説明

シールド掘進機の掘削断面土層判定装置および判定方法

【課題】 シールド掘進機の前方における土層を精度よく検出することができ、もって効率的な掘削管理に寄与することができるシールド掘進機の掘削断面土層判定装置および判定方法を提供する。
【解決手段】 シールド掘進機1の切羽側には複数のカッタビット30が設けられており、カッタヘッド2の回転中心となる中心軸から異なる距離をおいて配置された複数のカッタビット30に歪ゲージ41が取り付けられている。歪ゲージ41では、カッタヘッド2を回転させて掘進を行う際のカッタビット30の歪値を検出する。掘進管理装置47では、歪ゲージ41で検出される各カッタビット30の歪値と、カッタビット30の位置に基づいて、シールド掘進機1の切羽側における土層を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の掘削断面における土層を判定するシールド掘進機の掘削断面土層判定装置および判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機によって地中を掘進する際、掘進する地盤の土層に基づいて異なる掘削方式とするものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、シールド掘進機によって地中を掘進する際、掘進する地盤の土層に基づく掘削管理が行われる。ここで行われる掘削管では、いわゆる泥土圧式シールド掘進機では、この土層データに基づいて、切羽土圧設定、加泥材添加量調整、排出土量調整などが行われる。また、いわゆる泥水式シールド掘進機では、切羽水圧設定、送泥水性状、送排泥流量調整などが行われる。これらの目的のため、シールド掘進機が掘進する地盤の土層を調査することは重要となる。
【0003】
従来、シールド掘進機が掘進する地盤の土層を調査する地盤の調査方法としては、事前に調査したボーリングデータ、掘進時のシールド掘進機に掛かるシールド掘進機負荷データ、排出される土砂や泥水の性状データからシールド掘進機前方の土層を想定する方法が採られていた。
【特許文献1】特開2000−297595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の地盤の土層調査方法では、ボーリングデータを得るにあたり、調査箇所間の距離が約500m程度離れることとなる。このため、ボーリングデータを採取したとしても、既知点以外の土層境界を判定することが困難であるという問題があった。
【0005】
また、シールド掘進機負荷データおよび排出される土砂や泥水の性状データを分析することにより、土層境界や介在層の存在はある程度検出することができる。しかし、掘削土や泥水がチャンバ内で攪拌されることから、掘削断面における土層境界や介在層の位置や存在程度を把握することが困難であった。このため、効率的な掘削管理を行うことが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、シールド掘進機の前方における土層を精度よく検出することができ、もって効率的な掘削管理に寄与することができるシールド掘進機の掘削断面土層判定装置および判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係るシールド掘進機の掘削断面土層判定装置は、掘進方向に沿ってみた切羽側に複数のカッタビットが取り付けられたカッタヘッドを備えるシールド掘進機を有し、カッタヘッドは、掘進方向に沿った中心軸周りに回転可能とされ、カッタヘッドにおける切羽側に、複数の切削抵抗測定手段が設けられ、複数の切削抵抗測定手段は、互いに中心軸から異なる距離をおいて配置されており、複数の切削抵抗測定手段によって測定された切削抵抗の分布に基づいて、シールド掘進機の掘削断面の土層を判定する掘削断面土層判定部を備えるものである。
【0008】
本発明に係るシールド掘進機の掘削断面土層判定装置では、複数の切削抵抗測定手段が設けられ、互いに中心軸から異なる距離における切削抵抗の分布に基づいて、シールド掘進機の掘削断面の土層を判定する。このため、切削抵抗測定手段が設けられている間隔ごとに土層境界や介在層を検出することができる。したがって、シールド掘進機の前方における土層を精度よく検出することができ、もって効率的な掘削管理に寄与することができる。
【0009】
ここで、複数のカッタビットは、カッタヘッドにおける互いに中心軸から異なる距離をおいた位置に配置されており、複数の切削抵抗測定手段は、複数のカッタビットにそれぞれ設けられている態様とすることができる。
【0010】
このように、切削抵抗測定手段がカッタビットに設けられていることにより、カッタビットに掛かる荷重から切削抵抗を測定することができる。したがって、切削抵抗を測定する測定装置の簡素化を図ることができる。また、カッタビットに掛かる切削抵抗を測定しているので、シールド掘進機前方の土層を早い段階で検出することができる。
【0011】
また、切削抵抗測定手段は、切削抵抗測定手段が設けられたカッタビットの歪みを計測する歪ゲージである態様とすることができる。
【0012】
このように、切削抵抗測定手段が歪ゲージであることにより、カッタビットの歪みによってカッタビットに掛かる切削抵抗を精度よく測定することができる。
【0013】
さらにカッタビットにおける掘進方向に沿ってみた坑口側に、切削抵抗測定手段を設ける取付凹部が形成されている態様とすることができる。
【0014】
このように、カッタビットに取付凹部が形成されていることにより、切削抵抗測定手段を配置するスペースを削減することができる。
【0015】
また、切削抵抗測定手段は、カッタヘッドにおける掘進方向に沿ってみた切羽側に設けられた検出ロッドと、検出ロッドに掛かる荷重を計測するロードセルと、を備える態様とすることができる。
【0016】
このように、切削抵抗測定手段としては、検出ロッドおよびロードセルを用いたものとすることもできる。
【0017】
さらに、上記掘削断面土層判定部の判定結果に基づいて、シールド掘進機の掘進管理を行う態様とすることができる。
【0018】
このように、掘削土層判定部の判定結果に基づいてシールド掘進機の掘削管理を行うことにより、効率的な掘削管理を行うことができる。
【0019】
他方、上記課題を解決した本発明に係るシールド掘進機の掘削断面土層判定方法は、掘進方向に沿ってみた切羽側に複数のカッタビットが取り付けられ、掘進方向に沿った中心軸回りに回転可能なカッタヘッドを備えるシールド掘進機のカッタヘッドにおける切羽側に、互いに中心軸から異なる距離をおいて配置されて設けられた複数の切削抵抗測定手段によってそれぞれ切削抵抗を測定し、複数の切削抵抗測定手段によって測定された切削抵抗の分布に基づいて、シールド掘進機の掘削断面の土層を、掘削断面土層判定部によって判定することを特徴とする。
【0020】
また、掘削断面土層判定部によって判定したシールド掘進機の掘削断面の土層の履歴を記憶しており、掘削断面の土層の履歴に基づいて、現在位置におけるシールド掘進機の掘削断面より前方の土層を予想する態様とすることができる。
【0021】
このように、掘削断面の土層の履歴に基づいて、現在位置におけるシールド掘進機の掘削断面より前方の土層を予想することにより、現在位置におけるシールド掘進機の掘削断面より前方の土層を精度よく予想することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るシールド掘進機の掘削断面土層判定装置および判定方法によれば、シールド掘進機の前方における土層を精度よく検出することができ、もって効率的な掘削管理に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。図1は本実施形態に係る掘削断面土層判定装置を備えるシールド掘進機の模式的構成図、図2はシールド掘進機の正面図、図3はカッタビットを示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るシールド掘進機1は、いわゆる泥土圧式シールド掘進機であり、カッタヘッド2を備えている。カッタヘッド2の坑口側には、外筒部3が設けられている。さらに外筒部3よりも坑口側にはセグメントが組み立てられて形成されたシールドトンネルTが設けられており、シールドトンネルT内には後続台車4が配設されている。また、シールドトンネルTの坑口側には、立坑5が構築されている。
【0025】
また、シールド掘進機1には、スクリュコンベアSが設けられており、チャンバ内に滞留する土砂を排出する。さらに、シールドトンネルT内には、シールド掘進機1で掘削された土砂を立坑5まで搬送するベルトコンベア6が設けられている。スクリュコンベアSは、チャンバ内の土砂をベルトコンベアまで搬送している。ベルトコンベア6には、ベルトコンベア6で搬送される土砂の搬送量を計測するベルトスケール6Aが取り付けられている。
【0026】
さらに、シールドトンネルT内には、加泥材注入管7を介してチャンバに加泥材を供給するための加泥材注入ポンプ8が設けられている。また、加泥材注入管7には、加泥材注入ポンプ8から供給される加泥材の流量を検出する加泥材流量計9が設けられている。
【0027】
さらに、カッタヘッド2は、シールド掘進機1の掘進方向に沿った中心軸回りに回転可能とされている。このカッタヘッド2には、カッタヘッド2を回転させる回転モータ10が取り付けられており、カッタヘッド2には、ロータリジョイント11が取り付けられている。また、ロータリジョイント11には、カッタヘッド2の回転角度を検出するカッタ回転角検出装置としてのロータリエンコーダ12が取り付けられている。さらに、カッタヘッド2には、チャンバ内の土圧を計測する土圧計13が設けられている。
【0028】
また、図2に示すように、カッタヘッド2におけるシールド掘進機1の進行方向に沿ってみた切羽側には、正面視して放射状に配設された複数本、本実施形態では6本のカッタスポーク21〜26が設けられている。そのうちの4本のカッタスポーク21〜24には、切羽の掘削を行う複数のカッタビット30が取り付けられている。複数のカッタビット30は、各カッタスポーク21〜24上において、その軸方向に略等間隔で離間して配置されている。
【0029】
また、図3に示すように、カッタビット30の基端部は、カッタスポーク21〜26に対して溶接によって固定されている。ただし、カッタビット30としては、いわゆるリレービット方式のものを用いることもできる。リレービット方式のものを用いた場合、シールド掘進機1内において、カッタビット30の交換が可能となる。
【0030】
また、カッタビット30の先端部分は中実とされている。その一方、カッタビット30の基端部分には凹部32が形成されている。カッタビット30に形成された凹部32は、カッタビット30の基端部をわずかに切り欠いた程度の大きさとして形成されている。
【0031】
カッタスポーク21〜24に取り付けられた複数のカッタビット30のうち、図2に斜線を付して示す一部のカッタビット30に、切削抵抗測定手段である歪ゲージ41が取り付けられている。具体的には、第1カッタスポーク21の軸方向に並べられた複数のカッタビット30のうち、およそ半数のカッタビット30に歪ゲージ41が取り付けられており、歪ゲージ41が取り付けられたカッタビット30と歪ゲージ41が取り付けられていないカッタビット30とが交互に配置されている。こうして、複数の歪ゲージ41が、互いにカッタヘッド2の回転中心となる中心軸から異なる距離をおいて配置されている。
【0032】
歪ゲージ41は、カッタスポーク21〜24に対するカッタビット30の歪値を検出している。また、歪ゲージ41には、通信線42Aの一端部が接続されており、通信線42Aの他端部は、カッタヘッド2内に配設された第1中継装置43に接続されている。また、後続台車4、立坑5、および地上にはそれぞれ第2中継装置44、第3中継装置45、および第4中継装置46が設けられて、互いに同軸ケーブル42Bを介して接続されている。
【0033】
このうち、第1中継装置43と第2中継装置とに接続される同軸ケーブル42Bは、ロータリジョイント11を通じて配設されている。これらの第1中継装置43〜第4中継装置46としては、多重伝送装置が用いられている。また、地上に設けられた第4中継装置46には、本発明の掘削断面土層判定部となる掘進管理装置47が接続されている。歪ゲージ41は、中継装置43〜46を介して、カッタビット30の歪値を掘進管理装置47に送信する。
【0034】
カッタヘッド2を回転させてシールド掘進機1による掘進を行う際、シールド掘進機1の前方の地山から荷重を受けると、その荷重の大きさに応じて切削抵抗が上下し、この切削抵抗に応じた歪みがカッタビット30に生じる。掘進管理装置47では、歪ゲージ41から送信されたカッタビット30に生じた歪値に基づいてカッタビット30に掛かる切削抵抗を検出する。
【0035】
また、掘進管理装置47は、カッタヘッド2の回転中心−各カッタビット30間の長さを記憶している。掘進管理装置47では、ロータリエンコーダ12で検出されたカッタヘッド2の回転角度と、カッタヘッド2の回転中心−カッタビット30間の長さとに基づいて、カッタビット30の位置を検出する。さらに、掘進管理装置47は、各カッタビットの位置および各カッタビット30のそれぞれに掛かる切削抵抗に基づいて、シールド掘進機1における前方の地山の土層を判定する。
【0036】
また、カッタヘッド2内に設けられた第1中継装置43には、回転モータ10、ロータリエンコーダ12、および土圧計13が接続されており、立坑5に設けられた第3中継装置45には、通信線42Aを介してベルトスケール6A、加泥材注入ポンプ8、および加泥材流量計9に接続されている。
【0037】
さらに、ロータリエンコーダ12は、中継装置43〜46を介して、カッタヘッド2の回転角度を掘進管理装置47に送信する。また、土圧計13は、中継装置43〜46を介して、およびチャンバ内の土圧を掘進管理装置47に送信する。さらに、ベルトスケール6Aは、中継装置45,46を介して、ベルトコンベア6で搬送される土砂の搬送量を掘進管理装置47に送信する。さらに、加泥材流量計9は、中継装置45,46を介して、加泥材の流量を掘進管理装置47に送信する。
【0038】
また、掘進管理装置47は、切羽土圧、加泥材の添加量、排土量の調整を行う。そのために、掘進管理装置47は、判定した土層に基づいて、切羽土圧目標値、加泥材添加量目標値、排土量目標値を算出する。また、算出した切羽土圧目標値と、土圧計13から送信されるチャンバ内の切羽土圧実測値に基づいて、土圧調整量を算出する。さらに、掘進管理装置47は、算出した加泥材添加量目標値と、加泥材流量計9から送信された加泥材の流量実測値に基づいて、加泥材調整量を算出する。また、掘進管理装置47は、算出した排土量目標値と、ベルトスケール6Aから送信された土砂の搬送量実測値に基づいて、排土量調整値を算出する。こうして、掘進管理装置47では、切羽土圧、加泥材添加量、排土量の管理を行う。
【0039】
以上の構成を有する本実施形態に係る掘削断面土層判定装置の動作・作用について説明する。
【0040】
シールド掘進機1における掘進を行う際には、回転モータ10によってカッタヘッド2を回転させて、カッタビット30によってシールド掘進機1の前方における地山を掘削しながら前進する。カッタビット30で地山を掘削して発生する土砂は、チャンバ内に取り込まれ、チャンバからスクリュコンベアSによりベルトコンベア6まで排出され、ベルトコンベア6によって立坑5まで搬送する。ここで、チャンバ内では、カッタヘッド2を地山に押し付け、掘削された土砂を攪拌するとともに、加泥材を供給して土砂流動性を維持するようにする。チャンバ内の土圧は、土圧計13によって計測されている。チャンバ内の土砂の量の調整は、スクリュコンベアSによる土砂の搬送量の調整によって行われる。
【0041】
シールド掘進機1による掘進を行うと、カッタビット30には、カッタヘッド2の回転に伴う荷重が掛かり、この荷重による切削抵抗を受けたカッタビット30には歪みが生じる。ここでカッタビット30に生じる歪みは、カッタビット30が掘削を行う土層の種類(硬度)に応じて変動する。歪ゲージ41では、カッタビット30の歪値を検出し、歪値信号を掘進管理装置47に送信している。また、ロータリエンコーダ12は、カッタヘッド2の回転角度を検出し、回転角度信号を掘進管理装置に送信している。掘進管理装置47では、歪ゲージ41から送信された歪値信号およびカッタヘッド2の回転角度に基づいて、シールド掘進機1における前方の土層を判定する。
【0042】
たとえば、図4に示すように、第1カッタスポーク21には、歪ゲージ41が設けられたカッタビット30として、外側から順に第1カッタビット30A、第2カッタビット30B、第3カッタビット30C、および第4カッタビット30Dが設けられているものとする。ここで、掘進管理装置47では、ロータリエンコーダ12によって検出されるカッタヘッド2の回転角度と、予め記憶しているカッタヘッド2の回転中心−各カッタビット30A〜30D間の長さから各カッタビット30A〜30Dの位置を検出する。
【0043】
また、各カッタビット30A〜30Dにおける歪ゲージ41では、各カッタビット30A〜30Dの歪値を検出する。シールド掘進機1が掘削を行う際には、カッタヘッド2を回転させてカッタビット30の掘削力を利用する。このため、シールド掘進機1の前方の土層の硬度に応じて、カッタビット30に掛かる切削抵抗が上下する。
【0044】
たとえば、カッタビット30の前方の土層が軟弱土層L1である場合には、歪ゲージ41の歪値は5με程度、カッタビット30の前方の土層が通常土層L2である場合には、歪ゲージ41の歪値は10με程度、カッタビット30の前方の土層が硬質土層L3である場合には、歪ゲージ41の歪値は15με程度となる。このように、歪ゲージ41で検出される歪値はシールド掘進機1の前方の土層の硬度に応じて上下する。
【0045】
掘進管理装置47は、検出した各カッタビット30A〜30Dの位置と、各カッタビット30A〜30Dから送信された歪値に基づいて、シールド掘進機1の前方の土層を判定する。たとえば、図4に示すように、シールド掘進機1の前方の土層が、軟弱土層L1、通常土層L2、硬質土層L3であったとする。
【0046】
この場合、第1カッタスポーク21が位置P1にあるときには、第1カッタビット30A〜第3カッタビット30Cの歪値が15με程度となり、第4カッタビット30Dの歪値が10με程度となる。また、第1カッタスポーク21が位置P2にあるときには、第1カッタビット30Aおよび第4カッタビット30Dの歪値が10με程度となり、第2カッタビット30Bおよび第3カッタビット30Cの歪値が5με程度となる。これらの各カッタビット30A〜30Dにおける歪ゲージ41で検出された歪値に基づいて、シールド掘進機1の前方における軟弱土層L1、通常土層L2、硬質土層L3の分布を検出することができ、土層を判定することができる。
【0047】
このように、カッタヘッド2の回転によってカッタビット30に歪値を検出し、カッタヘッド2を回転させ続けると、カッタヘッド2の前方全域におけるカッタビット30の歪値を検出することができる。この歪値の検出を継続することにより、たとえば図5に示すような切削抵抗マップを作成することができる。この切削抵抗マップに基づいて、シールド掘進機1の前方における土層境界などを含めた土層を精度よく判定することができる。
【0048】
こうして、シールド掘進機1の前方における土層の判定を行ったら、掘進管理装置47において、判定した土層に応じて、切羽土圧目標値、加泥材添加量目標値、排土量目標値を算出する。そして、これらの目標値に基づく調整値を求める。たとえば、軟弱土層が多い場合には、掘削土圧を高くし、加泥材添加量を多くし、排土量を少なくした調整値を求める。逆に、硬質土層が多い場合には、掘削土圧を低くし、加泥材添加量を多くし、排土量を多くした調整値を求める。
【0049】
このとき、掘進管理装置47には、土圧計13からチャンバ内の切羽土圧実測値が送信され、加泥材流量計9から加泥材の流量実測値が送信され、ベルトスケール6Aから土砂の搬送量実測値が送信される。これらの実測値と目標値に基づいて、調整値を算出している。ここで求められる切羽土圧目標値、加泥材添加量目標値、排土量目標値は、土層に応じた目標値として求められているので、施工管理に好適な目標値とすることができる。このため、この目標値を用いて調整値を算出することから、施工管理に好適な調整値を求めることができる。したがって、軟弱土層を特定した土圧目標値の設定や介在層を特定した排土量目標値の設定を行うことにより、周辺地盤変状の抑制を可能とすることができる。さらに、加泥材添加量目標値を好適な範囲とすることができるので、改質材の使用量の抑制を図ることができる。また、シールド掘進機1における切羽側の土層を精度よく判定することができるので、土層変化に対して確実に対応することができ、チャンバ内の土砂閉塞などの発生を防止することができる。
【0050】
また、歪ゲージ41からは、カッタビット30の歪値がリアルタイムで送信されている。このため、シールド掘進機1の前方における土層をリアルタイムで判定することができ、図5に示すような切削抵抗マップをリアルタイムで生成することができる。したがって、シールド掘進機1の施工管理もリアルタイムで行うことができ、精度のよい掘進作業に寄与することができる。
【0051】
しかも、歪ゲージ41で検出するカッタビット30の歪みは、カッタヘッド2における切羽側で生じているものである。このため、たとえばチャンバから排出される土砂や泥水の性状データからシールド掘進機前方の土層を想定する場合よりも、早い段階で土層の判定を行うことができる。したがって、時間的な遅れが少ない状態でシールド掘進機1の施工管理を行うことができる。
【0052】
さらに、施工管理を行うにあたり、土層判定の履歴を記憶しておき、土層の変化の様子から、これから掘進するシールド掘進機1の前方における土層を想定することができる。たとえば、図6に示すように、時刻(t−4)の時点の位置で、シールド掘進機1の上方に軟弱土層が存在し、下方に硬質土層が存在し、軟弱土層と硬質土層との間に介在層が存在する構成の土層が判定されたとする。
【0053】
その後、シールド掘進機1による掘進が進むにつれ、時刻(t−4)〜時刻(t−1)にいたる間に、硬質土層が上方まで介在し、軟弱土層の深さは変わらずに、介在層が狭くなってきたとする。この場合、時刻(t−4)〜時刻(t−1)における掘削断面の土層の履歴に基づいて、シールド掘進機1の前方の土層を予想することができる。ここでの例では、時刻(t−4)〜時刻(t−1)における掘削断面の土層の履歴から、シールド掘進機1の前方では、介在層がより狭くなっていく土層を予想することができる。このように、シールド掘進機1の前方の土層を想定することにより、その土層を精度よく予想することができる。また、その想定結果をシールド掘進機1における掘進管理に反映させることにより、掘進管理の容易化を図ることができる。また、シールド掘進機1における前方の土層について、ボーリング調査などによって予め調査することにより、シールド掘進機1の前方の土層をさらに精度よく想定することができる。
【0054】
他方、これらの土層判定を記憶することにより、シールド掘進機1で施工されたシールド掘進機1の周囲の土層を精度よく判定することができる。このため、シールド掘進機1によって施工したシールドトンネルをその後に切り拡げてランプ部を施工する場合などトンネル周辺に近接構造物を施工する際にトンネルに沿って得られた土層構成を利用することにより、安全かつ確実な施工を行うことができる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るシールド掘進機は、上記第1の実施形態と比較して、切削抵抗測定手段の態様が主に異なる。図7に示すように、本実施形態に係るシールド掘進機50は、カッタヘッド2を備えており、カッタヘッド2にはカッタスポークが取り付けられている。また、カッタスポークには、複数のカッタビット30が取り付けられている。これらの点では、上記第1の実施形態と同様である。また、本実施形態に係るシールド掘進機50におけるカッタヘッド2には、その掘進方向に沿ってみた切羽側に検出ロッド51が設けられている。また、カッタヘッド2における坑口側には、検出ロッド51に係る荷重を検出するロードセル52が設けられている。これらの検出ロッド51およびロードセル52は、カッタヘッド2の回転中心となる中心軸からそれぞれ異なる距離をおいた複数の位置に配設されている。その他の点は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0056】
以上の構成を有する本実施形態に係るシールド掘進機50では、上記第1の実施形態に係るシールド掘進機と同様、カッタヘッド2を回転させて、カッタビット30によってシールド掘進機1の前方における地山を掘削しながら前進する。カッタヘッド2を回転させてシールド掘進機1による掘進を行うと、カッタヘッド2の回転に伴い、検出ロッド51に荷重が掛かる。ここで検出ロッド51に掛かる荷重は、検出ロッド51が設けられている位置における土層の種類(硬度)に応じて変動する。この検出ロッド51に掛かる荷重をロードセル52によって検出することにより、現在の検出ロッド51の位置における土層の判定を行うことができる。
【0057】
また、現在の検出ロッド51の位置については、カッタヘッド2の回転中心から検出ロッド51までの距離およびカッタヘッド2の回転角度に基づいて求めることができる。こうして、検出ロッド51の現在の位置および検出ロッド51の現在の位置における検出ロッド51に掛かる荷重により、シールド掘進機50における切羽側の土層を判定することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記各実施形態では、シールド掘進機として、いわゆる泥土圧式シールド掘進機を用いているが、いわゆる泥水式シールド掘進機とすることもできる。泥水式シールド掘進機を用いる場合には、施工管理を行うにあたり、切羽土圧、加泥材添加量、排出土量の調整に代えて、切羽水圧、送泥水性状、送排泥流量の調整を行うこととなる。
【0059】
また、上記第1の実施形態では、1本のカッタスポーク21におけるカッタビット30に歪ゲージ41を複数設けているが、カッタスポーク21〜26のうちの複数のカッタスポークにおけるカッタビット30に歪ゲージ41を設ける態様とすることもできる。あるいは、カッタスポーク21〜26が設けられてない態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では同軸ケーブル42Bを介した有線方式でデータの送受信を行っているが、バルクヘッドの前方と後方との間で、いわゆる無線方式でデータの送受信を行う態様とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】掘削断面土層判定装置を備えるシールド掘進機の模式的構成図である。
【図2】シールド掘進機の正面図である。
【図3】カッタビットを示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
【図4】カッタヘッドの回転態様を示すシールド掘進機の正面図である。
【図5】切削抵抗マップの例を示す図である。
【図6】シールド掘進機による土層判定の履歴を説明する模式図である。
【図7】第二の実施形態に係る掘削断面土層判定装置を備えるシールド掘進機の要部側断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1…シールド掘進機
2…カッタヘッド
3…外筒部
4…後続台車
5…立坑
6…ベルトコンベア
6A…ベルトスケール
7…加泥材注入管
8…加泥材注入ポンプ
9…加泥材流量計
10…回転モータ
11…ロータリジョイント
12…ロータリエンコーダ
13…土圧計
21〜26…カッタスポーク
30…カッタビット
30A…第1カッタビット
30B…第2カッタビット
30C…第3カッタビット
30D…第4カッタビット
32…凹部
41…歪ゲージ
42…同軸ケーブル
43〜46…中継装置
47…掘進管理装置
50…シールド掘進機
51…検出ロッド
52…ロードセル
B…ボルト
C…チャンバ
L1…軟弱土層
L2…通常土層
L3…硬質土層
S…スクリュコンベア
T…シールドトンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進方向に沿ってみた切羽側に複数のカッタビットが取り付けられたカッタヘッドを備えるシールド掘進機を有し、
前記カッタヘッドは、前記掘進方向に沿った中心軸周りに回転可能とされ、
前記カッタヘッドにおける切羽側に、複数の切削抵抗測定手段が設けられ、
前記複数の切削抵抗測定手段は、互いに前記中心軸から異なる距離をおいて配置されており、
前記複数の切削抵抗測定手段によって測定された切削抵抗の分布に基づいて、前記シールド掘進機の掘削断面の土層を判定する掘削断面土層判定部を備えることを特徴とするシールド掘進機の掘削断面土層判定装置。
【請求項2】
前記複数のカッタビットは、前記カッタヘッドにおける互いに前記中心軸から異なる距離をおいた位置に配置されており、
前記複数の切削抵抗測定手段は、前記複数のカッタビットにそれぞれ設けられている請求項1に記載のシールド掘進機の掘削断面土層判定装置。
【請求項3】
前記切削抵抗測定手段は、前記切削抵抗測定手段が設けられた前記カッタビットの歪みを計測する歪ゲージである請求項2に記載のシールド掘進機の掘削断面土層判定装置。
【請求項4】
前記カッタビットにおける掘進方向に沿ってみた坑口側に、前記切削抵抗測定手段を設ける取付凹部が形成されている請求項2または請求項3に記載のシールド掘進機の掘削断面土層判定装置。
【請求項5】
前記切削抵抗測定手段は、前記カッタヘッドにおける前記掘進方向に沿ってみた切羽側に設けられた検出ロッドと、前記検出ロッドに掛かる荷重を計測するロードセルと、を備える請求項1に記載のシールド掘進機の掘削断面土層判定装置。
【請求項6】
請求項1に記載された掘削断面土層判定部の判定結果に基づいて、前記シールド掘進機の掘進管理を行うシールド掘進機の掘進管理装置。
【請求項7】
掘進方向に沿ってみた切羽側に複数のカッタビットが取り付けられ、前記掘進方向に沿った中心軸回りに回転可能なカッタヘッドを備えるシールド掘進機の前記カッタヘッドにおける切羽側に、互いに前記中心軸から異なる距離をおいて配置されて設けられた複数の切削抵抗測定手段によってそれぞれ切削抵抗を測定し、
前記複数の切削抵抗測定手段によって測定された切削抵抗の分布に基づいて、前記シールド掘進機の掘削断面の土層を、掘削断面土層判定部によって判定することを特徴とするシールド掘進機の掘削断面土層判定方法。
【請求項8】
前記掘削断面土層判定部によって判定した前記シールド掘進機の掘削断面の土層の履歴を記憶しており、
前記掘削断面の土層の履歴に基づいて、現在位置における前記シールド掘進機の掘削断面より前方の土層を予想する請求項7に記載のシールド掘進機の掘削断面土層判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−221802(P2009−221802A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69933(P2008−69933)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】