配列板に形成された電極部材の各々を、前記絶縁膜の表層に対接するよう配置して圧着処理することによって当該絶縁膜に接着し、
前記絶縁膜に、それぞれ厚み方向に伸びて前記電極部材における表面電極部に通ずる複数の貫通孔を形成し、
前記表面電極部の各々にメッキ処理を施して前記絶縁膜の貫通孔の各々に金属を充填することにより、当該表面電極部に連結された短絡部を形成する工程を有することを特徴とするシート状プローブの製造方法。
【請求項12】
請求項6乃至請求項8のいずれか一に記載のシート状プローブを製造する方法であって、
形成すべき電極構造体における表面電極部の形状に適合する形状の複数の凹所が当該電極構造体のパターンに対応するパターンに従って形成された電極部材配列板と、金属膜およびこの金属膜の表面に一体的に積層された、樹脂よりなる基層上に接着性の表層が形成されてなる絶縁膜よりなる積層体とを用意し、
前記電極部材配列板の凹所の各々およびその周辺部に金属を堆積させることにより、表面電極部およびその基端部分から電極部材配列板の面方向に伸びる保持部からなる電極部材を形成し、
この電極部材配列板に形成された電極部材の各々を、前記積層体における絶縁膜の表層に対接するよう配置して圧着処理することによって当該絶縁膜に接着し、
前記積層体に、それぞれ厚み方向に伸びて前記電極部材における表面電極部に通ずる複数の貫通孔を形成し、
前記表面電極部の各々にメッキ処理を施して前記絶縁膜の貫通孔の各々に金属を充填することにより、当該表面電極部に連結された短絡部を形成し、
前記積層体における金属層をエッチング処理することにより、開口が形成された支持膜を形成する工程を有することを特徴とするシート状プローブの製造方法。
【請求項13】
電極部材配列板に形成された凹所の各々は、当該電極部材配列板の表面から裏面に向かうに従って小径となる形状であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のシート状プローブの製造方法。
【請求項14】
検査対象である回路装置とテスターとの電気的接続を行うためのプローブカードであって、
検査対象である回路装置の被検査電極に対応して複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、この検査用回路基板上に配置された異方導電性コネクターと、この異方導電性コネクター上に配置された、請求項1乃至請求項10のいずれか一に記載のシート状プローブとを具えてなることを特徴とするプローブカード。
【請求項15】
検査対象である回路装置とテスターとの電気的接続を行うためのプローブカードであって、
検査対象である回路装置の被検査電極に対応して複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、この検査用回路基板上に配置された異方導電性コネクターと、この異方導電性コネクター上に配置された、請求項12または請求項13に記載の方法によって製造されたシート状プローブとを具えてなることを特徴とするプローブカード。
【請求項16】
検査対象である回路装置が多数の集積回路が形成されたウエハであり、
異方導電性コネクターは、検査対象であるウエハに形成された全ての集積回路または一部の集積回路における被検査電極が配置された電極領域に対応して複数の開口が形成されたフレーム板と、このフレーム板の各開口を塞ぐよう配置された異方導電性シートとを有してなることを特徴とする請求項14または請求項15に記載のプローブカード。
【請求項17】
請求項14乃至請求項16のいずれか一に記載されたプローブカードを具えてなることを特徴とする回路装置の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【公開番号】特開2006−3346(P2006−3346A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143824(P2005−143824)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】