説明

スタチンを含有する組成物

組成物が、10重量%よりも少ない脂肪を含有する粉末である、スタチンを含有する組成物、および、食品の製造への該組成物の使用が開示される。スタチンを含有する組成物の調製方法は、スタチン生成真菌を用いて基質を発酵し、該基質を抽出する工程を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタチンを含有する組成物に関する。さらに、本発明は、食品の製造への該組成物の使用、および、該組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患は、特に、米国および西ヨーロッパ諸国において、発病および死亡の主要原因であり、発展途上国においても出現している。米国心臓協会によれば、心疾患の主なリスク要因は、年齢(65歳以上)、男性、遺伝、喫煙、高い血中コレステロールレベル(高コレステロール血症)、高血圧、運動不足、糖尿病、および肥満症である。
【0003】
明らかに、これらのリスク要因のいくつか、たとえば、年齢、性別、遺伝、または糖尿病は、変えることができない。しかしながら、喫煙、高い血中コレステロール、高血圧、運動不足、または肥満症などのリスク要因を減らす可能性のあるライフスタイルを変えることは可能である。
【0004】
上昇した低密度リポタンパクコレステロール(以下、“LDL−コレステロール”という)は、直接的に、冠状動脈心臓病の高いリスクに係わる。
【0005】
スタチンは、ヒトの血液中のLDL−コレステロールのレベルを低下させる効果を有するものとして知られている。スタチンは、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼを、コレステロール生合成における速度決定工程で阻害する。
【0006】
科学的研究から、動物およびヒトの双方において、特に、LDL血液−コレステロールおよびトリグリセリドレベル降下活性に関する、スタチンの健康的な特性が確認されている(文献:Li et al., Nutrition Research 18, 71-81 (1998); Heber et al., Am. J. Clin. Nutr. 69, 231-236 (1999))。
【0007】
ヒトにより消費される食品中におけるスタチンの存在は、LDL−コレステロールのレベル低減および冠状動脈心臓病のリスク低減に関連する。
【0008】
ヒトは、BMIが30を超えると、肥満であると考える。BMI値は、ヒトの体重を身長で割って計算される。心疾患に関して2以上のリスク要因を有するヒトは、高いBMIと組み合わされると、心疾患のリスクがより高くなる。さらに、肥満は、冠状動脈心臓病の死亡率を2−4倍に増加させるものである。
【0009】
したがって、健康的な体重を有することが必須となる。体重減少を達成し、保持するために長い期間、食事改善することが必須である。パン、ポテト、パスタ、米、果物、および野菜が健康的な食事の基本であると考えられている。食事からの脂肪は、最低限に保持されるべきであることは一般的に知られている。
【0010】
1より多いリスク要因を管理する製品を提供することが有益である。
【0011】
食品の製造用の、スタチンを含有する組成物が知られている。WO02/64809は、発酵によるスタチンの調製方法と、1以上のスタチンを含有する食品を記載する。発酵したダイズからの、有機溶媒(エタノールおよびアセトニトリル)を用いたスタチン抽出、および、その抽出物のマーガリンおよびスプレッドの調製への使用が開示されている。この方法の欠点は、スタチンの収率が低い(0.0545gスタチン/kg(エタノール抽出)および0.0978gスタチン/kg(アセトニトリル抽出))ことである。
【0012】
WO02/63976では、スタチンを含有する発酵したダイズ材料を、食品の調製用に使用している。この発酵したダイズ材料は、約20重量%のオイルを含有する。この高い脂肪含有量から、これらのタイプのスタチン含有材料は、低脂肪食事に適用できない。
【非特許文献1】Li et al., Nutrition Research 18, 71-81 (1998)
【非特許文献2】Heber et al., Am. J. Clin. Nutr. 69, 231-236 (1999)
【特許文献1】WO02/64809
【特許文献2】WO02/63976
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、食品の製造に使用可能な、スタチンを含有する組成物を提供することである。さらに、本発明の目的は、低脂肪食品の製造用に使用可能なスタチンを含有する組成物を提供することである。本発明の他の目的は、スタチンを含有する低脂肪食品を提供することである。さらなる本発明の目的は、スタチンを含有する組成物の調製方法を提供することである。
【0014】
驚くべきことに、組成物が10重量%よりも少ない脂肪を含有する粉末(flour)である、スタチンを含有する組成物によって、上記1以上の目的が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、組成物が、10重量%よりも少ない脂肪を含有する粉末であることを特徴とする、スタチンを含有する組成物に関する。好ましくは、該粉末は、5重量%よりも少ない脂肪を含有し、より好ましくは1重量%よりも少ない脂肪を含有し、さらに好ましくは本質的に脂肪を含有しない。
【0016】
本発明の目的用には、粉末は、澱粉植物材料を粉にすることにより得られた細かい粉末として定義される。粉末は、大麦、そば粉、ヒヨコマメ、ライマメ、オーツ、ピーナッツ、ポテト、ダイズ、米、およびライ麦を含有する澱粉植物材料から作られても良い。
【0017】
本発明による組成物は、スタチンを含有する。スタチンは、図1に示す構造式を有する物質として定義される。この構造式中、R1およびR2は如何なる基であってもよい。好ましいスタチンは、図1に示すものである。
【0018】
量は、特記しないかぎり、食品の全重量に対して、重量%または百万分の一重量部(ppm)、mg/kgまたはmg/gで示される。
【0019】
スタチンの量は、特記しない限り、LC−MSまたは液体クロマトグラフィ(HPLC)により定められたような、個々のスタチンの量の合計である。
【0020】
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも0.01mg/gのスタチン、より好ましくは、少なくとも0.1mg/gのスタチンを含有する。さらに好ましくは、本発明の粉末は、少なくとも1mg/gのスタチンを含有する。
【0021】
本発明によるある実施態様は、食品製造における本発明による組成物の使用に関する。
【0022】
いくつかの食品が、本発明によって調製可能であり、たとえば、スプレッド、スープ、パスタ、ヌードル、アイスクリーム、ソース、ドレッシング、スナック、シリアル、飲料、パン、ビスケット、マフィン、他のベーカリー製品、スイーツ、バー、チョコレート、デイリー製品、栄養製品、たとえば、スリミング製品またはミール代用品などである。特に、ベーカリー製品、たとえば、パンケーキ、マフィン、およびパンが本発明により調製可能である。
【0023】
本発明による食品、特にベーカリー製品は、低い脂肪含有量である。好ましくは、該食品は、10重量%よりも少ない、好ましくは5重量%よりも少ない脂肪を含有する。
【0024】
本発明による食品は、食品が消費者の一般的なニーズにより使用される場合、好ましくは、血液LDL−コレステロール低下効果を得るのに十分な量のスタチンを含有することが好ましい。
【0025】
1日あたりのスタチンの好ましい摂取量は、ここでは、5−40mg/日、好ましくは5−20mg/日、より好ましくは8−15mg/日である。さらに、1日あたりのスタチンの摂取量は、好ましくは1−5mg/日、さらに好ましくは1−2.5mg/日である。
【0026】
当業者は、所望の血中コレステロール低下効果を得るべく、食品中のスタチンの割合を調節することができるであろう。食品は、種々のサイズで使用されるので、前記割合は食品のタイプに依存するであろう。さらに、食品の消費パターン(1日あたりの給仕および数日間の分配)は食品に依存する。
【0027】
好ましくは、食品は、1回給仕あたり(per serving)、0.1−10mgのスタチン、より好ましくは1−5mgのスタチン、さらに好ましくは1−2.5mgのスタチンを含有する。
【0028】
本発明の他の実施態様は、スタチンを含有する組成物の調製方法であって、組成物が、10重量%よりも少ない脂肪を含有する粉末であり、前記方法が、基質をスタチン生成真菌で発酵し、前記基質を細かくし、前記基質を抽出し、および、抽出した基質を回収する工程を含有する工程を含有し、これによって、抽出した基質が、10重量%よりも少ない脂肪を含有するスタチン含有粉末となる方法に関する。基質は、発酵の前後で細かく粉末化されてもよく、好ましくは、粉末化は、発酵後に行われる。
【0029】
発酵した基質は、抽出剤が基質から脂肪を抽出するような、抽出剤によって抽出可能である。食品適用用に、発酵ダイズからの脂肪の抽出を、多くの有機溶媒:へキサン、アセトン、酢酸エチル、エタノールまたはこれらの混合物を用いておこなうことができる。好ましくは、抽出剤は、抽出した基質が10重量%よりも少ない脂肪、より好ましくは5重量%よりも少ない脂肪、さらに好ましくは1重量%よりも少ない脂肪を含有するように、基質から脂肪を抽出する。さらに、好ましい抽出剤は、基質に有効量のスタチンを残すものである。スタチンの有効量は、コレステロール低下に効果的であるのに十分な量である。好ましくは、抽出した基質は、抽出した基質のグラムあたり、少なくとも0.01mgのスタチンを含有し、好ましくは、抽出した基質のグラムあたり、少なくとも0.1mgのスタチンを含有し、より好ましくは、抽出した基質のグラムあたり、少なくとも1mgのスタチンを含有する。好ましくは、抽出剤は、食品グレードである。へキサンまたは超臨界COが、好ましい抽出剤である。
【0030】
基質は、スタチン生成真菌を用いて発酵可能であるか否かに依存して種々である可能性がある。さらに、基質は好ましくは、高い含有量で澱粉材料を含有する。好適な使用可能な基質は、ダイズ、大麦、そば粉、ヒヨコマメ、ライマメ、オーツ、ピーナッツ、ポテト、米、およびライ麦である。
【0031】
特に好ましい基質はダイズである。ダイズ粉末は、種々の製品、たとえば、クッキー、ペストリー、スイーツ品、ソルティースナック、たとえばナッチョチップ、調製ミール、ミート代用品、パスタ、パンケーキ、マフィン、パン、およびパン製品に使用可能である。さらに、ダイズ粉末は、蛋白質、繊維、フィトエストロゲン、サポニン、ポリフェノール、たとえばイソフラボンを、好ましくは、非グリコシル形態で含有する。血中コレステロールレベルおよび血中トリグリセリドレベルに有益な効果を有する全てのものが示される。
【0032】
食品中のダイズ蛋白質含有量は、文献:Agater et al., J. Sci. Food Agric. (1986), 37(3), 317-31に記載の方法に従って、測定可能である。
【0033】
ポリフェノールは、イソフラボンが含有される、フラボノイドを含有する。ポリフェノールは、イソフラボン、スチルベン、リグナン、コウメスタン(coumestans)、およびレゾルサイクリック酸ラクトンを含有する。イソフラボンの例は、ゲニステイン、ダイゼイン、イクオール、グリシテイン、ビオチャニンA、コウメストロール、メイタレシノール、ホルモノネチン、O−デスメチレンゴレシン、エンテロラクトン、およびエンテロジオールである。本発明による好ましいイソフラボンは、ゲニステインおよびダイゼインおよびグリシテインであり、これらはダイズに存在するものである。
【0034】
サポニンはここでは、ベータ−D-グルコピラノシドウロカン酸誘導体として誘導される。サポニンの例は、文献:Lebensmittel Lexikon,B.Behr’s Verlag GmbH&Co.Hamburg,Bd.2,L−Z−3,1993,pp.550−552に記載されているような、ソーヤサポゲノールA,B,C,DおよびE、ソーヤサポニンI,II,およびIIIである。
【0035】
好ましくは、本発明による食品は、スタチンと非グリコシル化イソフラボンを含有する。ダイズ豆およびダイズから誘導されたダイズ材料には、イソフラボンが実質的にグリコシル化形態で存在する。典型的には、約5重量%のイソフラボンが非グリコシル化形態で存在する。最も重量なグリコシル化イソフラボンは、ゲニスチン、ダイズイン、およびグリセチンである。非グリコシル化形態はそれぞれ、ゲニステイン、ダイゼインおよびグリセテインである。ゲニステイン、ダイゼインおよびグリセテインは、優位な健康的効果、たとえばエストロゲンおよび抗酸化特性を有すると報告されている。
【0036】
本発明による発酵によれば、グリコシル化イソフラボンは、相当する非グリコシル化イソフラボンに変換され、非グリコシル化イソフラボンは、より有益である。たとえば、ゲニステインおよびダイゼインの量は、非発酵ダイズと比較すると、発酵ダイズ中に増加する。
【0037】
イソフラボン濃度は、文献:Franke A.A., et al. (1998): HPLC analysis of isoflavonoids and other phenolic agents from foods and human fluids; Proceed. Soc. Exp. Biol. Med; 217 (3). 274-280に記載のHPLC方法にしたがって、測定可能である。
【0038】
スタチンは、Monascus,Aspergillus,Penicillium,Pleurotus,Pythium,Hypomyces,Paelicilomyces,Eupenicillium,およびDoratomycesを含む種々の糸状菌により生成可能であることが示されている。
【0039】
好ましくは、真菌は、Monascus真菌から、より好ましくは、Monascus ruber真菌からなる群から選択される。
【0040】
食品としては、紅麹(red Monascus fungus)(赤米)が中国では年百年も知られており、使用されている。赤米は、既に使用されており、ワインを製造する際にも食品着色剤として使用されており、漢方でも薬剤として使用されている。市場で最も入手可能な赤米は、スタチンを全く含有しないか、または、非常に少量のスタチンしか含有しないことを見出した。食品医薬局は、市場で入手可能な赤酵素米は、有効量のロバスタチンを含有しないと結論づけている(FDA,整理番号97−0441、最終決定)。
【0041】
WO99/23996は、少なくとも0.05重量%のロバスタチンを含有する赤米製品を含有する上昇した血清コレステロールおよび/またはトリグリセリドの治療用組成物を記載している。
【0042】
赤米粉末カプセルは、Pharmanex社から、Cholestinの名称で栄養補助食品として販売されている。Pharmanex社はまた、赤酵素米(Monascus purperus went)を含有するCholestinバーを販売している。
【0043】
赤米は強い赤色を有している。赤米の強い赤色は、着色剤として使用する場合には優位である。が、一方、赤米の強い赤色のために、赤米から調製された食品は着色され、添加した赤米製品の量にも依存するが、食品を、黄色、オレンジ、または赤色に着色する。赤米の食品への添加量が高ければ高いほど、食品の赤色はより強くなる。
【0044】
いくらかの食品では、赤着色は好ましくない。特に、西洋では、消費者はこれまでの色から変化した食品を使用すること渋るものである。たとえば、パン、パンケーキ、マフィン、スプレッド、たとえばマーガリン、バター、低脂肪スプレッド、またはサラダオイルは、これらの製品の色がオレンジや赤色になると、消費者には許容されないと考えられる。しかしながら、同時に、これらのタイプの製品は、血液LDL−コレステロール低下効果を得るために十分なスタチンの量を毎日摂取する優れたビヒクルであることがわれわれによって見出された。
【0045】
色が分類される場合、これらの色は、3つの主要素に分類することができる。1つは色相(色)であり、他は明度であり、3つ目は色度(彩度、たとえば鮮明な色または鈍い色)である。
【0046】
全てのヒトが他のヒトに正確に色を伝えるために、一般的な数値コードが使用される。この使用される数値コードは、L*a*b*である。色がこのシステムで表現される場合、色相はL*であり、明度および色度はそれぞれa*およびb*である。このL*a*b*は、シマズ社のUV1601分光光度計を使用して測定可能である。
【0047】
好ましくは、食品は、20よりも小さい、さらに好ましくは10よりも小さい、最も好ましくは0よりも小さい明度a*を有している。
【0048】
好ましいMonascus株は、Monascus ruber F125M1−4である。この株は、ダイズにおいて成長するとき、赤色を呈していない。
【0049】
株F125M1−4は、CBS(Centraal Bureau voor Schimmelculturen)に、2001年1月23日に、No.CBS109269として寄託されている。
【0050】
これらの寄託は、特許手続のための微生物寄託の国際認識に関するブタペスト条約の規定下、行われた。
【0051】
発酵は、WO02/064809およびWO02/063976に記載された方法に基づいて、当業者によって定めることが可能である方法で行われる。
【0052】
発酵温度が重量である可能性がある。温度は、好ましくは、10から37℃、より好ましくは20から30℃の範囲である。
【0053】
好ましくは、発酵中、媒体は、たとえば撹拌、振とう等により、空気にさらされる。エアレーションは、空気を発酵媒体に通すことにより行われても良い。好ましくは、空気は、全体的にまたは部分的に、固体状態発酵が使用される場合には、水蒸気で飽和される。これは、発酵媒体が乾燥することを避けるものである。
【0054】
スタチンのレベルは、発酵時間に依存するであろう。発酵時間はしたがって、スタチンの所望量に依存する。好ましい発酵時間は、1から50日、より好ましくは15から40日、最も好ましくは20−30日である(WO02/064809およびWO02/063976参照)。
【0055】
実施例
HPLCを用いたロバスタチンの測定
サンプルを、アセトニトリル、水、およびリン酸(1:1:0.05、v/v/v)を含有する抽出混合物を、材料に対して、5:1の比率で添加することにより調製した。通常、5gの材料を25mlの抽出混合物を用いて抽出した。サンプルを室温で1時間、インキュベートし、ついで、Ultra−Turraxを用いて均一化した。均一化後、サンプルを室温でローラーベンチにおいて一晩インキュベートした。サンプルは、10分間、11.000rpmで遠心分離し、上澄みをHPLC分析用に収集した。サンプル中のロバスタチンの量は、文献:Morovjan et al. J. chromatogr. A 763(1997)165−172の方法に従って、HPLC分離により測定した。
【0056】
前記システムは、シマズSCL−10Aシステムコントローラ、CTO−10ASカラムオーブン、LC−10ATvpポンプシステム、RID−10A屈折率検出器、SPD−M10Aダイオードアレイ検出器、およびSIL-10AD自動インジェクタからなる。ロバスタチンのクロマトグラフ測定用には、Waters Novapak C18(150X3.9mmI.D.,4μm)カラムが、25℃の温度で使用された。溶出液は、1.5ml/分の流量での、アセトニトリル−0.1%リン酸(50:50、v/v)溶液である。流しは15分間行われた。検出は、ダイオードアレイ検出器を用いて、190nmから800nmまでで行った。ロバスタチンに属するスペクトル中の全てのピークの領域の合計を測定する。標準(Mevinolin,シグマ)との比較から、ロバスタチン含有量が計算される(mg/g分析生成物で表す)。
【0057】
実施例1−8:発酵基質の調製
接種材料調製
VMA−寒天プレートに、Monascus ruberF125M1−4(CBS109269)をプレートし、30℃で3日間インキュベートした。
殺菌メスを用いて、接種調製用のVMA−寒天を小さい四角片にカットした。殺菌スパチュラを用いて、寒天のブロックを液状媒体に移動した。麦芽水を前培養用に使用した。500mlの殺菌フラスコに300mlの媒体を入れた。該フラスコを25℃で2日間、Innova400シェーカーでインキュベートした。
【0058】
発酵方法
基質、たとえば、ダイズ豆、キドニービーンズ、マングビーン、ルピナス種、ウオールナッツ、トウモロコシ、オート麦、およびピーナッツを、水道水(50℃)中、60分間浸した後、前記基質を冷たい水道水ですすいだ。ついで、基質を常温で180分間、空気乾燥した。浸した後に乾燥した基質を、フラスコあたり約50gで、シェイクフラスコに移した。シェイクフラスコをオートクレーブ(10分、120℃)によって殺菌し、十分に成長したMonascus培養物、1mlを接種し、25℃で適当な期間(2−6週間)、インキュベートした。ロバスタチン生成物は、モニターされ、十分なレベルに達した後、フラスコを一晩、80℃でインキュベーターに置くことによって低温殺菌し、その後、最終生成物が集められる。表1に、発酵3週間後の最終生成物のスタチン含有量の概要を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例9:発酵ダイズの超臨界抽出
天然固体マトリックスの超臨界抽出用に、Thar Designs社の装置とソフトウエアを使用した。この実験セットアップは図2に、概略図として示す。COポンプは、液体二酸化炭素を、一定の流量で、600バールまでの圧力で圧縮可能である。静的ミキサー中に、極性変性剤を液体二酸化炭素とともに混合してもよい。プリヒーター(図示していない)中、抽出容器に入れる前に、二酸化炭素を加熱すると、超臨界条件に達する。
【0061】
2層加熱マントルを用いて加熱した抽出容器中、超臨界二酸化炭素を、抽出するために、固体マトリックスに通す。
【0062】
抽出容器の下流では、超臨界二酸化炭素が自動背圧調節器に展開する。背圧調節器は、システムの圧力をコントロールするために、フィードバックコントロールユニットに結合している。二酸化炭素は、サイクロン分離システム中、抽出した材料(液体/固体)から分離される。二酸化炭素は、サイクロンから離れて上方に行き、抽出した材料はサイクロン中に残存した。固体マトリックスから抽出した液体は、サイクロンの底のバルブを開けることにより、実験中に回収した。
【0063】
二酸化炭素ガスは、さらなる背圧調節器にさらに展開した。このさらなる背圧調節器は、手動操作された。背圧調節器のガスクロック下流は、二酸化炭素が常温でこのシステムから離れる前に、如何程のガスがシステムを通過したかを登録する。
【0064】
方法装置は、以下の条件下で、操作するようにデザインされている。
【0065】
【表2】

【0066】
発酵ダイズ豆を、抽出前に、粉末が得られるまで、水冷却万能ミル(タイプM20、IKA,ドイツ)中で、粉砕した。
【0067】
抽出に使用したサンプルの量は、粉砕した発酵ダイズ豆、100グラムである。発酵し、粉砕したダイズ豆を、抽出容器中に入れ、残りを小さいガラスビーズ(2mm直径)で充填した。全溶媒流量は、20g・分−1であった。サイクロン分離容器において、抽出したオイルを収集した。全抽出時間は、2時間であった。
【0068】
抽出後、抽出容器を開けると、乾燥した自由に流れるダイズ粉末が得られた。添加したガラスビーズをふるいにかけることにより除去した。ダイズ粉末のアリコートを、ロバスタチンの量に関して分析した。出発材料ならびに抽出材料中の双方において、蛋白質、脂肪、水分、脂肪およびアッシュ(ash)の量を測定した。分析結果の例を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
実施例10:発酵ダイズのヘキサンを用いたソックレー抽出
比較例A:発酵ダイズのエタノールを用いたソックレー抽出
【0071】
150gの粉末化した発酵ダイズを抽出シンブルに入れた。800mlの有機溶媒を添加し、抽出を6時間行った。抽出後、抽出シンブルを装置から取り出した。抽出シンブルを空にして、得られた大豆粉末を、一定の重量になるまで、空気乾燥した。アリコートを、ロバスタチン濃度の測定用に取った。出発原料並びに抽出材料の双方において、アッシュ、蛋白質、脂肪、および水分の量を測定した。測定結果を表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
超臨界流体抽出を用いて、ならびに、ヘキサン抽出を用いて、大豆脂肪が有効に除去され、脱脂ダイズ粉末(脂肪含有量:<5重量%)が得られる。さらに、いずれの場合も、脱脂ダイズ粉末中には、十分な量のロバスタチンが存在している。エタノールは、ヘキサンまたは超臨界流体と同じようには、脂肪を除去するのに効果的ではなく、さらに、抽出粉末中のスタチンの量も少ないため、あまり適していない。
【0074】
実施例11:バナナおよびオレンジを用いた低脂肪オーツパンケーキの調製
サービングサイズ:65g
処方:
【0075】
【表5】

【0076】
調製:
大きなボウルに、ローラーで押しつぶしたオーツ、無漂白小麦粉(flour)、ダイズ粉末(flour)、およびベーキングパウダーを組み合わせる。豆乳を添加し、幾分早いストロークを用いてブレンドする。バナナおよびオレンジスライスを重ねる。0.25カップ(65g)のバターを、熱くしたひっつかないグリルまたはパンに流す。約2分間、または、表面にバブルが現れるまで調理する。パンケーキをひっくり返し、さらに1分間、または、熱が伝わるまで調理する。
【0077】
パンケーキは、たとえばメープルシロップ、アップルソース、またはフルーツスプレッドとともにサーブすることができる。
サービングサイズ65g、1サーブあたり、2.6mgのスタチン。
【0078】
実施例12:低脂肪レーズンパンの調製
処方:
【0079】
【表6】

【0080】
調製:
生地ミキサーに、全成分を混合する。生地を検査する(Proof the dough)。生地を30−60分間、20℃の温度にあげる。レーズン生地をパンのカン(bread tin)に入れる。30−60分間、190℃でパンを焼く。
サービングサイズ:40g、1サーブあたり、2.2mgのスタチン。
【0081】
実施例13:低脂肪オレンジ−バナナマフィンの調製
処方:
【0082】
【表7】

【0083】
調製:
ボウルに、乾燥成分を組み合わせる。オレンジジュース、バニラ、バナナ、蜂蜜、および卵白の半分を、ボウル中で混合し、ブレンドするまで低速度で混合する。乾燥成分を添加し、ちょうど潤いが与えられ、粉が検出されなくなるまで、2,3秒混合する。残りの卵白をあわ立て、上記混合物に入れて撹拌する。レーズンを添加する。マフィンカンにペーパーカップケーキライナーをひき、上から0.3インチ以内までカップを充填する。マフィンのトップに軽くふれて、跡が残らなくなるまで、180℃で10−24分間焼く。
【0084】
サービングサイズ:75g、1サーブあたり、6.5mgのスタチン。
スタチンを有する粉末は、部分的に全粒小麦粉および/または強力粉と薄力粉の割合が半々の粉で置換してもよく、この場合には、容易にスタチン含有量を変化させることができる。
【0085】
実施例14:低脂肪パスタの調製
【0086】
【表8】

【0087】
成分を混合してパスタを形成する。該パスタは、パスタメーカーで長いめん状のスレッドにした。該パスタを5分間調理した。サービングサイズ:80g、1サーブあたりのスタチン:1mg。80gのパスタを消費すると、5%推定血中コレステロールを低下する結果になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】異なるスタチンの構造を示す概略図である。
【図2】超臨界二酸化炭素用の実験セットアップを示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物が、10重量%よりも少ない脂肪を含有する粉末であることを特徴とする、スタチンを含有する組成物。
【請求項2】
5重量%よりも少ない脂肪を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1重量%よりも少ない脂肪を含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも0.01mg/gのスタチンを含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも0.1mg/gのスタチンを含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1mg/gのスタチンを含有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
食品製造における、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
食品がベーカリー製品である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
10重量%よりも少ない脂肪を含有することを特徴とする、スタチンを含有する食品。
【請求項10】
20より少ない、好ましくは10よりも少ない、最も好ましくは0よりも少ない色相a*値を有する、請求項9に記載の食品。
【請求項11】
マフィン、パン、パンケーキ、およびパスタからなる群から選択される、請求項9または10に記載の食品。
【請求項12】
スタチンを含有する組成物の調製方法であって、組成物が、10重量%よりも少ない脂肪を含有する粉末であり、前記方法が、
基質をスタチン生成真菌で発酵し、
前記基質を細かくし、
前記基質を抽出し、および、
抽出した基質を回収する工程を含有し、
これによって、抽出した基質が、10重量%よりも少ない脂肪を含有するスタチン含有粉末となる、方法。
【請求項13】
基質が、へキサンまたは超臨界COで抽出される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基質がダイズである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
スタチン生成真菌が、Monascus真菌である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−534708(P2007−534708A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509906(P2007−509906)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003247
【国際公開番号】WO2005/104871
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】