説明

シール材硬化装置

【課題】熱硬化性のシール材を硬化させるシール材硬化装置において、前記シール材の温度を測定しながら送風する熱風の効率的な制御を行い、前記シール材を過不足無く加熱し、適正に硬化させることのできるシール材硬化装置を提供する。
【解決手段】送風部11とヒータ部12とを有し、送風部11により送風され、ヒータ部12により所定の温度に加熱された熱風をシール材51に対し吹き付ける熱風送風手段1と、ヒータ部12の発熱制御を行うヒータ部制御手段2と、ヒータ部制御手段2に対しヒータ部12に発熱させる発熱量を命令する出力制御手段3と、シール材51に非接触の状態で該シール材51の温度を測定し、測定した温度情報を出力制御手段3に供給する温度測定手段4とを備え、出力制御手段3は、温度測定手段4から供給された温度情報に基づきヒータ部12に発熱させる発熱量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金ワークの重ね合わせエッジ部に塗布された熱硬化性のシール材を硬化させるシール材硬化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工場において、例えばドアの製造では、アウタパネルとインナパネルとを重ね合わせ、その端縁のヘミング部の重ね合わせエッジ部にプリキュア焼き付けタイプのシール材を防錆、切創防止を目的として塗布し、保護している(特許文献1参照)。
通常、このシール材塗布は、塗装ラインの前処理として行い、電着工程にて熱硬化させるのが通常であるが、ドアのヒンジ部等、ボディに組み付けられた状態での塗布作業が困難である場合には、ドア単体組付工程にて事前にシール材が塗布される。この場合、塗布後の外的接触によるシール材へのダメージを防止するためには、シール材を硬化させることが不可欠である。
【0003】
このシール材を加熱することによる硬化処理には、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等の種々の方法が用いられる。
このうち従来の熱風加熱による方法にあっては、例えば図4に示すようにドア50の端縁に塗布された熱硬化性のシール材51に対し熱風送風機60のダクト61を近接し、ブロア62により送風されたエアをヒータ63で加熱し、ダクト61を経由した熱風をシール材51に吹き付け硬化処理を行うものである。
ここで、シール材51は所定の高温度に達すると硬化するが、加熱を過不足無くして適正に硬化させるために、シール材51の到達温度を測定し、測定した温度を熱風送風機60から送風される熱風温度にフィードバックすることが望ましい。
【0004】
しかしながら、シール材51は液状であるため、温度測定素子を直に接触させて測定する場合、硬化後に測定部の見栄えが悪くなってしまうという問題があった。
そこで従来は、測定素子をシール材51に接触させることを避け、半密封状態のダクト61内の雰囲気を測定することで代用し、所定温度の熱風を所定時間の間、シール材51に吹き付けるという管理のみを行っていた。
【0005】
即ち、図4に示す従来の構成例では、シール材51に近接されるダクト61内に温度センサとして熱電対64が設置され、その検出温度が温度制御部65に供給される。そして、供給された検出温度に基づいて、温度制御部65により、ヒータ63の発熱制御を行うヒータ制御部66にヒータ発熱量の指示が行われている。
【特許文献1】特開2004−337693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダクト61の送風口から送風される熱風の風量は、送風口の中央部から縁部に向かうほど小さくなり、それに比例して出力される熱エネルギーも小さくなる。
このため、送風口の縁部付近から送風された熱風が吹き付けられるシール材51の部位は、他の部位に比べ硬化条件に達するまでに時間を要する。
【0007】
しかしながら、図4に示す構成にあっては、シール材51自体の温度を正確に測定できないため、硬化時間のばらつきを考慮した熱風の送風制御ができず、熱風の吹き付け終了時に、シール材51において未硬化の部位が残る虞があった。
このため従来は、シール材51全体を確実に硬化させるため、ヒータ63の設定温度を徐々に変化させ、所定時間経過後に目視検査し、完全に硬化しているか確認しながらヒータ63の設定温度を決定する必要があった。
また、周辺の大気状態によってシール材に吹き付ける熱風の温度が低下することが懸念されるため、設定温度に安全率を考慮して高めに設定し、また、熱風の送風時間を長めに確保しなければならなかった。その結果、シール材51に対し過度の加熱処理を行うこととなり、コスト増大に繋がっていた。
【0008】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、熱硬化性のシール材を硬化させるシール材硬化装置において、前記シール材の温度を測定しながら送風する熱風の効率的な制御を行い、前記シール材を過不足無く加熱し、適正に硬化させることのできるシール材硬化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明に係るシール材硬化装置は、板金ワークのヘミング部重ね合わせエッジ部に塗布された熱硬化性のシール材に熱風を吹き付けて硬化させるシール材硬化装置であって、送風部とヒータ部とを有し、前記送風部により送風され、前記ヒータ部により所定の温度に加熱された熱風を前記シール材に対し吹き付ける熱風送風手段と、前記ヒータ部の発熱制御を行うヒータ部制御手段と、前記ヒータ部制御手段に対し前記ヒータ部に発熱させる発熱量を命令する出力制御手段と、前記シール材に非接触の状態で該シール材の温度を測定し、測定した温度情報を前記出力制御手段に供給する温度測定手段とを備え、前記出力制御手段は、前記温度測定手段から供給された温度情報に基づき前記ヒータ部に発熱させる発熱量を決定することに特徴を有する。
尚、前記温度測定手段は、前記シール材から放射される赤外線を検出し、検出した赤外線の量に基づき温度測定を行うことが好ましい。
【0010】
このように熱風が吹き付けられ硬化するシール材の温度を、温度測定手段により非接触に測定することにより、シール材そのものの温度が測定できるので、ヒータの温度設定をするために試行錯誤する必要がない上、最適な温度設定ができる。
また、硬化処理中におけるシール材の温度を知ることができるため、熱風送風手段によって送風する熱風の温度や送風時間を過不足無く設定することができ、適正にシール材全体を硬化させ、過度の加熱処理によるコスト増大を抑制することができる。
【0011】
また、前記温度測定手段は、前記熱風送風手段からの熱風が吹き付けられる前記シール材の領域のうち、経験的にその長手方向の両端部を少なくとも測定部位とすることが望ましく、前記出力制御手段は、前記熱風送風手段からの熱風が吹き付けられる前記シール材の領域のうち、その長手方向の両端部において測定された温度が共に所定の温度に達すると、前記ヒータ部制御手段に対し前記ヒータ部の発熱動作を停止させることが望ましい。
【0012】
このように、熱風送風手段から熱風が吹き付けられるシール材の領域のうち、その長手方向の両端部の部位を測定ポイントとすれば、それら測定ポイントは他の部位に比べ供給される熱エネルギーが小さく(風量が小さく)、硬化に時間を要するため、その測定ポイントの測定温度に基づき送風する熱風の出力制御を行うことによって、確実にシール材全体を硬化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱硬化性のシール材を硬化させるシール材硬化装置において、前記シール材の温度を測定しながら送風する熱風の効率的な制御を行い、前記シール材を過不足無く加熱し、適正に硬化させることのできるシール材硬化装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るシール材硬化装置の実施の形態について図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係るシール材硬化装置の構成を模式的に示す図である。このシール材硬化装置100は、図示するように例えばドア50(板金ワーク)の端縁(アウタパネルとインナパネルの重ね合わせエッジ部)に塗布された熱硬化性のシール材51(例えば170℃で硬化するプリキュアシーラ硬化剤)を、熱風により加熱し硬化させる装置である。
【0015】
シール材硬化装置100は、所定温度・風量の熱風を吹き付ける熱風送風機1(1a,1b)と、熱風送風機1が有するヒータ部12(12a,12b)の発熱制御を行うヒータ部制御手段としてのヒータ制御部2(2a,2b)と、ヒータ部12が所望の温度で発熱するようヒータ制御部2の制御を行う出力制御手段としての熱風出力制御部3(3a,3b)と、シール材51の温度を非接触に測定し前記熱風出力制御部3に測定温度情報を供給する温度測定手段としての温度測定部4(4a,4b,4c,4d)とを備える。
【0016】
図1において2台(1a,1b)が並列に設けられた熱風送風機1は、熱風の送風路となるダクト10(10a,10b)と、ダクト10にエアを送り込む送風部であるブロア11(11a,11b)と、ブロア11が送風するエアを加熱し所定温度まで昇温させるヒータ部12(12a,12b)とを有している。
ヒータ部12は、例えば導体に電流が流されることにより発熱するヒータであって、ヒータ制御部2(2a,2b)に電気的に接続されており、ヒータ制御部2が供給する電流の大きさによって発熱量が可変するようになされている。したがって、ブロア11が送風するエアは、ヒータ部12の発熱によって所定温度の熱風となる。
【0017】
また、温度測定部4には、好ましくは赤外線放射温度計が用いられる。即ち、シール材51から放射される赤外線を検出し、検出した赤外線の量に基づいて非接触に(シール材51に外的影響を与えることなく)シール材51自体の温度を測定し、測定結果を熱風出力制御部3に供給するようになされている。
【0018】
ここで、シール材51における温度の測定部位は、シール材51に近接されるダクト10a,10bの送風口の配置位置を考慮して決められている。
具体的に説明すると、図2に示すように、ダクト10a,10bから送風される熱風がシール材51の全体に吹き付けられるようにダクト10a,10bは配置される。そして、ラッパ状に拡径しているダクト10を用いる場合、ダクト10の送風口から出力される熱風の熱エネルギーは、2点鎖線で示すエリアEの領域となる。即ち、ダクト10a,10b各々の送風口の縁部付近は風量が低下するため、熱エネルギー(熱風温度)が一番低くなる。
【0019】
したがって、各ダクト10a,10bから熱風が吹き付けられるシール材51の領域のうち、その長手方向の両端部の部位を測定ポイントP1、P2、P3、P4とすれば、それら測定ポイントは他の部位に比べ硬化条件に達する為には時間を要するため、その測定ポイントの測定温度に基づき送風する熱風の出力制御を行うことによって、確実にシール材51の全体を硬化させることができる。
尚、図示する例では、ポイントP1、P2の測定温度に基づき一方の熱風送風機1(例えば1a)からの熱風出力の制御がなされ、ポイントP3、P3の測定温度に基づき他方の熱風送風機1(例えば1b)からの熱風出力の制御がなされる。
【0020】
このように構成されたシール材硬化装置100においては、図3に示すフローに従いシール材51の硬化作業が行われる。
図1に示す構成のように例えばドア50の端縁部に塗布されたシール材51(例えば硬化温度170℃のプリキュアシーラ硬化剤)に熱風送風機1のブロア10の送風口を近接し、シール材51の全体に対し初期設定出力(例えばヒータ出力100%)での送風を開始する(図3のステップS1)。
【0021】
シール材51に対し熱風の吹き付けが開始されると、温度測定部4は、シール材51から放射される赤外線を検出することにより、シール材51の温度を継続的に或いは所定の短い周期毎に測定する。そして、測定された温度の情報は、直ちに熱風出力制御部3に供給される(図3のステップS2)。
尚、図1に示す例では、熱風送風機1aからの熱風により加熱されるシール材51の測定ポイントP1,P2を温度測定部4a,4bが測定し、その測定結果を熱風出力制御部3aに供給する。また、熱風送風機1bからの熱風により加熱されるシール材51の測定ポイントP3,P4を温度測定部4c,4dが測定し、その測定結果を熱風出力制御部3bに供給する。
【0022】
熱風出力制御部3では、供給された測定温度値に基づいて、熱風送風機1から送風されるべき熱風の温度を設定し(図3のステップS3)、その設定温度に対応する電流をヒータ部12に供給するようヒータ制御部2に命令する(ヒータ部12に発熱させる発熱量を命令する/図3のステップS4)。具体的には、この例ではシール材51の硬化温度(目標温度)が170℃であるので、シール材51の温度が170℃となるように、過剰な熱量を供給することなく効率よくヒータ出力を加減調節するよう熱風出力制御部3による制御がなされる。
【0023】
ヒータ制御部2では、熱風出力制御部3からの制御信号に基づく電流をヒータ部12に供給し(図3のステップS5)、これにより熱風送風機1からは制御された温度の熱風がシール材51に対し送風される(図3のステップS6)。
熱風出力制御部3では、対応する2つの温度測定部4(4a,4b或いは4c,4d)から供給される測定結果が共に所定温度(170℃)に達すると(図3のステップS7)、設定温度を保ちつつ所定保持時間経過後にヒータ制御部2に対しヒータ部12の発熱動作を停止するよう命令する(図3のステップS8)。
そして、ヒータ制御部2は、ヒータ部12への電流供給を停止し、熱風送風機1からの熱風送風が終了する(図3のステップS9)。
【0024】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、熱風が吹き付けられ硬化するシール材51の温度を、非接触の温度測定素子(温度測定部4)を用いて測定することにより、温度測定素子への負荷が低減し、素子寿命が短命化しないため、測定素子に係るコスト増大を抑えることができる。
また、硬化処理中におけるシール材51の複数の部位の温度を知ることができるため、硬化時間のばらつきを考慮しながら、熱風送風機1によって送風する熱風の温度や送風時間を過不足無く設定することができ、適正にシール材51全体を硬化させ、コスト増大を抑制することができる。
【0025】
尚、前記実施の形態においては、2台の熱風送風機1a,1bによる熱風の吹き付けによりシール材51を硬化させる例を示したが、その台数に拘わらず本発明を適用することができる。
また、熱風が吹き付けられるシール材51の領域のうち、その長手方向の両端部の部位を温度測定ポイントP1、P2(P3、P4)としたが、本発明においては、それに加えて、より多くの温度測定ポイントを追加しても構わない。即ち、多数の部位の温度を測定することによって、熱風加熱の精度を向上することができる。
また、前記温度測定手段は、シール材51から放射される赤外線を検出し、検出した赤外線の量に基づき温度測定を行うようにしたが、シール材に対し非接触に温度測定可能な方式であれば、他の方式を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えば板金ワークの重ね合わせ部に塗布された熱硬化性のシール材を硬化させるシール材硬化装置に関し、例えば自動車部品の製造業において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明に係るシール材硬化装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1のシール材硬化装置が備える熱風送風機の送風口から出力される熱エネルギーの分布を示す図である。
【図3】図3は、図1のシール材硬化装置による熱風温度の制御の流れを示すフローである。
【図4】図4は、従来のシール材硬化装置の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 熱風送風機
2 ヒータ制御部(ヒータ部制御手段)
3 熱風出力制御部(出力制御手段)
4 温度測定部(温度測定手段)
10 ダクト
11 ブロア(送風部)
12 ヒータ部
50 ドア(板金ワーク)
51 シール材
100 シール材硬化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金ワークのヘミング部重ね合わせエッジ部に塗布された熱硬化性のシール材に熱風を吹き付けて硬化させるシール材硬化装置であって、
送風部とヒータ部とを有し、前記送風部により送風され、前記ヒータ部により所定の温度に加熱された熱風を前記シール材に対し吹き付ける熱風送風手段と、前記ヒータ部の発熱制御を行うヒータ部制御手段と、前記ヒータ部制御手段に対し前記ヒータ部に発熱させる発熱量を命令する出力制御手段と、前記シール材に非接触の状態で該シール材の温度を測定し、測定した温度情報を前記出力制御手段に供給する温度測定手段とを備え、
前記出力制御手段は、前記温度測定手段から供給された温度情報に基づき前記ヒータ部に発熱させる発熱量を決定することを特徴とするシール材硬化装置。
【請求項2】
前記温度測定手段は、前記シール材から放射される赤外線を検出し、検出した赤外線の量に基づき温度測定を行うことを特徴とする請求項1に記載されたシール材硬化装置。
【請求項3】
前記温度測定手段は、前記熱風送風手段からの熱風が吹き付けられる前記シール材の領域のうち、その長手方向の両端部を少なくとも測定部位とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシール材硬化装置。
【請求項4】
前記出力制御手段は、前記熱風送風手段からの熱風が吹き付けられる前記シール材の領域のうち、その長手方向の両端部において測定された温度が共に所定の温度に達すると、前記ヒータ部制御手段に対し前記ヒータ部の発熱動作を停止させることを特徴とする請求項3に記載されたシール材硬化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−186107(P2009−186107A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27477(P2008−27477)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】