説明

ステージシステムおよびそのようなステージシステムを備えるリソグラフィ装置

【課題】ステージの変形を最小限に抑えるか望ましくは避けるべきであるということを考慮に入れると、そのような過剰作動ステージの制御は困難であるため、過剰作動ステージの性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】リソグラフィ装置向けのステージシステムは、ステージ、ステージに作用するように配置された過剰指定された数のアクチュエータ、およびこれらのアクチュエータへ電流を供給するように構成された電源を含み、これらのアクチュエータの第1のアクチュエータに関連したコイルおよびこれらのアクチュエータの第2のアクチュエータに関連したコイルに電流が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、ステージシステムおよびそのようなステージシステムを含むリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、基板上に、通常は基板のターゲット部分上に所望のパターンを与えるマシンである。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用することができる。そのような場合には、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスは、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成するために使用され得る。このパターンは、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つまたはいくつかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は、一般に基板上に与えられた放射感応性材料(レジスト)の層上へ結像することによって行われる。一般に、単一の基板は、次々とパターニングされる隣接したターゲット部分の回路網を含むことになる。従来のリソグラフィ装置は、ターゲット部分上に全パターンを一度に露光させることによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、放射ビームによってパターンを所定方向(「スキャン」方向)にスキャンし、同時に、基板をこの方向と平行または逆平行に同期してスキャンすることによって、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。基板上にパターンを刻印することによりパターニングデバイスから基板までパターンを転写することも可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置のスループット、例えばリソグラフィ装置によって一定期間に処理される基板の量に対する要求の増加によって、基板テーブルまたはパターニングデバイス(例えばマスク)テーブルなどのステージの速度および加速度を向上させることが必要になる。その上、リソグラフィ装置によって基板上に投影されるパターンの分解能および精度に関する要求が増加し、このことは、基板上に必要なディテールのレベルをもたらすことができるように、投影光学系の縮小係数の向上と組み合わせて、パターニングデバイスのサイズを増大させる傾向に形を変える。他方では、速い走査速度に対する要求は、ステージの重量をできるだけ軽く保つことになり、その一方で、ステージが高剛性を得て共振モードの発生または励起を回避するよう構成するべきことなど、そのような高剛性が、大規模なステージ構造を招く結果になりがちである。さらに、高い内部剛性を実現することができるように、高剛性を有する材料が使用され、これは、あいにく相対的に低減衰であり、結果として内部振動の整定時間が長くなる。
【0004】
[0004] 設計基準のうちいくつかをより詳細に調査して、フィードバック制御器による閉ループ制御システムの帯域幅を拡大することにより、サーボ系の外乱除去および追尾性能(整定動作)を改善することができる。ステージの内部構造の共振は常に存在するが、これによって、閉ループの帯域幅を拡大することができる範囲に厳しい制約が課せられる。この理由で、制御エンジニアは、ステージの設計中に、高帯域を与えつつこれらの共振周波数をできるだけ高くするように、機構を最適化するのにかなりの努力を注ぐ。一般に、プロセスの仕様を基に、必要最小限の帯域幅が選択される。次いで、この帯域幅より上のすべて共振を与えて機械設計が最適化される。一般に、これはアクチュエータとセンサ位置の間の堅い結合を意味し得て、比較的重い構造をもたらすことがある。堅い構造を設計するために高Eモジュール材料が使用され、元来これらは減衰が悪い。
【0005】
[0005] ステージの動的性能を改善するために、いわゆる過剰作動されたステージを使用することが好まれることがある。そのようなステージは、少なくとも1つの自由度において過剰指定される。これは、ステージが剛体のときそのような自由度における動作に厳密に必要とされるはずのものより多くのアクチュエータを設けるものと理解されたい。一例として、1方向の並進運動をもたらすステージを動作させるためには、1つのアクチュエータ(またはそれぞれの側に1つのアクチュエータ)で十分なはずである。そのような方向に作動する、より多くのアクチュエータを設けることによって、ステージの共振、ねじりモードなどの場合には、これらのアクチュエータの適当な駆動によって打ち消すことができる効果がもたらされる。過剰作動は、「剛体」の運動の制御に必要とされるものより多くのアクチュエータ(および恐らくセンサも)を設けることおよび/または駆動することと定義することができる。したがって、過剰作動ステージには、過剰指定された数のアクチュエータ、すなわち「剛体」運動を制御する手法でステージを動作させる自由度の数より多くのアクチュエータが備わっていてよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] ステージの変形を最小限に抑えるか望ましくは避けるべきであるということを考慮に入れると、そのような過剰作動ステージの制御は困難であると判明し得る。
【0007】
[0007] したがって、例えば過剰作動ステージの性能を向上させることは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 本発明の一実施形態によれば、ステージ、ステージに作用するように配置され、かつアクチュエータの自由度において過剰指定されている複数の電磁式アクチュエータ、およびアクチュエータへ電流を供給するように構成された電源を備える、リソグラフィ装置向けのステージシステムが提供され、複数のアクチュエータの第1のアクチュエータに関連したコイルおよび複数のアクチュエータの第2のアクチュエータに関連したコイルに電流が供給される。
【0009】
[0009] 本発明の別の実施形態では、放射ビームを調節するように構成されたイルミネーションシステム、放射ビームの断面内にパターンを与えてパターニングされた放射ビームを形成するように構成されたパターニングデバイスを支持するために構築されたパターニングデバイス支持体、基板を保持するように構成された基板支持体、および基板のターゲット部分上にパターニングされた放射ビームを投影するように構成された投影システムを備えるリソグラフィ装置が提供され、支持体のうち少なくとも1つは、ステージ、ステージに作用するように配置され、かつアクチュエータの自由度において過剰指定されている複数の電磁式アクチュエータ、およびアクチュエータへ電流を供給するように構成された電源を備えるステージシステムによって支持され、複数のアクチュエータの第1のアクチュエータに関連したコイルおよび複数のアクチュエータの第2のアクチュエータに関連したコイルに電流が供給される。
【0010】
[0010] 本発明の諸実施形態が、添付の概略図を参照しながら、単に例として、次に説明される。図では、同じ参照符号は同じ部品を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[0018] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射または何らかの他の適当な放射)を調節するように構成されたイルミネーションシステム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、あるパラメータに正確に従ってパターニングデバイスを位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されるパターニングデバイス支持体(例えばマスクテーブル)MTとを含む。この装置は、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、あるパラメータに正確に従って基板を位置決めするように構成された第2の位置決め装置PWに接続された基板支持体(例えばウェーハテーブル)WTも含む。この装置は、基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数のダイを含む)上にパターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば屈折性の投影レンズシステム)PSも含む。
【0012】
[0019] このイルミネーションシステムは、放射を導くか、形作るか、または制御するために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気など様々なタイプの光学部品、または他のタイプの光学部品、あるいはそれらの任意の組合せを含んでよい。
【0013】
[0020] パターニングデバイス支持体は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計、および、例えばパターニングデバイスが真空環境中で保持されるかどうかなど他の条件に左右される形でパターニングデバイスを保持する。パターニングデバイス支持体MTは、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電気、または他のクランプ技法を用いることができる。パターニングデバイス支持体MTは、例えばフレームまたはテーブルでよく、必要に応じて固定式かまたは可動式でよい。パターニングデバイス支持体MTは、パターニングデバイスが、例えば投影システムに対して確実に所望位置にあるようにすることができる。本明細書における用語「レチクル」または「マスク」のどんな使用も、より一般的な用語「パターニングデバイス」と同義とみなされ得る。
【0014】
[0021] 本明細書に使用される用語「パターニングデバイス」は、基板のターゲット部分内にパターンを生成するように、その横断面内にパターンを備えた放射ビームを与えるために使用することができるあらゆるデバイスを指すものと広義に解釈されるべきである。例えばパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含むと、放射ビームに与えられたパターンが、基板のターゲット部分内の所望のパターンと正確に一致しない可能性があることに留意されたい。一般に、放射ビームに与えられたパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイス内の特定の機能の層に対応するはずである。
【0015】
[0022] パターニングデバイスは透過性かまたは反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいて周知であり、マスクタイプとして、バイナリ、レベンソン型(Alternating)位相シフトおよびハーフトーン型(Attenuated)位相シフトなどならびに様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、入ってくる放射ビームを様々な方向に反射するように個々に傾斜させることができる小さなミラーのマトリクス配置を使用する。傾けられたミラーが、ミラーマトリクスによって反射される放射ビーム内にパターンを与える。
【0016】
[0023] 本明細書に使用される用語「投影システム」は、屈折システム、反射システム、反射屈折システム、磁気システム、電磁気システム、および静電気光学システムあるいはそれらの任意の組合せを含むあらゆるタイプの投影システムを包含し、使用される露光放射あるいは浸液の使用または真空の使用など他の要因に適切なものとして、広義に解釈されるべきである。本明細書における用語「投影レンズ」のどんな使用も、より一般的な用語「投影システム」と同義とみなされてよい。
【0017】
[0024] ここで記述されるように、装置は透過タイプ(例えば透過性マスクを使用するタイプ)である。あるいは、装置は反射タイプ(例えば上で言及されたプログラマブルミラーアレイを使用するタイプまたは反射性マスクを使用するタイプ)でもよい。
【0018】
[0025] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)またはそれ以上の基板支持体(および/または複数のパターニングデバイス支持体)を有するタイプでよい。そのような「マルチステージ」マシンでは、追加支持体が並行して使用され得るが、あるいは1つまたは複数の支持体が露光に使用されている間に、1つまたは複数の他の支持体上で準備ステップが行われ得る。
【0019】
[0026] リソグラフィ装置は、投影システムと基板の間のスペースを充填するように、基板の少なくとも一部分が比較的高屈折率を有する液体、例えば水によって包まれ得るタイプでもよい。リソグラフィ装置内の他のスペース、例えばマスクと投影システムの間にも浸液が適用されてよい。投影システムの開口数を増加させるために、液浸技術を用いることができる。本明細書に使用される用語「液浸」は、液体に基板などの構造体を沈めなければならないことを意味するのではなく、むしろ、露光の間投影システムと基板の間に液体が配置されることを意味するだけである。
【0020】
[0027] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えばこの放射源がエキシマレーザであるとき、放射源とリソグラフィ装置は別個の実体でよい。そのような例では、放射源がリソグラフィ装置の一部を形成するとはみなされず、放射ビームは、放射源SOからイルミネータILまで、例えば適当な方向づけミラーおよび/またはビーム拡大器を含むビームデリバリシステムBDを用いて通される。他の例では、例えば放射源が水銀灯であるとき、放射源はリソグラフィ装置の一体型部品でよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDも一緒に、放射システムと呼ばれてよい。
【0021】
[0028] イルミネータILは、放射ビームの角度輝度分布を調節するように構成されたアジャスタADを含んでよい。一般に、少なくともイルミネータの瞳面内輝度分布の外側および/または内側半径範囲(一般にそれぞれσ−outerおよびσ−innerと呼ばれる)は調節することができる。さらに、イルミネータILは、積分器INおよびコンデンサCOなど様々な他の構成要素を含んでよい。イルミネータは、放射ビームがその横断面内の所望の均一性および輝度分布を有するように調節するために使用されてよい。
【0022】
[0029] 放射ビームBは、パターニングデバイス支持体MT上に保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MA上に入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。放射ビームBは、パターニングデバイスMAを横切って、基板Wのターゲット部分C上にビームを集中させる投影システムPSを通過する。基板テーブルWTは、第2の位置決めデバイスPWおよび位置センサIF(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダまたは容量センサ)を用いて、例えば放射ビームBの経路内へ個別のターゲット部分Cを位置決めするように正確に移動させることができる。同様に、第1の位置決めデバイスPMおよび別の位置センサ(図1には明示されていない)は、例えばマスクライブラリからの機械的検索の後、またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために使用することができる。一般に、パターニングデバイス支持体MTの動作は、第1の位置決めデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現することができる。同様に、基板支持体WTの動作は、第2のポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合には(スキャナとは対照的に)、パターニングデバイス支持体MTがショートストロークアクチュエータのみに接続されてよく、または固定されてよい。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して整列させることができる。図示された基板アライメントマーク(けがき線アライメントマークとして既知である)は専用ターゲット部分を占めるが、ターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイが与えられる状況では、パターニングデバイスアライメントマークはダイ間に配置されてよい。
【0023】
[0030] 図示された装置は、以下のモードのうち少なくとも1つで使用され得る。
【0024】
[0031] 1.ステップモードでは、パターニングデバイス支持体MTおよび基板支持体WTは基本的に静止状態に保たれ、一方、放射ビームに与えられたパターン全体がターゲット部分C上に一度に投影される(すなわち単一の静的露光)。次いで、別のターゲット部分Cが露光され得るように、基板支持体WTがX方向および/またはY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大寸法が、単一の静的露光で結像されるターゲット部分Cの寸法を制限する。
【0025】
[0032] 2.スキャンモードでは、パターニングデバイス支持体MTと基板支持体WTが同期してスキャンされ、一方、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分C上に投影される(すなわち単一の動的露光)。パターニングデバイス支持体MTに対する基板支持体WTの速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性およびイメージ反転特性によって決定され得る。スキャンモードでは、露光フィールドの最大寸法が単一の動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向の)幅を制限するのに対して、スキャン運動の長さがターゲット部分の(スキャン方向の)高さを決定する。
【0026】
[0033] 3.別のモードでは、パターニングデバイス支持体MTがプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に保たれ、基板支持体WTが移動またはスキャンされ、その一方で放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分C上に投影される。このモードでは、一般にパルス放射源が使用され、プログラマブルパターニングデバイスは、基板支持体WTの各動作後に、またはスキャン中連続した放射パルスの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、上記で言及されたタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスク無しリソグラフィに容易に適用することができる。
【0027】
[0034] 前述の使用モードまたは全く異なった使用モードの組合せおよび/または変形形態も使用されてよい。
【0028】
[0035] 図2は、マスクテーブルまたは基板テーブルなどの支持体またはオブジェクトテーブルを位置決めするために、本発明の一実施形態によるステージで使用することができるアクチュエータを概略的に示す。アクチュエータは、磁気ヨーク15を備える第1の部分10を備える。アクチュエータの、コイル20を備える第2の部分と協働するために配置された複数の永久磁石18が、ヨークに取り付けられる。図示の装置では、電源によってコイル20に電流が供給されるとき、第1の部分と第2の部分の間でY方向に(図2のページの中へ、また図2のページから外へ)力が発生する。複数のそのようなアクチュエータがオブジェクトテーブルに取り付けられたとき、アクチュエータに供給される電流を適当に制御することによって、オブジェクトテーブルの正確な6自由度の位置決めが可能になる。
【0029】
[0036] 図3aは、パターニングデバイスを保持するためのパターニングデバイス支持体(例えばマスクテーブル)30の多分に概略化された図を示す。図3aでは上面図が示されており、すなわち、図3aの面は、焦点面またはパターンが与えられているパターニングデバイスの表面に一致する。図3aでは、スキャン方向は、示されたY方向でよい。Y方向40に沿って力を発生することができるように、パターニングデバイス支持体に2つのアクチュエータが取り付けられる。図2に関して説明したように、参照番号10は、アクチュエータの第1の部分を示す。パターニングデバイス支持体にアクチュエータの第1の部分を取り付けるのでなく、パターニングデバイス支持体へアクチュエータの第2の部分(すなわちコイル)を取り付けることも可能であり得ることに留意されたい。図3aは、両方のアクチュエータのコイルへ電流を供給するように配置された電源30をさらに示す。両アクチュエータのコイルを直列接続することによって、各コイルに確実に同一の電流が供給される。各アクチュエータが異なる電源から給電される状況と比べて、そのような配置は好都合である。各電源は、例えばオフセット電流のために不完全なものとみなし得るので、個別の電源から各アクチュエータに給電すると個別のアクチュエータによって発生された力の差をもたらすことがあるため、これは有利なことである。結果として、パターニングデバイス支持体は変形しやすくなり得る。同一電源からアクチュエータに給電することにより、電源の不完全性によって発生力に差が生じるのを防ぐことができる。
【0030】
[0037] 図3bは、オブジェクトテーブルに異なる力が作用するとき、オブジェクトテーブルに起こり得るいくつかの変形を概略的に示す。示されたオブジェクトテーブルは、Y方向に力を発生するように構成された4つのアクチュエータ(Yアクチュエータ)およびX方向に力を発生するように構成された2つのアクチュエータが備わっていると仮定される。各Yアクチュエータは、個別の電源によって電力が供給されるものと仮定され、オブジェクトテーブルに取り付けられる。そのようなオブジェクトテーブルは、望ましくはゼロデュア(zerodur:登録商標)セラミックなどの低熱膨張係数を有する材料で作られる。オブジェクトテーブルがYアクチュエータの間に配置されているので、Yアクチュエータがオブジェクトテーブルを変形させる可能性がある。これらの変形によって、オブジェクトテーブルに取り付けられた対象の位置決めに誤差が生じる可能性がある。オブジェクトテーブルが、リソグラフィ装置でパターニングデバイス(例えばレチクル)または基板を支持するために使用される場合、位置決めの誤差がオーバレイ誤差をもたらす恐れがある。
【0031】
[0038] 図3bは、起こり得るいくつかのチャック変形を示す。
Aは、Yアクチュエータの使用による直線状の変形である。
Bは、XアクチュエータおよびYアクチュエータの使用によるダイヤモンド状の変形である。
Cは、Yアクチュエータの使用による不等辺四辺形の変形である。
【0032】
[0039] 図4aは、本発明の一実施形態による第2のステージを概略的に示す。パターニングデバイス支持体に対してスキャンするY方向へ力を作用させるように4つのアクチュエータが設けられており、Y1a、Y1b、Y2a、Y2bによって示される。また、パターニングデバイス支持体に対してX方向へ力を作用させるように2つのアクチュエータX1、X2が設けられている。さらに、パターニングデバイス支持体に対して図4aの面に垂直な方向(すなわちZ方向)に力を作用させるように4つのアクチュエータZ1、Z2、Z3およびZ4が設けられている。図示の構成は、X方向に関してY方向と同様に対称である。図4aに示された実施形態では、動特性の改善が実現され得て、例えば共振周波数がより高くなり、動特性の位置依存性が低下して、結果としてより高い帯域幅が達成される。4つのYアクチュエータ(Y1a、Y1b、Y2a、Y2b)によってY方向(すなわちスキャン方向)における高加速が可能になり、このことで高スループットが可能になる。
【0033】
[0040] そのような構成において本発明の一実施形態を適用し、アクチュエータY1aおよびY1bのコイルを直列に接続して同一の電源によってそれらを給電し、また、第2の電源を使用してアクチュエータY2aおよびY2bのコイルの直列接続に電力を供給してよい。アクチュエータY1a、Y1b、Y2aおよびY2bの4つのコイルをすべて直列に接続し、それらに単一電源から給電してもよい。
【0034】
[0041] 電源の選択に関してなおいっそうの柔軟性を保つために、アクチュエータに関連したコイルを複数の個別のコイルへ細分してよい。次いで、各アクチュエータ内の対応するコイルを直列に接続して、同一の電源から給電することができる。図4bは一例を示す。概略的に示されるように、図4bは、異なるYアクチュエータのコイル配置を除けば、図4aと同じステージレイアウトを示す。見られるように、図4aのYアクチュエータY1aは、2つのアクチュエータY11とY12へさらに分割され、Y1aのアクチュエータコイルの細分化を表わす。破線によって示されるように、Y11およびY13は同一の電源によって給電され、Y12およびY14も同様である。結果として、使用される両電源間のいかなる差異にかかわらず、Y11+Y13への電力供給はY12+Y14への電力供給と一致することになる。電源が三角形50によって概略的に示されていることに留意されたい。
【0035】
[0042] 結果として、パターニングデバイス支持体の左上および右上のYアクチュエータは、左下および右下のものと同じく1つのモータとみなすことができる。そうすることによって、過剰作動または増幅器のオフセットによるパターニングデバイス支持体の変形を緩和するかまたは回避することができる。
【0036】
[0043] パターニングデバイス支持体は、Y軸のまわりで対称とみなすことができる。結果として、重心(CoG)のX座標は、Yアクチュエータに対して対称である。一般に、パターニングデバイス支持体はX軸に対して対称でなく、したがって、重心のX座標はXアクチュエータに対して対称でない。この偏差は、いわゆる利得バランスマトリクスを較正することにより補償することができる。
【0037】
[0044] 望ましくは、水平アクチュエータの垂直の中心は、実質的に重心のZ座標に位置し、したがって、この状況では、Y方向の力はいかなるRxトルクも生成しないことになる。
【0038】
[0045] 以下の仮定によって過剰作動を考慮に入れることができる。
【0039】
[0046] Rzダイナミクスを改善するためにYアクチュエータによってTrzが行われる。アクチュエータX1およびX2は、同一の設定値(Fx1=Fx2)を与えられる。
【0040】
[0047] パターニングデバイス支持体の変形を防止するために、パターニングデバイス支持体の両方のY側にFyが均一に分配される(アクチュエータY1およびY2に関してFy_left=Fy_right)。
【0041】
[0048] すべてのZアクチュエータに対してTrxおよびTryが均一に分配され、パターニングデバイスの変形を防止する。アクチュエータZ1およびZ2は、Z3およびZ4と同じくRxトルクから同一の設定値を与えられる。アクチュエータZ1およびZ4は、Z2およびZ3と同じくRyトルクから同一の設定値を与えられる。このことは以下の式をもたらす。Fz4−Fz1=Fz3−Fz2(Trx)およびFz2−Fz1=Fz3−Fz4。これらの式は次のように書くことができる。−Fz1+Fz2−Fz3+Fz4=0
【0042】
[0049] 上記の4つの制限は、10のアクチュエータおよび6自由度の間の差異を補償する。
【0043】
[0050] アクチュエータシステム部分では、1つだけのXモータ(X1+X2)、2つのYモータ(Y1およびY2)および4つのZモータが定義される。XモータおよびYモータは、アクチュエータインターフェイスにおいて分割される。
【0044】
[0051] 利得バランスマトリクスは7行と6列を有する。利得バランスマトリクスのデフォルトは、以下のように導出される(用いられた記号(距離に対応する)は図4cに見ることができる)。
【0045】
【数1】

【0046】
[0052] 利得バランスマトリクスの使用に関するさらなる情報は、2007年3月1日出願の米国特許出願第11/712555号に見ることができ、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0047】
[0053] 本発明の一実施形態の実施例が、パターニングデバイス支持体の構造に関して論じられてきた。理解されるように、本明細書の教示は、基板テーブルまたは別の支持体など他の支持体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】[0011]本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置の概略図である。
【図2】[0012]本発明の一実施形態において使用され得るアクチュエータの概略図である。
【図3a】[0013]本発明の一実施形態による第1のステージの概略図である。
【図3b】[0014]オブジェクトテーブルのいくつかの起こり得る変形モードを示す概略図である。
【図4a】[0015]本発明の一実施形態による第2のステージの概略図である。
【図4b】[0016]本発明の一実施形態による第3のステージの概略図である。
【図4c】[0017]本発明の一実施形態による第2のステージの、重心(CoG)と様々なアクチュエータの位置関係を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
前記ステージに作用するように配置され、かつアクチュエータの自由度において過剰指定されている複数の電磁式アクチュエータと、
前記アクチュエータに電流を供給するように構成された電源とを備える、リソグラフィ装置向けのステージシステムであって、
前記複数のアクチュエータの第1のアクチュエータに関連したコイルおよび前記複数のアクチュエータの第2のアクチュエータに関連したコイルに前記電流が供給される、
ステージシステム。
【請求項2】
放射ビームを調節するように構成されたイルミネーションシステムと、
前記放射ビームの断面内にパターンを与えてパターニングされた放射ビームを形成するように構成されたパターニングデバイスを支持するために構築されたパターニングデバイス支持体と、
基板を保持するように構成された基板支持体と、
前記基板のターゲット部分上に前記パターニングされた放射ビームを投影するように構成された投影システムと、
を備えるリソグラフィ装置であって、
前記支持体のうち少なくとも1つが、
ステージ、
前記ステージに作用するように配置され、かつアクチュエータの自由度において過剰指定されている複数の電磁式アクチュエータ、および
前記アクチュエータに電流を供給するように構成された電源を備えたステージシステムに支持され、
前記複数のアクチュエータの第1のアクチュエータに関連したコイルおよび前記複数のアクチュエータの第2のアクチュエータに関連したコイルに前記電流が供給される、
リソグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公開番号】特開2008−300828(P2008−300828A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−134920(P2008−134920)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】