説明

スピンドルモータおよびディスク駆動装置

【課題】上シール部と下シール部とが近く、両シール部間の圧力差を小さくでき、潤滑油の漏出を容易に防止することができるモータを提供する。
【解決手段】モータは、シャフト部41と、下プレート部431と、外筒部432と、を備え、回転部が、シャフト部41との間に第1間隙を構成し、外筒部432との間に第2間隙を構成する内筒部51と、外筒部432の上面との間に第3間隙を構成する下面と、連通孔61と、を有するフランジ部52と、を備え、第1間隙よりも径方向外側に上シール部が、第2間隙よりも径方向外側に下シール部が構成され、上シール部と下シール部とが連通孔61によって連通し、上シール部から第1間隙、第2間隙、第3間隙を経由して下シール部に至る領域、および、連通孔61が、潤滑油45で満たされ、第1間隙に、動圧軸受が構成され、第3間隙に、潤滑油45に径方向内方へと向かう圧を誘起する動圧発生部が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク駆動装置用のスピンドルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスク駆動装置のモータとして、流体動圧を用いた軸受機構を備えるものが用いられる。特開2007−162759号公報に開示されるスピンドルモータの動圧流体軸受装置は、シャフト本体およびシャフト本体が挿入された筒状のスリーブ本体を有する。シャフト本体は、モータのベースプレートに固定される。スリーブ本体は、モータのロータに固定される。シャフト本体には、スリーブ本体の上側および下側に位置する環状の第1および第2スラストフランジが設けられる。動圧流体軸受装置では、シャフト本体とスリーブ本体との間にて、ラジアル軸受部が構成される。2つのスラストフランジのそれぞれとスリーブ本体との間にて、スラスト軸受部が構成される。また、スリーブ本体には、2つのスラスト間隙を連通する連通孔が設けられる。連通孔の上下の開口近傍には、テーパシール部が形成される。
【0003】
米国特許第6991376号明細書に開示される流体動圧軸受モータは、シャフトと、トッププレートと、ボトムプレートと、ハブと、を備える。トッププレートおよびボトムプレートはそれぞれ、シャフトの上端および下端に固定される。ハブは、トッププレートとボトムプレートとの間に位置し、シャフトに対して回転可能に支持される。ハブには、ハブを貫通する循環路が設けられる。ハブの上部には、トッププレートの外縁部よりも外側に突起部が設けられる。突起部とトッププレートの外縁部との間には、毛管シールが形成される。ハブの下部には、ボトムプレートの外縁部よりも外側に他の突起部が設けられる。当該他の突起部とボトムプレートの外縁部との間においても毛管シールが形成される。循環路が、毛管シールよりも径方向において内側に位置することにより、毛管シールにおける潤滑油の圧力勾配の影響が最小限となる。
【特許文献1】特開2007−162759号公報
【特許文献2】米国特許第6991376号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特開2007−162759号公報では、上側のテーパシール部の界面と下側のテーパシール部の界面との間の軸方向の距離が大きいため、上下のテーパシール部における圧力差が大きい。このため、モータを様々な方向に向けた場合にテーパシール部において界面の位置が大きく変動する。その結果、潤滑油の漏れを防止する設計が煩雑となる。
【0005】
米国特許第6991376号明細書においても同様に、上下の毛管シールの界面の軸方向の距離が大きいため、大きな圧力差が生じる。
【0006】
本発明は、上下シール部における圧力差を小さくし、潤滑油の漏出を容易に防止することを主たる目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一の側面に係るモータは、ステータを有する静止部と、ロータマグネットを有し、前記静止部により回転可能に支持される回転部と、を備え、前記静止部が、上下方向を向く中心軸を中心として配置されるシャフト部と、前記シャフト部の下部から径方向外方へと広がる下プレート部と、前記下プレート部の外縁部から上方へと延びる外筒部と、を備え、前記回転部が、前記シャフト部の外周面との間に第1間隙を構成する内周面と、前記外筒部の内周面との間に第2間隙を構成する外周面と、を有する内筒部と、前記内筒部から径方向外方に突出し、前記外筒部の上面との間に第3間隙を構成する下面と、上下方向に貫通する連通孔と、を有するフランジ部と、を備え、前記第1間隙よりも径方向外側に上シール部が構成され、前記第2間隙よりも径方向外側に下シール部が構成され、前記上シール部と前記下シール部とには、潤滑油の界面がそれぞれ位置し、前記上シール部と前記下シール部とが前記連通孔によって連通し、前記上シール部から前記第1間隙、前記第2間隙、前記第3間隙を経由して前記下シール部に至る領域、および、前記連通孔が、前記潤滑油で満たされ、前記第1間隙に、動圧軸受が構成され、前記第3間隙に、前記潤滑油に径方向内方へと向かう圧を誘起する動圧発生部が構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上シール部と下シール部とが近いため、両シール部間の圧力差を小さくすることができる。これにより、潤滑油の漏出を容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ディスク駆動装置の断面図である。
【図2】図2は、モータの断面図である。
【図3】図3は、軸受機構の断面図である。
【図4】図4は、軸受機構の断面図である。
【図5】図5は、スリーブ部の断面図である。
【図6】図6は、軸受機構の断面図である。
【図7】図7は、シャフト部および上スラスト部の底面図である。
【図8】図8は、下スラスト部の平面図である。
【図9】図9は、他の例に係るシャフト部および上スラスト部の底面図である。
【図10】図10は、他の例に係る下スラスト部の平面図である。
【図11】図11は、他の例に係る軸受機構の内筒部の底面図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係るモータの軸受機構の断面図である。
【図13】図13は、関連技術に係るモータの軸受機構の断面図である。
【図14】図14は、関連技術に係るモータの軸受機構の断面図である。
【図15】図15は、第3の実施形態に係るモータの軸受機構の断面図である。
【図16】図16は、第4の実施形態に係るモータの断面図である。
【図17】図17は、軸受機構の断面図である。
【図18】図18は、第5の実施形態に係るモータの軸受機構の断面図である。
【図19】図19は、軸受機構の断面図である。
【図20】図20は、他の例に係る軸受機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、モータの中心軸方向における上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、中心軸に平行な方向又は略平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に係るスピンドルモータ(以下、単に「モータ」という)を備えるディスク駆動装置1の縦断面図である。ディスク駆動装置1は、いわゆるハードディスク駆動装置である。ディスク駆動装置1は、例えば、3枚のディスク11と、モータ12と、アクセス部13と、ハウジング14と、を備える。モータ12は、情報を記録するディスク11を回転する。アクセス部13は、ディスク11に対して、情報の読み出しおよび/または書き込みを行う。すなわち、ディスク11に対して、情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方が行われる。
【0012】
ハウジング14は、無蓋箱状の第1ハウジング部材141と、板状の第2ハウジング部材142と、を備える。第1ハウジング部材141の内側には、ディスク11、モータ12およびアクセス部13が収容される。第1ハウジング部材141に第2ハウジング部材142が嵌められて、ハウジング14が構成される。ディスク駆動装置1の内部空間は、塵や埃が極度に少なく、清浄な空間が好ましい。本実施形態では、ディスク駆動装置1内に空気が充填される。なお、ヘリウムガスや水素ガスが充填されてもよく、これらの気体と空気との混合気体が充填されてもよい。
【0013】
3枚のディスク11は、クランパ151とスペーサ152により、モータ12の中心軸J1方向に等間隔にモータ12のロータハブに固定される。アクセス部13は、6つのヘッド131と、6つのアーム132と、ヘッド移動機構133とを備える。ヘッド131はディスク11に近接して、情報の読み出しおよび/または書き込みを磁気的に行う。アーム132は、ヘッド131を支持する。ヘッド移動機構133はアーム132を移動することにより、ヘッド131をディスク11に対して相対的に移動する。これらの構成により、ヘッド131は、回転するディスク11に近接した状態にて、ディスク11の所要の位置にアクセスする。なお、ディスク11は3枚に限らず、1枚または2以上でもよい。
【0014】
図2は、モータ12の縦断面図である。モータ12は、アウタロータ型のモータである。モータ12は、固定組立体である静止部2と、回転組立体である回転部3と、を備える。図2では、静止部2の一部と回転部3の一部とにより構成される流体動圧軸受機構(以下、「軸受機構」という)に符号4を付している。回転部3は、潤滑油45を介して、モータ12の中心軸J1を中心に、静止部2により回転可能に支持される。
【0015】
静止部2は、ベース部であるベースプレート21と、ステータ22と、シャフト部41と、上スラスト部42と、下スラスト部43と、を含む。ベースプレート21と図1の第1ハウジング部材141とは単一部材から構成され、ハウジング14の一部である。ステータ22は、ベースプレート21の円筒状のホルダ211の周囲に固定される。ホルダ211の内側には孔部が形成される。なお、ベースプレート21と第1ハウジング部材141とは別部材であってもよい。
【0016】
回転部3は、ロータハブ31と、ロータマグネット32と、を含む。ロータハブ31は、略円筒状のスリーブ部5と、蓋部311と、円筒部312と、を含む。蓋部311は、スリーブ部5の上部から径方向外方に広がる。円筒部312は、蓋部311の外縁部から下方へと延びる。ロータマグネット32は、円筒部312の内側に固定される。ロータマグネット32は、ステータ22と径方向に対向する。ステータ22とロータマグネット32との間にてトルクが発生する。なお、スリーブ部5は、蓋部311および円筒部312とは異なる部材から構成されていてもよい。この場合、スリーブ部5は蓋部311に固定される。
【0017】
蓋部311は、図1のディスク11をクランプするクランパ151を固定するためのねじ孔314、を含む。ねじ孔314は、ステータ22の上方に位置し、蓋部311を上下方向に貫通する。クランパ151をモータ12に取り付ける際には、図1に示すように、クランパ151の貫通孔およびねじ孔314にねじ153が挿入されることにより、クランパ151が蓋部311の上面に固定される。
【0018】
図3は、軸受機構4を拡大して示す図である。軸受機構4は、シャフト部41と、上スラスト部42と、下スラスト部43と、スリーブ部5と、キャップ部材である環状のシールキャップ44と、潤滑油45と、を含む。既述のように、シャフト部41、上スラスト部42および下スラスト部43は静止部2の一部であり、スリーブ部5は回転部3の一部である。シャフト部41は、下スラスト部43の内側に形成された孔部に圧入固定され、中心軸J1に沿って上下方向を向いて配置される。上スラスト部42は、シャフト部41の上部から径方向外方へと広がるプレート状の上プレート部を含む。シャフト部41および上スラスト部42は、一繋がりの部材として形成される。シャフト部41および上スラスト部42は、例えば、ステンレス鋼等により形成される。上スラスト部42の外周面422は、上方に向かうとともに径方向内方へと傾斜する傾斜面を含む。上スラスト部42では、上面の外縁部に下方に向かって窪む段差部423が形成される。
【0019】
下スラスト部43は、下プレート部431と、外筒部432と、を含む。下スラスト部43は、例えば、銅や高力黄銅等により形成される。下プレート部431は、シャフト部41の下部から径方向外方へと広がる。外筒部432は、下プレート部431の外縁部から上方へと延びる。外筒部432の外周面の上部には、下方に向かうとともに径方向内方へと傾斜する傾斜面433が設けられる。
【0020】
モータ12の組み立て時には、外筒部432の外周面の下部が、ベースプレート21のホルダ211の内周面に接着剤にて固定される。このため、圧入固定の場合に比べて、ベースプレート21に対する外筒部432の上下方向における位置決めを精度よく行うことができ、モータ12の高さの精度が向上する。
【0021】
スリーブ部5は、内筒部51と、フランジ部52と、を含む。スリーブ部5は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等により形成される。内筒部51は、外筒部432とシャフト部41との間の略円筒状の空間内に配置される。内筒部51の厚さは、0.7mm以上1mm以下であり、本実施形態では、0.75mmである。フランジ部52は、内筒部51の上部から径方向外方に突出する。以下、フランジ部52の内周部であり、かつ、内筒部51の上部でもある部位を、内筒部51の一部として説明する。軸方向において、フランジ部52の厚さは、内筒部51の内周面511の高さの1/2以下が好ましい。フランジ部52の上面521および下面522は、好ましくは中心軸J1に略垂直に構成される。フランジ部52は、フランジ部52を上下方向に貫通する連通孔61を有する。本実施形態では、連通孔61の数は1である。なお、2以上の連通孔61が設けられてもよい。
【0022】
ロータハブ31の蓋部311は、上ハブ筒部53と、下ハブ筒部54と、を含む。上ハブ筒部53は、スリーブ部5の外縁部、すなわち、フランジ部52の外縁部から上方へと広がる略円筒状に構成される。上ハブ筒部53は、上スラスト部42の径方向外側に位置する。上ハブ筒部53の内周面531は、上方に向かうとともに径方向内方へと傾斜する部位を含む。
【0023】
下ハブ筒部54は、フランジ部52の外縁部から下方へと広がる円筒状に構成される。下ハブ筒部54は、下スラスト部43の外筒部432の径方向外側に位置する。下ハブ筒部54の内周面541は、下方に向かうとともに径方向内方へと傾斜する部位を含む。なお、上ハブ筒部53および下ハブ筒部54は、フランジ部52または蓋部311とは別部材から構成されてもよい。
【0024】
シールキャップ44は、中心軸J1を中心とするキャップ円筒部441と、キャップ円筒部441から径方向内方に向かって広がる円環状のキャップ蓋部442と、を含む。シールキャップ44は、上ハブ筒部53にキャップ円筒部441が嵌め合わされることにより、スリーブ部5に取り付けられる。キャップ蓋部442の径方向内側の部位は、段差部423の底部の上方に位置する。
【0025】
モータ12の駆動時には、図2に示すスリーブ部5を含む回転部3が、潤滑油45を介してシャフト部41、上スラスト部42および下スラスト部43に対して回転する。
【0026】
図4は、軸受機構4の上部を拡大して示す図である。シャフト部41の外周面411は、スリーブ部5の内筒部51の内周面511と径方向に対向する。シャフト部41と内筒部51との間には、ラジアル間隙62が構成される。ラジアル間隙62の径方向における幅は、2〜4μm程度が好ましい。図3に示すように、軸方向において、内筒部51の下端と下プレート部431との間に間隙63が構成される。以下、間隙63を「下端間隙63」という。なお、本実施形態では、ラジアル間隙62が、第1間隙を指す。
【0027】
図4に示すように、内筒部51の外周面512と外筒部432の内周面434との間に円筒状の間隙64が形成される。以下、間隙64を「円筒間隙64」という。図3に示すように、円筒間隙64は、下端間隙63を介してラジアル間隙62に連通する。円筒間隙64の径方向における幅は、ラジアル間隙62の径方向における幅よりも大きく、連通孔61の直径よりも小さい。なお、本実施形態では、円筒間隙64は第2間隙を示す。
【0028】
図4に示すように、フランジ部52の上面521と、上スラスト部42の下面421との間に間隙651が構成される。以下、間隙651を「上スラスト間隙651」という。また、フランジ部52の下面522と、外筒部432の上面435との間に間隙652が構成される。以下、間隙652を「下スラスト間隙652」という。上スラスト間隙651および下スラスト間隙652は、連通孔61により連通される。軸受機構4では、ラジアル間隙62、下端間隙63、円筒間隙64、上スラスト間隙651および下スラスト間隙652、連通孔61が、この順にて径方向外方に向かって構成される。なお、本実施形態では、下スラスト間隙652は第3間隙を示す。上スラスト間隙651が第4間隙を示す。
【0029】
上ハブ筒部53の内周面531は、上スラスト部42の外周面422と径方向に対向する。上ハブ筒部53と上スラスト部42との間には、上スラスト間隙651から連続する上縦間隙661が構成される。上縦間隙661は、好ましくはラジアル間隙62、上スラスト間隙651および連通孔61よりも径方向外側に位置する。上縦間隙661は、上スラスト間隙651から上方に延びる。上縦間隙661は、上方に向かって、すなわち、間隙661の開口に向かって幅が漸次増大する。また、上縦間隙661は、上方に向かうに従って中心軸J1側、すなわち、図4の左側に向かって傾斜する。上縦間隙661内には、潤滑油45の上側の界面が位置する。以下、上縦間隙661を「上シール間隙661」と呼ぶ。上シール間隙661には、毛管現象を利用して潤滑油45を保持する上シール部661aが構成される。上シール間隙661の界面よりも上側に位置する内周面531および外周面422上には、好ましくは撥油膜が構成されている。上シール間隙661の開口は、上ハブ筒部53から径方向内方に広がるシールキャップ44のキャップ蓋部442により覆われる。
【0030】
上スラスト部42の段差部423の底面および側面と、キャップ蓋部442の下面および径方向内側の内縁との間に間隙663が構成される。間隙663は、軸受機構4の外部と上シール間隙661とを連絡する。以下、上シール間隙661および間隙663をまとめて「第5間隙601」と呼ぶ。また、フランジ部52の外縁部の上側に位置する回転部3の一部である上ハブ筒部53およびシールキャップ44をまとめて「上ハブ環状部591」と呼ぶ。
【0031】
下ハブ筒部54の内周面541は、外筒部432の傾斜面433と径方向に対向する。下ハブ筒部54と外筒部432との間には、下スラスト間隙652と連続する下縦間隙662が第6間隙として形成される。下縦間隙662は、下スラスト間隙652から下方に延びる。下縦間隙662は、ラジアル間隙62、下端間隙63、円筒間隙64、下スラスト間隙652および連通孔61よりも径方向外側に位置する。下縦間隙662の径方向における幅は、下方に向かって、すなわち、間隙662の開口に向かって漸次増大する。また、下縦間隙662は、下方に向かうに従って図4の左側に向かって傾斜する。下縦間隙662には、潤滑油45の下側の界面が位置する。以下、下縦間隙662を「下シール間隙662」という。下シール間隙662では、毛管現象を利用して潤滑油45を保持する下シール部662aが構成される。下シール間隙662の界面よりも下側に位置する内周面541および傾斜面433上には、撥油膜が構成されている。軸受機構4では、上シール間隙661と下シール間隙662とが連通孔61により連通される。
【0032】
軸方向において、上シール部661aの界面と下シール部662aの界面との間の距離は、ラジアル間隙62の長さよりも短い。また、連通孔61の長さは、軸方向における上シール部661aの界面と下シール部662aの界面との間の距離よりも短い。ただし、上シール部661aの界面と下シール部662aの界面との間の距離は、上シール部661aの界面の上端と下シール部662aの界面の下端との間の距離を指すものとする。
【0033】
また、図3に示すように、上シール間隙661の直径は、好ましくは下シール間隙662の直径と略等しい。これにより、連通孔61を中心軸J1に略平行に構成することができる。ただし、上シール間隙661の直径は、上シール間隙661の奥の位置における直径を指し、下シール間隙662の直径は、下シール間隙662の奥の位置における直径を指すものとする。
【0034】
軸受機構4では、上シール間隙661から、上スラスト間隙651、ラジアル間隙62、下端間隙63、円筒間隙64、および、下スラスト間隙652を経由して下シール間隙662に至る領域6、並びに、連通孔61に潤滑油45が連続して満たされる。軸受機構4の組み立て時には、下シール間隙662を重力方向における上側に向けた状態にて、下シール間隙662から潤滑油45が注入される。下シール間隙662における界面の高さを視認することにより、潤滑油45の量を管理することができる。
【0035】
なお、視認は、目視にて確認しても良いし、顕微鏡等の機器にて下シール間隙662を拡大して確認しても良い。また、視認は、機器にて下シール間隙662の拡大画像を画面上に映して確認してもよい。
【0036】
図5は、スリーブ部5の断面図である。図5では、スリーブ部5の奥側の形状も示している。内筒部51は、内周面511の軸方向略中央よりも上側に設けられた上ラジアル動圧溝列711と、軸方向略中央よりも下側に設けられた下ラジアル動圧溝列712と、を備える。図5では、動圧溝にクロスハッチングを付している。以下、他の図においても、動圧溝にクロスハッチングを付している。上ラジアル動圧溝列711は、ヘリングボーン形状の溝、すなわち、外周面の周方向に沿って複数の略V字を横向きにした溝の集合体である。上ラジアル動圧溝列711では、上側の部位の軸方向長さが下側の部位の長さよりも長い。以下、上ラジアル動圧溝列711の上側の部位を「溝上部711a」といい、下側の部位を「溝下部711b」という。下ラジアル動圧溝列712もヘリングボーン形状の溝である。下ラジアル動圧溝列712では、溝上部712aの軸方向長さが、溝下部712bの軸方向長さより短い。
【0037】
軸方向において、図4に示す下スラスト間隙652の位置は、下ラジアル動圧溝列712の溝上部712aの上端の位置よりも上方に位置する。ラジアル間隙62では、上ラジアル動圧溝列711および下ラジアル動圧溝列712により、潤滑油45に対してラジアル方向に流体動圧を発生するラジアル動圧軸受81が構成される。以下、上ラジアル動圧溝列711に対応する上側の動圧軸受部を「上ラジアル動圧軸受部811」といい、下ラジアル動圧溝列712に対応する下側の動圧軸受部を「下ラジアル動圧軸受部812」という。下ラジアル動圧軸受部812は、図3に示す外筒部432の外周面の下部とベースプレート21のホルダ211との固定領域436と径方向に重なる。
【0038】
なお、下スラスト間隙652の位置は、下ラジアル動圧溝列712を構成する少なくとも一本の動圧溝よりも上方に位置していればよく、また下ラジアル動圧溝列712を構成する全ての動圧溝よりも上方に位置してもよい。これらの構成は実施形態の範囲に含まれる。
【0039】
図6に示すように、モータ12では、上スラスト部42の上面420、蓋部311の上面315、フランジ部52の上面521、蓋部311の下面316、および、外筒部432の上面435が、軸方向において順に下方に向かって位置する。
【0040】
図7は、シャフト部41および上スラスト部42の底面図である。図7では、連通孔61に対応する位置を二点鎖線にて示している。図8においても同様である。上スラスト部42の下面421には、スパイラル形状の上スラスト動圧溝列721が設けられる。上スラスト動圧溝列721は、中心軸J1を中心とする円であって連通孔61の上側の開口に外接する円731よりも内側に設けられる。ただし、開口に面取りが設けられる場合には、上スラスト動圧溝列721は、面取りの径方向外側の部位に外接する円よりも内側に設けられる。図7の場合、上スラスト動圧溝列721は、連通孔61の上側の開口よりも径方向内側に設けられる。図4に示す上スラスト間隙651において、上スラスト動圧溝列721により、潤滑油45に対してスラスト方向に流体動圧を発生する動圧発生部である動圧軸受部821が構成される。以下の説明では、動圧軸受部821を「上スラスト動圧軸受部821」という。
【0041】
図8は、下スラスト部43の平面図である。外筒部432の上面435には、スパイラル形状の下スラスト動圧溝列722が設けられる。下スラスト動圧溝列722は、中心軸J1を中心とする円であって連通孔61の下側の開口に外接する円732よりも内側に設けられる。ただし、開口に面取りが設けられる場合には、下スラスト動圧溝列722は、面取りの径方向外側の部位に外接する円よりも内側に設けられる。図8の場合、下スラスト動圧溝列722は、連通孔61の下側の開口よりも径方向内側に設けられる。図4に示す下スラスト間隙652において、下スラスト動圧溝列722により、潤滑油45に対してスラスト方向に流体動圧を発生する動圧発生部である動圧軸受部822が構成される。以下、動圧軸受部822を「下スラスト動圧軸受部822」という。
【0042】
モータ12の駆動時には、ラジアル動圧軸受81により、スリーブ部5の内筒部51がシャフト部41に対してラジアル方向に支持される。また、上スラスト動圧軸受部821および下スラスト動圧軸受部822により構成されるスラスト動圧軸受により、フランジ部52が上スラスト部42および外筒部432に対してスラスト方向に支持される。
【0043】
このとき、図5の上ラジアル動圧溝列711および下ラジアル動圧溝列712では、潤滑油45がそれぞれの中央にポンピング(誘起)され、十分な動圧が発生する。既述のように、上ラジアル動圧溝列711の溝下部711bは、溝上部711aよりも短く、下ラジアル動圧溝列712では、溝上部712aは、溝下部712bよりも短い。ラジアル動圧軸受81全体では、潤滑油45に対して上下方向に向かう圧力はほとんど生じない。
【0044】
また、図6に示す上スラスト間隙651では、上スラスト動圧溝列721の外縁よりも径方向内側の内側領域651aにおいて、上スラスト動圧軸受部821により、潤滑油45に対してシャフト部41へと向かう圧力が生じる。ラジアル間隙62と上スラスト間隙651との間では、潤滑油45の圧力が高い状態となり、気泡の析出が防止される。上スラスト動圧溝列721の外縁よりも径方向外側の外側領域651bにおける圧は、大気圧とほぼ同じである。
【0045】
下スラスト間隙652では、下スラスト動圧溝列722の外縁よりも径方向内側の内側領域652aにおいて、潤滑油45に対して円筒間隙64へと向かう圧力が生じる。下スラスト動圧溝列722の外縁よりも径方向外側の外側領域652bにおける圧は、大気圧とほぼ同じである。ラジアル間隙62と下スラスト間隙652との間では、潤滑油45の圧力が高い状態となり、円筒間隙64および図3に示す下端間隙63での気泡の析出が防止される。以上のように、モータ12では、連通孔61を除く潤滑油45の循環経路全体に潤滑油45に対して圧力を与えることができ、軸受機構4の軸受性能が十分に確保される。また、連通孔61では、上側の開口が上スラスト間隙651の外側領域651bに位置し、下側の開口が下スラスト間隙652の外側領域652bに位置する。このため、上シール部661aから連通孔61を介して下シール部662aに至る経路上において、上スラスト動圧軸受部821および下スラスト動圧軸受部822による圧力差の発生が防止される。
【0046】
以上、第1の実施形態に係るモータ12について説明したが、モータ12では、軸方向において、上シール部661aの界面と下シール部662aの界面との間の距離が、ラジアル動圧軸受81の軸方向の長さよりも短い。ラジアル動圧軸受81の軸方向の長さは、ラジアル動圧軸受81の上端と下端との間の距離をいう。より具体的には、ラジアル動圧軸受81の軸方向の長さは、上ラジアル動圧溝列711における溝上部711aの上端から下ラジアル動圧溝列712における溝下部712bの下端までの長さを示す。なお、上端と下端との間には、動圧軸受として機能しない部分が存在してよい。以下の他の実施形態においても同様である。このように、軸方向において上シール部661aと下シール部662aとを近づけることにより、上下シール部661a,662a間の圧力差を低減することができる。これにより、潤滑油45の漏出を防止する設計が容易となる。
【0047】
さらに、軸方向における連通孔61の長さが、上シール部661aと下シール部662aとの間の軸方向の距離よりも短い。これにより、連通孔61内の潤滑油45の量を抑えることができるとともに、流路抵抗を低減することができる。上下シール間隙661,662間では、連通孔61内の潤滑油45に作用する重力や流路抵抗の影響による圧力差を低減することができる。その結果、上下シール間隙661,662間の潤滑油45の移動量が抑えられ、潤滑油45の漏出がより容易に防止される。
【0048】
さらに、第1の間隙であるラジアル間隙62の下部に第2の間隙である円筒間隙64が連通し、かつ、第3の間隙である下スラスト間隙652が、下ラジアル動圧軸受部812よりも上側に位置する。これにより、下スラスト間隙652を第4の間隙である上スラスト間隙651に近づけることができ、上スラスト間隙651と下スラスト間隙652とを連通する連通孔61の長さを容易に短くすることができる。その結果、上シール部661aと下シール部662aとをより近づけることができる。
【0049】
連通孔61が中心軸J1に略平行であることにより連通孔61の上側の開口から上シール間隙661までの距離と、連通孔61の下側の開口から下シール間隙662までの距離との差を低減することができる。この構成により、上下シール間隙661,662間の圧力差をより低減することができる。
【0050】
また、上シール間隙661および下シール間隙662では、開口が中心軸J1に向かって傾斜するため、モータ12の回転時に、遠心力により潤滑油45が上シール間隙661および下シール間隙662の内部へと向かう。これにより、潤滑油45の漏れがより確実に防止される。その結果、モータ12の設計が容易となる。
【0051】
モータ12では、駆動時において、上スラスト間隙651の外側領域651bの圧が大気圧程度に維持されるのであれば、図9に示すように、連通孔61の上側の開口に外接する円731よりも内側において、上スラスト動圧溝列721の外縁部が連通孔61の上側の開口と部分的に重なってもよい。この場合、上スラスト動圧溝列721は、外縁部が連通孔61の一部と重なるように径方向外側に設けられることから、効率よくスラスト動圧が得られ、かつ、上スラスト動圧軸受部821によりフランジ部52の外縁近傍が支持される。これにより、スリーブ部5が安定して支持される。同様に、駆動時において、下スラスト間隙652の外側領域652bの圧が大気圧程度に維持されるのであれば、図10に示すように、連通孔61の下側の開口に外接する円732よりも内側において、下スラスト動圧溝列722の外縁部が、連通孔61の下側の開口と部分的に重なってもよい。
【0052】
上スラスト動圧溝列721と連通孔61の上側の開口とが部分的に重なり、下スラスト動圧溝列722と連通孔61の下側の開口とが部分的に重なっていても、重なっていない部分で連通孔61の内部と外部との圧力差が解消される。その結果、上シール部661aと下シール部662aとの間における圧力差が低減される。
【0053】
なお、上スラスト動圧溝列721を構成する少なくとも一本の動圧溝が連通孔61の上側の開口に外接する円731よりも内側に設けられていればよく、上スラスト動圧溝列721を構成する全ての動圧溝が円731よりも内側に設けられていてもよい。これらの構成は実施形態の範囲に含まれる。
【0054】
同様に、下スラスト動圧溝列722を構成する少なくとも一本の動圧溝が連通孔61の下側の開口に外接する円732よりも内側に設けられていればよく、下スラスト動圧溝列722を構成する全ての動圧溝が円732よりも内側に設けられていてもよい。これらの構成は実施形態の範囲に含まれる。
【0055】
モータ12では、下スラスト間隙652が軸受機構4の上部に設けられる。そのため、下スラスト間隙652の下側に空間が形成され、当該空間に外筒部432とベースプレート21との固定領域436を配置できる。従って、固定領域436の軸方向長さを十分に得ることができる。モータ12では、ラジアル間隙62を軸方向に長く構成するのが好ましい。ラジアル動圧軸受81の軸方向の長さも長く構成でき、回転部3が傾く方向に作用する外力に対して軸受機構4の剛性を向上することができる。固定領域436は、少なくとも下ラジアル動圧軸受部812の一部と径方向において重なるように配置される。その結果、ラジアル間隙62の軸方向長さを得られると共に固定領域436の軸方向長さも得られる。また、ラジアル動圧軸受81の下部の周囲がベースプレート21により囲まれる。このため、ラジアル動圧軸受81の下部の周囲の剛性が高められる。さらに、モータ12全体の中心軸J1方向における厚さを薄くすることができる。
【0056】
シャフト部41と上スラスト部42とが一繋がりの部材であり、下プレート部431と外筒部432とが一繋がりの部材であることから、モータ12の部品点数を削減することができる。スリーブ部5では、連通孔61の軸方向長さが短く、かつ、中心軸J1に略平行であるため、連通孔61を容易に形成することができる。また、潤滑油45の全体の量を抑えることができる。なお、潤滑油45の量をより抑えるために、連通孔61の直径を円筒間隙64の幅程度に細くしてもよい。
【0057】
モータ12では、図11の内筒部51の底面図に示すように、内筒部51の下面にスラスト動圧溝列723が形成されてもよい。これにより、図3の下端間隙63には、内筒部51をスラスト方向に支持するスラスト動圧軸受部が構成される。この場合、下スラスト間隙652では、スラスト動圧軸受部として機能する動圧発生部を構成しなくてもよい場合もある。ただし、下スラスト間隙には、潤滑油45に対して径方向内方へと向かう圧を誘起する程度の動圧発生部である動圧溝列が設けられることが好ましい。図11の構成の場合、軸方向において、好ましくは下スラスト間隙の幅は、下端間隙の幅よりも大きい。以下の第2の実施形態においても同様である。
【0058】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係るモータの軸受機構の一部を示す図である。軸受機構4aのスリーブ部5aには、フランジ部52の径方向内側の部位から上方に向かって延びる環状の上内筒部55が設けられる。以下の説明では、フランジ部52の下側に位置する内筒部51を上内筒部55と区別するときは、「下内筒部51」という。上スラスト部42aは、シャフト部41の上部から径方向外方へと広がる上プレート部424と、上プレート部424の外縁部から下方へと延びる上外筒部425と、を含む。以下、外筒部432を上外筒部425と区別するときは、「下外筒部432」という。軸受機構4aの他の構造は、第1の実施形態に係るモータ12の軸受機構4と同様である。また、同様の構成には同符号を付して説明する。
【0059】
軸方向、すなわち、図12における上下方向において、上内筒部55の上面551と、上プレート部424の下面426との間に間隙671が構成される。以下、間隙671を「上端間隙671」という。また、径方向において、上内筒部55の外周面552と上外筒部425の内周面427との間に、円筒状の間隙672が構成される。以下、間隙672を「上円筒間隙672」という。下内筒部51の外周面512と下外筒部432の内周面434との間の円筒間隙64を上円筒間隙672と区別する場合は、「下円筒間隙64」という。
【0060】
上スラスト部42では、上外筒部425の下面428に、図7と同様の上スラスト動圧溝列721が設けられる。これにより、下面428とフランジ部52の上面521との間の上スラスト間隙651に、上スラスト動圧軸受部821が構成される。軸受機構4aでは、上円筒間隙672および上端間隙671を介して上スラスト動圧軸受部821とラジアル動圧軸受81とが連通する。
【0061】
上外筒部425の外周面429と上ハブ筒部53の内周面531との間には、上シール部661aが構成される。下外筒部432の傾斜面433と下ハブ筒部54の内周面541との間には、下シール部662aが構成される。上シール部661aと下シール部662aとは、連通孔61を介して連通する。上シール部661aの界面の上端と下シール部662aの界面の下端との間の軸方向における距離は、連通孔61よりも長く、かつ、ラジアル動圧軸受81の長さよりも短い。
【0062】
第2の実施形態においても、軸方向において、上シール部661aの界面と下シール部662aの界面との間の距離が、ラジアル動圧軸受81の長さよりも短いことにより、上下シール部661a,662a間の圧力差を低減することができる。これにより、潤滑油45の漏出が防止される。さらに、連通孔61の長さが、上シール部661aと下シール部662aとの間の距離よりも短いことにより、潤滑油45の漏出がより容易に防止される。
【0063】
上円筒間隙672および下円筒間隙64が設けられることにより、連通孔61の長さを短くすることができる。その結果、上シール部661aと下シール部662aとをより近づけることができる。これにより、潤滑油45の漏出がより容易に防止される。また、上スラスト動圧軸受部821とラジアル動圧軸受81との間に上端間隙671および上円筒間隙672が位置するため、上端間隙671および上円筒間隙672では、潤滑油45の圧力が高い状態となり、空気の析出が防止される。
【0064】
軸受機構4aでは、上内筒部55の上面551に図11に準じたスラスト動圧溝列が設けられてもよい。これにより、上端間隙671には、上内筒部55をスラスト方向に支持するスラスト動圧軸受部が構成される。この場合、上スラスト間隙651では、上スラスト動圧軸受部として機能する動圧発生部を構成しなくてもよい場合もある。ただし、上スラスト間隙には、潤滑油45に対して径方向内方へと向かう圧を誘起する程度の動圧発生部である動圧溝列が設けられることが好ましい。また、上端間隙の軸方向における幅は、好ましくは上スラスト間隙よりも小さい。
【0065】
図13は、本発明の関連技術に係るモータの軸受機構を示す図である。軸受機構4bは、図3に示す上スラスト部42、下スラスト部43およびスリーブ部5とは異なる形状の上スラスト部46、下スラスト部47およびスリーブ部5bを備える。上スラスト部46の内周面461は、下方に向かうに従って径方向外方へと傾斜する。下スラスト部47の上部の内周面471は、上方に向かうに従って径方向外方へと傾斜する。
【0066】
スリーブ部5bは、樽部56と、フランジ部52と、を含む。樽部56の外周面の上部は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する傾斜面561を含む。以下、傾斜面561を「上傾斜面561」という。また、外周面の下部は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する傾斜面562を含む。以下、傾斜面562を「下傾斜面562」という。フランジ部52は、樽部56の中央から径方向外方に向かって広がる。軸受機構4bの他の形状は、図3に示す軸受機構4とほぼ同様である。
【0067】
軸受機構4bでは、上スラスト部46の内周面461と樽部56の上傾斜面561との間に間隙681が構成される。間隙681は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。以下、間隙681を「上傾斜間隙681」という。下スラスト部47の内周面471と下傾斜面562との間に間隙682が構成される。間隙682は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。以下、間隙682を「下傾斜間隙682」という。
【0068】
シャフト部41の外周面411と樽部56の内周面563との間には、ラジアル動圧軸受81が構成される。フランジ部52の上面521と上スラスト部46の下面462との間には、上スラスト動圧軸受部821が構成される。また、フランジ部52の下面522と下スラスト部47の上面472との間には、下スラスト動圧軸受部822が構成される。軸受機構4bでは、ラジアル動圧軸受81の上部と上スラスト動圧軸受部821とが、上傾斜間隙681を介して連通する。ラジアル動圧軸受81の下部と下スラスト動圧軸受部822とが、下傾斜間隙682を介して連通する。
【0069】
上スラスト部46の外周面463と上ハブ筒部53の内周面531との間には、上シール部661aが構成される。下スラスト部47の上部の外周面473と、下ハブ筒部54の内周面541との間には、下シール部662aが構成される。上シール部661aと下シール部662aとは、連通孔61を介して連通する。軸方向において、上シール部661aの界面と下シール部662aの界面との間の距離は、連通孔61の長さよりも長く、かつ、ラジアル動圧軸受81よりも短い。
【0070】
関連技術係るモータにおいても、上シール部661aと下シール部662aとが近く、連通孔61が短いことにより、上下シール部661a,662a間の圧力差を抑えることができ、潤滑油45の漏出を容易に防止することができる。
【0071】
図14は、本発明の関連技術に係るモータの軸受機構を示す図である。軸受機構4cは、シャフト部41と、上スラスト部48と、下スラスト部49と、スリーブ部5cと、を含む。スリーブ部5cは回転部3の一部であり、他は静止部2の一部である。シャフト部41は、上部に、上環状部412を備え、下部に、下環状部413を備える。上環状部412および下環状部413は、軸方向中央から上下に向かうに従って径が漸次減少する。
【0072】
上スラスト部48は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。下スラスト部49の上部491は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。スリーブ部5cの内周面の上部571は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。内周面の下部572は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。以下、内周面の上部571および下部572をそれぞれ「内周面上部571」および「内周面下部572」という。
【0073】
スリーブ部5cの外周面の上部573は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。外周面の下部574は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。以下、外周面の上部573および下部574をそれぞれ「外周面上部573」および「外周面下部574」という。スリーブ部5cには、外周面上部573と外周面下部574とを中心軸J1に平行に連通する連通孔61が設けられる。
【0074】
上環状部412の外周面の下部とスリーブ部5cの内周面上部571との間には、動圧溝列を有する上動圧間隙691が構成される。上動圧間隙691は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。下環状部413の外周面の上部とスリーブ部5cの内周面下部572との間には、動圧溝列を有する下動圧間隙692が構成される。下動圧間隙692は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。上動圧間隙691および下動圧間隙692により、スリーブ部5cをシャフト部41に対してラジアル方向およびスラスト方向に支持する動圧軸受69が構成される。
【0075】
上動圧間隙691は、外周面上部573と上スラスト部48の内周面との間の間隙を介して連通孔61の上部に連通する。下動圧間隙692は、外周面下部574と下スラスト部49の内周面との間の間隙を介して連通孔61の下部に連通する。
【0076】
スリーブ部5cの径方向外側には、上方および下方に広がる上ハブ筒部53および下ハブ筒部54が設けられる。上スラスト部48と上ハブ筒部53との間には、上シール部661aが構成される。上シール部661aは、上動圧間隙691の径方向外側に位置する。下スラスト部49の上部491と下ハブ筒部54との間には、下シール部662aが構成される。下シール部662aは、下動圧間隙692の径方向外側に位置する。
【0077】
軸受機構4cでは、上シール部661aが、上スラスト部48の下端近傍に構成され、下シール部662aが下スラスト部49の上部491の上端近傍に構成される。また、連通孔61は、上スラスト部48の下端および下スラスト部49の上端近傍に設けられる。このため、軸方向において、上シール部661aの界面と下シール部662aの界面との間の距離は、連通孔61よりも長く、かつ、動圧軸受69の軸方向の長さ、すなわち、上動圧間隙691の上端と下動圧間隙692の下端との間の軸方向における距離よりも短い。
【0078】
関連技術に係るモータにおいても、上シール部661aと下シール部662aとが近く、連通孔61が短いため、上下シール部661a,662a間の潤滑油45の圧力差を抑えることができ、潤滑油45の漏出が容易に防止される。
【0079】
(第3の実施形態)
図15は、第3の実施形態に係るモータ12の一部を拡大して示す図である。モータ12は、図3に示すシールキャップ44と同形状のシールキャップを含む。シールキャップ44のキャップ蓋部442の径方向内側の端部は、上スラスト部42の段差部423の底面に接着剤にて固定される。キャップ蓋部442の下面と上ハブ筒部53の上面533との間に径方向に広がる径方向間隙831が構成される。径方向間隙831の軸方向における距離は、上シール間隙の径方向の最大幅、すなわち、上シール間隙の開口位置における幅よりも小さく、具体的には、0.05mm以上0.2mm以下である。キャップ円筒部441の内周面と上ハブ筒部53の外周面534との間に軸方向に延びる軸方向間隙832が構成される。軸方向間隙832の径方向における距離も、上シール間隙の径方向の最大幅よりも小さく、具体的には、0.05mm以上0.2mm以下である。以下、径方向間隙831および軸方向間隙832をまとめて「上連絡間隙83」という。上シール部661aは、上連絡間隙83を介してロータハブ31の蓋部311の上側の空間91に連絡する。モータ12では、シールキャップ44と上ハブ筒部53とを近接させることにより、幅が小さくかつ経路が長い上連絡間隙83を容易に構成することができる。
【0080】
ベースプレート21は、ホルダ211から上方に延びる円筒部212を含む。円筒部212の径方向内側に下ハブ筒部54が位置する。円筒部212の内周面212aと下ハブ筒部54の外周面542との間に軸方向に延びる間隙84が構成される。以下、間隙84を「下連絡間隙84」という。下連絡間隙84の径方向における距離は、下シール間隙の径方向の最大幅、すなわち、下シール間隙の開口位置における幅よりも小さく、具体的には、0.05mm以上0.2mm以下である。下シール部662aは、下ハブ筒部54とホルダ211との間の空間および下連絡間隙84を介してロータハブ31の蓋部311の下側の空間92に連絡する。モータ12では、円筒部212と下ハブ筒部54とを近接させることにより、幅が小さくかつ経路が長い下連絡間隙84を容易に構成することができる。モータ12の他の構造は、第1の実施形態と同様である。
【0081】
軸受機構4では、上連絡間隙83の幅が小さくかつ経路が長いことから、上シール部661a内に存在する気化した潤滑油を含む空気が、ロータハブ31の上側の空間91へと移動することが抑制される。同様に、下連絡間隙84の幅が小さくかつ経路が長いことから、下シール部662a内に存在する気化した潤滑油を含む空気が、ロータハブ31の下側の空間92へと移動することが抑制される。その結果、軸受機構4内の潤滑油45が、モータ12外部へと蒸発することを抑制することができる。
【0082】
軸受機構4では、上ハブ筒部53の内周面531の上端531aの直径が、下ハブ筒部54の内周面541の下端541aの直径とほぼ同じである。上ハブ筒部53の内周面531の下端531bの直径が、下ハブ筒部54の内周面541の上端541bの直径とほぼ同じである。すなわち、上ハブ筒部53の内周面531の径方向における範囲H1と、下ハブ筒部54の内周面541の径方向における範囲H2とが軸方向にほぼ重なる。このため、モータ12の回転時には、上シール部661aおよび下シール部662aのそれぞれにおいて、潤滑油45に対してほぼ同程度の遠心力が作用する。また、ロータハブ31の回転により発生する気流が上シール部661aおよび下シール部662aにおいて大きく異なることが防止される。その結果、上シール部661aおよび下シール部662aの界面のバランスを一定に保つことができる。
【0083】
モータ12では、径方向において、上ハブ筒部53の内周面531の上端531aの位置が、下ハブ筒部54の内周面541の下端541aの位置とずれてもよい。好ましくは、上ハブ筒部53の内周面531の上端531aの径と、下ハブ筒部54の内周面541の下端541aの径との差が、上シール部661aの径方向における最大幅、すなわち、上シール間隙の開口位置における幅よりも小さい。本実施形態の場合、当該最大幅は、径方向において、上ハブ筒部53の上面533と内周面531との間の面取面の上端のエッジと上スラスト部42の外周面422の上端のエッジとの間の距離である。なお、上ハブ筒部53に面取面が設けられない場合は、上シール部661aの径方向における最大幅とは、上ハブ筒部53の内周面531の上端のエッジと上スラスト部42の外周面422の上端のエッジとの間の径方向における距離をいう。
【0084】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、上シール部661aと下シール部662aとを近づけることにより、上下シール部661a,662a間の潤滑油45の圧力差を抑えることができる。以下の実施形態においても同様である。モータ12では、フランジ部52を薄くすることにより、下ハブ筒部54の周囲に下シール部662aおよび下連絡間隙84を容易に構成することができる。その結果、モータ12の構造を簡素化することができる。以下の実施形態においても同様である。
【0085】
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態に係るモータ12aを示す図である。モータ12aでは、スリーブ部5、上ハブ筒部53aおよび下ハブ筒部54が一繋がりの部材である。また、蓋部311および円筒部312が一繋がりの部材である。上ハブ筒部53aは、上方に向かって突出する環状の突起部532を含む。シールキャップ44aは、中心軸J1を中心とする円環状である。
【0086】
図17に示すように、モータ12aでは、シールキャップ44aの径方向外側の端部443が、突起部532の内周面に締まり嵌め状態にて固定される。なお、シールキャップ44aの径方向外側の端部443が、上ハブ筒部53aに接着剤にて固定されてもよい。また、締まり嵌め状態および接着剤が併用されてもよい。軸方向において、上ラジアル動圧軸受部811の下端、すなわち、図5に示す上ラジアル動圧溝列711の下端713が、フランジ部52の下面522よりも上方に位置する。上ラジアル動圧軸受部811の上端、すなわち、図5に示す上ラジアル動圧溝列711の上端714が、フランジ部52の上面521よりも下方に位置する。これにより、軸方向において、上ラジアル動圧軸受部811の存在範囲H3が、フランジ部52の存在範囲H4に含まれる。モータ12aの他の構造は、第1の実施形態と同様である。
【0087】
スリーブ部5の成形時には、元部材を切削してスリーブ部5の外形が形成された後、バイトにより元部材の中央部を上方から下方に向かって切削して中央貫通孔50が形成される。なお、元部材の中央部を下方から上方に向かって切削して中央貫通孔50が形成されてもよい。中央貫通孔50の形成途中において、元部材の内筒部51に対応する部位が、バイトからの押圧により径方向外側に向かって僅かに変位する。バイトがスリーブ部5から抜かれると、当該部位は径方向内側に戻る。
【0088】
ここで、フランジ部52の下面522の軸方向における位置58近傍において、スリーブ部5の厚さが大きく変化することから、内筒部51の位置58近傍の部位における切削時の変位量を考慮して切削量を制御することが困難である。その結果、内筒部51では、当該部位が、他の部位よりも径方向内側に位置する虞が生じる。そのため、仮に上ラジアル動圧軸受部がフランジ部の下面より軸方向において下側まで存在すると、上ラジアル動圧軸受部を精度よく形成できない虞が生じる。図5の上ラジアル動圧溝列711がシャフト部41の外周面411に接触すると、NRRO(Non Repeatable Run Out)が発生してしまう。
【0089】
これに対し、軸受機構4では、軸方向において、上ラジアル動圧軸受部811の存在範囲H3が、フランジ部52の存在範囲H4に含まれるため、内筒部51の位置58近傍の部位が、上ラジアル動圧軸受部811に重ならない。これにより、スリーブ部5の内周面511を精度よく加工することができ、軸受機構4の軸受性能の低下を防止することができる。また、内筒部51の下部を薄くする設計が容易となる。
【0090】
軸受機構4では、軸方向において、上ラジアル動圧軸受部811の下端の位置が、フランジ部52の下面522の位置58と同一であってもよい。さらに、上ラジアル動圧軸受部811の軸受性能に影響を与えない範囲で上ラジアル動圧軸受部811の一部が、フランジ部52の下面522よりも僅かに下方に位置してもよい。このように、軸方向において、上ラジアル動圧軸受部811の下端の位置は、フランジ部52の下面522の位置58と略同一とされる。同様に、軸方向において、上ラジアル動圧軸受部811の上端の位置が、フランジ部52の上面521の位置と略同一とされる。
【0091】
(第5の実施形態)
図18は、第5の実施形態に係るモータ12の軸受機構4dを示す図である。軸受機構4dは、厚さが薄い上スラスト部42bを含む。上スラスト部42bの上部は、図3に示す上スラスト部42の段差部423に比べて径方向における幅が広い段差部423aを有する。段差部423aは、側面である内側円筒面741と、底面である外側環状面742と、を含む。内側円筒面741は、上下方向に延びる略円筒状である。外側環状面742は、外周面422の径方向内側に位置し、径方向内方に向かうに従って下方に僅かに傾斜する。
【0092】
上ハブ環状部591は、フランジ部52の外縁部の上側に位置し、シールキャップ44と、上ハブ筒部53と、を含む。シールキャップ44のキャップ蓋部442の径方向における幅は、図3のシールキャップ44に比べて広い。シールキャップ44および上ハブ筒部53と上スラスト部42bとの間に構成される第5間隙601は、上縦間隙664と、上横間隙665と、を含む。上縦間隙664は、上スラスト部42bの外周面422と上ハブ筒部53の内周面531との間に構成され、上スラスト間隙651の外縁部から上方に延びる。上横間隙665は、キャップ蓋部442の下面と外側環状面742との間に構成され、上縦間隙664の上端から径方向内方に広がる。上横間隙665は、中心軸J1に略垂直である。上横間隙665の軸方向における幅は、径方向内方に向かうに従って漸次広がる。
【0093】
上横間隙665には、潤滑油45の上側の界面が位置する。以下、上横間隙665を「上シール間隙665」という。上シール間隙665には、毛管現象を利用して潤滑油45を保持する上シール部661aが構成される。上縦間隙664内の潤滑油45は、上シール間隙665内の潤滑油45の上側の界面に繋がる。図3と同様に、下ハブ筒部54と外筒部432との間には、下スラスト間隙652の外縁部から下方に延びる下シール間隙662が構成される。下シール間隙662には、下シール部662aが構成される。軸受機構4dの他の構造は、図3に示す軸受機構4と同様である。
【0094】
図19に示すように、下シール間隙662の軸方向における長さは、上縦間隙664の軸方向における長さよりも長い。ここで、下シール間隙662の軸方向の長さとは、外筒部432の傾斜面433の下端のエッジと、フランジ部52の下面522との間の軸方向における距離をいう。上縦間隙664の軸方向の長さとは、上スラスト部42bの外側環状面742と外周面422との間の部位の最も高い位置と、フランジ部52の上面521との間の軸方向における距離をいう。なお、外側環状面742と外周面422との間の境界が明瞭に存在する場合は、この境界とフランジ部52の上面521との間の軸方向における距離が、上縦間隙664の軸方向の長さとなる。
【0095】
図15に示すモータ12と同様に、ベースプレート21のホルダ211から上方に延びる円筒部212と、下ハブ筒部54との間に軸方向に延びる下連絡間隙84が構成される。これにより、下シール部662a内に存在する気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4dの外部へと移動することが抑制される。
【0096】
図18に示すモータ12の駆動時には、上シール間隙665内の潤滑油45を上縦間隙664に向かって押し込むように遠心力が生じる。このため、上シール部661aからの潤滑油45の漏出がより確実に防止される。また、潤滑油45が下シール部662aに偏った状態となる。軸受機構4dでは、下シール間隙662の軸方向における長さが十分に確保されることから、下シール間隙662からの潤滑油45の漏出を防止することができる。
【0097】
第5の実施形態に係るモータ12では、上シール部661aが径方向内方を向くことから、上スラスト部42bを薄くすることができる。その結果、モータ12の薄型化を図りつつラジアル間隙62の軸方向の長さを確保することができる。
【0098】
モータ12では、キャップ蓋部442の下面および外側環状面742が径方向内方に向かうに従って下方に大きく傾斜することにより、下方に大きく傾斜する上シール部661aが構成されてもよい。また、キャップ蓋部442の下面および外側環状面742が径方向内方に向かうに従って上方に傾斜することにより、上方に傾斜する上シール部661aが構成されてもよい。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、下スラスト部43は、ベースプレート21と一繋がりの部材で構成されてもよい。これにより、部品点数を削減することができる。また、上記実施形態では、シャフト部41と上スラスト部42とが別部材とされてもよい。下プレート部431と外筒部432とが別部材とされてよい。下スラスト部43は、シャフト部41と一繋がりの部材で構成されてもよい。
【0100】
図5の上ラジアル動圧溝列711では、溝上部の間に、溝上部に沿って傾斜する複数の傾斜溝が設けられてもよい。また、溝上部の溝深さを溝下部よりも深くしてもよい。これにより、潤滑油45に下方へと向かう圧を増大することができる。下ラジアル動圧溝列712の溝下部においても同様である。また、上ラジアル動圧溝および下ラジアル動圧溝では、上側の部位の長さと下側の部位の長さとほぼ同じにしてもよい。動圧溝の溝長さ、溝深さ、溝幅等は、発明の範囲を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0101】
上スラスト動圧溝列721および下スラスト動圧溝列722は、ヘリングボーン形状であってもよい。この場合、上スラスト動圧溝および下スラスト動圧溝では、径方向外側の部位の長さが径方向内側の部位の長さよりも長いことにより、潤滑油45に径方向内方に向かう圧力が生じる。なお、スラスト動圧溝の径方向外側の部位の間に、複数の傾斜溝が設けられてもよい。スラスト動圧溝の径方向外側の部位の溝深さを内側の部位よりも深くしてもよい。上記実施形態では、潤滑油45の循環方向は定められていないが、図4において反時計回りまたは時計回りに潤滑油45の循環方向が定められてもよい。
【0102】
図4では、上スラスト部42の下面421の面積が確保される場合には、連通孔61から径方向内方に大きく離れた位置に上スラスト動圧溝列721が設けられてよい。同様に、外筒部432の上面435の面積が確保される場合には、連通孔61から径方向内方に大きく離れた位置に下スラスト動圧溝列722が設けられてよい。上スラスト間隙651および下スラスト間隙652では、フランジ部52の上面521および下面522のそれぞれに上スラスト動圧溝列および下スラスト動圧溝列が設けられてもよい。また、シャフト部41の外周面411にラジアル動圧溝列が設けられてもよい。
【0103】
上記第1の実施形態では、上シール間隙661の幅が略一定であってもよい。この場合、上スラスト部42の外周面422または上ハブ筒部53の内周面531の少なくとも一方に動圧溝列が設けられることにより、いわゆる、ポンピングシールが構成される。これにより、潤滑油45に対して上シール間隙661の内部に向かう動圧が発生し、潤滑油45が保持される。下シール間隙662においても同様である。第2ないし第4の実施形態においても同様である。第5の実施形態においても、上シール間隙665の幅が略一定であってもよい。この場合、キャップ蓋部442の下面および外側環状面742の少なくとも一方に動圧溝列を設けて、上シール間隙665内にポンピングシールが構成されてよい。また、上スラスト部42および上ハブ筒部53との間の上縦間隙664内にポンピングシールが構成されてもよい。第1ないし第4の実施形態では、上シール部661aおよび下シール部662aは、必ずしも中心軸J1にほぼ平行に設けられる必要はなく、中心軸J1に対して大きく傾斜してもよい。
【0104】
第1の実施形態では、図20に示すように、上ハブ筒部53の内側にシールキャップ44のキャップ円筒部441が固定されてもよい。この場合、キャップ円筒部441と上スラスト部42の外周面422との間に上縦間隙664が構成される。上縦間隙664には、潤滑油45の界面が位置する。なお、キャップ蓋部442と外側環状面742との間の上横間隙665内に潤滑油45の上側の界面が位置してもよい。他の実施形態においても、キャップ円筒部441が上ハブ筒部53の内側に固定されてよい。
【0105】
上ハブ環状部591では、上ハブ筒部53とシールキャップ44とが一繋がりの部材であってもよい。また、第1の実施形態では、潤滑油45の漏出の可能性が低い場合、シールキャップ44が省略され、上ハブ筒部53のみにて上ハブ環状部が構成されてもよい。この場合、上ハブ筒部53と上スラスト部42との間の上縦間隙661のみにて第5間隙が構成される。他の実施形態においても同様である。
【0106】
第1の実施形態のモータ12の回転部3では、フランジ部52の外縁部の下側に位置する部材(以下、「下ハブ環状部」と呼ぶ)として下ハブ筒部54のみが設けられるが、複数の部材により下ハブ環状部が構成されてもよい。例えば、下ハブ環状部が、下ハブ筒部54、および、下ハブ筒部54の先端に取り付けられたキャップ部材により構成されてもよい。この場合、下ハブ環状部と外筒部432との間の第6間隙は、下ハブ筒部およびキャップ部材と外筒部432との間に構成される。下ハブ筒部54またはキャップ部材と外筒部432との間に下縦間隙が構成され、下縦間隙またはこの間隙に連続する間隙が、下シール間隙となる。下縦間隙に連続する間隙が、下シール間隙である場合は、下縦間隙内の潤滑油45は、下シール間隙の下側の界面に繋がる。他の実施形態においても同様である。
【0107】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、ディスク駆動装置用のモータとして利用可能であり、ディスク駆動装置以外のモータとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 ディスク駆動装置
2 静止部
3 回転部
5,5a〜5c スリーブ部
6,6a 領域
12,12a スピンドルモータ
13 アクセス部
14 ハウジング
21 ベースプレート
22 ステータ
32 ロータマグネット
41 シャフト部
42,42a,42b,46,48 上スラスト部
43,47,49 下スラスト部
44,44a シールキャップ
45 潤滑油
51 内筒部
52 フランジ部
53,53a 上ハブ筒部
54 下ハブ筒部
61 連通孔
62 ラジアル間隙
64 円筒間隙
69 動圧軸受
81 ラジアル動圧軸受
84 下連絡間隙
151 クランパ
212 円筒間隙
311 蓋部
314 ねじ孔
315 (蓋部の)上面
316 (蓋部の)下面
420 (上スラスト部の)上面
431 下プレート部
432 外筒部
435 (外筒部の)上面
436 固定領域
521 (フランジ部の)上面
591 上ハブ環状部
601 第5間隙
651 上スラスト間隙
651b,652b 外側領域
652 下スラスト間隙
661,664 上縦間隙
662 下縦間隙
665 上横間隙
811 上ラジアル動圧軸受部
812 下ラジアル動圧軸受部
821 上スラスト動圧軸受部
822 下スラスト動圧軸受部
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを有する静止部と、
ロータマグネットを有し、前記静止部により回転可能に支持される回転部と、
を備え、
前記静止部が、
上下方向を向く中心軸を中心として配置されるシャフト部と、
前記シャフト部の下部から径方向外方へと広がる下プレート部と、
前記下プレート部の外縁部から上方へと延びる外筒部と、
を備え、
前記回転部が、
前記シャフト部の外周面との間に第1間隙を構成する内周面と、前記外筒部の内周面との間に第2間隙を構成する外周面と、を有する内筒部と、
前記内筒部から径方向外方に突出し、前記外筒部の上面との間に第3間隙を構成する下面と、上下方向に貫通する連通孔と、を有するフランジ部と、
を備え、
前記第1間隙よりも径方向外側に上シール部が構成され、前記第2間隙よりも径方向外側に下シール部が構成され、前記上シール部と前記下シール部とには、潤滑油の界面がそれぞれ位置し、前記上シール部と前記下シール部とが前記連通孔によって連通し、
前記上シール部から前記第1間隙、前記第2間隙、前記第3間隙を経由して前記下シール部に至る領域、および、前記連通孔が、前記潤滑油で満たされ、
前記第1間隙に、動圧軸受が構成され、
前記第3間隙に、前記潤滑油に径方向内方へと向かう圧を誘起する動圧発生部が構成される、モータ。
【請求項2】
前記動圧軸受が、上動圧軸受部と、下動圧軸受部と、を有し、
前記第3間隙の位置が、軸方向において、前記下動圧軸受部よりも上方に位置する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記軸方向において、前記上動圧軸受部の下端は、前記フランジ部の下面と略同一、または、前記フランジ部の下面よりも上方に位置し、かつ、前記上動圧軸受部の上端は、前記フランジ部の上面と略同一、または、前記フランジ部の上面よりも下方に位置する、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記動圧発生部が、前記中心軸を中心とする、前記連通孔の下側の開口に外接する円よりも内側に設けられる、請求項1ないし3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記第3間隙のうち、前記動圧発生部の外縁よりも径方向外側の外側領域における圧が大気圧とほぼ同じであり、
前記連通孔の前記下側の開口が、前記第3間隙の前記外側領域に位置する、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記連通孔の前記軸方向における長さが、前記上シール部の前記界面と前記下シール部の前記界面との間の軸方向における距離よりも短い、請求項1ないし5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記静止部が、前記シャフト部の上部から径方向外方に広がる上プレート部、をさらに備え、
前記回転部が、前記フランジ部の外縁部から上方へと広がり、前記上プレート部と径方向に対向する上ハブ環状部、をさらに備え、
前記上シール部が、前記上プレート部と前記上ハブ環状部との間の上シール間隙に構成される、請求項1ないし6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記静止部が、前記シャフト部の上部から径方向外方に広がる上プレート部、をさらに備え、
前記回転部が、前記ステータの上方に位置し、ディスクをクランプするクランパを固定するためのねじ孔を有する蓋部を備え、
前記上プレート部の上面、前記蓋部の上面、前記フランジ部の上面、前記蓋部の下面、および、前記外筒部の上面が、軸方向において順に下方に向かって位置する、請求項2または3に記載のモータ。
【請求項9】
前記上プレート部と前記フランジ部の上面との間の第4間隙に、前記潤滑油に径方向内方へと向かう圧を誘起する他の動圧発生部が構成される、請求項7に記載のモータ。
【請求項10】
前記他の動圧発生部が、前記中心軸を中心とする、前記連通孔の上側の開口に外接する円よりも内側に設けられる、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記第4間隙のうち、前記他の動圧発生部の外縁よりも径方向外側の外側領域における圧が大気圧とほぼ同じであり、
前記連通孔の前記上側の開口が、前記第4間隙の前記外側領域に位置する、請求項10に記載のモータ。
【請求項12】
前記シャフト部と前記上プレート部とが一繋がりの部材であり、前記下プレート部と前記外筒部とが一繋がりの部材である、請求項7ないし11のいずれかに記載のモータ。
【請求項13】
前記回転部が、前記フランジ部の前記外縁部から下方へと広がり、前記外筒部と径方向に対向する下ハブ環状部、を備え、
前記下シール部が、前記外筒部と前記下ハブ環状部との間の下シール間隙に構成される、請求項7ないし12のいずれかに記載のモータ。
【請求項14】
前記静止部が、前記下ハブ環状部の径方向外側にて上方に延びる円筒部、を備え、
前記下ハブ環状部の外周面と前記円筒部の内周面との間に、前記下シール間隙の径方向の最大幅よりも小さい下連絡間隙が構成される、請求項13に記載のモータ。
【請求項15】
前記上シール部の径と前記下シール部の径とが等しく、前記連通孔が、前記中心軸に平行である、請求項1ないし14のいずれかに記載のモータ。
【請求項16】
ディスクを回転させる請求項1ないし15のいずれかに記載のモータと、
前記ディスクに対して情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
前記ディスク、前記モータおよび前記アクセス部を収容するハウジングと、
を備える、ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−193837(P2012−193837A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107626(P2011−107626)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】