説明

シーラー塗布装置

【課題】アウターフランジ端の形状が変化してもシーラーノズルの位置を変更する必要がなく、ロボットのティーチング工数を低減できるシーラー塗布装置を提供する。
【解決手段】ヘミング加工されたアウターパネル11及びインナーパネル12のうちのアウターパネルの外縁であるアウターフランジ端14にシーラーを塗布する装置であって、ロボット5と、ロボットにフローティング機構4を介して取り付けられたシーラーガン3と、シーラーガンに取り付けられたシーラーノズル2と、シーラーノズルの位置決めをするための位置決めガイド6と、シーラーノズルの高さを調整するためのアジャストボルト10とを備えてなり、位置決めガイドがアウターフランジ端に沿って当接されながら移動する際に、シーラーノズルのセンター部が常にアウターフランジ端に位置するように位置決めガイドとシーラーノズルとが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘミング加工された自動車用パネルのアウターフランジ端に確実にシーラーを塗布することができ、ロボットのティーチング工数を低減できるシーラー塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用パネルの板合わせ部に、水漏れ防止や防錆、気密性保持などの目的のためにシーラーを塗布することが行われているが、この時インナーパネルとアウターパネルをヘミング加工し、アウターパネルの外縁(アウターフランジ端)に確実にシーラーを塗布することが要求されている。
【0003】
従来、アウターフランジ端にシーラーを塗布する装置としては、シーラーノズルをシーラー塗布位置に位置決めするための位置決めガイドと、シーラーノズルをシーラー塗布面に対し適正な高さに位置決めするためのアジャストボルトを備えた装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された装置は、ヘミング加工されたアウターパネルの折り曲げ部分に位置決めガイドを当接させてシーラーノズルの位置決めを行い、またアジャストボルトによりシーラーノズルの高さを調節するものである。
【0005】
このような従来のシーラー塗布装置について図2を用いて具体的に説明する。即ち、図2(a)に示すように、従来のシーラー塗布装置20はシーラーノズル21がシーラーガン22に取り付けられており、シーラーガン22にはシーラーノズル21の位置決めを行うための位置決めガイド23、シーラーノズル21の高さを調整するための進退可能なアジャストボルト24が備えられている。
【0006】
シーラーガン22はバネ25によって位置決めガイド23及びアジャストボルト24に適正な押し付け力を付与することが可能なフローティング機構26を介してロボット27に取り付けられている。
【0007】
ここで、位置決めガイド23は、アウターパネル28とインナーパネル29とをヘミング加工した際のアウターパネル28のアウタープロファイル部(折り曲げ部)210に当接されるようになっており、シーラーをアウターフランジ端211に塗布するためにシーラー塗布装置を移動させる際に、アウターパネル28のアウタープロファイル部210に位置決めガイド23を当接させながら移動させることによってシーラーノズル21の位置が固定され、シーラーが安定して塗布されるようになっている。
【0008】
図2(b)は、図2(a)においてアウターパネル28をA方向から見た図である。図2(b)に示すように、アウターフランジ端211の形状は直線的な外縁ではなく、凹凸部を有していることが一般的である。このような形状において、例えばB−B断面を見た場合、図2(c)に示すようにシーラーノズル21のセンター部が位置決めガイド23から一定の距離、即ちアウターフランジ端211に合致するように位置しており、図2(d)に示すようにアウターフランジ端211を覆うようにシーラー212が塗布される。
【0009】
ところで、図2(b)のC−C断面を見た場合には、B−B断面に比べてアウタープロファイル部210とアウターフランジ端211との距離が長いため、図2(e)に示すようにシーラーノズル21の位置が図2(c)のままでは図2(f)に示すようにシーラー212はアウターフランジ端211を覆うことができず、アウタープロファイル部側に塗布されることになる。従ってこのような状況を避けるために、通常シーラーを塗布する前にシーラー212がアウターフランジ端211を覆うことができるようにシーラーノズル21の位置を変更すべくロボットティーチングの修正を行っている。
【0010】
【特許文献1】特開2004―16883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように従来の技術においては、アウタープロファイル部とアウターフランジ端との距離が一定していない形状の場合、シーラーノズルがアウターフランジ端の形状に追従できないので、アウターフランジ端の形状に応じてシーラーがアウターフランジ端を覆うようにシーラーノズルの位置を変更する必要があり、ロボットのティーチング工数が増加するという問題があった。
【0012】
本発明は、上記難点を解消するためになされたもので、アウターフランジ端の形状が変化してもシーラーノズルの位置を変更する必要がなく、ロボットのティーチング工数を低減できるシーラー塗布装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明によるシーラー塗布装置の第1の態様は、ヘミング加工されたアウターパネル及びインナーパネルのうちのアウターパネルの外縁であるアウターフランジ端にシーラーを塗布する装置であって、ロボットと、ロボットにフローティング機構を介して取り付けられたシーラーガンと、シーラーガンに取り付けられたシーラーノズルと、シーラーノズルの位置決めをするための位置決めガイドと、シーラーノズルの高さを調整するためのアジャストボルトとを備えてなり、位置決めガイドがアウターフランジ端に沿って当接されながら移動する際に、シーラーノズルのセンター部が常にアウターフランジ端に位置するように位置決めガイドとシーラーノズルとが配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明によるシーラー塗布装置の第2の態様は、第1の態様において、位置決めガイドはアウターフランジ端に沿って当接されながら移動する際に回転可能とされていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明によるシーラー塗布装置の第3の態様は、第1または第2の態様において、位置決めガイドは位置決めガイドの高さ方向の位置を進退自在に調整できる位置決めガイド調整部に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明によるシーラー塗布装置の第4の態様は、第3の態様において、位置決めガイド調整部は位置決めガイドを取り付けるための位置決めガイド支持板及びナットからなることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明によるシーラー塗布装置の第5の態様は、第1から第4の態様の何れか一つの態様において、位置決めガイドは耐摩耗性材料からなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明によるシーラー塗布装置の第6の態様は、第5の態様において、位置決めガイドはタングステンからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、位置決めガイドをアウターフランジ端に沿って当接させながら移動させることで、位置決めガイドがアウターフランジ端の形状に追従できるとともにシーラーノズルのセンター部が常にアウターフランジ端に位置するように位置決めガイドとシーラーノズルとが配置されているので、アウターフランジ端の形状が変化してもシーラーノズルの位置を変更する必要がなく、従ってロボットのティーチング工数を低減可能なシーラー塗布装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明によるシーラー塗布装置の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明のシーラー塗布装置を説明するための図である。図1(a)において、本発明のシーラー塗布装置1は、シーラーノズル2がシーラーガン3に取り付けられており、シーラーガン3はフローティング機構4を介してロボット5に取り付けられている。
【0022】
またシーラーノズル2の位置を決定するための位置決めガイド6が位置決めガイド調整部7に取り付けられている。位置決めガイド調整部7は位置決めガイド6を取り付けるための位置決めガイド支持板8とナット9、9からなるもので、位置決めガイド6を高さ方向に進退自在に調整できるようになっている。そして、この位置決めガイド支持板8がシーラーガン3に取り付けられている。
【0023】
さらに、シーラーノズル2の高さを調整するための進退可能なアジャストボルト10がシーラーガン3に取り付けられており、このアジャストボルト10、位置決めガイド6がアウターパネル11及びインナーパネル12からなる自動車用パネルにバネ13を備えたフローティング機構4により適切な力で押し付けられるようになっている。フローティング機構4はロボット5に取り付けられている。
【0024】
本発明のシーラー塗布装置1はヘミング加工されたアウターパネル11及びインナーパネル12のうちのアウターパネル11の外縁、即ちアウターフランジ端14に沿って位置決めガイド6が当接されながら移動できるようになっている。この時、シーラーノズル2は図1(a)のA方向から見た図1(b)において、矢印で示すシーラー塗布方向に対して位置決めガイド6から一定の距離Lを隔てて位置決めガイド6の後方に配置されている。
【0025】
ここで、シーラーノズル2と位置決めガイド6とは、アウターパネル11を図1(a)のB方向から見た図1(c)に示すように、位置決めガイド6がアウターフランジ端14に沿って当接されて移動する際にシーラーノズル2のセンター部が常にアウターフランジ端14に位置するように配置されている。
【0026】
このような構成を有する本発明のシーラー塗布装置1は、位置決めガイド6がアウターフランジ端14に沿って当接しながら移動する際に、位置決めガイド6がアウターフランジ端14の形状に追従できるとともにシーラーノズル2のセンター部が常にアウターフランジ端14に位置するようにシーラーノズル2と位置決めガイド6が配置されているので、アウターフランジ端14が凹凸部を有し、その形状が変化したとしてもシーラーノズル2の位置を変更する必要がなく、従ってロボットのティーチング工数を低減することができる。
【0027】
なお、図1(d)に示すように、位置決めガイド6はアウターフランジ端14に沿って当接しながら移動する際に適宜な手段により回転可能な構成とすることが好ましい。このようにすると位置決めガイド6の移動が滑らかとなり、シーラー塗布を安定して行うことができる。
【0028】
また、シーラー塗布回数を重ねるに連れて位置決めガイド6の先端部が摩耗した場合には、位置決めガイド調整部7のナット9、9を緩め、位置決めガイド6をインナーパネル12上の適正な高さに調整することができる。この時位置決めガイド6が滑らかにパネル上を移動できるように一度位置決めガイド6を取り外し、先端部を初期状態になるように加工してから位置決めガイド支持板8に再び取り付け、位置決めガイド調整部7により高さを調整することも可能である。
【0029】
さらに、位置決めガイド6は上記したようにインナーパネル12上をアウターフランジ端14に沿って当接しながら移動するので摩耗の可能性があるため耐摩耗性のある材料で構成することが好ましい。用いられる材料としては特に限定はないが、例えばタングステンを使用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のシーラー塗布装置を説明する図である。
【図2】従来のシーラー塗布装置を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・・・シーラー塗布装置
2・・・・・シーラーノズル
3・・・・・シーラーガン
4・・・・・フローティング機構
5・・・・・ロボット
6・・・・・位置決めガイド
7・・・・・位置決めガイド調整部
8・・・・・位置決めガイド支持板
9・・・・・ナット
10・・・・アジャストボルト
11・・・・アウターパネル
12・・・・インナーパネル
13・・・・バネ
14・・・・アウターフランジ端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘミング加工されたアウターパネル及びインナーパネルのうちの前記アウターパネルの外縁であるアウターフランジ端にシーラーを塗布する装置であって、ロボットと、ロボットにフローティング機構を介して取り付けられたシーラーガンと、シーラーガンに取り付けられたシーラーノズルと、シーラーノズルの位置決めをするための位置決めガイドと、シーラーノズルの高さを調整するためのアジャストボルトとを備えてなり、前記位置決めガイドが前記アウターフランジ端に沿って当接されながら移動する際に、前記シーラーノズルのセンター部が常に前記アウターフランジ端に位置するように前記位置決めガイドと前記シーラーノズルとが配置されていることを特徴とするシーラー塗布装置。
【請求項2】
前記位置決めガイドは前記アウターフランジ端に沿って当接されながら移動する際に回転可能とされていることを特徴とする請求項1記載のシーラー塗布装置。
【請求項3】
前記位置決めガイドは当該位置決めガイドの高さ方向の位置を進退自在に調整できる位置決めガイド調整部に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシーラー塗布装置。
【請求項4】
前記位置決めガイド調整部は前記位置決めガイドを取り付けるための位置決めガイド支持板及びナットからなることを特徴とする請求項3記載のシーラー塗布装置。
【請求項5】
前記位置決めガイドは耐摩耗性材料からなることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項記載のシーラー塗布装置。
【請求項6】
前記位置決めガイドはタングステンからなることを特徴とする請求項5記載のシーラー塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−172455(P2009−172455A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10617(P2008−10617)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】