説明

ステータコア及びモータ

【課題】3スロットのステータコアにおいて、巻線処理が容易にできるようにする。
【解決手段】同一形状の3つの分割コア31を連結することにより構成されるステータコア21である。前記分割コア31は、コアバック部32と、前記コアバック部32の内面から径方向に突出するティース基部33と、前記ティース基部33の先端部分から周方向に張り出すティース張出部34とを備える。前記コアバック部32の内面は、前記ティース基部33の基端部分から前記ティース基部33と略直交する方向に延びる直交面部41を含む。前記直交面部41を含む仮想平面Pに対し、前記ティース基部33と平行に前記各ティース張出部34を投影した場合に、その先端が投影される投影位置44よりも外側に前記直交面部41が延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速回転に適したステータコア及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
高速回転に適したステータコアとして、3スロットのステータコアが知られている。そのようなステータコアとしては、図9に示すような一体型のステータコア100が一般に用いられている。同図中、符号101はコアバック部、102はティース部である。コイルはティース部102ごとに設けられ、隣接するティース部102の間に、コイルの導電線を収容するスロット103が形成されている。
【0003】
図10に示すように、コイルは、ティース部102に絶縁性のインシュレータ104を介して導電線105を巻き付けることによって形成される。導電線105の巻き付けには専用の巻線機が用いられる。巻線機には、先端から導電線105を送り出すノズル106が備えられていて、そのノズル106がティース部102の周りを所定の軌道で周回することにより、導電線105がティース部102に巻き付けられる。各コイルから導出される一対の導電線端末は、それぞれ所定の端子等に接続され、各コイルはその端子を介して外部の電源等と電気的に接続される。
【0004】
本発明に関し、巻線溝の磁極端面と、この磁極端面から延長される他端面をほぼ直角とした6スロットのモータコア(ステータコア)が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、スロットのコアバックに面する辺が固定子鉄心(ステータコア)の歯に面する辺に垂直に設けられている6スロットの固定子鉄心が開示されている(特許文献2)。その実施例の1つとして、固定子鉄心の歯の数と同じ数の辺を有し、外形が断面多角形状の固定子鉄心が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭50−64905号公報
【特許文献2】特開平8−111968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2のような、スロット数の多いステータコアの場合には、個々のティース部に割り当てられる中心角が小さくなる分、ティース部の周方向側の大きさは相対的に小さくなる。そのため、巻線処理の際には、巻線機のノズルを比較的容易にスロットの奥方まで入れ込むことができる。従って、スロット数の多いステータコアでは巻線処理に際し、特に際だった困難性はない。特許文献1,2では、巻線処理を容易にするためではなく、導電線を高密度に巻き付けるためにスロットの形状が工夫されている。
【0008】
それに対し、3スロットのステータコアの場合、図10に示したように、個々のティース部102に割り当てられる中心角は120度であり、1つのティース部102の周方向側の大きさは非常に大きくなっている。そのため、ティース部102の周りにノズル106を周回させるためには、ステータコア100の内側にノズル106を入れ込んで、ステータコア100の軸方向だけでなく周方向にもノズル106の先端を大きく動かす必要がある。その結果、ノズル106の周回軌道が複雑になるため、巻線機が複雑化し、巻線処理にも時間を要している。
【0009】
しかも、同図に示すように、ノズル106の先端をスロット103の奥まで入れ込んでも、ティース部102の先端側に導電線105が引っ掛かるだけで、導電線105をティース部102の基端側に巻き付けることができない。その結果、導電線105はティース部102の先端側に偏って巻き付けられるため、巻線処理した後に導電線105をティース部102の基端側に押し込む等の処理が必要になる。
【0010】
そこで、本発明の主たる目的は、3スロットのステータコアにおいて、巻線処理を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のステータコアは、同一形状の3つの分割コアを連結することにより構成され、回転自在に支持されるロータの周囲を囲むステータコアである。前記分割コアは、周方向側の側端が互いに連結されることにより筒形状になるコアバック部と、前記ロータ側に面する前記コアバック部の内面から径方向に突出するティース基部と、前記ティース基部の先端部分の両側のそれぞれから周方向に張り出す一対のティース張出部とを備える。
【0012】
前記コアバック部の内面は、前記ティース基部の基端部分の両側のそれぞれから前記ティース基部と略直交する方向に延びる一対の直交面部を含む。そして、前記直交面部を含む仮想平面に対し、前記ティース基部と平行に前記各ティース張出部を投影した場合に、前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置よりも外側に前記直交面部が延びている。
【0013】
係る構成のステータコアによれば、まず、同一形状の3つの分割コアを連結することにより構成されているので、分割コアごとに巻線処理を行うことができる。周りが開放されたティース基部に導電線を巻き付けることができるので、巻線処理が容易にできる。
【0014】
そして、ティース基部の基端部分から略直交する方向に延びる直交面部を含む仮想平面を設定し、その仮想平面に対してティース基部と平行にティース張出部を投影した場合には、ティース基部の先端部分から周方向に張り出すティース張出部の先端が仮想平面に投影される投影位置よりも直交面部の方が外側に延びている。
【0015】
つまり、ティース張出部よりもコアバック部の直交面部の方が周方向側に突出しているので、巻線機のノズルをティース基部と平行に保持したままでも、ティース張出部に接触することなく、ノズルの先端をコアバック部の直交面部と接する位置まで入れ込むことができる。
【0016】
従って、ノズルの動きも、例えば、単にノズルをティース基部と平行に保持してティース基部の周りを周回させるだけでよく、最小限で済む。従って、複雑なノズルの動きが設定できる巻線機を用いる必要がなくなり、巻線処理設備を簡略化できる。巻線処理時間も短縮されるので、生産性も向上する。更に、ティース基部の基端部分から先端部分まで同じように導電線を巻き付けることができ、導電線がティース基部の先端側に偏ることもなくなるため、導電線を押し込む等の処理も不要になる。
【0017】
例えば、前記分割コアが、当該分割コアの表面に設けられるインシュレータを含む場合には、前記インシュレータが設けられている前記コアバック部の前記直交面部を含む仮想平面に対し、前記ティース基部と平行に、前記インシュレータが設けられている前記各ティース張出部を投影した場合に、前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置よりも前記直交面部が外側に延びているようにすればよい。
【0018】
通常、ステータコアとコイルとの間には絶縁性を確保するためにインシュレータが設けられる。従って、そのような場合には、インシュレータの設けられたティース張出部の先端の投影位置より直交面部が外側に延びているようにすればよい。
【0019】
そうすることで、インシュレータの設けられた分割コアに対しても容易に巻線処理が行うことができる。
【0020】
例えば、前記コアバック部の内面が、更に、前記各直交面部の延出端に連続して周方向に曲がる屈曲面部を含むようにするのが好ましい。
【0021】
そうすれば、コアバック部の長さを相対的に短くすることができ、材料コストや磁気抵抗の面で有利である。
【0022】
例えば、前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置から前記各直交面部の延出端までの距離は、前記ティース基部に巻き付けられる導電線の線径よりも2〜3mm大きい値の範囲内に設定するのが好ましい。
【0023】
一般に、ノズルの外径は導電線の線径よりも2〜3mm大きく設けられているので、投影位置から延出端までの距離を上述した範囲内に設定することで、ノズルをティース基部と平行に保持したままで、ノズルがティース張出部に接触することなく、ノズルの先端をコアバック部の直交面部と接する位置まで入れ込むことができる。
【0024】
例えば、前記コアバック部の外面は、内面の前記直交面部と略平行に形成するのが好ましい。
【0025】
コアバック部では、その内面側から離れるほど磁束密度が相対的に低くなるので、外面を内面の直交面部と略平行に形成するのが軽量化や材料コストの面で有利だからである。
【0026】
例えば、前記直交面部における前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置から前記各直交面部の延出端までの距離よりも、前記分割コアが連結された状態において隣接する2つの前記ティース張出部の先端間に形成される隙間の距離の方が小さく設定されているようにするとよい。
【0027】
従来の一体型のステータコアでは、ノズルを入れ込むため、隣接するティース張出部の先端間に、ある程度の隙間を確保しておく必要がある。それに対し、ここでのステータコアは、分割コアごとに巻線処理できるのでその必要はない。隣接するティース張出部の先端どうしを近接させると、コギングが抑制されて磁気的に滑らかに切り替わるため、モータの駆動時に発生する騒音や振動を軽減することができる。
【0028】
例えば、ステータコアに回転軸方向に貫通する締結孔を形成する場合には、前記コアバック部の外面側における前記ティース基部と径方向に対向する部分に形成するのが好ましい。
【0029】
コアバック部に締結孔を形成することで磁気抵抗が増加する。しかしながら、ティース基部の基端部分から両側に分かれて磁束が分布するため、その分かれ目では磁束密度が低くなる。従って、その分かれ目に締結孔を形成することで、磁気抵抗の増加による影響が少なくなり、磁気損失を抑えることができる。
【0030】
このようなステータコアを備えるモータであれば、生産性やモータ性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、巻線処理が容易にできる3スロットのステータコア等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態のモータを適用した掃除機を示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態のモータを示す概略断面図である。
【図3】分割コアの外観を示す概略斜視図である。
【図4】ステータコアの概略平面図である。
【図5】巻線処理を説明するための概略図である。(a)は、(b)の矢印X方向から見た図である。
【図6】分割コアの寸法を説明するための図である。
【図7】インシュレータを含む分割コアの寸法を説明するための図である。
【図8】ステータコアの変形例を示す概略平面図である。
【図9】従来の3スロットのステータコアを示す概略斜視図である。
【図10】従来の巻線処理を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0034】
図1に、本発明に係るモータ1が用いられた掃除機を示す。この掃除機では、ダストを吸い込む吸引部2と、吸い込んだダストを収容する収容部3とが一体に設けられている。図示はしないが吸引部2にはダストを掻き上げるブラシ付ローラが回転自在に支持されている。モータ1は、吸引部2の内部に設けられ、吸引力を発生させるファンやブラシ付ローラを回転駆動する。
【0035】
図2に、モータ1の詳細を示す。このモータ1は、ブラシレスのインナーロータ型モータである。モータ1には、シャフト11やロータ12、ステータ13、第1軸受枠14、第2軸受枠15などが備えられている。なお、以下の説明では、便宜上、図2においてシャフト11の中心(回転軸A)が延びる方向を軸方向、シャフト11の周りの方向を周方向、軸方向に直交する方向を径方向ともいう。
【0036】
シャフト11の両端部は、それぞれモータ1から突出している。その一方の端部にはファン4が固定され、他方の端部にはベルト等を介してブラシ付ローラを回転駆動する駆動リング5が固定されている。ファン4は、天面中央に吸気口6aが開口したカップ状のファンカバー6によって覆われている。
【0037】
シャフト11の中間部分には、円筒状のロータ12が固定されている。ロータ12はロータコアや磁石などで構成されている(図示せず)。磁石はロータ12の外周部分に設けられ、その磁極は円周方向にS極とN極とが交互に配置されている。
【0038】
シャフト11は、第1ベアリング16及び第2ベアリング17により、回転軸Aを中心に回転自在に支持されている。シャフト11のファン4側を支持する第1ベアリング16は第1軸受枠14に支持されており、シャフト11の駆動リング5側を支持する第2ベアリング17は第2軸受枠15に支持されている。第1軸受枠14及び第2軸受枠15は、軸方向に対向配置され、間にステータ13を挟み込んだ状態でボルト18により締結固定されている。
【0039】
第1軸受枠14及び第2軸受枠15には、いずれも軸方向に開口する通風窓14a,15aが形成されている。モータ1の回転駆動時には、吸気口6aから空気が吸い込まれ、その空気が通風窓14a,15aを通じてロータ12やステータ13の近傍を流れた後、通風窓15aから駆動リング5の方向へ吹き出される。
【0040】
ロータ12の周囲には僅かな隙間を隔てて筒状のステータ13が設けられている。ステータ13には、ステータコア21やインシュレータ22、コイル23などが設けられている。
【0041】
図3,図4に示すように、ステータコア21は、同一形状の3つの分割コア31を連結することによって構成されている。分割コア31は複数の金属板を軸方向に積層して形成されている。分割コア31には、コアバック部32と、ティース基部33と、一対のティース張出部34とが備えられている。
【0042】
コアバック部32は、矩形壁状の主壁32aと、主壁32aの周方向側に配置される両側端のそれぞれに連なり、周方向側に曲がる一対の屈曲壁32bと、両屈曲壁32bのそれぞれに連なって直線状に延びる一対の連結壁32cとを有している。ここで好適な例として、断面方向から見た場合、連結壁32cの長さAは、主壁32aの長さMの約半分とし、2つの連結壁32cが連なった場合には主壁32aと略同じ長さとする。
【0043】
一方の連結壁32cの周方向側の縁部には、軸方向に延びる三角溝部35が形成されている。他方の連結壁32cの周方向側の縁部には、軸方向に延びる三角突起部36が形成されている。各分割コア31のコアバック部32の三角突起部36は、隣り合う分割コア31のコアバック部32の三角溝部35にそれぞれ嵌合される。そうして、分割コア31どうしが溶接等の処理によって互いに連結されることにより、横断面が略三角形状あるいは略六角形状をした筒形状のステータコア21が構成されている。
【0044】
主壁32aの外面側におけるティース基部33と径方向に対向する部分には、軸方向に貫通する締結孔37が形成されている。この締結孔37に通されたボルト18により、第1軸受枠14及び第2軸受枠15が固定される。
【0045】
ティース基部33は、ロータ12側に面する主壁32aの内面から径方向に突出している。ティース基部33は、分割コア31の軸方向側の一端から軸方向に延びて他端まで形成されている。ティース張出部34は、それぞれティース基部33の先端部分の両側のそれぞれから周方向に湾曲して張り出している。ティース張出部34も分割コア31の軸方向側の一端から軸方向に延びて他端まで形成されている。
【0046】
インシュレータ22は、コアバック部32等、分割コア31の表面に設けられる絶縁性の合成樹脂部材である。インシュレータ22の形態は、モールド成形によって分割コア31と一体に設けられる場合や、一対の別部材で構成され、分割コア31に対してその軸方向から突き合わせて装着される場合などがある。
【0047】
コイル23は、インシュレータ22を介してティース基部33に導電線23aを所定回数巻き付けることによって形成されている。コイル23は分割コア31ごとに形成され、このモータ1には3つのコイル23が設けられている。導電線23aには、例えば、0.5〜1mm程度の線径のものが使用される。
【0048】
その巻線処理は、図5に示すように、分割コア31ごとに専用の巻線機を用いて行われる。巻線機には円管状のノズル51が備えられていて、そのノズル51は、変位方向や変位角度等を予め設定することにより、所定の軌跡で動かすことができる。ノズル51の先端には、導電線23aを送り出す送出口51aが設けられている。そして、分割コア31や導電線23aの先端部分が固定された状態で、ノズル51は、その送出口51aから導電線23aを送り出しながら、例えば、同図に矢印で示すように、所定の軌跡でインシュレータ22に覆われたティース基部33の周りを周回する。
【0049】
そしてこの巻線処理の際に、導電線23aを巻き付け易くするために、コアバック部32等は所定の寸法に設計されている。
【0050】
具体的には、図6に示すように、コアバック部32の内面には、ティース基部33の基端部分の両側のそれぞれからティース基部33と略直交する方向に延びる平面状の一対の直交面部41と、これら直交面部41のそれぞれの延出端41aに連続して周方向に曲がる曲面状の屈曲面部42と、屈曲面部42に連続して周方向に延びる平面状の連結面部43とが形成されている。本実施形態では、直交面部41は主壁32aの内面に相当し、屈曲面部42は屈曲壁32bの内面に相当し、連結面部43は連結壁32cの内面に相当する。本実施形態のコアバック部32は壁状であるため、その外面は内面と略平行に形成されている。ただし、本実施形態では、連結壁32cの外面は径方向外側に僅かに脹らむ断面劣弧状に形成されている。
【0051】
そして、直交面部41がティース張出部34よりも周方向側に突出する寸法に設計されている。詳しくは、同図に示すように、直交面部41を含む仮想平面Pを設定する。その仮想平面Pに対し、ティース基部33と平行に(仮想平面Pに直交する方向から)ティース張出部34を投影した場合に、ティース張出部34の先端が仮想平面Pに投影される投影位置44よりも直交面部41の延出端41a(屈曲面部42との接続部位)の方がティース基部33の基端から離れて外側に位置している(投影位置44から延出端41aまでの距離を第1距離L1という)。
【0052】
換言すれば、軸方向から見て、ティース基部33の中心線Sからティース張出部34の先端までの距離W1よりもティース基部33の中心線Sから延出端41aまでの距離W2の方が大きく設計されている。
【0053】
更に、図7に示すように、分割コア31にインシュレータ22が設けられ、コアバック部32やティース基部33、ティース張出部34の各表面がインシュレータ22で覆われている状態においても、直交面部41はティース張出部34よりも周方向側に突出する寸法に設計されている。この状態において、投影位置44から延出端41aまでの距離(第2距離L2ともいう)は1〜5mmの範囲で設計するのが好ましく、2.5〜4mmの範囲がより好ましい。
【0054】
導電線23aの線径は0.5〜1mm程度であり、ノズル51の外径は、それよりも大きく、一般に導電線23aの線径よりも2〜3mm大きくなっているからである。従って、導電線23aの線径に2〜3mmを加算した大きさの2.5〜4mmの値の範囲内であれば、多くのノズル51に適合するため、汎用性に優れる。
【0055】
なおこの場合、インシュレータ22が設けられているために、軸方向から見たティース基部33の中心線Sからティース張出部34の先端までの距離W1’やティース基部33の中心線Sから延出端41aまでの距離W2’は、先の距離W1や距離W2と同じか僅かに異なっている(通常は、L2<L1の関係にある)。
【0056】
このように、第2距離L2をノズル51の外径よりも大きくすることで、ノズル51をティース基部33と平行に保持したままで、インシュレータ22の設けられたティース張出部34に接触することなく、ノズル51の先端をコアバック部32の直交面部41と接する位置まで入れ込むことができる。
【0057】
従って、ノズル51をティース基部33の基端部分から先端部分まで同じように導電線23aを巻き付けることができる。導電線23aがティース基部33の先端側に偏ることもなくなるため、導電線23aを押し込む等の処理も不要になる。
【0058】
また、ノズル51の動きも単にティース基部33の周りを周回させながら出し入れするだけでよく、ノズル51の動線も最小限で済む。複雑なノズル51の動きが設定できる巻線機を用いる必要がなくなり、巻線処理設備を簡略化できる。巻線処理時間も短縮されるので、生産性も向上する。
【0059】
更に、本実施形態のステータコア21では、第1距離L1や第2距離L2よりも、図4に示すように、分割コア31が連結された状態において隣接する2つのティース張出部34の先端間に形成される隙間の距離(ティース間距離L3)の方が小さく設定されている。
【0060】
このように、隣接するティース張出部34の先端どうしを近接させると、コギングが抑制されて磁気的に滑らかに切り替わるため、モータ1の駆動時に発生する騒音や振動を軽減することができる。ティース間距離L3としては、例えば、1mm以下に設定することができる。
【0061】
なお、本発明にかかるステータコア21等は、前記の実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0062】
例えば、コアバック部32の外面側の断面形状は、略三角形状や多角形状、円形状等であってもよい。ただし、コアバック部32では、その内面側から離れるほど磁束密度が相対的に低くなることを考慮すると、上述した実施形態のように、外面が内面と略平行に形成されている略六角形状にする方が効率的である。また、軽量化や材料コストの面でも好ましい。
【0063】
また、分割コア31に締結孔37を設ける必要がある場合には、上述した実施形態のように、コアバック部32の外面側におけるティース基部33と径方向に対向する部分に締結孔37を設けるのが好ましい。コアバック部32に締結孔37を形成することで磁気抵抗が増加する。しかしながら、ティース基部33の基端部分から両側に分かれて磁束が分布するので、その分かれ目では磁束密度が低くなる。従って、その分かれ目に締結孔37を形成することで、磁気抵抗の増加による影響が少なくなり、磁気損失を抑えることができる。
【0064】
尤も、それに限定されることはなく、例えば図8に示すように、分割コア31の連結箇所(コアバックにおける連結壁32cの周方向側の端部)に締結孔37を設けることもできる。
【0065】
また、上述の実施形態のインシュレータ22においては、モールド成形によって分割コア31と一体に設けられる場合や、一対の別部材で構成され、分割コア31に対してその軸方向から突き合わせて装着される方法で説明した。しかし、インシュレータは、紙製やポリエステル製の絶縁シートを用いる方法や、絶縁塗料を分割コアに塗布する方法で設けてあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
掃除機だけでなくジェットタオルなど、低トルク高速回転が求められる駆動用モータに利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 モータ
11 シャフト
12 ロータ
13 ステータ
21 ステータコア
22 インシュレータ
23 コイル
23a 導電線
31 分割コア
32 コアバック部
32a 主壁
32b 屈曲壁
32c 連結壁
33 ティース基部
34 ティース張出部
37 締結孔
41 直交面部
41a 延出端
42 屈曲面部
43 連結面部
44 投影位置
51 ノズル
P 仮想平面
A 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状の3つの分割コアを連結することにより構成され、回転自在に支持されるロータの周囲を囲むステータコアであって、
前記分割コアは、
周方向側の側端が互いに連結されることにより筒形状になるコアバック部と、
前記ロータ側に面する前記コアバック部の内面から径方向に突出するティース基部と、
前記ティース基部の先端部分の両側のそれぞれから周方向に張り出す一対のティース張出部と、
を備え、
前記コアバック部の内面は、前記ティース基部の基端部分の両側のそれぞれから前記ティース基部と略直交する方向に延びる一対の直交面部を含み、
前記直交面部を含む仮想平面に対し、前記ティース基部と平行に前記各ティース張出部を投影した場合に、前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置よりも外側に前記直交面部が延びているステータコア。
【請求項2】
請求項1に記載のステータコアにおいて、
前記分割コアは、当該分割コアの表面に設けられるインシュレータを含み、
前記インシュレータが設けられている前記コアバック部の前記直交面部を含む仮想平面に対し、前記ティース基部と平行に、前記インシュレータが設けられている前記各ティース張出部を投影した場合に、前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置よりも前記直交面部が外側に延びているステータコア。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のステータコアにおいて、
前記コアバック部の内面が、更に、前記各直交面部の延出端に連続して周方向に曲がる屈曲面部を含むステータコア。
【請求項4】
請求項3に記載のステータコアにおいて、
前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置から前記各直交面部の延出端までの距離が、前記ティース基部に巻き付けられる導電線の線径よりも2〜3mm大きい値の範囲内に設定されているステータコア。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のステータコアにおいて、
前記コアバック部の外面が内面の前記直交面部と略平行に形成されているステータコア。
【請求項6】
請求項3〜請求項6のいずれか1つに記載のステータコアにおいて、
前記直交面部における前記各ティース張出部の先端が投影される投影位置から前記各直交面部の延出端までの距離よりも、前記分割コアが連結された状態において隣接する2つの前記ティース張出部の先端間に形成される隙間の距離の方が小さく設定されているステータコア。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のステータコアにおいて、
前記コアバック部の外面側における前記ティース基部と径方向に対向する部分に、回転軸方向に貫通する締結孔が形成されているステータコア。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のステータコアを備えるモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−120346(P2012−120346A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268428(P2010−268428)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(398061810)日本電産テクノモータホールディングス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】