説明

スマートエントリシステム

【課題】電界強度によらずに、カバンやジャケットなどに入れた携帯機を持ち出さなくてもドアの施錠が行えるようにする。
【解決手段】マスタ携帯機が車室内にある場合にサブ携帯機が車室外にある場合には、マスタ携帯機無効制御を行うと共に施錠制御を行う。これにより、カバンやジャケットなどに入れた携帯機を持ち出さなくてもドアの施錠が行える。したがって、ユーザがマスタ携帯機を車室内に置いたままサブ携帯機を持って車室外に出たときに施錠できるようにしつつ、仮にユーザがサブ携帯機を持って車両から外に出ているときに他人がガラスを割って車室内に侵入したとしても、マスタ携帯機を使用してエンジンを掛けたり等の操作が行えないようにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機を所持する乗員(以下、ユーザという)の車両の乗り降りに伴ってドアの施錠制御や開錠制御等を行うスマートエントリ(登録商標)システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザに所持される携帯機と車両に搭載された送受信機との通信に基づいてドアのロック、アンロック制御等を行うものとして、スマートエントリシステムが知られている。
【0003】
スマートエントリシステムでは、車両に搭載された送受信装置にてユーザが所持する携帯機と交信し、携帯機から識別コードを含む信号を返信させると共に、車両に搭載された車室外用の受信アンテナを介して送受信装置で識別コードを含む信号を受信し、受信されたときにドアロックの解除許可を行うことで、ユーザを含む乗員がドアに触れたことを検知してドア操作がなされた時にドアアンロックを行う。また、スマートエントリシステムでは、車室内にも携帯機が車室内に存在するか否かを検出するための受信アンテナが備えられており、上記と同様の通信を行うことにより、車室内に携帯機が存在しているか否かを判定し、この判定結果に基づいてユーザの乗降車を判別してエンジン始動用のプッシュスタートスイッチの操作許可を行っている。
【0004】
このため、スマートエントリシステムでは、ユーザが携帯機を所持した状態で車両に近づき、ドアノブ操作もしくはドアノブの施錠スイッチや開錠スイッチを操作することにより、キー操作を行わなくてもドアの施開錠を行えると共に、ユーザが車室内に乗り込んだときにプッシュスタートスイッチを操作することにより、エンジンスタートが行える。
【0005】
このようなスマートエントリシステムが採用される車両では、ユーザは携帯機をカバン、財布、ジャケット等に入れることが多くなる。このため、例えばコンビニエンスストアで買い物をする場合のように車両から降車するとき等に、わざわざ携帯機が入っているカバンやジャケットを車両から持ち出さないと施錠できなくなる。
【0006】
また、例えば自動販売機で飲み物を買う場合のようにエンジンを掛けた状態で一時的に車両から外に出るときに、ユーザが携帯機を入れたジャケットを着たままの状態で外に出ると(つまりエンジンを掛けた状態で携帯機を持ち出すと)、持ち出し警報が鳴ってしまうという問題がある。
【0007】
これに対して、特許文献1において、2つの携帯機を利用する場合のスマートエントリシステムが提案されている。具体的には、2つの携帯機を利用している場合に、一方の携帯機が車室内に置忘れられた状態で他方の携帯機を所持したユーザが車両から遠ざかろうとした時に、車両から他方の携帯機までの距離を携帯機から返信される信号の電界強度に基づいて検出し、その距離が大きくなっていき確実にユーザが車両から遠ざかろうとしていれば、ドアロックを行い、防犯性を高めるようにしている。
【0008】
そして、車室内に置き忘れられた他方の携帯機の信号に基づくドアロックやドアアンロックの動作等が無効化されるようにし、ユーザが所持している一方の携帯機が近づいてきた場合などにより、再びドアがアンロック状態にされたときに、それを検知して、他方の携帯機の信号に基づくドアロックやドアアンロックの動作等を再び有効化している。
【特許文献1】特開2000−145222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように特許文献1のシステムでは、車室内に置き忘れられた他方の携帯機の信号に基づくドアロックやドアアンロックの動作等を無効化しているが、再びドアがアンロック状態になったときに、それを有効化するため、ガラスを割って車両に侵入してアンロック状態にしても有効化されてしまう。このため、容易に車両盗難が行え、反って防犯性が低くなるという問題がある。
【0010】
また、ユーザが車両から遠ざかることをユーザが所持する一方の携帯機の信号の電界強度に基づいて検出しているが、電波の指向性により、電界強度は携帯機の持ち方などの影響でばらつくため、確実に車両から携帯機までの距離を把握できるものではない。したがって、電界強度を利用している以上、結局的確に上記動作を行えない可能性がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、電界強度によらずに、カバンやジャケットなどに入れた携帯機を持ち出さなくてもドアの施錠が行えるようにすることを第1の目的とする。また、エンジンを掛けたまま意図的に携帯機を車室外に持ち出しても持ち出し警報がならないようにできるスマートエントリシステムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴によれば、スマートエントリシステムにおいて、携帯機(1、2)を車載機(3)と通信可能なマスタ携帯機(1)とサブ携帯機(2)とを備えた構成にすると共に、車載機(3)を、マスタ携帯機(1)およびサブ携帯機(2)と通信を行う送受信装置(32)と、車室外においてドアの施錠および開錠を操作するためのドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)と、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)の操作状態に基づいてドアの施錠制御および開錠制御を実行指令を出す制御装置(35)と、制御装置(35)によるドアの施錠制御および開錠制御の実行指令に基づいて施錠制御および開錠制御を実行する施開錠制御部(36)と、を備えた構成とする。そして、制御装置(35)にて、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、マスタ携帯機(1)およびサブ携帯機(2)と送受信装置(32)との通信に基づき、マスタ携帯機(1)が車室内にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室外にあると判定すると、マスタ携帯機(1)を無効にし該マスタ携帯機(1)を電子キーとして機能させないようにするマスタ携帯機無効制御を実行すると共に、施開錠制御部(36)に施錠制御を実行させる。
【0013】
このように、マスタ携帯機(1)が車室内にある場合にサブ携帯機(2)が車室外にある場合には、マスタ携帯機無効制御を行うと共に施錠制御を行うようにしている。このため、電界強度によらずに、カバンやジャケットなどに入れた携帯機を持ち出さなくてもドアの施錠が行える。したがって、ユーザがマスタ携帯機(1)を車室内に置いたままサブ携帯機(2)を持って車室外に出たときに施錠できるようにしつつ、仮にユーザがサブ携帯機(2)を持って車両から外に出ているときに他人がガラスを割って車室内に侵入したとしても、マスタ携帯機(1)を使用してエンジンを掛けたり等の操作が行えないようにできる。
【0014】
このような第1の特徴を備える場合、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室外にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室内にあると判定した場合、サブ携帯機(2)を無効にし該サブ携帯機(2)を電子キーとして機能させないようにするサブ携帯機無効制御を実行すると共に、施開錠制御部(36)に施錠制御を実行させると好ましい。
【0015】
このように、ユーザがマスタ携帯機(1)を車室外に持って出たときにサブ携帯機(2)が車室内に残されている場合、ユーザが通常通り、マスタ携帯機(1)を使用している場合であるため、施錠制御を行うが、サブ携帯機無効制御を行っている。このため、他人がサブ携帯機(2)を用いてエンジンを掛けたりできないようにできる。
【0016】
また、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室内にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室内にあるか、もしくは車室内および車室外の通信可能範囲内に無いと判定した場合に、施開錠制御部(36)に施錠制御を実行させないようにすると好ましい。
【0017】
これにより、ユーザが車室内に居るにも拘らず、ユーザの意思に反して車室外で施錠操作がなされた場合に、施錠制御が行われないようにできる。
【0018】
なお、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室外にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室外にあるか、もしくは車室内および車室外の通信可能範囲内に無いと判定した場合には、施開錠制御部(36)に施錠制御を実行させるようにすれば良い。
【0019】
本発明の第2の特徴によれば、制御装置(35)にて、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、マスタ携帯機(1)およびサブ携帯機(2)と送受信装置(32)との通信に基づき、マスタ携帯機(1)が車室内にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室外にあると判定したとき、施開錠制御部(36)に開錠制御を実行させると共に、マスタ携帯機(1)を有効にし該マスタ携帯機(1)を電子キーとして機能させるようにするマスタ携帯機有効制御を実行する。
【0020】
このように、マスタ携帯機(1)が車室内にある場合にサブ携帯機(2)を持ったユーザが戻ってきたときには、開錠制御を行うと共にマスタ携帯機有効制御を行っている。このため、ユーザがマスタ携帯機(1)を車室内に置いたままサブ携帯機(2)を持って車室外に出てから再び戻ってきたときに開錠でき、さらにマスタ携帯機(1)による操作なども有効に戻すことによりエンジンを掛けたり等の操作が行えるようになる。
【0021】
このような第2の特徴を備える場合、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室外にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室内にあると判定した場合に、開錠制御を実行させると共に、サブ携帯機(2)を有効にし該サブ携帯機(2)を電子キーとして機能させるサブ携帯機有効制御を実行することができる。
【0022】
また、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室内にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室内にあるか、もしくは車室内および車室外の通信可能範囲内に無いと判定した場合に、施開錠制御部(36)に開錠制御を実行させないようにすると好ましい。
【0023】
これにより、ユーザが車室内に居るにも拘らず、ユーザの意思に反して車室外で開錠操作がなされた場合に、開錠制御が行われないようにできる。
【0024】
なお、ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室外にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室外にあるか、もしくは車室内および車室外の通信可能範囲内に無いと判定した場合、施開錠制御部(36)に開錠制御を実行させるようにすれば良い。
【0025】
本発明の第3の特徴によれば、車載機(3)にドアの開閉操作を検出するドア開閉検出部(34a〜34d)を備えると共に警報を行う警報装置(37)を備え、制御装置(35)にエンジンが掛かっているか否かを示す情報を入力し、ドア開閉検出部(34a〜34d)の検出結果およびエンジンが掛かっているか否かに基づいてエンジンが掛けられた状態で携帯機(1、2)が車両から持ち出されたことを知らせる持ち出し警報制御を実行させ、警報装置(37)にて持ち出し警報制御に基づく持ち出し警報を行わせるようにする。そして、制御装置(35)にて、ドア開閉検出部(34a〜34d)にてドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、エンジンが掛かっているときに、マスタ携帯機(1)およびサブ携帯機(2)と送受信装置(32)との通信に基づき、マスタ携帯機(1)が車室内にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室外にあると判定した場合、持ち出し警報制御による警報を中止する。
【0026】
このようにすれば、ユーザがマスタ携帯機(1)を車室内に置いたままサブ携帯機(2)を持って車室外に出たときにサブ携帯機(2)に基づいて施錠できるようにしつつ、ユーザがマスタ携帯機(1)を持たずに車室外に出たときに持ち出し警報を行わないようにできる。
【0027】
したがって、エンジンを掛けたまま意図的にマスタ携帯機(1)を車室外に持ち出しても持ち出し警報がならないようにできる。
【0028】
このような第3の特徴を備える場合、ドア開閉検出部(34a〜34d)にてドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、エンジンが掛かっているときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室内にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室外にあると判定した場合に、サブ携帯機(2)を電子キーとして機能させることによる施錠制御および開錠制御を許可することができる。
【0029】
また、ドア開閉検出部(34a〜34d)にてドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、エンジンが掛かっているときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室外にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室内にあるか、もしくは車室内および車室外の通信可能範囲内に無いと判定した場合、持ち出し警報制御を実行し、警報装置(37)による持ち出し警報を行うことができる。
【0030】
また、ドア開閉検出部(34a〜34d)にてドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、エンジンが掛かっているときに、制御装置(35)にて、マスタ携帯機(1)が車室外にあると判定し、かつ、サブ携帯機(2)が車室外にあると判定した場合、マスタ携帯機(1)およびサブ携帯機(2)の双方を電子キーとして機能させることによる施錠制御および開錠制御を許可すると共に、持ち出し警報制御による持ち出し警報を中止することができる。
【0031】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかるスマートエントリシステムの概略図である。また、図2は、スマートエントリシステムにおける通信可能範囲(照合エリア)を説明するための模式図である。以下、これらの図を参照してスマートエントリシステムの構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、スマートエントリシステムは、ユーザに所持されるマスタ携帯機1と、車両V(図2、図3参照)に設置された備え付けのサブ携帯機2と、車両V側に取り付けられる車載装置3とを有して構成されている。
【0035】
マスタ携帯機1は、車両V毎に決められた固有の識別コード(IDコード)を有しており、車載装置3から識別コードの照合を行うために識別コードの送信要求が出されたときに、その識別コードが格納されたフレームを車載装置3に送信する機能を果たす。この機能はスマートエントリシステムの形態に応じて異なり、例えばマスタ携帯機1側から識別コードが格納されたフレームを一定周期毎に送信することで車載装置3側にそれを伝え、識別コードの照合が行われるようにすることもできる。マスタ携帯機1には、ドアの施錠もしくは開錠の遠隔操作を行うためのロックスイッチ11およびアンロックスイッチ12も備えられている。これらロックスイッチ11やアンロックスイッチ12が操作されたときには、マスタ携帯機1からその旨を示す信号が出力され、車載装置3に伝えられる。
【0036】
サブ携帯機2は、車両Vに備え付けられたものであり、ユーザがマスタ携帯機1をカバンやジャケットのような取り出し難い場所に入れているときに、臨時的に使用されるものである。サブ携帯機2も、マスタ携帯機1と同様、車両V毎に決められた固有の識別コードを有しており、識別コードの照合を行うために車載装置3から識別コードの送信要求が出されたときに、その識別コードが格納されたフレームを車載装置3に送信する機能を果たす。サブ携帯機2の識別コードはマスタ携帯機1の識別コードと区別できるように異なるコード(サブ用識別コード)とされている。なお、サブ携帯機2にもドアの施錠もしくは開錠の遠隔操作が行えるスイッチを備えても良いが、簡素なもので構わないため、ここではサブ携帯機2を単に識別コードを記憶し、かつ、車載装置3と通信が行えるだけの構成としている。
【0037】
図3は、サブ携帯機2の搭載場所の一例を示した模式図である。この図に示されるように、サブ携帯機2は、例えばインストルメントパネルに備えられたサブ携帯機2を設置するための収納凹部4内に嵌め込まれており、ユーザが臨時的に使用する際に容易に取り出せる位置に配置されている。
【0038】
車載装置3は、アンテナ31a〜31eを含む送受信装置32、ドア施開錠操作スイッチ33a〜33d、ドア開閉検出部34a〜34d、制御装置35、施開錠制御部36および警報装置37を備えて構成されている。
【0039】
送受信装置32は、受信および送信が可能なアンテナ31a〜31dを有し、アンテナ31a〜31eを通じてマスタ携帯機1に対して識別コードの送信要求を示すフレームを送信したり、アンテナ31a〜31eを通じてマスタ携帯機1から返信された識別コードが格納されたフレームを受信したりする入出力部として機能する。送受信装置32は、図2に示すように、車室外を通信可能範囲(照合エリア)とするアンテナ31a〜31dと、車室内を通信可能範囲(照合エリア)とするアンテナ31eとを有している。車室外の照合エリアを通信可能範囲とするアンテナ31a〜31dは各ドアに対応した数備えられている。そして、車載装置3は、ユーザが車両Vに備えられたドア施開錠操作スイッチ33a〜33dに触れたときをトリガーとして、送受信装置32および各アンテナ31a〜31eを通じて識別コードの送信要求を示すフレームを送信し、マスタ携帯機1やサブ携帯機2の存在する位置を確認する。
【0040】
具体的には、マスタ携帯機1やサブ携帯機2から識別コードが格納されたフレームが返信された場合には、送受信機32からそれがアンテナ31a〜31eのいずれで受信されたかという情報と共に制御装置35に送られるようになっている。このため、制御装置35にて、マスタ携帯機1やサブ携帯機2から識別コードが格納されたフレームが返信されるか否か、さらには、返信されたフレームがアンテナ31a〜31eのいずれで受信されたかにより、マスタ携帯機1やサブ携帯機2が車室外であるアンテナ31a〜31dの通信可能範囲内と車室内であるアンテナ31eの通信可能範囲内のいずれにあるか、それともいずれの通信可能範囲にも無いかが判別できる。
【0041】
また、送受信装置32は、マスタ携帯機1のロックスイッチ11もしくはアンロックスイッチ12がユーザに操作されて、マスタ携帯機1からその旨の信号が出力されたときに、それを受信し、制御装置35に伝える役割も果たす。
【0042】
ドア施開錠操作スイッチ33a〜33dは、ユーザを含む乗員が車室外でドアの施錠操作、開錠操作を行うためのスイッチであり、例えば車室外側のドアノブ等に備えられた施錠、開錠スイッチが該当する。ドア施開錠操作スイッチ33a〜33dは、例えばスイッチに触れたことを検出するセンサ、例えば、静電センサ、タッチセンサ、近接センサ、光電センサ等により構成される。このドア施開錠操作スイッチ33a〜33dは、様々な形態のものがあり、1つのスイッチにて施錠、開錠の双方が行えるもの、2つのスイッチにて施錠、開錠を別々に行うもの、1つのスイッチとドアノブのレバー自体をスイッチとして機能させているもの等、車種によって様々であるが、これらすべての形態がここでいうドア施開錠操作スイッチ33a〜33dに含まれる。本実施形態では、車両Vが4ドアである場合を想定して4つのドアそれぞれに備えられたドア施開錠操作スイッチ33a〜33dを図示してあるが、実際にはドア数に応じた数とされる。これらドア施開錠操作スイッチ33a〜33dの検知結果に応じた出力は制御装置35に伝えられる。
【0043】
ドア開閉検出部34a〜34dは、車両Vに備えられるドアの開閉状態を検出するものであり、例えばカーテシスイッチ等が挙げられる。このドア開閉検出部34a〜34dは、各ドアに対応して備えられ、本実施形態では、車両Vが4ドアである場合を想定して4つのドアそれぞれに備えられたドア開閉検出部34a〜34dを図示してあるが、実際にはドア数に応じた数とされる。これらドア開閉検出部34a〜34dの検知結果に応じた出力は制御装置35に伝えられる。
【0044】
制御装置35は、送受信装置32に対してマスタ携帯機1またはサブ携帯機2に識別コードの送信要求を示すフレームを出力させる指示を出したり、送受信装置32で受信されたマスタ携帯機1またはサブ携帯機2からの識別コードが格納されたフレームを入力し、予め記憶しておいた車両V固有の識別コードとフレームに格納された識別コードが一致するか否かの照合を行い、その照合結果やドア施開錠操作スイッチ33a〜33dの操作、ドア開閉検出部34a〜34dの検出結果などに基づいてドアの施錠制御や開錠制御および持ち出し警報制御等の実行指令を出す。また、持ち出し警報制御の実行に際し、エンジンの稼動状況を示す信号(エンジンが掛かっているか否かの信号)も利用している。エンジンの稼動状況を示す信号に関しては、例えば、エンジンECUからエンジン回転数に関する情報等を制御装置35に入力すれば良い。これらドアの施錠制御や開錠制御および持ち出し警報制御処理等の詳細については後で説明する。
【0045】
なお、制御装置35は、マスタ携帯機1のロックスイッチ11もしくはアンロックスイッチ12が操作されたときにも、それに応じてドアの施錠、開錠を行うべく、施開錠制御部36に施錠制御や開錠制御の実行指令を行うが、この処理については従来と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
施開錠制御部36は、制御装置35による施錠制御や開錠制御の実行指令に基づいて施錠制御や開錠制御を行う。例えば、施錠制御として図示しないアクチュエータを駆動してドアの施錠を行ったり、開錠制御として図示しないアクチュエータを駆動してドアの開錠を行う。
【0047】
警報装置37は、ユーザに対してエンジンを掛けたままの状態でマスタ携帯機1を車室外に持ち出したことを警報するためのものであり、例えば音声等により警報を行う。警報装置37としては、例えばホーンやオーディオ類などの音声発生装置などを使用することができる。
【0048】
このような構成により、本実施形態のスマートエントリシステムが構成されている。続いて、スマートエントリシステムによるドアの施錠制御処理や開錠制御処理を含めた全体的な制御処理に基づく作動について説明する。
【0049】
図4、図5、図6に、本実施形態のスマートエントリシステムの制御装置35が実行する各種処理のフローチャートを示す。図4は、施錠制御処理を示すフローチャート、図5は、開錠制御処理を示すフローチャート、図6は、持ち出し警報制御処理のフローチャートであり、これらの図を参照して各種制御処理の詳細について説明する。
【0050】
図4に示す施錠制御処理は、ユーザがドア施開錠操作スイッチ33a〜33dにて施錠操作を行ったことをトリガーとして、ステップ100で肯定判定されることにより開始され、開始後にステップ110以降の処理が開始される。
【0051】
ステップ110では、マスタ携帯機1がアンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在するか否かを判定する。ここでマスタ携帯機1がアンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しなければ、施錠を行う条件を満たさないため、そのまま処理を終了し、存在していればステップ120に進む。
【0052】
ステップ120では、マスタ携帯機1が車室内か車室外のいずれに存在するかを判定する。この判定は、マスタ携帯機1がアンテナ31a〜31eのいずれの通信可能範囲内に存在するか判別することにより行われ、制御装置35が送受信装置32およびアンテナ31a〜31eを通じて識別コードの送信要求を示すフレームを送信したときに、マスタ携帯機1が返信する識別コードが格納されたフレームをアンテナ31a〜31eのいずれで受信したかに基づいて当該判別を行うことができる。ここで車室内と判定された場合には、ステップ130に進む。
【0053】
ステップ130では、サブ携帯機2が車室内か車室外のいずれに存在するか、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しないかを判定する。この判定も、サブ携帯機2がアンテナ31a〜31eのいずれの通信可能範囲内に存在するか判別することにより行われ、制御装置35が送受信装置32およびアンテナ31a〜31eを通じて識別コードの送信要求を示すフレームを送信したときに、サブ携帯機2が返信する識別コードが格納されたフレームをアンテナ31a〜31eのいずれで受信したかに基づいて当該判別を行うことができる。
【0054】
ここで、サブ携帯機2が車室内に存在する、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しない場合には、ユーザがまだ車室内に居る状態もしくはサブ携帯機2を使用せずに家に置いている状態等であると想定されるため、この場合に施錠操作が行われたのであれば、それは他人が車室外で行ったものと考えられる。したがって、この場合に施錠するとユーザの意思に反した操作になるため、この場合には施錠することなくそのまま処理を終了する。
【0055】
一方、サブ携帯機2が車室外に存在する場合、ユーザがマスタ携帯機1を車室内に残したままサブ携帯機2を持って車両Vから外に出て、施錠操作を行ったと想定される。このような場合には、ユーザがマスタ携帯機1をカバンやジャケットから取り出さなくても車両Vから外に出たい場合であるため、ステップ140に進む。そして、ステップ140においてマスタ携帯機1による通信や各種操作を無効にするマスタ携帯機無効制御を行った後、ステップ150に進んで施錠制御を行う。
【0056】
マスタ携帯機無効制御とは、マスタ携帯機1が車室内に存在していたとしても、マスタ携帯機1が電子キーとして機能しないようにすることを意味している。例えば、マスタ携帯機無効制御により、送受信装置32とマスタ携帯機1との通信や、マスタ携帯機1のロックスイッチ11もしくはアンロックスイッチ12の操作に応じた信号が無効にされる。このため、仮にユーザがサブ携帯機2を持って車両Vから外に出ているときに他人がガラスを割って車室内に侵入したとしても、マスタ携帯機1を使用してエンジンを掛けたり等の操作が行えないようにできる。
【0057】
また、施錠制御として、制御装置35から施開錠制御部36に施錠制御の実行指令の信号が出力される。これにより、例えば、図示しないアクチュエータを駆動してドアが施錠される。したがって、マスタ携帯機1を車室内に置いたままでも、ユーザがサブ携帯機2を持って車両Vから外にでれば、ドアを施錠することが可能となる。
【0058】
一方、ステップ120でマスタ携帯機1の場所が車室外であると判定された場合には、ステップ160に進む。ステップ160でも、ステップ130と同様、サブ携帯機2の場所が車室内か車室外のいずれに存在するか、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しないかを判定する。この判定も、ステップ130と同様の手法により行われる。
【0059】
ここで、サブ携帯機2が車室内に存在する場合には、ユーザがサブ携帯機2ではなくマスタ携帯機1を持って車両Vから外に出て、施錠操作を行ったと想定される。このような場合には、サブ携帯機2を使用せずに、通常通り、マスタ携帯機1を使用している場合であるため、ステップ170に進む。そして、ステップ170においてサブ携帯機2による通信や各種操作を無効にするサブ携帯機無効制御を行った後、ステップ180に進んで施錠制御を行う。ステップ170におけるサブ携帯機無効制御は、ステップ140におけるマスタ携帯機無効制御の無効とする対象をサブ携帯機2にしたものであり、無効制御の手法は同様でサブ携帯機2を電子キーとして機能させないようにする。また、ステップ180における施錠制御は、ステップ150における施錠制御と同様である。このような制御により、サブ携帯機2を車両Vに置いたままユーザが車両Vから外に出たとしても、ドアを施錠することが可能となる。
【0060】
また、ステップ160で、サブ携帯機2が車室外に存在する、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しない場合には、ユーザがサブ携帯機2も持って車両Vから外に出たか、サブ携帯機2は元々使用しておらず家などに置いたままにしている状態と考えられる。このため、ステップ170に進み、ユーザがマスタ携帯機1を持って車両Vから外に出たときに施錠制御が行われるようにしている。この施錠制御は、ステップ150、180と同様である。以上のようにして、エンジンが掛けられていないときに施錠操作が行われた場合の制御が完了する。
【0061】
図5に示す開錠制御処理は、ユーザがドア施開錠操作スイッチ33a〜33dにて開錠操作を行ったことをトリガーとして、ステップ200で肯定判定されることにより開始され、開始後にステップ210以降の処理が開始される。
【0062】
ステップ210では、マスタ携帯機1がアンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在するか否かを判定する。ここでマスタ携帯機1がアンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しなければ、開錠を行う条件を満たさないため、そのまま処理を終了し、存在していればステップ220に進む。
【0063】
ステップ220では、マスタ携帯機1が車室内か車室外のいずれに存在するかを判定する。この判定は、マスタ携帯機1が送受信機32およびアンテナ31a〜31eのいずれの通信可能範囲内に存在するか判別することにより行われ、上述した図4のステップ110と同様の手法により行われる。ここで車室内と判定された場合には、ステップ230に進む。
【0064】
ステップ230では、サブ携帯機2が車室内か車室外のいずれに存在するか、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しないかを判定する。この判定も、図4のステップ130と同様の手法により行われる。ここで、サブ携帯機2が車室内に存在する、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しない場合には、ユーザがまだ車室内に居る状態もしくはサブ携帯機2を使用せずに家に置いている状態等であると想定され、この場合に開錠操作が行われたのであれば、それは他人が車室外で行ったものと考えられる。したがって、この場合に開錠するとユーザの意思に反した操作になるため、この場合には開錠することなくそのまま処理を終了する。
【0065】
一方、サブ携帯機2が車室外に存在する場合、ユーザがマスタ携帯機1を車室内に残したままサブ携帯機2を持って車両Vから外に出たのち、その後、車両Vに戻ってきて開錠操作を行ったと想定される。このような場合には、ユーザがマスタ携帯機1をカバンやジャケットから取り出さないまま車両Vから外に出ていたと考えられるため、ステップ240に進む。そして、ステップ240において開錠制御を行ったのち、ステップ250に進んでマスタ携帯機1を電子キーとして再び機能させるマスタ携帯機有効制御を行い、マスタ携帯機1による通信や各種操作を有効に戻す。
【0066】
具体的には、開錠制御として、制御装置35から施開錠制御部36に開錠制御の実行指令の信号が出力される。これにより、例えば、図示しないアクチュエータを駆動してドアが開錠され、マスタ携帯機1を車室内に置いたままユーザが外に出ていたとしても、サブ携帯機2を所持していることにより、再び車室内に戻ることができる。
【0067】
マスタ携帯機有効制御とは、一旦マスタ携帯機無効制御が実行されて電子キーとして機能しなくなったマスタ携帯機1を再び電子キーとしての機能を有効にすることを意味している。例えば、マスタ携帯機1による通信や各種操作が無効にされていても、再びマスタ携帯機1による通信や各種操作が有効に戻されるため、ユーザはマスタ携帯機1が車室内に存在するときに行える各種操作、例えばプッシュスイッチを操作することによりエンジンを掛ける等の操作を行うことが可能となる。したがって、マスタ携帯機1を車室内に置いたままユーザが外にでて、一旦マスタ携帯機無効制御が実行されてマスタ携帯機1による通信や各種操作が無効にされていても、再びサブ携帯機2を持って開錠操作を行うことにより、マスタ携帯機1による通信や各種操作を有効にすることができる。
【0068】
一方、ステップ220でマスタ携帯機1の場所が車室外であると判定された場合には、ステップ260に進む。ステップ260でも、サブ携帯機2の場所が車室内か車室外のいずれに存在するか、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しないかを判定する。この判定も、ステップ230と同様の手法により行われる。
【0069】
ここで、サブ携帯機2が車室内に存在する場合には、ユーザがサブ携帯機2ではなくマスタ携帯機1を持って車両Vから外に出て、施錠操作を行ったと想定される。このような場合には、サブ携帯機2を使用せずに、通常通り、マスタ携帯機1を使用している場合であると考えられるため、ステップ270に進む。そして、ステップ270において開錠制御を行った後、ステップ280に進み、サブ携帯機2を再び電子キーとして機能させるサブ携帯機有効制御を行い、サブ携帯機2による通信を有効に戻す。ステップ270における開錠制御は、ステップ250における開錠制御と同様である。ステップ280におけるサブ携帯機有効制御は、一旦サブ携帯機無効制御が実行されてサブ携帯機2による通信や各種操作が無効にされている場合に、再びサブ携帯機2による通信が有効に戻すものである。このような制御により、サブ携帯機2を車両Vに置いたままユーザが車両Vから外に出たときに、サブ携帯機無効制御によりサブ携帯機2による通信が無効になったとしても、ユーザがマスタ携帯機1を持って開錠操作を行った時に、再びサブ携帯機2の通信が有効にされる。
【0070】
また、ステップ260で、サブ携帯機2が車室外に存在する、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しない場合には、ユーザがサブ携帯機2も持って車両Vから外に出たか、サブ携帯機2は元々使用しておらず家などに置いたままにしている状態と考えられる。このため、ステップ290に進み、ユーザがマスタ携帯機1を持って車両Vから外に出たときに開錠制御が行われるようにしている。この開錠制御は、ステップ240、270と同様である。以上のようにして、エンジンが掛けられていないときに開錠操作が行われた場合の制御が完了する。
【0071】
図6に示す持ち出し警報制御処理は、ユーザがドアの開閉操作を行ったことをトリガーとして、ステップ300で肯定判定され、ステップ310以降の処理を開始する。なお、ドアの開閉操作に関しては、ドア開閉検出部34a〜34dの検出結果に基づいて判定している。
【0072】
ステップ310では、エンジンが掛かっているか否かを判定する。この判定は、エンジンECUからエンジン回転数に関する情報を得るなど、周知の手法により行われる。そして、エンジンが掛かっている場合にのみ、ステップ330以降の処理を実行する。
【0073】
ステップ320では、マスタ携帯機1が車室内か車室外のいずれに存在するかを判定する。この判定も、上述した図4のステップ110と同様の手法により行われる。ここで車室内と判定された場合には、ステップ330に進む。
【0074】
ステップ330では、サブ携帯機2の場所が車室内か車室外のいずれに存在するか、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しないかを判定する。この判定も、図4のステップ130と同様の手法により行われる。ここで、サブ携帯機2が車室内に存在する、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しない場合には、ユーザがまだ車室内に居る状態もしくはサブ携帯機2を使用せずに家に置いている状態等であり、この場合に開錠操作が行われても、まだ持ち出し警報等を行う必要がない。したがって、この場合には特に処理を行うことなくそのまま処理を終了する。
【0075】
一方、サブ携帯機2が車室外に存在する場合、ユーザがマスタ携帯機1を車室内に残したままサブ携帯機2を持って車両Vから外に出てドアを閉じる操作を行ったと想定される。このような場合には、ユーザがマスタ携帯機1をカバンやジャケットから取り出さなくても車両Vから外に出たい場合であるため、ステップ340に進む。そして、ステップ340においてサブ携帯機2による施開錠制御許可を行うと共に、ステップ350において警報制御中止とする。
【0076】
施開錠制御許可とは、サブ携帯機2をマスタ携帯機1と同様に電子キーとして使用できるように許可することを意味しており、これによりユーザがサブ携帯機2を持って車室外に出て施開錠を行うことが可能となる。また、警報制御中止とは、警報装置37による持ち出し警報を行わないようにすることを意味している。すなわち、ユーザがエンジンを掛けたままの状態で、かつ、車室内にマスタ携帯機1を置いたまま車室外に出た場合には、持ち出し警報を行うのであるが、ユーザがサブ携帯機2を持っている場合には、マスタ携帯機1を車室内に置いていることを承知しているため、持ち出し警報を行う必要がない。したがって、この場合には持ち出し警報を行わないように、警報制御中止を行う。これにより、ユーザがマスタ携帯機1をカバンやジャケットから取り出さなくても車両Vから外に出たい場合に、サブ携帯機2を使用して車室外に出れば、持ち出し警報が行われることなく、施開錠操作を行うことが可能となる。
【0077】
一方、ステップ320でマスタ携帯機2の場所が車室外であると判定された場合には、ステップ360に進む。ステップ360でも、サブ携帯機2の場所が車室内か車室外のいずれに存在するか、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しないかを判定する。この判定も、ステップ330と同様の手法により行われる。
【0078】
ここで、サブ携帯機2が車室内に存在する場合もしくはアンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在しない場合、ユーザがサブ携帯機2を使用しないで車室内に残した状態もしくはサブ携帯機2を家に置いている状態等において、マスタ携帯機1を持って車両Vから外に出たと想定される。したがって、エンジンを掛けたままマスタ携帯機1を持ち出した状態となり、持ち出し警報を行う必要があるため、ステップ370に進んで警報制御を行う。これにより、制御装置35から警報装置37に対して持ち出し警報を行う旨の信号が出力され、警報装置37にて持ち出し警報が行われる。
【0079】
また、ステップ360で、サブ携帯機2が車室外に存在する場合には、ユーザがサブ携帯機2も持って車両Vから外に出た状態と考えられる。このため、ステップ380に進み、マスタ携帯機1およびサブ携帯機2による施開錠制御許可を行った後、ステップ390において警報制御中止とする。
【0080】
以上説明したように、本実施形態で説明したスマートエントリシステムによれば、エンジンが掛かっていない状態において施開錠が行われた場合に、マスタ携帯機1およびサブ携帯機2がアンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在するか否か、および、通信可能範囲内にある場合に車室外と車室内のいずれにあるかに基づいて、施錠制御および開錠制御を行うか否かを決定すると共に、マスタ携帯機有効制御および無効制御やサブ携帯機有効制御および無効制御を行うようにしている。したがって、以下の効果を得ることができる。
【0081】
すなわち、マスタ携帯機1が車室内にある場合にサブ携帯機2が車室外にある場合には、マスタ携帯機無効制御を行うと共に施錠制御を行うようにしている。このため、電界強度によらずに、カバンやジャケットなどに入れた携帯機を持ち出さなくてもドアの施錠が行える。したがって、ユーザがマスタ携帯機1を車室内に置いたままサブ携帯機2を持って車室外に出たときに施錠できるようにしつつ、仮にユーザがサブ携帯機2を持って車両Vから外に出ているときに他人がガラスを割って車室内に侵入したとしても、マスタ携帯機1を使用してエンジンを掛けたり等の操作が行えないようにできる。そして、マスタ携帯機1が車室内にある場合にサブ携帯機2を持ったユーザが戻ってきたときには、開錠制御を行うと共にマスタ携帯機有効制御を行っている。このため、ユーザがマスタ携帯機1を車室内に置いたままサブ携帯機2を持って車室外に出てから再び戻ってきたときに開錠でき、さらにマスタ携帯機1による操作なども有効に戻すことによりエンジンを掛けたり等の操作が行えるようになる。
【0082】
また、マスタ携帯機1が車室内にある場合にサブ携帯機2が車室内にあるか、もしくは、アンテナ31a〜31eの通信可能範囲内にない場合には、施錠制御や開錠制御を行わないようにしている。これにより、ユーザが車室内に居るにも拘らず、ユーザの意思に反して車室外で施開錠操作がなされた場合に、施錠制御や開錠制御が行われないようにできる。
【0083】
また、ユーザがマスタ携帯機1を車室外に持って出たときにサブ携帯機2が車室内に残されている場合、ユーザが通常通り、マスタ携帯機1を使用している場合であるため、施錠制御を行うが、サブ携帯機無効制御を行っている。このため、他人がサブ携帯機2を用いてエンジンを掛けたりできないようにできる。
【0084】
さらに、本実施形態で説明したスマートエントリシステムによれば、エンジンが掛かっている状態においてユーザが車室外に出た場合にも、マスタ携帯機1およびサブ携帯機2がアンテナ31a〜31eの通信可能範囲内に存在するか否か、および、通信可能範囲内にある場合に車室外と車室内のいずれにあるかに基づいて、持ち出し警報を行うか否か決定している。したがって、以下の効果を得ることができる。
【0085】
すなわち、マスタ携帯機1が車室内にある場合にサブ携帯機2が車室外にある場合には、サブ携帯機2の施開錠制御許可を行うと共に警報制御中止としている。このため、ユーザがマスタ携帯機1を車室内に置いたままサブ携帯機2を持って車室外に出たときにサブ携帯機2に基づいて施錠できるようにしつつ、ユーザがマスタ携帯機1を持たずに車室外に出たときに持ち出し警報を行わないようにできる。
【0086】
このように、本実施形態のスマートエントリシステムによれば、ユーザがカバンやジャケットなどに入れたマスタ携帯機1を持ち出さなくてもドアの施錠が行え、かつ、エンジンを掛けたままマスタ携帯機1を車室外に持ち出しても持ち出し警報がならないようにできる。
【0087】
(他の実施形態)
上記実施形態では、サブ携帯機2を車両Vに備え付けられたものとして説明したが、必ずしも車両Vに備え付けられるものでなくても良い。例えば、ユーザがサブ携帯機2を常備していても構わない。この場合、例えば、図7に示すサブ携帯機2の一例を示した模式図のように、ユーザが常備し易いような腕時計一体型のサブ携帯機2とすると好ましい。
【0088】
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるスマートエントリシステムの概略図である。
【図2】スマートエントリシステムにおける照合エリアを説明するための模式図である。
【図3】サブ携帯機の搭載場所の一例を示した模式図である。
【図4】施錠制御処理を示すフローチャートである。
【図5】開錠制御処理を示すフローチャートである。
【図6】持ち出し警報制御処理のフローチャートである。
【図7】他の実施形態で示すサブ携帯機の一例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0090】
V…車両、1…マスタ携帯機、2…サブ携帯機、3…車載装置、4…収納凹部、11…ロックスイッチ、12…アンロックスイッチ、31a〜31e…アンテナ、32…送受信装置、33a〜33d…ドア施開錠操作スイッチ、34a〜34d…ドア開閉検出部、35…制御装置、36…施開錠制御部、37…警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の通信可能範囲および車室外の通信可能範囲を有する車載機(3)と電子キーとして機能する携帯機(1、2)との間で通信を行うことにより、前記携帯機(1、2)が車室内の通信可能範囲内と車室外の通信可能範囲内のいずれに存在するか、および、これら車室内と車室外の通信可能範囲のいずれにも存在しないかを判定し、該判定結果に基づいてドアの施錠制御および開錠制御を実行するスマートエントリシステムにおいて、
前記携帯機(1、2)は、前記車載機(3)と通信可能なマスタ携帯機(1)とサブ携帯機(2)とを備えると共に、
前記車載機(3)は、前記マスタ携帯機(1)および前記サブ携帯機(2)と通信を行う送受信装置(32)と、前記車室外において前記ドアの施錠および開錠を操作するためのドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)と、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)の操作状態に基づいて前記ドアの施錠制御および開錠制御の実行指令を出す制御装置(35)と、前記制御装置(35)による前記ドアの施錠制御および開錠制御の実行指令に基づいて前記施錠制御および前記開錠制御を実行する施開錠制御部(36)と、を備え、
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)および前記サブ携帯機(2)と前記送受信装置(32)との通信に基づき、前記マスタ携帯機(1)が前記車室内にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあると判定すると、前記マスタ携帯機(1)を無効にし該マスタ携帯機(1)を電子キーとして機能させないようにするマスタ携帯機無効制御を実行すると共に、前記施開錠制御部(36)に前記施錠制御を実行させることを特徴とするスマートエントリシステム。
【請求項2】
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室外にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室内にあると判定すると、前記サブ携帯機(2)を無効にして該サブ携帯機(2)を電子キーとして機能させないようにするサブ携帯機無効制御を実行すると共に、前記施開錠制御部(36)に前記施錠制御を実行させることを特徴とする請求項1に記載のスマートエントリシステム。
【請求項3】
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室内にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室内にあるか、もしくは前記車室内および前記車室外の通信可能範囲内に無いと判定すると、前記施開錠制御部(36)に前記施錠制御を実行させないことを特徴とする請求項1または2に記載のスマートエントリシステム。
【請求項4】
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて施錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室外にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあるか、もしくは前記車室内および前記車室外の通信可能範囲内に無いと判定すると、前記施開錠制御部(36)に前記施錠制御を実行させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のスマートエントリシステム。
【請求項5】
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)および前記サブ携帯機(2)と前記送受信装置(32)との通信に基づき、前記マスタ携帯機(1)が前記車室内にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあると判定すると、前記施開錠制御部(36)に前記開錠制御を実行させると共に、前記マスタ携帯機(1)を有効にし該マスタ携帯機(1)を電子キーとして機能させるようにするマスタ携帯機有効制御を実行することを特徴とする1ないし4のいずれか1つに記載のスマートエントリシステム。
【請求項6】
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室外にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室内にあると判定すると、前記開錠制御を実行させると共に、前記サブ携帯機(2)を有効にし該サブ携帯機(2)を電子キーとして機能させるサブ携帯機有効制御を実行することを特徴とする請求項5に記載のスマートエントリシステム。
【請求項7】
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室内にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室内にあるか、もしくは前記車室内および前記車室外の通信可能範囲内に無いと判定すると、前記施開錠制御部(36)に前記開錠制御を実行させないことを特徴とする請求項5または6に記載のスマートエントリシステム。
【請求項8】
前記制御装置(35)は、前記ドア施開錠操作スイッチ(33a〜33d)にて開錠操作があったときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室外にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあるか、もしくは前記車室内および前記車室外の通信可能範囲内に無いと判定すると、前記施開錠制御部(36)に前記開錠制御を実行させることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載のスマートエントリシステム。
【請求項9】
前記車載機(3)は、前記ドアの開閉操作を検出するドア開閉検出部(34a〜34d)を備えると共に警報を行う警報装置(37)を備え、前記制御装置(35)にエンジンが掛かっているか否かを示す情報を入力し、前記ドア開閉検出部(34a〜34d)の検出結果および前記エンジンが掛かっているか否かに基づいてエンジンが掛けられた状態で前記携帯機(1、2)が前記車両から持ち出されたことを知らせる持ち出し警報制御を実行させ、前記警報装置(37)にて前記持ち出し警報制御に基づく持ち出し警報を行わせており、
前記制御装置(35)は、前記ドア開閉検出部(34a〜34d)にて前記ドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、前記エンジンが掛かっているときに、前記マスタ携帯機(1)および前記サブ携帯機(2)と前記送受信装置(32)との通信に基づき、前記マスタ携帯機(1)が前記車室内にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあると判定すると、前記持ち出し警報制御による警報を中止することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のスマートエントリシステム。
【請求項10】
車両に備えられた車載機(3)と電子キーとして機能する携帯機(1、2)との間で通信を行うことにより、前記携帯機(1、2)が車室内の通信可能範囲内と車室外の通信可能範囲内のいずれに存在するか、および、これら車室内と車室外の通信可能範囲のいずれにも存在しないかを判定し、該判定結果に基づいてエンジンが掛けられた状態で前記携帯機(1、2)が前記車両から持ち出されたことを知らせる持ち出し警報制御を実行するスマートエントリシステムにおいて、
前記携帯機(1、2)は、前記車載機(3)と通信可能なマスタ携帯機(1)とサブ携帯機(2)とを備えると共に、
前記車載機(3)は、前記マスタ携帯機(1)および前記サブ携帯機(2)と通信を行う送受信装置(32)と、前記ドアの開閉操作を検出するドア開閉検出部(34a〜34d)と、エンジンが掛かっているか否かを示す情報を入力すると共に、前記ドア開閉検出部(34a〜34d)の検出結果および前記エンジンが掛かっているか否かに基づいて前記持ち出し警報制御を実行する制御装置(35)と、前記制御装置(35)による前記持ち出し警報制御に基づいて持ち出し警報を行う警報装置(37)と、を備え、
前記制御装置(35)は、前記ドア開閉検出部(34a〜34d)にて前記ドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、前記エンジンが掛かっているときに、前記マスタ携帯機(1)および前記サブ携帯機(2)と前記送受信装置(32)との通信に基づき、前記マスタ携帯機(1)が前記車室内にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあると判定すると、前記持ち出し警報制御による持ち出し警報を中止することを特徴とするスマートエントリシステム。
【請求項11】
前記制御装置(35)は、前記ドア開閉検出部(34a〜34d)にて前記ドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、前記エンジンが掛かっているときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室内にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあると判定すると、前記サブ携帯機(2)を電子キーとして機能させることによる施錠制御および開錠制御を許可することを特徴とする請求項9または10に記載のスマートエントリシステム。
【請求項12】
前記制御装置(35)は、前記ドア開閉検出部(34a〜34d)にて前記ドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、前記エンジンが掛かっているときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室外にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室内にあるか、もしくは前記車室内および前記車室外の通信可能範囲内に無いと判定すると、前記持ち出し警報制御を実行し、前記警報装置(37)による前記持ち出し警報を行うことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載のスマートエントリシステム。
【請求項13】
前記制御装置(35)は、前記ドア開閉検出部(34a〜34d)にて前記ドアの開閉操作が行われたことが検出され、かつ、前記エンジンが掛かっているときに、前記マスタ携帯機(1)が前記車室外にあると判定し、かつ、前記サブ携帯機(2)が前記車室外にあると判定すると、前記マスタ携帯機(1)および前記サブ携帯機(2)の双方を電子キーとして機能させることによる施錠制御および開錠制御を許可すると共に、前記持ち出し警報制御による持ち出し警報を中止することを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載のスマートエントリシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−97213(P2009−97213A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268879(P2007−268879)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】