シールリング、ならびにシールリングの製造方法
【課題】二つの部材で軸方向または径方向から挟まれて使用されるタイプのシールリングにおいて、良好な密封性を発揮するとともに、効率良く生産可能となる形状とする。
【解決手段】シールリングの軸方向両端に、軸方向外向きへ膨出するとともに軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部11,12が設けられている。この円筒膨出部11,12の軸方向両側面は、切断面とされている。シールリングの軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とに、それぞれ面取り13〜16が設けられている。
【解決手段】シールリングの軸方向両端に、軸方向外向きへ膨出するとともに軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部11,12が設けられている。この円筒膨出部11,12の軸方向両側面は、切断面とされている。シールリングの軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とに、それぞれ面取り13〜16が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリング、ならびにシールリングの製造方法に関する。本発明に係るシールリングは、例えばエンジン(内燃機関)のインジェクタ、インテークマニホールド、スロットルバルブあるいはシリンダヘッドカバーの取り付け部分等を密封するために用いられる他、各種機器の密封必要部位に用いられる。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の図4に示されているように、エンジンのインジェクタにおいてノズル寄りの長手方向途中にアダプタを装着し、このアダプタに形成してある大径筒部と小径筒部との段差部分に、シールリングを嵌合装着しておき、このアダプタをシリンダヘッドのインジェクタ取り付け用の貫通孔に挿入するとともに、シールリングを前記貫通孔における外側の大径開口部の内底面に圧接させるようにしている。
【0003】
このようなシールリングの製造方法としては、一般的に、金型内に生ゴムの紐状体を嵌入させて輪状に加硫接着するプレス成形法や、金型のキャビィティ内に溶融ゴム材等を供給して成形する射出成形法が知られている。
【0004】
射出成形法は、プレス成形法に比べて生産性において有利である。その理由を説明する。前記射出成形法でシールリングを製造する場合、例えば上側成形金型の下面と下側成形金型の上面とのそれぞれの対応する位置に、多数の環状溝からなるキャビティを縦横方向に設け、両成形金型で作るキャビィティ内に溶融ゴム材等を所定圧力で充填するような形態にしている。これにより、数多くのシールリングを一度に成形することができる。
【0005】
但し、前記の射出成形法では、上下の成形金型を型開きすると、製造したシールリングの外周と内周とに径方向に沿う平面的な成形バリが出来ることがある。このようなバリを除去するには、手作業で行うしかなく、面倒で手間がかかっている。
【0006】
ところで、前記の射出成形法によるシールリングの製造方法よりも、さらなる大量生産を可能とする技術が考えられている(例えば特許文献2参照。)。
【0007】
この従来技術では、要するに、略円筒形状の部材を成形してから、その軸方向数箇所で輪切りすることによって、多数のシールリングを得るようにしている。
【0008】
この場合、前記略円筒形状の部材の外周面において、軸方向数箇所に小径の外周溝を設けておき、この外周溝の底位置で輪切りするようにしている。
【特許文献1】特開2001−295721号公報
【特許文献2】特許第2668135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に係る従来例において、インジェクタに装着するアダプタの大小異径部分において大径筒部の径方向に沿う面と小径筒部の外周面との境に位置する入隅や、シリンダヘッドのインジェクタ取り付け用の貫通孔における大径開口部の外径側に位置する入隅は、丸く形成されることが多い。この入隅は、「隅R」とも呼ばれる。
【0010】
このような二箇所の入隅にシールリングの角部を干渉させないようにするために、シールリングの外周側の軸方向一方角部と、内周側の軸方向一方角部とに、面取りを形成するのが好ましいと考えられる。そもそも、例えばシールリングの角部をシャープエッジにしていると、このシールリングの角部が二箇所の入隅に干渉することになり、シールリングにおいて接触相手と圧接する面に歪みが発生して、密に接触できなくなるおそれがある。そのために、前記の面取りが必要になる。
【0011】
なお、前記のように、軸方向一方の角部のみに面取りを形成すると、その取り付け時に誤装着するおそれがあるので、取り付け方向が特定される等、作業が面倒になる。そこで、シールリングの外周側および内周側の軸方向両方の角部に面取りを形成するのが好ましいと考えられる。
【0012】
このような面取りを施したシールリングは、上述した特許文献2の製造方法で製造することができないと言える。というのは、上記特許文献2に係る従来例に示すシールリングは、その外周面または内周面に環状凸部を設け、この環状凸部を相手部材の内周面や外周面に接触させる形態になっており、上述したような面取りを形成する点についてなんら記載されていないし、示唆もない。
【0013】
そのため、上述している面取りを施したシールリングを製造するには、上述しているようなプレス成形方法や射出成形法を採用せざるを得ない。つまり、上述した射出成形法では、前記のような面取りを設けたシールリングを製造するにあたって、上下の成形金型の環状溝における入隅を丸く形成することで、対応することが可能であるが、この射出成形法では、上述した特許文献2に係る従来例に比べて、生産性において劣る。ここに改良の余地がある。
【0014】
なお、特開平11−270600号公報には、ディスクブレーキ装置に用いる環状のシールについて、外周側の軸方向一方角部に、相手部材の凹部内の入隅との干渉を避けるために、面取りを設けるようにすることが記載されている。しかしながら、この従来技術には、上述したように二つの部材(インジェクタのアダプタ、シリンダヘッド等)で軸方向または径方向から挟むタイプのシールリングとは異なるとともに、シールリングの外周側および内周側の軸方向両角部に面取りを形成する点についての記載や示唆がない。つまり、この従来技術は本発明の従来例ではなく、参考程度に提示しただけと考えられたい。
【0015】
本発明は、二つの部材で軸方向または径方向から挟まれて使用されるタイプのシールリングにおいて、良好な密封性を発揮するとともに、効率良く生産可能となる形状とすることを目的としている。
【0016】
また、本発明は、二つの部材で軸方向または径方向から挟まれて使用されるタイプのシールリングの製造方法において、良好な密封性を発揮するシールリングを効率良く生産可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るシールリングは、軸方向両端に、軸方向外向きへ膨出するとともに軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部が設けられており、この円筒膨出部の軸方向両側面が切断面とされており、前記軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とに、それぞれ面取りが設けられている、ことを特徴としている。
【0018】
なお、シールリングとは、環状の密封部材のことであり、いわゆるガスケットやパッキン等と呼ばれるものをすべて含む意味を持つ。
【0019】
このような構成のシールリングは、複数のシールリングを軸方向に一体に連ねたような略円筒形状の部材から、その軸方向数箇所で輪切りされることによって製造されたものであることが分かる。
【0020】
これにより、本発明に係るシールリングによれば、平面上に環状溝からなるキャビティが多数設けられる上下の成形金型を用いる従来方法で製造されるシールリングに比べて、小さなスペースで大量生産するうえで有利となる。
【0021】
また、本発明に係るシールリングは、その軸方向両側面が切断面とされているので、この切断面がシールリング内部と同等の均質な性状になっている。これにより、例えばシールリングを二つの部材で軸方向から挟まれて使用する場合には、シールリングの軸方向両側の切断面が前記二つの部材に対し密に圧接する状態になるので、当該圧接部分の密封性が良好となる。
【0022】
さらに、本発明に係るシールリングは、軸方向厚みの精度がよくなるので、シールリングの圧縮率バラツキを少なく抑えることができる。
【0023】
好ましくは、前記のシールリングは、略円筒形状に成型された部材の軸方向数箇所で輪切りされることで製造されるものとすることができる。
【0024】
このように、シールリングの製造形態を具体的にすることで、生産性に優れたものであることを明確にしている。
【0025】
好ましくは、前記のシールリングにおいて、前記内周側両角部の面取りは、テーパ形状とされ、前記両円筒膨出部の内周面は、前記内周側両角部の面取りに滑らかに連接するよう軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、または軸方向にストレートな形状とされる。
【0026】
このような構成では、シールリングの製造過程において、略円筒形状の部材を輪切りするときに、切断位置の軸方向位置ずれを許容することが可能になる。
【0027】
好ましくは、前記のシールリングは、エンジンのシリンダヘッドまたは吸気マニホールドに対するインジェクタの取り付け部分に軸方向から挟まれる形態で配置されるものであり、前記軸方向一側の切断面が、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドに設けられるインジェクタ取り付け用の貫通孔の大径開口部における径方向に沿う内底面に圧接する状態とされ、また、前記軸方向他側の切断面が、前記インジェクタの長手方向途中に設けられる大小異径部分の径方向に沿う段壁面に圧接する状態とされ、前記内周側一方角部の面取りが、前記段壁面とインジェクタの小径部外周との境に位置する入隅に、また、前記外周側一方角部の面取りが、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドの大径開口部の外径側に位置する入隅に、それぞれ干渉しないような形状とされる。
【0028】
この構成では、シールリングの使用形態を特定している。つまり、例えばシールリングの外周側の面取りや内周側の面取りの役割を明確にしているから、シールリングの外周側および内周側の軸方向両角部をシャープエッジにする場合のように、入隅と干渉してシールリングの軸方向両端面に歪みが発生するという現象を回避することが可能になる。しかも、シールリングの軸方向両側の切断面は、シールリング内部と同等の均質な性状になっている。これらのことの相乗作用によって、シールリングの前記切断面がインジェクタやシリンダヘッドまたは吸気マニホールドの所定面に対し密に圧接する状態になるので、当該圧接部分の密封性が良好となる。
【0029】
また、本発明に係るシールリングの製造方法は、前記した構成を有するシールリングを製造する方法であって、軸状成形金型と当該軸状成形金型を囲んで略円筒形状のキャビィティを形成しかつ径方向外向きに型開きされる少なくとも二分割の外径側成形金型とを用い、前記キャビィティ内で弾性材料からなる略円筒形状の成型品を得る工程と、前記成型品をその軸方向数箇所で輪切りする工程とを含み、かつ、前記キャビィティの外径側の軸方向数箇所に縮径部が設けられているとともに、当該縮径部と対応して前記キャビィティの内径側の軸方向数箇所に拡径部が設けられており、前記略円筒形状の成型品において前記縮径部および拡径部に対応する位置が前記輪切りの位置とされている、ことを特徴としている。
【0030】
このような本発明方法によれば、平面上に環状溝からなるキャビティが多数設けられる上下の成形金型を用いる従来方法に比べて、小さなスペースで大量生産するうえで有利となるとともに、材料歩留まりが高くなる他、キャビィティが一つになる関係よりランナの数を少なくとも1個とすることができるので、前記従来方法のようにキャビィティ毎にランナを設ける場合に比べて有利である。
【0031】
また、本発明方法で製造されるシールリングは、その軸方向両側面が切断面とされるので、この切断面がシールリング内部と同等の均質な性状になっている。これにより、例えばシールリングを二つの部材で軸方向から挟まれて使用する場合には、シールリングの軸方向両側の切断面が相手部材に対し密に圧接する状態になるので、当該圧接部分の密封性が良好となる。
【0032】
さらに、型開き時に適宜の離型材を用いても、前記切断面には離型材が付着することがないので、当該切断面の材料劣化が抑制または防止される。
【0033】
ところで、本発明方法では、外径側成形金型を径方向外向きに型開きしてから、軸状成形金型を、成型品の内径側から軸方向に無理抜きするような形態とする必要がある。その関係より、本発明方法では、外径側成形金型どうしの合わせ面に対応して、成形バリがシールリングの外周面における円周方向数ヶ所に軸方向に延びる形で出来ることがあるものの、このような成形バリであれば、前記従来方法のようにシールリングの外周と内周とに径方向に沿う平面的な成形バリが出来る場合に比べて、バリ除去作業が簡単に行えるようになる等、生産効率が良好となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るシールリングは、良好な密封性を発揮するとともに、効率良く生産可能となる形状であるから、製造コストの低減ならびに信頼性の向上に貢献できる。
【0035】
また、本発明に係るシールリングの製造方法は、良好な密封性を発揮するシールリングを効率良く生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1から図7に、本発明の一実施形態を示している。
【0037】
この実施形態では、本発明に係るシールリングについて、例えば図4に示すように、エンジンにおいてインジェクタの取り付け部分に使用されるものとした例を挙げている。図4において、1はシールリング、2はインジェクタ、3はシリンダヘッドである。
【0038】
まず、インジェクタ2は、一般的に公知の構成と基本的に同じであるから、詳細な図示および説明を割愛するが、インジェクタ2の下端縁には燃料を噴射するためのノズル(図示省略)が設けられ、下端側領域の外径が小径で、長手方向中間領域の外径が大径とされている。
【0039】
このようにインジェクタ2の長手方向途中を大小異径とすることにより段差が設けられている。このインジェクタ2の大径部2aにおいて径方向に沿う段壁面に符号2cを、また、インジェクタ2の小径部2bの外周面に符号2dを付している。
【0040】
このインジェクタ2は、シリンダヘッド3におけるインジェクタ取り付け用の貫通孔4に、小径部2bを挿入する状態で取り付けられ、インジェクタ2のノズル(図示省略)からシリンダヘッド2の燃焼室(図示省略)またはインテークポート(図示省略)に燃料が噴射される。
【0041】
シリンダヘッド3の貫通孔4は、その外側開口側が大径に拡径されている。この大径開口部に符号4aを、また、大径開口部4aにおいて、軸方向に沿う内周壁面に符号4bを、さらに径方向に沿う内底面に符号4cをそれぞれ付している。
【0042】
ところで、インジェクタ2において段壁面2cと小径部2bの外周面2dとの境に位置する入隅2eや、シリンダヘッド3の大径開口部4aの外径側に位置する入隅4dは、それぞれ丸く形成されている。この入隅は、「隅R」とも呼ばれる。
【0043】
そして、シールリング1は、インジェクタ2の小径部2bに外嵌装着されるとともに、インジェクタ2の段壁面2cと、シリンダヘッド3の貫通孔4における大径開口部4aの内底面4cとで軸方向から挟まれる状態で使用されることにより、貫通孔4の内外を気密および液密に遮断するようになっている。通常、シールリング1は、軸方向に圧縮されることによって弾性変形された状態で組み込まれるが、図4では簡単に記載するにとどめている。この圧縮締め代は、適宜設定される。
【0044】
このようなシールリング1について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
【0045】
シールリング1は、おおむねOリングのような形状であるが、その軸方向両端には、軸方向外向きへ膨出しかつ軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部11,12が設けられている。この円筒膨出部11,12の軸方向両側面は、切断面とされている。
【0046】
また、シールリング1の軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とには、それぞれ面取り13〜16が設けられている。
【0047】
図2に示すように、外周側両角部の面取り13,14は、丸く設定されており、また、内周側両角部の面取り15,16は、図3に示すように、所定角度θのテーパ形状とされている。
【0048】
そして、両円筒膨出部11,12の内周面17,18は、内周側両角部の面取り15,16に滑らかに連接するよう軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、または軸方向にストレートな形状とされている。
【0049】
この実施形態では、両円筒膨出部11,12の内周面17,18の形状が、軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、特に図3に示すように、所定の曲率半径rの円弧形状とされている。
【0050】
このような形状のシールリング1であれば、図4に示すように適宜の使用場所に取り付けると、シールリング1の内周側一方角部の面取り15が、インジェクタ2の段壁面2cとインジェクタ2の小径部2bの外周面2dとの境に位置する入隅2eに、また、シールリング1の外周側一方角部の面取り13が、シリンダヘッド3の大径開口部4aの外径側に位置する入隅4dに、それぞれ干渉しないようになる。
【0051】
これにより、シールリング1の軸方向両端の円筒膨出部11,12の切断面が、歪まない状態で、インジェクタ2の段壁面2cとシリンダヘッド3の大径開口部4aの内底面4cとに対し密に圧接する状態になる。しかも、前記の両円筒膨出部11,12が切断面とされているので、当該切断面がシールリング1内部と同等の均質な性状になっている。これらの相乗作用によって、前記圧接部分における密封性が良好となる。
【0052】
次に、上述したシールリング1の製造方法について、図5から図7を参照して詳細に説明する。この実施形態では、シールリング1を射出成形法で製造する場合を例に挙げている。
【0053】
ここでの射出成形法では、図5および図6に示すように、主として、軸状成形金型50と、二分割の外径側成形金型60,70とを用いる。
【0054】
軸状成形金型50は、軸部51の軸方向一端側に径方向外向きに突出するフランジ52を設けた形状になっている。この軸状成形金型50の軸部51における軸方向数箇所には、径方向外向きに突出する輪状凸部53が設けられている。
【0055】
この輪状凸部53の軸方向中央から両側領域は、それぞれ、シールリング1の内周側両角部の面取り15,16および円筒膨出部11,12の内周面を転写形成するように、反転した形状になっている。つまり、輪状凸部53において、軸方向両側領域がテーパ形状になっており、また、頂部領域が円弧形状になっている。
【0056】
二つの外径側成形金型60,70は、軸状成形金型50を囲んで略円筒形状のキャビィティ80を形成するように半円形状凹部61,71が設けられている。この二つの外径側成形金型60,70は、径方向外向きに型開きされるようになっている。
【0057】
この二つの外径側成形金型60,70の半円形状凹部61,71の内面には、それぞれ対応して、半円形状の径方向内向きに突出する半円形凸部62,72が設けられている。これらの半円形凸部62,72は、二つの外径側成形金型60,70を型組みしたときに円形に連なって輪状凸部となる。
【0058】
この半円形凸部62,72は、それぞれ、シールリング1の外周側両角部の面取り13,14および円筒膨出部11,12の外周面を転写形成するように、反転した形状になっている。つまり、半円形凸部62,72において、軸方向両側領域が凹曲面形状になっており、また、頂部領域が円筒形状になっている。
【0059】
このような三つの成形金型50〜70を、図5に示すように型組みすると、略円筒形状のキャビィティ80が形成されるようになるのである。
【0060】
このキャビィティ80の外径側の軸方向数箇所には、二つの外径側成形金型60,70の半円形凸部62,72に対応した縮径部が設けられているとともに、キャビィティ80の内径側において前記縮径部と対応する軸方向数箇所には、軸状成形金型50の輪状凸部53に対応した拡径部が設けられている。
【0061】
そこで、まず、図5に示すように、三つの成形金型50〜70を型組みする。これにより、図5に示すような略円筒形状のキャビィティ80が形成される。
【0062】
このキャビィティ80内に、溶融した適宜の弾性材料を所定圧力で注入し、所定温度で所定時間加熱することにより、キャビィティ80に対応した形状の略円筒形状の成型品90を得る。
【0063】
ここで使用する弾性材料がシールリング1の素材となるのであるが、例えば一般的なゴム材料としてのNBRや適宜のフッ素系ゴム等が挙げられる。当然ながら、それら以外の適宜の弾性を有する材料とすることも可能である。
【0064】
この後、図6に示すように、二分割の外径側成形金型60,70を径方向外向きに型開きするとともに、軸状成形金型50から成型品90を取り外す。
【0065】
この成型品90の取り外しは、軸状成形金型50を成型品90から軸方向に無理抜きすればよい。
【0066】
というのは、軸状成形金型50の軸方向数箇所に径方向外向きに突出する輪状凸部53を設けているので、成型品90には、その内周面に輪状凸部53から転写された内周溝91が形成されており、そのために、前記したように無理抜きとせざるを得ないのである。このような無理抜きをしても、成型品90がもともと弾性材料で形成されている関係より、成型品90が損傷することはない。しかも、成型品90の内周側の軸方向数箇所に存在する内周溝がテーパ形状になっているから、前記の無理抜き時の抜き抵抗が軽減されるようになり、抜きやすくなる。
【0067】
このようにして取り外した成型品90について、その軸方向数箇所で輪切りすることにより、多数の輪状部材、つまりシールリング1を得る。この輪切りの位置は、図7の二点鎖線で示すように、成型品90の内周面に形成される内周溝91と、成型品90の外周面に形成される外周溝92との各底位置とされる。
【0068】
この成型品90における内周溝91および外周溝92の各底は、軸方向に所定の幅を有する略円筒形状とされている。この幅は、切断工具の刃厚や、前記輪切り時の軸方向位置ずれを許容するために、適宜の寸法に設定される。
【0069】
ところで、上述したように、軸状成形金型50から成型品90を取り外した状態で、前記輪切り作業を行うようにしているが、軸状成形金型50に成型品90を取り付けたままの状態で前記輪切り作業を行うようにしてもよい。
【0070】
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態によれば、平面上に環状溝からなるキャビティが多数設けられる上下の成形金型を用いる従来方法に比べて、小さなスペースで大量生産することが可能であるうえ、材料歩留まりを向上できる。
【0071】
また、上記実施形態で説明した方法で製造されるシールリング1は、その軸方向両側面を切断面とすることによって当該切断面をシールリング1内部と同様に均質な性状にしていることと、シールリング1の内周側一方面取り15をインジェクタ2側の入隅2eに、また、シールリング1の外周側一方面取り13をシリンダヘッド3側の入隅4dにそれぞれ干渉させないようにしていることとの相乗作用によって、シールリング1の両円筒膨出部11,12の切断面を歪ませない状態で、インジェクタ2の段壁面2cとシリンダヘッド3の大径開口部4aの内底面4cとに対し密に圧接させることを可能にしているから、前記圧接部分における密封性が良好となる。
【0072】
さらに、各成形金型50〜70の型開き時に適宜の離型材を用いるものの、この離型材が前記切断面に付着することがないので、当該切断面の材料劣化が抑制または防止されるようになる。
【0073】
しかも、上記実施形態の製造方法では、外径側成形金型60,70を径方向外向きに型開きしてから、軸状成形金型50を、成型品90の内径側から軸方向に無理抜きするような形態にしている関係より、外径側成形金型60,70どうしの合わせ面に対応して、成形バリが成型品90の外周面における円周方向二ヶ所に軸方向に延びる形で出来ることがある。しかしながら、このような成形バリであれば、前記従来方法のようにシールリングの外周と内周とに径方向に沿う平面的な成形バリが出来る場合に比べて、バリ除去作業が簡単に行えるようになる等、生産効率が良好となる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
【0075】
(1)上記実施形態で説明したシールリング1において、例えば図8に示すように、内周面の軸方向中間に径方向内向きに突出する輪状凸部19を設けるようにしてもよい。
【0076】
このようなシールリング1の場合、例えば図9に示すように、インジェクタ2の小径部分に設けたさらに小径とした領域2fの外周面に輪状凸部19を当接させることが可能になり、シリンダヘッド3の貫通孔4に対するインジェクタ2の芯出しを行ううえで有利となる。
【0077】
(2)上記実施形態では、シールリング1を、筒内噴射タイプのインジェクタ2に用いるために、シリンダヘッド3におけるインジェクタ2の取り付け部分に用いるようにした場合を例に挙げている。しかし、本発明は、シールリング1を、ポート噴射タイプのインジェクタに用いるために、吸気マニホールドにおけるインジェクタの取り付け部分に用いるようにしてもよい。
【0078】
(3)上記実施形態では、シールリング1をインジェクタ2のガスケットとして用いる例を挙げているが、特に限定されるものではなく、例えばエンジン(内燃機関)の吸気マニホールド、スロットルバルブあるいはシリンダヘッドカバーの取り付け部分等を密封するものとして用いることが可能であり、さらに、工作機械や各種機器の密封必要部位に用いることが可能である。
【0079】
(4)上記実施形態では、シールリング1をその軸方向両側から挟む形態で用いる例を挙げているが、シールリング1をその径方向内外から挟む形態で用いる場合も、好適に用いることが可能である。
【0080】
(5)上記実施形態では、シールリング1を射出成形法のうち、いわゆるインジェクション成形法と呼ばれる形態で製造する例を挙げているが、いわゆるトランスファ成形法と呼ばれる形態で製造することも可能である他、コンプレッション成形法と呼ばれる方法で製造することも可能である。
【0081】
(6)上記実施形態では、シールリング1の軸方向中間領域における外周側両角部の面取り13,14をいわゆるR面取りとし、内周側両角部の面取り15,16をテーパ状面取りとして、互いに異なる形状にした例を挙げているが、両方ともにR面取りとしたり、あるいは両方ともにテーパ状面取りとしたり、することも可能である。
【0082】
(7)上記実施形態では、シールリング1の両円筒膨出部11,12の内周面17,18の形状を、図3に示すように、所定の曲率半径rの円弧形状としているが、本発明は、例えば図10および図11に示すように、軸方向にストレートな形状とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るシールリングの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すシールリングの断面図である。
【図3】図2のA部を拡大して示す図である。
【図4】図1から図3に示すシールリングの使用状態を示す図である。
【図5】図1から図3に示すシールリングの製造方法の一実施形態で、第1段階を示している。
【図6】図5の続きで、シールリングの製造方法の第2段階を示している。
【図7】図6の続きで、シールリングの製造方法の第3段階を示している。
【図8】本発明に係るシールリングの他実施形態を示す図で、図2に対応している。
【図9】図8のシールリングの使用状態を示す図で、図3に対応している。
【図10】本発明に係るシールリングの他実施形態を示す図で、図2に対応している。
【図11】図10のA部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 シールリング
2 インジェクタ
2a インジェクタの大径部
2b インジェクタの小径部
2c 大径部と小径部との段壁面
2d 小径部の外周面
2e 段壁面と小径部外周面との入隅
3 シリンダヘッド
4 シリンダヘッドの貫通孔
4a 貫通孔の大径開口部
4b 大径開口部の内周壁面
4c 大径開口部の内底面
4d 大径開口部の入隅
11 シールリングの一方の円筒膨出部
12 シールリングの他方の円筒膨出部
13 シールリングの外周側一方角部の面取り
14 シールリングの外周側他方角部の面取り
15 シールリングの内周側一方角部の面取り
16 シールリングの内周側他方角部の面取り
17 一方の円筒膨出部の内周面
18 他方の円筒膨出部の内周面
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリング、ならびにシールリングの製造方法に関する。本発明に係るシールリングは、例えばエンジン(内燃機関)のインジェクタ、インテークマニホールド、スロットルバルブあるいはシリンダヘッドカバーの取り付け部分等を密封するために用いられる他、各種機器の密封必要部位に用いられる。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の図4に示されているように、エンジンのインジェクタにおいてノズル寄りの長手方向途中にアダプタを装着し、このアダプタに形成してある大径筒部と小径筒部との段差部分に、シールリングを嵌合装着しておき、このアダプタをシリンダヘッドのインジェクタ取り付け用の貫通孔に挿入するとともに、シールリングを前記貫通孔における外側の大径開口部の内底面に圧接させるようにしている。
【0003】
このようなシールリングの製造方法としては、一般的に、金型内に生ゴムの紐状体を嵌入させて輪状に加硫接着するプレス成形法や、金型のキャビィティ内に溶融ゴム材等を供給して成形する射出成形法が知られている。
【0004】
射出成形法は、プレス成形法に比べて生産性において有利である。その理由を説明する。前記射出成形法でシールリングを製造する場合、例えば上側成形金型の下面と下側成形金型の上面とのそれぞれの対応する位置に、多数の環状溝からなるキャビティを縦横方向に設け、両成形金型で作るキャビィティ内に溶融ゴム材等を所定圧力で充填するような形態にしている。これにより、数多くのシールリングを一度に成形することができる。
【0005】
但し、前記の射出成形法では、上下の成形金型を型開きすると、製造したシールリングの外周と内周とに径方向に沿う平面的な成形バリが出来ることがある。このようなバリを除去するには、手作業で行うしかなく、面倒で手間がかかっている。
【0006】
ところで、前記の射出成形法によるシールリングの製造方法よりも、さらなる大量生産を可能とする技術が考えられている(例えば特許文献2参照。)。
【0007】
この従来技術では、要するに、略円筒形状の部材を成形してから、その軸方向数箇所で輪切りすることによって、多数のシールリングを得るようにしている。
【0008】
この場合、前記略円筒形状の部材の外周面において、軸方向数箇所に小径の外周溝を設けておき、この外周溝の底位置で輪切りするようにしている。
【特許文献1】特開2001−295721号公報
【特許文献2】特許第2668135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に係る従来例において、インジェクタに装着するアダプタの大小異径部分において大径筒部の径方向に沿う面と小径筒部の外周面との境に位置する入隅や、シリンダヘッドのインジェクタ取り付け用の貫通孔における大径開口部の外径側に位置する入隅は、丸く形成されることが多い。この入隅は、「隅R」とも呼ばれる。
【0010】
このような二箇所の入隅にシールリングの角部を干渉させないようにするために、シールリングの外周側の軸方向一方角部と、内周側の軸方向一方角部とに、面取りを形成するのが好ましいと考えられる。そもそも、例えばシールリングの角部をシャープエッジにしていると、このシールリングの角部が二箇所の入隅に干渉することになり、シールリングにおいて接触相手と圧接する面に歪みが発生して、密に接触できなくなるおそれがある。そのために、前記の面取りが必要になる。
【0011】
なお、前記のように、軸方向一方の角部のみに面取りを形成すると、その取り付け時に誤装着するおそれがあるので、取り付け方向が特定される等、作業が面倒になる。そこで、シールリングの外周側および内周側の軸方向両方の角部に面取りを形成するのが好ましいと考えられる。
【0012】
このような面取りを施したシールリングは、上述した特許文献2の製造方法で製造することができないと言える。というのは、上記特許文献2に係る従来例に示すシールリングは、その外周面または内周面に環状凸部を設け、この環状凸部を相手部材の内周面や外周面に接触させる形態になっており、上述したような面取りを形成する点についてなんら記載されていないし、示唆もない。
【0013】
そのため、上述している面取りを施したシールリングを製造するには、上述しているようなプレス成形方法や射出成形法を採用せざるを得ない。つまり、上述した射出成形法では、前記のような面取りを設けたシールリングを製造するにあたって、上下の成形金型の環状溝における入隅を丸く形成することで、対応することが可能であるが、この射出成形法では、上述した特許文献2に係る従来例に比べて、生産性において劣る。ここに改良の余地がある。
【0014】
なお、特開平11−270600号公報には、ディスクブレーキ装置に用いる環状のシールについて、外周側の軸方向一方角部に、相手部材の凹部内の入隅との干渉を避けるために、面取りを設けるようにすることが記載されている。しかしながら、この従来技術には、上述したように二つの部材(インジェクタのアダプタ、シリンダヘッド等)で軸方向または径方向から挟むタイプのシールリングとは異なるとともに、シールリングの外周側および内周側の軸方向両角部に面取りを形成する点についての記載や示唆がない。つまり、この従来技術は本発明の従来例ではなく、参考程度に提示しただけと考えられたい。
【0015】
本発明は、二つの部材で軸方向または径方向から挟まれて使用されるタイプのシールリングにおいて、良好な密封性を発揮するとともに、効率良く生産可能となる形状とすることを目的としている。
【0016】
また、本発明は、二つの部材で軸方向または径方向から挟まれて使用されるタイプのシールリングの製造方法において、良好な密封性を発揮するシールリングを効率良く生産可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るシールリングは、軸方向両端に、軸方向外向きへ膨出するとともに軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部が設けられており、この円筒膨出部の軸方向両側面が切断面とされており、前記軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とに、それぞれ面取りが設けられている、ことを特徴としている。
【0018】
なお、シールリングとは、環状の密封部材のことであり、いわゆるガスケットやパッキン等と呼ばれるものをすべて含む意味を持つ。
【0019】
このような構成のシールリングは、複数のシールリングを軸方向に一体に連ねたような略円筒形状の部材から、その軸方向数箇所で輪切りされることによって製造されたものであることが分かる。
【0020】
これにより、本発明に係るシールリングによれば、平面上に環状溝からなるキャビティが多数設けられる上下の成形金型を用いる従来方法で製造されるシールリングに比べて、小さなスペースで大量生産するうえで有利となる。
【0021】
また、本発明に係るシールリングは、その軸方向両側面が切断面とされているので、この切断面がシールリング内部と同等の均質な性状になっている。これにより、例えばシールリングを二つの部材で軸方向から挟まれて使用する場合には、シールリングの軸方向両側の切断面が前記二つの部材に対し密に圧接する状態になるので、当該圧接部分の密封性が良好となる。
【0022】
さらに、本発明に係るシールリングは、軸方向厚みの精度がよくなるので、シールリングの圧縮率バラツキを少なく抑えることができる。
【0023】
好ましくは、前記のシールリングは、略円筒形状に成型された部材の軸方向数箇所で輪切りされることで製造されるものとすることができる。
【0024】
このように、シールリングの製造形態を具体的にすることで、生産性に優れたものであることを明確にしている。
【0025】
好ましくは、前記のシールリングにおいて、前記内周側両角部の面取りは、テーパ形状とされ、前記両円筒膨出部の内周面は、前記内周側両角部の面取りに滑らかに連接するよう軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、または軸方向にストレートな形状とされる。
【0026】
このような構成では、シールリングの製造過程において、略円筒形状の部材を輪切りするときに、切断位置の軸方向位置ずれを許容することが可能になる。
【0027】
好ましくは、前記のシールリングは、エンジンのシリンダヘッドまたは吸気マニホールドに対するインジェクタの取り付け部分に軸方向から挟まれる形態で配置されるものであり、前記軸方向一側の切断面が、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドに設けられるインジェクタ取り付け用の貫通孔の大径開口部における径方向に沿う内底面に圧接する状態とされ、また、前記軸方向他側の切断面が、前記インジェクタの長手方向途中に設けられる大小異径部分の径方向に沿う段壁面に圧接する状態とされ、前記内周側一方角部の面取りが、前記段壁面とインジェクタの小径部外周との境に位置する入隅に、また、前記外周側一方角部の面取りが、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドの大径開口部の外径側に位置する入隅に、それぞれ干渉しないような形状とされる。
【0028】
この構成では、シールリングの使用形態を特定している。つまり、例えばシールリングの外周側の面取りや内周側の面取りの役割を明確にしているから、シールリングの外周側および内周側の軸方向両角部をシャープエッジにする場合のように、入隅と干渉してシールリングの軸方向両端面に歪みが発生するという現象を回避することが可能になる。しかも、シールリングの軸方向両側の切断面は、シールリング内部と同等の均質な性状になっている。これらのことの相乗作用によって、シールリングの前記切断面がインジェクタやシリンダヘッドまたは吸気マニホールドの所定面に対し密に圧接する状態になるので、当該圧接部分の密封性が良好となる。
【0029】
また、本発明に係るシールリングの製造方法は、前記した構成を有するシールリングを製造する方法であって、軸状成形金型と当該軸状成形金型を囲んで略円筒形状のキャビィティを形成しかつ径方向外向きに型開きされる少なくとも二分割の外径側成形金型とを用い、前記キャビィティ内で弾性材料からなる略円筒形状の成型品を得る工程と、前記成型品をその軸方向数箇所で輪切りする工程とを含み、かつ、前記キャビィティの外径側の軸方向数箇所に縮径部が設けられているとともに、当該縮径部と対応して前記キャビィティの内径側の軸方向数箇所に拡径部が設けられており、前記略円筒形状の成型品において前記縮径部および拡径部に対応する位置が前記輪切りの位置とされている、ことを特徴としている。
【0030】
このような本発明方法によれば、平面上に環状溝からなるキャビティが多数設けられる上下の成形金型を用いる従来方法に比べて、小さなスペースで大量生産するうえで有利となるとともに、材料歩留まりが高くなる他、キャビィティが一つになる関係よりランナの数を少なくとも1個とすることができるので、前記従来方法のようにキャビィティ毎にランナを設ける場合に比べて有利である。
【0031】
また、本発明方法で製造されるシールリングは、その軸方向両側面が切断面とされるので、この切断面がシールリング内部と同等の均質な性状になっている。これにより、例えばシールリングを二つの部材で軸方向から挟まれて使用する場合には、シールリングの軸方向両側の切断面が相手部材に対し密に圧接する状態になるので、当該圧接部分の密封性が良好となる。
【0032】
さらに、型開き時に適宜の離型材を用いても、前記切断面には離型材が付着することがないので、当該切断面の材料劣化が抑制または防止される。
【0033】
ところで、本発明方法では、外径側成形金型を径方向外向きに型開きしてから、軸状成形金型を、成型品の内径側から軸方向に無理抜きするような形態とする必要がある。その関係より、本発明方法では、外径側成形金型どうしの合わせ面に対応して、成形バリがシールリングの外周面における円周方向数ヶ所に軸方向に延びる形で出来ることがあるものの、このような成形バリであれば、前記従来方法のようにシールリングの外周と内周とに径方向に沿う平面的な成形バリが出来る場合に比べて、バリ除去作業が簡単に行えるようになる等、生産効率が良好となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るシールリングは、良好な密封性を発揮するとともに、効率良く生産可能となる形状であるから、製造コストの低減ならびに信頼性の向上に貢献できる。
【0035】
また、本発明に係るシールリングの製造方法は、良好な密封性を発揮するシールリングを効率良く生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1から図7に、本発明の一実施形態を示している。
【0037】
この実施形態では、本発明に係るシールリングについて、例えば図4に示すように、エンジンにおいてインジェクタの取り付け部分に使用されるものとした例を挙げている。図4において、1はシールリング、2はインジェクタ、3はシリンダヘッドである。
【0038】
まず、インジェクタ2は、一般的に公知の構成と基本的に同じであるから、詳細な図示および説明を割愛するが、インジェクタ2の下端縁には燃料を噴射するためのノズル(図示省略)が設けられ、下端側領域の外径が小径で、長手方向中間領域の外径が大径とされている。
【0039】
このようにインジェクタ2の長手方向途中を大小異径とすることにより段差が設けられている。このインジェクタ2の大径部2aにおいて径方向に沿う段壁面に符号2cを、また、インジェクタ2の小径部2bの外周面に符号2dを付している。
【0040】
このインジェクタ2は、シリンダヘッド3におけるインジェクタ取り付け用の貫通孔4に、小径部2bを挿入する状態で取り付けられ、インジェクタ2のノズル(図示省略)からシリンダヘッド2の燃焼室(図示省略)またはインテークポート(図示省略)に燃料が噴射される。
【0041】
シリンダヘッド3の貫通孔4は、その外側開口側が大径に拡径されている。この大径開口部に符号4aを、また、大径開口部4aにおいて、軸方向に沿う内周壁面に符号4bを、さらに径方向に沿う内底面に符号4cをそれぞれ付している。
【0042】
ところで、インジェクタ2において段壁面2cと小径部2bの外周面2dとの境に位置する入隅2eや、シリンダヘッド3の大径開口部4aの外径側に位置する入隅4dは、それぞれ丸く形成されている。この入隅は、「隅R」とも呼ばれる。
【0043】
そして、シールリング1は、インジェクタ2の小径部2bに外嵌装着されるとともに、インジェクタ2の段壁面2cと、シリンダヘッド3の貫通孔4における大径開口部4aの内底面4cとで軸方向から挟まれる状態で使用されることにより、貫通孔4の内外を気密および液密に遮断するようになっている。通常、シールリング1は、軸方向に圧縮されることによって弾性変形された状態で組み込まれるが、図4では簡単に記載するにとどめている。この圧縮締め代は、適宜設定される。
【0044】
このようなシールリング1について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
【0045】
シールリング1は、おおむねOリングのような形状であるが、その軸方向両端には、軸方向外向きへ膨出しかつ軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部11,12が設けられている。この円筒膨出部11,12の軸方向両側面は、切断面とされている。
【0046】
また、シールリング1の軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とには、それぞれ面取り13〜16が設けられている。
【0047】
図2に示すように、外周側両角部の面取り13,14は、丸く設定されており、また、内周側両角部の面取り15,16は、図3に示すように、所定角度θのテーパ形状とされている。
【0048】
そして、両円筒膨出部11,12の内周面17,18は、内周側両角部の面取り15,16に滑らかに連接するよう軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、または軸方向にストレートな形状とされている。
【0049】
この実施形態では、両円筒膨出部11,12の内周面17,18の形状が、軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、特に図3に示すように、所定の曲率半径rの円弧形状とされている。
【0050】
このような形状のシールリング1であれば、図4に示すように適宜の使用場所に取り付けると、シールリング1の内周側一方角部の面取り15が、インジェクタ2の段壁面2cとインジェクタ2の小径部2bの外周面2dとの境に位置する入隅2eに、また、シールリング1の外周側一方角部の面取り13が、シリンダヘッド3の大径開口部4aの外径側に位置する入隅4dに、それぞれ干渉しないようになる。
【0051】
これにより、シールリング1の軸方向両端の円筒膨出部11,12の切断面が、歪まない状態で、インジェクタ2の段壁面2cとシリンダヘッド3の大径開口部4aの内底面4cとに対し密に圧接する状態になる。しかも、前記の両円筒膨出部11,12が切断面とされているので、当該切断面がシールリング1内部と同等の均質な性状になっている。これらの相乗作用によって、前記圧接部分における密封性が良好となる。
【0052】
次に、上述したシールリング1の製造方法について、図5から図7を参照して詳細に説明する。この実施形態では、シールリング1を射出成形法で製造する場合を例に挙げている。
【0053】
ここでの射出成形法では、図5および図6に示すように、主として、軸状成形金型50と、二分割の外径側成形金型60,70とを用いる。
【0054】
軸状成形金型50は、軸部51の軸方向一端側に径方向外向きに突出するフランジ52を設けた形状になっている。この軸状成形金型50の軸部51における軸方向数箇所には、径方向外向きに突出する輪状凸部53が設けられている。
【0055】
この輪状凸部53の軸方向中央から両側領域は、それぞれ、シールリング1の内周側両角部の面取り15,16および円筒膨出部11,12の内周面を転写形成するように、反転した形状になっている。つまり、輪状凸部53において、軸方向両側領域がテーパ形状になっており、また、頂部領域が円弧形状になっている。
【0056】
二つの外径側成形金型60,70は、軸状成形金型50を囲んで略円筒形状のキャビィティ80を形成するように半円形状凹部61,71が設けられている。この二つの外径側成形金型60,70は、径方向外向きに型開きされるようになっている。
【0057】
この二つの外径側成形金型60,70の半円形状凹部61,71の内面には、それぞれ対応して、半円形状の径方向内向きに突出する半円形凸部62,72が設けられている。これらの半円形凸部62,72は、二つの外径側成形金型60,70を型組みしたときに円形に連なって輪状凸部となる。
【0058】
この半円形凸部62,72は、それぞれ、シールリング1の外周側両角部の面取り13,14および円筒膨出部11,12の外周面を転写形成するように、反転した形状になっている。つまり、半円形凸部62,72において、軸方向両側領域が凹曲面形状になっており、また、頂部領域が円筒形状になっている。
【0059】
このような三つの成形金型50〜70を、図5に示すように型組みすると、略円筒形状のキャビィティ80が形成されるようになるのである。
【0060】
このキャビィティ80の外径側の軸方向数箇所には、二つの外径側成形金型60,70の半円形凸部62,72に対応した縮径部が設けられているとともに、キャビィティ80の内径側において前記縮径部と対応する軸方向数箇所には、軸状成形金型50の輪状凸部53に対応した拡径部が設けられている。
【0061】
そこで、まず、図5に示すように、三つの成形金型50〜70を型組みする。これにより、図5に示すような略円筒形状のキャビィティ80が形成される。
【0062】
このキャビィティ80内に、溶融した適宜の弾性材料を所定圧力で注入し、所定温度で所定時間加熱することにより、キャビィティ80に対応した形状の略円筒形状の成型品90を得る。
【0063】
ここで使用する弾性材料がシールリング1の素材となるのであるが、例えば一般的なゴム材料としてのNBRや適宜のフッ素系ゴム等が挙げられる。当然ながら、それら以外の適宜の弾性を有する材料とすることも可能である。
【0064】
この後、図6に示すように、二分割の外径側成形金型60,70を径方向外向きに型開きするとともに、軸状成形金型50から成型品90を取り外す。
【0065】
この成型品90の取り外しは、軸状成形金型50を成型品90から軸方向に無理抜きすればよい。
【0066】
というのは、軸状成形金型50の軸方向数箇所に径方向外向きに突出する輪状凸部53を設けているので、成型品90には、その内周面に輪状凸部53から転写された内周溝91が形成されており、そのために、前記したように無理抜きとせざるを得ないのである。このような無理抜きをしても、成型品90がもともと弾性材料で形成されている関係より、成型品90が損傷することはない。しかも、成型品90の内周側の軸方向数箇所に存在する内周溝がテーパ形状になっているから、前記の無理抜き時の抜き抵抗が軽減されるようになり、抜きやすくなる。
【0067】
このようにして取り外した成型品90について、その軸方向数箇所で輪切りすることにより、多数の輪状部材、つまりシールリング1を得る。この輪切りの位置は、図7の二点鎖線で示すように、成型品90の内周面に形成される内周溝91と、成型品90の外周面に形成される外周溝92との各底位置とされる。
【0068】
この成型品90における内周溝91および外周溝92の各底は、軸方向に所定の幅を有する略円筒形状とされている。この幅は、切断工具の刃厚や、前記輪切り時の軸方向位置ずれを許容するために、適宜の寸法に設定される。
【0069】
ところで、上述したように、軸状成形金型50から成型品90を取り外した状態で、前記輪切り作業を行うようにしているが、軸状成形金型50に成型品90を取り付けたままの状態で前記輪切り作業を行うようにしてもよい。
【0070】
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態によれば、平面上に環状溝からなるキャビティが多数設けられる上下の成形金型を用いる従来方法に比べて、小さなスペースで大量生産することが可能であるうえ、材料歩留まりを向上できる。
【0071】
また、上記実施形態で説明した方法で製造されるシールリング1は、その軸方向両側面を切断面とすることによって当該切断面をシールリング1内部と同様に均質な性状にしていることと、シールリング1の内周側一方面取り15をインジェクタ2側の入隅2eに、また、シールリング1の外周側一方面取り13をシリンダヘッド3側の入隅4dにそれぞれ干渉させないようにしていることとの相乗作用によって、シールリング1の両円筒膨出部11,12の切断面を歪ませない状態で、インジェクタ2の段壁面2cとシリンダヘッド3の大径開口部4aの内底面4cとに対し密に圧接させることを可能にしているから、前記圧接部分における密封性が良好となる。
【0072】
さらに、各成形金型50〜70の型開き時に適宜の離型材を用いるものの、この離型材が前記切断面に付着することがないので、当該切断面の材料劣化が抑制または防止されるようになる。
【0073】
しかも、上記実施形態の製造方法では、外径側成形金型60,70を径方向外向きに型開きしてから、軸状成形金型50を、成型品90の内径側から軸方向に無理抜きするような形態にしている関係より、外径側成形金型60,70どうしの合わせ面に対応して、成形バリが成型品90の外周面における円周方向二ヶ所に軸方向に延びる形で出来ることがある。しかしながら、このような成形バリであれば、前記従来方法のようにシールリングの外周と内周とに径方向に沿う平面的な成形バリが出来る場合に比べて、バリ除去作業が簡単に行えるようになる等、生産効率が良好となる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
【0075】
(1)上記実施形態で説明したシールリング1において、例えば図8に示すように、内周面の軸方向中間に径方向内向きに突出する輪状凸部19を設けるようにしてもよい。
【0076】
このようなシールリング1の場合、例えば図9に示すように、インジェクタ2の小径部分に設けたさらに小径とした領域2fの外周面に輪状凸部19を当接させることが可能になり、シリンダヘッド3の貫通孔4に対するインジェクタ2の芯出しを行ううえで有利となる。
【0077】
(2)上記実施形態では、シールリング1を、筒内噴射タイプのインジェクタ2に用いるために、シリンダヘッド3におけるインジェクタ2の取り付け部分に用いるようにした場合を例に挙げている。しかし、本発明は、シールリング1を、ポート噴射タイプのインジェクタに用いるために、吸気マニホールドにおけるインジェクタの取り付け部分に用いるようにしてもよい。
【0078】
(3)上記実施形態では、シールリング1をインジェクタ2のガスケットとして用いる例を挙げているが、特に限定されるものではなく、例えばエンジン(内燃機関)の吸気マニホールド、スロットルバルブあるいはシリンダヘッドカバーの取り付け部分等を密封するものとして用いることが可能であり、さらに、工作機械や各種機器の密封必要部位に用いることが可能である。
【0079】
(4)上記実施形態では、シールリング1をその軸方向両側から挟む形態で用いる例を挙げているが、シールリング1をその径方向内外から挟む形態で用いる場合も、好適に用いることが可能である。
【0080】
(5)上記実施形態では、シールリング1を射出成形法のうち、いわゆるインジェクション成形法と呼ばれる形態で製造する例を挙げているが、いわゆるトランスファ成形法と呼ばれる形態で製造することも可能である他、コンプレッション成形法と呼ばれる方法で製造することも可能である。
【0081】
(6)上記実施形態では、シールリング1の軸方向中間領域における外周側両角部の面取り13,14をいわゆるR面取りとし、内周側両角部の面取り15,16をテーパ状面取りとして、互いに異なる形状にした例を挙げているが、両方ともにR面取りとしたり、あるいは両方ともにテーパ状面取りとしたり、することも可能である。
【0082】
(7)上記実施形態では、シールリング1の両円筒膨出部11,12の内周面17,18の形状を、図3に示すように、所定の曲率半径rの円弧形状としているが、本発明は、例えば図10および図11に示すように、軸方向にストレートな形状とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るシールリングの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すシールリングの断面図である。
【図3】図2のA部を拡大して示す図である。
【図4】図1から図3に示すシールリングの使用状態を示す図である。
【図5】図1から図3に示すシールリングの製造方法の一実施形態で、第1段階を示している。
【図6】図5の続きで、シールリングの製造方法の第2段階を示している。
【図7】図6の続きで、シールリングの製造方法の第3段階を示している。
【図8】本発明に係るシールリングの他実施形態を示す図で、図2に対応している。
【図9】図8のシールリングの使用状態を示す図で、図3に対応している。
【図10】本発明に係るシールリングの他実施形態を示す図で、図2に対応している。
【図11】図10のA部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 シールリング
2 インジェクタ
2a インジェクタの大径部
2b インジェクタの小径部
2c 大径部と小径部との段壁面
2d 小径部の外周面
2e 段壁面と小径部外周面との入隅
3 シリンダヘッド
4 シリンダヘッドの貫通孔
4a 貫通孔の大径開口部
4b 大径開口部の内周壁面
4c 大径開口部の内底面
4d 大径開口部の入隅
11 シールリングの一方の円筒膨出部
12 シールリングの他方の円筒膨出部
13 シールリングの外周側一方角部の面取り
14 シールリングの外周側他方角部の面取り
15 シールリングの内周側一方角部の面取り
16 シールリングの内周側他方角部の面取り
17 一方の円筒膨出部の内周面
18 他方の円筒膨出部の内周面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向両端に、軸方向外向きへ膨出するとともに軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部が設けられており、
この円筒膨出部の軸方向両側面が切断面とされており、
前記軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とに、それぞれ面取りが設けられている、ことを特徴とするシールリング。
【請求項2】
請求項1に記載のシールリングは、略円筒形状に成型された部材の軸方向数箇所で輪切りされることで製造されるものである、ことを特徴とするシールリング。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシールリングにおいて、
前記内周側両角部の面取りは、テーパ形状とされ、前記両円筒膨出部の内周面は、前記内周側両角部の面取りに滑らかに連接するよう軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、または軸方向にストレートな形状とされる、ことを特徴とするシールリング。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のシールリングは、エンジンのシリンダヘッドまたは吸気マニホールドに対するインジェクタの取り付け部分に軸方向から挟まれる形態で配置されるものであり、
前記軸方向一側の切断面が、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドに設けられるインジェクタ取り付け用の貫通孔の大径開口部における径方向に沿う内底面に圧接する状態とされ、また、前記軸方向他側の切断面が、前記インジェクタの長手方向途中に設けられる大小異径部分の径方向に沿う段壁面に圧接する状態とされ、
前記内周側一方角部の面取りが、前記段壁面とインジェクタの小径部外周との境に位置する入隅に、また、前記外周側一方角部の面取りが、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドの大径開口部の外径側に位置する入隅に、それぞれ干渉しないような形状とされる、ことを特徴とするシールリング。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のシールリングを製造する方法であって、
軸状成形金型と当該軸状成形金型を囲んで略円筒形状のキャビィティを形成しかつ径方向外向きに型開きされる少なくとも二分割の外径側成形金型とを用い、前記キャビィティ内で弾性材料からなる略円筒形状の成型品を得る工程と、
前記成型品をその軸方向数箇所で輪切りする工程とを含み、
かつ、前記キャビィティの外径側の軸方向数箇所に縮径部が設けられているとともに、当該縮径部と対応して前記キャビィティの内径側の軸方向数箇所に拡径部が設けられており、前記略円筒形状の成型品において前記縮径部および拡径部に対応する位置が前記輪切りの位置とされている、ことを特徴とするシールリングの製造方法。
【請求項1】
軸方向両端に、軸方向外向きへ膨出するとともに軸方向中間領域に比べて外径が小径でかつ内径が大径となる円筒膨出部が設けられており、
この円筒膨出部の軸方向両側面が切断面とされており、
前記軸方向中間領域の軸方向両端における外周側両角部および内周側両角部とに、それぞれ面取りが設けられている、ことを特徴とするシールリング。
【請求項2】
請求項1に記載のシールリングは、略円筒形状に成型された部材の軸方向数箇所で輪切りされることで製造されるものである、ことを特徴とするシールリング。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシールリングにおいて、
前記内周側両角部の面取りは、テーパ形状とされ、前記両円筒膨出部の内周面は、前記内周側両角部の面取りに滑らかに連接するよう軸方向両端縁から内向きへ漸次縮径する形状、または軸方向にストレートな形状とされる、ことを特徴とするシールリング。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のシールリングは、エンジンのシリンダヘッドまたは吸気マニホールドに対するインジェクタの取り付け部分に軸方向から挟まれる形態で配置されるものであり、
前記軸方向一側の切断面が、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドに設けられるインジェクタ取り付け用の貫通孔の大径開口部における径方向に沿う内底面に圧接する状態とされ、また、前記軸方向他側の切断面が、前記インジェクタの長手方向途中に設けられる大小異径部分の径方向に沿う段壁面に圧接する状態とされ、
前記内周側一方角部の面取りが、前記段壁面とインジェクタの小径部外周との境に位置する入隅に、また、前記外周側一方角部の面取りが、前記シリンダヘッドまたは吸気マニホールドの大径開口部の外径側に位置する入隅に、それぞれ干渉しないような形状とされる、ことを特徴とするシールリング。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のシールリングを製造する方法であって、
軸状成形金型と当該軸状成形金型を囲んで略円筒形状のキャビィティを形成しかつ径方向外向きに型開きされる少なくとも二分割の外径側成形金型とを用い、前記キャビィティ内で弾性材料からなる略円筒形状の成型品を得る工程と、
前記成型品をその軸方向数箇所で輪切りする工程とを含み、
かつ、前記キャビィティの外径側の軸方向数箇所に縮径部が設けられているとともに、当該縮径部と対応して前記キャビィティの内径側の軸方向数箇所に拡径部が設けられており、前記略円筒形状の成型品において前記縮径部および拡径部に対応する位置が前記輪切りの位置とされている、ことを特徴とするシールリングの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−191920(P2009−191920A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32004(P2008−32004)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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