説明

スパンボンド不織布およびその製造方法

【課題】 低融点のポリエステルでありながら、構成繊維の製糸性および開繊性が良好で、スパンボンド法によって製造することが可能であり、また、熱接着シートとして使用の際には低い温度で加工することができ、さらには、熱収縮率が小さく、寸法安定性や耐熱性が良好なスパンボンド不織布を提供する。
【解決手段】 ポリエステル共重合体によって構成されるスパンボンド不織布であって、ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めており、該ポリエステル共重合体中にポリオレフィン系ワックスを含み、かつ高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含んでいるスパンボンド不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステル共重合体からなるスパンボンド不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性、さらにはリサイクル性等から、衣料、産業資材として不可欠のものとなっており、様々な分野において多く使用されている。
【0003】
例えば、自動車用内装材において、複数の繊維製品を接着等により積層したものが使用され、リサイクルを考慮してすべてポリエステル製のものが求められる。接着積層のために用いるホットメルトシートとして、熱処理の際の収縮が小さく、得られる積層体が、高温下で寸法安定性が良好であるとして、芯部にポリエチレンテレフタレートを配し、鞘部にテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分および1,4−ブタンジオール成分を共重合したポリエステル系共重合体を配した芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布を本出願人は、提案している(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1のスパンボンド不織布の鞘部(バインダー成分)は、融点が150〜200℃であり、熱接着処理の際には加工温度を低く設定することができずコスト的に不利である。しかしながら、ポリエステルとして、より融点が低いものを選択しようとすると、非晶性であることが多く、冷却固化速度が遅い重合体となり、このような重合体を用いてスパンボンド法により繊維を得ようとすると、スパンボンド法はノズル孔より吐出した糸条が牽引細化されるまでの距離(紡糸ノズル〜牽引ジェットまでの距離)が極めて短いため、繊維同士が密着を起こしやすく、良好に開繊できないという問題がある。また、結晶性であったとしても、融点が低い重合体は、ガラス転移温度も低く、冷却固化速度が遅いために、上記と同様で、スパンボンド法では繊維同士を密着させずに操業性良く得ることが困難である。
【特許文献1】特開2001−3256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点を解決するものであって、低融点のポリエステルでありながら、構成繊維の製糸性および開繊性が良好で、スパンボンド法によって製造することが可能であり、また、熱接着シートとして使用の際には低い温度で加工することができ、さらには、熱収縮率が小さく、寸法安定性や耐熱性が良好なスパンボンド不織布を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を達成するために検討した。融点およびガラス転移温度が低い重合体をスパンボンド法に適用した際に糸切れが大きい原因は、紡糸ノズルより吐出した糸条を牽引ジェットで牽引する際に、いまだ固化していない状態で金属製のジェットに接触するため摩擦抵抗値が大きいからではないかと考えた。また、融点およびガラス転移温度が低い重合体の冷却固化速度を速めることを検討した。
【0007】
その結果、結晶性を有する低融点のポリエステル共重合体に2種の添加剤を加えることによって、糸切れなく操業性を良く紡糸でき、かつ、重合体の配向結晶化も促進させ、紡糸中に繊維相互間が粘着することを防止できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、ポリエステル共重合体によって構成されるスパンボンド不織布であって、ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めており、該ポリエステル共重合体中にポリオレフィン系ワックスを含み、かつ高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含んでいることを特徴とするスパンボンド不織布を要旨とするものである。
【0009】
また、本発明は、 ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めているポリエステル共重合体であって、ポリオレフィン系ワックスを含み、かつ高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含んでいるポリエステル共重合体を、該ポリエステル共重合体の融点よりも40〜90℃高い温度で溶融して紡糸口金から紡糸糸条を吐出させ、紡糸糸条を紡糸口金直下の牽引ジェットに導引して牽引速度2500〜6000m/分で牽引細化した後、移動式捕集面上に開繊させながら堆積させてウエブを得た後、不織布化することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法を要旨とするものである。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めている。
【0012】
ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とすることにより、ポリエステル共重合体は結晶性が良好なものとなる。ジカルボン酸成分中にテレフタル酸は60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。テレフタル酸 以外の酸成分として、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を発明の効果を損なわない範囲にて共重合してもよい。
【0013】
ジオール成分、1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを構成成分とし、1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上占める。1,6−ヘキサンジオールの量を50モル%以上とすることによりポリエステル共重合体の融点を120〜150℃の範囲とすることができ、1,6−ヘキサンジオールの好ましい量は60〜95モル%、得られるポリエステル共重合体の好ましい融点は120〜140℃である。ポリエステル共重合体の融点が120℃未満であると、ノズル孔より吐出した糸条は冷却固化する速度が遅く、糸条表面は冷えずに粘着性を有する状態で存在し、糸条同士が密着や集束しやすく、個々の繊維が良好に開繊せずに束状になって堆積される。また、紡糸段階で糸切れが発生し操業性が劣る。得られるスパンボンド不織布においては、高温雰囲気下での熱安定性、耐熱性に劣るものとなる。一方、ポリエステル共重合体の融点が150℃を超えるとガラス転移温度も上がる傾向にあるため、得られるスパンボンド不織布の柔軟性や風合いが硬くなる傾向となる。
【0014】
本発明に用いる上記のポリエステル共重合体には、ポリオレフィン系ワックスを含む。ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリプロピレン系ワックスやポリエチレン系ワックスなどが挙げられ、本発明においてはポリエチレン系ワックスを用いることが好ましく、より具体的には、数平均分子量300〜5000、比重0.88〜0.97の低分子量ポリエチレンおよびこれらの誘導体からなるワックスが好ましく、さらには数平均分子量400〜4200、比重0.90〜0.97の低分子量ポリエチレンおよびこれらの誘導体からなるワックスが好ましい。また、数平均分子量300〜5000、比重0.88〜1.10の変性型ポリエチレンおよびこれらの誘導体からなるワックスが好ましく、さらには数平均分子量400〜4200、比重0.88〜1.10の構造中に導入官能基を有する変性型ポリエチレンおよびこれらの誘導体からなるワックスが好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系ワックスをポリエステル共重合体に含有させることにより、ポリエステル共重合体に滑性を付与することができ、溶融紡糸において、糸条同士が密着することを防止することができる。
【0016】
ポリエステル共重合体中に含有するポリオレフィン系ワックスの量は、繊維中濃度にして0.05〜2.0質量%がよく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。添加量が少ないと、溶融紡糸工程における糸条同士が密着したり、集束したりすることを防ぐ効果が十分に発揮されない傾向となり、添加量が多過ぎると、重合体中に存在する異物となって、紡糸時に糸切れが多く発生することとなり、操業性低下の原因となる。また、過度にブリードアウトし、スパンボンド不織布の表面は油っぽくベタツキ感を有するものとなる。
【0017】
本発明に用いる上記のポリエステル共重合体には、高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含んでいる。本発明において、これらの高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンは、融点が高くないため溶融紡糸における冷却固化速度の遅いポリエステル共重合体の冷却固化速度を促進させるために使用する。紡糸ノズルより吐出した糸条の冷却固化速度が向上させることにより、紡糸ノズルより吐出された糸条は切れにくく、ノズル直下にある牽引ジェットへ糸条を良好に導引することができ、操業性が良好となる。また、糸切れが発生しにくく、地合いの良好なスパンボンド不織布を得ることができる。
【0018】
高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは二酸化チタンの含有量は、繊維中濃度にして0.05〜2質量%がよく、好ましくは0.1〜1質量%である。含有量が少ないと、溶融紡出糸条の冷却固化速度促進効果が良好に発揮されず、操業性に劣り、糸条表面が冷えにくいために、糸条が束になったり、繊度斑や開繊不良が生じやすい。一方、含有量が多いと、紡糸ノズルやフィルターの目詰まりが生じやすく、これが原因で糸切れが発生して操業性が低下する傾向となる。
【0019】
ポリエステル共重合体に含有させる方法としては、粉末状の剤を押出機に設けられているサイドフィーダーより導入して溶融押出しと共に混練添加するとよい。また、事前に混練したコンパウンドあるいはマスターバッチを用いて添加するとよい。溶融押出しと共に混練添加する場合は、分散性を向上させるために分散剤を適宜用いるとよい。
【0020】
本発明に用いる高級脂肪酸金属塩としては、下記化学一般式(A)で表される直鎖状のものを好適に用いる。
(Cn−1 2(n−m )-1 COOa+・・・・・・(A)
n:10〜30の整数
m:脂肪鎖中の不飽和結合の数
X:水素原子あるいはLi、K、Na、Ca、Mg、Zn、Pb、Al、Ba、Cd から選ばれた少なくとも1 種の金属原子
a:原子X のイオン価数
上化学一般式(A)で示される直鎖状高級脂肪酸の具体例としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコ酸、モンタン酸、ノナコサン酸、メリシン酸、カプロレイン酸、9−ウンデシレン酸、リンデル酸、2−トリデセン酸、ミリストレイン酸、6−ペンタデセン酸、2−パルミトレイン酸、2−ヘプタデセン酸、オレイン酸、cis−9−ナデセン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸、cis−7−キサコセン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。ならびに、Li、K、Na、Ca、Mg、Zn、Pb、Al、Ba、Cdから選ばれた金属塩が挙げられる。金属塩としては、Ca、Mg、Zn塩などが、非水溶性で、肌に触れた時の刺激がないことからより好ましい。また、上記脂肪酸金属塩の中でも、最も入手しやすく安価であり重合体中に添加しやすく、滑性付与効果も有する点からは、ステアリン酸、そのCa、Mg、Zn塩などが好適である。ポリエステル共重合体の冷却固化促進の効果がより大きい点で、モンタン酸Ca塩あるいはモンタン酸Na塩を好適に用いることができる。
【0021】
フェニルホスホン酸金属塩としては、フェニルホスホン酸亜鉛塩、フェニルホスホン酸カルシウム塩、フェニルホスホン酸マグネシウム塩等を使用することができる。ポリエステル共重合体の冷却固化促進の効果がより大きい点で、フェニルホスホン酸亜鉛を好適に用いることができる。
【0022】
酸化チタンとしては、平均粒子径が0.04〜2μmのものを用いるとよく、0.04〜1μmのものがより好ましい。平均粒子径が小さいと、二次凝集を起こしやすく、フィルターや紡糸ノズルの目詰まり発生や、糸切れが発生して操業性が低下する原因になる。また、粒子径が大きいと、酸化チタン粉末の分散性が良くなく、フィルターや紡糸ノズルの目詰まり発生や、糸切れが発生して操業性が低下する原因になる。酸化チタンにはルチル型二酸化チタンやアナターゼ型二酸化チタンがあり、いずれも使用できるが、耐候性や耐熱性が良好な点からルチル型二酸化チタンが好ましい。
【0023】
本発明におけるポリエステル共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
【0024】
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリエステル共重合体によって構成される単相形態の長繊維が堆積したなるものである。すなわち、貼り合せ型や芯鞘型等の形態にて高融点重合体と複合された複合形態ではなく、ポリエステル共重合体による単相形態であるため、熱接着シートとして使用の場合は、接着のための熱処理によって繊維を構成する重合体はすべて溶融し、すべてがバインダーとして機能するため、被接着物同士を強固に熱接着することができる。
【0025】
本発明のスパンボンド不織布は、昇温速度10℃/分で示差熱分析した際に、明確な吸熱ピークが120℃〜150℃の間に発現し、かつ融解熱量(ΔHm)が30J/g以上であることが好ましい。スパンボンド不織布が、上記した明確な吸熱ピークを発現するため、雰囲気温度を向上させた場合、ガラス転移温度を超えても結晶崩壊点である融点に雰囲気温度が到達するまで重合体の流動を持ちこたえられ、その形状を保持できる。結晶融解による吸熱ピークを示さない結晶性の低い重合体であると、ガラス転移温度を超えると流動性が極端に上昇するため、繊維を構成する重合体は流動しやすく、高温雰囲気下での形態保持には適さない。
【0026】
上記吸熱ピークは、スパンボンド不織布を構成する重合体の結晶融解による吸熱ピーク時の温度(融点)であり、この吸熱ピークを120℃〜150℃の間に発現させることで、スパンボンド不織布を熱接着シートとして使用する場合に、低い接着温度にて不織布を構成するポリエステル共重合体を溶融させることができるため、熱接着処理温度を低温で行うことが可能であり、被接着対象物が熱の影響を受けにくくの品質や性能を低下させにくいため、被接着対象物として様々な素材を選択し、良好に接着処理を施すことができる。吸熱ピークを120℃以上とすることにより、スパンボンド不織布は高温雰囲気下で使用した場合の熱安定性、耐熱性を保持することができる。また、吸熱ピークを150℃以下とすることにより、上記したように接着温度を高い温度に設定せずとも熱接着加工を施すことができるので、加工性が良好で経済的にも有利である。
【0027】
スパンボンド不織布を示差走査熱量分析(DSC分析)した際の融解熱量(ΔHm)とは、昇温した際にスパンボンド不織布を構成する重合体の全結晶を融解させるのに必要な熱量であり、示差走査熱量曲線(DSC曲線)において重合体の結晶融点付近に現れる結晶融解による吸熱ピークの面積から求める。融解熱量は、主として、スパンボンド不織布を構成する繊維の結晶性に依存し、繊維を構成する重合体の結晶性が高いと、融解熱量の値は大きくなる。融解熱量を30J/g以上とすることにより、繊維は十分な結晶性を有し、スパンボンド不織布の寸法安定性や機械的特性が良好となる。また、熱に対する安定性が良好で、高温下で用いた際にスパンボンド不織布は収縮を発生しにくい。また、スパンボンド不織布を熱接着シートとして使用した場合は、熱接着シート(スパンボンド不織布)における溶融または軟化した熱接着重合体が流動することなく、また、接着点や接着面が剥がれることなく、接着強力を保持できる。
【0028】
本発明のスパンボンド不織布は、降温速度10℃/分で示差熱分析した時に、降温時の示差熱曲線に降温結晶化温度(Tc)が存在する。降温結晶化温度は、昇温により溶融した繊維が降温によって冷却され結晶化する時の温度であり、示差熱曲線に存在する発熱ピーク点の温度である。降温結晶化温度が存在すると、一旦、溶融した後に結晶化する能力が高く、短時間での結晶固化が可能となる。したがって、このような降温結晶化温度を有するスパンボンド不織布は、ホットタック性能に優れているため、熱接着加工直後の被接着対象物との固着速度が早く、接着加工時の張力や衝撃による負荷に対しても、接着部分が剥離しにくい性質を持つ。また、一般生活資材や袋状物に加工する際のヒートシール加工に対しても好適である。短時間での結晶固化が可能であるため、熱接着加工サイクルを短縮することができる。また、本発明のスパンボンド不織布は、熱接着シートとして機能させる場合、降温結晶化温度は80℃以上がよく、降温結晶化温度を80℃以上とすることにより、熱接着処理により一旦溶融した繊維が次いで降温結晶化温度に達するまでに時間が早く、被接着物同士を良好に接着することができる。なお、降温結晶化温度の上限は、本発明の用いる上記のポリエステル共重合組成より130℃程度となる。
【0029】
本発明のスパンボンド不織布の結晶化熱量(ΔHc)は、30J/g以上であることが好ましい。結晶化熱量は発熱ピーク時の発熱量であり、一旦昇温した後に降温した際のDSC曲線における発熱ピークの面積から求められる。これは、一旦溶融した繊維が冷えて結晶固化するときの能力の大きさを表し、発熱量が大きいほどその能力が高いことを意味する。スパンボンド不織布の結晶化熱量が30J/g以上であると、熱接着処理により一旦溶融した繊維が次いで固着するまでの時間が早く、接着点を良好に形成でき、接着強力が保持できる。
【0030】
本発明のスパンボンド不織布において、80℃以上の降温結晶化温度が存在し、かつ結晶化熱量が30J/g以上であると、熱接着固化速度が速く、低温ヒートシール性に優れているため、熱接着加工での単位時間当たりの生産速度を上げることが可能となる。したがって、低温で熱接着ができるほど自動包装機適性や作業性が良くなるため、熱接着シートとして使用した場合や、スパンボンド不織布をシートシール加工する際に、接着スピードが向上し、ロスの低減が計れる。また、得られる製品の仕上がりが良好となる。
【0031】
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の横断面は特に限定されず、円形断面以外の三角型、四角型、六角型、扁平型、Y字型、T字型など種々の異形断面であってもよい。異形断面は、単位ポリマー質量当りの表面積が大きくなることから、溶融製糸の際の紡出糸条の冷却性、開繊性に優れている。中心に中空部を有するものでもよい。
【0032】
単糸繊度は、特に限定しないが、0.5〜10デシテックスがよい。単糸繊度が0.5デシテックス未満であると、紡糸引取工程において単糸切断が頻発し、操業性とともに単繊維強力の低下、ひいては得られる不織布の強度も劣る傾向となり、10デシテックスを超えると、紡出糸条の冷却が不十分になるとともに、得られるスパンボンド不織布の柔軟性が損なわれるやすい。
【0033】
スパンボンド不織布の不織布形態は、特に限定されないが、熱エンボス加工によって部分的に熱圧着されて、不織布形態を保持しているものよい。機械的強度を保持しつつ優れた柔軟性を具備させることができるためである。
【0034】
スパンボンド不織布の目付は、用途に応じて適宜選択すればよいが、10〜200g/m2の範囲が好ましい。この範囲にすることによって、機械的強度と柔軟な風合いとを併せ持つことができる。また、スパンボンド不織布を熱接着シートとして使用した場合は、熱接着時に熱が伝わりやすく、良好な接着強度を得ることができる。
【0035】
本発明のスパンボンド不織布は、単位目付あたりのトータルハンド値が3g/(g/m2)以下であることが好ましい。トータルハンド値は、柔軟性の指標であり値が小さい程、柔軟性に優れる。また、柔軟性の他の指標である単位目付あたりの圧縮剛軟度は2g/(g/m2)以下であることが好ましい。圧縮剛軟度は、スパンボンド不織布の縦方向と横方向とを測定し、得られた測定値の平均値を目付で除して求めた値とする。圧縮剛軟度もまた値が小さい程、柔軟性に優れる。トータルハンド値が3g/(g/m2)以下であり、圧縮剛軟度が2g/(g/m2)以下であると、風合いが良好で、柔軟性を要求される衛生材料等や一般生活資材用途に適する。
【0036】
本発明のスパンボンド不織布は、以下の方法によって好適に得ることができる。まず、上記したポリエステル共重合体を得るために、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、重縮合反応を行う。重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。次に、このチップを通常の溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行い、この紡出糸条を牽引細化した後に、移動式捕集面上に公知の開繊器にて開繊させながら堆積させてウェブを得た後、不織布化の手段を施す。
【0037】
ポリエステル共重合体に含有させるポリオレフィン系ワックスは、重縮合反応させる際に投入するとよい。ポリオレフィン系ワックスの滑性を利用してチップの払い出し性が良好となり、また、チップ同士の固着を防ぐことができる。
【0038】
本発明において用いるポリエステル共重合体の相対粘度は、1.3〜1.7範囲が好ましい。この範囲で紡糸延伸することで、延伸配向が十分進んだ長繊維を得ることができる。
【0039】
ポリエステル共重合体の冷却固化速度を促進させるための高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンを含有させる方法は、上記したように粉末状の剤を押出機に設けられているサイドフィーダーより導入して溶融押出しと共に混練添加するとよい。また、事前に混練したコンパウンドあるいはマスターバッチを用いて添加するとよい。
【0040】
溶融紡糸での溶融紡糸温度は、ポリエステル共重合体の融点をTm℃としたときに(Tm+40)℃〜(Tm+90)℃の温度範囲とする。紡糸温度が(Tm+40)℃より低いと、重合体が十分に溶融せず、高速気流による曵糸性や引き取り性に劣る。一方、(Tm+90)℃を超えると、糸条の冷却過程での結晶化が遅れ、糸条間で融着を生じたり開繊性が劣ったりする。
【0041】
紡糸口金より吐出した紡糸糸条は紡糸口金直下の牽引ジェットに導引して牽引細化するが、牽引速度は2500〜6000m/分とする。2500m/分未満では、繊維を構成するポリエステル共重合体の分子配向が十分に増大しないため、また、残留伸度が高い状態となりやすいため、得られる長繊維の引張強力が不十分となり、その結果、得られるスパンボンド不織布の寸法安定性や機械的強力、熱安定性が劣る傾向となる。特に熱エンボス加工により不織布化する場合は、繊維が熱収縮を発生し不織布が幅入りし、また、非エンボス部分においても繊維が熱の影響を受けて、得られるスパンボンド不織布の風合いが低下する。一方、6000m/分を超えると、溶融紡糸時の曵糸限界を超えて糸切れが発生し、さらに繊径の均整度に劣る傾向にあるので、製糸性が低下する傾向となる。
【0042】
ウエブを得た後の不織布化手段は、熱エンボス加工を施すことが好ましい。得られる不織布の風合いや操業性を考慮して、ロールの表面温度は、ポリエステル共重合体の融点よりも10℃低い温度以下に設定する。設定温度の下限は、ポリエステル共重合体の融点よりも50℃低い温度とする。
【発明の効果】
【0043】
一般に、本発明におけるポリエステル共重合体のように融点が低い(ガラス転移温度は0〜20℃)場合、紡糸工程から冷却延伸工程を限られた短い距離で行わざるを得ないスパンボンド法に適用しようとすると、紡出糸条の冷却固化が遅いため、糸条は未だ半溶融状態であり張りがないため、牽引ジェットによる気流や冷却装置からの冷却風に耐えられず、糸揺れが大きくなったり、糸切れが生じやすいため、溶融紡糸が不安定になるが、本発明においては、共重合体に、高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンのいずれかを添加することにより、冷却固化しやすくさせて、かつ、ポリオレフィン系ワックスを添加することにより、さらに糸条同士の密着や糸切れを防止することが可能となり、スパンボンド法によっても操業性良く、不織布を得ることができたものである。
【実施例】
【0044】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値は、以下の方法により測定した。
【0045】
(1)相対粘度(ηrel):フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、オストワルド粘度計を用いて測定した。
【0046】
(2)操業性評価:
<糸切れ>
紡出糸条を牽引ジェットにて引き取る際に、紡糸ノズル4錘分(ノズルホール数120ホール)を観察し、10分あたりに発生する糸切れが本数を評価した。
○:0〜2本の発生で良好
△:3〜5本の発生でやや不良
×:6本以上発生し不良
<牽引ジェットへの植込み性>
ノズルから紡出された糸条を牽引ジェットに植え込みのし易さを評価した。
○:糸条の冷却固化が進んでいるため植込みが容易で、ジェット吸引による牽引は可能である。
×:糸条の冷却固化が不十分であるため植込みが不可能であり、ジェット吸引による牽引が不可能である。
<糸条密着>
開繊器より吐出した紡出糸条にて形成されたウェブについて、その表面状態を目視して下記の3段階にて評価した。
○:構成繊維の大部分が分繊され、密着糸および集束糸が認められなかった。
△:密着糸および集束糸がわずかだが認められた。
×:構成繊維の大部分が密着または集束し、開繊性が不良であった。
【0047】
(2)繊度(デシテックス):ウェブ状態における50本の繊維の繊維径を光学顕微鏡で測定し、密度補正して求めた平均値を繊度とした。
【0048】
(3)目付(g/m):試料長10cm、試料幅5cmの試料片10点を作成し、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付(g/m)とした。
【0049】
(4)乾熱収縮率(%):不織布を構成するポリエステル共重合体の融点をTmとしたときに、試料(経方向20cm×緯方向20cm)を用意し、この試料を(Tm−30)℃に設定した熱風乾燥機中に15分間放置し、熱処理前と後での面積変化を面積収縮率として算出した。そして、面積収縮率が5%以下のものは、高温下での寸法安定性が良好であると評価した。
面積収縮率(%)=[(400−(熱処理後の試料面積(cm)))/400]×100
【0050】
(5)融点Tm(℃)、融解熱量ΔHm(J /g)、降温結晶化温度Tc(℃)、結晶化熱量ΔHc(J /g):パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料質量を5mg、昇温速度を10 ℃/分として測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点Tm(℃)とし、吸熱ピークの面積を融解熱量ΔHm(J/g)とした。また、同様に、降温速度を10 ℃/分として測定し、得られた結晶化発熱曲線の発熱ピークの極値を与える温度を降温結晶化温度Tc(℃)とし、発熱ピークの面積を結晶化熱量ΔHc(J/g)とした。
【0051】
(6)トータルハンド値(g/(g/m2)):JIS−L−1096のハンドルオメーター法(E法)に準じて測定した。すなわち、調整された試料から、20cm×20cmの試験片を3枚採取し、試験台の上に測定方向がスリット(幅15mm)と直角になるように置き、次に試料台表面から8mmまで下がるように調整したベネトレーターのブレードを降下させ、試験片を押圧したときに、ブレードが8mm降下するのに要した重量である。この試験は、いずれか一方の辺から6.7cm(試験幅の1/3)の位置の縦方向および横方向で測定し、さらに表面、裏面の異なる位置で測定する。こうして得られた最高値(重さ(g))を読み取り、3枚の試料の平均値を算定する。なお本発明で求めた値は、試験片として20cm×20cmを使用し、スリット幅を15mmとして測定を行った値である。
【0052】
(7)圧縮剛軟度(g/(g/m)):試料長10cm、試料幅5cmの試料片を不織布の縦方向および横方向についてそれぞれ計5点作製し、試料幅方向に曲げて円筒状物とし、各々その端部を接合したものを圧縮剛軟度測定試料とした。次いで、測定試料毎に各々その軸方向について、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られた最大荷重値(g)を目付で除した値を求め、縦方向と横方向の値の平均値を圧縮剛軟度(g/(g/m))とした。
【0053】
(8)熱接着性の評価
得られた不織布を15cm×15cmの正方形に切断し、被接着対象物(15cm×15cm)2枚の間に両端を合わせて挟んだものを試料とする。この試料をヒートシール機の上下熱処理板(長さ32cm×幅1cm)がほぼサンプルの真ん中になるように間に配置して、下記の条件にて熱接着処理を施した。その後、パネラーによる剥離強力の程度を下記の3 段階で評価した。評価はサンプル数10個について行った。
○ : 全てのサンプルで剥離抵抗が十分大きく、中には被接着部分の不織布が破れるものがある。
△ : わずかな力で容易に剥離が可能なサンプルがある。
× : 剥離抵抗がまったくなく、接着形態を維持していないサンプルがある。
<熱接着処理条件>
被接着対象物:
ポリエチレンテレフタレートのスパンボンド不織布
接着温度:150℃
接着時間:2秒
ヒートシール機のシール幅:1cm
面圧:2kgf/cm
【0054】
実施例1
エステル化反応缶に、テレフタル酸(以下、TPA)、1,6−ヘキサンジール(以下、HD)、1,4−ブタンジオール(以下、BD)を供給し、添加剤としてポリエチレンワックスを仕上がりチップ中の含有量0.1質量%となるよう添加し、温度230℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出しチップ化した。
【0055】
得られた共重合ポリエステルチップは、相対粘度1.57、融点131℃、酸成分がTPA100モル%、グリコール成分がBD15モル%、HD85モル%からなるものであった。共重合ポリエステルチップに対して、0.5質量%の二酸化チタンを加えて溶融紡糸装置に供給し、円形の紡糸口金より、紡糸温度200℃、単孔吐出量1.1g/分で溶融紡糸した。ノズルより紡出した糸条を冷却空気流にて冷却した後、牽引ジェットにて3600m/分で牽引し、これを公知の開繊器により開繊させて移動するコンベアの捕集面上に堆積してウェブを形成した。次いでこのウェブをエンボスロールとフラットロールとからなる熱エンボス装置に通し、ロール温度を100℃に設定し、六角形柄、圧着面積率14.9%、圧着点密度21.9個/cm2 、線圧39.2N/cmの条件にて部分的に熱圧着し、単糸繊度3.0デシテックスの長繊維からなる目付51g/m2のスパンボンド不織布を得た。
【0056】
実施例2
実施例1において、溶融紡糸の際に添加する添加剤として、二酸化チタンに替えて、モンタン酸ナトリウム塩(クラリアント社製 商標名:リコモントNaV101)を用いたこと、溶融紡糸の際の単孔吐出量を1.5g/分としたこと、牽引速度を4400m/分としたこと、熱エンボス装置のロール温度を95℃に設定したこと以外は実施例1と同様にして、単糸繊度3.4デシテックスの長繊維からなる目付44g/m2のスパンボンド不織布を得た。
【0057】
実施例3
実施例1において、溶融紡糸の際に添加する添加剤として、二酸化チタンに替えて、モンタン酸カルシウム塩(クラリアント社製 商標名:リコモントCaV102)を用いたこと、溶融紡糸の際の単孔吐出量を1.5g/分としたこと、牽引速度を3400m/分としたこと、熱エンボス装置のロール温度を95℃に設定したこと以外は実施例1と同様にして、単糸繊度4.4デシテックスの長繊維からなる目付44g/m2のスパンボンド不織布を得た。
【0058】
実施例4
実施例1において、溶融紡糸の際に添加する添加剤として、二酸化チタンに替えて、フェニルホスホン酸亜鉛塩(日産化学社製 商標名:PPA−Zn)を用いたこと、牽引速度を4100m/分としたこと以外は実施例1と同様にして、単糸繊度2.7デシテックスの長繊維からなる目付50g/m2のスパンボンド不織布を得た。
【0059】
比較例1
実施例1において、溶融紡糸の際に添加剤を加えなかった以外は実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を製造しようとしたが、牽引ジェットへ糸条の植え込みが困難で、糸切れが多く、製糸性が悪く、連続運転が困難であった。また、牽引ジェットのジェット吸引圧力を増加させたが、紡糸速度は上がらなかった。堆積したウエブの地合いは悪く、繊維は集束していた。
【0060】
比較例2
実施例1において、溶融紡糸の際に添加する添加剤として、二酸化チタンに替えて、タルク(日本タルク社製 商品名:SG−2000)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を製造しようとしたが、連続運転にて2時間程度経った際、紡糸口金直下にて糸切れが発生し、再度、牽引ジェットへの糸条植え込みが困難となり連続運転ができなかった。
【0061】
参考例
相対粘度1.38、融点256℃のポリエチレンテレフタレートチップを溶融紡糸装置に供給し、円型の紡糸口金より、紡糸温度285℃、単孔吐出量1.7g/分で溶融紡糸した。ノズルより紡出した糸条を冷却空気流にて冷却した後、牽引ジェットにて5000m/分で牽引し、これを公知の開繊器により開繊させて移動するコンベアの捕集面上に堆積してウェブを形成した。次いでこのウェブをエンボスロールとフラットロールからなる熱エンボス装置に通し、ロール温度を190℃に設定したこと以外は実施例1と同様にして熱処理を施し、単糸繊度3.3デシテックスの長繊維からなる目付48g/m2のスパンボンド不織布を得た。
【0062】
結果を表1に示した。
【0063】
【表1】


【0064】
本発明の実施例1〜4のスパンボンド不織布は、操業性が良好で、長時間の連続操業可能なものであり、また、得られた不織布の物性は、柔軟性に特に優れ、ヒートシール性を有し、また高温下でも寸法安定性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル共重合体によって構成されるスパンボンド不織布であって、ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めており、該ポリエステル共重合体中にポリオレフィン系ワックスを含み、かつ高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含んでいることを特徴とするスパンボンド不織布。
【請求項2】
高級脂肪酸金属塩がモンタン酸金属塩であることを特徴とする請求項1記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
フェニルホスホン酸金属塩がフェニルホスホン酸亜鉛塩であることを特徴とする請求項1記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
スパンボンド不織布が、昇温速度10℃/分で示差熱分析した際に明確な吸熱ピークが120℃〜150℃の間に発現し、かつ融解熱量(ΔHm)が30J/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めているポリエステル共重合体であって、ポリオレフィン系ワックスを含み、かつ高級脂肪酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩あるいは酸化チタンから選ばれる少なくとも一つを含んでいるポリエステル共重合体を、該ポリエステル共重合体の融点よりも40〜90℃高い温度で溶融して紡糸口金から紡糸糸条を吐出させ、紡糸糸条を紡糸口金直下の牽引ジェットに導引して牽引速度2500〜6000m/分で牽引細化した後、移動式捕集面上に開繊させながら堆積させてウエブを得た後、不織布化することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法。


【公開番号】特開2009−263800(P2009−263800A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111341(P2008−111341)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】