説明

シート貼付装置及び貼付方法

【課題】複雑な圧力制御や余計な工程を要することなく、気泡を混入させずに接着シートと被着体とを貼付することのできるシート貼付装置及び貼付方法を提供すること。
【解決手段】半導体ウエハWを支持するテーブル11を収容し、内部に密閉空間Cを形成する上ケース12及び下ケース13を含む収容手段15と、密閉空間Cを減圧する減圧手段16と、半導体ウエハWを臨む位置に接着シートSを供給する供給手段17とを備える。接着シートSは上ケース12の下面との間に空間を形成することなく供給され、収容手段15を閉塞したときに接着シートSが下ケース13の開口部14を閉塞する。接着シートSの貼付は、テーブル11の上昇や、上ケース12と接着シートSとの間に流体を充填することによって行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート貼付装置に係り、更に詳しくは、半導体ウエハ等の被着体に接着シートを貼付する際に、当該接着シートと被着体との間に気泡を混入させることなく貼付することのできるシート貼付装置及び貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する場合がある)には、その回路面を保護するための保護シートを貼付したり、裏面にダイシングテープやダイボンディング用の接着シートを貼付したりすることが行われている。
【0003】
特許文献1には、上蓋(上ケース)と基台(下ケース)とにより構成されたケース内にゴムシートを配置して当該ゴムシートの上下に気密空間をそれぞれ形成し、ゴムシートに支持されたウエハにダイシングテープを貼付する構成が開示されている。
また、特許文献2には、減圧下でウエハにダイシングテープを貼付する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−26377号公報
【特許文献2】特開2008−66684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたシート貼付装置にあっては、上下の気密空間を同じ圧力となるように制御しながら減圧を行わなければならないため、減圧装置が2個必要となり、また、各気密空間が正確に同じ圧力となるように複雑な圧力制御を行わなければならないという不都合がある。
この点、特許文献2によれば、上記のような圧力制御を行う必要はなく、減圧装置も1個で足りる構成となっているが、ウエハに貼付する接着シートをリングフレーム等の支持具に予め貼付しておかなければならないため、接着シートを貼付するための余計な工程が増える、という不都合を招来する。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、複雑な圧力制御や余計な工程を要することなく、気泡を混入させずに接着シートと被着体とを貼付することのできるシート貼付装置及び貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、被着体を支持するテーブルと、上ケース及び下ケースによって内部に前記テーブルを収容可能な収容手段と、前記下ケース側から前記収容手段内を減圧可能な単一の減圧手段と、基材シートの一方の面に接着剤層が積層された接着シートにおける接着剤層が前記被着体に臨む位置に当該接着シートを供給する供給手段と、前記被着体に前記接着シートを押圧して貼付する押圧手段とを含み、前記収容手段内を減圧して前記接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置において、
前記供給手段は、前記接着シートと上ケースとの間に空間を形成することなく前記接着シートを供給可能に設けられ、当該接着シートと下ケースとによって単一の密閉空間を形成可能に設けられる、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記押圧手段は、前記上ケースと前記接着シートとの間に流体を充填する充填手段を含む構成を採るとよい。
【0009】
また、前記上ケースは、前記被着体側に膨らむ凸形状に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0010】
更に、前記被着体は外周側に環状の突条部を備えた板状をなし、前記被着体と上ケースとを相対接近させたときに、前記突条部と上ケースとの間に前記接着シートが挟み込まれて当該接着シートと被着体との間に内部空間が形成される、という構成を採ることができる。
【0011】
また、本発明は、被着体を支持する工程と、基材シートの一方の面に接着剤層が積層された接着シートにおける接着剤層が前記被着体に臨む位置に当該接着シートを供給する工程と、上ケース及び下ケースによって内部に前記被着体及び接着シートを収容するとともに、当該接着シートと下ケースとによって単一の密閉空間を形成する工程と、前記下ケース側から前記密閉空間を減圧する工程と、前記被着体に前記接着シートを押圧して貼付する工程とを有するシート貼付方法において、前記接着シートを供給する工程において、前記接着シートと上ケースとの間に空間を形成することなく前記接着シートを供給する工程を有する、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接着シートが上ケースとの間に空間を生じない状態で供給可能な構成であるため、単一の密閉空間を形成可能とし、単一の減圧手段によって当該密閉空間を減圧するだけで被着体を減圧雰囲気下に置くことができ、複数の減圧空間を形成した場合の個々の圧力制御を行う必要を無くすことができる。しかも、リングフレーム等の支持具に予め接着シートを貼付しておく必要も無くすことができるので、複雑な圧力制御や余計な工程を要することなく、気泡を混入させずに接着シートと被着体とを貼付することができる。
また、充填手段を設けた構成では、上ケース側から空気等の流体を充填するだけで、減圧雰囲気で接着シートを被着体に押圧して貼付することができる。
更に、上ケースが凸形状に設けられた構成では、接着シートが被着体の中央部から外周部に向かって貼付が進行するようになり、気泡の混入を確実に回避することができる。
また、被着体が環状の突条部を備えて接着シートが突条部と上ケースとの間に内部空間を形成する構成では、接着シートと被着体との間に密閉空間と区分された別の密閉空間が形成され、上ケースと接着シートとの間に流体を充填することで突条部の内面に接着シートを確実に貼付することができる。
なお、本明細書において、減圧は真空をも含む概念とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るシート貼付装置を一部断面化した側面図。
【図2】接着シートを被着体に貼付する動作説明図。
【図3】接着シートを被着体に貼付する動作説明図。
【図4】接着シートを被着体に貼付する動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1において、シート貼付装置10は、板状をなす被着体としてのウエハWを支持するテーブル11と、上ケース12及び下ケース13によって内部にテーブル11を収容可能な収容手段15と、下ケース13側から収容手段15内を減圧可能な単一の減圧手段16と、基材シートBSの一方の面に接着剤層ADが積層された接着シートSにおける接着剤層ADがウエハWに臨む位置に当該接着シートSを供給する供給手段17と、ウエハWに接着シートSを押圧して貼付する押圧手段18とを備えて構成されている。ここで、本実施形態におけるウエハWは、裏面研削によって外周に環状の突条部W1が形成されたものが接着シートSの貼付対象物となっている。
【0016】
前記テーブル11は、ウエハWを挟み込んだり掴んだりするチャック機構等の図示しない保持手段を介して、その上面側でウエハWを保持可能に形成されている。
【0017】
前記上ケース12は、平面視円形の板状体により形成されているとともに、下面側はウエハW側に膨らむ凸形状に設けられている。すなわち、上ケース12は、ウエハWの中央に対応する下面中央部が最も低位置となるように曲面(球面)形状に設けられている。なお、上ケース12は、下ケース13と共に金属等の剛性部材で構成してもよいが、上ケース12の下面側をゴム若しくは樹脂からなる弾性部材で構成してもよい。また、上ケース12は、図示しない駆動機器を介して上下に移動可能に設けられている。
【0018】
前記下ケース13は、上部に開口部14を備えた有底円筒形状に設けられ、その周壁13Aの上端面13Bは接着シートSの接着剤層ADが付着しないように、フッ素樹脂等がコーティングされた非接着処理面として形成されている。また、上端面13Bには、接着剤層ADが付着しないシリコン樹脂等の非接着部材で形成されシールリング部材30が配置されている。
【0019】
前記減圧手段16は、下ケース13における底壁13Cの厚み方向に貫通するパイプ31と、このパイプ31に配管33を介して接続された減圧ポンプ34とにより構成されている。
【0020】
前記供給手段17は、巻回された接着シートSを支持する支持ローラ40と、上ケース12を間に挟んで配置され、接着シートSを繰り出す駆動ローラ41、51及びそれらを駆動する駆動機器としての駆動モータM1、M2と、各駆動ローラ41、51との間に接着シートSを挟み込むピンチローラ42、52と、複数のガイドローラ44、54と、図示しない駆動機器によって接着シートSを巻き取る巻取ローラ50とにより構成されている。各駆動ローラ41、51及びガイドローラ44、54の外周面は、上述した非接着処理面として形成されている。なお、供給手段17は、図示しない駆動機器を介して上下に移動可能に設けられている。また、供給手段17は、上ケース13との間に空間を形成しない状態で接着剤層ADがウエハWを臨む位置に接着シートSを供給可能に設けられている。これにより、接着シートSと下ケース13とによって単一の密閉空間Cを形成可能に設けられている。
【0021】
押圧手段18は、下ケース13内に配置され、その出力軸21がテーブル11に接続された駆動機器としての直動モータ20と、上ケース12の中央部に設けられた貫通孔12Aに摺動可能に挿通されたシャフト60と、シャフト60を昇降させる駆動機器としてのモータM3と、貫通孔12Aに通じるエア供給穴12Bに配管61を介して連通された充填手段としてのエアバルブ62とにより構成されている。シャフト60が上昇することで、上ケース12の下面とエア供給穴12Bとを連通できるように構成されている(図3参照)。なお、貫通孔12A及びシャフト60の直径は、非常に小さい寸法に設定されている。
【0022】
次に、本実施形態におけるシート貼付方法について説明する。
先ず、図1に示されるように、支持ローラ40から接着シートSが引き出され、そのリード端が巻取ローラ50に固定される。そして、図示しない搬送手段を介してウエハWがテーブル11上に載置されると、ウエハWは、図示しない保持手段を介して保持される。
【0023】
その後、未使用の接着シートSが上ケース12の下面に繰り出される。このとき、各駆動ローラ41、51によって接着シートSに張力が付与されることで、上ケース12の下面と接着シートSとの間に空間を形成することなく接着シートSが繰り出される。
【0024】
そして、図2に示されるように、上ケース12が供給手段17と共に下降すると、接着シートSが上ケース12と下ケース13との間に挟み込まれ、開口部14が接着シートSによって閉塞されて密閉空間Cが形成される。この状態で、減圧ポンプ34の駆動によって密閉空間Cの減圧が行われる。このとき、上ケース12の下面と接着シートSとの間に空間が形成されていないので(気体が存在していないので)、密閉空間Cの減圧が行われても、ウエハW上方に位置する接着シートSが押し下げられるようなことはない。
【0025】
次いで、直動モータ20を駆動してテーブル11を上昇させる。この上昇は、ウエハWの突条部W1の上端が接着シートSの接着剤層ADに突き当たる位置まで行われ、これにより、ウエハWと接着シートSとの間に別の密閉空間としての内部空間C1が形成される。なお、本実施形態においては、突条部W1が接着シートSの粘着面側に突き当たったときに、ウエハWの中央部に接着シートSの粘着面が接触しないように上ケース12の下面曲率が予め設定されているが、上ケース12の下面側を弾性部材で構成した場合は、ウエハWの中央部に接着シートSの粘着面が接触するようにしてもよい。
【0026】
このようにして内部空間C1が形成された状態で、図3に示されるように、モータM3を駆動してシャフト60を上昇させ、上ケース12の下面とエア供給穴12Bとを連通させた後、エアバルブ62を駆動して上ケース12と接着シートSとの間に空気が徐々に充填される。これにより、接着シートSが上ケース12の下面中央から外方向に徐々に膨らみ、内部空間C1を次第に消失させつつ、図3中二点鎖線で示されるように、ウエハWの突条部W1で囲まれる内面に、接着シートSが貼り付けられることとなる。
【0027】
接着シートSの貼付を完了すると密閉空間Cを大気圧とし、図4に示されるように、上ケース12を上昇させ、図示しない切断ロボットを介して接着シートSをウエハWの大きさに合わせて切断を行い、接着シートSが貼付されたウエハWが図示しない搬送手段を介して搬送され、その後に、供給手段17が図1に示される位置まで上昇する。そして、以後、上記同様にしてウエハWに接着シートSが貼付される。
【0028】
従って、このような実施形態によれば、上ケース12の下面と接着シートSとの間に空間がない状態で当該接着シートSが供給される構成としたから、減圧手段16を1個とすることができ、複雑な圧力制御やや余計な工程を要することなく減圧下で接着シートSをウエハWに貼付することができる。
【0029】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0030】
例えば、前記実施形態では、ウエハWが外周に突条部W1を備えた形状としたが、突条部W1を有しないウエハや、電極としてのバンプを有するウエハを対象とすることもできる。
【0031】
また、上ケース12及び下ケース13は、上下を反転させた配置としてもよく、横向きに開閉する配置としてもよい。更に、前記実施形態では、下ケース13を固定し、上ケース12及び供給手段17が上下に移動する場合を例示したが、上ケース12及び供給手段17を固定し、下ケース13を移動可能としたり、供給手段17を固定し、上下各ケース12、13をそれぞれ移動可能としたり、上ケース12を固定し、供給手段17及び下ケース13を移動可能としたり、供給手段17及び下ケース13を固定し、上ケース12を移動可能としたり、上下各ケース12、13及び供給手段17をそれぞれ移動可能としたりすることもできる。また、上ケース12の下面形状は、曲面形状等の凸形状に設けることなく平面形状であってもよい。
【0032】
更に、供給手段17は図示構成例に限定されるものではなく、上ケース12の下面との間に空間を形成することなく接着シートを供給できるものであれば足りる。
【0033】
また、充填手段は流体として空気を充填するものとしたが、その他の気体であってもよく、水等の液体やジェル状のもの等を充填可能なもので構成することもできる。
更に、押圧手段17に充填手段は必須ではない。
また、ウエハWを囲むようにテーブル11の上面にリングフレームを載置しておけば、ウエハWをリングフレームにマウントすることができ、特許文献2のように接着シートSを予めリングフレームに貼付しておく必要がなくなるため、余計な工程を省くことができる。このとき、図示しない切断ロボット等によって、接着シートSをリングフレームの面内で切断すればよい。
【0034】
更に、本発明における被着体は半導体ウエハWに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハであってもよい。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0035】
10 シート貼付装置
11 テーブル
12 上ケース
13 下ケース
15 収容手段
16 減圧手段
17 供給手段
19 充填手段
AD 接着剤層
BS 基材シート
C 密閉空間
C1 内部空間
S 接着シート
W 半導体ウエハ(被着体)
W1 突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体を支持するテーブルと、上ケース及び下ケースによって内部に前記テーブルを収容可能な収容手段と、前記下ケース側から前記収容手段内を減圧可能な単一の減圧手段と、基材シートの一方の面に接着剤層が積層された接着シートにおける接着剤層が前記被着体に臨む位置に当該接着シートを供給する供給手段と、前記被着体に前記接着シートを押圧して貼付する押圧手段とを含み、前記収容手段内を減圧して前記接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置において、
前記供給手段は、前記接着シートと上ケースとの間に空間を形成することなく前記接着シートを供給可能に設けられ、当該接着シートと下ケースとによって単一の密閉空間を形成可能に設けられていることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、前記上ケースと前記接着シートとの間に流体を充填する充填手段を含むことを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記上ケースは、前記被着体側に膨らむ凸形状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート貼付装置。
【請求項4】
前記被着体は外周側に環状の突条部を備えた板状をなし、前記被着体と上ケースとを相対接近させたときに、前記突条部と上ケースとの間に前記接着シートが挟み込まれて当該接着シートと被着体との間に内部空間が形成されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のシート貼付装置。
【請求項5】
被着体を支持する工程と、
基材シートの一方の面に接着剤層が積層された接着シートにおける接着剤層が前記被着体に臨む位置に当該接着シートを供給する工程と、
上ケース及び下ケースによって内部に前記被着体及び接着シートを収容するとともに、当該接着シートと下ケースとによって単一の密閉空間を形成する工程と、
前記下ケース側から前記密閉空間を減圧する工程と、
減圧状態で前記被着体に前記接着シートを押圧して貼付する工程とを有するシート貼付方法において、
前記接着シートを供給する工程において、前記接着シートと上ケースとの間に空間を形成することなく前記接着シートを供給する工程を有することを特徴とするシート貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−54481(P2012−54481A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197277(P2010−197277)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】