説明

スパッタリング装置、プラズマディスプレイパネルの製造方法、プラズマ表示装置及びその製造方法

【課題】コストを低減すると共に、ガラス基板上に成膜される膜厚を一定に保つ。
【解決手段】コントローラ2の制御部は、板状のターゲットTの残膜厚が所定値まで減少したと判断すると、モータ31を所定の回転量回転させて、ターゲットTを所定量変位させる。ターゲットTは、磁界の強さが所定値以上で、プラズマが集中する領域に、ターゲットTのうち、残膜厚が初期ターゲット膜厚に略等しい領域が重なるうように移動し、スパッタリングが継続して実施される。ターゲットTが移動しても、ガラス基板Sに対して磁界分布は変動しないために、磁界の強さが所定値以上でターゲットT近傍のプラズマが集中する領域は、ガラス基板Sに対して変動せず、したがって、スパッタされる粒子が比較的多数放出される箇所は変動せず、ガラス基板Sに成膜される膜厚の分布は均一に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スパッタリング装置、プラズマディスプレイパネルの製造方法、プラズマ表示装置及びその製造方法に係り、特に、磁界によってターゲット近傍のプラズマ密度を上げてスパッタを行うプレーナマグネトロン方式のスパッタリング装置、該スパッタリング装置を用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法、プラズマ表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP(Plasma Display Panel)ともいう)を主要部として含むプラズマ表示装置は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶表示装置等に比べて、ちらつきがなく、表示コントラスト比が大きく、薄型大画面化が可能であり、応答速度が速い等の利点を有し、近年、大型平面テレビジョン受像機や、情報処理機器のディスプレイとして利用されている。
このプラズマ表示装置は、放電により発生した紫外線を蛍光体に照射することによって可視光を取り出して表示を行うディスプレイであり、動作方式により、電極が誘電体で被覆されて間接的に交流放電の状態で動作させるAC型のものと、電極が放電空間に露出されて直流放電の状態で動作させるDC型のものとに略大別され、特にAC型のものは、高輝度が得られ、比較的簡単な構造で上述したような大画面化が容易に実現できるので、広く用いられている。また、AC型のプラズマディスプレイパネルとしては、電極構造の違いから面放電方式のものと、対向電極方式のものとが提案されている。
このようなAC型のプラズマ表示装置の主要部を構成するプラズマディスプレイパネルは、ガラス等の透明材料からなる前面基板と背面基板とが対向するように配置されて、両基板間にプラズマを発生させる放電ガス空間が形成されて概略構成されている。
【0003】
また、AC型のプラズマ表示装置のなかで、プラズマディスプレイパネルにおいて、図11に示すように、放電セル(以下、セルともいう)を形成する上述したような一対の基板のうちの一方の基板である前面基板102の内面に、水平方向に沿って平行に走査電極103と維持電極(共通電極)104とからなる行電極を配置すると共に、他方の基板である背面基板105の内面に、上記行電極と直交するように垂直方向に沿ってデータ電極(アドレス電極)106からなる列電極を配置した3電極面放電型の構成のプラズマディスプレイパネル107は、前面基板102において行われる面放電時に発生する高エネルギのイオンによる影響を抑えることができるので、長寿命化が図れるため、最も広く採用されている。
【0004】
この3電極面放電方式AC型のプラズマディスプレイパネル107は、背面基板105のデータ電極106と前面基板102の走査電極103との間で表示(発光)すべき放電セルを選択する書込放電を行い、次に、前面基板102の走査電極103と維持電極104との間で選択したセルの面放電による維持放電(表示放電)を行うように構成されている。走査電極103と維持電極104とは電極対115を構成している。
ここで、走査電極103は、酸化錫やITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明電極103aと抵抗値を小さくするためのAl,Cu、Ag等からなるバス電極103bとからなっている。また、維持電極104は、透明電極104aとバス電極104bとからなっている。
【0005】
また、前面基板102及び背面基板105の透明絶縁基板108,109としては、例えば、厚さ2〜5mmの低歪点ガラスや原料が安価なソーダライムガラス等が用いられる。
また、前面基板102の内面側には、走査電極103及び維持電極104を覆う低融点ガラスからなる透明誘電体層110が形成されている。
また、動作中に発生する放電から透明誘電体層110を保護するために、二次電子放出係数が大きく、耐スパッタ性に優れたMgO(酸化マグネシウム)等からなる保護膜111が形成される。
【0006】
また、背面基板105のデータ電極106は、白色誘電体層112によって覆われている。また、白色誘電体層112上には、隣接する放電セル間の電荷の移動を制限し、誤灯を防止するために、高さ100[μm]〜150[μm]、幅30[μm]〜150[μm]の隔壁113が形成されている。
隔壁113によって画成される放電セルの底部や側部には、赤色、緑色、及び青色の各蛍光体層114r,114g,114bが配置され、前面基板102の内面の上記各蛍光体層にそれぞれ対向する位置に赤色、緑色、及び青色の各カラーフィルタ層を配置するように構成して多色発光が可能とされている。
【0007】
この3電極面放電方式AC型のプラズマディスプレイパネル107の製造方法について説明する。
まず、図11に示すように、前面基板102を製造するために、前面ガラス基板108の内面に、スパッタリングによってITO等を成膜した後、フォトリソグラフィによってパターニングして、水平方向に沿って平行に透明電極103a,104aを形成する。
次に、抵抗値を小さくするためのバス電極103b,104bを水平方向に沿って透明電極103a,104aの下面側に形成する。すなわち、電極材料として銀を選択する場合は、銀粉体とガラスフリットと有機バインダとからなる銀ペーストを、スクリーン印刷等によってパターニングし、この後、銀ペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、バス電極パターンを前面ガラス基板108に固着させてバス電極106b,107bを形成する。
【0008】
こうして、透明電極103a,104a及びバス電極103b,104bとから走査電極103及び維持電極104が形成される。
次に、走査電極103及び維持電極104を被覆する透明誘電体層110を形成する。すなわち、ガラスフリットと有機バインダとからなるガラスペーストを、スクリーン印刷やテーブルコータ等によって形成し、この後、ガラスペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、透明誘電体層パターンを前面ガラス基板108に固着させて透明誘電体層110を形成する。
次に、透明誘電体層110の内面にMgO等をスパッタリングによって成膜して、透明誘電体層110を放電から保護するための保護膜111を形成する。こうして、前面基板102が完成する。
【0009】
一方、図11に示すように、背面基板105を製造するために、背面ガラス基板109の上面に垂直方向に沿って平行にアドレス電極106を形成する。すなわち、電極材料として銀を選択する場合は、銀粉体とガラスフリットと有機バインダとからなる銀ペーストを、スクリーン印刷等によってパターニングし、この後、銀ペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、アドレス電極パターンを背面ガラス基板109に固着させてアドレス電極106を形成する。
次に、アドレス電極106を被覆する白色誘電体層112を形成する。すなわち、ガラスフリットと有機バインダとからなるガラスペーストを、スクリーン印刷やテーブルコータ等によって形成し、この後、ガラスペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、白色誘電体層パターンを背面ガラス基板109に固着させて白色誘電体層112を形成する。
【0010】
次に、白色誘電体層112上に、放電セルを画成するために、ストライプ状に隔壁113を形成する。すなわち、ガラスフリットと有機バインダとからなるガラスペーストを、白色誘電体層112上にリバースコート法やスリットコート法等によって、一様に塗布した後、レジストをパターニングし、サンドブラスト法等によってレジストの開口箇所を切削し、この後、ガラスペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、隔壁パターンを白色誘電体層112に固着させて隔壁113を形成する。
【0011】
次に、隔壁113,113間に蛍光体層114r,114g,114bを形成する。
次に、背面ガラス基板110の外周部に、シールフリットを塗布し、これを焼成して、背面基板105を完成させる。
次に、前面基板102と背面基板105とを100μm程度のギャップを隔てて互いに対向した状態で、電極対の延長方向(行方向)とアドレス電極106の延長方向(列方向)とが互いに直交するように、かつ、両基板102,105間に放電ガス空間が形成されるように、貼り合わせて配置し、その周縁部を、例えば、フリットガラスからなる封止材によって気密封着する。
【0012】
すなわち、背面基板105の周縁部にフリットガラスを塗布した後、前面基板102と背面基板105とを貼り合わせた状態で焼成処理を施し、フリットガラスを溶かして、前面基板102と背面基板105とを接合してパネル状とする。ここで、隔壁113によって放電セルが画成されている。
次に、パネル状の前面基板102及び背面基板105を加熱炉内に導入するとともに、通気管を介して、前面基板102と背面基板105との間に形成された放電空間と接続して、放電空間内の排気を行いながら、真空加熱を行い、放電ガス空間に、例えばキセノンを含む混合希ガスからなる放電ガスを所定の圧力で導入して充填した後、通気管を過熱によってチップオンし、開口端部を閉塞する。このようにして、放電ガス空間内に放電ガスが充填される。
次に、放電セル内で放電を発生させて、一定時間継続させることで、放電を安定化させる。
このようにして、放電ガス空間内に放電ガスが充填されて、プラズマディスプレイパネル107が完成する。
【0013】
上述した透明電極103a,104aを形成する工程及び透明誘電体層111を形成する工程では、プレーナ(平板)マグネトロン方式のスパッタリング装置を用いて、ITOやMgOの成膜を行う。
このスパッタリング装置は、真空チャンバ内に、陰極としての平板状のターゲットと、陽極としての基板とを互いに対向させて配置し、真空チャンバ内に導入されたアルゴンガスが、グロー放電によって電離して、アルゴンイオンと電子とに分離し、分離したアルゴンイオンがターゲット表面に衝突し、ターゲット表面から粒子がたたき出されて、基板上に堆積する現象を利用して成膜する装置であり、ターゲットの背面側(基板に対面する側と反対側の面)に永久磁石を固定配置して、ターゲット表面に電界に直交するように磁界を発生させ、ターゲット表面の直交電磁界によって、グロー放電によって発生した電子をアルゴンに繰り返し衝突させてアルゴンの電離を促進させ、プラズマ密度を上げて成膜速度を速めるように工夫がなされた装置である。
【0014】
しかしながら、上記直交電磁界にプラズマが集中することによって、すなわち、ターゲット表面の磁界分布の偏りによって、ターゲット表面が不均一にスパッタされて、ターゲットの残膜厚が不均一となり、ターゲットの利用効率が悪化するという問題があった。
このため、平板状のターゲットに対して永久磁石を二次元的に(例えばジグザグに)変位させて、ターゲット表面における磁場分布を変動させて、直交電磁界によってプラズマが集中する領域をターゲットを全体に亘って移動させて、ターゲットの利用効率を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平4−193950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
解決しようとする問題点は、上記従来技術では、基板に対して永久磁石が変位することによって、基板からみた磁界分布が変動するために、ターゲット近傍のプラズマが集中する領域(すなわち、プラズマ密度の分布)も基板に対して変動し、スパッタされた粒子が比較的多数放出される箇所も変動し、基板に堆積する膜厚分布が基板全体に亘って不均一となってしまうという点である。このため、このスパッタリング装置によって成膜された基板を用いて製造された製品の品質が安定せず、歩留まりが悪化し、信頼性が損なわれることとなる。
【0016】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、ターゲットの使用効率を向上させてコストを低減することができると共に、基板上に均一な膜厚で成膜することができるスパッタリング装置、プラズマディスプレイパネルの製造方法、プラズマ表示装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、真空容器内に、陰極として配置されたターゲットと、陽極として配置された基板との間に、電圧を印加してプラズマを生成するプラズマ生成手段と、少なくとも上記プラズマの一部を上記ターゲットの近傍に閉じ込めるための磁界を生成する磁界生成手段とを備えてなり、上記ターゲットをスパッタして、上記基板上に堆積させるスパッタリング装置に係り、上記ターゲットを、上記基板の表面に平行な方向に沿って、上記基板及び上記磁界生成手段に対して変位させる移動手段と、上記移動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、上記ターゲットの残量分布に基づいて、上記移動手段を駆動制御することを特徴としている。
【0019】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、スパッタリングによる上記ターゲットの消費量に基づいて、上記ターゲットのうち、現在主としてスパッタされている領域の残膜厚を求め、該残膜厚が所定値に達したと判断すると、上記移動手段を駆動制御して、上記ターゲットを、残膜厚が比較的厚い領域が主としてスパッタされる領域となるように、上記基板及び上記磁界生成手段に対して変位させることを特徴としている。
【0020】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、上記ターゲットの消費量を、スパッタリングに要した消費電力量に基づいて求めることを特徴としている。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1に記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、上記移動手段を駆動制御して、上記ターゲットを所定の経路に沿って上記基板及び上記磁界生成手段に対して移動させることを特徴としている。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、上記移動手段を駆動制御して、上記ターゲットを所定の速度で移動させることを特徴としている。
【0023】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1に記載のスパッタリング装置に係り、平板状の上記ターゲットと上記基板とが、上記真空容器内に互いに対向するように配置され、上記プラズマ生成手段は、上記ターゲットの表面に垂直な方向に電界を生成し、上記磁界生成手段は、上記電界に直交する方向に静磁界を生成することを特徴としている。
【0024】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載のスパッタリング装置に係り、上記磁界生成手段は、上記ターゲットの上記基板に対面する側と反対側に配置された単一の永久磁石又は複数の永久磁石の組合せからなることを特徴としている。
【0025】
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか1に記載のスパッタリング装置に係り、上記磁界生成手段は、上記基板に対して変位しないことを特徴としている。
【0026】
また、請求項10記載の発明は、請求項3、4又は5記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、スパッタリングによる上記ターゲットの消費量に基づいて、上記ターゲットのうち、現在主としてスパッタされている領域の残膜厚を求め、該残膜厚が所定値に達したと判断すると、残膜厚が比較的厚い所定の領域までの移動距離を求め、該移動距離に基づいて、上記移動手段を駆動制御して、上記ターゲットを、上記所定の領域が主としてスパッタされる領域となるように、上記基板及び上記磁界生成手段に対して上記移動距離変位させることを特徴としている。
【0027】
また、請求項11記載の発明は、請求項10記載のスパッタリング装置に係り、上記移動手段は、モータと、該モータの回転運動を並進運動に変換して上記基板に伝達する伝達手段とを有し、上記駆動制御手段は、上記移動距離に対応する上記モータの回転量を求め、該回転量に基づいて、上記モータを駆動制御することを特徴としている。
【0028】
また、請求項12記載の発明は、請求項4乃至11のいずれか1に記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、上記消費電力量を、スパッタに要する電力と、スパッタ時間とに基づいて求めることを特徴としている。
【0029】
また、請求項13記載の発明は、請求項10、11又は12記載のスパッタリング装置に係り、上記駆動制御手段は、上記消費電力量に基づいて、対応する上記移動距離を求め、上記移動手段を駆動制御して、上記ターゲットを、上記基板及び上記磁界生成手段に対して上記移動距離変位させることを特徴としている。
【0030】
また、請求項14記載の発明は、請求項1乃至13のいずれか1に記載のスパッタリング装置に係り、上記ターゲットの材料としては、上記基板に、電極層又は配線層を形成するための導電性物質が選択されることを特徴としている。
【0031】
また、請求項15記載の発明は、請求項1乃至14のいずれか1に記載のスパッタリング装置に係り、上記プラズマ生成手段は、不活性ガスを含むガスを電離させて上記プラズマを生成することを特徴としている。
【0032】
また、請求項16記載の発明は、プラズマディスプレイパネルを構成し、共に導電体層及び誘電体層を含む第1の基板と第2の基板とを、封着材層を介し間隙を隔てて互いに対向させた状態で配置し、上記第1の基板及び上記第2の基板を封着するプラズマディスプレイパネルの製造方法に係り、請求項1乃至15のいずれか1に記載のスパッタリング装置を用いて、上記第1の基板及び/又は上記第2の基板の上記導電体層及び上記誘電体層のうち少なくとも一部を形成することを特徴としている。
【0033】
また、請求項17記載の発明は、プラズマディスプレイパネルを製造する第1の工程と、上記プラズマディスプレイパネルを駆動する回路とともに上記プラズマディスプレイパネルを一つのモジュールとして製造する第2の工程と、画像信号のフォーマット変換を行い、上記モジュールに送信するインタフェースを上記モジュールに電気的に接続する第3の工程とを含むプラズマ表示装置の製造方法に係り、上記第1の工程では、請求項16記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法が実施されることを特徴としている。
【0034】
また、請求項18記載の発明に係るプラズマ表示装置は、請求項17記載のプラズマ表示装置の製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
この発明のスパッタリング装置の構成によれば、ターゲット表面の磁界を変動させてターゲット表面領域を有効に使用することができるので、コストを低減することができると共に、基板に対して磁界を変動させずに、ターゲットを移動させるので、基板上に成膜される膜厚を一定に保つことができる。
また、この発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法の構成によれば、製造のためのコストを抑制しつつ、基板上に成膜された例えば透明電極層や保護膜の特性を向上させ、パネルの歩留りを向上させ、信頼性を向上させることができる。
また、この発明のプラズマ表示装置及びその製造方法の構成によれば、プラズマ表示装置をモジュール化することによって、部品交換の必要が生じた場合に、モジュール毎交換することによって、補修の簡素化及び迅速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
ターゲット表面の磁界を変動させてターゲット表面領域を有効に使用することによって、コストを低減すると共に、基板に対して磁界を変動させずに、ターゲットを移動させることによって、基板上に成膜される膜厚を一定に保つという目的を実現した。
【実施例1】
【0037】
図1は、この発明の第1実施例であるスパッタリング装置の概略構成を示す図、図2は、同スパッタリング装置のコントローラの構成を示すブロック図、図3は、同スパッタリング装置において、スパッタリングによって消費される積算電力量とターゲット残膜厚との間の関係を示す示性図、図4は、同スパッタリング装置において磁界を発生させるために用いられる永久磁石の斜視図、図5は、同スパッタリング装置を構成するターゲット移動部の下面図、また、図6及び図7は、同スパッタリング装置の動作を説明するための説明図である。
【0038】
この例のプレーナマグネトロン方式のスパッタリング装置1は、図1に示すように、構成各部を制御するコントローラ2と、例えばアルゴン等の不活性ガスを導入するためのガス導入弁3、排気弁4及びリリース弁5が設けられた真空チャンバ6と、不活性ガスを供給するためのガスボンベを含むガス導入装置7と、真空ポンプを含む真空排気装置8と、真空チャンバ5内に互いに対向配置された、平板状のターゲットTをターゲット裏板9を介して支持するターゲットステージ11及び成膜を行う例えばガラス基板Sを支持する基板ステージ12と、陰極としてのターゲットTと陽極としての平板状の基板ステージ12との間に所定の直流電圧を印加するための直流電源13と、ターゲットステージ11の背面側(プラズマに接触しない側)に配置される一対の永久磁石14a,14bと、ターゲットTをガラス基板S及び永久磁石14a,14bに対して移動させるためのターゲット移動部15とを備えてなっている。
【0039】
コントローラ2は、図2に示すように、CPU(中央処理装置)等を有してなる制御部21と、制御部21が実行する処理プログラムや各種データ等を記憶するための記憶部22と、表示部23と、操作部24と、ターゲット移動部15を構成するモータを駆動するためのモータ駆動部25とを備えたコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。
制御部21は、記憶部22に記憶された各種処理プログラムを実行し、記憶部22に確保された各種レジスタやフラグを用いて、構成各部を制御し、モータ駆動制御処理等を実行する。
制御部21は、ターゲットTの膜厚分布(すなわち残量分布)に基づいて、ターゲット移動部15を駆動制御する。この例では、スパッタリング期間内の直流電源13における消費電力量に基づいて、ターゲット移動部15を駆動制御する。
【0040】
記憶部22は、内部記憶装置と、外部記憶装置とからなり、制御部が実行するモータ駆動制御処理プログラム等の各種処理プログラム等が記憶されたプログラム記憶領域と、設定情報等の各種情報が記憶された情報記憶領域とを有している。
内部記憶装置は、ROMやRAM等の半導体メモリからなる。外部記憶装置は、FD(フロッピー(登録商標)・ディスク)が装着されるFDドライバ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライバ、MO(光磁気)ディスクが装着されるMOディスクドライバ、あるいはCD(コンパクト・ディスク)−ROM、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)やDVD(デジタル・ビデオ・ディスク)−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライバ等からなる。
【0041】
上記モータ駆動制御処理プログラムは、スパッタリング期間内の直流電源13における消費電力量に基づいて、ターゲット移動部15を駆動制御する手順を含んでいる。
すなわち、このモータ駆動制御処理プログラムには、予め設定されたスパッタ電力P0、初期ターゲット膜厚d0[mm]、及び定数A(正の実数)と、例えば、所定の領域における、スパッタリング開始からの経過時間t[h]とに基づいて、式(1)によって、ターゲット残膜厚d[mm]を求め、ターゲット残膜厚dが所定値(例えば、略0)となったら(すなわち、電力量QがQ=Qmのとき)、ターゲットTを所定距離変位させるように、すなわち、未使用の領域が、磁界の大きさが所定値以上でプラズマが集中する領域に重なるように、対応する回転量を算出してモータ31を駆動制御するための手順が記述されている。
ターゲットTのスパッタリング期間内の積算消費量は、スパッタリング開始時刻から積算した電力量Q[kWh](Q=P0t(P0:スパッタ電力[kW]、t:経過時間[h])に比例し、したがって、ターゲット残膜厚d[mm]は、式(1)によって求められる(図3参照)。
d=d0−AQ
=d0−AP0t …(1)
【0042】
また、表示部23は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、あるいはプラズマディスプレイなどからなる。操作部24は、キーボードやマウス等からなる。
直流電源13は、ターゲットTの表面に垂直な方向に沿って電界を形成して、陰極と陽極との間に活性プラズマを生成させるために電力を供給する。
永久磁石14a,14bは、図4に示すように、共に断面矩形の柱状の永久磁石からなり、互いに平行に、かつ長尺方向が電界の向きに直交するように、ターゲットステージ11の背面側(プラズマに接触しない側)に水平に配置され、電界に直交する方向に沿って、磁場を形成している。この例では、永久磁石14a,14bは、基板ステージ12に対して配置位置が固定され(変位せず)、ターゲットTと共に変位しない。
【0043】
ターゲット移動部15は、コントローラ2の制御によって、ターゲットステージ11を、水平面に沿って(すなわち、電界に直交する方向に沿って)、かつ、永久磁石14a,14bの長尺方向に直交する方向に沿って、直線的に(一次元的に)所定のタイミングで移動させる。すなわち、ターゲットステージ11にターゲット裏板9を介して支持されたターゲットTを移動させる。
ターゲット移動部15は、図5に示すように、モータ31と、モータ31のシャフトに軸を同じくして取り着けられモータ31によって回転駆動されるねじ軸32a及びねじ軸32aと螺合しターゲットステージ11の背面側に固定されたナット32bからなるボールねじ32と、ターゲットステージ11をねじ軸32aの軸方向に沿って案内する案内レール部34,34と、案内レール部34,34を支持する支持部材35,35とを有してなっている。
【0044】
次に、図6及び図7を参照して、この例のスパッタリング装置1を用いたガラス基板S上への成膜方法について説明する。
真空チャンバ5内には、ターゲットTが、ターゲット裏板9を介してターゲットステージ11によって支持され、ガラス基板Sが、基板ステージ12によって支持されて、互いに対向するように配置される。
この例では、コントローラ2の制御部21は、ターゲットTを、まず、図6に示すように、その中心位置が永久磁石14a,14bの中間の直下に位置するように、ターゲット移動部15を制御して、配置させる。ここで、ターゲットT表面には、同図に示すように、永久磁石14a,14bによって磁界Hが生成される。
【0045】
真空チャンバ5内がグロー放電がなされる所定の真空度とされ、直流電源13によって陰極としてのターゲットTと陽極としての平板状の基板ステージ12との間に所定の直流電圧が印加されると、真空チャンバ5内に導入されたアルゴンガスが、グロー放電によって電離して、アルゴンイオンと電子とに分離し、アルゴンイオンがターゲットT表面に衝突し、ターゲットT表面を削るスパッタリングが開始され、ガラス基板S上にスパッタされた粒子が堆積する。
ここで、ターゲットTの背面側に配置された永久磁石14a,14bによって、電界に直交するように磁界が発生しており、このターゲットT表面の直交電磁界によって、グロー放電によって発生した電子をアルゴンに繰り返し衝突させてアルゴンの電離を促進させ、プラズマ密度が高められる。
【0046】
永久磁石14a,14bの直下の磁界の大きさが所定値以上の領域には、プラズマが集中して、特にスパッタリングが進行してターゲットT表面が削られ、同図に示すように、板状のターゲットTに溝状の凹部34が形成されていく。
制御部21は、予め設定されたスパッタ電力P0、初期ターゲット膜厚d0[mm]、及び定数A(正の実数)と、上記領域におけるスパッタリング開始からの経過時間t[h]とに基づいて、式(1)によって、ターゲット残膜厚d[mm]を求め、ターゲット残膜厚dが所定値(例えば、略0)まで減少したか否か判断する。
所定値まで減少したと判断したならば、制御部21は、ターゲットTを所定距離変位っせるように対応するモータ31の回転量を求め、モータ駆動部25を介してモータ31を所定の回転量回転させる。
これによって、ボールねじ32のねじ軸32aが所定の回転量回転し、ターゲットステージ11がねじ軸32aの軸方向に沿って並進運動して、図7に示すように、ターゲットTが、ガラス基板S及び永久磁石14a,14bに対して所定距離変位する。
【0047】
これによって、ターゲットTは、磁界の強さが所定値以上で、プラズマが集中する領域に、板状のターゲットTのうち、残膜厚が初期ターゲット膜厚d0に略等しい新品のターゲットと同じ領域が重なるように移動し、スパッタリングが継続して実施される。
ここで、ターゲットTが移動しても、ガラス基板Sに対して磁界分布は変動しないために、磁界の強さが所定値以上でターゲットT近傍のプラズマが集中する領域の位置は、ガラス基板Sに対して変動せず、したがって、スパッタされる粒子が比較的多数放出される箇所は変動せず、ガラス基板Sに堆積する膜厚分布は均一に保たれる。
【0048】
このように、この例の構成によれば、ターゲットT表面の磁界を変動させてターゲット表面領域を有効に使用することができるので、新品のターゲットに交換することで生じる段取りロスやターゲットの材料費を低減し、製造に要するコストを低減することができる。
さらに、ガラス基板Sに対して磁界を変動させずに、ターゲットTを移動させるため、ターゲットT近傍のプラズマが集中する領域(すなわち、プラズマ密度の分布)もガラス基板Sに対して変動することがなく、スパッタされた粒子が比較的多数放出される箇所も変動しないので、ガラス基板Sに成膜される膜厚の分布がガラス基板S全体に亘って均一に保つことができる。
【実施例2】
【0049】
図8は、この発明の第2実施例に係るプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す斜視図、また、図9は、同プラズマディスプレイパネルの製造方法を説明するための処理手順図である。
この例のプラズマディスプレイパネルの製造方法では、透明電極層の形成及び保護膜の形成のために、実施例1で述べたスパッタリング装置1を用いる。
【0050】
まず、図8に示すように、前面基板41を製造するために、ガラス基板42の内面に水平方向Hに沿って平行に透明電極43a,44aを形成する(ステップSA11(図9))。
ここで、透明電極43a,44aは、酸化錫やITO(Indium Tin Oxide)等からなっている。すなわち、ターゲットTとして、酸化錫やITOを用い、スパッタリング装置1によって、スパッタリングを実施して成膜した後、フォトリソグラフィによってパターニングして、透明電極3a,4aを形成する。
【0051】
次に、抵抗値を小さくするためのバス電極(トレース電極)43b,44bを水平方向Hに沿って透明電極43a,44aの下面側に形成する(ステップSA12)。ここで、バス電極43b,44bは、Al,Cu、Ag等からなっている。こうして、透明電極43a,44a及びバス電極43b,44bとから走査電極43及び維持電極(共通電極)44が形成される。
次に、走査電極43及び維持電極44を被覆する透明誘電体層45を形成する(ステップSA13)。ここで、透明誘電体層45は、例えばPbO(酸化鉛)等の低融点ガラスからなっている。
【0052】
次に、ブラックマスク(不図示)を形成する(ステップSA14)。
次に、透明誘電体層45を放電から保護するための保護膜46を形成する(ステップSA15)。ここで、保護膜46は、MgO(酸化マグネシウム)等からなっている。すなわち、ターゲットTとして、MgO等を用い、スパッタリング装置1によって、スパッタリングを実施して、透明誘電体層5の内面にMgO等を成膜して保護膜46を形成する。こうして、前面基板41が完成する。
【0053】
一方、図8に示すように、背面基板48を製造するために、ガラス基板49の上面に垂直方向Vに沿って平行にデータ電極51を形成する(ステップSB11(図9))。ここで、アドレス電極(データ電極)51は、Al(アルミニウム),Cu(銅)、Ag(銀)等からなっている。
次に、アドレス電極51を被覆する白誘電体層52を形成する(ステップSB12)。次に、白色誘電体層52上に、放電セルを画成するために、ストライプ状に隔壁54を形成する(ステップSB13)。隔壁54は、例えば、光硬化ペーストを硬化させて所定の凹凸パターンを形成した後、焼成処理を施して作成される。
【0054】
次に、隔壁54,54間に蛍光体層55を形成する(ステップSB14)。蛍光体層15は、放電ガスの放電によって発生する紫外線を可視光に変換する赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、及び青色蛍光体層に塗り分けられてなっている。こうして、背面基板48が完成する。
次に、スクリーン印刷法等によって、背面基板48のガラス基板49の表示面の周縁部に、ガラスフリットを含むガラスペーストを塗布する(ステップSB15)。
【0055】
次に、背面基板48を所定の温度で熱処理して、蛍光体層55の焼成と同時にガラスぺーストの予備焼成を行って、シールフリット層を形成する。
次に、前面基板41と背面基板48とを100μm程度のギャップを隔てて互いに対向した状態で固定して、両基板41,48間に放電空間53が形成されるように組み立てる(ステップSC16)。
【0056】
次に、封着工程を実施する。すなわち、両基板41,48の周縁部を、シールフリット層によって気密封着する(ステップSC17(図9))。
次に、ベーキング処理を行いながら放電空間53を真空に排気し、放電空間53内に放電ガスの導入を開始する(ステップSC18)。放電ガスとしては、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、キセノンガス(Xe)等の不活性ガスが、単独で又は混合されて用いられる。
放電ガスの充填が終了した後、通気管が過熱によってチップオフされ、開口端部が閉塞される。この後、エージングを行う(ステップSC19)。
このようにして、放電空間53内に放電ガスが充填されて、図8に示すようなプラズマディスプレイパネル56が完成する。
【0057】
このように、この例の構成によれば、実施例1で述べたスパッタリング装置1を用いて、透明電極層の形成及び保護膜の形成を行うので、製造のためのコストを抑制しつつ、例えば、透明電極層や保護膜の特性を向上させ、パネルの歩留りを向上させ、信頼性を向上させることができる。
【実施例3】
【0058】
図10は、この発明の第3実施例であるプラズマ表示装置の製造方法によって製造されたプラズマ表示装置の構成を示すブロック図である。
この例のプラズマ表示装置61は、図10に示すように、モジュール構造を有するものとして設計されており、具合的には、アナログインタフェース(以下、IFという)62とPDPモジュール63とから構成されている。
【0059】
アナログIF62は、同図に示すように、クロマ・デコーダを有するY/C分離回路64と、A/D変換回路65と、PLL回路を有する同期信号制御回路66と、画像フォーマット変換回路67と、逆γ(ガンマ)変換回路68と、システムコントロール回路69と、PLE制御回路71とから構成されている。
概略的には、アナログIF62は、受信したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換した後、このデジタル映像信号をPDPモジュール63に供給する。例えば、テレビチューナから発信されたアナログ映像信号は、Y/C分離回路64において、RGBの各色の輝度信号に分解された後、A/D変換回路65において、デジタル映像信号に変換される。
【0060】
この後、PDPモジュール63の画素構成と映像信号の画素構成とが異なる場合には、画像フォーマット変換回路67において、必要な画像フォーマットの変換が行われる。PDPの入力信号に対する表示輝度の特性は線形的に比例するが、通常の映像信号は、CRTの特性に合わせて、予め補正されている(γ変換されている)。
このため、A/D変換回路65において、映像信号のA/D変換を行った後、逆γ変換回路68において、映像信号に対して逆γ変換を施し、線形特性に復元されたデジタル映像信号を生成する。このデジタル映像信号は、RGB映像信号としてPDPモジュール63に出力される。
【0061】
アナログ映像信号には、A/D変換用のサンプリングクロック及びデータクロック信号が含まれていないため、同期信号制御回路66に内蔵されているPLL回路がアナログ映像信号と同時に供給される水平同期信号を基準として、サンプリングクロック及びデータクロック信号を生成し、PDPモジュール63に出力する。
アナログIF62のPLE制御回路71は輝度制御を行う。具体的には、平均輝度レベルが所定値以下である場合には、表示輝度を上昇させ、平均輝度レベルが所定値を超える場合には、表示輝度を低下させる。
【0062】
システムコントロール回路69は、各種制御信号をPDPモジュール63に出力する。PDPモジュール63は、さらに、デジタル信号処理・制御回路72と、パネル部73と、D/Dコンバータを内蔵するモジュール内電源回路74とから構成されている。
デジタル信号処理・制御回路72は、入力IF信号処理回路75と、フレームメモリ76と、メモリ制御回路77と、ドライバ制御回路78とから構成されている。
例えば、入力IF信号処理回路75に入力された映像信号の平均輝度レベルは、入力IF信号処理回路75内の入力信号平均輝度レベル演算回路(不図示)によって計算され、例えば、5ビットデータとして出力される。また、PLE制御回路71は、平均輝度レベルに応じてPLE制御データを設定し、入力IF信号処理回路75内の輝度レベル制御回路(不図示)に入力する。
【0063】
パネル部73は、PDP56と、走査電極を駆動する走査ドライバ79と、データ電極を駆動するデータドライバ81と、PDP56及び走査ドライバ79にパルス電圧を供給する高圧パルス回路82と、高圧パルス回路82からの余剰電力を回収する電力回収回路83とから構成されている。
PDP56は、例えば1365個×768個に配列された画素を有するものとして構成されている。PDP56では、走査ドライバ79が走査電極を制御し、データドライバ81がデータ電極を制御することにより、これらの画素のうちの所定の画素の点灯又は非点灯が制御され、所望の表示が行われる。
なお、ロジック用電源がデジタル信号処理・制御回路72及びパネル部73にロジック用電源を供給している。さらに、モジュール内電源回路74は、表示電源から直流電力を供給され、この直流電力の電圧を所定の電圧に変換した後、パネル部73に供給している。
【0064】
次に、図10を参照して、この例のプラズマ表示装置61の製造方法について概略的に説明する。
まず、PDP56と、走査ドライバ79と、データドライバ81と、高圧パルス回路82と、電力回収回路83とを一基板上に配置し、パネル部73を形成する。さらに、パネル部73とは別個にデジタル信号処理・制御回路72を形成する。
このようにして形成されたパネル部73及びデジタル信号処理・制御回路72を一つのモジュールとして組み立て、PDPモジュール63を形成する。さらに、PDPモジュール63とは別個にアナログIF62を形成する。
このように、PDPモジュール63とは別個にアナログIF62を形成した後、双方を電気的に接続することによって、プラズマ表示装置61が完成する。
【0065】
このように、プラズマ表示装置61をモジュール化することによって、プラズマ表示装置61を構成する他の構成部品とは別個に独立にプラズマ表示装置61を製造することが可能となり、例えば、プラズマ表示装置61が故障した場合には、PDPモジュール63毎交換することによって、補修の簡素化及び迅速化を図ることができる。
【0066】
この例の構成によれば、プラズマ表示装置をモジュール化することによって、例えば、故障時にPDPモジュール毎交換して、補修の簡素化及び迅速化を図ることができる。
【0067】
以上、この発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
例えば、上述した実施例では、ターゲットを一次元的に移動させる場合について述べたが、二次元的に、所定の経路に沿って(例えば、ジグザグ状や渦巻状に)移動させるようにしても良い。
また、一対の永久磁石に限らず、複数対でも良いし、単一の永久磁石を配置しても良い。また、その形状も柱状に限らない。また、柱状の永久磁石の組合せに限らず、例えば、略櫛状(例えば略E字状)としても良し、二重の同心円状に配置しても良い。また、永久磁石による静磁界に代えて、又はこれに加えて、定常電流による磁界を用いるようにしても良い。
【0068】
また、基板上に化合物の成膜を行う場合に、共スパッタリング法によっても良いし、モザイク状のターゲットを用いても良いし、混晶ターゲットを用いても良い。また、例えば、ガラス基板上にMgOを成膜する場合に、雰囲気中に酸素ガスを混合して、Mgをスパッタするようにしても良い。
また、永久磁石と基板との位置を固定し、ターゲットを永久磁石と基板とに対して変位させる場合について述べたが、ターゲットの位置を固定し、永久磁石と基板とをターゲットに対して変位させるようにしても良い。また、ターゲットと、永久磁石及び基板とを、共に移動させるようにしても良い。
【0069】
また、ターゲットを消費電力に基づいて、残膜厚が所定値に達したと判断された際に移動させる場合について述べたが、ターゲットを所定の経路に沿って、一定の速度で移動させるようにしても良い。
また、費電力量に基づいて、対応する移動距離を求め、ターゲットを移動させるようにしても良い。
また、保護膜として、酸化マグネシウム膜を形成する場合のほか、酸化バリウム等、他のアルカリ土類金属の酸化物を用いる場合に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
マグネトロン方式のスパッタリング装置として、プレーナマグネトロン方式のほか、同軸マグネトロン方式や、リングマグネトロン方式のスパッタリング装置を用いる場合に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の第1実施例であるスパッタリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】同スパッタリング装置のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】同スパッタリング装置において、スパッタリングによって消費される積算電力量とターゲット残膜厚との間の関係を示す示性図である。
【図4】同スパッタリング装置において磁界を発生させるために用いられる永久磁石の斜視図である。
【図5】同スパッタリング装置を構成するターゲット移動部の下面図である。
【図6】同スパッタリング装置の動作を説明するための説明図である。
【図7】同スパッタリング装置の動作を説明するための説明図である。
【図8】この発明の第2実施例に係るプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す斜視図である。
【図9】同プラズマディスプレイパネルの製造方法を説明するための処理手順図である。
【図10】この発明の第3実施例であるプラズマ表示装置の製造方法によって製造されたプラズマ表示装置の構成を示すブロック図である。
【図11】従来技術を説明するうための説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 スパッタリング装置
2 コントローラ(駆動制御手段)
6 真空チャンバ(真空容器)
11 ターゲットステージ
12 基板ステージ
13 直流電源(プラズマ生成手段の一部)
14a,14b 永久磁石(磁界生成手段)
15 ターゲット移動部(移動手段)
21 制御部
22 記憶部
31 モータ
32 ボールねじ
41 前面基板(第1の基板又は第2の基板)
43 走査電極
43a 透明電極
43b バス電極
44 維持電極
44a 透明電極
44b バス電極
45 透明誘電体層
46 保護膜
48 背面基板(第2の基板又は第1の基板)
51 アドレス電極
56 プラズマディスプレイパネル
61 プラズマ表示装置
S ガラス基板(基板)
T ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に、陰極として配置されたターゲットと、陽極として配置された基板との間に、電圧を印加してプラズマを生成するプラズマ生成手段と、少なくとも前記プラズマの一部を前記ターゲットの近傍に閉じ込めるための磁界を生成する磁界生成手段とを備えてなり、前記ターゲットをスパッタして、前記基板上に堆積させるスパッタリング装置であって、
前記ターゲットを、前記基板の表面に平行な方向に沿って、前記基板及び前記磁界生成手段に対して変位させる移動手段と、前記移動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記ターゲットの残量分布に基づいて、前記移動手段を駆動制御することを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、スパッタリングによる前記ターゲットの消費量に基づいて、前記ターゲットのうち、現在主としてスパッタされている領域の残膜厚を求め、該残膜厚が所定値に達したと判断すると、前記移動手段を駆動制御して、前記ターゲットを、残膜厚が比較的厚い領域が主としてスパッタされる領域となるように、前記基板及び前記磁界生成手段に対して変位させることを特徴とする請求項2記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、前記ターゲットの消費量を、スパッタリングに要した消費電力量に基づいて求めることを特徴とする請求項3記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、前記移動手段を駆動制御して、前記ターゲットを所定の経路に沿って前記基板及び前記磁界生成手段に対して移動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記駆動制御手段は、前記移動手段を駆動制御して、前記ターゲットを所定の速度で移動させることを特徴とする請求項5記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
平板状の前記ターゲットと前記基板とが、前記真空容器内に互いに対向するように配置され、前記プラズマ生成手段は、前記ターゲットの表面に垂直な方向に電界を生成し、前記磁界生成手段は、前記電界に直交する方向に静磁界を生成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
前記磁界生成手段は、前記ターゲットの前記基板に対面する側と反対側に配置された単一の永久磁石又は複数の永久磁石の組合せからなることを特徴とする請求項7記載のスパッタリング装置。
【請求項9】
前記磁界生成手段は、前記基板に対して変位しないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のスパッタリング装置。
【請求項10】
前記駆動制御手段は、スパッタリングによる前記ターゲットの消費量に基づいて、前記ターゲットのうち、現在主としてスパッタされている領域の残膜厚を求め、該残膜厚が所定値に達したと判断すると、残膜厚が比較的厚い所定の領域までの移動距離を求め、該移動距離に基づいて、前記移動手段を駆動制御して、前記ターゲットを、前記所定の領域が主としてスパッタされる領域となるように、前記基板及び前記磁界生成手段に対して前記移動距離変位させることを特徴とする請求項3、4又は5記載のスパッタリング装置。
【請求項11】
前記移動手段は、モータと、該モータの回転運動を並進運動に変換して前記基板に伝達する伝達手段とを有し、前記駆動制御手段は、前記移動距離に対応する前記モータの回転量を求め、該回転量に基づいて、前記モータを駆動制御することを特徴とする請求項10記載のスパッタリング装置。
【請求項12】
前記駆動制御手段は、前記消費電力量を、スパッタに要する電力と、スパッタ時間とに基づいて求めることを特徴とする請求項4乃至11のいずれか1に記載のスパッタリング装置。
【請求項13】
前記駆動制御手段は、前記消費電力量に基づいて、対応する前記移動距離を求め、前記移動手段を駆動制御して、前記ターゲットを、前記基板及び前記磁界生成手段に対して前記移動距離変位させることを特徴とする請求項10、11又は12記載のスパッタリング装置。
【請求項14】
前記ターゲットの材料としては、前記基板に、電極層又は配線層を形成するための導電性物質が選択されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1に記載のスパッタリング装置。
【請求項15】
前記プラズマ生成手段は、不活性ガスを含むガスを電離させて前記プラズマを生成することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1に記載のスパッタリング装置。
【請求項16】
プラズマディスプレイパネルを構成し、共に導電体層及び誘電体層を含む第1の基板と第2の基板とを、封着材層を介し間隙を隔てて互いに対向させた状態で配置し、前記第1の基板及び前記第2の基板を封着するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
請求項1乃至15のいずれか1に記載のスパッタリング装置を用いて、前記第1の基板及び/又は前記第2の基板の前記導電体層及び前記誘電体層のうち少なくとも一部を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項17】
プラズマディスプレイパネルを製造する第1の工程と、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する回路とともに前記プラズマディスプレイパネルを一つのモジュールとして製造する第2の工程と、画像信号のフォーマット変換を行い、前記モジュールに送信するインタフェースを前記モジュールに電気的に接続する第3の工程とを含むプラズマ表示装置の製造方法であって、
前記第1の工程では、請求項16記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法が実施されることを特徴とするプラズマ表示装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載のプラズマ表示装置の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするプラズマ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−2220(P2006−2220A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180331(P2004−180331)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】