ストークスイッチ装置
【課題】接点不良がなく長寿命化に好適なストークスイッチ装置を提供する。
【解決手段】操作レバー1を互いに略直交する第1および第2の操作面のいずれか一方の面内で揺動操作し、それに伴って第1または第2の移動体6,7が所定方向へ駆動されると、各移動体6,7に保持された第1および第2の永久磁石17,18の位置に応じて電気抵抗が変化するように、回路基板5に第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサ19,20を配置することによって、操作レバー1の操作位置が検出されるように構成した。
【解決手段】操作レバー1を互いに略直交する第1および第2の操作面のいずれか一方の面内で揺動操作し、それに伴って第1または第2の移動体6,7が所定方向へ駆動されると、各移動体6,7に保持された第1および第2の永久磁石17,18の位置に応じて電気抵抗が変化するように、回路基板5に第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサ19,20を配置することによって、操作レバー1の操作位置が検出されるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングホイールの近傍に装備されてワイパーやターンシグナル等のスイッチング操作に用いられるストークスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のストークスイッチ装置は、通常、ステアリングコラム等に固定された筐体の左右両側に一対配設されてコンビネーションスイッチを構成しており、各ストークスイッチ装置を適宜方向へ揺動操作することによって前照灯のビーム切換えやターンシグナル、ワイパー等のスイッチング操作が可能である。例えば、操作レバーを略上下方向へ揺動操作してターンシグナル操作を行うストークスイッチ装置の場合、その操作レバーを略前後方向へ揺動操作することによって前照灯のビーム切換え(ロービームとハイビームの切換え)操作やパッシング操作が行えるようになっている。
【0003】
このようなストークスイッチ装置の一般的な構成について説明すると、操作レバーの基部はレバー支持体(ホルダ)に回動可能に連結されており、このレバー支持体に対して操作レバーは所定の操作面(第1の操作面)内で揺動可能となっている。また、レバー支持体はステータ部材であるハウジング(第1,第2ケース)に回動可能に連結されており、前記第1の操作面と略直交する別の操作面(第2の操作面)内で操作レバーおよびレバー支持体が一体的に揺動可能となっている。つまり、レバー支持体に対する操作レバーの回動軸と、ハウジングに対する操作レバーおよびレバー支持体の回動軸とが略直交させてあり、操作レバーが略直交する2方向へ揺動操作可能となっている。ハウジングには前記第2の操作面に対して略平行に延在する回路基板が固定されており、この回路基板には二組の接点パターンが形成されている。また、回路基板上に一対の移動体(摺動子受体)がスライド可能に配置されており、これら移動体にはそれぞれ摺動子が取り付けられている。そして、操作レバーが第1または第2の操作面内で揺動操作されると、いずれか一方の移動体が駆動されて回路基板に沿ってスライド移動するため、回路基板に対する移動体の位置変化によって接点の切換え動作が行えるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−6494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のストークスイッチ装置では、移動体に取り付けられた摺動子が回路基板の接点パターン上を摺動することで接点の切換え動作が行われるようになっているため、操作レバーの度重なる揺動操作によって接点が経年的に摩耗したり、接点の酸化や硫化によって導通不良を生じる虞があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、接点不良がなく長寿命化に好適なストークスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のストークスイッチ装置は、操作レバーと、この操作レバーを第1の操作面内で揺動可能に支持するレバー支持体と、このレバー支持体を介して前記操作レバーを前記第1の操作面と略直交する第2の操作面内で揺動可能に支持するハウジングと、前記第2の操作面に沿って略平行に配設された回路基板と、この回路基板に実装された第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサと、前記操作レバーの前記第1の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第1の移動体と、この第1の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第1の永久磁石と、前記操作レバーの前記第2の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第2の移動体と、この第2の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第2の永久磁石とを備え、前記回路基板に、前記第1の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第1の巨大磁気抵抗効果センサを配置すると共に、前記第2の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第2の巨大磁気抵抗効果センサを配置する構成とした。
【0007】
このように構成されたストークスイッチ装置では、操作レバーを揺動操作して第1または第2の移動体が駆動されると、その移動体に保持された第1または第2の永久磁石の位置に応じて外部磁界が変化し、第1または第2の巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗が変化するため、その電気抵抗に基づいて操作レバーの操作位置を検出することにより、操作レバーのスイッチ切換えを行うことができ、したがって、接点の摩耗や酸化等の接点不良がなく長寿命化に好適なストークスイッチ装置を提供することができる。
【0008】
なお、第1および第2の永久磁石の移動距離に対する第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗の変化率が小さいと、ストークスイッチ装置の設計上の自由度、すなわち操作レバーのスイッチ切換え角度等の設計上の自由度を大きくできるという観点から、第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサの中心部の位置が第1および第2の永久磁石の中心位置の移動経路からずれていることが望ましい。逆に言うと、第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサの中心部の位置が第1および第2の永久磁石の中心位置の移動経路上に位置していると、第1および第2の永久磁石の移動距離に対する巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗の変化率が大きくなり、操作レバーを僅かな角度で揺動させただけでスイッチのオン・オフが切換えられてしまうので、ストークスイッチ装置の設計上の自由度が小さくなってしまう。
【0009】
上記の構成において、第1の永久磁石と第2の永久磁石の形状は特に限定されないが、これら第1および第2の永久磁石とが同一形状に形成されていると、部品の共通化を図り組立作業も簡単になるため好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のストークスイッチ装置は、操作レバーを互いに略直交する第1および第2の操作面のいずれか一方の面内で揺動操作し、それに伴って第1または第2の移動体が所定方向へ駆動されると、その移動体に保持された永久磁石による外部磁界が変化し、第1または第2の巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗が変化するため、その電気抵抗に基づいて操作レバーの操作位置を検出することができ、したがって、接点の摩耗や酸化等の接点不良がなく長寿命化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の分解斜視図、図2は本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の底面図、図3は図2に示すストークスイッチ装置から回路基板を取り除いた底面図、図4は本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の断面図、図5は図4に示す操作レバーを第1の操作面内で揺動操作したときの第1の移動体の動きを示す断面図、図6は図5に対応する底面図、図7は図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときのレバー支持体の動きを示す底面図、図8は図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときの第2の移動体の動きを示す底面図、図9は本発明の実施形態例に係る永久磁石と巨大磁気抵抗効果センサとの位置関係を示す説明図、図10は本発明の実施形態例に係る巨大磁気抵抗効果センサの回路構成図、図11は永久磁石の移動距離と巨大磁気抵抗効果センサからの出力電圧との関係を示す説明図である。
【0012】
これらの図に示すストークスイッチ装置は、先端側に圧入等によって一体化された作動部材1aを有する操作レバー1と、作動部材1aの先端部を収納して操作レバー1を揺動可能に支持するレバー支持体2と、レバー支持体2を収納して揺動可能に支持するケース3およびカバー4と、ケース3に固定された回路基板5と、操作レバー1がレバー支持体2に対して揺動操作されたときに回転駆動される第1の移動体6と、操作レバー1とレバー支持体2がケース3に対して一体的に揺動操作されたときにスライド駆動される第2の移動体7等を備えている。ケース3とカバー4は、ネジ8を用いて一体化されてレバー支持体2を収納する収納部S1を形成するハウジング9を構成している。そして、ハウジング9を自動車のステアリングコラム側に固定して、操作レバー1が略直交する2方向へ揺動操作できるようになっている。
【0013】
操作レバー1は作動部材1aの先端部を除く長尺部分がレバー支持体2から大きく突出しており、作動部材1aの回路基板5側の外壁には係合溝1bが形成されている。作動部材1aには軸孔1cが設けられており、この軸孔1cを挿通するピン10の両端部がレバー支持体2の軸受部2aに支持されることにより、操作レバー1はピン10を回動中心として図4の紙面と平行な第1の操作面内、すなわち回路基板5と略直交する面内で揺動できるようにレバー支持体2に支持されている。また、作動部材1aの先端部分には第1の押圧子11を弾性付勢するためのコイルばね12が収納されており、図4に示すように、第1の押圧子11はレバー支持体2の内壁に形成されたカム面2bに弾接している。
【0014】
レバー支持体2は作動部材1aの先端側部分を収納する収納部S2を有している。図1に示すように、レバー支持体2の基端部側には一対の回動軸2c,2dが同一線上で互いに反対方向に突設されており、レバー支持体2の先端部側にはケース3の底板3fに向けて駆動ピン2eが突設されている。一方の回動軸2cはケース3の底板3fに向けて突設されてケース3の軸受部3aに回動可能に支持され、他方の回動軸2dはカバー4に向けて突設されてカバー4の軸受部4aに回動可能に支持されている。したがって、レバー支持体2は、これら回動軸2c,2dを回動中心として前記第1の操作面と略直交する第2の操作面内で揺動できるようにハウジング9に支持されている。この第2の操作面内では、操作レバー1が揺動操作されると、レバー支持体2は操作レバー1と一体的に回動するようになっている。また、レバー支持体2には第2の押圧子13を弾性付勢するためのコイルばね14が収納されており、第2の押圧子13はケース3に固定されたカム部材15の内壁に形成された図示せぬカム面に弾接している。さらに、レバー支持体2の駆動ピン2eと回動軸2cとの間にはリンク駆動体16が回動可能に支持されている。このリンク駆動体16は、直線状に延びる軸部16cと、軸部16cの中央部分から互いに略直交する方向へ突出する一対の突出片16a,16bとを有しており、軸部16cの両端部がレバー支持体2に形成された軸受部2fに回動可能に支持されている。一方の突出片16aは作動部材1aに形成された係合溝1bに係合しており、他方の突出片16bは円弧状に形成されている。
【0015】
第1の移動体6には、中央部に形成された係合凹部6cを介して、先端側に凹部6aが形成されると共に、基端側に第1の係合孔6bが形成されている。凹部6aは第1の移動体6の回路基板5と対向する面側に形成され、この凹部6aに第1の永久磁石17が圧入や接着等により固着されている。係合凹部6cは第1の移動体6の収納部S1と対向する面側に形成されている。ケース3の底板3fの回路基板5と対向する面には支軸3bが立設されており、この支軸3bに第1の移動体6の第1の係合孔6bが回動可能に支持されている。
【0016】
図4に示すように、リンク駆動体16の突出片16bは、ケース3の底板3fに形成された透孔3dを挿通して第1の移動体6の係合凹部6cに係合している。したがって、操作レバー1がピン10を回動中心として第1の操作面内で揺動操作されると、その揺動運動がリンク駆動体16を介して第1の移動体6に伝達され、第1の移動体6が支軸3bを回動支点として第2の操作面内、すなわち回路基板5と略平行な平面内を回動するように駆動される。ここで、係合凹部6cはリンク駆動体16の突出片16bよりも長めの円弧状に形成されており、操作レバー1が第2の操作面内で揺動操作されるとき、突出片16bが係合凹部6c内を円弧方向へ移動することにより、第1の移動体6がリンク駆動体16によって駆動されないようになっている。したがって、第1の移動体6は、操作レバー1が第2の操作面内で揺動操作されるときは静止したままであり、操作レバー1が第1の操作面内で揺動操作されるときのみ回転駆動される。
【0017】
第2の移動体7には凹部7aと第2の係合孔7bとが並設されており、この第2の移動体7はケース3の底板3fに形成されたガイド溝3cにスライド可能に支持されている。凹部7aは第2の移動体7の回路基板5と対向する面側に形成されており、この凹部7aに第2の永久磁石18が圧入や接着等により固着されている。また、ケース3の底板3fにはガイド溝3cに通じる別の透孔3eが形成されており、レバー支持体2の駆動ピン2eがこの透孔3eを挿通して第2の係合孔7bに係合している。したがって、操作レバー1とレバー支持体2が回動軸2c,2dを回動中心として第2の操作面内で揺動操作されると、その揺動運動が駆動ピン2eを介して第2の移動体7のスライド動作に変換され、第2の移動体7がガイド溝3cに沿って回路基板5と平行な平面内をスライド移動する。ここで、凹部7aはガイド溝3cの短手方向へ延びる長方形状に形成されており、操作レバー1が第1の操作面内で揺動操作されるとき、駆動ピン2eが凹部7a内を長手方向に移動することにより、第2の移動体7が駆動ピン2eによって駆動されないようになっている。したがって、第2の移動体7は、操作レバー1が第1の操作面内で揺動操作されるときは静止したままであり、操作レバー1が第2の操作面内で揺動操作されるときのみスライド駆動される。
【0018】
なお、第1および第2の永久磁石17,18は直径や厚みを同じくする共通部品であり、第1および第2の移動体6,7の凹部6a,7aも同一形状に形成されている。
【0019】
回路基板5はケース3の底板3fと対向するように第2の操作面に沿って略平行に配設されている。この回路基板5の下面、すなわちケース3の底板3fと対向する面と反対側の面には、第1の巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistive Efect)センサ19と第2のGMRセンサ20とが実装されている。第1のGMRセンサ19は第1の移動体6に固着された第1の永久磁石17の移動領域またはその近傍に対応する位置に配置され、第2のGMRセンサ20は第2の移動体7に固着された第2の永久磁石18の移動領域またはその近傍に対応する位置に配置されている。なお、本実施形態例では、ケース3の底板3fと回路基板5の上面間の寸法が第1および第2の移動体6,7を移動できる程度に小さく設定されているため、第1および第2のGMRセンサ19,20は回路基板5の下面側に実装されているが、ケース3の底板3fと回路基板5の上面間の寸法を大きく設定することによって、第1および第2のGMRセンサ19,20を回路基板5の上面側に実装することも可能である。
【0020】
第1および第2のGMRセンサ19,20は、非磁性の中間層で分断して固定磁化層と自由磁化層を積層した4つのGMR素子が図10に示すようなブリッジ回路を構成するように接続されており、図9に示すようなひとつのパッケージとして構成されている。なお、図10中の矢印は各GMR素子の固定磁化層の磁化方向を示している。そして、第1および第2のGMRセンサ19,20に対し、図9に示すように、第1の永久磁石17を円弧を描くように矢印A−A’方向へ往復移動させたり、また、第2の永久磁石18を矢印B−B’方向へ直線的に往復移動させると、第1および第2の永久磁石17,18の位置に応じて外部磁界が変化し、各GMR素子の自由磁化層の磁化方向が変化して第1および第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗が変化する。その結果、第1および第2のGMRセンサ19,20に所定電圧Vddを印加した状態では、永久磁石17,18の移動に伴う移動方向と移動距離に応じて出力電圧(V1−V2)が変化し、図11に示すような「永久磁石の移動距離−GMRセンサの出力電圧」の関係が得られる。したがって、同図の破線で囲まれた直線に近い部分の出力電圧に基づいて永久磁石の位置を検出することができ、その出力電圧の変化に基づいて操作レバー1の操作位置を検出することにより、操作レバー1のスイッチ切換えを行うことができる。
【0021】
なお、図11中の移動距離を示す横軸上の0(ゼロ)は、第1および第2の永久磁石17,18がそれらの移動経路を略二等分する中点にあるときの状態、例えば図6(b)や図8(b)に示す位置にある状態を示している。したがって、第1および第2の永久磁石17,18が図9に示す矢印A−A’,B−B’の中点OからA’またはB’の方向、例えば+(プラス)方向へ移動すると、その移動に伴って第1および第2のGMRセンサ19,20からの出力電圧がプラスとなり大きな値となっていく。逆に、第1および第2の永久磁石17,18が図9に示す中点OからAまたはBの方向、例えば−(マイナス)方向へ移動すると、その移動に伴って第1および第2のGMRセンサ19,20からの出力電圧がマイナスとなり小さな値となっていく。ここで、移動経路とは、例えば図9のように第1および第2の永久磁石17,18を矢印A−A’,B−B’のように往復移動させたときの、各永久磁石17,18の中心部が移動する経路(軌跡)をいう。
【0022】
次に、このように構成されたストークスイッチ装置の動作について、主として図5〜図8を参照しつつ説明する。
【0023】
図5(b)は操作レバー1がレバー支持体2に対して揺動操作されていない状態を示し、この場合、第1の永久磁石17が固着された第1の移動体6は図6(b)に示す中立位置にあり、第1の永久磁石17に対応する第1のGMRセンサ19の出力電圧はゼロとなっている。この状態で操作レバー1を第1の操作面に沿って揺動操作すると、ピン10を回動中心に操作レバー1がレバー支持体2に対し回転して、操作レバー1の係合溝1bに係合するリンク駆動体16を駆動するため、このリンク駆動体16を介して第1の移動体6が支軸3bを支点として回転し、この回転に伴って第1の永久磁石17が回路基板5の下面に実装された第1のGMRセンサ19から離れるように回動する。具体的には、操作レバー1を図5(b)の矢印P1方向へ揺動操作すると、図5(a)に示すように、リンク駆動体16が同図の時計回り方向へ回転して第1の移動体6を同図左方へ変位させるため、第1の永久磁石17は図6(a)に示すように第1のGMRセンサ19の左側へ移動する。これとは逆に、操作レバー1を図5(b)の矢印P2方向へ揺動操作すると、図5(c)に示すように、リンク駆動体16が同図の反時計回り方向へ回転して第1の移動体6を同図右方へ変位させるため、第1の永久磁石17は図6(c)に示すように第1のGMRセンサ19の右側へ移動する。
【0024】
そして、かかる第1の永久磁石17の移動に伴って第1のGMRセンサ19の出力電圧が図11に示すように変化するため、第1のGMRセンサ19の出力電圧から第1の永久磁石17の移動位置、すなわち操作レバー1が第1の操作面内で矢印P1,P2のいずれかの方向へ揺動操作されたときの位置を検出することができ、その検出結果に基づいて例えば前照灯のビーム切換えやパッシングのためのスイッチング操作を行うことができる。その際、操作レバー1が図5(b)の状態にあるときがロービーム位置で、操作レバー1が図5(c)の状態にあるときがハイビーム位置となり、これらロービーム位置とハイビーム位置では第1の押圧子11がレバー支持体2のカム面2bの谷部に嵌入しているため、操作レバー1はこれらロービーム位置とハイビーム位置に位置決め保持される。また、操作レバー1をロービーム位置から図5(a)の状態に揺動操作することでパッシング動作を行うことができ、この操作時にはコイルばね12を圧縮させながら第1の押圧子11がカム面2bの山部に乗り上げるため、操作力が除去されるとコイルばね12の弾発力によって操作レバー1はロービーム位置へ自動復帰する。
【0025】
また、図7(b)は操作レバー1とレバー支持体2がハウジング9に対して揺動操作されていない状態を示し、この場合、第2の永久磁石18が固着された第2の移動体7は図8(b)に示す中立位置にあり、第2の永久磁石18に対応する第2のGMRセンサ20の出力電圧はゼロとなっている。この状態で操作レバー1を第2の操作面に沿って揺動操作すると、操作レバー1とレバー支持体2が回動軸2c,2dを回動中心にハウジング9に対して一体的に回転して、レバー支持体2の駆動ピン2eが第2の移動体7をガイド溝3cに沿ってスライドさせるため、第2の永久磁石18が回路基板5の下面に実装された第2のGMRセンサ20から離れるように移動する。具体的には、操作レバー1を図7(b)の矢印Q1方向へ揺動操作すると、図7(a)に示すように、駆動ピン2eが回動軸2c,2dを中心に同図の反時計回り方向へ回転して第2の移動体7を同図上方へ変位させるため、第2の永久磁石18は図8(a)に示すように第2のGMRセンサ20の上側へ移動する。これとは逆に、操作レバー1を図7(b)の矢印Q2方向へ揺動操作すると、図7(c)に示すように、駆動ピン2eが同図の時計回り方向へ回転して第2の移動体7を同図下方へ変位させるため、第2の永久磁石18は図8(c)に示すように第2のGMRセンサ20の下側へ移動する。
【0026】
この場合も、第2の永久磁石18の移動に伴って第2のGMRセンサ20の出力電圧が図11に示すように変化するため、第2のGMRセンサ20の出力電圧から第2の永久磁石18の移動位置、すなわち操作レバー1が第2の操作面内で矢印Q1,Q2のいずれかの方向へ揺動操作されたときの位置を検出することができ、その検出結果に基づいて例えば左折や右折のターンシグナルのためのスイッチング操作を行うことができる。
【0027】
なお、第1または第2の永久磁石17,18の移動距離に対する第1または第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗の変化率が小さいと、ストークスイッチ装置の設計上の自由度、すなわち操作レバー1のスイッチ切換え角度等の設計上の自由度を大きくできるという観点から、図6や図8に示すように、第1および第2のGMRセンサ19,20の中心部の位置を第1および第2の永久磁石17,18の中心位置の移動経路からずらすことが望ましい。逆に言うと、第1および第2のGMRセンサ19,20の中心部の位置を第1および第2の永久磁石17,18の移動経路上に設定すると、第1または第2の永久磁石17,18の移動距離に対する第1または第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗の変化率が大きくなり、操作レバー1を僅かな角度で揺動させただけでスイッチのオン・オフが切換えられてしまうので、ストークスイッチ装置の設計上の自由度が小さくなってしまう。ここで、第1および第2のGMRセンサ19,20の中心部とは、図9に示すパッケージ内に搭載された4つのGMR素子の中心との距離が等距離にある点であり、上記パッケージを平面的に見たときのほぼ中心部とみなすことができる。
【0028】
このように本実施形態例に係るストークスイッチ装置は、操作レバー1を互いに略直交する第1および第2の操作面のいずれか一方の面内で揺動操作し、それに伴って第1または第2の移動体6,7が所定方向へ駆動されると、各移動体6,7に保持された第1または第2の永久磁石17,18の位置に応じて外部磁界が変化して、第1および第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗が変化するため、その抵抗変化に基づいて操作レバー1の操作位置を検出することができ、接点の摩耗や酸化等の接点不良を防止して長寿命化を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態例に係るストークスイッチ装置では、第1および第2の永久磁石17,18として直径や厚みが同一の共通部品を用いているため、部品の共通化によってコストダウンを図ることができると共に、各移動体6,7に永久磁石17,18を簡単に取り付けることができて組立作業性が向上する。ただし、第1および第2の永久磁石17,18を形状や大きさの異なる別部品としても良い。
【0030】
なお、上記実施形態例では、ターンシグナル用のストークスイッチ装置について説明したが、本発明をワイパー用のストークスイッチ装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の底面図である。
【図3】図2に示すストークスイッチ装置から回路基板を取り除いた底面図である。
【図4】本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の断面図である。
【図5】図4に示す操作レバーを第1の操作面内で揺動操作したときの第1の移動体の動きを示す断面図である。
【図6】図5に対応する底面図である。
【図7】図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときのレバー支持体の動きを示す底面図である。
【図8】図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときの第2の移動体の動きを示す底面図である。
【図9】本発明の実施形態例に係る永久磁石と巨大磁気抵抗効果センサの位置関係を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態例に係る巨大磁気抵抗効果センサの回路構成図である。
【図11】永久磁石の移動距離と巨大磁気抵抗効果センサからの出力電圧との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 操作レバー
1a 作動部材
1b 係合溝
1c 軸孔
2 レバー支持体
2a 軸受部
2b カム面
2c,2d 回動軸
2e 駆動ピン
3 ケース
3a 軸受部
3b 支軸
4 カバー
4a 軸受部
5 回路基板
6 第1の移動体
6a 凹部
6b 第1の係合孔
6c 係合凹部
7 第2の移動体
7a 凹部
7b 第2の係合孔
9 ハウジング
10 ピン
11 第1の押圧子
12 コイルばね
13 第2の押圧子
14 コイルばね
15 カム部材
16 リンク駆動体
16a,16b 突出片
16c 軸部
17 第1の永久磁石
18 第2の永久磁石
19 第1の巨大磁気抵抗効果センサ(第1のGMRセンサ)
20 第2の巨大磁気抵抗効果センサ(第2のGMRセンサ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングホイールの近傍に装備されてワイパーやターンシグナル等のスイッチング操作に用いられるストークスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のストークスイッチ装置は、通常、ステアリングコラム等に固定された筐体の左右両側に一対配設されてコンビネーションスイッチを構成しており、各ストークスイッチ装置を適宜方向へ揺動操作することによって前照灯のビーム切換えやターンシグナル、ワイパー等のスイッチング操作が可能である。例えば、操作レバーを略上下方向へ揺動操作してターンシグナル操作を行うストークスイッチ装置の場合、その操作レバーを略前後方向へ揺動操作することによって前照灯のビーム切換え(ロービームとハイビームの切換え)操作やパッシング操作が行えるようになっている。
【0003】
このようなストークスイッチ装置の一般的な構成について説明すると、操作レバーの基部はレバー支持体(ホルダ)に回動可能に連結されており、このレバー支持体に対して操作レバーは所定の操作面(第1の操作面)内で揺動可能となっている。また、レバー支持体はステータ部材であるハウジング(第1,第2ケース)に回動可能に連結されており、前記第1の操作面と略直交する別の操作面(第2の操作面)内で操作レバーおよびレバー支持体が一体的に揺動可能となっている。つまり、レバー支持体に対する操作レバーの回動軸と、ハウジングに対する操作レバーおよびレバー支持体の回動軸とが略直交させてあり、操作レバーが略直交する2方向へ揺動操作可能となっている。ハウジングには前記第2の操作面に対して略平行に延在する回路基板が固定されており、この回路基板には二組の接点パターンが形成されている。また、回路基板上に一対の移動体(摺動子受体)がスライド可能に配置されており、これら移動体にはそれぞれ摺動子が取り付けられている。そして、操作レバーが第1または第2の操作面内で揺動操作されると、いずれか一方の移動体が駆動されて回路基板に沿ってスライド移動するため、回路基板に対する移動体の位置変化によって接点の切換え動作が行えるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−6494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のストークスイッチ装置では、移動体に取り付けられた摺動子が回路基板の接点パターン上を摺動することで接点の切換え動作が行われるようになっているため、操作レバーの度重なる揺動操作によって接点が経年的に摩耗したり、接点の酸化や硫化によって導通不良を生じる虞があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、接点不良がなく長寿命化に好適なストークスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のストークスイッチ装置は、操作レバーと、この操作レバーを第1の操作面内で揺動可能に支持するレバー支持体と、このレバー支持体を介して前記操作レバーを前記第1の操作面と略直交する第2の操作面内で揺動可能に支持するハウジングと、前記第2の操作面に沿って略平行に配設された回路基板と、この回路基板に実装された第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサと、前記操作レバーの前記第1の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第1の移動体と、この第1の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第1の永久磁石と、前記操作レバーの前記第2の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第2の移動体と、この第2の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第2の永久磁石とを備え、前記回路基板に、前記第1の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第1の巨大磁気抵抗効果センサを配置すると共に、前記第2の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第2の巨大磁気抵抗効果センサを配置する構成とした。
【0007】
このように構成されたストークスイッチ装置では、操作レバーを揺動操作して第1または第2の移動体が駆動されると、その移動体に保持された第1または第2の永久磁石の位置に応じて外部磁界が変化し、第1または第2の巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗が変化するため、その電気抵抗に基づいて操作レバーの操作位置を検出することにより、操作レバーのスイッチ切換えを行うことができ、したがって、接点の摩耗や酸化等の接点不良がなく長寿命化に好適なストークスイッチ装置を提供することができる。
【0008】
なお、第1および第2の永久磁石の移動距離に対する第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗の変化率が小さいと、ストークスイッチ装置の設計上の自由度、すなわち操作レバーのスイッチ切換え角度等の設計上の自由度を大きくできるという観点から、第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサの中心部の位置が第1および第2の永久磁石の中心位置の移動経路からずれていることが望ましい。逆に言うと、第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサの中心部の位置が第1および第2の永久磁石の中心位置の移動経路上に位置していると、第1および第2の永久磁石の移動距離に対する巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗の変化率が大きくなり、操作レバーを僅かな角度で揺動させただけでスイッチのオン・オフが切換えられてしまうので、ストークスイッチ装置の設計上の自由度が小さくなってしまう。
【0009】
上記の構成において、第1の永久磁石と第2の永久磁石の形状は特に限定されないが、これら第1および第2の永久磁石とが同一形状に形成されていると、部品の共通化を図り組立作業も簡単になるため好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のストークスイッチ装置は、操作レバーを互いに略直交する第1および第2の操作面のいずれか一方の面内で揺動操作し、それに伴って第1または第2の移動体が所定方向へ駆動されると、その移動体に保持された永久磁石による外部磁界が変化し、第1または第2の巨大磁気抵抗効果センサの電気抵抗が変化するため、その電気抵抗に基づいて操作レバーの操作位置を検出することができ、したがって、接点の摩耗や酸化等の接点不良がなく長寿命化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の分解斜視図、図2は本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の底面図、図3は図2に示すストークスイッチ装置から回路基板を取り除いた底面図、図4は本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の断面図、図5は図4に示す操作レバーを第1の操作面内で揺動操作したときの第1の移動体の動きを示す断面図、図6は図5に対応する底面図、図7は図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときのレバー支持体の動きを示す底面図、図8は図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときの第2の移動体の動きを示す底面図、図9は本発明の実施形態例に係る永久磁石と巨大磁気抵抗効果センサとの位置関係を示す説明図、図10は本発明の実施形態例に係る巨大磁気抵抗効果センサの回路構成図、図11は永久磁石の移動距離と巨大磁気抵抗効果センサからの出力電圧との関係を示す説明図である。
【0012】
これらの図に示すストークスイッチ装置は、先端側に圧入等によって一体化された作動部材1aを有する操作レバー1と、作動部材1aの先端部を収納して操作レバー1を揺動可能に支持するレバー支持体2と、レバー支持体2を収納して揺動可能に支持するケース3およびカバー4と、ケース3に固定された回路基板5と、操作レバー1がレバー支持体2に対して揺動操作されたときに回転駆動される第1の移動体6と、操作レバー1とレバー支持体2がケース3に対して一体的に揺動操作されたときにスライド駆動される第2の移動体7等を備えている。ケース3とカバー4は、ネジ8を用いて一体化されてレバー支持体2を収納する収納部S1を形成するハウジング9を構成している。そして、ハウジング9を自動車のステアリングコラム側に固定して、操作レバー1が略直交する2方向へ揺動操作できるようになっている。
【0013】
操作レバー1は作動部材1aの先端部を除く長尺部分がレバー支持体2から大きく突出しており、作動部材1aの回路基板5側の外壁には係合溝1bが形成されている。作動部材1aには軸孔1cが設けられており、この軸孔1cを挿通するピン10の両端部がレバー支持体2の軸受部2aに支持されることにより、操作レバー1はピン10を回動中心として図4の紙面と平行な第1の操作面内、すなわち回路基板5と略直交する面内で揺動できるようにレバー支持体2に支持されている。また、作動部材1aの先端部分には第1の押圧子11を弾性付勢するためのコイルばね12が収納されており、図4に示すように、第1の押圧子11はレバー支持体2の内壁に形成されたカム面2bに弾接している。
【0014】
レバー支持体2は作動部材1aの先端側部分を収納する収納部S2を有している。図1に示すように、レバー支持体2の基端部側には一対の回動軸2c,2dが同一線上で互いに反対方向に突設されており、レバー支持体2の先端部側にはケース3の底板3fに向けて駆動ピン2eが突設されている。一方の回動軸2cはケース3の底板3fに向けて突設されてケース3の軸受部3aに回動可能に支持され、他方の回動軸2dはカバー4に向けて突設されてカバー4の軸受部4aに回動可能に支持されている。したがって、レバー支持体2は、これら回動軸2c,2dを回動中心として前記第1の操作面と略直交する第2の操作面内で揺動できるようにハウジング9に支持されている。この第2の操作面内では、操作レバー1が揺動操作されると、レバー支持体2は操作レバー1と一体的に回動するようになっている。また、レバー支持体2には第2の押圧子13を弾性付勢するためのコイルばね14が収納されており、第2の押圧子13はケース3に固定されたカム部材15の内壁に形成された図示せぬカム面に弾接している。さらに、レバー支持体2の駆動ピン2eと回動軸2cとの間にはリンク駆動体16が回動可能に支持されている。このリンク駆動体16は、直線状に延びる軸部16cと、軸部16cの中央部分から互いに略直交する方向へ突出する一対の突出片16a,16bとを有しており、軸部16cの両端部がレバー支持体2に形成された軸受部2fに回動可能に支持されている。一方の突出片16aは作動部材1aに形成された係合溝1bに係合しており、他方の突出片16bは円弧状に形成されている。
【0015】
第1の移動体6には、中央部に形成された係合凹部6cを介して、先端側に凹部6aが形成されると共に、基端側に第1の係合孔6bが形成されている。凹部6aは第1の移動体6の回路基板5と対向する面側に形成され、この凹部6aに第1の永久磁石17が圧入や接着等により固着されている。係合凹部6cは第1の移動体6の収納部S1と対向する面側に形成されている。ケース3の底板3fの回路基板5と対向する面には支軸3bが立設されており、この支軸3bに第1の移動体6の第1の係合孔6bが回動可能に支持されている。
【0016】
図4に示すように、リンク駆動体16の突出片16bは、ケース3の底板3fに形成された透孔3dを挿通して第1の移動体6の係合凹部6cに係合している。したがって、操作レバー1がピン10を回動中心として第1の操作面内で揺動操作されると、その揺動運動がリンク駆動体16を介して第1の移動体6に伝達され、第1の移動体6が支軸3bを回動支点として第2の操作面内、すなわち回路基板5と略平行な平面内を回動するように駆動される。ここで、係合凹部6cはリンク駆動体16の突出片16bよりも長めの円弧状に形成されており、操作レバー1が第2の操作面内で揺動操作されるとき、突出片16bが係合凹部6c内を円弧方向へ移動することにより、第1の移動体6がリンク駆動体16によって駆動されないようになっている。したがって、第1の移動体6は、操作レバー1が第2の操作面内で揺動操作されるときは静止したままであり、操作レバー1が第1の操作面内で揺動操作されるときのみ回転駆動される。
【0017】
第2の移動体7には凹部7aと第2の係合孔7bとが並設されており、この第2の移動体7はケース3の底板3fに形成されたガイド溝3cにスライド可能に支持されている。凹部7aは第2の移動体7の回路基板5と対向する面側に形成されており、この凹部7aに第2の永久磁石18が圧入や接着等により固着されている。また、ケース3の底板3fにはガイド溝3cに通じる別の透孔3eが形成されており、レバー支持体2の駆動ピン2eがこの透孔3eを挿通して第2の係合孔7bに係合している。したがって、操作レバー1とレバー支持体2が回動軸2c,2dを回動中心として第2の操作面内で揺動操作されると、その揺動運動が駆動ピン2eを介して第2の移動体7のスライド動作に変換され、第2の移動体7がガイド溝3cに沿って回路基板5と平行な平面内をスライド移動する。ここで、凹部7aはガイド溝3cの短手方向へ延びる長方形状に形成されており、操作レバー1が第1の操作面内で揺動操作されるとき、駆動ピン2eが凹部7a内を長手方向に移動することにより、第2の移動体7が駆動ピン2eによって駆動されないようになっている。したがって、第2の移動体7は、操作レバー1が第1の操作面内で揺動操作されるときは静止したままであり、操作レバー1が第2の操作面内で揺動操作されるときのみスライド駆動される。
【0018】
なお、第1および第2の永久磁石17,18は直径や厚みを同じくする共通部品であり、第1および第2の移動体6,7の凹部6a,7aも同一形状に形成されている。
【0019】
回路基板5はケース3の底板3fと対向するように第2の操作面に沿って略平行に配設されている。この回路基板5の下面、すなわちケース3の底板3fと対向する面と反対側の面には、第1の巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistive Efect)センサ19と第2のGMRセンサ20とが実装されている。第1のGMRセンサ19は第1の移動体6に固着された第1の永久磁石17の移動領域またはその近傍に対応する位置に配置され、第2のGMRセンサ20は第2の移動体7に固着された第2の永久磁石18の移動領域またはその近傍に対応する位置に配置されている。なお、本実施形態例では、ケース3の底板3fと回路基板5の上面間の寸法が第1および第2の移動体6,7を移動できる程度に小さく設定されているため、第1および第2のGMRセンサ19,20は回路基板5の下面側に実装されているが、ケース3の底板3fと回路基板5の上面間の寸法を大きく設定することによって、第1および第2のGMRセンサ19,20を回路基板5の上面側に実装することも可能である。
【0020】
第1および第2のGMRセンサ19,20は、非磁性の中間層で分断して固定磁化層と自由磁化層を積層した4つのGMR素子が図10に示すようなブリッジ回路を構成するように接続されており、図9に示すようなひとつのパッケージとして構成されている。なお、図10中の矢印は各GMR素子の固定磁化層の磁化方向を示している。そして、第1および第2のGMRセンサ19,20に対し、図9に示すように、第1の永久磁石17を円弧を描くように矢印A−A’方向へ往復移動させたり、また、第2の永久磁石18を矢印B−B’方向へ直線的に往復移動させると、第1および第2の永久磁石17,18の位置に応じて外部磁界が変化し、各GMR素子の自由磁化層の磁化方向が変化して第1および第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗が変化する。その結果、第1および第2のGMRセンサ19,20に所定電圧Vddを印加した状態では、永久磁石17,18の移動に伴う移動方向と移動距離に応じて出力電圧(V1−V2)が変化し、図11に示すような「永久磁石の移動距離−GMRセンサの出力電圧」の関係が得られる。したがって、同図の破線で囲まれた直線に近い部分の出力電圧に基づいて永久磁石の位置を検出することができ、その出力電圧の変化に基づいて操作レバー1の操作位置を検出することにより、操作レバー1のスイッチ切換えを行うことができる。
【0021】
なお、図11中の移動距離を示す横軸上の0(ゼロ)は、第1および第2の永久磁石17,18がそれらの移動経路を略二等分する中点にあるときの状態、例えば図6(b)や図8(b)に示す位置にある状態を示している。したがって、第1および第2の永久磁石17,18が図9に示す矢印A−A’,B−B’の中点OからA’またはB’の方向、例えば+(プラス)方向へ移動すると、その移動に伴って第1および第2のGMRセンサ19,20からの出力電圧がプラスとなり大きな値となっていく。逆に、第1および第2の永久磁石17,18が図9に示す中点OからAまたはBの方向、例えば−(マイナス)方向へ移動すると、その移動に伴って第1および第2のGMRセンサ19,20からの出力電圧がマイナスとなり小さな値となっていく。ここで、移動経路とは、例えば図9のように第1および第2の永久磁石17,18を矢印A−A’,B−B’のように往復移動させたときの、各永久磁石17,18の中心部が移動する経路(軌跡)をいう。
【0022】
次に、このように構成されたストークスイッチ装置の動作について、主として図5〜図8を参照しつつ説明する。
【0023】
図5(b)は操作レバー1がレバー支持体2に対して揺動操作されていない状態を示し、この場合、第1の永久磁石17が固着された第1の移動体6は図6(b)に示す中立位置にあり、第1の永久磁石17に対応する第1のGMRセンサ19の出力電圧はゼロとなっている。この状態で操作レバー1を第1の操作面に沿って揺動操作すると、ピン10を回動中心に操作レバー1がレバー支持体2に対し回転して、操作レバー1の係合溝1bに係合するリンク駆動体16を駆動するため、このリンク駆動体16を介して第1の移動体6が支軸3bを支点として回転し、この回転に伴って第1の永久磁石17が回路基板5の下面に実装された第1のGMRセンサ19から離れるように回動する。具体的には、操作レバー1を図5(b)の矢印P1方向へ揺動操作すると、図5(a)に示すように、リンク駆動体16が同図の時計回り方向へ回転して第1の移動体6を同図左方へ変位させるため、第1の永久磁石17は図6(a)に示すように第1のGMRセンサ19の左側へ移動する。これとは逆に、操作レバー1を図5(b)の矢印P2方向へ揺動操作すると、図5(c)に示すように、リンク駆動体16が同図の反時計回り方向へ回転して第1の移動体6を同図右方へ変位させるため、第1の永久磁石17は図6(c)に示すように第1のGMRセンサ19の右側へ移動する。
【0024】
そして、かかる第1の永久磁石17の移動に伴って第1のGMRセンサ19の出力電圧が図11に示すように変化するため、第1のGMRセンサ19の出力電圧から第1の永久磁石17の移動位置、すなわち操作レバー1が第1の操作面内で矢印P1,P2のいずれかの方向へ揺動操作されたときの位置を検出することができ、その検出結果に基づいて例えば前照灯のビーム切換えやパッシングのためのスイッチング操作を行うことができる。その際、操作レバー1が図5(b)の状態にあるときがロービーム位置で、操作レバー1が図5(c)の状態にあるときがハイビーム位置となり、これらロービーム位置とハイビーム位置では第1の押圧子11がレバー支持体2のカム面2bの谷部に嵌入しているため、操作レバー1はこれらロービーム位置とハイビーム位置に位置決め保持される。また、操作レバー1をロービーム位置から図5(a)の状態に揺動操作することでパッシング動作を行うことができ、この操作時にはコイルばね12を圧縮させながら第1の押圧子11がカム面2bの山部に乗り上げるため、操作力が除去されるとコイルばね12の弾発力によって操作レバー1はロービーム位置へ自動復帰する。
【0025】
また、図7(b)は操作レバー1とレバー支持体2がハウジング9に対して揺動操作されていない状態を示し、この場合、第2の永久磁石18が固着された第2の移動体7は図8(b)に示す中立位置にあり、第2の永久磁石18に対応する第2のGMRセンサ20の出力電圧はゼロとなっている。この状態で操作レバー1を第2の操作面に沿って揺動操作すると、操作レバー1とレバー支持体2が回動軸2c,2dを回動中心にハウジング9に対して一体的に回転して、レバー支持体2の駆動ピン2eが第2の移動体7をガイド溝3cに沿ってスライドさせるため、第2の永久磁石18が回路基板5の下面に実装された第2のGMRセンサ20から離れるように移動する。具体的には、操作レバー1を図7(b)の矢印Q1方向へ揺動操作すると、図7(a)に示すように、駆動ピン2eが回動軸2c,2dを中心に同図の反時計回り方向へ回転して第2の移動体7を同図上方へ変位させるため、第2の永久磁石18は図8(a)に示すように第2のGMRセンサ20の上側へ移動する。これとは逆に、操作レバー1を図7(b)の矢印Q2方向へ揺動操作すると、図7(c)に示すように、駆動ピン2eが同図の時計回り方向へ回転して第2の移動体7を同図下方へ変位させるため、第2の永久磁石18は図8(c)に示すように第2のGMRセンサ20の下側へ移動する。
【0026】
この場合も、第2の永久磁石18の移動に伴って第2のGMRセンサ20の出力電圧が図11に示すように変化するため、第2のGMRセンサ20の出力電圧から第2の永久磁石18の移動位置、すなわち操作レバー1が第2の操作面内で矢印Q1,Q2のいずれかの方向へ揺動操作されたときの位置を検出することができ、その検出結果に基づいて例えば左折や右折のターンシグナルのためのスイッチング操作を行うことができる。
【0027】
なお、第1または第2の永久磁石17,18の移動距離に対する第1または第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗の変化率が小さいと、ストークスイッチ装置の設計上の自由度、すなわち操作レバー1のスイッチ切換え角度等の設計上の自由度を大きくできるという観点から、図6や図8に示すように、第1および第2のGMRセンサ19,20の中心部の位置を第1および第2の永久磁石17,18の中心位置の移動経路からずらすことが望ましい。逆に言うと、第1および第2のGMRセンサ19,20の中心部の位置を第1および第2の永久磁石17,18の移動経路上に設定すると、第1または第2の永久磁石17,18の移動距離に対する第1または第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗の変化率が大きくなり、操作レバー1を僅かな角度で揺動させただけでスイッチのオン・オフが切換えられてしまうので、ストークスイッチ装置の設計上の自由度が小さくなってしまう。ここで、第1および第2のGMRセンサ19,20の中心部とは、図9に示すパッケージ内に搭載された4つのGMR素子の中心との距離が等距離にある点であり、上記パッケージを平面的に見たときのほぼ中心部とみなすことができる。
【0028】
このように本実施形態例に係るストークスイッチ装置は、操作レバー1を互いに略直交する第1および第2の操作面のいずれか一方の面内で揺動操作し、それに伴って第1または第2の移動体6,7が所定方向へ駆動されると、各移動体6,7に保持された第1または第2の永久磁石17,18の位置に応じて外部磁界が変化して、第1および第2のGMRセンサ19,20の電気抵抗が変化するため、その抵抗変化に基づいて操作レバー1の操作位置を検出することができ、接点の摩耗や酸化等の接点不良を防止して長寿命化を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態例に係るストークスイッチ装置では、第1および第2の永久磁石17,18として直径や厚みが同一の共通部品を用いているため、部品の共通化によってコストダウンを図ることができると共に、各移動体6,7に永久磁石17,18を簡単に取り付けることができて組立作業性が向上する。ただし、第1および第2の永久磁石17,18を形状や大きさの異なる別部品としても良い。
【0030】
なお、上記実施形態例では、ターンシグナル用のストークスイッチ装置について説明したが、本発明をワイパー用のストークスイッチ装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の底面図である。
【図3】図2に示すストークスイッチ装置から回路基板を取り除いた底面図である。
【図4】本発明の実施形態例に係るストークスイッチ装置の断面図である。
【図5】図4に示す操作レバーを第1の操作面内で揺動操作したときの第1の移動体の動きを示す断面図である。
【図6】図5に対応する底面図である。
【図7】図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときのレバー支持体の動きを示す底面図である。
【図8】図3に示す操作レバーを第2の操作面内で揺動操作したときの第2の移動体の動きを示す底面図である。
【図9】本発明の実施形態例に係る永久磁石と巨大磁気抵抗効果センサの位置関係を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態例に係る巨大磁気抵抗効果センサの回路構成図である。
【図11】永久磁石の移動距離と巨大磁気抵抗効果センサからの出力電圧との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 操作レバー
1a 作動部材
1b 係合溝
1c 軸孔
2 レバー支持体
2a 軸受部
2b カム面
2c,2d 回動軸
2e 駆動ピン
3 ケース
3a 軸受部
3b 支軸
4 カバー
4a 軸受部
5 回路基板
6 第1の移動体
6a 凹部
6b 第1の係合孔
6c 係合凹部
7 第2の移動体
7a 凹部
7b 第2の係合孔
9 ハウジング
10 ピン
11 第1の押圧子
12 コイルばね
13 第2の押圧子
14 コイルばね
15 カム部材
16 リンク駆動体
16a,16b 突出片
16c 軸部
17 第1の永久磁石
18 第2の永久磁石
19 第1の巨大磁気抵抗効果センサ(第1のGMRセンサ)
20 第2の巨大磁気抵抗効果センサ(第2のGMRセンサ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーと、この操作レバーを第1の操作面内で揺動可能に支持するレバー支持体と、このレバー支持体を介して前記操作レバーを前記第1の操作面と略直交する第2の操作面内で揺動可能に支持するハウジングと、前記第2の操作面に沿って略平行に配設された回路基板と、この回路基板に実装された第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサと、前記操作レバーの前記第1の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第1の移動体と、この第1の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第1の永久磁石と、前記操作レバーの前記第2の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第2の移動体と、この第2の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第2の永久磁石とを備え、
前記回路基板に、前記第1の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第1の巨大磁気抵抗効果センサを配置すると共に、前記第2の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第2の巨大磁気抵抗効果センサを配置したことを特徴とするストークスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石とが同一形状に形成されていることを特徴とするストークスイッチ装置。
【請求項1】
操作レバーと、この操作レバーを第1の操作面内で揺動可能に支持するレバー支持体と、このレバー支持体を介して前記操作レバーを前記第1の操作面と略直交する第2の操作面内で揺動可能に支持するハウジングと、前記第2の操作面に沿って略平行に配設された回路基板と、この回路基板に実装された第1および第2の巨大磁気抵抗効果センサと、前記操作レバーの前記第1の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第1の移動体と、この第1の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第1の永久磁石と、前記操作レバーの前記第2の操作面内での揺動操作に伴って前記第2の操作面と平行に駆動される第2の移動体と、この第2の移動体に保持されて前記回路基板に略直交する方向に着磁された第2の永久磁石とを備え、
前記回路基板に、前記第1の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第1の巨大磁気抵抗効果センサを配置すると共に、前記第2の永久磁石の移動領域または該移動領域の近傍と対向するように前記第2の巨大磁気抵抗効果センサを配置したことを特徴とするストークスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石とが同一形状に形成されていることを特徴とするストークスイッチ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−99467(P2009−99467A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271591(P2007−271591)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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