シールド電線の止水構造
【課題】シールド電線のドレン線から延長電線への素線間の水の浸入を確実に防止し、ドレン線と延長電線との接続や防水処理を少ない部品と工数でコンパクトに行わせる。
【解決手段】シールド電線1のドレン線2に端子を介して延長電線5の一端部5aを接続し、延長電線の他端部を防水コネクタ11内に配置する構造において、端子12は、延長電線5の一端部5aを液密に挿入するための筒状部13と、筒状部内に一端部を閉じ込める空間を形成する封止壁14とを備え、一端部とドレン線とを封止壁を介して隔絶した。例えば、封止壁14から筒状部とは反対側に突出した端子部16にドレン線側の端子部6又はドレン線2を接続した。
【解決手段】シールド電線1のドレン線2に端子を介して延長電線5の一端部5aを接続し、延長電線の他端部を防水コネクタ11内に配置する構造において、端子12は、延長電線5の一端部5aを液密に挿入するための筒状部13と、筒状部内に一端部を閉じ込める空間を形成する封止壁14とを備え、一端部とドレン線とを封止壁を介して隔絶した。例えば、封止壁14から筒状部とは反対側に突出した端子部16にドレン線側の端子部6又はドレン線2を接続した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンルームと車室側とを接続するシールド電線のアース用のドレン線の素線間の止水を行わせるシールド電線の止水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10(a)(b)は、従来の電線の止水構造の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この構造は、図10(a)の如く、電線71の一端に丸型板端子(LA端子)72を接続し、電線71の他端に防水コネクタ73を接続し、電線71の中間部を皮剥きして芯線部71aを露出させ、図10(b)の如く、芯線部71aに分岐線74をジョイント接続すると共に、芯線部71aの周囲にシール剤75を充填して防水フィルム76で封止したものである。
【0004】
芯線部71aは複数の素線で構成され、シール剤75で各素線間が防水され、水が素線間を毛細管現象で伝わることが抑止される。図10(a)の端子72は非防水であり、自動車のエンジンルーム内のボディパネル等に接続され、防水コネクタ73は車室側に配置される。
【0005】
上記以外の電線の止水構造として、例えば特許文献2には、電線の芯線部を挿入する端子内に導電性接着剤を充填したことが記載され、特許文献3には、丸型板端子の電線接続部分の外周に接着剤付きの熱収縮チューブを被せることが記載されている(図示せず)。
【0006】
図11は、本出願人が実施している既存のシールド電線の止水構造の一形態を示すものである。
【0007】
この構造は、シールド電線1のアース用のドレン線2に突き合わせ用の中間電線77を介して延長電線(一般電線)5’をジョイント接続し、ドレン線2と中間電線77との接続部78は非防水とし、中間電線77と延長電線5’との接続部79は素線間止水用の接着剤と熱収縮チューブとで防水し、延長電線5’の先端側の端子9とシールド電線1の主線3側の端子19とを各防水ゴム栓10と共に防水コネクタ11内に挿入するものである。
【0008】
中間電線77を用いることで、ドレン線2と延長電線5’とが分断されて、ドレン線2の各素線間を伝わる水が延長電線5’の各素線間に浸入することが阻止される。これにより、エンジンルーム内の気圧や温度変化等に伴う素線間の呼吸作用による水の浸入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平6−86221号公報(図1,図7)
【特許文献2】特開2004−200094号公報(図2)
【特許文献3】特開2000−285983号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の図11のシールド電線の止水構造にあっては、中間電線77とジョイント端子とジョイントテープと、熱溶着等の接続手段と、接着剤と熱収縮チューブといった多くの部品やジョイント接続工数及び止水工数を必要とし、コスト高になるという問題があった。また、延長電線との防水作業性を上げるために中間電線77を長めに形成しなければならず、ドレン線2と中間電線77と延長電線5’との総長さが増大して、構造が肥大化・重量化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、ドレン線から延長電線への素線間の水の浸入を確実に防止することができることは勿論のこと、ドレン線と延長電線との接続や防水処理を少ない部品と工数でコンパクトに行うことができるシールド電線の止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るシールド電線の止水構造は、シールド電線のドレン線に端子を介して延長電線の一端部を接続し、該延長電線の他端部を防水コネクタ内に配置する構造において、前記端子が、前記延長電線の一端部を液密に挿入するための筒状部と、該筒状部内に該一端部を閉じ込める空間を形成する封止壁とを備え、該一端部と前記ドレン線とが該封止壁を介して隔絶されたことを特徴とする。
【0013】
上記構成により、ドレン線の内部(例えば各素線間や編組線間)を伝わった水が端子の封止壁で遮られて延長電線の一端部への水の伝播が阻止される。これにより、ドレン線からの水が延長電線を伝わって防水コネクタ内に浸入することが防止される。延長電線の一端部は例えばその絶縁被覆の外周面が筒状部の内周面に弾性的に液密に接触(密着)する。あるいは、絶縁被覆と筒状部とをシール剤や接着剤やゴム栓等の防水手段を介して液密化することも可能である。
【0014】
請求項2に係るシールド電線の止水構造は、請求項1記載のシールド電線の止水構造において、前記封止壁から前記筒状部とは反対側に突出した端子部に前記ドレン線側の端子部又はドレン線が接続されたことを特徴とする。
【0015】
上記構成により、端子の封止壁から突出した端子部(例えば雄端子部)にドレン線側の端子部(雌端子部)が挿入接続兼係止され、あるいは、端子の封止壁から突出した端子部(例えば前記筒状部を一方とした場合の他方の筒状部やオープンバレル部)にドレン線(露出芯線)が加締め等で接続される。他方の筒状部の開口は一方の筒状部の開口から大きく離間するので、筒状部に沿う水の沿面距離が増大し、ドレン線に沿う水が他方の開口から外部に出たとしても、一方の開口に届く心配はない。
【0016】
請求項3に係るシールド電線の止水構造は、請求項1記載のシールド電線の止水構造において、前記端子としての導電パイプの中間に前記封止壁又は封止壁としての封止ゴム栓が設けられ、該導電パイプの一方の前記筒状部に前記延長電線の一端部、他方に前記ドレン線がそれぞれ挿入接続されたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、導電パイプが一体又は別体の封止壁又は別体の封止ゴム栓で区画され、導電パイプの他方に挿入されて加締め等で接続されたドレン線を伝わる水が封止壁又は封止ゴム栓で遮断され、導電パイプの一方に挿入された延長電線の一端部への水の伝播が封止壁又は封止ゴム栓で阻止される。封止ゴム栓も封止壁の一種である。導電パイプの他方の筒状部の開口は一方の筒状部の開口から大きく離間するので、筒状部に沿う水の沿面距離が増大し、ドレン線を伝わる水が他方の開口から外部に出たとしても、一方の開口に届く心配はない。
【0018】
請求項4に係るシールド電線の止水構造は、請求項1〜3の何れかに記載のシールド電線の止水構造において、前記筒状部の開口と前記延長電線の一端部の外周面とがシール剤や接着剤や防水ゴム栓等の防水手段で液密に封止されたことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、ドレン線の素線間止水とは別に、筒状部の延長電線挿入用の開口から筒状部内への外部の水の浸入がシール剤や接着剤や防水ゴム栓等といった防水手段で確実に防止される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、端子の封止壁によってドレン線から延長電線への素線間浸水を確実に阻止することができ、これにより、防水コネクタの電気的接続の信頼性を高めることができる。また、従来の中間電線やそのジョイント接続が不要であるから、ドレン線と延長電線との接続や防水処理を少ない部品と工数で低コストに行うことができると共に、ドレン線と延長電線との総長さを短縮して構造をコンパクト化することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、例えば延長電線に接続した端子の端子部にドレン線側の端子部を挿入して接続係止させることで、延長電線とドレン線との接続を容易に行うことができる。あるいは、延長電線に接続した端子の端子部にドレン線を直接加締め等で接続させることで、ドレン線側の端子部を不要として部品点数をさらに削減することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、導電パイプ内に封止壁又は封止ゴム栓を介して延長電線とドレン線との両方を収容することで、導電パイプ内のドレン線内を伝わる水から延長電線までの沿面距離を増して、延長電線への水の伝播を確実に防止することができる。また、別体の封止壁や封止ゴム栓を用いることで、端子の形成を容易に行うことができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、ドレン線の素線間止水とは別に、筒状部の延長電線挿入用の開口から筒状部内への外部の水の浸入をシール剤や接着剤や防水ゴム栓等といった防水手段で確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るシールド電線の止水構造の第一の実施形態を示す平面図である。
【図2】同じく延長電線と端子の接続構造を示す、(a)は一部を断面とした側面図、(b)は要部断面図である。
【図3】シールド電線の止水構造の第二の実施形態を示す、(a)は延長電線と端子の接続構造の断面図、(b)(c)は端子とドレン線の接続構造の側面図である。
【図4】第二の実施形態において他の端子を用いた例を示す、(a)は延長電線と端子の接続構造の断面図、(b)(c)は端子とドレン線の接続構造の側面図である。
【図5】シールド電線の止水構造の第三の実施形態を示す、(a)は延長電線の側面図、(b)は延長電線と端子の接続構造の断面図、(c)は端子とドレン線の接続構造の一部を断面とした側面図である。
【図6】シールド電線の止水構造の第四の実施形態を示す、(a)は延長電線の側面図、(b)(c)は延長電線と端子の接続構造の斜視図、(d)は端子とドレン線の接続構造の斜視図である。
【図7】第四の実施形態において他の端子を用いた例を示す、(a)(b)は延長電線と端子の接続構造の斜視図、(c)は端子とドレン線の接続構造の斜視図である。
【図8】シールド電線の止水構造の第五の実施形態を示す、(a)は延長電線の側面図、(b)は延長電線と端子の接続構造の斜視図、(c)は同じく断面図、(d)は端子とドレン線の接続構造の斜視図である。
【図9】第二〜第五の各実施形態のシールド電線の止水構造の完成状態を総括的に示す平面図である。
【図10】従来の電線の止水構造の一形態を示す、(a)は電線の平面図、(b)は止水構造の要部断面図である。
【図11】従来のシールド電線の止水構造の一形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図2は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第一の実施形態を示すものである。
【0026】
この構造は、図1の如く、シールド電線1のアース用のドレン線2の先端に非防水の雌端子(端子部)6を圧着接続し、図2(a)の如く、延長電線(一般電線)5の先端側の芯線部7に防水コネクタ11への挿入用の端子9を接続すると共に、延長電線5の絶縁被覆8の外周に防水ゴム栓10を装着し、図2(b)の如く、延長電線5の基端側の絶縁被覆8aをクローズドバレル端子(端子)12の有底の筒状部13内に挿入すると共に、筒状部13内で底側の封止壁14から前方に突出したニードルピン15を基端側の芯線部7aに挿入接続し、図1の如く、封止壁14から後方に突出した雄端子部(端子部)16を雌端子6に挿入して加締め(圧着)接続するものである。
【0027】
雌端子6はターミナルランス(ポジ端子)とも呼称され、前半の係止ランス付きの電気接触部6aと後半の電線接続部6bとで成り、電線接続部6b内にドレン線2の先端が挿入されて圧着接続され、電気接触部6a内に延長電線5側の端子12の雄端子部16が挿入接続且つ係止される。ドレン線2は導電金属製の複数の素線2aで構成されている。ドレン線2として導電金属製の編組線(図示せず)を撚ったものを用いることも可能である。
【0028】
図2(a)(b)の如く、クローズドバレル端子12はジョイント端子とも呼称され、延長電線5の基端部5aを前端の開口17aから挿入する空間17を内部に有する導電金属製の円形の筒状部13と、筒状部13の底部であり、筒状部13内に延長電線5の基端部5aを封止する円形の封止壁14と、筒状部13の空間17内で封止壁14から前方に突出した導電金属製の尖ったニールドピン15と、封止壁14から後方に突出した一定径ないし一定厚の雄端子部16とで構成されている。雄端子部16を雌端子部に代え、雌端子6(図1)を雄端子に代えることも可能である。
【0029】
図2(b)において、筒状部13内に図示しないシール剤(接着剤)を入れて延長電線5の基端部5aを挿入することも可能である。筒状部13は延長電線5の基端部5aの上からプレス治具で六角加締め等の形態に圧着される。図1において、クローズドバレル端子12と雌端子6とを接続した状態で、絶縁テープ巻き18でシールド電線1の絶縁外皮4と主線3とドレン線2と両端子6,12と延長電線5とを束ねてガタつきなく固定する。
【0030】
図1の如く、封止壁14の内面側に延長電線5の基端が位置し、封止壁14の外面側にドレン線2の先端が位置し、封止壁14で延長電線5の基端とドレン線2の先端とが隔絶されることで、雌端子6側から筒状部13内への水の浸入が阻止される。
【0031】
また、延長電線5の基端側の絶縁被覆8aの外周面が筒状部13の内周面に弾性的に密着し、好ましくは絶縁被覆8aの外周面が筒状部13の内周面13aにシール剤や接着剤で接着されることで、絶縁被覆8に沿う筒状部13内への水の浸入が防止される。
【0032】
延長電線5の先端側の端子9は雄端子でも雌端子でもよく(図では端子9を簡略化して示している)、延長電線5に圧着接続されている(圧接接続する場合は絶縁被覆8の皮剥きは不要である)。防水ゴム栓10は、延長電線5の絶縁被覆8の表面に密着する内径部(図示せず)と、絶縁樹脂製のコネクタハウジング(符号11で代用)の端子収容室(図示せず)の内面に密着する外径部(リップ)10aとを有している。端子9は例えば左右各一対の前側の芯線圧着片と後側の絶縁被覆圧着片(図示せず)とを有し、絶縁被覆圧着片は防水ゴム栓10の先端部を絶縁被覆8に共締め固定する。主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10も同様のものである(主端子19をアース端子9よりも大型とすることも可能である)。
【0033】
両端子9,19は両防水ゴム栓10と共にコネクタハウジング11の各端子収容室内に挿入されて端子収容室内の係止ランス(図示せず)で係止され、少なくともコネクタハウジング11と各端子9,19と各防水ゴム栓10とで防水コネクタが構成される。シールド電線1は、通電用の主電線3とアース用のドレン線2と、両電線2,3を覆う絶縁外皮4とを備えている。ドレン線2として編組線を用いる場合、編組線は主電線3を覆い、編組線を絶縁外皮4が覆う。
【0034】
図1の実施形態によれば、従来の中間電線が不要となるから、ドレン線2と延長電線5との総長さ(全長)が短縮される。ドレン線2への雌端子6の接続(圧着)はドレン線2が短くても行うことができる。また、延長電線5の基端部5a側を従来のように折り返さず、延長電線5よりも絶縁被覆がなく柔軟なドレン線2の先端側を折り返せばよいから(折り返し部を符号2bで示す)、接続作業性が良い。延長電線5を主電線3よりも短く形成すれば、ドレン線2をS字状に折り返す必要もなくなる。
【0035】
また、延長電線5へのクローズドバレル端子12の圧着と、ドレン線2への雌端子6の圧着とは自動機で行うことができ、且つクローズドバレル端子12と雌端子6との接続も自動機で行うことができる。また、延長電線5としてアルミ電線を用いる場合、クローズドバレル端子12内で湿気を防いで、アルミ電線の基端部5aの酸化皮膜の発生を防止することができる。これらの効果は後述の各実施形態においても同様に奏されるものである。
【0036】
図3,図4は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第二の実施形態を示すものである。上記第一の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。延長電線5とその先端の端子9と防水ゴム栓10とは図2(a)と同じものを使用する。第一の実施形態では、延長電線5とドレン線2とをクローズドバレル端子12と雌端子6とを用いて接続したが、本実施形態では、クローズドバレル端子(ジョイント端子)20のみを用いて両電線2,5を接続する。
【0037】
図3(a)〜(c)は、前後にクローズドバレル部21,22を一体に有するクローズドバレル端子(端子)20を用いた例を示すものである。図3(a)の如く、前側のクローズドバレル部21は、前端に開口23aを有する円形の筒状部24と、底側の封止壁(仕切壁ないし隔壁)25と、封止壁25から突出したニードルピン15とで構成され、後側のクローズドバレル部22は、筒状部(端子部)26と底側の共通の前記封止壁25とで構成されている。
【0038】
図3(b)の如く、前側のクローズドバレル部21の筒状部24の空間23内に延長電線5の皮剥きされていない基端部5aを挿入し、好ましくは基端部5aの絶縁被覆8aと前側の筒状部24の内面との間にシール剤(図示せず)を装填し、ニードルピン15を芯線部7aに刺して接続し、前側の筒状部24を六角加締め等の治具で加締めて(加締め部を符号27で示す)絶縁被覆8aに固定する。次いでシールド電線1(図1)のドレン線2を後側のクローズドバレル部22の筒状部26の空間28内に挿入し、図3(c)の如く、後側の筒状部26をプレス治具で潰してドレン線2に加締め接続で固定する。
【0039】
図3の構成により、延長電線5の基端が封止壁25の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止壁25の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止壁25を介して隔絶されるから、ドレン線2内を伝わった水が封止壁25で遮断され、前側のクローズドバレル部21内への浸入が阻止されて、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0040】
また、延長電線5の絶縁被覆8の外面と前側の筒状部24の内面とが密着し、好ましくはシール剤や接着剤で封止されることで、前側の筒状部24の開口23aから空間23内への水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端の端子8と防水ゴム栓10(図1)とが、シールド電線1の主電線3の先端の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ11内に挿入される。
【0041】
図4(a)〜(c)は、前側にクローズドバレル部30、後側にオープンバレル部(端子部)31を一体に有するジョイント端子(端子)29を用いた例を示すものである。図4(a)の如く、前側のクローズドバレル部30は、前部開口32aを有する円形の筒状部33と、底側の封止壁(仕切壁)34と、封止壁34から前方に突出したニードルピン15とで構成され、後側のオープンドバレル部31は、封止壁34に続く基板部35と、基板部35の左右両側で上向きに突出した一対の圧着片36とで構成されている。
【0042】
図4(b)の如く、前側のクローズドバレル部30の筒状部33の空間32内に延長電線5の皮剥きされていない基端部5aを挿入し、好ましくは基端部5aの絶縁被覆8aと筒状部33の内面との間にシール剤等を装填し、ニードルピン15を芯線部7aに刺して接続し、筒状部33を六角加締め等の治具で加締めて(加締め部を符号37で示す)絶縁被覆8aに固定する。次いでシールド電線1(図1)のドレン線2を後側のオープンバレル部31に挿入セットし、図4(c)の如く、一対の圧着片36をプレス治具(アンビルとクリンパ)でドレン線2に圧着固定する。
【0043】
図4の構成により、延長電線5の基端が封止壁34の内面側に位置し、ドレン線2の先端が封止壁34の外面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止壁34を介して隔絶されるから、ドレン線2内を伝わった水が封止壁34で遮断され、前側のクローズドバレル部30内への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0044】
また、延長電線5の絶縁被覆8aの外面と筒状部33の内面とが密着し、好ましくはシール剤等で封止されることで、前側のクローズドバレル部30の開口32aからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ11内に挿入される。
【0045】
図5は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第三の実施形態を示すものである。上記第一の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。延長電線5の端子9と防水ゴム栓10とは図2(a)と同じものを使用する。第一の実施形態では、延長電線5の基端部5aを皮剥きせずにクローズドバレル端子12に接続したが、本実施形態では、図5(a)の如く、延長電線5の基端部5aの絶縁被覆8aを皮剥きして芯線部7aを露出して図5(b)のクローズドバレル端子39に接続する。
【0046】
図5(b)の如く、クローズドバレル端子(端子)39は、延長電線5の基端部5aを前端の開口40aから挿入する空間40を有する前半の断面円形の有底の筒状部41と、底部側の封止壁42と、封止壁42から後方に突出し、筒状部41内の空間40から封止壁42を貫通した小径の穴部43を有する中空有底の雄端子部(端子部)44とで構成されている。雄端子部44の先端44aは塞がれている。穴部43に延長電線5の芯線部7aが挿入(収容)されている。延長電線5の基端部5aの絶縁被覆7aの外周面は、自己融着性のブチルシート等のシール剤45を介して筒状部41の内周面に接着されている。
【0047】
図5(c)の如く、筒状部41を六角加締め等の治具で圧着して(加締め部を符号46aで示す)絶縁被覆8aに固定すると共に、雄端子部44を小径の六角加締め等の治具で圧着して(加締め部を符号46bで示す)芯線部7aに接続固定する。シールド電線1のドレン線2には係止ランス付きの雌端子(ターミナルランス又はポジ端子とも呼称される)6を圧着接続しておく。次いで、雄端子部44を雌端子6に挿入接続兼係止する。
【0048】
図5の構成により、延長電線5の基端が封止壁42の内面側に位置し、ドレン線2の先端が封止壁42の外面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止壁42を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が有底の雄端子部44や封止壁42で遮断され、前側の筒状部41内への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0049】
また、絶縁被覆8aの外面と筒状部41の内面とが密着し、好ましくはブチルシート等のシール剤45で封止されていることで、筒状部41の前部開口40aからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0050】
図6,図7は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第四の実施形態を示すものである。上記第一の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態では、図1の雌端子6を用いずに、クローズドバレル端子として、中間部を封止した金属製の導電パイプ(端子)48を用いて、ドレン線2と延長電線5とを接続している。図6(a)の如く、延長電線5とその端子9と先端側の防水ゴム栓10とは図5(a)と同じものを使用し、さらに延長電線5の皮剥きされ芯線部7aを露出させた基端部5aに同様の防水ゴム栓49を前後逆向きに装着している。図6(a)の延長電線5は図7の例でも同様に使用する。
【0051】
図6(a)〜(d)の例では、クローズドバレル端子として、前半に大径の筒状部50、後半に小径の筒状部(端子部)51をそれぞれ有するアルミ又は銅製の導電パイプ(端子)48を用いて、延長電線5とシールド電線1のドレン線2とを接続している。図6(b)の如く、後半の小径な筒状部51の貫通孔53は封止ゴム栓52又は金属製等の封止壁で中間部を封止されている。封止ゴム栓52や封止壁は小径な筒状部51の孔部53内に圧入されることが好ましい。封止壁(52)は小径な筒状部51と一体に形成してもよい。封止ゴム栓52は封止壁の一種である。
【0052】
図6(c)の如く、延長電線5の基端部5aが大径な筒状部50の前端の開口54aから内部空間54に挿入され、露出した芯線部7aが小径な筒状部51の前半側に挿入収容され、絶縁被覆8aと防水ゴム栓49とが大径な筒状部50内に収容され、防水ゴム栓49の外周リップ49aが大径な筒状部50の内周面に密着して、大径な筒状部50の前部開口54aが液密に封止され、芯線部7aの上から小径な筒状部51を六角加締め等の治具で加締めることで(加締め部を符号55aで示す)、芯線部7aが小径な筒状部51に接続固定される。
【0053】
小径な筒状部51の前半の穴部53内に図6(d)の如くドレン線2が挿入され、ドレン線2の上から小径な筒状部51を六角加締め等の治具で加締めることで(加締め部を符号55bで示す)、ドレン線2が小径な筒状部51に接続固定される。封止ゴム栓52又は封止壁は前後の加締め部55a,55bの間に位置する。
【0054】
図6の構成により、延長電線5の基端が封止ゴム栓52又は封止壁の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止ゴム栓52又は封止壁の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止ゴム栓52又は封止壁を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が封止ゴム栓52又は封止壁で遮断され、前側の大径な筒状部50内への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0055】
また、絶縁被覆8aの外面と大径な筒状部50の内面とが防水ゴム栓49を介して密着することで、大径な筒状部50の前部開口54aからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0056】
図7(a)〜(c)の例では、図7(a)の如く、クローズドバレル端子として、アルミ又は銅製の断面円形の均一な径の導電パイプ(端子)57を用い、導電パイプ57内の貫通孔58の中間に封止ゴム線52又は封止壁を設け、導電パイプ57の前半の筒状部59の先端外面側に合成樹脂製の断面円形の筒状カバー(筒状部)61を装着し、図7(b)の如く、筒状カバー61内に延長電線5の防水ゴム栓49を装着し、図7(c)の如く、導電パイプ57の前側の筒状部59の空間58a内に延長電線5の基端部5aの露出した芯線部7a、後側の筒状部(端子部)60の空間58内にドレン線2をそれぞれ挿入して加締め接続している。
【0057】
筒状カバー61は例えばPVC等の柔軟な樹脂材を使用して前半の筒状部59の外面側に圧入したり、あるいは接着剤等を用いて固定する。筒状カバー61は前半の筒状部59の一部となる。図7(a)の如く、筒状カバー61の貫通した孔部(空間)62内に後端の開口から導電パイプ57の前部が圧入され、好ましくは接着剤等で固定される。
【0058】
図7(b)の如く、延長電線5の絶縁被覆部8aは芯線部7aと共に導電パイプ57の前半の筒状部59内に挿入され、防水ゴム栓49は筒状カバー61内に圧入されて筒状カバーの内面に密着し、導電パイプ57の前端開口からの浸水を防止する。
【0059】
芯線部7aの上から前半の筒状部59が六角加締め等の治具で加締められて(加締め部を符号63aで示す)、芯線部7aと前半の筒状部59が接続固定され、図7(c)の如く、ドレン線2が導電パイプ57の後半の筒状部60内に挿入され、ドレン線2の上から後半の筒状部60が六角加締め等の治具で加締められて(加締め部を符号63bで示す)、ドレン線2と後半の筒状部60が接続固定される。封止ゴム栓52又は封止壁は前後の加締め部63a,63bの間に保持される。封止ゴム栓52は封止壁の一種である。
【0060】
図7の構成により、延長電線5の基端が封止ゴム栓52又は封止壁の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止ゴム栓52又は封止壁の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止ゴム栓52又は封止壁を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が封止ゴム栓52又は封止壁で遮断され、導電パイプ57の前半の筒状部59への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0061】
また、絶縁被覆8aの外面と筒状カバー61の内面とが防水ゴム栓49を介して密着し、且つ筒状カバー61の内面と導電パイプ57の前半の筒状部59の外面とが密着することで、筒状カバー61の前部開口62aから導電パイプ57内への水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線2の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0062】
図8は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第五の実施形態を示すものである。上記第一,第四の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本例では、図7の筒状カバー61と防水ゴム栓49とに代えて断面円形の防水ゴム栓(防水シール部材)66を用い、防水ゴム栓66の内部に導電パイプ57を挿入して、導電パイプ57の前部開口58bからの浸水を防止し、図7と同様に導電パイプ57内の封止ゴム栓52又は封止壁でドレン線2からの水の伝わりを阻止している。封止ゴム栓52は封止壁の一種である。
【0063】
図8(a)の如く、延長電線5の基端側の絶縁被覆8aの外周に防水ゴム栓66が装着される。図8(b)の如く、防水ゴム栓66は、延長電線5を挿通する前半の小径の孔部67aと、孔部67aに続く後半の大径の孔部67bとを同心に有し、図8(c)の如く、大径の孔部67bにアルミ又は銅製の導電パイプ(端子)57の前半の筒状部59の前部が挿入され、大径の孔部67bの内周のリップに前半の筒状部59の前部外周面が密着し、前半の孔部67aの内周のリップに延長電線5の絶縁被覆8の外周面が密着する。
【0064】
図8(c)の如く、導電パイプ57の前半の筒状部59の空間58a内に前部開口58bから延長電線5の基端部5aの芯線部7aと絶縁被覆8aとが挿入されて、それぞれ六角加締め等の治具で加締められて(加締め部を符号63a,63cで示す)接続固定される。導電パイプ57の長手方向中間に封止ゴム栓52又は別体の封止壁が配置されている。
【0065】
図8(d)の如く、導電パイプ57の後半の筒状部60に後部開口からドレン線2が挿入されて、外側から径方向に加締められて(加締め部を符号63bで示す)接続固定される。封止ゴム栓52又は封止壁は前後の加締め部63a,63bの間に保持される。図7の例でも同様であるが、封止ゴム栓52又は封止壁を後方に隣接する他の加締め部(図示せず)で後抜け防止することも可能である。
【0066】
図8の構成により、延長電線5の基端が封止ゴム栓52又は封止壁の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止ゴム栓52又は封止壁の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止ゴム栓52又は封止壁を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が封止ゴム栓52又は封止壁で遮断され、導電パイプ57の前半の筒状部59への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0067】
また、延長電線5と導電パイプ57との嵌合部分が防水ゴム栓66で覆われたことで、導電パイプ57の前部開口58bからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0068】
図9は、上記図3〜図8の各実施形態のシールド電線の止水構造の完成状態を説明的に示すものであり、図9の符号Aで示す大径な筒状部分は、図3のクローズドバレル端子20の前半の筒状部24や、図4のジョイント端子29の筒状部33や、図5のクローズドバレル端子39の筒状部41や、図6の導電パイプ48の前半の筒状部50や、図7の筒状カバー61や、図8の防水ゴム栓66にそれぞれ相当し、図9の符号Bで示す小径な筒状部分は、図3のクローズドバレル端子20の後半の加締め後の筒状部26や、図4のジョイント端子29の後半のオープンバレル部31や、図5の雌端子6や、図6の導電パイプ48の後半の筒状部51や、図7の導電パイプ57の後半部や、図8の導電パイプ57の後半部にそれぞれ相当する。
【0069】
図1の実施形態と同様に、シールド電線1の絶縁外皮4と主線3とドレン線2と延長電線5と両電線2,5の接続部分とが絶縁テープ巻き18でガタつきなく相互固定される。符号11は防水コネクタを示す。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係るシールド電線の止水構造は、例えば自動車のエンジンルームと車室側とを接続するワイヤハーネスにおけるシールドアース用のドレン線から防水コネクタ内への水の浸入を防止するために利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 シールド電線
2 ドレン線
5 延長電線
5a 一端部
6 端子部
11 防水コネクタ
12,20,29,39 端子
13,24,33,41,50,59 筒状部
14,25,34,42 封止壁
16,26,31,44 端子部
17,23,32,40,54,62,58 空間
17a,23a,32a,40a,54a,62a,58b 開口
45 シール剤
48,57 導電パイプ(端子)
49,66 防水ゴム栓
52 封止ゴム栓(封止壁)
61 筒状カバー(筒状部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンルームと車室側とを接続するシールド電線のアース用のドレン線の素線間の止水を行わせるシールド電線の止水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10(a)(b)は、従来の電線の止水構造の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この構造は、図10(a)の如く、電線71の一端に丸型板端子(LA端子)72を接続し、電線71の他端に防水コネクタ73を接続し、電線71の中間部を皮剥きして芯線部71aを露出させ、図10(b)の如く、芯線部71aに分岐線74をジョイント接続すると共に、芯線部71aの周囲にシール剤75を充填して防水フィルム76で封止したものである。
【0004】
芯線部71aは複数の素線で構成され、シール剤75で各素線間が防水され、水が素線間を毛細管現象で伝わることが抑止される。図10(a)の端子72は非防水であり、自動車のエンジンルーム内のボディパネル等に接続され、防水コネクタ73は車室側に配置される。
【0005】
上記以外の電線の止水構造として、例えば特許文献2には、電線の芯線部を挿入する端子内に導電性接着剤を充填したことが記載され、特許文献3には、丸型板端子の電線接続部分の外周に接着剤付きの熱収縮チューブを被せることが記載されている(図示せず)。
【0006】
図11は、本出願人が実施している既存のシールド電線の止水構造の一形態を示すものである。
【0007】
この構造は、シールド電線1のアース用のドレン線2に突き合わせ用の中間電線77を介して延長電線(一般電線)5’をジョイント接続し、ドレン線2と中間電線77との接続部78は非防水とし、中間電線77と延長電線5’との接続部79は素線間止水用の接着剤と熱収縮チューブとで防水し、延長電線5’の先端側の端子9とシールド電線1の主線3側の端子19とを各防水ゴム栓10と共に防水コネクタ11内に挿入するものである。
【0008】
中間電線77を用いることで、ドレン線2と延長電線5’とが分断されて、ドレン線2の各素線間を伝わる水が延長電線5’の各素線間に浸入することが阻止される。これにより、エンジンルーム内の気圧や温度変化等に伴う素線間の呼吸作用による水の浸入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平6−86221号公報(図1,図7)
【特許文献2】特開2004−200094号公報(図2)
【特許文献3】特開2000−285983号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の図11のシールド電線の止水構造にあっては、中間電線77とジョイント端子とジョイントテープと、熱溶着等の接続手段と、接着剤と熱収縮チューブといった多くの部品やジョイント接続工数及び止水工数を必要とし、コスト高になるという問題があった。また、延長電線との防水作業性を上げるために中間電線77を長めに形成しなければならず、ドレン線2と中間電線77と延長電線5’との総長さが増大して、構造が肥大化・重量化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、ドレン線から延長電線への素線間の水の浸入を確実に防止することができることは勿論のこと、ドレン線と延長電線との接続や防水処理を少ない部品と工数でコンパクトに行うことができるシールド電線の止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るシールド電線の止水構造は、シールド電線のドレン線に端子を介して延長電線の一端部を接続し、該延長電線の他端部を防水コネクタ内に配置する構造において、前記端子が、前記延長電線の一端部を液密に挿入するための筒状部と、該筒状部内に該一端部を閉じ込める空間を形成する封止壁とを備え、該一端部と前記ドレン線とが該封止壁を介して隔絶されたことを特徴とする。
【0013】
上記構成により、ドレン線の内部(例えば各素線間や編組線間)を伝わった水が端子の封止壁で遮られて延長電線の一端部への水の伝播が阻止される。これにより、ドレン線からの水が延長電線を伝わって防水コネクタ内に浸入することが防止される。延長電線の一端部は例えばその絶縁被覆の外周面が筒状部の内周面に弾性的に液密に接触(密着)する。あるいは、絶縁被覆と筒状部とをシール剤や接着剤やゴム栓等の防水手段を介して液密化することも可能である。
【0014】
請求項2に係るシールド電線の止水構造は、請求項1記載のシールド電線の止水構造において、前記封止壁から前記筒状部とは反対側に突出した端子部に前記ドレン線側の端子部又はドレン線が接続されたことを特徴とする。
【0015】
上記構成により、端子の封止壁から突出した端子部(例えば雄端子部)にドレン線側の端子部(雌端子部)が挿入接続兼係止され、あるいは、端子の封止壁から突出した端子部(例えば前記筒状部を一方とした場合の他方の筒状部やオープンバレル部)にドレン線(露出芯線)が加締め等で接続される。他方の筒状部の開口は一方の筒状部の開口から大きく離間するので、筒状部に沿う水の沿面距離が増大し、ドレン線に沿う水が他方の開口から外部に出たとしても、一方の開口に届く心配はない。
【0016】
請求項3に係るシールド電線の止水構造は、請求項1記載のシールド電線の止水構造において、前記端子としての導電パイプの中間に前記封止壁又は封止壁としての封止ゴム栓が設けられ、該導電パイプの一方の前記筒状部に前記延長電線の一端部、他方に前記ドレン線がそれぞれ挿入接続されたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、導電パイプが一体又は別体の封止壁又は別体の封止ゴム栓で区画され、導電パイプの他方に挿入されて加締め等で接続されたドレン線を伝わる水が封止壁又は封止ゴム栓で遮断され、導電パイプの一方に挿入された延長電線の一端部への水の伝播が封止壁又は封止ゴム栓で阻止される。封止ゴム栓も封止壁の一種である。導電パイプの他方の筒状部の開口は一方の筒状部の開口から大きく離間するので、筒状部に沿う水の沿面距離が増大し、ドレン線を伝わる水が他方の開口から外部に出たとしても、一方の開口に届く心配はない。
【0018】
請求項4に係るシールド電線の止水構造は、請求項1〜3の何れかに記載のシールド電線の止水構造において、前記筒状部の開口と前記延長電線の一端部の外周面とがシール剤や接着剤や防水ゴム栓等の防水手段で液密に封止されたことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、ドレン線の素線間止水とは別に、筒状部の延長電線挿入用の開口から筒状部内への外部の水の浸入がシール剤や接着剤や防水ゴム栓等といった防水手段で確実に防止される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、端子の封止壁によってドレン線から延長電線への素線間浸水を確実に阻止することができ、これにより、防水コネクタの電気的接続の信頼性を高めることができる。また、従来の中間電線やそのジョイント接続が不要であるから、ドレン線と延長電線との接続や防水処理を少ない部品と工数で低コストに行うことができると共に、ドレン線と延長電線との総長さを短縮して構造をコンパクト化することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、例えば延長電線に接続した端子の端子部にドレン線側の端子部を挿入して接続係止させることで、延長電線とドレン線との接続を容易に行うことができる。あるいは、延長電線に接続した端子の端子部にドレン線を直接加締め等で接続させることで、ドレン線側の端子部を不要として部品点数をさらに削減することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、導電パイプ内に封止壁又は封止ゴム栓を介して延長電線とドレン線との両方を収容することで、導電パイプ内のドレン線内を伝わる水から延長電線までの沿面距離を増して、延長電線への水の伝播を確実に防止することができる。また、別体の封止壁や封止ゴム栓を用いることで、端子の形成を容易に行うことができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、ドレン線の素線間止水とは別に、筒状部の延長電線挿入用の開口から筒状部内への外部の水の浸入をシール剤や接着剤や防水ゴム栓等といった防水手段で確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るシールド電線の止水構造の第一の実施形態を示す平面図である。
【図2】同じく延長電線と端子の接続構造を示す、(a)は一部を断面とした側面図、(b)は要部断面図である。
【図3】シールド電線の止水構造の第二の実施形態を示す、(a)は延長電線と端子の接続構造の断面図、(b)(c)は端子とドレン線の接続構造の側面図である。
【図4】第二の実施形態において他の端子を用いた例を示す、(a)は延長電線と端子の接続構造の断面図、(b)(c)は端子とドレン線の接続構造の側面図である。
【図5】シールド電線の止水構造の第三の実施形態を示す、(a)は延長電線の側面図、(b)は延長電線と端子の接続構造の断面図、(c)は端子とドレン線の接続構造の一部を断面とした側面図である。
【図6】シールド電線の止水構造の第四の実施形態を示す、(a)は延長電線の側面図、(b)(c)は延長電線と端子の接続構造の斜視図、(d)は端子とドレン線の接続構造の斜視図である。
【図7】第四の実施形態において他の端子を用いた例を示す、(a)(b)は延長電線と端子の接続構造の斜視図、(c)は端子とドレン線の接続構造の斜視図である。
【図8】シールド電線の止水構造の第五の実施形態を示す、(a)は延長電線の側面図、(b)は延長電線と端子の接続構造の斜視図、(c)は同じく断面図、(d)は端子とドレン線の接続構造の斜視図である。
【図9】第二〜第五の各実施形態のシールド電線の止水構造の完成状態を総括的に示す平面図である。
【図10】従来の電線の止水構造の一形態を示す、(a)は電線の平面図、(b)は止水構造の要部断面図である。
【図11】従来のシールド電線の止水構造の一形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図2は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第一の実施形態を示すものである。
【0026】
この構造は、図1の如く、シールド電線1のアース用のドレン線2の先端に非防水の雌端子(端子部)6を圧着接続し、図2(a)の如く、延長電線(一般電線)5の先端側の芯線部7に防水コネクタ11への挿入用の端子9を接続すると共に、延長電線5の絶縁被覆8の外周に防水ゴム栓10を装着し、図2(b)の如く、延長電線5の基端側の絶縁被覆8aをクローズドバレル端子(端子)12の有底の筒状部13内に挿入すると共に、筒状部13内で底側の封止壁14から前方に突出したニードルピン15を基端側の芯線部7aに挿入接続し、図1の如く、封止壁14から後方に突出した雄端子部(端子部)16を雌端子6に挿入して加締め(圧着)接続するものである。
【0027】
雌端子6はターミナルランス(ポジ端子)とも呼称され、前半の係止ランス付きの電気接触部6aと後半の電線接続部6bとで成り、電線接続部6b内にドレン線2の先端が挿入されて圧着接続され、電気接触部6a内に延長電線5側の端子12の雄端子部16が挿入接続且つ係止される。ドレン線2は導電金属製の複数の素線2aで構成されている。ドレン線2として導電金属製の編組線(図示せず)を撚ったものを用いることも可能である。
【0028】
図2(a)(b)の如く、クローズドバレル端子12はジョイント端子とも呼称され、延長電線5の基端部5aを前端の開口17aから挿入する空間17を内部に有する導電金属製の円形の筒状部13と、筒状部13の底部であり、筒状部13内に延長電線5の基端部5aを封止する円形の封止壁14と、筒状部13の空間17内で封止壁14から前方に突出した導電金属製の尖ったニールドピン15と、封止壁14から後方に突出した一定径ないし一定厚の雄端子部16とで構成されている。雄端子部16を雌端子部に代え、雌端子6(図1)を雄端子に代えることも可能である。
【0029】
図2(b)において、筒状部13内に図示しないシール剤(接着剤)を入れて延長電線5の基端部5aを挿入することも可能である。筒状部13は延長電線5の基端部5aの上からプレス治具で六角加締め等の形態に圧着される。図1において、クローズドバレル端子12と雌端子6とを接続した状態で、絶縁テープ巻き18でシールド電線1の絶縁外皮4と主線3とドレン線2と両端子6,12と延長電線5とを束ねてガタつきなく固定する。
【0030】
図1の如く、封止壁14の内面側に延長電線5の基端が位置し、封止壁14の外面側にドレン線2の先端が位置し、封止壁14で延長電線5の基端とドレン線2の先端とが隔絶されることで、雌端子6側から筒状部13内への水の浸入が阻止される。
【0031】
また、延長電線5の基端側の絶縁被覆8aの外周面が筒状部13の内周面に弾性的に密着し、好ましくは絶縁被覆8aの外周面が筒状部13の内周面13aにシール剤や接着剤で接着されることで、絶縁被覆8に沿う筒状部13内への水の浸入が防止される。
【0032】
延長電線5の先端側の端子9は雄端子でも雌端子でもよく(図では端子9を簡略化して示している)、延長電線5に圧着接続されている(圧接接続する場合は絶縁被覆8の皮剥きは不要である)。防水ゴム栓10は、延長電線5の絶縁被覆8の表面に密着する内径部(図示せず)と、絶縁樹脂製のコネクタハウジング(符号11で代用)の端子収容室(図示せず)の内面に密着する外径部(リップ)10aとを有している。端子9は例えば左右各一対の前側の芯線圧着片と後側の絶縁被覆圧着片(図示せず)とを有し、絶縁被覆圧着片は防水ゴム栓10の先端部を絶縁被覆8に共締め固定する。主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10も同様のものである(主端子19をアース端子9よりも大型とすることも可能である)。
【0033】
両端子9,19は両防水ゴム栓10と共にコネクタハウジング11の各端子収容室内に挿入されて端子収容室内の係止ランス(図示せず)で係止され、少なくともコネクタハウジング11と各端子9,19と各防水ゴム栓10とで防水コネクタが構成される。シールド電線1は、通電用の主電線3とアース用のドレン線2と、両電線2,3を覆う絶縁外皮4とを備えている。ドレン線2として編組線を用いる場合、編組線は主電線3を覆い、編組線を絶縁外皮4が覆う。
【0034】
図1の実施形態によれば、従来の中間電線が不要となるから、ドレン線2と延長電線5との総長さ(全長)が短縮される。ドレン線2への雌端子6の接続(圧着)はドレン線2が短くても行うことができる。また、延長電線5の基端部5a側を従来のように折り返さず、延長電線5よりも絶縁被覆がなく柔軟なドレン線2の先端側を折り返せばよいから(折り返し部を符号2bで示す)、接続作業性が良い。延長電線5を主電線3よりも短く形成すれば、ドレン線2をS字状に折り返す必要もなくなる。
【0035】
また、延長電線5へのクローズドバレル端子12の圧着と、ドレン線2への雌端子6の圧着とは自動機で行うことができ、且つクローズドバレル端子12と雌端子6との接続も自動機で行うことができる。また、延長電線5としてアルミ電線を用いる場合、クローズドバレル端子12内で湿気を防いで、アルミ電線の基端部5aの酸化皮膜の発生を防止することができる。これらの効果は後述の各実施形態においても同様に奏されるものである。
【0036】
図3,図4は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第二の実施形態を示すものである。上記第一の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。延長電線5とその先端の端子9と防水ゴム栓10とは図2(a)と同じものを使用する。第一の実施形態では、延長電線5とドレン線2とをクローズドバレル端子12と雌端子6とを用いて接続したが、本実施形態では、クローズドバレル端子(ジョイント端子)20のみを用いて両電線2,5を接続する。
【0037】
図3(a)〜(c)は、前後にクローズドバレル部21,22を一体に有するクローズドバレル端子(端子)20を用いた例を示すものである。図3(a)の如く、前側のクローズドバレル部21は、前端に開口23aを有する円形の筒状部24と、底側の封止壁(仕切壁ないし隔壁)25と、封止壁25から突出したニードルピン15とで構成され、後側のクローズドバレル部22は、筒状部(端子部)26と底側の共通の前記封止壁25とで構成されている。
【0038】
図3(b)の如く、前側のクローズドバレル部21の筒状部24の空間23内に延長電線5の皮剥きされていない基端部5aを挿入し、好ましくは基端部5aの絶縁被覆8aと前側の筒状部24の内面との間にシール剤(図示せず)を装填し、ニードルピン15を芯線部7aに刺して接続し、前側の筒状部24を六角加締め等の治具で加締めて(加締め部を符号27で示す)絶縁被覆8aに固定する。次いでシールド電線1(図1)のドレン線2を後側のクローズドバレル部22の筒状部26の空間28内に挿入し、図3(c)の如く、後側の筒状部26をプレス治具で潰してドレン線2に加締め接続で固定する。
【0039】
図3の構成により、延長電線5の基端が封止壁25の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止壁25の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止壁25を介して隔絶されるから、ドレン線2内を伝わった水が封止壁25で遮断され、前側のクローズドバレル部21内への浸入が阻止されて、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0040】
また、延長電線5の絶縁被覆8の外面と前側の筒状部24の内面とが密着し、好ましくはシール剤や接着剤で封止されることで、前側の筒状部24の開口23aから空間23内への水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端の端子8と防水ゴム栓10(図1)とが、シールド電線1の主電線3の先端の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ11内に挿入される。
【0041】
図4(a)〜(c)は、前側にクローズドバレル部30、後側にオープンバレル部(端子部)31を一体に有するジョイント端子(端子)29を用いた例を示すものである。図4(a)の如く、前側のクローズドバレル部30は、前部開口32aを有する円形の筒状部33と、底側の封止壁(仕切壁)34と、封止壁34から前方に突出したニードルピン15とで構成され、後側のオープンドバレル部31は、封止壁34に続く基板部35と、基板部35の左右両側で上向きに突出した一対の圧着片36とで構成されている。
【0042】
図4(b)の如く、前側のクローズドバレル部30の筒状部33の空間32内に延長電線5の皮剥きされていない基端部5aを挿入し、好ましくは基端部5aの絶縁被覆8aと筒状部33の内面との間にシール剤等を装填し、ニードルピン15を芯線部7aに刺して接続し、筒状部33を六角加締め等の治具で加締めて(加締め部を符号37で示す)絶縁被覆8aに固定する。次いでシールド電線1(図1)のドレン線2を後側のオープンバレル部31に挿入セットし、図4(c)の如く、一対の圧着片36をプレス治具(アンビルとクリンパ)でドレン線2に圧着固定する。
【0043】
図4の構成により、延長電線5の基端が封止壁34の内面側に位置し、ドレン線2の先端が封止壁34の外面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止壁34を介して隔絶されるから、ドレン線2内を伝わった水が封止壁34で遮断され、前側のクローズドバレル部30内への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0044】
また、延長電線5の絶縁被覆8aの外面と筒状部33の内面とが密着し、好ましくはシール剤等で封止されることで、前側のクローズドバレル部30の開口32aからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ11内に挿入される。
【0045】
図5は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第三の実施形態を示すものである。上記第一の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。延長電線5の端子9と防水ゴム栓10とは図2(a)と同じものを使用する。第一の実施形態では、延長電線5の基端部5aを皮剥きせずにクローズドバレル端子12に接続したが、本実施形態では、図5(a)の如く、延長電線5の基端部5aの絶縁被覆8aを皮剥きして芯線部7aを露出して図5(b)のクローズドバレル端子39に接続する。
【0046】
図5(b)の如く、クローズドバレル端子(端子)39は、延長電線5の基端部5aを前端の開口40aから挿入する空間40を有する前半の断面円形の有底の筒状部41と、底部側の封止壁42と、封止壁42から後方に突出し、筒状部41内の空間40から封止壁42を貫通した小径の穴部43を有する中空有底の雄端子部(端子部)44とで構成されている。雄端子部44の先端44aは塞がれている。穴部43に延長電線5の芯線部7aが挿入(収容)されている。延長電線5の基端部5aの絶縁被覆7aの外周面は、自己融着性のブチルシート等のシール剤45を介して筒状部41の内周面に接着されている。
【0047】
図5(c)の如く、筒状部41を六角加締め等の治具で圧着して(加締め部を符号46aで示す)絶縁被覆8aに固定すると共に、雄端子部44を小径の六角加締め等の治具で圧着して(加締め部を符号46bで示す)芯線部7aに接続固定する。シールド電線1のドレン線2には係止ランス付きの雌端子(ターミナルランス又はポジ端子とも呼称される)6を圧着接続しておく。次いで、雄端子部44を雌端子6に挿入接続兼係止する。
【0048】
図5の構成により、延長電線5の基端が封止壁42の内面側に位置し、ドレン線2の先端が封止壁42の外面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止壁42を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が有底の雄端子部44や封止壁42で遮断され、前側の筒状部41内への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0049】
また、絶縁被覆8aの外面と筒状部41の内面とが密着し、好ましくはブチルシート等のシール剤45で封止されていることで、筒状部41の前部開口40aからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0050】
図6,図7は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第四の実施形態を示すものである。上記第一の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態では、図1の雌端子6を用いずに、クローズドバレル端子として、中間部を封止した金属製の導電パイプ(端子)48を用いて、ドレン線2と延長電線5とを接続している。図6(a)の如く、延長電線5とその端子9と先端側の防水ゴム栓10とは図5(a)と同じものを使用し、さらに延長電線5の皮剥きされ芯線部7aを露出させた基端部5aに同様の防水ゴム栓49を前後逆向きに装着している。図6(a)の延長電線5は図7の例でも同様に使用する。
【0051】
図6(a)〜(d)の例では、クローズドバレル端子として、前半に大径の筒状部50、後半に小径の筒状部(端子部)51をそれぞれ有するアルミ又は銅製の導電パイプ(端子)48を用いて、延長電線5とシールド電線1のドレン線2とを接続している。図6(b)の如く、後半の小径な筒状部51の貫通孔53は封止ゴム栓52又は金属製等の封止壁で中間部を封止されている。封止ゴム栓52や封止壁は小径な筒状部51の孔部53内に圧入されることが好ましい。封止壁(52)は小径な筒状部51と一体に形成してもよい。封止ゴム栓52は封止壁の一種である。
【0052】
図6(c)の如く、延長電線5の基端部5aが大径な筒状部50の前端の開口54aから内部空間54に挿入され、露出した芯線部7aが小径な筒状部51の前半側に挿入収容され、絶縁被覆8aと防水ゴム栓49とが大径な筒状部50内に収容され、防水ゴム栓49の外周リップ49aが大径な筒状部50の内周面に密着して、大径な筒状部50の前部開口54aが液密に封止され、芯線部7aの上から小径な筒状部51を六角加締め等の治具で加締めることで(加締め部を符号55aで示す)、芯線部7aが小径な筒状部51に接続固定される。
【0053】
小径な筒状部51の前半の穴部53内に図6(d)の如くドレン線2が挿入され、ドレン線2の上から小径な筒状部51を六角加締め等の治具で加締めることで(加締め部を符号55bで示す)、ドレン線2が小径な筒状部51に接続固定される。封止ゴム栓52又は封止壁は前後の加締め部55a,55bの間に位置する。
【0054】
図6の構成により、延長電線5の基端が封止ゴム栓52又は封止壁の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止ゴム栓52又は封止壁の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止ゴム栓52又は封止壁を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が封止ゴム栓52又は封止壁で遮断され、前側の大径な筒状部50内への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0055】
また、絶縁被覆8aの外面と大径な筒状部50の内面とが防水ゴム栓49を介して密着することで、大径な筒状部50の前部開口54aからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0056】
図7(a)〜(c)の例では、図7(a)の如く、クローズドバレル端子として、アルミ又は銅製の断面円形の均一な径の導電パイプ(端子)57を用い、導電パイプ57内の貫通孔58の中間に封止ゴム線52又は封止壁を設け、導電パイプ57の前半の筒状部59の先端外面側に合成樹脂製の断面円形の筒状カバー(筒状部)61を装着し、図7(b)の如く、筒状カバー61内に延長電線5の防水ゴム栓49を装着し、図7(c)の如く、導電パイプ57の前側の筒状部59の空間58a内に延長電線5の基端部5aの露出した芯線部7a、後側の筒状部(端子部)60の空間58内にドレン線2をそれぞれ挿入して加締め接続している。
【0057】
筒状カバー61は例えばPVC等の柔軟な樹脂材を使用して前半の筒状部59の外面側に圧入したり、あるいは接着剤等を用いて固定する。筒状カバー61は前半の筒状部59の一部となる。図7(a)の如く、筒状カバー61の貫通した孔部(空間)62内に後端の開口から導電パイプ57の前部が圧入され、好ましくは接着剤等で固定される。
【0058】
図7(b)の如く、延長電線5の絶縁被覆部8aは芯線部7aと共に導電パイプ57の前半の筒状部59内に挿入され、防水ゴム栓49は筒状カバー61内に圧入されて筒状カバーの内面に密着し、導電パイプ57の前端開口からの浸水を防止する。
【0059】
芯線部7aの上から前半の筒状部59が六角加締め等の治具で加締められて(加締め部を符号63aで示す)、芯線部7aと前半の筒状部59が接続固定され、図7(c)の如く、ドレン線2が導電パイプ57の後半の筒状部60内に挿入され、ドレン線2の上から後半の筒状部60が六角加締め等の治具で加締められて(加締め部を符号63bで示す)、ドレン線2と後半の筒状部60が接続固定される。封止ゴム栓52又は封止壁は前後の加締め部63a,63bの間に保持される。封止ゴム栓52は封止壁の一種である。
【0060】
図7の構成により、延長電線5の基端が封止ゴム栓52又は封止壁の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止ゴム栓52又は封止壁の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止ゴム栓52又は封止壁を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が封止ゴム栓52又は封止壁で遮断され、導電パイプ57の前半の筒状部59への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0061】
また、絶縁被覆8aの外面と筒状カバー61の内面とが防水ゴム栓49を介して密着し、且つ筒状カバー61の内面と導電パイプ57の前半の筒状部59の外面とが密着することで、筒状カバー61の前部開口62aから導電パイプ57内への水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線2の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0062】
図8は、本発明に係るシールド電線の止水構造の第五の実施形態を示すものである。上記第一,第四の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本例では、図7の筒状カバー61と防水ゴム栓49とに代えて断面円形の防水ゴム栓(防水シール部材)66を用い、防水ゴム栓66の内部に導電パイプ57を挿入して、導電パイプ57の前部開口58bからの浸水を防止し、図7と同様に導電パイプ57内の封止ゴム栓52又は封止壁でドレン線2からの水の伝わりを阻止している。封止ゴム栓52は封止壁の一種である。
【0063】
図8(a)の如く、延長電線5の基端側の絶縁被覆8aの外周に防水ゴム栓66が装着される。図8(b)の如く、防水ゴム栓66は、延長電線5を挿通する前半の小径の孔部67aと、孔部67aに続く後半の大径の孔部67bとを同心に有し、図8(c)の如く、大径の孔部67bにアルミ又は銅製の導電パイプ(端子)57の前半の筒状部59の前部が挿入され、大径の孔部67bの内周のリップに前半の筒状部59の前部外周面が密着し、前半の孔部67aの内周のリップに延長電線5の絶縁被覆8の外周面が密着する。
【0064】
図8(c)の如く、導電パイプ57の前半の筒状部59の空間58a内に前部開口58bから延長電線5の基端部5aの芯線部7aと絶縁被覆8aとが挿入されて、それぞれ六角加締め等の治具で加締められて(加締め部を符号63a,63cで示す)接続固定される。導電パイプ57の長手方向中間に封止ゴム栓52又は別体の封止壁が配置されている。
【0065】
図8(d)の如く、導電パイプ57の後半の筒状部60に後部開口からドレン線2が挿入されて、外側から径方向に加締められて(加締め部を符号63bで示す)接続固定される。封止ゴム栓52又は封止壁は前後の加締め部63a,63bの間に保持される。図7の例でも同様であるが、封止ゴム栓52又は封止壁を後方に隣接する他の加締め部(図示せず)で後抜け防止することも可能である。
【0066】
図8の構成により、延長電線5の基端が封止ゴム栓52又は封止壁の一方の面側に位置し、ドレン線2の先端が封止ゴム栓52又は封止壁の他方の面側に位置し、延長電線5の基端とドレン線2の先端とが封止ゴム栓52又は封止壁を介して隔絶されるから、ドレン線2を伝わった水が封止ゴム栓52又は封止壁で遮断され、導電パイプ57の前半の筒状部59への浸入が阻止され、延長電線5への水の浸入が阻止される。
【0067】
また、延長電線5と導電パイプ57との嵌合部分が防水ゴム栓66で覆われたことで、導電パイプ57の前部開口58bからの水の浸入が防止される。図1の例と同様に、延長電線5の先端側の端子9と防水ゴム栓10とが、シールド電線1の主電線3の先端側の端子19と防水ゴム栓10と共に防水コネクタ内に挿入される。
【0068】
図9は、上記図3〜図8の各実施形態のシールド電線の止水構造の完成状態を説明的に示すものであり、図9の符号Aで示す大径な筒状部分は、図3のクローズドバレル端子20の前半の筒状部24や、図4のジョイント端子29の筒状部33や、図5のクローズドバレル端子39の筒状部41や、図6の導電パイプ48の前半の筒状部50や、図7の筒状カバー61や、図8の防水ゴム栓66にそれぞれ相当し、図9の符号Bで示す小径な筒状部分は、図3のクローズドバレル端子20の後半の加締め後の筒状部26や、図4のジョイント端子29の後半のオープンバレル部31や、図5の雌端子6や、図6の導電パイプ48の後半の筒状部51や、図7の導電パイプ57の後半部や、図8の導電パイプ57の後半部にそれぞれ相当する。
【0069】
図1の実施形態と同様に、シールド電線1の絶縁外皮4と主線3とドレン線2と延長電線5と両電線2,5の接続部分とが絶縁テープ巻き18でガタつきなく相互固定される。符号11は防水コネクタを示す。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係るシールド電線の止水構造は、例えば自動車のエンジンルームと車室側とを接続するワイヤハーネスにおけるシールドアース用のドレン線から防水コネクタ内への水の浸入を防止するために利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 シールド電線
2 ドレン線
5 延長電線
5a 一端部
6 端子部
11 防水コネクタ
12,20,29,39 端子
13,24,33,41,50,59 筒状部
14,25,34,42 封止壁
16,26,31,44 端子部
17,23,32,40,54,62,58 空間
17a,23a,32a,40a,54a,62a,58b 開口
45 シール剤
48,57 導電パイプ(端子)
49,66 防水ゴム栓
52 封止ゴム栓(封止壁)
61 筒状カバー(筒状部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド電線のドレン線に端子を介して延長電線の一端部を接続し、該延長電線の他端部を防水コネクタ内に配置する構造において、前記端子が、前記延長電線の一端部を液密に挿入するための筒状部と、該筒状部内に該一端部を閉じ込める空間を形成する封止壁とを備え、該一端部と前記ドレン線とが該封止壁を介して隔絶されたことを特徴とするシールド電線の止水構造。
【請求項2】
前記封止壁から前記筒状部とは反対側に突出した端子部に前記ドレン線側の端子部又はドレン線が接続されたことを特徴とする請求項1記載のシールド電線の止水構造。
【請求項3】
前記端子としての導電パイプの中間に前記封止壁又は封止壁としての封止ゴム栓が設けられ、該導電パイプの一方の前記筒状部に前記延長電線の一端部、他方に前記ドレン線がそれぞれ挿入接続されたことを特徴とする請求項1記載のシールド電線の止水構造。
【請求項4】
前記筒状部の開口と前記延長電線の一端部の外周面とがシール剤や接着剤や防水ゴム栓等の防水手段で液密に封止されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシールド電線の止水構造。
【請求項1】
シールド電線のドレン線に端子を介して延長電線の一端部を接続し、該延長電線の他端部を防水コネクタ内に配置する構造において、前記端子が、前記延長電線の一端部を液密に挿入するための筒状部と、該筒状部内に該一端部を閉じ込める空間を形成する封止壁とを備え、該一端部と前記ドレン線とが該封止壁を介して隔絶されたことを特徴とするシールド電線の止水構造。
【請求項2】
前記封止壁から前記筒状部とは反対側に突出した端子部に前記ドレン線側の端子部又はドレン線が接続されたことを特徴とする請求項1記載のシールド電線の止水構造。
【請求項3】
前記端子としての導電パイプの中間に前記封止壁又は封止壁としての封止ゴム栓が設けられ、該導電パイプの一方の前記筒状部に前記延長電線の一端部、他方に前記ドレン線がそれぞれ挿入接続されたことを特徴とする請求項1記載のシールド電線の止水構造。
【請求項4】
前記筒状部の開口と前記延長電線の一端部の外周面とがシール剤や接着剤や防水ゴム栓等の防水手段で液密に封止されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシールド電線の止水構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−103191(P2011−103191A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256991(P2009−256991)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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