説明

スライドドアおよびフューエルリッドの開閉制御機構

【課題】 フューエルリッドとストッパ片とをインナーケーブルにより連動させつつ、ストッパ片が凍結してもフューエルリッドを単独で開閉でき、省スペースで配置できるスライドドアおよびフューエルリッドの開閉制御機構を提供する。
【解決手段】 フューエルリッドの開閉と連動して移動するプッシュプルケーブル5aと、スライドドアを途中で停止させるストッパ片12と、プッシュプルケーブル5aの往復運動によりプルケーブル5bを介してストッパ片を開閉操作する中間部4とからなり、その中間部4が、ハウジング15と、そのハウジング内に摺動自在に収容されたリッドスライダと、前記ハウジング15内に摺動自在に収容され、リッドスライダの押動面によって解除方向に押動される当接面を備えたストッパスライダと、そのストッパスライダを作動方向に付勢するバネ部材と、リッドスライダの位置を検出するリミットスイッチ19とを備えた開閉制御機構1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側面などに用いられるスライドドアおよびフューエルリッドの開閉制御機構に関する。さらに詳しくは、フューエルリッドが開いているとき、スライドドアの開放を規制するスライドドアおよびフューエルリッドの開閉制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−106577
【特許文献2】特許3315932
【特許文献3】特許3447528
【0003】
フューエルリッドおよびスライドドアは車体の側面に配置されている。スライドドアは車体の側面に沿ってスライドするため、給油のためにフューエルリッドを開いたり、あるいは給油口に給油ガンを挿入したりすると、フューエルリッドおよび給油ガンがスライドドアと干渉する。
このような問題を解決するために、特許文献1はフューエルリッドが開くと、その開く動作によりインナーケーブルが引かれてストッパ片がスライドドアの軌道上に突出してスライドドアの開放を規制する開閉制御装置(インターロック装置)を開示している。
また、電動スライドドアの場合は、フューエルリッドが開いている時は、スライドドアがフューエルリッドにぶつからないようにスライドドアをロックするほか、フューエルリッドの開状態をリミットスイッチなどの検出器で検知してスライドドアの駆動を停止させるものである。
このようにフューエルリッドとストッパ片とがインナーケーブルにより連結され連動している場合は、凍結などにより片方の部品が動かなくなるような不具合が発生した場合には、もう片方の部品の連動を切断するような機構を備えていないと、結果として両方の部品が動かなくなる場合がある。特許文献1では前記ロックする機構が凍結等の原因により動作しなくなった場合でも、フューエルリッドを単独で開閉することができるように工夫している。
【0004】
すなわち特許文献1のフューエルリッドおよびスライドドアの制御装置は、図6aおよび図6bに示すように、フューエルリッド107の開閉に応じて動作するスライドドアの制御機構100と、そのスライドドアの制御機構100の第1スイングレバー103の動作によりフューエルリッド107の開閉の状態を検出するセンサー101(図6a参照)と、前記スライドドアの制御機構100の第2スイングレバー105の動作によりスライドドアのスライドをロックするロック機構102(図6b参照)とからなる。第1および第2スイングレバー103、105は同じ支軸106で回動自在に配置されており、図6aの第1スイングレバー103の下面に第2スイングレバー105が配置されている。なお、第1および第2スイングレバー103、105の動作する様子がよく分かるように、図6aに第1スイングレバー103に係る部分を、図6bに第2スイングレバー105に係る部分を、それぞれ分けて示している。
【0005】
図6aに示す第1スイングレバー103の一端には、オープンロッド108が設けられ、他端にはセンサー101に連結されているインナー109が係止されている。その第1スイングレバー103は、支軸106にコイル状の部分が係止されたコイル状のバネ104を備えており、オープンロッド108がフューエルリッド107に向けて突き出すように付勢している(図6aのR1方向)。
図6bに示す第2スイングレバー105は、第1スイングレバー103のオープンロッド108を突き出す方向の回動(図6aのR1方向)により押動され一緒にR2方向(図6b参照)に回動する一方、第1スイングレバー103のL1方向の回動には押動されないように第1スイングレバー103と係合しており、R2方向に回動するように引張りバネ110により付勢されている。第2スイングレバー105の端部には、インナー111が係止されている。そのインナー111は第2スイングレバー105のR2方向の回動により引かれ、ロック機構102を操作する。
【0006】
前記ロック機構102はスライドドアのスライドを邪魔するロック片112を備えている。そのロック片112は前記インナー111が引かれるとスライドドアのスライド軌跡上に突出する。また、フューエルリッド107を閉じてオープンロッド108を引っ込めると、スライドドアのスライドを邪魔しないようにコイルバネ113により引っ込む方向に付勢されている。
【0007】
このフューエルリッドおよびスライドドアの制御機構100は、フューエルリッド107を開くとオープンロッド108が突出する。そして、第1スイングレバー103がR1方向に回動してインナー109を引張ってセンサー101が作動する。第2スイングレバー105は、第1スイングレバー103に追従するように引張りバネ110によりR2方向に回動する。そして、インナー111が引張られロック片112が突出して、スライドドアの開放を規制するストッパ機能を果たす。
【0008】
一方、フューエルリッド107を閉じると、オープンロッド108はフューエルリッド107に押動されて引っ込み、インナー109によってリッドの閉状態がセンサー101に伝達される。また第2スイングレバー105は第1スイングレバー103に押動されL2方向に回動する。このとき、ロック片112はコイルバネ113の付勢によりスライドドアのスライドを邪魔しない位置に引っ込み、スライド可能になる。
すなわち、凍結などの原因で、ロック片112が突出したまま、あるいは突出しないままの状態になっても、第1スイングレバー103のR1方向の回動は、第2スイングレバー105の回動によらないので、フューエルリッド107の開閉が可能である。
【0009】
このようなスライドドアおよびフューエルリッドの開閉機構の他の従来技術として、特許文献2に示すものがある。このものは、特許文献1とほぼ同様の機構で作動し、フューエルリッドが開いたときに、スライドドアのストライカに向けてストッパを突出させるものである。また、特許文献2でも、特許文献1で備えているような第1および第2スイングレバーと同様な、ストッパが凍結したときでもフューエルリッドを独立して開閉できる機構を用いている。
【0010】
また、特許文献3には、フューエルリッドの開閉によりドアロックノブをアクチュエータを用いて電動で制御する機構が示されている。この機構では、フューエルリッドとストッパ片との連動をインナーケーブルによらず、アクチュエータを動作させるシーケンスにより連動させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1および2に示すような構造では、フューエルリッドの近辺に、2本のレバーと、それらレバーの回動のためのスペースが必要である。また、リミットスイッチをフューエルリッドから離して設置するためにインナーケーブルを介してリミットスイッチを連結しているが、そのようにするとリミットスイッチ用のインナーケーブルと、ドアストップ用のインナーケーブルを分けなければならない。他方、特許文献3では、スペースを取らないが、フューエルリッドとストッパ片とが直接接続されていない。そのため、直接動作させる場合に比べて動作の確実性が少ない。
【0012】
そこで、本発明では、フューエルリッドとストッパ片とをインナーケーブルにより直接連動させる構造を採用しながらも、ストッパ片に不具合が発生してもフューエルリッドを開閉することができ、かつ、省スペースで配置することができるスライドドアおよびフューエルリッドの開閉制御機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のスライドドアおよびフューエルリッドの開閉制御機構(請求項1)は、フューエルリッドの開閉運動によって往復移動するインナーケーブルと、スライドドアのスライドを停止させるストッパと、前記インナーケーブルの往復運動によりストッパを開閉操作する機構とからなり、そのストッパを開閉操作する機構が、ハウジングと、そのハウジング内部に、フューエルリッドの開閉に対応する開方向と閉方向とに摺動自在に収容され、押動面を備えたリッドスライダと、前記ハウジング内部に、ストッパを作動させる作動方向と解除させる解除方向とに摺動自在に収容され、リッドスライダが閉方向に摺動すると前記押動面によって解除方向に押動される当接面を備えたストッパスライダと、そのストッパスライダを作動方向に付勢する弾性部材とを備えたことを特徴としている。
【0014】
このような開閉制御機構は、前記インナーケーブルがプッシュプルケーブルであるものが好ましい(請求項2)。また、前記フューエルリッドを開けるために突出する方向に付勢された棒状のプランジャを備え、前記インナーケーブルの一端をそのプランジャの端部に接続し、他端をリッドスライダに接続したものが好ましい(請求項3)。
また、前記ストッパが、ストッパを解除する方向に付勢するリターンスプリングを備えており、前記ストッパを開閉操作する機構が、一端を前記ストッパに接続し、他端をストッパスライダに接続した第2インナーケーブルを有するものが好ましい(請求項4)。
【0015】
さらに、前記ストッパを開閉操作する機構が、リッドスライダの位置を検出する検出器を備えたものが好ましい(請求項5)。
また、前記リッドスライダの摺動方向とストッパスライダの摺動方向とが同じであるものが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0016】
本発明の開閉制御機構(請求項1)は、フューエルリッドの開閉をインナーケーブルの軸方向の往復運動として取り込み、その往復運動を用いてストッパを操作する機構のリッドスライダを摺動させている。そして、リッドスライダの閉方向の摺動によりストッパスライダが解除方向に摺動するので、フューエルリッドを閉じるとストッパを解除することができる。一方、リッドスライダの開方向の摺動はストッパスライダの作動方向の摺動に影響を及ぼさない。そのため、それぞれが別個に作動することができるので、ストッパが凍結して作動しなくなっても、フューエルリッドを開閉することができる。
また、2種類のスライダの摺動による機構であるので、作動のために要するスペースが小さい。
【0017】
このような開閉制御機構において、前記インナーケーブルがプッシュプルケーブルの場合は、フューエルリッドとリッドスライダが常に一体に操作されるので、スライドドアの規制を確実に行うことができる(請求項2)。
【0018】
さらに前記フューエルリッドを開けるために突出する方向に付勢された棒状のプランジャを備え、前記インナーケーブルの一端をそのプランジャの端部に接続し、他端をリッドスライダに接続した場合(請求項3)は、プランジャのフューエルリッドの開閉に伴う軸方向の運動をそのままスライダの摺動方向に用いて、ストッパを作動させている。そのため、フューエルリッド付近の小さなスペースでもって配置することができる。
また、前記ストッパが、ストッパを解除する方向に付勢するリターンスプリングを備えており、一端を前記ストッパに接続し、他端をストッパスライダに接続した第2インナーケーブルを有する場合は(請求項4)、ストッパを操作する機構から引き操作をすれば、ストッパを作動させることができるので、簡易な構造である。
【0019】
また、前記ストッパを開閉操作する機構が、リッドスライダの位置を検出する検出器を備えている場合(請求項5)は、リミットスイッチを作動させるためのインナーケーブルを別途必要としない。そして、リミットスイッチをハウジングと一体に設けることができるので、省スペースである。
さらに、前記リッドスライダの摺動方向とストッパスライダの摺動方向とが同じである場合(請求項6)は、ストッパを操作する機構をコンパクトにまとめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに図面を参照しながら本発明の開閉制御機構の実施形態を説明する。図1は本発明の開閉制御機構の一実施形態を示す平面図、図2は図1の開閉制御機構が取り付けられる自動車のドアを示す概略斜面図、図3は、図1の開閉制御機構における中間部の分解斜面図、図4はその中間部の側面断面図、図5aは図1の開閉制御機構におけるスライドドアおよびフューエルリッドが開いているときの模式図、図5bはスライドドアおよびフューエルリッドが閉じているときの模式図、図5cはストッパが引っ込んだ状態でフューエルリッドを開く様子を示す模式図である。
【0021】
まず、図2を参照して、本発明の開閉制御機構が用いられるスライドドアDについて説明する。図2に示すスライドドアDは自動車などの車体Sの側面に取り付けられる。そのスライドドアDは車体Sの中央のレール、上側のレール(図示していない)および下側のレールTにより案内されている。車体Sの後部には燃料供給のためのフューエルリッドFが設けられている。フューエルリッドFが閉じた状態でスライドドアDが開くときには、スライドドアDが車体Sの後方にスライドしても(図中の二点鎖線)、フューエルリッドFの上部にスライドドアDが重なるように配置されるので、干渉しない。
【0022】
前記フューエルリッドFは、後述する棒状のプランジャにより車体Sの内部から外部に向けて突き放すようにして開く。一方、フューエルリッドFを閉じているときは、そのプランジャの突き放す力によって開かないように、ラッチ機構により係止されている。ガソリンなどの燃料を給油するためにフューエルリッドFを開く場合は、運転席の付近に設けられたオープナーなどを操作して、ラッチ機構を解除し、前記プランジャの付勢力によりフューエルリッドFを開く。閉じるときはラッチが掛かるまで手動で閉じる。
【0023】
ここから図1を用いてさらに詳しく説明する。図1に示す開閉制御機構1は、フューエルリッドF付近の車体S内部に配置されるリッドオープナ2と、スライドドアDのスライドを途中で停止させるために前記下側のレールT付近に設けられるストッパ部3と、それらリッドオープナ2とストッパ部3とを連結するインナーケーブル5a、5bとを備えている。インナーケーブルは第1インナーケーブル5aと第2インナーケーブル5bとに分離され、それらの間に中間部4が介在されている。中間部4と第2インナーケーブル5bは、ストッパを操作する機構である。
また、第1および第2インナーケーブル5a、5bはアウターケーシング6a、6bの内部に摺動自在に収納され配索される。第1および第2インナーケーブル5a、5bは、金属素線を複数本撚り合わせた従来公知のものである。この実施形態では第1インナーケーブル5aおよびアウターケーシング6aとしてプッシュプルコントロールケーブルを採用しており、第2インナーケーブル5bおよびアウターケーシング6bとして、プルコントロールケーブルを採用している。
【0024】
前記リッドオープナ2は、一方が開口した有底筒状のケース7と、そのケース7の筒状内部から底面を突き抜け外向きに突出し、軸方向移動自在の棒状のプランジャ8と、そのプランジャ8を外側に突出するように付勢するバネ部材9(弾性部材)と、前記ケース7の開口端に嵌合して開口部を閉じるケースキャップ10とからなる。
【0025】
前記ケース7は、底面7aにプランジャ8を通す孔7bが形成されている。前記プランジャ8は、棒状の本体部8aと、その本体部8aの中間付近から外側に広がる円盤状の鍔部8bと、ケース7の内部側に配置される第1インナーケーブル5aの端部を係止するためのインナーケーブル係止部8cとからなる。前記鍔部8bはケース7の筒状内部に摺動自在に配置されている。その鍔部8bはケース7の底面と接するところまで移動することができ、その位置がプランジャ8がケース7の孔7bから突出する限界である。その鍔部8bの反対側の面にはバネ部材9の一端が係止され、他端はケースキャップ10まで延びて、そこで係止されている。そして、バネ部材9はプランジャ8をケース7の孔7bから外向きに突出させるように付勢している。この実施形態ではバネ部材9として圧縮コイルスプリングを採用している。
また、ケースキャップ10の中央付近からは、第1インナーケーブル5aが前記中間部4に向けて延びている。その第1インナーケーブル5aはアウターケーシング6aにより収納されている。そして、アウターケーシング6aの一端はケースキャップ10に固定され、他端は中間部4の後述するハウジングに固定される。
なお、第1インナーケーブル5aとしては、押し引き操作をすることができるプッシュプルケーブルを用いるのが好ましいが、往復操作するための2本のプルケーブルを用いることもできる。また、中間部4にリターンスプリングを設ければ、1本のプルケーブルを採用することもできる。
【0026】
前記ストッパ部3は、下側のレールTの裏面側近辺に取り付けるフレーム11と、そのフレーム11に回動自在に設けられ、前記レールTに形成されたスリット状の開口Ta(図2参照)から起き上がったり、引っ込んだりしてレールT上に突出してスライドドアDの後端部と干渉するストッパ片12と、そのストッパ片12の回動の軸12a付近に備えられ、ストッパ片12を前記スリット状の開口Ta内部に引き倒すように付勢する捻りコイルバネ(リターンスプリング)13と、前記ストッパ片12に形成された突起12bと嵌合する細長い長孔14aを一端に形成したアイエンド14とからなる。その細長い長孔14a内で前記突起12bは移動自在に嵌合されている。
【0027】
前記アイエンド14の他端には、第2インナーケーブル(以下、プルケーブルという)5bの一端が接続されている。そのプルケーブル5bはアウターケーシング6bに収納され、中間部4まで延びている。
前記アウターケーシング6bの一端は、ネジキャップ14bに接続されている。そのネジキャップ14bは前記フレーム11に位置調節自在に連結されている。また、アウターケーシング6bの他端は、後述する中間部4のハウジングキャップ18に固定されている。
【0028】
次に図3の分解図を用いて中間部4を説明する。その中間部4は、一方が開口した有底筒状のハウジング(ホルダー)15と、そのハウジング15の内部で、開方向(図中の符号R)と閉方向(図中の符号L)とに摺動自在に収納される筒状のリッドスライダ(ジョイントピース)16と、そのリッドスライダ16の内部に作動方向(図中の符号R)と解除方向(図中の符号L)とに摺動自在に収納される円盤状のストッパスライダ(ニップルエンド)17と、前記ハウジング15の開口端と嵌合して開口部を閉じるハウジングキャップ18と、前記ハウジング15に取り付けられ、リッドスライダ16の摺動方向を検出するリミットスイッチ19(検出器)と、ストッパスライダ17をR方向に付勢するバネ部材20とからなる。バネ部材20の付勢力はストッパ部の捻りコイルバネの付勢力より強い。この実施形態ではバネ部材20は圧縮コイルスプリングである。
【0029】
図4に中間部4の断面図を示す。ここから図4も併せて説明する。前記ハウジング15は、有底筒状であり、底板15aと、その底板15aの外縁から連続する筒状の部分とからなる。その底板15aの中央付近にはプルケーブル5bを通す孔15bが形成されている。その底板15aには前記ストッパ部3のネジキャップ14bに一端が固定されたアウターケーシング6bの他端が固定されている。前記筒状の部分は底板15aの外縁から延びる小径筒状部15cと、段部15eを介して開口端まで続く大径筒状部15fとからなる。前記段部15e付近には、外側に突出した収納部15dが形成され、その収納部15dの内部にリミットスイッチ19が収納される。そして、大径筒状部15fの開口端部に、ハウジングキャップ18が嵌合する。ハウジング15の外側は、スポンジなどからなる保護シート21が巻かれている。
【0030】
前記リッドスライダ16は、有底筒状であり、その底面はストッパスライダ17の後述する当接面を押動する押動面16aである。その押動面16aの後方には、一端をリッドオープナ2に固定された第1インナーケーブル5a(以下、プッシュプルケーブルという)の他端を係止するためのインナーケーブル係止部16bが形成されている。その押動面16aは、ハウジング15の大径筒状部15fと摺動自在である。押動面16aのリミットスイッチ19側にはリミットスイッチ19を作動させるためのリミットスイッチ押さえ16cが形成されている。そのリミットスイッチ押さえ16cはリミットスイッチ19に近づく方向で内側に傾斜している。この実施形態では、図3に示すように、リッドスライダ16の筒状部16dは4枚の摺動片に分割されており、ハウジング15の小径筒状部15cの内面に摺動自在に嵌合している。
【0031】
前記ハウジング15の大径筒状部15fとリッドスライダ16の筒状部16dとの間には隙間Wが形成されており、その隙間Wにリミットスイッチ19の接点(アクチュエータ)19aが突出している。そして、リッドスライダ16がL方向に摺動すると、リミットスイッチ押さえ16cが隙間Wを埋めるように移動し(図中の二点鎖線)、接点19aを傾斜した面でもって押さえる。リミットスイッチ19から延び出ている電線は、コネクタ(図1の符号19b)によって自動車の制御部と連結される。リミットスイッチ19により検出された検出信号に基づいて、制御部は、スライドドアDの駆動モータなどを停止あるいは車内の警告ランプの点灯などの制御を行う。
【0032】
前記ストッパスライダ17は、リッドスライダ16の筒状部16d内部で摺動自在な円盤部17aと、その円盤部17aの中心部に形成され、前記一端がアイエンド14に係止されたプルケーブル5bの他端を埋め込むように係止する山状部17bとからなる。前記円盤部17aの右側の面はリッドスライダ16の押動面16aにより押動される当接面17aである。
そのストッパスライダ17の山状部17bの外側には、コイル状のバネ部材20の一端が係止されており、バネ部材20はハウジングキャップ18まで延びており、そこで他端が係止される。この実施形態ではバネ部材20は圧縮コイルスプリングである。
【0033】
次に、図5a、図5bおよび図5cを用いてフューエルリッドFおよびスライドドアDの開閉制御機構の作動する様子を説明する。
まず、図5aにフューエルリッドFが開いており、ストッパ片12がスライドドアDのスライド軌道上に突出している状態を示す。この状態では、プランジャ8がバネ部材9の付勢力によりフューエルリッドFを開け放つように(図中の右方)突出している。そのプランジャ8の端部に一端が接続されたプッシュプルケーブル5aは、プランジャ8の突出により他端を引っ張る。プッシュプルケーブル5aが引張られると、他端が接続されたリッドスライダ16も引張られR方向に移動する。リッドスライダ16の内部に摺動自在に配置されているストッパスライダ17はバネ部材20の付勢力によりリッドスライダ16に追従するようにR方向に摺動する。ストッパスライダ17がR方向に摺動するとストッパスライダ17に一端が接続されたプルケーブル5bが引張られ、ストッパ片12を回動軸12aまわりに回動させ、スライドドアDのスライド軌道上にストッパ片12を突出させる。
【0034】
図5bには、図5aの状態からフューエルリッドFを閉じる状態を示す。フューエルリッドFを閉じると、プランジャ8が引っ込む。そのプランジャ8に一端が接続されたプッシュプルケーブル5aも軸方向に押し込まれ、他端が接続されているリッドスライダ16をL方向に摺動させる。リッドスライダ16の押動面16aはストッパスライダ17(当接面)を押動し、ストッパスライダ17をバネ部材20の付勢力に逆らってR方向に摺動させる。ストッパスライダ17に一端が接続されたプルケーブル5bは、L方向に引張られていないので、ストッパ片12は捻りコイルバネの付勢力によりレールT(図1参照)の内部に引き込まれる。
【0035】
図5cには、ストッパ片12が引っ込んだままの状態で凍結し、作動しなくなった場合にフューエルリッドFを開く様子を示す。ストッパ片12は作動しないので、ストッパスライダ17をR方向に摺動させることができない。この場合に、プランジャ8が突出すると、プランジャ8に一端が接続された前記プッシュプルケーブル5aも引っ張られる。そのプッシュプルケーブル5aの他端が接続されたリッドスライダ16も共に引っ張られ、R方向に摺動する。このとき、リッドスライダ16がR方向に摺動しても、押動面16aにより、ストッパスライダ17(当接面)は押動されないので、ストッパスライダ17と関係なくR方向に摺動できる。そのため、ストッパ片12が作動しない場合でも、フューエルリッドFを開閉することができる。
【0036】
このように図1の開閉制御機構1によると、リッドスライダ16の閉方向の摺動によりストッパスライダ17が解除方向に摺動するので、フューエルリッドFを閉じるとストッパ片12の作動を解除することができる。一方、リッドスライダ16の開方向の摺動はストッパスライダ17の作動方向の摺動に影響を及ぼさない。そのためストッパ片12が凍結して作動しなくなっても、フューエルリッドFを開閉することができる。また、2種類のスライダの摺動による機構であるので、作動のためのスペースが小さい。
【0037】
さらに、プランジャ8のフューエルリッドFの開閉に伴う軸方向の運動をそのままスライダの摺動方向に用いて、ストッパ片12を作動させている。そのため、フューエルリッドF付近に小さなスペースでもって配置することができる。
さらに、リミットスイッチ19はハウジング15内に収容され、リッドスライダ16の位置を検出するので、省スペースである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は本発明の開閉制御機構の実施形態を示す平面図である。
【図2】図2は図1の開閉制御機構が取り付けられる自動車のドアを示す概略斜面図である。
【図3】図3は図1の開閉制御機構における中間部の分解斜視図である。
【図4】図4はその中間部の側面断面図である。
【図5】図5aは図1の開閉制御機構におけるスライドドアおよびフューエルリッドが開いているときの模式図、図5bはスライドドアおよびフューエルリッドが閉じているときの模式図、図5cはストッパが引っ込んだ状態でフューエルリッドを開く様子を示す模式図である。
【図6】図6aおよび図6bは従来技術を示す図である。
【0039】
D スライドドア
S 車体
T 下側のレール
F フューエルリッド
1 開閉制御装置
2 リッドオープナ
3 ストッパ部
4 中間部
5a 第1インナーケーブル(プッシュプルケーブル)
5b 第2インナーケーブル(プルケーブル)
6a アウターケーシング
6b アウターケーシング
7 ケース
7a 底面
7b 孔
8 プランジャ
8a 本体部
8b 鍔部
8c ケーブル係止部
9 バネ部材
10 ケースキャップ
11 フレーム
12 ストッパ片
12a 回動軸
12b 突起
13 捻りコイルバネ
14 アイエンド
14a 長孔
14b ネジキャップ
15 ハウジング
15a 底板
15b 孔
15c 小径筒状部
15d 収納部
15e 段部
15f 大径筒状部
16 リッドスライダ
16a 押動面
16b インナーケーブル係止部
16c リミットスイッチ押さえ
16d 筒状部
17 ストッパスライダ
17a 円盤部
17b 山状部
18 ハウジングキャップ
19 リミットスイッチ
19a 接点
19b コネクタ
20 バネ部材
21 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フューエルリッドの開閉運動によって往復移動するインナーケーブルと、
スライドドアのスライドを停止させるストッパと、
前記インナーケーブルの往復運動によりストッパを開閉操作する機構とからなり、
そのストッパを開閉操作する機構が、
ハウジングと、
そのハウジング内部に、フューエルリッドの開閉に対応する開方向と閉方向とに摺動自在に収容され、押動面を備えたリッドスライダと、
前記ハウジング内部に、ストッパを作動させる作動方向と解除させる解除方向とに摺動自在に収容され、リッドスライダが閉方向に摺動すると前記押動面によって解除方向に押動される当接面を備えたストッパスライダと、
そのストッパスライダを作動方向に付勢する弾性部材とを備えたスライドドアおよびフューエルリッドの開閉制御機構。
【請求項2】
前記インナーケーブルがプッシュプルケーブルである請求項1記載の開閉制御機構。
【請求項3】
前記フューエルリッドを開けるために突出する方向に付勢された棒状のプランジャを備え、
前記インナーケーブルの一端をそのプランジャの端部に接続し、他端をリッドスライダに接続した請求項1記載の開閉制御機構。
【請求項4】
前記ストッパが、ストッパを解除する方向に付勢するリターンスプリングを備えており、
前記ストッパを開閉操作する機構が、一端を前記ストッパに接続し、他端をストッパスライダに接続した第2インナーケーブルを有する請求項1、2または3記載の開閉制御機構。
【請求項5】
前記ストッパを開閉操作する機構が、リッドスライダの位置を検出する検出器を備えた請求項1、2、3または4記載の開閉制御機構。
【請求項6】
前記リッドスライダの摺動方向とストッパスライダの摺動方向とが同じである請求項1、2、3、4または5記載の開閉制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−348671(P2006−348671A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178649(P2005−178649)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコ−ポレ−ション (362)
【Fターム(参考)】