説明

スイッチ可能なフェーズロックループ及びスイッチ可能なフェーズロックループの動作方法

【課題】スイッチオーバーから発生する出力信号における不所望の位相変化を信頼性を持って回避することが可能なフェーズロックループ。
【解決手段】制御可能オシレータDCOが出力信号CKoutを発生し、PLL12入力クロックとして使用するために第一クロック/第二クロックCKin2、CKin1を切り換えることが可能である。使用中のCKin1又はCKin2と、CKoutのプリセットされ、位相シフトされたCK<1:8>間の位相差を決定し、DCOを制御するために使用され、使用されていないCKin2又はCKin1がCKoutを発生するために、位相が調節される。入力クロックの幾つかのCKin1,CKin2,CKin3間の位相差がスイッチオーバーの前に調節されることで、スイッチオーバーから発生するPLL出力信号における不所望の位相変化を高い精度で回避し且つヒットレススイッチングを達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズロックループの出力信号を発生するための制御可能なオシレータを具備しており且つフェーズロックループの入力クロックとして使用するために第一クロックと第二クロックとの間でスイッチングさせるスイッチオーバー手段を具備しているフェーズロックループに関するものである。
【0002】
更に、本発明は、フェーズロックループを動作させる方法に関するものであって、その場合に、制御可能なオシレータがフェーズロックループの出力信号を発生し且つフェーズロックループ入力クロックとして使用するために第一クロックと第二クロックとの間でスイッチさせることが可能である。
【背景技術】
【0003】
以後「PLL」とも略称するこのタイプのフェーズロックループ、及びPLL用のこのタイプの動作方法は、例えば、米国特許第6,741,109号明細書から既知である。
【0004】
一般的には、入力周波数を具備する入力クロックでのフィードバックによって出力周波数を具備する出力信号を発生する制御オシレータを同期させるために使用される。この目的のために、PLLは位相検知器又は位相比較器を有しており、その入力には入力クロック及びPLL出力信号が印加される。これら2つの信号の間の位相差を表わす信号は、主に、オシレータを制御するためのアクティブ又はパッシブのデジタル又はアナログフィルタ(ループフィルタ)を介して使用される。
【0005】
PLL回路は種々の適用分野を有している。例えば、PLLはデジタル信号シーケンス又はFM変調からのクロック回復のために使用することが可能である。「SONET」又は「SDH」のような通信スタンダードにおいては、データ送信及び受信のためのクロックを発生するためにクロック発生回路が必要とされる。この種類の回路においては、PLL回路は通信システムにおいて使用するために例えば基準として供給される入力クロックから1つ又はそれ以上の出力クロックを発生する場合がある。この場合において、PLL出力信号の入力クロックとの同期はこれら2つの信号の周波数が同一であることを必ずしも意味するものではない。そうではなく、PLL回路の入力及び/又は出力及び/又はフィードバック経路において周波数分割器を配置させることによりそれ自身既知の態様で多かれ少なかれ任意の周波数比を達成することが可能である。
【0006】
前述した米国特許第6,741,109号がそうであるように、本発明は、この種類のPLLの場合に、PLL入力クロックとして使用するために第一クロックと第二クロックとの間でスイッチさせることが可能であることを仮定している。この場合において、PLL入力クロックとして2個を超えるクロックが使用されることも可能である。実際に、幾つかのクロックのうちから唯1つのクロックが選択され且つPLL出力信号を発生するために実際に使用されることが基本である。幾つかのクロックを設けることが有益的である場合があり、特に通信システムにおいて冗長性を発生する場合にそうである。例えば、基準として使用されているクロックのうちの1つが「喪失」すると、クロック発生PLL回路におけるPLL入力クロックとして使用するために別のクロックへスイッチすることが可能である。この場合に、特にPLLをクロック発生又はクロック回復のために通信システムにおいて使用する場合には、このようなスイッチオーバーに起因してPLL出力信号において顕著な位相変化(「フェーズヒット(phase hit)」)が存在しないことが望ましい。然しながら、スイッチの直前において第一及び第二クロックが異なる位相にある場合にはこの種類の位相変化が発生する場合がある。
【0007】
スイッチオーバーの結果としてのエラチックな位相変化を回避するための既知の可能性は非常に低いPLL帯域幅(「ループ利得」)を選択することが関与する(例えば、前述した通信システムにおいては数Hzの程度)。この場合においては、例えスイッチされるクロックがスイッチングの直前において比較的大きな位相差を有している場合であっても、PLL出力信号の位相は非常にゆっくりと変化するに過ぎない。前述した通信システムにおいては、この場合においてデータ送信エラーが発生することはない。然しながら、このソリューションは、例えば、以下の2つの欠点を包含しており、第一には、集積回路装置において特に低いPLL帯域幅を達成することは困難である。第二に、低いPLL帯域幅は、又、PLLに対する不利益的により小さなキャプチャレンジ即ち捕獲範囲となる。数HzのPLL帯域幅の場合、PLLキャプチャレンジは、例えば、1ppmより小さい場合がある。
【0008】
前述した米国特許第6,741,109号は、PLL出力信号における位相変化がスイッチオーバーから発生することを回避するか又は「ヒットレススイッチング(hitless switching)」を保証するために、出力信号を発生するために現在使用中ではないクロックに対する位相差はPLL出力信号から派生されたフィードバック信号に関連して決定され且つ格納されるべきであることを示唆している。このクロックに対してスイッチが発生する場合には、格納されている位相差がその位相差を補償するために適宜の点においてPLL内に注入される。このソリューションにおける問題は、実際上達成することが可能な補償精度及びその補償のために必要とされるスイッチング消費である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、スイッチオーバーから発生する出力信号における不所望の位相変化を信頼性を持って回避することが可能であるようにフェーズロックループ又は上述したタイプの方法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づくフェーズロックループは、異なる動作モード間でスイッチさせることが可能な位相検知器が2つのクロックに対して設けられていることを特徴としており、その場合に現在使用中のクロックに対する位相検知器が第一動作モードとされ且つ現在使用中ではないクロックに対する位相検知器が第二動作モードとされ、且つ第一動作モードにおける各位相検知器が使用されているクロックと出力信号のプリセットされ位相シフトされたバージョンとの間の位相差を決定し且つそれをオシレータを制御するために供給し且つ第二動作モードにおける位相シフトを設定する。
【0011】
本発明に基づく動作方法は、現在使用中のクロックが出力信号を発生するために、このクロックと出力信号のプリセットされた位相シフトされたバージョンとの間で位相差が決定され且つオシレータを制御するために使用され、一方現在使用されていないクロックが出力信号を発生するために、位相シフトが調節されることを特徴としている。
【0012】
ヒットレススイッチングの補償精度又は品質は、本発明により著しく改善させることが可能である。このことは、比較的低い回路技術消費で有益的に達成される。本発明においては、入力クロックとして使用される幾つかのクロックの間に存在する位相差はスイッチオーバーの前に効果的に調節されるか又は補償され、従って、特に、スイットオーバーから発生するPLL出力信号における不所望の位相変化は高精度で回避することが可能である。このことは非常に低いPLL帯域幅を必要とするものではない。それとは反対に、本発明に基づくソリューションは高いPLL帯域幅と適合性がある。
【0013】
本方法の好適実施例においては、出力信号が幾つかの位相で供給され、且つ出力信号の位相シフトされたバージョンがこれらの位相の間の調節可能な補間により発生されることが意図されている。本発明に基づくPLLにおいては、例えば、このことは、出力信号が幾つかの位相を有する位相検知器へ供給されるような構成のオシレータにより達成することが可能であり、その場合に、位相検知器は、
これらの位相の間の補間及びプリセットされ補間された信号の供給のための調節可能な位相補間器、及び
クロック位相を補間した信号位相と比較し且つ位相差を表わす位相検知器出力信号を供給する位相比較器手段、
を有している。
【0014】
本方法の別の好適実施例においては、現在使用されていないクロックが出力信号を発生するために、位相シフト設定が位相制御により達成されるべきであり、その場合に位相差を表わす信号が出力信号位相シフトを調節するためにこの信号を使用することにより制御されるということが意図されている。本発明に基づくPLLにおいては、このことは、例えば、出力信号の位相シフトされたバージョンを発生する位相シフト手段を調節するために位相検知器出力信号が使用されることにより位相差を表わす位相検知器出力信号を制御する第二動作モードにおいて活性化されたフェーズロックループを有する位相検知器により達成することが可能である。位相シフト手段は、例えば、上述した位相補間器とすることが可能である。
【0015】
1実施例においては、位相検知器が位相差をデジタル的に表わす位相検知器出力信号を発生することが意図されている。この場合には、位相検知器出力信号は、デジタル的に制御されるオシレータ(DCO)に対して制御信号を供給するデジタルフィルタを介して通過することが可能である。PLLフィルタに対して対応する修正を行うことによりアナログ電圧制御オシレータ(VCO)を使用することも可能であることは勿論である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1はPLL(フェーズロックループ)12を具備するPLL回路10を示している。
【0017】
PLL12は出力信号CKout又は2つの位相CK 0及びCK 90を具備するこの出力信号の2位相バージョンを発生するためのデジタル制御オシレータ(DCO)を有している。2つの信号CK 0,CK 90は、90度の互いに相対的に固定された位相差及び出力信号CKoutと相対的な固定された位相差を有している。最も簡単な場合においては、信号CKoutは信号CK 0及びCK 90のうちの1つと同一である。
【0018】
図示した例示的実施例においては、PLL出力信号CKoutは幾つかの出力分割器14−1乃至14−4へ供給され、それらは所定の分割比に基いて各場合におけるPLL出力信号周波数を分割し且つそれを出力段16−1乃至16−4へ出力し、該出力段は該信号を各場合における差動的出力クロックCKout1乃至CKout4へ変換する。
【0019】
入力端において、幾つかの差動的クロックCKin1乃至CKin3が回路10へ供給され、それらは3個の入力段18−1乃至18−3によって非差動的表現へ初期的に変換され且つ3個の入力分割器20−1乃至20−3を介してPLL12内へ入力される。
【0020】
以後「入力信号CKin」とも呼称するクロックCKin1乃至CKin3の各々に対して、位相検知器PD1,PD2又はPD3が図示した如くに設けられている。
【0021】
以後「位相検知器PD」としても呼称するこれらの位相検知器PD1乃至PD3の各々は、与えられた動作モード(「第一動作モード」)において、問題のクロックCKin(又は分割器20−1,20−2又は20−3により発生されたその周波数分割バージョン)と出力信号CKoutのプリセットされ位相シフトされたバージョンとの間の位相差を決定し且つそれをデジタル制御オシレータ(DCO)を制御するために供給することが可能である。この目的のために、位相検知器PDの出力はマルチプレクス又はスイッチオーバー手段22へ接続されており、それは位相検知器PD1乃至PD3によって出力された3つの信号のうちの1つを選択し且つそれをPLLフィルタ24へ出力する構成とされている。図示した例示的実施例においては、各位相検知器PDが、その第一動作モードにおいて、この位相差をデジタル的に表わす位相検知器出力信号を発生し、それはこの例示的実施例においてはデジタル的に構成されているPLLフィルタ24によってフィルタされ且つオシレータDCOの制御入力へ出力される。DCOによって出力されるPLL出力信号CKoutの周波数はPLLフィルタ24によって出力される信号により制御される。
【0022】
従って、スイッチオーバー装置22によってPLL入力クロックとして使用される3個のクロックCKin1乃至CKin3の間でスイッチさせることが可能である。このタイプの各スイッチオーバーは信号検知手段26により開始され、それは、例示した如く、入力段におけるクロックCKin1乃至CKin3によって動作され、且つ出力段においてスイッチオーバー手段22へ接続される。手段26はクロックCKinの品質を検知し且つこの検知に基いてクロックのうちのどれをPLL入力クロックとして使用するか又は現在使用中のクロックが不安定となる場合にどのその他の入力クロックへスイッチさせるかの決定を行う。後者の状態は、図示したPLL回路10も包含している集積回路装置(不図示)の他の部分へLOS信号により通信される。
【0023】
図2は3個の位相検知器PD1,PD2,PD3の(同一の)構成を例示している。これら3個の位相検知器は同一の構成であるから、この構成は図2に関連して1個の位相検知器PDについてのみ説明する。位相検知器PDに対して以下に説明する全てのコンポーネント及び信号は図1に例示した回路10における位相検知器PD1乃至PD3の各々に対して別々に存在する。
【0024】
既に上述したように、位相検知器PDの第一動作モードのための基本的なコンポーネントは、調節可能な位相補間器30及びサンプラー手段32である。PLL出力信号CKoutの2つの「直交信号」CK 0及びCK 90が位相補間器30へ入力される。後述する補間設定に従って、補間器30はプリセットの補間された信号CK<1:8>を発生し、それは入力信号としてサンプラー手段32へ供給される。図示した例示的実施例においては、位相補間器30は約2.5GHzの周波数において振動するDCOの2つの正弦波直交クロックCK 0,CK 90の間で補間を行う。信号表示CK<1:8>は8個の信号部分から構成されており且つ「PLL出力信号の位相シフトされたバージョン」CKoutを表わす(補間設定に従い)。サンプラー手段32は位相比較器として機能し且つ出力信号CKout(直交信号部分CK 0及びCK 90として位相検知器PDへ供給される)の位相シフトされたバージョンCK<1:8>を位相検知器入力信号PD INの位相と比較する。この比較の結果として、サンプラー手段32はデジタル信号表示PD OUT<9:0>を発生し、それは位相検知器PDの第一動作モードにある位相検知器スイッチオーバー手段34を介してPLLスイッチオーバー手段22(図1)へ接続されている位相検知器出力へ供給される。図2に例示した位相検知器入力信号PD INは図1に例示した入力分割器20−1乃至20−3により出力される信号のうちの1つである。
【0025】
再度図1に戻ると、例えば、信号検知手段26により開始され且つPLLスイッチオーバー手段22によってインプリメントされているので、クロックCKin1はPLL12の入力クロックとして現在使用されており且つクロックCKin2へのスイッチオーバーは後の時間において行われることが仮定されている。この場合においては、位相検知器PD1はその第一動作モードにあり、それについては図2に関連して先に説明した。然しながら、他の2つの位相検知器PD2及びPD3は第二動作モードにあり、それについては図2を参照して再度以下に説明し、その場合にこれらはPLLに対し入力クロックを供給するものではない。
【0026】
図2に例示した位相検知器PDのその第一動作モードからその第二動作モードへのスイッチオーバーは、信号検知手段26又はPLLスイッチオーバー手段22により出力される信号S1により行われ、それはサンプラー手段32により出力される位相検知器出力信号PD OUT<9:0>は最早PLLへの基準クロック信号として出力されるものではないが位相検知器PD内に設けられているフィードバック経路を介して位相補間器30に関し動作するような態様で位相検知器スイッチオーバー手段34を制御するか又はトリガする。図示した例示的実施例においては、このフィードバック経路はデジタルフィルタ36と、オーバーフローカウンタ38と、モジュロ8積分器40とによって形成される。
【0027】
第二動作モードにおいて、位相検知器出力信号PD OUT<9:0>がデジタルフィルタ36を介してオーバーフローカウンタ38の入力へ供給され、該カウンタは各カウンタオーバーフローに対しモジュロ8積分器40に対して出力パルスを出力する。積分器40は出力端において調節可能な位相補間器30に対して設定信号を出力し、それに対して8個の異なる信号状態が8個の異なる補間ステージに対応して設けられている。
【0028】
位相検知器PDの第二動作モードにおいては位相補間器30の設定が信号CK<1:8>の位相に影響を与え、従って補間設定のために使用される位相検知器出力信号PD OUT<9:0>に直接的に影響を与えるという事実に起因して、位相制御は位相検知器PD内において行われ、それにより積分器40により出力される設定は、位相検知器出力信号がゼロの位相差に対応する値へ制御される状態に到達するまで変化される。位相検知器PDがアクティブであり且つPLL内に包含されている場合には、全体的なフィードバック経路36,38,40が非アクティブである。
【0029】
この位相制御は、PLL出力信号を発生するために現在使用されていない全ての位相検知器PDにおいて行われる。このことは、PLL入力クロックとして使用するクロックCKin間でのスイッチオーバーの前であっても、全ての異なるクロックCKinに対してのPLL出力信号に関連して「内部位相設定」を実効的に形成する。各位相検知器PDの第二動作モードにおいて行われるこの内部位相制御の機能は、ある程度、「位相検知器内のPLL」として見ることが可能である。コンポーネント38,40,30でもって、この「内部PLL」用のデジタル制御オシレータの機能が提供される。
【0030】
PLL出力信号発生のために以前に使用されていないクロックへのPLL回路10(図1)におけるスイッチオーバーが存在すると、問題の位相検知器PDにおける内部スイッチオーバー手段34が、同様に対応してスイッチされるPLLスイッチオーバー手段22を介してPLLフィルタ24へ位相検知器出力信号PD OUT<9:0>が供給されるような態様で信号S1によって変化される。「内部PLL」によって位相補間器30の前に制御した設定の理由で、このスイッチオーバーはPLL出力信号における有害な位相変化となるものではない(位相補間器30が前もって対応的に設定されていなかった場合に予測することが可能であるように)。
【0031】
説明したPLL回路10の動作にとって重要なことはPLL12の使用であり、それにより、PLL入力クロックとして使用するために幾つかのクロックの間でスイッチすることが可能であり、その場合に現在使用中のPLL位相検知器は、各場合において、プリセットされ位相シフトされたフィードバック信号の位相を現在使用されている入力信号の位相と比較し且つ現在使用されていない位相検知器はこの期間において位相シフトの設定を行い、それは、PLL位相検知器として使用される場合には「初期設定」として使用される。入力において異なる数のクロックを供給することも可能であり及び/又は説明した例示的実施例におけるものと異なる数の出力クロックとすることも可能であることは勿論である。更に、周波数分割器14,16の数及び構成は夫々の使用に対して適用させることが可能である。図2に例示した位相検知器PDの構成は好適な例示的実施例を表わしているが、それは、勿論、異なる態様で実現することも可能である。然しながら、好適な構成は、(説明した構成の場合の如く)、内部フェーズロックループが第二動作モードにおける位相シフトを設定するために位相検知器内に実現されるものである。位相シフト自身に関しては、位相補間器による説明した実現例も単に好適実施例としてみなされるべきものであり、それは異なる構成とすることも可能である。同じことはサンプラー手段32の以下に説明する詳細な形態についても適用され、一方位相補間器30は以下に説明する態様とは異なる構成とすることも可能である。
【0032】
図3は図2からの位相検知器PDにおいて使用されるサンプラー手段32の構成を示している。
【0033】
PLL出力信号CKoutの位相シフトされたバージョンCK<1:8>及び位相検知器入力信号PD INがマルチフェーズ即ち多位相サンプラー50へ供給され、該サンプラーはそれから信号CK R及びPD OUT<2:0>を発生する。全部で8個の信号部分CK<1>乃至CK<8>から構成されている信号CK<1:8>の信号部分CK<1>は、更に、位相アキュムレータ52(カウンタ)内に供給される。7個のフリップフロップから構成されているフリップフロップ装置54が位相アキュムレータ52によって出力される信号及び信号CK Rによって例示した如くに作用され且つ信号部分PD OUT<9:3>を形成し、それは信号PD OUT<2:0>によって作用される加算ブロック56を介して位相検知器出力信号PD OUT<9:0>を形成する。図示した例示的実施例においては、サンプラー手段32はその出力において10ビットワードを発生し、それは位相検知器PDへ供給される信号の位相差をデジタル的に表わしている。サンプラー手段32は信号PD OUT<2:0>を供給するために使用される高速マルチフェーズサンプラーを有しており、該信号は位相検知器出力信号の3つの最下位値ビットを表わしている。フリップフロップ装置54は7個の最高値ビットを発生する。該マルチフェーズサンプラーは、例示した例においては19.44MHzの周波数を有している供給された位相検知器信号PD INを8個の均等間隔なクロックCK<1>乃至CK<8>でサンプルし、それは図示した例示した実施例においては1.25GHzの周波数を有しており且つ100psの位相分解能を供給する。
【0034】
図4は図3に例示したマルチフェーズサンプラー50の構成を示している。マルチフェーズサンプラー50は、例示したように、フリップフロップ装置58とデコーダ60とを有しており、それらは信号PD IN及びCK<1>乃至CK<8>によって例示した態様で作用され且つ出力端において信号CK R及びPD OUT<2:0>を出力する。
【0035】
図5は信号部分CK<1>乃至CK<8>、信号PD IN、信号PD OUT<2:0>、信号CK Rの例示的な時間応答を示している。図5は、特に、8個のサンプラークロックCK<1:8>及び位相検知器入力信号PD IN及び位相検知器出力信号PD OUTの間の位相関係を示している。
【0036】
位相補間器30によって発生される信号部分CK<1>乃至CK<8>が互いに同一であるが互いに等しい距離位相シフトされている信号であることが明らかである。例示した例示的実施例においては、2つの隣接する信号部分の間(例えば、CK<1>とCK<2>との間)の時間におけるズレは100psである。
【0037】
図6及び7は位相補間器30の構成を例示している。
【0038】
補間器30の全体的な構成は図6に示してある。1.25GHzの周波数において8個の均等に離隔された(100ps間隔で)クロックCK<1>乃至CK<8>を供給するために、補間器30は2つの例示した半分部分70−1及び70−2及び付加的な分割器回路を具備する出力回路部分72を有している。補間器半分部分70−1,70−2及び補間器出力回路部分72は図示した態様で相互作用を行って信号成分CK<1>乃至CK<8>によって表わされる直交信号CK 0及びCK 90(図1参照)からPLL出力信号の位相シフトされたバージョンを形成する。
【0039】
直交信号CK 0及びCK 90は差動的形態で補間器30へ供給され、信号CK 0は差動信号部分CK P及びCK Nから構成されている。信号CK 90は差動的信号部分CK 90 P及びCK 90 Nから構成されている。所望の位相シフトは信号PHI<2:0>により設定される。これは図2においてモジュロ8積分器40から位相補間器30の制御入力へ送信される信号である。
【0040】
最後に、図7は図6に示した2つの補間器半分部分70−1及び70−2に対する(同一の)構成を示している。各補間器半分部分の構成はそれ自身既知の概念に従うものであり且つ供給された信号PHI<2:0>を現在の表示(例示した電流源によって象徴されている)へ変換するデジタル・アナログ変換器74を有している。該電流源によって供給される電流は夫々のトランスコンダクタンス段に対する設定電流として作用し、それらの段は、例示した如く、各々トランジスタ対により形成されており且つ個々の電流の重み付け重ね合せを発生する。これらの電流は連結抵抗負荷Rを横断して供給され、従って図6に示されている電位PH OUTP及びPH OUTNは抵抗負荷Rにおける電圧降下として供給される。位相補間器出力信号は得られたCK1及びCK2入力信号の加重和に対応しており(電流の重ね合せにより)、それは90゜の一定の位相差を有している。位相補間器出力信号の分解能は50psとして特定される。
【0041】
前述した例示的実施例に対して与えられた周波数及び時間の値は、勿論、例示としてみなされるべきものであり且つ実際上修正し且つ問題の特定の適用例に対して適応させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】PLL回路を示した概略図。
【図2】図1におけるPLL回路において使用される位相検知器の構成を示した概略図。
【図3】図2における位相検知器において使用されているサンプラー手段の構成を示した概略図。
【図4】図3におけるサンプラー手段において使用されているマルチフェーズサンプラーの構成を示した概略図。
【図5】図4におけるマルチフェーズサンプラーにおいて発生する信号の時間における変化を示した例示的概略図。
【図6】図2における位相検知器において使用されている位相補間器の構成を示した概略図。
【図7】図6における位相検知器において使用されている2つの補間器半分部分の構成を示した概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェーズロックループの出力信号(CKout)を発生するための制御可能なオシレータ(DCO)を具備しており且つフェーズロックループの入力クロックとして使用するために第一クロック(CKin1)と第二クロック(CKin2)との間でスイッチングするためのスイッチオーバー手段(22)を具備しているフェーズロックループ(12)において、
異なる動作モード間でスイッチさせることが可能な位相検知器(PD1,PD2)が2つのクロック(CKin1,CKin2)の各々に対して設けられており、現在使用中のクロック(CKin1又はCKin2)に対する位相検知器(PD1又はPD2)は第一動作モードとされ且つ現在使用中でないクロック(CKin2又はCKin1)に対する位相検知器(PD2又はPD1)は第二動作モードとされ、且つ第一動作モードにある各位相検知器(PD1,PD2)が使用されているクロック(CKin1又はCKin2)と出力信号(CKout)のプリセットされ位相シフトされたバージョン(CK<1:8>)との間の位相差を決定し且つそれを供給してオシレータ(DCO)を制御し且つ第二動作モードにある位相シフトを設定する、ことを特徴とするフェーズロックループ。
【請求項2】
請求項1において、オシレータ(DCO)が位相検知器(PD1,PD2,PD3)に対して幾つかの位相(CK 0,CK 90)を具備する出力信号(CKout)を供給する構成とされており、且つ位相検知器(PD1,PD2,PD3)が、
これらの位相(CK 0,CK 90)の間の補間及びプリセットされ補間された信号(CK<1:8>)の供給のための調節可能な位相補間器(30)、及び
クロック(CKin1,CKin2,CKin3)位相を補間した信号(CK<1:8>)位相と比較し且つその位相差を表わす位相検知器出力信号(PD OUT<9:0>)の供給のための位相比較器手段(32)、
を有しているフェーズロックループ。
【請求項3】
先行する請求項のうちのいずれかにおいて、位相検知器(PD1,PD2,PD3)が第二動作モードにおいて活性化されるフェーズロックループ(36,38,40,30)を有しており、それは、位相差を表わす位相検知器出力信号(PD OUT<9:0>)が出力信号(CKout)の位相シフトしたバージョン(CK<1:8>)を発生する位相シフト手段(30)を調節するために使用されることによりこの位相検知器出力信号を制御するフェーズロックループ。
【請求項4】
先行する請求項のうちのいずれかにおいて、位相検知器(PD1,PD2,PD3)がデジタル的に位相差を表わす位相検知器出力信号(PD OUT<9:0>)を発生するフェーズロックループ。
【請求項5】
フェーズロックループ(12)を動作させる方法において、制御可能なオシレータ(DCO)がフェーズロックループの出力信号(CKout)を発生し且つフェーズロックループ入力クロックとして使用するために第一クロック(CKin1)と第二クロック(CKin2)との間でスイッチさせることが可能であり、
現在使用中のクロック(CKin1又はCKin2)が出力信号(CKout)を発生するためには、このクロックと出力信号(CKout)のプリセットされ位相シフトされたバージョン(CK<1:8>)との間で位相差が決定され且つオシレータ(DCO)を制御するために使用され、一方現在使用中ではないクロック(CKin2又はCKin1)が出力信号(CKout)を発生するためには、位相シフトが調節される、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5において、出力信号(CKout)が幾つかの位相(CK 0,CK 90)が供給され、且つ出力信号(CKout)の位相シフトされたバージョン(CK<1:8>)がこれらの位相(CK 0,CK 90)の間の調節可能な補間により発生される方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、現在使用中でないクロック(CKin2又はCKin1)が出力信号(CKout)を発生するためには、位相シフト設定が位相制御により達成され、その場合に、位相差を表わす信号(PD OUT<9:0>)が出力信号(CKout)位相シフトを調節するためにこの信号を使用することにより制御される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−329914(P2007−329914A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−136755(P2007−136755)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(507161776)ナショナル セミコンダクタ ジャーマニー アクチエンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】National Semiconductor Germay AG
【Fターム(参考)】