説明

スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法

【課題】 水に対する溶け崩れが改良でき、且つ豊富で粘調なクリーム状の泡沫を得ることができ、水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤を多量したスクラブ剤配合石鹸組成物を、枠練りで効率よく、また流動性が良好であるので、流し込みの作業性を大幅に改善でき、均一に混合して製造することができる製造方法を提供することにある。
【解決手段】 スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、脂肪酸25〜40重量部、水溶性無機塩0.2〜3.0重量部、ポリオール15〜40重量部、中鎖脂肪酸エステル0.5〜5重量部、水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜20重量部、水分を配合し、撹拌混合しながら前記配合物を加熱して該脂肪酸を溶融させ、次いで、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物3〜9重量部を添加して該脂肪酸を中和し、温度を75〜100℃として、含有される水分が13〜20重量部となる均一な溶融混合物を得た後、該溶融混合物を型枠内に流し込み、冷却固化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法に関し、特に枠練り法を用いたスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固形石鹸の製造方法には、動植物油脂と水酸化ナトリウム等とを加熱して濃厚な液状石鹸(ニートソープ)を作成し(油脂のケン化法)、これを乾燥してチップ状またはペレット状にし、香料、色素及び他の添加物とともに機械練りをして均質化した後、型打ちをして製造する機械練り方法と、動植物油脂を分解して得られる脂肪酸を水酸化ナトリウムのようなアルカリで中和してニートソープを作成し(中和法)、該ニートソープを、香料、色素及び他の添加剤とともに混合溶融し、この状態で型枠の中に流し込んで冷却し固める枠練り方法とがある。
【0003】
前者の機械練り製造方法の場合には、固体状の内容物を機械的に練りあげて、型打ち成型をするために、微細な無機質のスクラブ剤を多量に配合すると、材料の粘度が上昇し、均一に練り上げることが困難になり、更に、混練する際の混練用モーターに過度の負荷がかかると同時に、機材の表面が該スクラブ剤により摩耗してしまい、経済的、機械的に問題が生じる。
【0004】
後者の枠練り方法は、公知の技術として、特許文献1に記載があるように脂肪酸石鹸、ポリオール類、無機塩等の原料から溶融混合物を調製した後、型枠内に流し込み固化させることにより固形石鹸を得るものである。
泡立ちが良く、十分な硬さで水に対して溶け崩れのしにくい石鹸を得るためには、脂肪酸石鹸の濃度を如何に上げるかが重要な要因となるが、溶融混合方法では石鹸濃度に依存して油脂のケン化、脂肪酸の中和工程で著しい粘度上昇、しいては流動性の乏しい状態が生じるため、予め添加水、低級アルコール、グリセリン、ソルビトールなどの流動化助剤を配合して製造されている。
【0005】
このような流動化助剤の配合量が多くなると石鹸が柔らかくなり、水に対して溶け崩れが起こり易くなる。また、溶融混合物中に本発明に必要なスクラブ剤である微粉状の水不溶性無機粉体を多量に含有させると粘度は上昇し、流動性は悪くなる。
スクラブ剤を多量に含有し、且つ泡立ちが良く、十分な硬さで水に対して溶け崩れのしにくい石鹸は公知の技術では困難であった。
【特許文献1】特開2004−256805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水に対する溶け崩れが改良でき、且つ豊富で粘調なクリーム状の泡沫を得ることができ、水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤を多量したスクラブ剤配合石鹸組成物を、枠練りで均一に混合して効率よく、また流動性良く、流し込みの作業性を大幅に改善できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、スクラブ剤配合石鹸組成物を製造するにあたり、特定の組成配合、特に中鎖脂肪酸エステルを一定の配合割合で添加させて特定の組成配合とすることで、脂肪酸の中和完了後の溶融混合物の流動性が改善されるばかりでなく、必要に応じて更なる流動性改善のために添加配合したエチルアルコールを蒸留除去した後の流動性をも改善し、型枠内への流し込み等の作業性が大幅に改善できることを見出し、本発明を達成するにいたった。
【0008】
本発明の請求項1記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、脂肪酸25〜40重量部、水溶性無機塩0.2〜3.0重量部、ポリオール15〜40重量部、中鎖脂肪酸エステル0.5〜5重量部、水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜10重量部及び水分を配合し、撹拌混合しながら前記配合物を加熱して該脂肪酸を溶融させ、次いで、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物を3〜9重量部を添加して該脂肪酸を中和し、温度を75〜100℃として、含有される水分が13〜20重量部となるように、均一な溶融混合物を得た後、該溶融混合物を型枠内に流し込み、冷却固化させることを特徴とする、新規なスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法である。
【0009】
本発明の請求項2記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、脂肪酸25〜40重量部、水溶性無機塩0.2〜3.0重量部、ポリオール15〜40重量部、中鎖脂肪酸エステル0.5〜5重量部及び水分を配合し、撹拌混合しながら前記配合物を加熱して該脂肪酸を溶融させ、次いで、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物3〜9重量部を添加して該脂肪酸を中和し、温度を75〜100℃とした後、水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜20重量部を配合して均一に分散させるとともに含有される水分が13〜20重量部となる均一な溶融混合物を得た後、該溶融混合物を型枠内に流し込み、冷却固化させることを特徴とする、新規なスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法である。
【0010】
好適には、請求項3記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、上記請求項1または2記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、更にエチルアルコールを10重量部以下の量で上記中和中にまたは予め最初から配合し、中和後の温度75〜100℃保持中に該エチルアルコールを除去して、得られる溶融混合物中の該エチルアルコールが5重量%以下となるように減量させることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法である。
【0011】
更に好適には、請求項4記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、上記請求項1〜3いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとは、重量比で10〜50/90〜50で混合されることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法である。
【0012】
更に好適には、請求項5記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、請求項1〜4いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記スクラブ剤は、粒度が100μm以下であって、タルク、カオリン、セリサイト、酸化チタン、珪酸マグネシウム及び珪酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法である。
【0013】
また更に好適には、請求項6記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、請求項1〜5いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記ポリオールは、グリセリン、ソルビトール、グルコース及び砂糖からなる群より選ばれることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法である。
【0014】
更に好適には、請求項7記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、請求項1〜6いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記中鎖脂肪酸エステル類は、炭素数8〜12の脂肪酸の少なくとも一種とグリセリンとのモノ、ジ、トリエステル又はこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法によって、スクラブ剤を大量に配合させても、溶融混合物の流動性が改善されるばかりでなく、型枠内への流し込み等の作業性を大幅に改善することが可能になる。
また、得られるスクラブ剤配合石鹸組成物は、型くずれしにくく、配合したスクラブ剤の機能を有効に発現させることが可能となる。
また、必要に応じてエチルアルコールを添加することで、スクラブ剤配合石鹸組成物を製造する際の溶融混合物の流動性が、より改善し、更に一部のエチルアルコールを蒸留除去した後の流動性をもより改善することができる。
【0016】
さらに、本発明の製造方法により得られた石鹸は、水に対する溶け崩れが改良され、且つ豊富で粘調なクリーム状の泡沫が立ち、洗浄時にスクラブ剤によるマッサージ効果、スクラブ効果、光学的外観効果を発揮する等のスクラブ剤を2重量%以上含有した化粧用固形石鹸組成物とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を以下の好適例に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、(A)脂肪酸25〜40重量部、(B)水溶性無機塩0.2〜3.0重量部、(C)ポリオール15〜40重量部、(D)中鎖脂肪酸エステル0.5〜5重量部、(E)水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜20重量部、(F)水分を配合し、撹拌混合しながら前記配合物を加熱して該脂肪酸を溶融させ、次いで、(G)水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物を3〜9重量部を添加して該脂肪酸を中和し、温度を75〜100℃として、含有される水分が13〜20重量部となるように、均一な溶融混合物を得た後、該溶融混合物を型枠内に流し込み、冷却固化させる工程を有する。
【0018】
また、他の本発明のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法は、(A)脂肪酸25〜40重量部、(B)水溶性無機塩0.2〜3.0重量部、(C)ポリオール15〜40重量部、(D)中鎖脂肪酸エステル0.5〜5重量部、(F)水分を配合し、撹拌混合しながら前記配合物を加熱して該脂肪酸を溶融させ、次いで、(G)水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物3〜9重量部を添加して該脂肪酸を中和し、温度を75〜100℃とした後、(E)水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜20重量部を配合して均一に分散させるとともに含有される水分が13〜20重量部となる均一な溶融混合物を得た後、該溶融混合物を型枠内に流し込み、冷却固化させる工程を有する。
【0019】
このような方法手順を採用することで、スクラブ剤を大量に配合させても、溶融混合物の流動性が改善され、型枠内への流し込み等の作業性を大幅に改善することが可能となる上記効果を奏することができることとなる。
【0020】
具体的には、本発明は、次の成分(A)〜(G):
(A)25〜40重量部の脂肪酸
(B)0.2〜3.0重量部の水溶性無機塩類
(C)15〜40重量部のポリオール類
(D)0.5〜5重量部の中鎖脂肪酸エステル類
(E)水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜20重量部
(F)水
(G)3〜9重量部の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物
を配合して固形石鹸を製造するに際して、攪拌機付混合槽を用いて、(A)〜(F)成分を仕込み、加熱溶解混合して、次いで、(G)成分を配合して中和し、75〜100℃、好ましくは85〜95℃で均一な混合物とした後、最終的に含有される水分量が13〜20重量部となるように調整し、静置して泡沫を懸垂して型枠内に流し込み、冷却固化させる。
ここで、得られる石鹸組成物中の(F)成分の水は、中和反応によって生成する反応生成水と配合される水分の合計量が最終的に上記13〜20重量部となればよい。
【0021】
まず(A)〜(F)成分を撹拌機付混合槽に仕込んで、これらの成分が均一になるように十分に混合する。
その後、これらの混合物を撹拌しながら加熱溶解する。
この加熱は各混合物が溶解する程度に加熱することで、更に均一化できる。
次いで(G)成分を配合して酸を中和し、温度を75〜100℃、好ましくは85〜95℃に加熱して、撹拌混合する。
ここで、エチルアルコール(H)成分は、必要に応じて配合されるもので、流動性を更に向上させるために、上記中和中に、または予め最初から配合される。
温度を75〜100℃に加熱することで、混合物を均一に混合できるとともに、含有される水の量を13〜20重量部とするように調整し、必要に応じて添加するエチルアルコールを5重量部以下となるように調整する。
その後撹拌を止め、これらの溶融混合物を静置させて、泡沫を懸垂して、そのまま型枠内に流し込む。該溶融混合物の流動性は良好であり、型枠内への流し込み等の作業性も優れたものとすることができる。
型枠に流し込まれた溶融石鹸は冷却固化され、目的とするスクラブ剤入り石鹸組成物が製造される。
【0022】
または、上記(E)水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤成分を、予め(A)〜(D)及び(F)成分と一緒に配合するのではなく、攪拌機付混合槽を用いて、(A)〜(D)及び(F)成分を仕込み、加熱溶解混合し、次いで、(G)成分を配合して中和し、温度を75〜100℃とした後、(E)成分のスクラブ剤を配合して均一な混合溶液とするとともに含有される水分が13〜20重量部となる混合溶液とし、次いで静置して泡沫を懸垂して型枠内に流し込み、冷却固化させてもよい。
【0023】
特に好適には、(H)エチルアルコールを10重量部以下の量で、上記中和中にまたは予め最初から配合し、(E)成分配合後の温度を75〜100℃保持中に該エチルアルコールを除去して、得られる溶融混合物中該エチルアルコールが5重量%以下となるように減量する。
このようにエチルアルコールを配合することで、脂肪酸の中和工程中に起こる粘度上昇、流動性の低下のために溶融混合が不可能な状態を回避し、更に、低粘度化、流動性向上を促進することができる。
【0024】
また、本発明には特に、(D)成分の中鎖脂肪酸エステル類の存在が重要であり、本成分が配合されていると、原料脂肪酸の中和完了後に溶融混合物の流動性が改善されるばかりでなく、エチルアルコールを蒸留除去した後の流動性をも改善し、型枠内への流し込み等の作業性を改善する。
【0025】
本発明の製造方法によって製造されるスクラブ剤配合石鹸は、25〜40重量部の脂肪酸石鹸類、0.2〜3.0重量部の水溶性無機塩類、15〜40重量部のポリオール類、0.5〜5重量部の中鎖脂肪酸エステル類、2〜20重量部の水不溶性無機粉体からなるスクラブ剤、好ましくは、0〜5重量部のエチルアルコール、13〜20重量部の水を含有するが、以上の成分のみにこだわることなく、通常用いられる範囲、例えば5重量部以下の配合量であれば、他のスクラブ剤及びその他の添加剤である油性基剤、キレート剤、保湿剤、吸湿剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、美白剤、ビタミン類及びその誘導体、消炎剤、抗炎症剤、抗老化剤、冷感剤、動・植物エキス、鎮痒剤、角質剥離剤、制汗剤、香料、顔料,染料など種々の化粧品原料を配合することができる。
【0026】
上記成分(A)の脂肪酸としては特に限定されないが、特に、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸を用いることが、水に対する溶け崩れが改良され、且つ豊富で粘調なクリーム状の泡沫が立ち易い点から好ましく、具体的にその組成として炭素数8〜14の脂肪酸が75〜85重量%、炭素数16の脂肪酸が10〜15重量%及び炭素数18の飽和及び/又は不飽和脂肪酸が1〜5重量%からなるものが溶け崩れ難さ、豊富な泡量の点から特に望ましい。
また、炭素数8〜10の脂肪酸は、若干臭気あり、皮膚に対する刺激性等がある場合もあることから、炭素数が11以上の脂肪酸を使用することがより望ましい。
また炭素数18の脂肪酸を5重量%を超えて含むと、石鹸の使用時の泡立ちが悪くなる場合があるが、1〜5重量%の量で含有されることによって、得られるスクラブ配合石鹸が水によってふやけたり、溶け崩れしたりすることが良好に改良される。
成分(A)の脂肪酸の配合量は、25〜40重量部が好ましく、この範囲であると、水に対する溶け崩れれば改良され、且つ豊富で粘調なクリーム状の泡沫が立つと同時に適度な洗浄力を得ることができるからである。
【0027】
上記成分(B)の水溶性無機塩は一価金属の塩類、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどであり0.2〜3.0重量部配合される。
当該(B)成分は、0.2〜3重量部以内では脂肪酸の中和工程中溶融混合物の流動性を向上し、固化後の石鹸の硬さを向上する。3重量部を超えると、逆に混合物内に相分離させる傾向が強くなり、好ましくない。
【0028】
上記成分(C)のポリオール類は、例えばグリセリン、ソルビトール、グルコース、マンニトール、砂糖などの水溶性糖類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及びその混合からなる反応誘導体などが用いられる。
これらのポリオール類は一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
当該ポリオール類は、溶融混合物の流動性を向上させる効果、冷却後の固形石鹸の組織を均一にする効果と皮膚洗浄後の使用感の改善等を目的に使用する。
その配合量は、15重量部未満では石鹸製造時の中和工程で粘度の上昇が著しくなり、配合量が40重量部を越えると、石鹸の水に対するフヤケ、溶け崩れが多くなる。
【0029】
成分(D)の中鎖脂肪酸エステル類は、炭素数8〜14、更に好ましくは8〜12の天然脂肪酸または合成脂肪酸と、グリセリンのほかにエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリグリセリンのモノ、ジ、トリエステルなどが用いられる。
その配合量は0.5〜5重量部が適量であり、当該範囲の適当量の使用は脂肪酸中和後の溶融混合物の流動性を向上させる効果があり、更に必要に応じて配合され過剰に添加されたエチルアルコールを蒸留除去した後も、流動性を維持することができる。
当該配合量が5重量部を超えると石鹸の泡立ちが低下する傾向がある。
【0030】
成分(E)のスクラブ剤としては、水不溶性無機塩粉体、例えばシリカ、アルミナ、タルク、カオリン、セリサイト、酸化チタン、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、ゼオライト、硫酸バリウム、軽石などのが用いられ、これらを一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
当該スクラブ剤は、予め(A)〜(D)及び(F)成分と一緒に配合しても、後に(G)成分と一緒に配合添加してもかまわない。
洗浄時にスクラブ剤による優れたマッサージ効果、スクラブ効果を発揮し、洗浄後には光学的外観効果を発揮する石鹸を提供するためには、スクラブ剤の平均粒度は100μm以下が好ましく、100μmを超えると洗浄時にザラツキ感を与える場合があるため好ましくない。
ここで、平均粒度とは、粒度測定用篩(JISK51010)で測定された粒度をいう。
【0031】
かかるスクラブ剤は、スクラブ剤自体の効果を発現させるためには、2重量部以上含有されることが好ましく、製造時の配合時期としては、脂肪酸の中和前に又は中和と同時に、特に中和前に配合することが、発泡することなく十分に分散できるために好ましい。
本発明に用いるスクラブ剤は水不溶性ではあるが、粒子の表面は親水性で、且つ水を吸着するために、脂肪酸の中和工程中に粘度を著しく上昇させ、溶融混合物の流動性を著しく悪化させる要因となるため、20重量部を超えて配合することは困難であり、好ましくは15重量部以下が好ましい。
【0032】
脂肪酸の中和用アルカリには石鹸の溶解性と起泡性の改良のために、(G)水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物が用いられる。
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの配合重量比は、KOH/NaOH=10〜50/90〜50、好ましくは20〜40/80〜60である。
水酸化カリウム配合比が10重量部未満になると石鹸の溶解性が悪くなり起泡性が悪化し、50重量部を超えると石鹸が水に対して溶けすぎ、実用性が損なわれる。
【0033】
成分(H)のエチルアルコールは、必要に応じて添加することができ、脂肪酸の中和工程中に起こる粘度上昇、流動性の低下のために溶融混合が困難となる場合を回避するために低粘度化、流動性向上のための助剤として使用する。
溶融混合物の温度が75〜100℃で、流動性がある状態になった時点でエチルアルコールを5重量部以下となるように蒸留除去しても、攪拌混合性、流動性は維持することができる。
エチルアルコールの配合量は、10重量部以下となるように配合され、10重量部を超えると経時的に石鹸から蒸発し、石鹸の痩せが著しくなり好ましくない。最終的に得られる石鹸中に含有される含有量は5重量部以下が好ましく、製造工程中蒸留除去して5重量部以下とすることが望ましい。
【0034】
水分は、添加される水(F)、原料から持ち込まれる水と脂肪酸の中和反応によって生成する反応水等からなり、その合計が13〜20重量部であることが好ましい。
例えばソルビトール、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム水溶液を原料として使用する場合には、これらの水溶液に含有される水量は、上記添加水として含まれる。
溶融石鹸製造時の水の含有量が13重量部未満では、蒸留除去すると粘度が著しく上昇し、流動性を維持できなくなる場合があり、これは特にエチルアルコールを添加した場合であり、また20重量部を超えると石鹸が水に対して軟化し易くなり実用性にかける。
【0035】
このように、本発明の製造方法によって得られた溶融石鹸は、多量にスクラブ剤を配合しても、流動性が良好で、型枠に流し込まれて冷却固化され、目的とするスクラブ剤入り石鹸組成物が製造できる方法である。
【実施例】
【0036】
本発明を次の実施例、比較例及び試験例により詳細に説明する。
但し、部は、重量部を表す。
(使用原料)
以下の実施例及び比較例には以下の原料を使用した。
ラウリン酸(MW200);商品名 ラウリン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
ミリスチン酸(MW228);商品名 ミリスチン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
パルミチン酸(MW256);商品名 パルミチン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
ステアリン酸(MW282);商品名 ステアリン酸98・ミヨシ油脂株式会社製
オレイン酸(MW282);商品名 PM 810−RS・ミヨシ油脂株式会社製
水酸化ナトリウム;商品名 カセイソーダエキ(セイセイ)48% 純正化学株式会社製
水酸化カリウム;商品名 カセイカリエキ(セイセイ)48% 純正化学株式会社製
食塩(水酸化ナトリウム);商品名 塩(しお)・財団法人塩事業センター製
無水硫酸ナトリウム;商品名 無水硫酸ナトリウム・三宝化学工業株式会社製
70%ソルビトール水溶液;商品名 ソルビットL70・東和化成工業株式会社製
グリセリン;商品名 化粧品用濃グリセリン・ミヨシ油脂株式会社製
中鎖脂肪酸エステル;中鎖脂肪酸トリグリセリド・原産国名マレーシア、輸入発売元木村産業株式会社
タルク;商品名 タルクSW−A・浅田製粉株式会社製
カオリン;商品名 カオリンASP・竹原化学工業株式会社製
珪酸カルシウム;商品名 フローライト・トクヤマ株式会社製
酸化アルミニウム;商品名 アルミニウムオキサイドC・日本アエロジル株式会社製
クエン酸三ナトリウム;商品名 試薬くえん酸三ナトリウム二水和物・昭和化学株式会社製
乳酸ナトリウム;商品名 乳酸ソーダ・武蔵野化学研究所製
エチルアルコール;商品名 工業用アルコール・協和発酵株式会社
添加水;水道水
【0037】
(実施例1)
攪拌機、加熱用装置、冷却コンデンサー及び底栓弁を備えた3Lの混合槽に、表1示す配合量、即ち、水24g(1.2重量部対総仕込量、以下1.2部と表す)、食塩20g(1部)、70%ソルビトール水溶液(以下70%ソルビトールと表す)340g(17部)、グリセリン397g(20部)、クエン酸三ナトリウム10g(0.5部)、50%乳酸ナトリウム水溶液(以下50%乳酸ナトリウムと表す)10g(0.5部)、ラウリン酸200g(10部)、ミリスチン酸400g(20部)、パルミチン酸100g(5部)、ステアリン酸20g(1部)、中鎖脂肪酸トリグリセリド20g(1部)、タルク100g(5部)及びエチルアルコール80g(4部)を仕込み加熱しながら、溶融混合し約60℃まで加熱した。
【0038】
次いで、48%水酸化カリウム水溶液(以下48%水酸化カリウムと表す)84g(4.2部)と48%水酸化ナトリウム水溶液(以下48%水酸化ナトリウムと表す)195g(9.7部)を予め混合液として徐々に投入して中和をおこなった。
その後85〜95℃で約1時間混合熟成するとともに水分量(総計)を表1に示す量に調整した後、約30分同温度で静置し、底栓弁から溶融混合物を蓋付き弁当箱(430ml、ポリプロピレン製)にその蓋に開けられた1平方センチメートルの穴を通して流し込み放冷却、固化した。固化後、3cm×3cm×5cmの石鹸組成物供試体を切り取り各種評価に供した。
【0039】
(実施例2)
表1の配合割合で、タルク、カオリンのスクラブ剤を、アルカリで中和した後85〜95℃で約30分間混合熟成した後に配合し、更に30分混合熟成した以外は、実施例1に準じて石鹸組成物供試体を製造した。
【0040】
(実施例3〜4、比較例1)
表1に示す配合割合で、実施例1に準じて石鹸組成物供試体を製造した。
なお、実施例3についてはエチルアルコールの添加量を10重量部として脂肪酸の中和を完成した後(実施例3−1)、その後85〜95℃で約1時間混合熟成する間に、エチルアルコールの蒸留除去を行った製造例である(実施例3−2)。
実施例1と同様にして、以下の評価試験に供する供試体をそれぞれ得た。
【0041】
(試験例)
上記実施例1〜4及び比較例1について、脂肪酸の中和工程中の溶融混合物の粘度、静置後の型枠内への流し込み作業性、洗浄時の解け具合、使用感(泡立ち、老化皮膚の剥離効果、乾燥後の皮膚の状態)などの評価結果を、表1に示す。
なお、評価方法は以下のとおりである。
【0042】
(評価方法)
(1)中和中の溶融混合物の状態
製造時脂肪酸中和時の粘性状態の程度を観察した。
○ : 粘度の上昇は見られたが比較的早期に中和が完了し粘度が下がった。
△ : 粘度の上昇が著しいが流動性はあり中和が完了し粘度が下がった。
× : 粘度の上昇が著しく流動性がなくなった。
【0043】
(2)静置後の方枠内への流し込み作業性
○ : 85〜95℃で流し込み作業性は良好。
△ : 85〜95℃で流し込めるが粘度が高めで流動性がやや悪い。
× : 85〜95℃でも流動性が乏しく流し込みは十分にできなかった。
【0044】
(3)使用感
10名のモニター(25〜35才代3名、36〜45才代4名、46〜55才代3名の女性)によって、上記供試体を用い40℃のお湯を用いて手洗い、顔洗いを行い以下の項目についてアンケート調査した。最大多数の回答を評価点とした。
(4−1)洗浄時の解け具合(手洗い)
○ : 十分な硬さがあり解け崩れは見られない。
△ : 十分な硬さはあるがやや解け崩れが認められる。
× : 解け崩れが認められる。
(4−2)泡立ち(部位:手洗い、洗顔)
○ : 良く泡立ち,クリーム状の泡である。
△ : 泡立つが、泡の量がやや少ない。
× : 泡立つが泡の量が少ない。
(4−3)老化皮膚の剥離効果(手洗い)
○ :良く剥離し落ちている。
△ :やや剥離している。
× :剥離されていない。
(4−4)乾燥後の皮膚の状態(部位:手、顔)
○ :しっとりとしている。
△ :かさかさ感がある。
× :突っ張り感がある。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示したように、実施例1〜5については、中鎖脂肪酸エステルを適当量含有することによって脂肪酸の中和後の流動性が維持でき、良好なスクラブ剤配合石鹸の製造が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、水に対する溶け崩れが改良され、且つ豊富で粘調なクリーム状の泡沫の立ち、洗浄時にスクラブ剤によるマッサージ効果、スクラブ効果、光学的外観効果を発揮する、スクラブ剤を高含量で含む石鹸組成物を、効率よく製造することに利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸25〜40重量部、水溶性無機塩0.2〜3.0重量部、ポリオール15〜40重量部、中鎖脂肪酸エステル0.5〜5重量部、水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜20重量部及び水分を配合し、撹拌混合しながら前記配合物を加熱して該脂肪酸を溶融させ、次いで、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物3〜9重量部を添加して該脂肪酸を中和し、温度を75〜100℃として、含有される水分が13〜20重量部となる均一な溶融混合物を得た後、該溶融混合物を型枠内に流し込み、冷却固化させることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法。
【請求項2】
脂肪酸25〜40重量部、水溶性無機塩0.2〜3.0重量部、ポリオール15〜40重量部、中鎖脂肪酸エステル0.5〜5重量部及び水分を配合し、撹拌混合しながら前記配合物を加熱して該脂肪酸を溶融させ、次いで、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物3〜9重量部を添加して該脂肪酸を中和し、温度を75〜100℃とした後、水不溶性無機塩粉体からなるスクラブ剤2〜20重量部を配合して均一に分散させるとともに含有される水分が13〜20重量部となる均一な溶融混合物を得た後、該溶融混合物を型枠内に流し込み、冷却固化させることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、更にエチルアルコールを10重量部以下の量で上記中和中にまたは予め最初から配合し、中和後の温度75〜100℃保持中に該エチルアルコールを除去して得られる溶融混合物中の該エチルアルコールが5重量%以下となるように減量させることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとは、重量比で10〜50/90〜50で混合されていることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記スクラブ剤は、粒度が100μm以下であって、タルク、カオリン、セリサイト、酸化チタン、珪酸マグネシウム及び珪酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記ポリオールは、グリセリン、ソルビトール、グルコース及び砂糖からなる群より選ばれることを特徴とする、スクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかの項記載のスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法において、上記中鎖脂肪酸エ
ステル類は、炭素数8〜12の脂肪酸の少なくとも一種とグリセリンとのモノ、ジ、トリエステル又はこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とするスクラブ剤配合石鹸組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−239792(P2008−239792A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82083(P2007−82083)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(507099262)
【Fターム(参考)】