説明

スラグの処理方法

本発明は、製錬溶鉱炉などの懸濁溶鉱炉で、銅を回収するために、精鉱から直接的に加工される粗銅の産出中に形成されるスラグを処理する方法に関するものであり、スラグの少なくとも一部を、少なくとも一段階で浸出する。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載されている、粗銅の産出中に形成されるスラグの処理方法に関するものである。
【0002】
製錬溶鉱炉などの懸濁反応炉で、一段階で直接的に硫化精鉱から粗銅を産出することは、特定の境界条件において経済的に賢明である。粗銅の直接産出において最も注意すべき問題の1つは、銅がスラグ状になり、大量のスラグが形成されることである。十分な銅の回収を確保するため、スラグに存在する銅を、スラグ除去工程に関連させて回収しなければならない。多量のスラグの他に、別の問題は、硫化精鉱の燃焼中に形成される大量の熱である。この場合、プロセス空気における濃縮酸素を減らす。このことは、プロセス空気に含まれた窒素の加熱で熱収支のバランスを保つことを意味している。しかしながら、これは大量のプロセスガスを産出するため、また一方で、大きな溶鉱炉の場所と、とりわけ大きなガス処理設備の原因となる。
【0003】
精鉱の銅含有量が十分に高い場合、一般的に少なくとも37% Cuである場合は、ブリスターの産出は直接的に一段階で経済的に実行できる。精鉱の銅の含有量が高いと、精鉱の熱価は一般的に低くなる。銅の含有量が高いと、硫化鉄鉱物の占有率は低い。上述した精鉱の処理では、十分な高濃縮酸素を使用でき、その結果、ガスの量を抑えておくことが可能である。また銅の含有量がより低い精鉱は、その鉄含有量が低ければ粗銅の産出に適し、その際形成されるスラグの量は著しく大量ではない。
【0004】
フィンランド特許出願第982818号によると、精鉱に加えて、冷やして粉末にした銅マットも用いた溶鉱炉で粗銅を産出する方法が公知である。そして、産出される粗銅の量に応じて、従来の方法による場合よりも少ない量のスラグが形成される。またスラグの銅の損失も減少する。形成されたスラグをさらに、一段階か、より好ましくは二段階のスラグ除去処理で処理する。二段階のスラグ除去方法は、2つの電気炉を含むか、または1つの電気炉およびスラグ濃縮設備を含んでいる。電気炉の中では、コークスによりスラグが還元され、その結果、スラグ相に結合した貴金属が還元されてスラグ層の下で別の銅相として分離する。スラグ濃縮設備でスラグを処理する場合は、スラグ濃縮物を溶鉱炉へ戻すことが可能である。粗銅は、陽極炉で純化される。
【0005】
スラグを電気炉において一段階で処理してスラグ中の銅の量が経済的に重要でないようにする場合は、ブリスターにおける鉄の含有量はまだ高く、しばしば転換炉でブリスター分離処理が必要となる。1つの方法は、電気炉前処理であり、形成された粗銅が大量ブリスターと共に陽極炉で処理される。しかし、未だたくさんの銅がスラグに残り、経済的な理由のために銅を濃縮技術手段により回収しなければならない。
【0006】
本発明は、精鉱から直接的に粗銅を産出するときに形成されるスラグの新しい処理方法を提示することを目的とする。詳細には、本発明は、総合的に節約を尊重し、より効果的かつより有利な方法で、粗銅の産出中にスラグ状となった銅の回収を実現することを目的とする。
【0007】
本発明は、請求項1の特徴段に記載の事項を特徴とする。本発明の他の実施例はその他の請求項の記載事項を特徴とする。
【0008】
本発明による方法には多くの利点がある。本発明の方法によれば、精鉱から直接的に産出される粗銅の産出中に形成されるスラグに含まれている銅を効果的に回収する。本発明の方法によれば、銅の回収が簡単になり、さらに、不純物の管理をより改善することが可能になる。湿式製錬スラグに含まれた銅の回収によって、電気炉還元と比べて、エネルギーの消費量が少なくなる。さらに、乾式精錬回収と比べて、ガスと塵の放出が少なくなる。
【0009】
次に、添付図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
図1は、銅を回収するために、製錬溶鉱炉などの懸濁溶鉱炉で産出される粗銅の産出中に形成されるスラグ、すなわちブリスタースラグの本発明による処理手続を示す。この場合、スラグの少なくとも一部は、少なくとも一段階で浸出される。銅精鉱、溶剤および酸素濃縮空気が、例えば製錬溶鉱炉などの懸濁溶鉱炉の溶解工程1に注入される。乾燥した精鉱粒子が、高温の懸濁液の中で酸素濃縮空気と迅速に反応する。この反応中に放出されたエネルギーはこの処理で利用される。一部の硫黄が酸化されて二酸化硫黄となり、鉄が酸化されて酸化鉄となり、こうして溶剤でスラグが形成される。この反応生成物が懸濁溶鉱炉の底に溜り、2つの別々の溶解相、すなわち、粗銅とブリスタースラグを形成する。この処理で形成されたガスは、公知の手法で処理するためにさらに送られる。懸濁溶鉱炉で形成された粗銅は陽極炉処理工程2へと送られ、そこで公知の手法で精製され、陽極銅へ注がれる。
【0011】
溶解工程1で形成されたブリスタースラグは、備えられた循環路、例えば樋を通って懸濁溶鉱炉から引き出され、ブリスタースラグに含まれている銅を回収するための処理へとさらに送られる。最初に、ブリスタースラグは、造粒研磨工程3へと運ばれる。粒状にされたブリスタースラグは、表面の反応性を高めるために、例えば湿式研磨で、規定の粒度になるまですりつぶされる。浸出工程4では、ブリスタースラグに含まれる金属を浸出する。以下に示す実施例では、浸出工程4を硫酸を用いた酸化状況で行ない、その結果、硫化銅を形成する。硫酸を加える量は、1キロのスラグに対して500〜900グラムが好ましい。浸出は、アンモニア性溶液、塩化物溶液、またはバクテリア浸出でも行なうことができる。浸出段階の後、硫酸化金属を含んでいる溶液から、銅が銅沈殿工程5で分離される。沈澱段階では、硫酸化金属を含んでいる溶液から、例えば水酸化物沈殿または硫化物沈殿によって銅が沈殿する。水酸化物沈殿では、銅は石灰石によって沈殿し、形成された銅沈殿物は溶解工程1へ戻される。硫化物沈殿では、銅は硫化水素によって沈殿し、形成された銅沈殿物は溶解工程1へ戻される。銅はまた、液―液抽出、および電気分解で陰極銅により回収することができる。
【実施例】
【0012】
本発明を実証するために、耐酸性の2リットルの蓋付きの反応炉で、硫酸を用いて溶液実験を行なった。反応炉には、4つのバッフル板と、1つの還流冷却器と、1つのかくはん器とを整備した。また反応炉には、連続pH計測器、温度調整器、およびかくはん器の回転翼の下でかくはんされる酸素も接続した。熱板を加熱に使用した。
【0013】
実験のまず初めに、スラグ(200g = グラム)を水の中に浸出した。このときの水量は、1リットルより少し少なかった。実験全体で、水および加えられる硫酸の合計値は、ちょうど1リットルであった。溶液の温度は90oCであった。実験中に加えられた硫酸(H2SO4)の量は、806g/1000gスラグであった。
【0014】
実験全体で浸出時間は6時間であり、この実験中、機械によるかくはん(約770 r/min = 回転/分)、および酸素(0.50 l/min = リットル/分)を加えた。
【0015】
強硫酸(95重量%の含有量)を徐々に加え、それと同時に温度を90oCに調整した。反応時間の測定は、すべての酸が供給された時に開始した。懸濁液サンプルを、実験開始から0、2、4、および6時間が経過した時にそれぞれ採取した。サンプルのろ過液と沈殿物の中に、分解された銅(Cu)と鉄(Fe)が存在した。
【0016】
最初に浸出させたスラグは、32.5% Cuと23.9% Feを含んでいた。これら分析結果とそれを基にして得た浸出の収率は、下記の表で表される。

【0017】
最終的な沈殿物の重さは77.4g、また銅含有量は3.1%であり、このことは溶液中の銅の合計収率が96.3%であったことを意味している。
【0018】
この実験を、類似したスラグ条件、すなわち、徐冷しないで、溶解状態から水によって直接粒状にしたスラグに対して繰り返し、得られた産出物は、対応する組成を有する微細化した粒状物であった。類似した条件で得られた銅の合計収率は95.8%であり、解析の精度を考慮すれば、この値は徐冷スラグと同位である。
【0019】
溶液から、酸度の調整によって銅が選択的に沈殿して、第1段階で鉄が沈殿し、第2段階で銅が沈殿するようにした。こうして所望しない鉄を銅から分離することができた。
【0020】
本発明の様々な実施例は、上述の事例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変化させてよいことは当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明による処理過程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬溶鉱炉などの懸濁溶鉱炉で、銅を回収するために、精鉱から直接的に加工される粗銅の産出中に形成されるスラグの処理方法において、該スラグの少なくとも一部を、少なくとも一段階で浸出することを特徴とするスラグの処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、浸出の前に前記スラグを粒状にし、磨り潰すことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、硫酸を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、アンモニア性溶液を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、塩化物溶液を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、バクテリア溶液を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、浸出後、前記銅を水酸化物沈殿によって回収することを特徴とするスラグを処理する方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、浸出後、前記銅を硫化物沈殿によって回収することを特徴とするスラグを処理する方法。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、浸出後、前記銅を、液―液抽出、および電気分解で陰極銅により回収することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の方法において、前記沈殿で形成される銅スラグを、前記懸濁溶鉱炉へ戻すことを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬溶鉱炉などの懸濁溶鉱炉で、精鉱から直接的に加工される粗銅の産出中に形成されるスラグからの銅の回収方法において、該スラグの少なくとも一部を、該スラグにおける銅を溶かすために少なくとも一段階で浸出し、該溶けた銅を沈殿し、該沈殿した銅を溶解工程へ戻すことを特徴とする銅の回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、浸出の前に前記スラグを粒状にし、磨り潰すことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、硫酸を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、アンモニア性溶液を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、塩化物溶液を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の方法において、前記浸出を、バクテリア溶液を用いて行なうことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、浸出後、前記銅を水酸化物沈殿によって回収することを特徴とするスラグを処理する方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、浸出後、前記銅を硫化物沈殿によって回収することを特徴とするスラグを処理する方法。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、浸出後、前記銅を、液―液抽出、および電気分解で陰極銅により回収することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の方法において、前記沈殿で形成される銅スラグを、前記懸濁溶鉱炉へ戻すことを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−509103(P2006−509103A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556365(P2004−556365)
【出願日】平成15年11月24日(2003.11.24)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000898
【国際公開番号】WO2004/050925
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(591064047)オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン (21)
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
【Fターム(参考)】