説明

スペクトラム拡散クロック生成器及び半導体装置

【課題】回路規模の大きなDACやアナログ変調回路を用いずに理想的な周波数特性を得ることが可能なスペクトラム拡散クロック生成器及びスペクトラム拡散クロック生成器を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】動作クロックを生成する電圧制御発振器と、動作クロックの位相と基準クロックの位相とを比較し比較結果により電圧制御発振器の発振の基準となる電圧を生成する帰還制御部と、動作クロックの周波数に変動を与える成分をデルタシグマ変調したパルス信号として生成する変調パルス生成部と、パルス信号の振幅を設定するレベル設定部と、帰還制御部が生成した電圧とレベル設定部によって振幅が設定されたパルス信号とを加算する加算部と、加算部の出力信号を濾波して電圧制御発振器に与える制御電圧を生成する低域パスフィルタと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラム拡散クロック生成器に関する。特に、半導体装置に用いられる動作クロックのスペクトルを拡散させるスペクトラム拡散クロック生成器(Spread Spectrum Clock Genarator。略してSSCG)に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの動作周波数が向上し、EMI(Electromagnetic Interference:電磁干渉)対策の重要性が高まっている。プリンター、パソコン用途、ディジタル民生機器にEMI対策としてSSCG PLL(位相ロックループ)が搭載されることが多い。LSI内部クロックが特定の周波数を持つことで、スペクトラムの特定の周波数にピークを持ち放射電磁雑音の原因となっている。SSCGによりクロックの周波数をわずかに変化させることでスペクトラムのエネルギーを他の周波数へ分散させ、特定の周波数に存在したピーク値を下げることができる。
【0003】
特許文献1には、従来のスペクトラム拡散クロック生成器(SSCG)が記載されている。図8は、特許文献1の図6に記載されている従来のスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。図8のクロック生成器は、PLLのフィードバックループ内の分周器の分周比を変化させることにより動作クロックの周波数を変化させており、リファレンスクロック側に分周器35、フィードバックループ側に分周器42を持っている。また、それぞれの分周比がルックアップテーブル46と47で設定される。分周器35,42の分周比をPLL動作中にルックアップテーブル46と47により切り替えることで、VCO出力クロックのスペクトラムを拡散している。
【0004】
また、図9は、特許文献1の図7に記載されている別な従来のスペクトラム拡散クロック生成器で、アナログ変調回路52で変調波形を生成し、VCO(Voltage Controled Oscillator:電圧制御発振器)51の制御電圧に加えVCOの出力クロックのスペクトラムを拡散している。アナログ変調回路は、三角波生成部とlog、anti−log増幅器で変調波形を生成する。なお、図9のクロック生成器では、位相比較器37による位相比較結果をフィルタ38によって平滑化してから、アナログ変調回路52により変調電圧を加算し、VCO 2(51)に制御電圧を与えている。
【0005】
また、図10は、特許文献1の図8に記載されているさらに別な従来のスペクトラム拡散クロック生成器である。図10では、LC回路による基準クロック発振回路72を用い、その基準クロック発振回路72の発振周波数をアナログ変調回路により直接変調をかけている。
【0006】
さらに、図11は、特許文献1の図9に記載されているまた別の従来のスペクトラム拡散クロック生成器である。図11では、図9のアナログ変調回路52に代えて、ROM82とDAコンバータ83によって変調波形を生成し、フィルタ38の制御電圧に加算し、VCO 2(51)の発振周波数に変調をかけている。なお、図11においても、位相比較器37の位相比較結果をフィルタ38により平滑化した後、DAコンバータによる変調電圧を加算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5488627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は本発明により与えられる。図8のようにPLLの分周比を変える構成の場合、分周比を変えるための回路が必要になる。また、図10のように基準クロックの周波数に変調をかけると、基準周波数そのものがずれてしまうので、好ましくない場合がある。さらに、図9のようにアナログ変調回路を用いるとアナログ回路の特性変動の影響を受けやすい。また、任意の変調特性を得ることは容易ではない。図11のようにDAコンバータを用いれば、比較的安定した特性が得られ、また、任意の変調特性を有するクロック生成器を得ることができるが、変調の精度を上げようとすると、回路規模が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの側面によるスペクトラム拡散クロック生成器は、動作クロックを生成する電圧制御発振器と、前記動作クロックの位相と基準クロックの位相とを比較し比較結果により前記電圧制御発振器の発振の基準となる電圧を生成する帰還制御部と、前記動作クロックの周波数に変動を与える成分をデルタシグマ変調したパルス信号として生成する変調パルス生成部と、前記パルス信号の振幅を設定するレベル設定部と、前記帰還制御部が生成した電圧と前記レベル設定部によって振幅が設定された前記パルス信号とを加算する加算部と、前記加算部の出力信号を濾波して前記電圧制御発振器に与える制御電圧を生成する低域パスフィルタと、を備える。
【0010】
また、本発明の他の側面による半導体装置は、動作クロックを生成する電圧制御発振器と、前記動作クロックの位相と基準クロックの位相とを比較し比較結果により前記電圧制御発振器の発振の基準となる電圧を生成する帰還制御部と、前記動作クロックの周波数に変動を与える成分をデルタシグマ変調したパルス信号を入力して、前記パルス信号の振幅を設定するレベル設定部と、前記帰還制御部が生成した電圧と前記レベル設定部によって振幅が設定された前記パルス信号とを加算する加算部と、前記加算部の出力信号を濾波して前記電圧制御発振器に与える制御電圧を生成する低域パスフィルタと、を備えたスペクトラム拡散クロック生成器と、前記動作クロックに同期して動作するクロック同期回路と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的簡単な構成により、回路特性の変動を受けにくく、かつ任意の変調特性を有するスペクトラム拡散クロック生成器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例によるスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図2】一実施例において、(a)はロック時のチャージポンプ回路の出力電圧を低域パスフィルタで積分したときの電圧波形であり、(b)はレベル設定部からの出力信号を低域フィルタで積分したときの電圧波形であり、(c)はチャージポンプ回路の出力電圧とレベル設定部の出力信号とを加算部により加算し、低域フィルタで積分したときの電圧波形である。
【図3】(a)は、一実施例においてVCO制御電圧と動作クロック信号の周波数との関係を模式的に説明する図面であり、(b)はスペクトラム拡散を行う場合と行わない場合の周波数スペクトラムを説明する図面である。
【図4】本発明の別な実施例によるスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図5】さらに別な実施例によるスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図6】さらに他の実施例によるスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図7】さらに他の実施例によるスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図8】特許文献1の図6に記載されている従来のスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図9】特許文献1の図7に記載されている従来のスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図10】特許文献1の図8に記載されている従来のスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【図11】特許文献1の図9に記載されている従来のスペクトラム拡散クロック生成器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に本発明の概要について、必要に応じて図面を参照して説明する。なお、概要の説明において引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明による実施形態のバリエーションを制限するものではない。
【0014】
本発明のスペクトラム拡散クロック生成器1は、図1、図4〜図6に示すように、動作クロックCkoを生成する電圧制御発振器2と、動作クロックCkoの位相と基準クロックCkrの位相とを比較し比較結果により電圧制御発振器2の発振の基準となる電圧を生成する帰還制御部3と、動作クロックCkoの周波数に変動を与える成分をデルタシグマ変調したパルス信号として生成する変調パルス生成部(4、4a)と、パルス信号の振幅を設定するレベル設定部5と、帰還制御部3が生成した電圧とレベル設定部5によって振幅が設定されたパルス信号とを加算する加算部6と、加算部6の出力信号を濾波して電圧制御発振器2に与える制御電圧を生成する低域パスフィルタ7と、を備える。上記構成によれば、デルタシグマ変調した周波数の変動成分を低域パスフィルタ7によってスペクトラム拡散を行うための制御電圧に復調し、電圧制御発振器2に与えるので、一般的なDAコンバータを用いるより回路を小型化できる。また、デルタシグマ変調したパルスを用いるのでディジタル回路等により比較的簡単に任意の周波数特性のクロック生成器が得られる。また、PLLの帰還制御系には、低域パスフィルタが必要となるが、低域パスフィルタ7をデルタシグマ変調した信号の復調と帰還制御電圧の平滑化とに共用することもできる。また、低域パスフィルタ7の周波数特性に合わせて、デルタシグマ変調することが好ましい。さらに、変調パルス生成部(4、4a)による変調パルスの生成は、例えば、図4、図6に示すように、あらかじめ所望のパルス信号を変調パルス記憶回路4aに記憶させておいてそれを出力しても良いし、ハードウエアやソフトウェアによるディジタル信号処理によってパルスを生成してもよい。また、変調パルス生成部4は、電圧制御発振器2を設けた半導体チップの外に設けられていてもよい。さらに、レベル設定部5によって周波数に変動を与える変動の大きさが設定できる。
【0015】
また、パルス信号は、動作クロックの周波数に変動を与える成分をパルス密度変調したパルス信号である。したがって、ディジタル処理によって任意の周波数特性が得られるようにデルタシグマ変調することができる。低域パスフィルタ7によって積分し、復調したときに所望の周波数変動成分が得られればよい。要は、低域パスフィルタ7を通過した後に所望の周波数変動成分が得られればよい。
【0016】
さらに、図5、図6のように、低域パスフィルタを第1低域パスフィルタ7としたときに、レベル設定部5によって振幅が設定されたパルス信号を濾波する第2低域パスフィルタ8をさらに備え、加算部6が、帰還制御部3が生成した電圧と第2低域パスフィルタ8により濾波したパルス信号とを加算する。このようにすると、デルタシグマ変調された周波数変動成分は第2低域パスフィルタ8と第1低域パスフィルタ7によって復調されることになる。第1低域パスフィルタ7の他に第2低域パスフィルタ8を設けることによってPLL帰還制御系の低域パスフィルタ特性と周波数変動成分復調用の低域パスフィルタ特性を変えることもできる。
【0017】
また、図7に示すように、本発明の一実施形態の半導体装置は、動作クロックを生成する電圧制御発振器2と、動作クロックCkoの位相と基準クロックCkrの位相とを比較し比較結果により電圧制御発振器2の発振の基準となる電圧を生成する帰還制御部3と、動作クロックCkoの周波数に変動を与える成分をデルタシグマ変調したパルス信号MPを入力してパルス信号の振幅を設定するレベル設定部5と、帰還制御部3が生成した電圧とレベル設定部5によって振幅が設定されたパルス信号とを加算する加算部6と、加算部6の出力信号を濾波して電圧制御発振器2に与える制御電圧を生成する低域パスフィルタ7と、を備えたスペクトラム拡散クロック生成器1と、動作クロックに同期して動作するクロック同期回路と、を含む。すなわち、図には特に記載していないが、半導体装置に設けたクロック生成器1が生成する動作クロックは半導体装置の内部回路の動作クロックとして供給され、少なくとも一部の内部回路は、動作クロックに同期して動作する。なお、デルタシグマ変調されたパルス信号は、半導体装置の内部で生成してもよいし、図7のように変調パルス入力部4bを設け、外部から変調パルスそのものや、変調パルスデータを入力してもよい。以下、実施例について、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1によるスペクトラム拡散クロック生成器1のブロック図である。図1において、電圧制御発振器2と、帰還制御部3と、低域パスフィルタ7は、一般的なPLL回路を構成する。帰還制御部3には、周波数位相比較器3aと、チャージポンプ回路3bと、分周器3cとを備えている。周波数位相比較器3aは、基準クロックCkrと動作クロックCkoを分周器3cにより分周した信号を入力し、両者の周波数や位相を比較し、その比較結果によってチャージポンプ回路3bを制御する。チャージポンプ回路3bは、周波数位相比較結果によって、パルスを出力する。低域パスフィルタ7はこのパルスを平滑化して電圧制御発振器(VCO)2の制御電圧を得ている。電圧制御発振器2は、制御電圧によって発振周波数が制御されるので、動作クロックCkoは、基準クロックCkrに同期し、かつ、分周器3cの分周比倍の高い周波数のクロックとなる。この電圧制御発振器2と帰還制御部3と低域パスフィルタ7とで構成されるPLL回路は、一度基準クロックCkrと動作クロックCkoの周波数位相が揃うと、動作クロックCkoは安定した一定の周波数で発振し、その状態は外部から設定条件が変わらない限り維持される。
【0019】
変調パルス生成部4、レベル設定部5、加算部6は、このPLL回路で発振する動作クロックCkoの発振周波数に変動を与え、周波数スペクトラムを拡散させるための部分である。変調パルス生成部4は、PLL回路の発振周波数に変動を与えるための電圧成分をデルタシグマ変調したパルス信号MPを生成する。このパルス信号MPとして出力するパルス波形は、電圧制御発振器2の発振周波数をスペクトラム拡散生成器(SSCG)により変調させるための波形をさらにデルタシグマ変調したパルス波形となる。レベル設定部5は、変調パルス生成部4によって生成したパルスの振幅を設定する。このレベル設定部5によって、設定される振幅により動作クロックCkoの発振周波数に変動を与える大きさを指定することができる。加算部6は、帰還制御部3(チャージポンプ回路3b)が生成した電圧とレベル設定部5によって振幅が設定されたパルス信号とを加算する。したがって、低域パスフィルタ7は、この加算部6によって加算された電圧信号を平滑化して電圧制御発振器2の制御電圧を生成する。
【0020】
次に、電圧制御発振器2に印加される制御電圧について図2を用いて説明する。図2(a)はロック時のチャージポンプ回路3bの出力電圧を低域パスフィルタ7で積分した電圧波形である。この図2(a)では、レベル設定部5の電圧はゼロであり、チャージポンプ回路3bの出力電圧がそのまま低域パスフィルタ7に入力されるとする。電圧制御発振器2、帰還制御部3、低域パスフィルタ7によるPLL回路がロックしているときは、チャージポンプ回路3bの出力も安定しており、低域パスフィルタ7が出力する電圧制御発振器2の制御電圧は、一定の固定電圧になる。
【0021】
次に、図2(b)は、レベル設定部5の出力信号のみを低域フィルタ7で積分したときの電圧波形である。電圧波形を実線の太線で示し、電圧の平均値を破線で示す。変調パルス生成部4は、低域パスフィルタ7によって所定の時定数で積分したときに理想の電圧波形になるようにデルタシグマ変調したパルス波形を出力する。したがって、低域フィルタ7を通過すると理想的な電圧波形に復調する。なお、図2(b)の電圧波形は、単純な三角波であるが、変調パルス生成部4が出力するパルス設定を変えれば、任意の電圧波形を得ることが可能である。また、電圧の波形は、変調パルス生成部4が出力するパルス波形により決まるが、振幅の大きさは、レベル設定部5によるパルスの振幅により、低域パスフィルタ7を経由した電圧波形の振幅も決まる。
【0022】
一般的には、変調パルス生成部4が出力するパルスは、パルス密度変調(PDM:Pulse Density Modulation)信号である。
【0023】
図2(c)は、チャージポンプ回路3bの出力電圧とレベル設定部5の出力信号とを加算部6により加算し、低域パスフィルタ7で積分したときの電圧波形である。得られる波形は、図2(a)のチャージポンプ回路3bの出力電圧を低域パスフィルタ7で積分した電圧と、図2(b)のレベル設定部5の出力電圧を低域パスフィルタ7で積分した電圧と、を単純加算した電圧に実質的に等しい電圧波形が得られる。なお、電圧の平均値は、チャージポンプ回路3bが出力電圧の平均値V1と同じである。したがって、レベル設定部5により与えられる電圧によって、周波数は変動するが、その平均周波数は、レベル設定部5により変調を行わない場合と同一である。
【0024】
次に、図3(a)は、実施例1においてVCO制御電圧と動作クロック信号の周波数との関係を模式的に説明する図面である。レベル設定部5の電圧によって、VCO制御電圧が変動すると、それにつれて電圧制御発振器2の出力する動作クロックCkoの発振周波数も変動する。図3(a)のに示すとおり、VCO制御電圧が高くなれば動作クロックCkoの発振周波数は高くなり、VCOの制御電圧が低くなれば動作クロックCkoの発振周波数は低くなる。
【0025】
図3(b)は、スペクトラム拡散を行う場合と行わない場合の周波数スペクトラムのプロファイルを示す図である。スペクトラム拡散を行わない場合の周波数スペクトラムを破線で、スペクトラム拡散をおこなった場合の周波数スペクトラムを実線で示す。スペクトラム拡散を行わない場合の周波数スペクトラムは、特定の周波数にスペクトラムが集中しているが、スペクトラム拡散を行うと周波数のピークは抑制され、周波数スペクトラムが広がるようになる。
【実施例2】
【0026】
図4は、実施例2によるスペクトラム拡散クロック生成器1のブロック図である。図4において、実施例1の図1と実質的に同一である部分は同一の符号を付し、その説明も省略する。図4では、図1の変調パルス生成部4が、変調パルス記憶回路4aに代わっている点が異なる。それ以外は、実施例1の図1のスペクトラム拡散クロック生成器1と同一である。変調パルス記憶回路4aはあらかじめ準備した変調パルスを記憶しておく記憶回路である。前もって動作クロックCkoのセンター周波数とスペクトラム拡散を行う周波数スペクトラムが決まっていれば、その周波数スペクトラムが得られるように電圧制御発振器2に対して与える電圧波形を求め、その電圧波形から逆に低域パスフィルタ7のフィルタ特性を考慮して、低域パスフィルタ7に入力するデルタシグマ変調したパルス波形を計算によって求める。その求めたパルス波形を変調パルス記憶回路4aに記憶させておけばよい。その例えば、変調パルス記憶回路4aはROMで実現できる。具体的には、ROMの1アドレス毎に出力するパルス列を格納しておいて、そのパルス列を順次アドレスを更新して読み出すことにより所望の変調パルス列を生成することができる。
【0027】
また、ROMに代えて、変調パルス記憶回路4aとして、フラッシュメモリやRAMを用いることもできる。フラッシュメモリやRAMであれば、スペクトラム拡散クロック生成器を備えた半導体装置の製造後においても、変調パルスを変えることができる。
【実施例3】
【0028】
図5は、実施例3によるスペクトラム拡散クロック生成器1のブロック図である。図5のスペクトラム拡散クロック生成器1は、実施例1の低域パスフィルタ7を第1低域パスフィルタ7としたときに、レベル設定部5によって振幅が設定されたパルス信号MPを濾波する第2低域パスフィルタ8をさらに備え、加算部6が、帰還制御部3が生成した電圧と第2低域パスフィルタ8により濾波したパルス信号とを加算する。この実施例3の構成によれば、デルタシグマ変調を復調する第2低域パスフィルタ8の周波数特性とチャージポンプ回路3bの出力に設ける第1低域パスフィルタ7の周波数特性とを変えることができる。すなわち、デルタシグマ変調出力の遮断周波数とチャージポンプ出力の遮断周波数を異なった周波数に設定することもできる。
【実施例4】
【0029】
図6は、実施例4によるスペクトラム拡散クロック生成器1のブロック図である。図6のスペクトラム拡散クロック生成器1は、実施例2によるスペクトラム拡散クロック生成器と、実施例3によるスペクトラム拡散クロック生成器とを組み合わせたスペクトラム拡散クロック生成器である。すなわち、図6を実施例1の図1と対比すると変調パルス生成部4として実施例2と同じ変調パルス記憶回路4aが用いられている。また、実施例3と同様に、レベル設定部5と加算部6との間に第2低域パスフィルタを設けている。この様な構成にすることによって、変調パルス記憶回路4aを用いることによって簡単にデルタシグマ変調パルスを得ることができるようにするとともに、デルタシグマ変調したパルス信号を復調する低域パスフィルタ8の周波数特性と、チャージポンプ回路3bの出力信号の平滑化を行う低域パスフィルタ7の周波数特性を異なった特性とすることができる。
【実施例5】
【0030】
図7は、スペクトラム拡散クロック生成器1を半導体チップ上に形成する場合に特に適した実施例である。図7では、実施例1の変調パルス生成部4が半導体チップ上には設けられておらず、半導体チップの外部等からデルタシグマ変調を行うパルスを入力することができるように変調パルス入力部4bを設けている。したがって、図7のスペクトラム拡散クロック生成器1は、クロック生成器1自体に変調パルス生成部4を設けなくとも、外部からデルタシグマ変調を行ったパルスを入力することによって、スペクトラム拡散をした動作クロックCkoが得られる。なお、半導体装置にスペクトラム拡散クロック生成器1を内蔵する場合、半導体装置の少なくとも一部の回路にクロック生成器1が生成した動作クロックCkoを供給し、その回路を動作クロックCkoに同期して動作させることができる。また、半導体チップ上に実施例1乃至4のいずれかに記載のスペクトラム拡散クロック生成器1を変調パルス生成部4又は変調パルス記憶回路4aまで含めて設けてもよいことはもちろんである。
【0031】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0032】

1:クロック生成器
2:電圧制御発振器
3:帰還制御部
3a:周波数位相比較器
3b:チャージポンプ回路
3c:分周器
4:変調パルス生成部
4a:変調パルス記憶回路
4b:変調パルス入力部
5:レベル設定部
6:加算部
7:低域パスフィルタ(第1低域パスフィルタ)
8:第2低域パスフィルタ
Cko:動作クロック
Ckr:基準クロック
MP:パルス信号(SSCG変調波形のデルタシグマ変調波形)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作クロックを生成する電圧制御発振器と、
前記動作クロックの位相と基準クロックの位相とを比較し比較結果により前記電圧制御発振器の発振の基準となる電圧を生成する帰還制御部と、
前記動作クロックの周波数に変動を与える成分をデルタシグマ変調したパルス信号として生成する変調パルス生成部と、
前記パルス信号の振幅を設定するレベル設定部と、
前記帰還制御部が生成した電圧と前記レベル設定部によって振幅が設定された前記パルス信号とを加算する加算部と、
前記加算部の出力信号を濾波して前記電圧制御発振器に与える制御電圧を生成する低域パスフィルタと、
を備えることを特徴とするスペクトラム拡散クロック生成器。
【請求項2】
前記パルス信号は、前記動作クロックの周波数に変動を与える成分をパルス密度変調したパルス信号であることを特徴とする請求項1記載のスペクトラム拡散クロック生成器。
【請求項3】
前記低域パスフィルタを第1低域パスフィルタとしたときに、
前記レベル設定部によって振幅が設定されたパルス信号を濾波する第2低域パスフィルタをさらに備え、
前記加算部が、前記帰還制御部が生成した電圧と前記第2低域パスフィルタにより濾波したパルス信号とを加算することを特徴とする請求項1又は2記載のスペクトラム拡散クロック生成器。
【請求項4】
前記変調パルス生成部が、あらかじめ生成されたパルス信号を記憶する記憶回路で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のスペクトラム拡散クロック生成器。
【請求項5】
動作クロックを生成する電圧制御発振器と、
前記動作クロックの位相と基準クロックの位相とを比較し比較結果により前記電圧制御発振器の発振の基準となる電圧を生成する帰還制御部と、
前記動作クロックの周波数に変動を与える成分をデルタシグマ変調したパルス信号を入力して、前記パルス信号の振幅を設定するレベル設定部と、
前記帰還制御部が生成した電圧と前記レベル設定部によって振幅が設定された前記パルス信号とを加算する加算部と、
前記加算部の出力信号を濾波して前記電圧制御発振器に与える制御電圧を生成する低域パスフィルタと、
を備えたスペクトラム拡散クロック生成器と、
前記動作クロックに同期して動作するクロック同期回路と、
を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記レベル設定部に入力するパルス信号を生成する変調パルス生成部をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記変調パルス生成部が、あらかじめ生成されたパルス信号を記憶する記憶回路で構成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記低域パスフィルタを第1低域パスフィルタとしたときに、
前記レベル設定部によって振幅が設定されたパルス信号を濾波する第2低域パスフィルタをさらに備え、
前記加算部が、前記帰還制御部が生成した電圧と前記第2低域パスフィルタにより濾波したパルス信号とを加算することを特徴とする請求項5乃至7いずれか1項記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−288073(P2010−288073A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140235(P2009−140235)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】