シール材及び目地漏水防止構造
【課題】2つの部材間をシールした状態で、シール材が両部材の相対変位に追従して動くことができるようにすることでシール材に断裂が起こるのを抑制し、シール性を長期間に亘って得ることができるようにする。
【解決手段】シール材10は、筒状に形成された粘弾性体11と、粘弾性体11の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材12とを備えている。シール材10は、シール状態にあるときに、フィルム材12のうち、互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有している。フィルム材12の圧接面を滑らせることによってゴム11及びフィルム材12を転動させるように構成されている。
【解決手段】シール材10は、筒状に形成された粘弾性体11と、粘弾性体11の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材12とを備えている。シール材10は、シール状態にあるときに、フィルム材12のうち、互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有している。フィルム材12の圧接面を滑らせることによってゴム11及びフィルム材12を転動させるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材の間をシールするためのシール材及び水路における目地からの漏水を防止するための目地漏水防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、U字状の水路構成部材を複数連結して水路を形成することが行われている。隣り合う水路構成部材の間には水路内の水が漏れるのを防止するためのシール材が設けられている。この種のシール材としては、例えば、特許文献1に開示されているように、粘着性ブチルゴムで被覆されたものが知られている。図17に示すように、この種のシール材100は、第1の水路構成部材101と第2の水路構成部材102との間に配置されて圧縮力を受けた状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−302827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、水路の施工後には、地盤沈下や車両の走行振動、周囲の温度変化による膨張収縮等の周辺環境の変化に起因して、第1の水路構成部材101が第2の水路構成部材102に対し変位することがある。その変位方向としては、水路の延びる方向、水路の幅方向、水路の延びる方向に対して傾く方向等、様々であり、例えば、図18に示すように、第1の水路構成部材101が第2の水路構成部材102に対してシール材100を剪断する方向に変位することもある。この方向に変位した場合には、次のような問題がある。すなわち、シール材100は第1の水路構成部材101及び第2の水路構成部材102に粘着しているので、シール材100は剪断方向の力を受けることになる。剪断方向の変位量が少ない場合には、シール材100自体の変形によって変位を吸収できるものの、水路施工現場によっては、変位量がシール材100の変形では吸収できないくらいまで大きくなることもある。さらに、シール材100は水路内から水圧を受ける。水圧を受け、かつ、大きな変位による力を受けたシール材100は、図19に示すように、断裂してしまう場合があり、その結果、シール材100がシール機能を果たさなくなってしまう。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2つの部材間をシールした状態で、シール材が両部材の相対変位に追従して動くことができるようにすることで、シール材に断裂が起こるのを抑制し、これにより、シール性を長期間に亘って得ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、第1の部材と第2の部材との間をシールするシール材において、筒状に形成された粘弾性体と、上記粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備え、上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有し、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記粘弾性体及びフィルム材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
この構成によれば、第1及び第2の部材間をシールした状態では、粘弾性体が第1及び第2の部材間で両部材に密着するように変形してシール性が得られる。
【0008】
そして、例えば、第1の部材が第2の部材に対して変位し、その変位方向が、シール材の厚み方向と交差する方向で、シール材を剪断するような方向であった場合には、シール材の内部においてフィルム材の圧接面が滑り、粘弾性体及びフィルム材が第1及び第2の部材間で転動する。その結果、シール材が第1の部材の変位に追従して動いていくことになる。よって、シール材には、該シール材が破断を起こすような大きな力が生じなくなる。尚、第2の部材が変位した場合も同様にシール材が転動して追従する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、粘弾性体には、該粘弾性体の一部を欠損してなる粘弾性体側欠損部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、粘弾性体の使用量が少なくて済む。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、フィルム材における粘弾性体側欠損部に対応する部分には、該フィルム材を欠損してなるフィルム材側欠損部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、空気をフィルム材側欠損部からシール材の内部に導入することが可能になる。これにより、例えば、第1及び第2部材が、シール材を膨らませるように変位した場合にシール材の内部への空気の導入によってシール材を無理なく膨らませて第1及び第2の部材の変位に追従させることが可能になる。
【0013】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、粘弾性体の外周面は、シール状態にあるときに第1及び第2の部材の少なくとも一方に粘着する粘着性を有していることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、第1及び第2の部材間のシール性がより一層向上する。
【0015】
第5の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、粘弾性体の外周面のうち、少なくとも一部は、第1及び第2の部材に対する非粘着性を有していることを特徴とするものである。
【0016】
すなわち、仮に、粘弾性体の外周面の全体が第1及び第2の部材に粘着していると、条件によってはシール材が転動し難くなる虞れがあるが、本発明のように粘弾性体の少なくとも一部が非粘着性を有していることで、第1及び第2の部材への粘着面積を減少させてシール材を転動させ易くすることが可能になる。
【0017】
第6の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、粘弾性体及びフィルム材が厚み方向に重なるように折り畳まれていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、例えば、第1及び第2の部材間の寸法が長い場合に、粘弾性体及びフィルム材を折り畳んで厚み方向に重ねる作業を行うだけで、シール材の形状を、第1及び第2の部材間の寸法に対応する形状にすることが可能になる。
【0019】
第7の発明は、水路を形成するように並べられた第1の部材と第2の部材との目地からの漏水をシール材を用いて防止するように構成された目地漏水防止構造において、上記シール材は、筒状に形成された粘弾性体と、該粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備えるとともに、上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有するように構成され、上記シール材が上記第1及び第2の部材間をシールする状態にあるときに、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記シール材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、目地からの漏水を防止する場合に、第1の発明と同様に、シール材を、第1及び第2の部材の相対変位に追従して動かすことが可能になるので、シール材には、該シール材が破断を起こすような大きな力が生じなくなる。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、筒状の粘弾性体の内周面にフィルム材を固着させ、第1及び第2の部材間をシールする状態にあるときに、フィルム材の圧接面を滑らせることによって粘弾性体及びフィルム材を第1及び第2の部材間で転動させるようにしたので、第1及び第2の部材が、シール材を剪断するような方向に相対変位した場合に、シール材をその方向に転動させて追従させることができる。これにより、シール材の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0022】
第2の発明によれば、粘弾性体の一部に粘弾性体側欠損部を設けたことで、粘弾性体の使用量を抑制してコストを低減できる。
【0023】
第3の発明によれば、フィルム材にフィルム材側欠損部を設けたことで、第1及び第2部材が、シール材を膨らませるように変位した場合にシール材の内部へ空気を導入できる。これにより、シール材を第1及び第2の部材の変位に追従するように変形させることができ、シール性をより一層向上できる。
【0024】
第4の発明によれば、粘弾性体の外周面が第1及び第2の部材の少なくとも一方に粘着するので、シール性をより一層向上させることができる。
【0025】
第5の発明によれば、粘弾性体の外周面のうち、少なくとも一部が非粘着性を有しているので、シール材を転動させ易くでき、シール材の断裂を確実に抑制できる。
【0026】
第6の発明によれば、第1及び第2の部材間の寸法が長い場合に、粘弾性体及びフィルム材を厚み方向に重なるように折り畳むことで、容易に、かつ、低コストで対応できる。
【0027】
第7の発明によれば、第1の発明と同様にシール材の断裂を抑制できるので、目地からの漏水を長期間に亘って防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1にかかるシール材の斜視図である。
【図2】水路の一部を示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】シール状態にあるシール材を拡大して示す断面図である。
【図5】水路構成部材がシール材を剪断する方向に変位した状態を示す図3相当図である。
【図6】水路構成部材がシール材の厚み方向に変位した状態を示す図3相当図である。
【図7】実施形態2にかかる図4相当図である。
【図8】実施形態2にかかる図3相当図である。
【図9】実施形態2にかかる図5相当図である。
【図10】実施形態2にかかる図6相当図である。
【図11】実施形態3にかかる図5相当図である。
【図12】変形例1にかかる図4相当図である。
【図13】変形例2にかかる図4相当図である。
【図14】変形例3にかかる図4相当図である。
【図15】変形例4にかかるフィルム材の成形方法を示す図である。
【図16】変形例5にかかるフィルム材を示す図である。
【図17】従来例にかかる水路の部分断面図である。
【図18】従来例にかかる水路構成部材がシール材を剪断する方向に変位した状態を示す図17相当図である。
【図19】従来例にかかる水路構成部材がシール材を剪断する方向に大きく変位した状態を示す図17相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1にかかる目地漏水防止構造1が設けられた水路Aを示すものである。この実施形態の説明では、目地漏水防止構造1を説明する前に、水路Aについて説明する。
【0031】
水路Aは、例えば、農業用水や工業用水の他、生活排水を流す際に使用されるものであり、複数のコンクリート製の水路構成部材B1,B2を所定方向に並べて構成されたものである。この図では、2つの水路構成部材B1,B2(第1の部材、第2の部材)を示して他の水路構成部材を省略している。
【0032】
各水路構成部材B1,B2は同じものであり、上方に開放する略U字状の断面形状を有するチャンネル状をなしている。水路構成部材B1,B2は、工場で予め成形されて現場まで搬送されるプレキャスト製品であってもよいし、コンクリートを現場で型枠内に打って成形された現場打ちのものであってもよい。また、水路構成部材B1,B2は、直線形状のものであってもよいし、湾曲形状のものであってもよい。
【0033】
水路構成部材B1の大きさは、水路Aの用途等によって異なるが、例えば、長さが0.5m〜20m程度、幅が0.3m〜10m程度、高さが0.3m〜3m程度である。
【0034】
水路構成部材B1の長手方向の端部の内面には、段差部Baが形成されている。水路構成部材B2の長手方向の端部には、隣り合う水路構成部材B1の段差部Baに嵌るように形成された嵌合部Bbが突出するように形成されている。水路構成部材B1と水路構成部材B2との間には、目地Cが形成されることになる。そして、シール材10は、水路構成部材B1の段差部Baの内面と、水路構成部材B2の嵌合部Bbの外面との間に配置されて目地Cからの漏水を防止するようになっている。このシール材10により、目地漏水防止構造1(図2にのみ示す)が構成されている。
【0035】
次に、シール材10の構造について説明する。図1に示すように、シール材10は、長尺の筒状に形成されたゴム(粘弾性体)11と、ゴム11の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材12とを備えている。シール材10の周長や肉厚は、当該シール材10を使用する水路Aの大きさや構造によって任意の値に設定すればよいが、例えば、周長は10mm〜1000mm、肉厚は0.5mm〜10mmの範囲で設定可能である。
【0036】
ゴム11の肉厚は、該ゴム11の周方向について略均一に設定されるとともに、長手方向についても一端から他端まで略均一に設定されている。尚、ゴム11の肉厚は、部分的に薄くすることも可能である。
【0037】
ゴム11は、原料ゴムに種々の配合剤等が配合されたゴム組成物で構成されている。この実施形態では、原料ゴムとして非加硫のブチルゴム(IIR)を用いている。ブチルゴムとしては、例えば廃タイヤのインナーチューブを再生した再生ブチルゴムが特に好ましい。
【0038】
尚、原料ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。原料ゴムは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていてもよい。原料ゴムは上記に限られるものではなく、水を透過させずに、目地Cのシール性を確保できる性質を有するものであればよい。
【0039】
また、上記配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、老化防止剤、軟化剤、粘性付与剤等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0040】
この実施形態では、ゴム11の物性は、JIS K6251に基づいて測定される引っ張り強さが0.3MPa以上とされ、また、伸び率は400%以上とされている。ゴム11の物性は配合剤により任意に調整可能である。
【0041】
ゴム11の外周面は、水路構成部材B1,B2の表面に対する粘着性を有している。ゴム11の外周面の粘着性は、周知の粘着剤等で付与することも可能である。また、ゴム11の内周面は、フィルム材12に対する粘着性を有している。さらに、ゴム11は、水路構成部材B1の段差部Baの内面形状、及び、水路構成部材B2の嵌合部Bbの外面形状に沿うように、容易に弾性変形するようになっている。
【0042】
フィルム材12は、樹脂材からなり、ゴム11と同様に筒状に形成されている。フィルム材12の外周面の全体は、ゴム11が有する粘着性によって該ゴム11の内周面に対し固着されている。これにより、シール材10に様々な方向から外力が作用しても、フィルム材12がゴム11に対してずれるようになることは殆どない。
【0043】
尚、フィルム材12は、接着材等によってゴム11の内周面に固着してもよい。また、フィルム材12がゴム11に対してずれなければよいので、フィルム材12の一部をゴム11に固着させないようにしてもよい。
【0044】
フィルム材12の厚さは、10μm〜1000μm程度に設定されている。また、フィルム材12を構成する樹脂材は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。樹脂フィルム12は、単一の材質で形成されていてもよく、また、複数の材質で形成されていてもよい。樹脂フィルム12の材質としては、これらのうちポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂が好ましい。樹脂フィルム12は、単一層で構成されていてもよく、また、複数層の積層体で構成されていてもよい。また、フィルム材12は、樹脂以外にも、例えば、アルミニウム等からなる薄い金属材や、布で形成してもよい。
【0045】
フィルム材12の内周面は、互いに圧接された状態(図3及び図4に示す)にあるときに、その圧接力を受ける方向(図3及び図4の上下方向)と交差する方向(図3及び図4の左右方向)の滑りを許容する滑り性を有している。滑り性は、フィルム材12に表面処理を施すことによって得られるものである他、フィルム材12自身が持っているものも含む。表面処理としては、滑性を付与するための処理であればよく、例えば、オイル等の摩擦低減剤や、タルク等の粉を付着させることが挙げられる。また、フィルム材12にシリコーンコーティングや、フッ素コーティングを施すようにしてもよい。
【0046】
シール材10が使用状態にあるときには、詳細は後述するが、上記のように水路構成部材B1と水路構成部材B2とで挟まれて厚み方向に押し潰される。この場合、図4に示すように、フィルム材12の内周面が厚み方向に互いに圧接して圧接面12a,12bとなる。滑り性は、フィルム材12の内周面全体が有しており、上記のような圧接力を受けた状態で、圧接面12a,12b同士が固着せずに、例えばシール材10における圧接面12a側の部分に図4の左右方向に力を加えた際に、圧接面12aが圧接面12bに対して滑りを起こすことができる程度である。この左右方向の力の大きさは、水路構成部材B1が水路構成部材B2に対して水路Aの延びる方向に変位する際の力、水路構成部材B2が水路構成部材B1に対して水路Aの延びる方向に変位する際の力である。変位の要因としては、地盤沈下や車両の走行振動、周囲の温度変化による膨張収縮等である。
【0047】
シール材10の製造要領としては、例えば押出成形法を用いることができる。すなわち、ゴム11を成形する際に、その内周面をフィルム材12で被覆するように、押出成形用の型を構成すればよい。これにより、ゴム11とフィルム材12とからなるシール材10を容易に得ることができる。
【0048】
次に、上記シール材10を使用して水路Aを構築する場合について説明する。まず、水路構成部材B1を所定位置に設置する。
【0049】
しかる後、シール材10を水路構成部材B1の段差部Baの内周面に貼り付けていく。このとき、シール材10のゴム11の外周面に粘着性があるので、シール材10を段差部Baの内周面に押し付けていくだけでシール材10が水路構成部材B1に保持される。
【0050】
その後、水路構成部材B2を設置する。このとき、水路構成部材B2の嵌合部Bbを水路構成部材B1の段差部Baに嵌めるのであるが、水路構成部材B2を移動させる方向は、嵌合部Bbがシール材10を段差部Baの内面に対し略垂直に押し付ける方向とする。このようにして、図2に示す目地漏水防止構造1が得られる。
【0051】
そして、シール材10は、水路構成部材B1の段差部Baと水路構成部材B2の嵌合部Bbとの間に配置されて、段差部Baと嵌合部Bbとで挟まれて、水路構成部材B1と水路構成部材B2との間をシールする状態となる。このとき、シール材10は、段差部Baと嵌合部Bbとで厚み方向に押し潰されて、ゴム11が段差部Baの内面及び嵌合部Bbの内面に沿うように弾性変形する。また、ゴム11の外周面が段差部Baの内面及び嵌合部Bbの内面に粘着する。これらのことにより、水路構成部材B1と水路構成部材B2との間が確実にシールされて漏水が防止される。
【0052】
水路Aが構築された後に、例えば、その周囲で地盤沈下や車両の走行振動が起こることがあり、また、周囲の温度変化による水路構成部材B1,B2の膨張収縮等が起こる。これにより、例えば、水路構成部材B1が水路構成部材B2に対して変位することがある。変位の方向は様々であるが、水路構成部材B1が水路Aの延びる方向(図5に矢印で示す方向)に変位した場合を想定してシール材10の動きを説明する。尚、便宜上、水路構成部材B2は静止していると仮定する。
【0053】
シール材10はシール状態であるので、フィルム材12の内周面が圧接して図4に示す圧接面12a,12bが存在している。水路構成部材B1の変位により、ゴム11のうち、水路構成部材B1の段差部Baに粘着している部分が図5における右側へ移動していき、これに伴って図4に示すフィルム材12の圧接面12aが圧接面12bに対して右側へ滑っていく。これにより、シール材10が右側へ転動することになる。
【0054】
このとき、図5に示す段差部Baの内周面に粘着しているゴム11の一部が段差部Baに粘着したまま残存し、また、嵌合部Bbの外周面に粘着しているゴム11の一部が嵌合部Bbに粘着したまま残存するようになるが、その残存量はゴム11の全体量から比べて僅かな量なので、シール性の悪化を招くことはない。
【0055】
このようなシール材10の転動により、シール材10は水路構成部材B1の変位に追従して動いていく。よって、水路構成部材B1の変位が大きくても、シール材10には、該シール材10が破断を起こすような大きな力が生じなくなるので、シール材10の断裂が回避され、シール性が得られる。
【0056】
尚、水路構成部材B2が水路構成部材B1に対し水路Aの延びる方向に変位した場合も同様にシール材10が転動する。
【0057】
次に、図6に基づいて、水路構成部材B1の変位方向が、段差部Baが嵌合部Bbから離れる方向(図中に矢印で示す方向)である場合ついて説明する。この場合には、ゴム11の外周面が嵌合部Bb及び段差部Baに粘着しているので、シール材10が水路構成部材B1の変位方向に引っ張られてフィルム材12が筒状となるように変形して水路構成部材B1の変位に追従する。この変形により、水路構成部材B1と水路構成部材B2との間のシール性は確保される。
【0058】
以上説明したように、この実施形態1によれば、筒状のゴム11の内周面にフィルム材12を固着させ、シール状態にあるときに、フィルム材12の圧接面12a,12bを滑らせることによってゴム11及びフィルム材12を転動させるようにしたので、水路構成部材B1や水路構成部材B2がシール材10を剪断するような方向に相対変位した場合に、シール材10をその方向に転動させて変位に追従させることができる。これにより、シール材10の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0059】
また、シール材10のゴム11の外周面に粘着性があるので、ゴム11を水路構成部材B1と水路構成部材B2とに粘着させてシール性をより一層高めることができる。
【0060】
また、この実施形態1では、シール材10が膨らむように変形可能であるため、水路構成部材B1の変位方向が、段差部Baが嵌合部Bbから離れる方向であっても、シール性を確保できる。
【0061】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2にかかるシール材10を示すものである。この実施形態2のシール材10は、実施形態1のものに対しゴム11及びフィルム材12の構造が異なるだけであり、使用状態は同じであるので、以下、異なる部分を詳細に説明する。
【0062】
すなわち、実施形態2のシール材10のゴム11には、その一部を欠損させてなるゴム側欠損部(粘弾性体側欠損部)11aが設けられている。ゴム側欠損部11aの形成位置は、シール材10の長手方向中間部で、かつ、図8に示すシール状態としたときに、シール材10の幅方向中間部に位置するように設定されている。また、ゴム欠損部11aの大きさは、シール状態としたときに、ゴム欠損部11aがシール材10の幅方向の端部に達しないように設定されている。尚、ゴム欠損部11aの形状は、円形であってもよいし、矩形であってもよく、形状は特に限定されない。
【0063】
フィルム材12におけるゴム側欠損部11aに対応する部分には、該フィルム材12を欠損してなるフィルム材側欠損部12cが設けられている。フィルム材側欠損部12cの形状はゴム側欠損部11aと略同じに設定されている。
【0064】
この実施形態2では、水路構成部材B1が水路Aの延びる方向(図9に矢印で示す方向)に変位した場合には、実施形態1で説明したように、シール材10が転動することにより、シール材10は水路構成部材B1の変位に追従して動いていく。よって、水路構成部材B1の変位が大きくても、シール材10には、該シール材10が破断を起こすような大きな力が生じなくなるので、シール材10の断裂が回避され、シール性が得られる。
【0065】
以上説明したように、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、シール状態にあるときに、ゴム11及びフィルム材12を転動させるようにしたので、シール材10の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0066】
また、ゴム11の一部にゴム側欠損部11aを設けたことで、ゴム原料の使用量を抑制してコストを低減できる。
【0067】
また、ゴム欠損部11a及びフィルム材側欠損部12cが形成されていることにより、これらゴム欠損部11a及びフィルム材側欠損部12cを介してシール材10の内部に空気を導入することが可能となっている。このとき、ゴム11の外周面のうち、嵌合部Bbに接する部分には粘着性を付与しないのが好ましい。これにより、例えば、図10に示すように、水路構成部材B1の変位方向が、段差部Baが嵌合部Bbから離れる方向(図中に矢印で示す方向)である場合には、シール材10の内部に空気が導入されて該シール材10が容易に膨らむようになる。これにより、シール性がより一層向上する。
【0068】
尚、シール材10には、ゴム側欠損部11aのみを設け、フィルム材側欠損部12cを省略してもよい。また、ゴム側欠損部11a及びフィルム材側欠損部12cは、複数箇所に設けてもよいし、シール材10の長手方向に延びるスリット状に形成してもよい。
【0069】
(実施形態3)
図11は、実施形態3にかかるシール材10の使用状態を示すものである。この実施形態3のシール材10は、実施形態1のものに対しゴム11の外周面全体が非粘着性を有している点で実施形態1のものに対し異なるだけであり、使用状態は同じであるので、以下、異なる部分を詳細に説明する。
【0070】
この実施形態3のゴム11の外周面には、水路構成部材B1,B2に粘着しないように非粘着処理が施されている。非粘着処理としては、例えば、オイル等の滑性剤やタルク等の防着粉を付着させることが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0071】
このシール材10がシール状態にあるときに、水路構成部材B1が水路Aの延びる方向(図11に矢印で示す方向)に変位した場合には、実施形態1と同様に転動する。このとき、ゴム11が水路構成部材B1の段差部Ba及び水路構成部材B2の嵌合部Bbに粘着していないので、無端ベルトのように転動し易く、水路構成部材B1の変位に対するシール材10の追従性が向上する。
【0072】
また、ゴム11が段差部Ba及び嵌合部Bbに粘着していないことで、ゴム11の一部が段差部Ba及び嵌合部Bbに残存してしまうことはなく、ゴム11による高いシール性を維持できる。
【0073】
以上説明したように、この実施形態3によれば、実施形態1と同様に、シール状態にあるときに、ゴム11及びフィルム材12を転動させるようにしたので、シール材10の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0074】
尚、上記実施形態1〜3では、シール材10を折り畳むことなく平板状にして使用する場合について説明したが、これに限らず、図12に示す変形例1のように、ゴム11及びフィルム材12を一緒に折り畳むことによって、シール材10の3枚分の厚みを有するように構成してもよい。これにより、水路構成部材B1の段差部Baと、水路構成部材B2の嵌合部Bbとの間の寸法が長い場合にも、容易に対応できる。また、シール材10を折り畳むことで、水路構成部材がシール材10の厚み方向に大きく変位しても、その変位量に対応するように、シール材10の変形量を大きく確保でき、シール性を確保できる。
【0075】
また、シール材10を折り畳む場合に、図13に示す変形例2のように、幅方向両側を折り返すようにしてもよい。この変形例2では、シール材10の2枚分の厚みを有することになる。また、図示しないが、シール材10の4枚分以上の厚みを有するように折り畳んでもよい。
【0076】
また、シール材10の断面形状は、各種形状にすることができ、例えば、図14に示す変形例3のように、台形にしてもよい。
【0077】
また、ゴム11の外周面のうち、一部にのみ非粘着部分を設けてもよい。
【0078】
また、フィルム材12は、予め筒状にすることなく、図15に示す変形例4のように、1枚のフィルム材12の幅方向両側を折り畳むようにしてもよいし、図16に示す変形例5のように、1枚のフィルム材12を折り重ねるようにしてもよい。
【0079】
また、ゴム11の代わりに、粘弾性を有する樹脂等を筒状に成形したものを用いてもよい。
【0080】
また、上記シール材10は、隣り合う水路構成部材B1,B2の端面同士を突き合わせるようにした、いわゆる突き合わせ目地(図示せず)にも用いることもできる。
【0081】
また、シール材10は、水路Aの目地Cだけでなく、2つの部材間をシールする必要がある場合に広く用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明は、例えば、水路の目地に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 目地漏水防止構造
10 シール材
11 ゴム(粘弾性体)
11a ゴム側欠損部(粘弾性体側欠損部)
12 フィルム材
12a 圧接面
12b 圧接面
12c フィルム材側欠損部
B1 水路構成部材(第1の部材)
B2 水路構成部材(第2の部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材の間をシールするためのシール材及び水路における目地からの漏水を防止するための目地漏水防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、U字状の水路構成部材を複数連結して水路を形成することが行われている。隣り合う水路構成部材の間には水路内の水が漏れるのを防止するためのシール材が設けられている。この種のシール材としては、例えば、特許文献1に開示されているように、粘着性ブチルゴムで被覆されたものが知られている。図17に示すように、この種のシール材100は、第1の水路構成部材101と第2の水路構成部材102との間に配置されて圧縮力を受けた状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−302827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、水路の施工後には、地盤沈下や車両の走行振動、周囲の温度変化による膨張収縮等の周辺環境の変化に起因して、第1の水路構成部材101が第2の水路構成部材102に対し変位することがある。その変位方向としては、水路の延びる方向、水路の幅方向、水路の延びる方向に対して傾く方向等、様々であり、例えば、図18に示すように、第1の水路構成部材101が第2の水路構成部材102に対してシール材100を剪断する方向に変位することもある。この方向に変位した場合には、次のような問題がある。すなわち、シール材100は第1の水路構成部材101及び第2の水路構成部材102に粘着しているので、シール材100は剪断方向の力を受けることになる。剪断方向の変位量が少ない場合には、シール材100自体の変形によって変位を吸収できるものの、水路施工現場によっては、変位量がシール材100の変形では吸収できないくらいまで大きくなることもある。さらに、シール材100は水路内から水圧を受ける。水圧を受け、かつ、大きな変位による力を受けたシール材100は、図19に示すように、断裂してしまう場合があり、その結果、シール材100がシール機能を果たさなくなってしまう。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2つの部材間をシールした状態で、シール材が両部材の相対変位に追従して動くことができるようにすることで、シール材に断裂が起こるのを抑制し、これにより、シール性を長期間に亘って得ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、第1の部材と第2の部材との間をシールするシール材において、筒状に形成された粘弾性体と、上記粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備え、上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有し、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記粘弾性体及びフィルム材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
この構成によれば、第1及び第2の部材間をシールした状態では、粘弾性体が第1及び第2の部材間で両部材に密着するように変形してシール性が得られる。
【0008】
そして、例えば、第1の部材が第2の部材に対して変位し、その変位方向が、シール材の厚み方向と交差する方向で、シール材を剪断するような方向であった場合には、シール材の内部においてフィルム材の圧接面が滑り、粘弾性体及びフィルム材が第1及び第2の部材間で転動する。その結果、シール材が第1の部材の変位に追従して動いていくことになる。よって、シール材には、該シール材が破断を起こすような大きな力が生じなくなる。尚、第2の部材が変位した場合も同様にシール材が転動して追従する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、粘弾性体には、該粘弾性体の一部を欠損してなる粘弾性体側欠損部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、粘弾性体の使用量が少なくて済む。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、フィルム材における粘弾性体側欠損部に対応する部分には、該フィルム材を欠損してなるフィルム材側欠損部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、空気をフィルム材側欠損部からシール材の内部に導入することが可能になる。これにより、例えば、第1及び第2部材が、シール材を膨らませるように変位した場合にシール材の内部への空気の導入によってシール材を無理なく膨らませて第1及び第2の部材の変位に追従させることが可能になる。
【0013】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、粘弾性体の外周面は、シール状態にあるときに第1及び第2の部材の少なくとも一方に粘着する粘着性を有していることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、第1及び第2の部材間のシール性がより一層向上する。
【0015】
第5の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、粘弾性体の外周面のうち、少なくとも一部は、第1及び第2の部材に対する非粘着性を有していることを特徴とするものである。
【0016】
すなわち、仮に、粘弾性体の外周面の全体が第1及び第2の部材に粘着していると、条件によってはシール材が転動し難くなる虞れがあるが、本発明のように粘弾性体の少なくとも一部が非粘着性を有していることで、第1及び第2の部材への粘着面積を減少させてシール材を転動させ易くすることが可能になる。
【0017】
第6の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、粘弾性体及びフィルム材が厚み方向に重なるように折り畳まれていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、例えば、第1及び第2の部材間の寸法が長い場合に、粘弾性体及びフィルム材を折り畳んで厚み方向に重ねる作業を行うだけで、シール材の形状を、第1及び第2の部材間の寸法に対応する形状にすることが可能になる。
【0019】
第7の発明は、水路を形成するように並べられた第1の部材と第2の部材との目地からの漏水をシール材を用いて防止するように構成された目地漏水防止構造において、上記シール材は、筒状に形成された粘弾性体と、該粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備えるとともに、上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有するように構成され、上記シール材が上記第1及び第2の部材間をシールする状態にあるときに、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記シール材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、目地からの漏水を防止する場合に、第1の発明と同様に、シール材を、第1及び第2の部材の相対変位に追従して動かすことが可能になるので、シール材には、該シール材が破断を起こすような大きな力が生じなくなる。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、筒状の粘弾性体の内周面にフィルム材を固着させ、第1及び第2の部材間をシールする状態にあるときに、フィルム材の圧接面を滑らせることによって粘弾性体及びフィルム材を第1及び第2の部材間で転動させるようにしたので、第1及び第2の部材が、シール材を剪断するような方向に相対変位した場合に、シール材をその方向に転動させて追従させることができる。これにより、シール材の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0022】
第2の発明によれば、粘弾性体の一部に粘弾性体側欠損部を設けたことで、粘弾性体の使用量を抑制してコストを低減できる。
【0023】
第3の発明によれば、フィルム材にフィルム材側欠損部を設けたことで、第1及び第2部材が、シール材を膨らませるように変位した場合にシール材の内部へ空気を導入できる。これにより、シール材を第1及び第2の部材の変位に追従するように変形させることができ、シール性をより一層向上できる。
【0024】
第4の発明によれば、粘弾性体の外周面が第1及び第2の部材の少なくとも一方に粘着するので、シール性をより一層向上させることができる。
【0025】
第5の発明によれば、粘弾性体の外周面のうち、少なくとも一部が非粘着性を有しているので、シール材を転動させ易くでき、シール材の断裂を確実に抑制できる。
【0026】
第6の発明によれば、第1及び第2の部材間の寸法が長い場合に、粘弾性体及びフィルム材を厚み方向に重なるように折り畳むことで、容易に、かつ、低コストで対応できる。
【0027】
第7の発明によれば、第1の発明と同様にシール材の断裂を抑制できるので、目地からの漏水を長期間に亘って防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1にかかるシール材の斜視図である。
【図2】水路の一部を示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】シール状態にあるシール材を拡大して示す断面図である。
【図5】水路構成部材がシール材を剪断する方向に変位した状態を示す図3相当図である。
【図6】水路構成部材がシール材の厚み方向に変位した状態を示す図3相当図である。
【図7】実施形態2にかかる図4相当図である。
【図8】実施形態2にかかる図3相当図である。
【図9】実施形態2にかかる図5相当図である。
【図10】実施形態2にかかる図6相当図である。
【図11】実施形態3にかかる図5相当図である。
【図12】変形例1にかかる図4相当図である。
【図13】変形例2にかかる図4相当図である。
【図14】変形例3にかかる図4相当図である。
【図15】変形例4にかかるフィルム材の成形方法を示す図である。
【図16】変形例5にかかるフィルム材を示す図である。
【図17】従来例にかかる水路の部分断面図である。
【図18】従来例にかかる水路構成部材がシール材を剪断する方向に変位した状態を示す図17相当図である。
【図19】従来例にかかる水路構成部材がシール材を剪断する方向に大きく変位した状態を示す図17相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1にかかる目地漏水防止構造1が設けられた水路Aを示すものである。この実施形態の説明では、目地漏水防止構造1を説明する前に、水路Aについて説明する。
【0031】
水路Aは、例えば、農業用水や工業用水の他、生活排水を流す際に使用されるものであり、複数のコンクリート製の水路構成部材B1,B2を所定方向に並べて構成されたものである。この図では、2つの水路構成部材B1,B2(第1の部材、第2の部材)を示して他の水路構成部材を省略している。
【0032】
各水路構成部材B1,B2は同じものであり、上方に開放する略U字状の断面形状を有するチャンネル状をなしている。水路構成部材B1,B2は、工場で予め成形されて現場まで搬送されるプレキャスト製品であってもよいし、コンクリートを現場で型枠内に打って成形された現場打ちのものであってもよい。また、水路構成部材B1,B2は、直線形状のものであってもよいし、湾曲形状のものであってもよい。
【0033】
水路構成部材B1の大きさは、水路Aの用途等によって異なるが、例えば、長さが0.5m〜20m程度、幅が0.3m〜10m程度、高さが0.3m〜3m程度である。
【0034】
水路構成部材B1の長手方向の端部の内面には、段差部Baが形成されている。水路構成部材B2の長手方向の端部には、隣り合う水路構成部材B1の段差部Baに嵌るように形成された嵌合部Bbが突出するように形成されている。水路構成部材B1と水路構成部材B2との間には、目地Cが形成されることになる。そして、シール材10は、水路構成部材B1の段差部Baの内面と、水路構成部材B2の嵌合部Bbの外面との間に配置されて目地Cからの漏水を防止するようになっている。このシール材10により、目地漏水防止構造1(図2にのみ示す)が構成されている。
【0035】
次に、シール材10の構造について説明する。図1に示すように、シール材10は、長尺の筒状に形成されたゴム(粘弾性体)11と、ゴム11の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材12とを備えている。シール材10の周長や肉厚は、当該シール材10を使用する水路Aの大きさや構造によって任意の値に設定すればよいが、例えば、周長は10mm〜1000mm、肉厚は0.5mm〜10mmの範囲で設定可能である。
【0036】
ゴム11の肉厚は、該ゴム11の周方向について略均一に設定されるとともに、長手方向についても一端から他端まで略均一に設定されている。尚、ゴム11の肉厚は、部分的に薄くすることも可能である。
【0037】
ゴム11は、原料ゴムに種々の配合剤等が配合されたゴム組成物で構成されている。この実施形態では、原料ゴムとして非加硫のブチルゴム(IIR)を用いている。ブチルゴムとしては、例えば廃タイヤのインナーチューブを再生した再生ブチルゴムが特に好ましい。
【0038】
尚、原料ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。原料ゴムは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていてもよい。原料ゴムは上記に限られるものではなく、水を透過させずに、目地Cのシール性を確保できる性質を有するものであればよい。
【0039】
また、上記配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、老化防止剤、軟化剤、粘性付与剤等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0040】
この実施形態では、ゴム11の物性は、JIS K6251に基づいて測定される引っ張り強さが0.3MPa以上とされ、また、伸び率は400%以上とされている。ゴム11の物性は配合剤により任意に調整可能である。
【0041】
ゴム11の外周面は、水路構成部材B1,B2の表面に対する粘着性を有している。ゴム11の外周面の粘着性は、周知の粘着剤等で付与することも可能である。また、ゴム11の内周面は、フィルム材12に対する粘着性を有している。さらに、ゴム11は、水路構成部材B1の段差部Baの内面形状、及び、水路構成部材B2の嵌合部Bbの外面形状に沿うように、容易に弾性変形するようになっている。
【0042】
フィルム材12は、樹脂材からなり、ゴム11と同様に筒状に形成されている。フィルム材12の外周面の全体は、ゴム11が有する粘着性によって該ゴム11の内周面に対し固着されている。これにより、シール材10に様々な方向から外力が作用しても、フィルム材12がゴム11に対してずれるようになることは殆どない。
【0043】
尚、フィルム材12は、接着材等によってゴム11の内周面に固着してもよい。また、フィルム材12がゴム11に対してずれなければよいので、フィルム材12の一部をゴム11に固着させないようにしてもよい。
【0044】
フィルム材12の厚さは、10μm〜1000μm程度に設定されている。また、フィルム材12を構成する樹脂材は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。樹脂フィルム12は、単一の材質で形成されていてもよく、また、複数の材質で形成されていてもよい。樹脂フィルム12の材質としては、これらのうちポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂が好ましい。樹脂フィルム12は、単一層で構成されていてもよく、また、複数層の積層体で構成されていてもよい。また、フィルム材12は、樹脂以外にも、例えば、アルミニウム等からなる薄い金属材や、布で形成してもよい。
【0045】
フィルム材12の内周面は、互いに圧接された状態(図3及び図4に示す)にあるときに、その圧接力を受ける方向(図3及び図4の上下方向)と交差する方向(図3及び図4の左右方向)の滑りを許容する滑り性を有している。滑り性は、フィルム材12に表面処理を施すことによって得られるものである他、フィルム材12自身が持っているものも含む。表面処理としては、滑性を付与するための処理であればよく、例えば、オイル等の摩擦低減剤や、タルク等の粉を付着させることが挙げられる。また、フィルム材12にシリコーンコーティングや、フッ素コーティングを施すようにしてもよい。
【0046】
シール材10が使用状態にあるときには、詳細は後述するが、上記のように水路構成部材B1と水路構成部材B2とで挟まれて厚み方向に押し潰される。この場合、図4に示すように、フィルム材12の内周面が厚み方向に互いに圧接して圧接面12a,12bとなる。滑り性は、フィルム材12の内周面全体が有しており、上記のような圧接力を受けた状態で、圧接面12a,12b同士が固着せずに、例えばシール材10における圧接面12a側の部分に図4の左右方向に力を加えた際に、圧接面12aが圧接面12bに対して滑りを起こすことができる程度である。この左右方向の力の大きさは、水路構成部材B1が水路構成部材B2に対して水路Aの延びる方向に変位する際の力、水路構成部材B2が水路構成部材B1に対して水路Aの延びる方向に変位する際の力である。変位の要因としては、地盤沈下や車両の走行振動、周囲の温度変化による膨張収縮等である。
【0047】
シール材10の製造要領としては、例えば押出成形法を用いることができる。すなわち、ゴム11を成形する際に、その内周面をフィルム材12で被覆するように、押出成形用の型を構成すればよい。これにより、ゴム11とフィルム材12とからなるシール材10を容易に得ることができる。
【0048】
次に、上記シール材10を使用して水路Aを構築する場合について説明する。まず、水路構成部材B1を所定位置に設置する。
【0049】
しかる後、シール材10を水路構成部材B1の段差部Baの内周面に貼り付けていく。このとき、シール材10のゴム11の外周面に粘着性があるので、シール材10を段差部Baの内周面に押し付けていくだけでシール材10が水路構成部材B1に保持される。
【0050】
その後、水路構成部材B2を設置する。このとき、水路構成部材B2の嵌合部Bbを水路構成部材B1の段差部Baに嵌めるのであるが、水路構成部材B2を移動させる方向は、嵌合部Bbがシール材10を段差部Baの内面に対し略垂直に押し付ける方向とする。このようにして、図2に示す目地漏水防止構造1が得られる。
【0051】
そして、シール材10は、水路構成部材B1の段差部Baと水路構成部材B2の嵌合部Bbとの間に配置されて、段差部Baと嵌合部Bbとで挟まれて、水路構成部材B1と水路構成部材B2との間をシールする状態となる。このとき、シール材10は、段差部Baと嵌合部Bbとで厚み方向に押し潰されて、ゴム11が段差部Baの内面及び嵌合部Bbの内面に沿うように弾性変形する。また、ゴム11の外周面が段差部Baの内面及び嵌合部Bbの内面に粘着する。これらのことにより、水路構成部材B1と水路構成部材B2との間が確実にシールされて漏水が防止される。
【0052】
水路Aが構築された後に、例えば、その周囲で地盤沈下や車両の走行振動が起こることがあり、また、周囲の温度変化による水路構成部材B1,B2の膨張収縮等が起こる。これにより、例えば、水路構成部材B1が水路構成部材B2に対して変位することがある。変位の方向は様々であるが、水路構成部材B1が水路Aの延びる方向(図5に矢印で示す方向)に変位した場合を想定してシール材10の動きを説明する。尚、便宜上、水路構成部材B2は静止していると仮定する。
【0053】
シール材10はシール状態であるので、フィルム材12の内周面が圧接して図4に示す圧接面12a,12bが存在している。水路構成部材B1の変位により、ゴム11のうち、水路構成部材B1の段差部Baに粘着している部分が図5における右側へ移動していき、これに伴って図4に示すフィルム材12の圧接面12aが圧接面12bに対して右側へ滑っていく。これにより、シール材10が右側へ転動することになる。
【0054】
このとき、図5に示す段差部Baの内周面に粘着しているゴム11の一部が段差部Baに粘着したまま残存し、また、嵌合部Bbの外周面に粘着しているゴム11の一部が嵌合部Bbに粘着したまま残存するようになるが、その残存量はゴム11の全体量から比べて僅かな量なので、シール性の悪化を招くことはない。
【0055】
このようなシール材10の転動により、シール材10は水路構成部材B1の変位に追従して動いていく。よって、水路構成部材B1の変位が大きくても、シール材10には、該シール材10が破断を起こすような大きな力が生じなくなるので、シール材10の断裂が回避され、シール性が得られる。
【0056】
尚、水路構成部材B2が水路構成部材B1に対し水路Aの延びる方向に変位した場合も同様にシール材10が転動する。
【0057】
次に、図6に基づいて、水路構成部材B1の変位方向が、段差部Baが嵌合部Bbから離れる方向(図中に矢印で示す方向)である場合ついて説明する。この場合には、ゴム11の外周面が嵌合部Bb及び段差部Baに粘着しているので、シール材10が水路構成部材B1の変位方向に引っ張られてフィルム材12が筒状となるように変形して水路構成部材B1の変位に追従する。この変形により、水路構成部材B1と水路構成部材B2との間のシール性は確保される。
【0058】
以上説明したように、この実施形態1によれば、筒状のゴム11の内周面にフィルム材12を固着させ、シール状態にあるときに、フィルム材12の圧接面12a,12bを滑らせることによってゴム11及びフィルム材12を転動させるようにしたので、水路構成部材B1や水路構成部材B2がシール材10を剪断するような方向に相対変位した場合に、シール材10をその方向に転動させて変位に追従させることができる。これにより、シール材10の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0059】
また、シール材10のゴム11の外周面に粘着性があるので、ゴム11を水路構成部材B1と水路構成部材B2とに粘着させてシール性をより一層高めることができる。
【0060】
また、この実施形態1では、シール材10が膨らむように変形可能であるため、水路構成部材B1の変位方向が、段差部Baが嵌合部Bbから離れる方向であっても、シール性を確保できる。
【0061】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2にかかるシール材10を示すものである。この実施形態2のシール材10は、実施形態1のものに対しゴム11及びフィルム材12の構造が異なるだけであり、使用状態は同じであるので、以下、異なる部分を詳細に説明する。
【0062】
すなわち、実施形態2のシール材10のゴム11には、その一部を欠損させてなるゴム側欠損部(粘弾性体側欠損部)11aが設けられている。ゴム側欠損部11aの形成位置は、シール材10の長手方向中間部で、かつ、図8に示すシール状態としたときに、シール材10の幅方向中間部に位置するように設定されている。また、ゴム欠損部11aの大きさは、シール状態としたときに、ゴム欠損部11aがシール材10の幅方向の端部に達しないように設定されている。尚、ゴム欠損部11aの形状は、円形であってもよいし、矩形であってもよく、形状は特に限定されない。
【0063】
フィルム材12におけるゴム側欠損部11aに対応する部分には、該フィルム材12を欠損してなるフィルム材側欠損部12cが設けられている。フィルム材側欠損部12cの形状はゴム側欠損部11aと略同じに設定されている。
【0064】
この実施形態2では、水路構成部材B1が水路Aの延びる方向(図9に矢印で示す方向)に変位した場合には、実施形態1で説明したように、シール材10が転動することにより、シール材10は水路構成部材B1の変位に追従して動いていく。よって、水路構成部材B1の変位が大きくても、シール材10には、該シール材10が破断を起こすような大きな力が生じなくなるので、シール材10の断裂が回避され、シール性が得られる。
【0065】
以上説明したように、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、シール状態にあるときに、ゴム11及びフィルム材12を転動させるようにしたので、シール材10の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0066】
また、ゴム11の一部にゴム側欠損部11aを設けたことで、ゴム原料の使用量を抑制してコストを低減できる。
【0067】
また、ゴム欠損部11a及びフィルム材側欠損部12cが形成されていることにより、これらゴム欠損部11a及びフィルム材側欠損部12cを介してシール材10の内部に空気を導入することが可能となっている。このとき、ゴム11の外周面のうち、嵌合部Bbに接する部分には粘着性を付与しないのが好ましい。これにより、例えば、図10に示すように、水路構成部材B1の変位方向が、段差部Baが嵌合部Bbから離れる方向(図中に矢印で示す方向)である場合には、シール材10の内部に空気が導入されて該シール材10が容易に膨らむようになる。これにより、シール性がより一層向上する。
【0068】
尚、シール材10には、ゴム側欠損部11aのみを設け、フィルム材側欠損部12cを省略してもよい。また、ゴム側欠損部11a及びフィルム材側欠損部12cは、複数箇所に設けてもよいし、シール材10の長手方向に延びるスリット状に形成してもよい。
【0069】
(実施形態3)
図11は、実施形態3にかかるシール材10の使用状態を示すものである。この実施形態3のシール材10は、実施形態1のものに対しゴム11の外周面全体が非粘着性を有している点で実施形態1のものに対し異なるだけであり、使用状態は同じであるので、以下、異なる部分を詳細に説明する。
【0070】
この実施形態3のゴム11の外周面には、水路構成部材B1,B2に粘着しないように非粘着処理が施されている。非粘着処理としては、例えば、オイル等の滑性剤やタルク等の防着粉を付着させることが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0071】
このシール材10がシール状態にあるときに、水路構成部材B1が水路Aの延びる方向(図11に矢印で示す方向)に変位した場合には、実施形態1と同様に転動する。このとき、ゴム11が水路構成部材B1の段差部Ba及び水路構成部材B2の嵌合部Bbに粘着していないので、無端ベルトのように転動し易く、水路構成部材B1の変位に対するシール材10の追従性が向上する。
【0072】
また、ゴム11が段差部Ba及び嵌合部Bbに粘着していないことで、ゴム11の一部が段差部Ba及び嵌合部Bbに残存してしまうことはなく、ゴム11による高いシール性を維持できる。
【0073】
以上説明したように、この実施形態3によれば、実施形態1と同様に、シール状態にあるときに、ゴム11及びフィルム材12を転動させるようにしたので、シール材10の断裂を抑制でき、長期間に亘ってシール性を得ることができる。
【0074】
尚、上記実施形態1〜3では、シール材10を折り畳むことなく平板状にして使用する場合について説明したが、これに限らず、図12に示す変形例1のように、ゴム11及びフィルム材12を一緒に折り畳むことによって、シール材10の3枚分の厚みを有するように構成してもよい。これにより、水路構成部材B1の段差部Baと、水路構成部材B2の嵌合部Bbとの間の寸法が長い場合にも、容易に対応できる。また、シール材10を折り畳むことで、水路構成部材がシール材10の厚み方向に大きく変位しても、その変位量に対応するように、シール材10の変形量を大きく確保でき、シール性を確保できる。
【0075】
また、シール材10を折り畳む場合に、図13に示す変形例2のように、幅方向両側を折り返すようにしてもよい。この変形例2では、シール材10の2枚分の厚みを有することになる。また、図示しないが、シール材10の4枚分以上の厚みを有するように折り畳んでもよい。
【0076】
また、シール材10の断面形状は、各種形状にすることができ、例えば、図14に示す変形例3のように、台形にしてもよい。
【0077】
また、ゴム11の外周面のうち、一部にのみ非粘着部分を設けてもよい。
【0078】
また、フィルム材12は、予め筒状にすることなく、図15に示す変形例4のように、1枚のフィルム材12の幅方向両側を折り畳むようにしてもよいし、図16に示す変形例5のように、1枚のフィルム材12を折り重ねるようにしてもよい。
【0079】
また、ゴム11の代わりに、粘弾性を有する樹脂等を筒状に成形したものを用いてもよい。
【0080】
また、上記シール材10は、隣り合う水路構成部材B1,B2の端面同士を突き合わせるようにした、いわゆる突き合わせ目地(図示せず)にも用いることもできる。
【0081】
また、シール材10は、水路Aの目地Cだけでなく、2つの部材間をシールする必要がある場合に広く用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明は、例えば、水路の目地に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 目地漏水防止構造
10 シール材
11 ゴム(粘弾性体)
11a ゴム側欠損部(粘弾性体側欠損部)
12 フィルム材
12a 圧接面
12b 圧接面
12c フィルム材側欠損部
B1 水路構成部材(第1の部材)
B2 水路構成部材(第2の部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材との間をシールするシール材において、
筒状に形成された粘弾性体と、
上記粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備え、
上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有し、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記粘弾性体及びフィルム材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
請求項1に記載のシール材において、
粘弾性体には、該粘弾性体の一部を欠損してなる粘弾性体側欠損部が設けられていることを特徴とするシール材。
【請求項3】
請求項2に記載のシール材において、
フィルム材における粘弾性体側欠損部に対応する部分には、該フィルム材を欠損してなるフィルム材側欠損部が設けられていることを特徴とするシール材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のシール材において、
粘弾性体の外周面は、シール状態にあるときに第1及び第2の部材の少なくとも一方に粘着する粘着性を有していることを特徴とするシール材。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のシール材において、
粘弾性体の外周面のうち、少なくとも一部は、第1及び第2の部材に対する非粘着性を有していることを特徴とするシール材。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1つに記載のシール材において、
粘弾性体及びフィルム材が厚み方向に重なるように折り畳まれていることを特徴とするシール材。
【請求項7】
水路を形成するように並べられた第1の部材と第2の部材との目地からの漏水をシール材を用いて防止するように構成された目地漏水防止構造において、
上記シール材は、筒状に形成された粘弾性体と、該粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備えるとともに、上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有するように構成され、
上記シール材が上記第1及び第2の部材間をシールする状態にあるときに、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記シール材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とする目地漏水防止構造。
【請求項1】
第1の部材と第2の部材との間をシールするシール材において、
筒状に形成された粘弾性体と、
上記粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備え、
上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有し、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記粘弾性体及びフィルム材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
請求項1に記載のシール材において、
粘弾性体には、該粘弾性体の一部を欠損してなる粘弾性体側欠損部が設けられていることを特徴とするシール材。
【請求項3】
請求項2に記載のシール材において、
フィルム材における粘弾性体側欠損部に対応する部分には、該フィルム材を欠損してなるフィルム材側欠損部が設けられていることを特徴とするシール材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のシール材において、
粘弾性体の外周面は、シール状態にあるときに第1及び第2の部材の少なくとも一方に粘着する粘着性を有していることを特徴とするシール材。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のシール材において、
粘弾性体の外周面のうち、少なくとも一部は、第1及び第2の部材に対する非粘着性を有していることを特徴とするシール材。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1つに記載のシール材において、
粘弾性体及びフィルム材が厚み方向に重なるように折り畳まれていることを特徴とするシール材。
【請求項7】
水路を形成するように並べられた第1の部材と第2の部材との目地からの漏水をシール材を用いて防止するように構成された目地漏水防止構造において、
上記シール材は、筒状に形成された粘弾性体と、該粘弾性体の内周面に対し、該内周面を覆うように固着されたフィルム材とを備えるとともに、上記第1及び第2の部材の間に配置されて該両部材により挟まれた状態で該両部材間をシールする状態にあるときに、上記フィルム材のうち、少なくとも互いに圧接する圧接面は、圧接力を受ける方向と交差する方向の滑りを許容する滑り性を有するように構成され、
上記シール材が上記第1及び第2の部材間をシールする状態にあるときに、上記第1及び第2の部材の相対変位により上記フィルム材の圧接面を滑らせることによって上記シール材を上記第1及び第2の部材間で転動させるように構成されていることを特徴とする目地漏水防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−112140(P2011−112140A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268627(P2009−268627)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
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