説明

ステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサン及びその製造方法

【課題】溶媒への溶解性に優れ、更に、密着性が向上したステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを提供すること、及び、反応時間を短縮し、ステロールの特性を低下させることなく、簡単かつ収率良く製造することができる、ステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサン製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】下記一般式(I)で表される、分子量400〜100,000のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサン。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコーンオイル、その他の油剤に対し、優れた溶解性を有し、各種分野で有用な、ステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステロールは広く生物界に分布する生体膜の重要な構成成分であり、化粧品分野、食品分野、医療分野をはじめ各種分野において広く利用されている。一例を挙げると、コレステロールは皮膚に対する親和性、浸透性に優れ、安全性も高いことから、乳化剤、コンディショニング剤、増粘剤等として化粧料に配合されている。
【0003】
これらの用途に対応させるため、溶解性や皮膚又は毛髪への密着性等のより一層の向上が要求されている。しかしながら、コレステロールは、融点は146〜150℃と高く、また結晶性も高いことから配合が難しかった。さらに各種溶媒への溶解性が低いため、経時安定性にも問題があった。
【0004】
この問題を解決し、化粧料組成物として展開する目的で、シリコーンのステロール誘導体が開発されている(特許文献1等)。他に乳化剤としての利用を目的としてさらに親水基を付与した開発例もある(特許文献2等)。
【0005】
上記特許文献1のステロール変性シリコーンは、ステロールの特性を生かすと共にシリコーン特性、すなわち生理的に不活性で、かつ無毒、温度による粘度変化が小さく、界面特性や撥水性、安定性に優れ、他の溶媒との相溶性が良い、等の特性を付与することができたが、髪や皮膚への密着性という点では充分とはいえないものであった。
【0006】
また、ステロールの水酸基を末端二重結合含有カルボン酸でエステル化し、さらにこの二重結合をSi−H基を有するシリコーンでヒドロシリル化する方法では、合成に時間がかかるだけでなく、選択するシリコーンや、末端二重結合含有カルボン酸によっては、ステロールの特性が低下する場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3086241号
【特許文献2】特開2001−342254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、溶媒への溶解性に優れ、更に、密着性が向上したステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを提供すること、及び、反応時間を短縮し、ステロールの特性を低下させることなく、簡単かつ収率良く製造することができる、ステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、下記一般式(I)で表される、分子量400〜100,000のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを提供する。
【化1】

[式中、Rは同一又は互いに異なる、炭素数1〜30のハロゲン原子置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は−OSiRである。Rは同一又は互いに異なる、炭素数1〜30のハロゲン原子置換又は非置換の一価炭化水素基である。aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、cは0〜1000の整数、dは0〜50の整数である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは、下記一般式(II)で表される有機基である。
【化2】

(式中、Rは上記と同様であり、Rは炭素数1〜20の二価の有機基である。Sterは、ステロールの水酸基の水素原子を除いた一価の残基を表す。eは0又は1である。)]
【0010】
このような本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンであれば、各種溶媒への溶解性に優れるとともに、例えば化粧料として用いた場合には、髪や皮膚への密着性にも優れたものとなるため、各種分野において、好適に用いることができる。
【0011】
また本発明は、下記一般式(III)で表されるイソシアネート基含有オルガノ(ポリ)シロキサンと、ステロールの水酸基を反応させることにより、前記本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造することを特徴とするステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンの製造方法を提供する。
【化3】

[式中、R、a、b、c、dは上記と同様である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは下記一般式(IV)で表される有機基である。
【化4】

(式中、R、R、eは上記と同様である。)]
【0012】
このような本発明の製造方法であれば、従来の製造方法に比べて合成にかかる時間を短縮でき、ステロールの特性を低下させることなく、ステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造することができる。
【0013】
さらに本発明は、下記一般式(V)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物と、ステロールの水酸基を反応させてステロール変性ケイ素化合物を合成し、更に、該ケイ素化合物中の二重結合をSi−H基を有するシリコーンと反応させることにより、前記本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造することを特徴とするステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンの製造方法を提供する。
【化5】

[式中、R、a、bは上記と同様である。RはR又はRであり、fは0〜1000の整数である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは下記一般式(IV)で表される有機基である。
【化6】

(式中、R、R、eは上記と同様である。)]
【0014】
前記本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンは、このように、Si−H基を有するシリコーンを用いたヒドロシリル化反応を適用する方法によっても製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンであれば、各種溶媒に対して優れた溶解性を示し、例えばこれを化粧料として使用した場合にも、皮膚や毛髪等への密着性を向上させることが可能となる。また、本発明の製造方法によれば、前記本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、従来のステロール変性シリコーンは、安全性や他の溶媒との相溶性が良い等の利点はあるものの、髪や皮膚への密着性が充分とはいえず、また、その製造方法も、合成に時間がかかるばかりか、場合によってはステロールの特性が低下してしまうという問題を有していた。
【0017】
そこで本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、イソシアネート基含有のシリコーン又はケイ素化合物を使用することにより、より簡単で、かつ効率良くステロールにシリコーンを付与することができること、また、それにより製造されたステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを、例えば化粧料として使用した場合、皮膚や毛髪等に対して優れた密着性を有していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
即ち、本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンは、下記一般式(I)で表され、分子量400〜100,000であることを特徴とする。
【化7】

[式中、Rは同一又は互いに異なる、炭素数1〜30のハロゲン原子置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は−OSiRである。Rは同一又は互いに異なる、炭素数1〜30のハロゲン原子置換又は非置換の一価炭化水素基である。aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、cは0〜1000の整数、dは0〜50の整数である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは、下記一般式(II)で表される有機基である。
【化8】

(式中、Rは上記と同様であり、Rは炭素数1〜20の二価の有機基である。Sterは、ステロールの水酸基の水素原子を除いた一価の残基を表す。eは0又は1である。)]
【0019】
上記一般式(I)において、Rで示される炭素数1〜30、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン原子置換炭化水素基等が例示される。
【0020】
このRは、それぞれ互いに同一であっても異なっていても良いが、メチル基又は−OSiR(Rは同一又は互いに異なる、炭素数1〜30のハロゲン原子置換又は非置換の一価炭化水素基である)であることが好ましく、Rとしては、上述のRと同様のものが好ましく挙げられるが、このとき、Rがメチル基であるとより好ましい。
【0021】
は炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の二価の有機基は、直鎖状でも、分岐構造を含んでもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基;シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;クロロメチレン基、3,3,3−トリフルオロプロピレン基等のハロゲン原子置換二価炭化水素基等が例示される。
【0022】
上記一般式(II)に示されるRは、上記一般式(I)のR同様、メチル基、又は−OSiRで示されるシロキシ基であることが好ましいが、全てメチル基であるのが最も好ましい。
【0023】
aは0〜3であるが、立体障害の影響を考慮すると、高い反応率を得るためには、1又は2、特に1であることが好ましい。bも0〜3であるが、前記と同様に0又は1であることが好ましい。cは0〜1000、dは0〜50であり、cが0〜100、dが0〜10であることが好ましい。eは0又は1である。中でも、a=1、b=0、c=0、d=0、e=0であるものが特に好ましい。
しかし本発明はこれに限られず、必要に応じ、この重合度をコントロールすることによって、固形状からペースト状、液状のステロール変性シロキサンを得ることができる。
【0024】
このような本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造する方法として、本発明は、下記一般式(III)で表されるイソシアネート基含有オルガノ(ポリ)シロキサンと、ステロールの水酸基を反応させることにより、前記ステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造することを特徴とするステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンの製造方法を提供する。
【化9】

[式中、R、a、b、c、dは上記と同様である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは下記一般式(IV)で表される有機基である。
【化10】

(式中、R、R、eは上記と同様である。)]
【0025】
また、本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造する別の方法として、本発明は、下記一般式(V)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物と、ステロールの水酸基を反応させてステロール変性ケイ素化合物を合成し、更に、該ケイ素化合物中の二重結合をSi−H基を有するシリコーンと反応させることにより、前記ステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造することを特徴とするステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンの製造方法を提供する。
【化11】

[式中、R、a、bは上記と同様である。RはR又はRであり、fは0〜1000の整数である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは下記一般式(IV)で表される有機基である。
【化12】

(式中、R、R、eは上記と同様である。)]
【0026】
本発明の方法に用いられる原料のステロールとしては、特に限定されるものではないが、ステロールの有する水酸基が、ステロイド骨格(シクロペンタノフェナントレン環)の3位、16位、又は17位、特には3位にあるものが好ましい。このようなステロールとしては、たとえばコレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、フィトステロール、エストラジオール等が挙げられる。その中でも、利用性及び生産性等を考慮すると、コレステロールが好ましい。
【0027】
上記一般式(I)で表される本発明の化合物は、例えば、上記一般式(III)で表されるイソシアネート基含有オルガノ(ポリ)シロキサンを、トリエチルアミン等のアルカリ触媒存在下(例えば、触媒濃度が上記一般式(III)の化合物に対し0.1〜10モル%になるよう添加)、トルエン等の有機溶媒存在中、変性温度80〜120度の条件で、ステロールの水酸基と反応させることによって調製することができる。
【0028】
このとき、イソシアネート基含有オルガノ(ポリ)シロキサンは、ステロールの水酸基1モルに対して、好ましくは、1.0〜2.0、更に好ましくは、1.0〜1.5モルで反応させることが好ましい。
尚、官能基の種類によっても異なるが、未反応のオルガノ(ポリ)シロキサンは、メタノール等で再沈殿を行うことによって除去することもできる。
【0029】
ステロール変性ケイ素化合物を合成する際には、ステロールの水酸基1モルに対して、上記一般式(V)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物を1.0〜2.0モル、特に1.0〜1.5モルで反応させることが好ましい。
【0030】
続いて、合成されたステロール変性ケイ素化合物中の二重結合と、Si−H基を有するシリコーンとの反応を、白金等を触媒に用いてヒドロシリル化する方法を用いて進行させることにより、本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを得ることができる。
ヒドロシリル化による反応は、従来の製造方法においても用いられていたものであるが、本発明では、このようなヒドロシリル化による反応を適用した場合にも、収率良く目的物を得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に限定されるものではない。
[実施例1]
和光純薬工業(株)社製のコレステロール39gをトルエン40gに加熱溶解させた後、トリエチルアミン0.76gを添加し、溶媒の還流下、下記一般式(A)46gを約1時間かけて滴下した。
【化13】

【0032】
その後3時間反応させ、メタノール10gを添加して反応を完結させた。溶媒を留去した後メタノールに攪拌しながら注ぎ、生じた析出物を濾別乾燥させることにより白色粉末を得た。ポリスチレン換算による重量平均分子量は、940であった。また、DSCで融点を測定したところ、反応前のコレステロールが約150℃であったのに対し、反応後は約50℃に低下した。
【0033】
得られた白色粉末を1HNMRにより測定したところ、下記の構造(B)のシロキサン含有コレステロールであることが確認された。また、IR測定により、アミド基の特性吸収帯(3350cm−1,1700cm−1,1520cm−1付近)を確認した。
尚、(A)で検出されたイソシアネート基(2274cm−1)のピークは、(B)では検出されなかった。
【化14】

[式中、Rは、下記のコレステロール残基を表す。
【化15】

(*:結合箇所)]
【0034】
1H−NMR(CDCl3)
δ(ppm)
0.1 (S, ‐Si−C
3.1 (m,‐Si‐CH‐CH‐C−)
4.5 (broad, −CH2‐N−)
【0035】
[実施例2]
タマ生化学(株)社製のフィトステロール−FKP12gをトルエン15gに加熱溶解させた後、トリエチルアミン0.23gを添加し、溶媒の還流下、上記一般式(A)18gを約1時間かけて滴下した。その後3時間反応させ、メタノール15gを添加して反応を完結させた。溶媒を留去した後メタノールに攪拌しながら注ぎ、生じた析出物を濾別乾燥することによって白色粉体を得た。ポリスチレン換算による重量平均分子量は1,200であった。また、DSCで融点を測定したところ、反応前のコレステロールが約150℃であったのに対し、反応後は約40℃に低下した。
【0036】
得られた白色粉末を1HNMRにより測定したところ、下記の構造(C)のシロキサン含有コレステロールであることが確認された。また、IR測定により、アミド基の特性吸収帯(3350cm−1,1700cm−1,1520cm−1付近)を確認した。
尚、(A)で検出されたイソシアネート基(2274cm−1)のピークは、(C)では検出されなかった。
【化16】

(式中、Rはフィトステロール残基を表す。)
【0037】
1H−NMR(CDCl3)
δ(ppm)
0.2 (S, ‐Si−C
3.1 (m,‐Si‐CH‐CH‐C−)
4.5 (broad, −CH2‐N−)
【0038】
[実施例3−1]
和光純薬工業(株)社製のコレステロール39gをトルエン40gに加熱溶解させた後、トリエチルアミン0.76gを添加し、溶媒の還流下、下記一般式(D)23gを約1時間かけて滴下した。
【化17】

【0039】
その後3時間反応させ、メタノール10gを添加して反応を完結させた。溶媒を留去した後メタノールに攪拌しながら注ぎ、生じた析出物を濾別乾燥させることにより白色粉末を得た。ポリスチレン換算による重量平均分子量は560であった。
【0040】
得られた白色粉末を1HNMRにより測定したところ、下記の構造(E)のシロキサン含有コレステロールであることが確認された。また、IR測定により、アミド基の特性吸収帯(3350cm−1,1700cm−1,1520cm−1付近)を確認した。
尚、(D)で検出されたイソシアネート基(2274cm−1)のピークは、(E)では検出されなかった。
【化18】

【0041】
1H−NMR(CDCl3)
δ(ppm)
0.3 (S, ‐Si−C
3.1 (m,‐Si‐CH‐CH‐C−)
4.5 (broad, −CH2‐N−)
5.6−6.2 (m, −Si−C=C
【0042】
[実施例3−2]
反応器に[実施例3−1]で得られた上記一般式(E)63gと下記一般式(F)153g、トルエン65g、塩化白金酸3質量%のエタノール溶液0.03gを加え、還流下5時間反応させた後、溶媒を留去しペースト状の物質を得た。ポリスチレン換算による重量平均分子量は、3,400であった。また、DSCで融点を測定したところ、反応前のコレステロールが約150℃であったのに対し、反応後は約50℃に低下した。
【化19】

【0043】
得られたペースト状物質を1HNMRにより測定したところ、下記の構造(G)のシロキサン含有コレステロールであることが確認された。また、IR測定により、アミド基の特性吸収帯(3350cm−1,1700cm−1,1520cm−1付近)を確認した。
尚、(G)でも、イソシアネート基(2274cm−1)のピークは検出されなかった。
【化20】

【0044】
1H−NMR(CDCl3)
δ(ppm)
0.4 (S, ‐Si−C
3.1 (m,‐Si‐CH‐CH‐C−)
4.5 (broad, −CH2‐N−)
【0045】
[実施例4]
和光純薬工業(株)社製のコレステロール78gをトルエン80gに加熱溶解させた後、トリエチルアミン1.52gを添加し、溶媒の還流下、下記一般式(H)46gを約1時間かけて滴下した。その後3時間反応させ、メタノール10gを添加して反応を完結させた。溶媒を留去した後メタノールに攪拌しながら注ぎ、生じた析出物を濾別乾燥させることにより白色粉末を得た。ポリスチレン換算による重量平均分子量は2,100であった。また、DSCで融点を測定したところ、反応前のコレステロールが約150℃であったのに対し、反応後は約50℃に低下した。
【化21】

【0046】
得られた白色粉末を1HNMRにより測定したところ、下記の構造(J)のシロキサン含有コレステロールであることが確認された。また、IR測定により、アミド基の特性吸収帯(3350cm−1,1700cm−1,1520cm−1付近)を確認した。
尚、(H)で検出されたイソシアネート基(2274cm−1)のピークは、(J)では検出されなかった。
【化22】

【0047】
1H−NMR(CDCl3)
δ(ppm)
0.1 (S, ‐Si−C
3.1 (m,‐Si‐CH‐CH‐C−)
4.5 (broad, −CH2‐N−)
【0048】
[溶解性試験]
上記一般式(B)、(C)、(G)及び(J)の25℃における各種溶媒に対する溶解性を下記表1に示す(実施例5〜8)。比較として、コレステロール、及びフィトステロールの溶解性試験も行った(比較例1及び2)。
【表1】

(サンプル/溶媒=1/10、 ○:透明溶解、 ×:不溶)
【0049】
以上の実施例から、本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンは、シリコーンオイル及びそのほかの溶媒に可溶となることが確認された。即ち、本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンは、各種分野で好適に用いることができることが実証されたといえる。
また、組成物中にアミド基を含んでいることにより、例えば化粧料として使用した場合、皮膚や毛髪等への密着性に優れているといえる。
【0050】
更に、本発明の製造方法により、上記のような本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを容易に得ることができ、いずれの実施例においても、得られた物質((B)、(C)、(G)、(J))で、イソシアネート基のピークは検出されなかったことから、ステロールにシリコーンを効率良く付与できること、即ち、所望のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを収率良く製造できることが実証されたといえる。
また、これにより、所望の組成物を得るまでの反応時間も、従来の方法に比べ短縮することができた。
【0051】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0052】
例えば、化粧料として用いる場合を一例として挙げたが、本発明のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンは、各種溶媒に対して優れた溶解性を有しているため、化粧品分野以外の各種分野においても、好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される、分子量400〜100,000のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサン。
【化1】

[式中、Rは同一又は互いに異なる、炭素数1〜30のハロゲン原子置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は−OSiRである。Rは同一又は互いに異なる、炭素数1〜30のハロゲン原子置換又は非置換の一価炭化水素基である。aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、cは0〜1000の整数、dは0〜50の整数である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは、下記一般式(II)で表される有機基である。
【化2】

(式中、Rは上記と同様であり、Rは炭素数1〜20の二価の有機基である。Sterは、ステロールの水酸基の水素原子を除いた一価の残基を表す。eは0又は1である。)]
【請求項2】
下記一般式(III)で表されるイソシアネート基含有オルガノ(ポリ)シロキサンと、ステロールの水酸基を反応させることにより、請求項1に記載のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造することを特徴とするステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンの製造方法。
【化3】

[式中、R、a、b、c、dは上記と同様である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは下記一般式(IV)で表される有機基である。
【化4】

(式中、R、R、eは上記と同様である。)]
【請求項3】
下記一般式(V)で表されるイソシアネート基含有ケイ素化合物と、ステロールの水酸基を反応させてステロール変性ケイ素化合物を合成し、更に、該ケイ素化合物中の二重結合をSi−H基を有するシリコーンと反応させることにより、請求項1に記載のステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンを製造することを特徴とするステロール変性オルガノ(ポリ)シロキサンの製造方法。
【化5】

[式中、R、a、bは上記と同様である。RはR又はRであり、fは0〜1000の整数である。ただし、一分子中に少なくとも1つのRを含む。Rは下記一般式(IV)で表される有機基である。
【化6】

(式中、R、R、eは上記と同様である。)]

【公開番号】特開2012−46695(P2012−46695A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192363(P2010−192363)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】