説明

シート貼付装置及び貼付方法

【課題】リングフレームに貼付された接着シートに弛みが生じていても、この弛みが被着体との接着面内に位置して皺となることを防止することができるシート貼付装置及び貼付方法を提供すること。
【解決手段】被着体Wを支持するテーブル11を収容するとともに内部に減圧室Cを形成する第1ケース13及び第2ケース12と、リングフレームRFを支持し、当該リングフレームの開放部を閉塞する接着シートSを被着体に臨ませる支持手段15と、接着シートSを被着体Wに押圧する押圧手段20、P2とを含み、減圧室Cの減圧下で接着シートSを被着体Wに貼付するように構成されている。支持手段15は、リングフレームRFを支持するフレーム支持部35と、当該リングフレームRFより内側であって被着体Wより外側の接着シートS部分を支持するシート支持部36とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート貼付装置及び貼付方法に係り、更に詳しくは、半導体ウエハ等の被着体に、予めリングフレームの開口部を閉塞するように貼付された接着シートを貼付する際に、当該接着シートの弛みを取って貼付することのできるシート貼付装置及び貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する場合がある)には、その回路面を保護するための保護シートを貼付したり、裏面にダイシングテープやダイボンディング用の接着シートを貼付したりすることが行われている。
【0003】
特許文献1には、上ケースと下ケースとにより構成されたケース内に弾性シートを配置して上部減圧室と下部減圧室とを形成するとともに、弾性シートの上方に予めリングフレームの開口部を閉塞するように貼付された粘着シート(接着シート)とウエハとを配置し、上下の減圧室を減圧した後に、下部減圧室を大気圧に近づけるように制御することで、弾性シートを変形させて粘着シートをウエハの中央部から外側に向かって貼付する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−233430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたシート貼付装置にあっては、予めリングフレームの開口部を閉塞するように貼付された接着シートに弛みが生じていた場合、ウエハと接着シートとの接着面内に皺を発生させてしまい、シート貼付不良となってしまう不都合がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、予めリングフレームの開口部を閉塞するように貼付された接着シートに弛みが生じていても、この弛みが被着体との接着面内に位置して皺となることを防止することができるシート貼付装置及び貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、被着体を支持するテーブルと、当該テーブルを収容するとともに内部に減圧室を形成する第1ケース及び第2ケースと、接着シートによって開口部が閉塞されたリングフレームを支持するとともに、当該接着シートを被着体に臨む位置に支持する支持手段と、前記接着シートを前記被着体に押圧して貼付する押圧手段とを含み、前記減圧室を形成して減圧下で前記接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置において、前記支持手段は、前記リングフレームを支持するフレーム支持部と、当該リングフレームより内側であって前記被着体より外側の接着シート部分を支持するシート支持部とを有する、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記フレーム支持部とシート支持部とを相対的に昇降させる駆動手段を有する、という構成を採っている。
【0009】
また、本発明は、接着シートによって開口部が閉塞されたリングフレームを用意する工程と、被着体を支持する工程と、前記被着体に前記接着シートが臨む位置で前記リングフレームを支持するとともに、当該リングフレームより内側であって前記被着体より外側の接着シート部分を支持する工程と、前記被着体及び接着シートを減圧室内で収容する工程と、前記減圧室を減圧する工程と、前記減圧された減圧室内で前記接着シートを被着体に押圧して貼付する工程とを含む、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレーム支持部と、シート支持部とを有する支持手段を設けたため、予めリングフレームの開口部を閉塞するように貼付された接着シートに弛みが生じていても、シート支持部がこの弛みをなくして当該接着シートを被着体に貼付することができ、従来のように弛みが被着体との接着面内に位置して皺となってしまい、シート貼付不良が発生するといった不都合を解消することができる。しかも、接着シートを中央部から外側に向かって被着体に貼付するため、被着体と接着シートとの間に空間を介在させることなく確実に接着シートを貼付することができる。
また、フレーム支持部とシート支持部とを相対的に昇降させる駆動手段を設けた場合、接着シートの弛みの大小に関わらず、皺をなくして当該接着シートを被着体に貼付することができる。
なお、本明細書において、減圧は真空をも含む概念とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るシート貼付装置の概略断面図。
【図2】接着シートに初期接着部を形成した状態を示す概略断面図。
【図3】減圧下で被着体に接着シートが貼付された状態を示す概略断面図。
【図4】大気圧下で被着体に接着シートが貼付された状態を示す概略断面図。
【図5】変形例に係るシート貼付装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1において、シート貼付装置10は、被着体としてのウエハWを支持するテーブル11と、ウエハWを臨む位置に接着シートSを配置するとともに、当該接着シートSとでウエハWを収容可能な密閉された第1空間C1を形成する下部ケース(第1ケース)13と、第1空間C1の圧力を制御可能であって、図示しない減圧ポンプ、エアレギュレータ、電磁弁等によって構成された第1圧力制御手段P1と、接着シートSを間に挟んで第1空間C1の反対側に接着シートSとで密閉された第2空間C2(図2参照)を形成する上部ケース(第2ケース)12と、第2空間C2の圧力を制御可能であって、図示しない減圧ポンプ、エアレギュレータ、電磁弁等によって構成された第2圧力制御手段P2と、接着シートSにウエハWを当接させる当接手段16とを備えて構成されている。なお、第2圧力制御手段P2は押圧手段としても機能する。また、第1空間C1と第2空間C2とで減圧室Cが構成される。ここで、本実施形態におけるウエハWは、裏面研削によって外周に環状の凸部W1が形成されたものが採用されている。
【0014】
前記テーブル11は、図示しない保持手段を介して上面側でウエハWを保持可能に形成されている。このテーブル11は、下部ケース13内に支持された当接手段16である駆動機器としての直動モータ20の出力軸21の上端に固定され、当該出力軸21の進退により昇降可能となっている。なお、直動モータ20は押圧手段としても機能する。
【0015】
前記上部ケース12は平面視円形の平坦な板状体により形成されているとともに、図示しない駆動機器を介して上下に移動可能に設けられている。この上部ケース12の中央部には、厚み方向に貫通するパイプ23が設けられ、当該パイプ23に接続された配管25が第2圧力制御手段P2に接続されている。上部ケース12の下面外周縁部には、弾性体からなる円環状の外側弾性部材26が配置されており、その内側の同心円上には、ウエハWの凸部W1に相対する位置に配置可能な弾性体からなる内側弾性部材27が配置されている。これら外側弾性部材26、内側弾性部材27及び上部ケース12の各下面は、面一に連なるように設けられているが、各弾性部材26、27の下面位置が上部ケース12の下面位置に対して相対的に上下方に突没するように構成してもよい。
【0016】
前記下部ケース13は、上部開放型の有底円筒形状に設けられ、支持手段15を有している。下部ケース13の底壁13Aには、厚み方向に貫通するパイプ31が設けられ、当該パイプ31に接続された配管33が第1圧力制御手段P1に接続されている。
【0017】
前記支持手段15は、接着シートSによって開口部が閉塞されたリングフレームRFを支持するフレーム支持部35と、当該リングフレームRFより内側であってウエハWより外側の接着シートS部分を支持するシート支持部36と、フレーム支持部35とシート支持部36とを相対的に昇降させる駆動手段である駆動機器としての直動モータLMにより構成されている。本実施形態では、フレーム支持部35は、下部ケース13を構成する周壁13Bにより構成され、その上面に載置されたリングフレームRFを位置決めして保持する図示しない保持手段が設けられている。シート支持部36は、フレーム支持部35の内周側に配置された筒体38と、当該筒体38の上端面に配置され、外側弾性部材26と同形状に設けられた弾性体からなる受け側弾性部材40とにより構成されている。シート支持部36は、フレーム支持部35の上面にリングフレームRFを載置したときに、直動モータLMを介して接着シートSの弛みを無くす働きをする。この弛み量が予め分かっている場合は、直動モータLMは省略できる。なお、受け側弾性部材40の上面は、接着シートSの接着剤が付着しないように、フッ素樹脂等がコーティングされた非接着処理面として形成されている。また、外側、内側弾性部材26、27及び受け側弾性部材40を構成する弾性体は、ゴム、樹脂等が例示できる。
【0018】
次に、本実施形態におけるシート貼付方法について、図2ないし図4をも参照しながら説明する。
【0019】
図1に示されるように、下部ケース13に対して上部ケース12を離間させた開放状態において、図示しない搬送手段を介してウエハWをテーブル11上に載置し、図示しない保持手段で当該ウエハWを保持する。その後、接着シートSによって開口部が閉塞されたリングフレームRFを図示しない搬送手段でフレーム支持部35上に載置する。そして、フレーム支持部35は図示しない保持手段でリングフレームRFを固定すると、直動モータLMが駆動され、接着シートSの弛みが無くなるように、シート支持部36が昇降される。
【0020】
次いで、外側弾性部材26が受け側弾性部材40とで接着シートSを上下から挟み込むように上部ケース12を下降させると、下部ケース13の上部開放部が接着シートSによって閉塞されて密閉された第1空間C1が形成されるとともに、上部ケース12と接着シートSとで密閉された第2空間C2が形成される。その後、第1、第2圧力制御手段P1、P2を介して第1、第2空間C1、C2内が同じ減圧率で減圧され、第1、第2空間C1、C2内は、最終的に同じ所定の内圧状態とされる。そして、第2圧力制御手段P2を介して第2空間C2内だけに大気を導入し、当該第2空間C2内の圧力を第1空間C1内の圧力に比べて相対的に高い圧力とすることで、図2に示されるように、接着シートSが下方に膨らみ、その中央部を、ウエハWに最も接近した初期接着部S1として形成する。なお、第1圧力制御手段P1を介して第1空間C1内だけを更に減圧したり、第2圧力制御手段P2及び第1圧力制御手段P1を介して第2空間C2内だけに大気を導入し、且つ、第1空間C1内だけを更に減圧したりすることで、第2空間C2内の圧力を第1空間C1内の圧力に比べて相対的に高い圧力として初期接着部S1を形成してもよい。
【0021】
初期接着部S1が形成された後、図2中二点鎖線で示されるように、直動モータ20を駆動してテーブル11を上昇させると、先ず初めにウエハWの上面中央部に初期接着部S1が接触し、その後もテーブル11を上昇させることで、図3に示されるように、ウエハWの凸部W1と内側弾性部材27とで接着シートSを挟み込む状態となり、テーブル11の上昇を停止させる。このとき、第2空間C2の中であって、接着シートSと内側弾性部材27の内側との間に密閉された第3空間C3が形成されるとともに、第1空間C1の中であって、接着シートSとウエハWの凸部W1との間に密閉された第4空間C4が形成される。その後、第2圧力制御手段P2を介して第3空間C3内が徐々に大気圧となるように、当該第3空間C3内に大気が導入されると、図4に示されるように、第4空間C4は、第3空間C3の大気圧に押されて消滅する。このとき、直動モータ20と第2圧力制御手段P2とが押圧手段として機能する。
【0022】
この後、第1圧力制御手段P1を介して第1空間C1が徐々に大気圧となるように、当該第1空間C1内に大気が導入され、第1空間C1内が大気圧になったときに、上部ケース12を上昇させる。その後、接着シートSに貼付されたウエハWは、図示しない搬送手段によって取り出され、別工程へ搬送されることとなり、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0023】
従って、このような実施形態によれば、予めリングフレームRFの開口部を閉塞するように貼付された接着シートSに弛みが生じていても、シート支持部36がこの弛みをなくして当該接着シートSをウエハWに貼付することができる。
【0024】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0025】
例えば、図5に示されるように、上部ケース12が弾性シート70を有する構成とし、この弾性シート70を膨らませて接着シートSをウエハWに押圧して貼付するようにしてもよい。この場合、上部ケース12と弾性シート70とで形成された空間が第2空間C2となる。
【0026】
更に、前記実施形態では、ウエハWが外周に凸部W1を備えた形状としたが、凸部W1を有しないウエハや、電極としてのバンプを有するウエハを対象とすることもできる。
【0027】
また、上部ケース12及び下部ケース13は、上下を反転させた配置としてもよく、横向きに開閉する配置としてもよい。更に、前記実施形態では、上部ケース12が上下に移動可能としたが、下部ケース13を上下に移動可能としたり、上部、下部ケース12、13がそれぞれ移動可能としたりすることもできる。また、外側弾性部材26と内側弾性部材27とを一体の部材で構成してもよいし、上部ケース12の下面側全面に、弾性体を設けてもよい。
【0028】
また、フレーム支持部35を下部ケース13の周壁13Bにより構成したが、下部ケース13内で独立してリングフレームRFを支持する構成としてもよい。
【0029】
更に、本発明における被着体は半導体ウエハWに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハであってもよい。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0030】
10 シート貼付装置
11 テーブル
12 上部ケース(第2ケース)
13 下部ケース(第1ケース)
15 支持手段
20 直動モータ(押圧手段)
35 フレーム支持部
36 シート支持部
C 減圧室
LM 直動モータ(駆動手段)
P2 第2圧力制御手段(押圧手段)
RF リングフレーム
S 接着シート
W 半導体ウエハ(被着体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体を支持するテーブルと、当該テーブルを収容するとともに内部に減圧室を形成する第1ケース及び第2ケースと、接着シートによって開口部が閉塞されたリングフレームを支持するとともに、当該接着シートを被着体に臨む位置に支持する支持手段と、前記接着シートを前記被着体に押圧して貼付する押圧手段とを含み、前記減圧室を形成して減圧下で前記接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置において、
前記支持手段は、前記リングフレームを支持するフレーム支持部と、当該リングフレームより内側であって前記被着体より外側の接着シート部分を支持するシート支持部とを有することを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記フレーム支持部とシート支持部とを相対的に昇降させる駆動手段を有することを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
接着シートによって開口部が閉塞されたリングフレームを用意する工程と、
被着体を支持する工程と、
前記被着体に前記接着シートが臨む位置で前記リングフレームを支持するとともに、当該リングフレームより内側であって前記被着体より外側の接着シート部分を支持する工程と、
前記被着体及び接着シートを減圧室内で収容する工程と、
前記減圧室を減圧する工程と、
前記減圧された減圧室内で前記接着シートを被着体に押圧して貼付する工程と、を含むことを特徴とするシート貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−38880(P2012−38880A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177005(P2010−177005)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】