説明

スラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法及びその装置

本発明のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法及びその装置によれば、転炉または電気炉からスラグポットまたはスラグ改質処理ポットに排出された溶融スラグに還元剤を投入することで、溶融スラグに含まれた有価金属を回収することができ、有価金属が回収された溶融スラグを多孔性構造の軽量物に形成することができる。
これによれば、転炉または電気炉から排出されたスラグ中の有価金属(Fe、Mn)を回収し、スラグのフォーミングと制御冷却によって低比重のスラグを確保した後、多機能骨材に製造することができる利点がある。このような多機能骨材は、組成をセメント組成に変更してセメントを製造するのに適する。また、セメント製造の際、使われる燃料の使用量を節減させるだけでなく電力消費量も節減させ、二酸化炭素の排出量を約40%低め、化学抵抗性に優れ、塩化物イオンに対する浸透抵抗性に優れ、耐久性が高いコンクリート構造物のセメント原料として活用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転炉や電気炉などの製鋼工程で発生するスラグから有価金属を回収し、溶融スラグの改質によって多機能性骨材を製造することができるスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スラグは鉄鋼製錬工程で不可避に発生する生成物である。スラグは製銑過程では鉄鉱石やコークスの脈石成分によって、かつ製鋼過程では溶銑または溶鋼の酸化と脱酸の際に生成される酸化物または精錬のために添加される副原料などによって不可避に生成される。
スラグはSiOとCaOを基本系とし、精錬反応の種類によってAl、FeO、MgO、P及びCaSなどを含む。
製銑スラグはCaO−SiO−Alを基本系とし、溶銑または溶鋼の酸化反応による製鋼スラグはCaO−SiO−FeOを基本系としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製鋼溶融スラグ中の有価金属(Fe、Mn)を回収し、スラグの改質によってセメント、混和材料及び特殊用途材料として活用可能にした、スラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述したような目的を達成するための本発明の特徴によれば、スラグの有価金属回収方法は、還元期操業の前、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグポットまたはスラグ改質処理ポット内に排出する段階;及び前記スラグポットまたはスラグ改質処理ポット内に排出された溶融スラグに還元剤を供給することによってスラグの物理化学的組成を制御して有価金属を回収する段階を含む。
【0005】
また、前記還元剤は、炭素、アルミニウム、シリコン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びCOガスの中で選ばれた1種以上であってもよい。
【0006】
また、前記還元剤の投入量は、前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持する範囲で投入されることができる。
【0007】
また、前記アルミニウムは前記スラグ1ton当たり10〜50kgが投入されることができる。
【0008】
本発明の他の側面によれば、本発明のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置は、転炉または電気炉から排出された溶融スラグが貯蔵されるスラグ改質処理ポット;前記溶融スラグの有価金属を回収するための還元剤を前記スラグ改質処理ポットの内部に流入させる還元剤流入部;及び前記有価金属が回収された溶融スラグを多孔性構造の軽量物に形成するためのバブル発生及び制御冷却を行う冷却手段を含む。
【0009】
また、前記還元剤流入部は、前記還元剤を貯蔵するホッパー;前記還元剤を前記スラグ改質処理ポットに噴射するように前記ホッパーから前記スラグ改質処理ポットの内部に伸びたランス管;及び前記ランス管を通じて前記スラグ改質処理ポットに流入する還元剤の流入量を算出する流入量制御部を含むことができる。
【0010】
また、前記還元剤は、炭素、アルミニウム、シリコン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びCOガスの中で選ばれた1種以上であってもよい。
【0011】
また、前記還元剤流入部を通じて、前記溶融スラグの改質処理及びスラグの融点及び比重を低めるための接種剤がさらに流入することができる。ここで、前記接種剤は、アルミニウム、シリコン、生石灰の中で選ばれた1種以上であってもよい。
【0012】
また、前記冷却手段は、前記溶融スラグを冷却して固相スラグを製造するためのスチームを前記スラグ改質処理ポット内に流入させるスチーム供給部;及び前記溶融スラグと前記還元剤の反応を極大化するためのキャリアガスを前記スラグ改質処理ポット内に流入させるガス供給部を含み、前記溶融スラグ内に前記スチームと前記キャリアガスの混合気体を注入することにより冷却がなされることができる。
【0013】
また、前記スラグ改質処理ポットの内部で感知された溶融スラグの静圧に基づき、前記スラグ改質処理ポット内に流入する前記スチームと前記キャリアガスの流入圧力を調節することにより、前記スチームまたは前記キャリアガスが前記スラグ改質処理ポットの外部に逆流することを防止する圧力調節部をさらに含むことができる。
【0014】
また、前記スチーム供給部は、前記スラグ改質処理ポットの内壁または底部に形成されて前記スチームを噴射するスチーム噴射口;及び前記スチーム噴射口と前記スラグ改質処理ポットの外壁の間に形成されたスチーム用多孔質プラグ(porous plug)を含むことができる。
【0015】
また、前記ガス供給部は、前記スラグ改質処理ポットの内壁または底部に形成されて前記キャリアガスを噴射するガス噴射口;及び前記ガス噴射口と前記スラグ改質処理ポットの外壁の間に形成されたガス用多孔質プラグ(porous plug)を含むことができる。
また、前記スチーム供給部と前記ガス供給部は前記スラグ改質処理ポット内にそれぞれスチームとキャリアガスを供給するためのスチーム管とガス管を含み、前記スチーム管と前記ガス管は互いに連結されることで、前記キャリアガスとスチームが混合されてスラグ改質処理ポット内に制御供給されることができる。
【0016】
また、前記還元剤流入部は、前記ガス供給部;及び前記ガス供給部によって前記スラグ改質処理ポットに流入する還元剤の流入量を算出する流入量制御部を含むことができる。
【0017】
また、前記流入量制御部は、前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃範囲に維持することができる還元剤の量を算出することができる。
【0018】
また、前記スラグ改質処理ポットの下部に配置され、前記スラグ改質処理ポット内の溶融スラグの重量を測定する計重装置をさらに含み、前記流入量制御部は、前記計重装置で測定された溶融スラグの重量から前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃範囲に維持することができる還元剤の量を算出することができる。
【0019】
また、前記溶融スラグから回収されて前記スラグ改質処理ポットの下部に分離された有価金属を前記スラグ改質処理ポットの外部に排出するための排出口が前記スラグ改質処理ポットの一側に形成されることができる。
【0020】
また、前記スラグ改質処理ポットの内部で前記溶融スラグを冷却させた後に発生する高温のスチーム、前記スラグ改質処理ポットの内部の未反応還元剤粉体、及び前記溶融スラグと前記還元剤の反応によって発生するダストを回収する回収装置をさらに含むことができる。
【0021】
また、前記回収装置は、前記スチームとダストを選択的に回収することができることができる。
【0022】
また、前記回収装置は、前記スラグ改質処理ポットの上部から離隔され、前記スチームとダストを吸引して捕集する集塵フードを含むことができる。
【0023】
また、前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグが前記スラグ改質処理ポットに流入するように前記スラグ改質処理ポットの上部を開閉するポットカバーをさらに含み、前記ポットカバーに配置され、前記スラグ改質処理ポット内の溶融スラグの温度を維持または上昇させるバーナーをさらに含むことができる。
【0024】
また、前記バーナーはLNG、オイル及び酸素を燃料とし、前記スラグ改質処理ポット内に前記LNG、オイル及び酸素を供給するために前記ポットカバーを貫通して形成された燃料供給管をさらに含むことができる。
【0025】
また、前記スラグ改質処理ポットの熱変形を防止するために前記スラグ改質処理ポットの外壁の周りに配置される水冷ラインをさらに含むことができる。
【0026】
また、前記スラグ改質処理ポット内で制御冷却が完了した固相スラグを外部に排出するために前記スラグ改質処理ポットを傾動させる傾動装置をさらに含むことができる。
【0027】
また、前記スラグ改質処理ポット内で制御冷却が完了した固相スラグが前記スラグ改質処理ポットの内壁に溶着することを防止するために前記スラグ改質処理ポットの外部に備えられた溶着防止部をさらに含むことができる。
【0028】
また、前記溶着防止部は、前記スラグ改質処理ポットの外部で前記スラグ改質処理ポットに向けて高周波を放射する高周波加熱器であってもよい。
【0029】
また、前記溶着防止部は、前記スラグ改質処理ポットの下部に配置され、前記スラグ改質処理ポットに微細な振動を伝達する振動装置であってもよい。
【0030】
前記溶着防止部は、前記スラグ改質処理ポットの外壁と内壁の間に埋め込まれる熱線であってもよい。
【0031】
また、前記転炉または電気炉と前記スラグ改質処理ポットの間に配置され、前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグを貯蔵して前記スラグ改質処理ポットに排出させるスラグポットをさらに含み、前記還元剤流入部は、前記還元剤を前記スラグポットからスラグ改質処理ポットに排出される溶融スラグに投入する還元剤流入管を含むことができる。
【0032】
また、前記転炉または電気炉と前記スラグ改質処理ポットの間に配置され、前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグを貯蔵して前記スラグ改質処理ポットに排出させるスラグポットをさらに含み、前記還元剤流入部は、前記スラグポットと前記スラグ改質処理ポットの間に配置され、前記スラグポットから排出された溶融スラグを貯蔵して前記スラグ改質処理ポットに排出させるスラグ流入容器;及び前記還元剤を前記スラグポットから前記スラグ流入容器に排出される溶融スラグに投入する還元剤流入管を含むことができる。
【0033】
本発明のさらに他の側面によれば、本発明のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法は、還元期操業の前、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグポットまたはスラグ改質処理ポット内に排出し還元剤を投入することで、前記溶融スラグに含まれた有価金属を回収する段階;前記有価金属が回収された溶融スラグを冷却して多孔性構造の固相スラグに形成する段階;及び前記多孔性構造の固相スラグを粉砕及び破砕した後、骨材状に成形する段階を含む。
【0034】
また、前記冷却は前記溶融スラグ内にスチームとキャリアガスを注入することでなされ、前記スチームとキャリアガスは前記溶融スラグの冷却速度が5〜50℃/secとなるように注入することができる。
【0035】
また、前記スチームとキャリアガスは前記溶融スラグの重量及び温度によって注入量と圧力が調節されて供給され、前記スチームとキャリアガスによって冷却されたスラグの粒度が50mm以下に形成されることができる。
【0036】
また、前記溶融スラグの有価金属還元後、フォーミングと制御冷却によって生成された冷却スラグが0.6〜3.0g/cmのかさ密度(Bulk Density)を持つことができる。
【0037】
また、前記破砕及び粉砕されたスラグは浮遊比重選別法によって高比重スラグと低比重スラグに選別されることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、還元剤を用いて、転炉または電気炉から排出されたスラグ中の有価金属(Fe、Mn)を20%水準まで回収することができる。これはスラグ量を低減させるだけでなく、有価金属(Fe、Mn)を回収して再使用することができるので、費用の側面で有利な利点がある。
【0039】
また、本発明は、還元剤を用いるので、粉塵が発生しないながらも安定的に有価金属を回収する。したがって、自然環境を保全する効果がある。
【0040】
また、本発明は、還元後スラグのフォーミングと制御冷却によって低比重のスラグを確保した後、多機能骨材に製造することができる利点がある。このような多機能骨材は、成分自体が天然骨材、セメントなどと成分が類似し膨脹性が低くて建物の階間騷音防止材などの特殊用途に製造される多機能性軽量骨材を取り替えるのに適し、組成をセメント(Cement)組成に変更してセメントを製造するのに適する。
【0041】
また、このような多機能骨材は付加の焼成過程を要求しないので、セメントの製造の際に使われる燃料の使用量を低減させるだけでなく、電力消費量も低減させる。また、この多機能骨材を使ったセメントは、既存セメントの生産に比べて、二酸化炭素排出量を約40%低める利点がある。
【0042】
また、この多機能骨材は化学抵抗性に優れ、塩化物イオンに対する浸透抵抗性に優れる。また、アルカリ−シリカ反応(ASR、Alkali Silica Reaction)に対する抑制効果があるので、耐久性の高いコンクリート構造物のセメント原料として活用可能である。
【0043】
このように、本発明は、高品質セメント、軽量骨材、混和材料への活用が可能で環境に優しいので、建設資材の需給不安定の解消に寄与することができ、スラグに含まれた有価金属を回収することができるので、費用の側面で有利な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例によるスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の構成図である。
【図2】スラグポットによって有価金属を回収する方法を示す作業工程図である。
【図3】図1のスチーム用多孔質プラグ(porous plug)の形状を示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例によるスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の構成図である。
【図5】図4の有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の還元剤流入部の構成図である。
【図6】図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の回収装置の第1実施例を示す構成図である。
【図7】図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の回収装置の第2実施例を示す構成図である。
【図8】図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の傾動装置を示す図である。
【図9】図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の溶着防止部の第1実施例を示す構成図である。
【図10】図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の溶着防止部の第2実施例を示す構成図である。
【図11】図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の溶着防止部の第3実施例を示す構成図である。
【図12】多機能性骨材の活用例を示す図である。
【図13】スラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の他の実施例による作業工程図である。
【図14】本発明の他の実施例による還元剤流入部を示す構成図である。
【図15】本発明のさらに他の実施例による還元剤流入部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0046】
(第1実施例)
図1は本発明の一実施例によるスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の構成図である。図2はスラグポットによって有価金属を回収する方法を示す作業工程図である。図3は図1のスチーム用多孔質プラグ(porous plug)の形状を示す斜視図である。
【0047】
本発明のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100を用いて有価金属を回収し、多機能性骨材を製造する方法は、還元期操業の前、図2に示す転炉や電気炉の溶融スラグを図1に示すスラグ改質処理ポット10内に排出し、還元剤を流入させることで、前記溶融スラグに含まれた有価金属を回収する。
【0048】
ここで、前述したように、転炉や電気炉の溶融スラグを図1に示すスラグ改質処理ポット10内に排出し還元剤を流入させることで、溶融スラグに含まれた有価金属を回収することもできるが、転炉や電気炉の溶融スラグを図2に示すスラグポット10aに投入し、スラグポット10aに還元剤を投入することで、溶融スラグに含まれた有価金属を回収することも可能である。
【0049】
スラグポット10aは転炉または電気炉とスラグ改質処理ポット10の間に配置され、前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグを貯蔵してスラグ改質処理ポット10に排出させる装備であり、前記有価金属回収作業はスラグ改質処理ポット10またはスラグポット10aのいずれで遂行されても構わない。
【0050】
酸素親和力の高い物質である、炭素(C)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及びCOガスの中で選ばれた1種以上の還元剤がスラグポット10aに投入され、その投入量は前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持する範囲で投入されることが好ましい。また、還元剤であるアルミニウムは前記スラグ1ton当たり10〜50kgが投入されることが好ましい。前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持する理由、及びアルミニウムの投入量についての詳細に記載は後述する。
【0051】
また、還元剤を用いた有価金属回収作業をスラグポットで遂行した後、前記スラグポットの上部の溶融スラグをスラグ改質処理ポットに排出して制御冷却を実施することは、図13で説明する第2実施例で後述する。
【0052】
本発明は、スラグ改質処理ポット10内の溶融スラグに還元剤を流入させて、前記溶融スラグに含まれた有価金属を回収した後、有価金属が回収された溶融スラグを多孔性構造の軽量物に形成するために、有価金属が回収された溶融スラグにバブルを発生させ、制御冷却を行うことにより、多孔質構造の固相スラグを形成し、多孔質構造の固相スラグを粉砕及び破砕した後、骨材状に成形する。このような多機能性骨材は成分自体が天然骨材、セメントと類似して、高品質セメント、軽量骨材、混和材料としての活用が可能であり、特に比重が低くて吸湿性が低いので多様な用途の特殊骨材として活用可能である。
【0053】
前述したような方法を用いて有価金属を回収し、多機能性骨材を製造する本プロセスを'KH(Ki−Hwang)process'と称する。
【0054】
スラグの有価金属を回収過程から説明すれば、転炉または電気炉などで生成されるスラグはFeOのような有価金属酸化物を多量含んでいる。
【0055】
電気炉の製鋼工程中に分析した製鋼スラグの化学組成は下記の表1の通りである。
【表1】

【0056】
転炉や電気炉で発生する製鋼スラグには20%以上の有価金属酸化物が含有されており、そのうち電気炉の初期スラグには30%以上の有価金属酸化物が含有されている。
スラグに含有された有価金属酸化物はFeOが代表的であり、FeOの含量が高ければ、スラグを骨材に製造するときに破砕が難しく、セメント原料としての活用の際に制約が大きい。よって、スラグに含まれた有価金属を回収した後、制御冷却によってスラグを多孔性構造の軽量物に形状変更する。
【0057】
以下、説明の便宜上、電気炉で生成されるスラグを例として本発明の一実施例を説明する。
【0058】
本発明の一実施例による有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100は、スラグ改質処理ポット10、還元剤流入部20及び冷却手段30、40を含む。
【0059】
電気炉スラグの排出は、酸化精錬が完了して還元精錬が進むに先立ち、つまり酸化精錬の中盤以後から施行する。酸化精錬の末期に進めば、スラグ中の金属酸化物が減少するにつれてスラグの流動性が悪くなるので、スラグの排出が困難になる。したがって、スラグ排出時期の選択が重要である。
【0060】
スラグは電気炉を傾けるか、ドア(Door)がある場合にはドアを開放することで、別のスラグポット(図2の10a)にスラグを先に排出した後、スラグ改質処理ポット10に溶融スラグを装入させる。しかし、本発明は、図1に示すように、スラグをスラグポット(図2の10a)を経ずに、電気炉からスラグ改質処理ポット10内に直接排出することも可能である。
【0061】
スラグ改質処理ポット10の内壁は熱伝導率の高い銅板または鉄板で構成され、前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグがスラグ改質処理ポット10に流入するように、スラグ改質処理ポット10の上部にはスラグ改質処理ポット10の上部を開閉するポットカバー11が備えられる。
【0062】
転炉または電気炉から排出された溶融スラグがスラグ改質処理ポット10に貯蔵されれば、還元剤流入部20を用いて、前記溶融スラグの有価金属を回収するための還元剤をスラグ改質処理ポット10に流入させる。
【0063】
具体的に、還元剤流入部20は、還元剤を貯蔵するホッパー21、還元剤をスラグ改質処理ポット10の内部に噴射するように、ホッパー21からスラグ改質処理ポット10の内部に伸びたランス管22、及びランス管22を通じてスラグ改質処理ポット10に流入する還元剤の流入量を算出する流入量制御部23を含む。
【0064】
スラグ改質処理ポット10内に排出された溶融スラグに還元剤を流入させる過程を説明すればつぎのようである。
【0065】
還元剤は溶融スラグの有価金属酸化物の中で特にFeOをFeに還元させるためのものである。還元剤としては、酸素との親和力が高い炭素(C)、アルミニウム(Al)などの酸素親和力の高い物質が使われ、その他にシリコン(Si)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及びCOガスの中で選ばれた1種以上も使用可能である。
炭素(C)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及びCOガスの中で選ばれた1種以上の還元剤は還元剤流入部20を通じてスラグ改質処理ポット10に供給される。
【0066】
この際、撹拌力を高めて反応速度を増加させるために、還元剤とともにキャリアガス(carrier gas)を流入させることもできる。前記キャリアガスは空気(air)、窒素またはアルゴンガスであることができ、後述するガス供給部40によってスラグ改質処理ポット10に供給される。
【0067】
アルミニウム(Al)は鉄(Fe)の強力な還元のために流入される。
【0068】
溶融スラグに含有された鉄(Fe)の還元は溶融スラグの温度が高くて反応速度が高いほど有利である。ところで、炭素(C)による鉄(Fe)の還元反応は吸熱反応なので、溶融スラグの温度を低めることになる。
【0069】
溶融スラグは排出時の温度が1600℃程度であるが、炭素(C)による鉄(Fe)の還元反応と外的な要因などによって、排出された後には溶融スラグの温度が1時間当り200〜300℃程度下がる。
【0070】
溶融スラグを高温に維持するために別途の熱源が必要であるが、還元剤としてアルミニウム(Al)を使えば、アルミニウム(Al)の酸化エネルギーが発生する。アルミニウム(Al)による鉄(Fe)の還元反応式は3FeO+2Al→3Fe+Al−−−187.1kcalで、発熱反応であり、この反応は還元しながら熱を発生するのでテルミット反応(Thermit reaction)とも言う。
【0071】
アルミニウム(Al)の流入量は、溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持する範囲で制御する。溶融スラグの温度は高温であるほど鉄(Fe)の還元に有利であるが、1600℃を超えればスラグポットの過度な浸食が発生することができ、1300℃未満であれば還元反応が急激に低下する。
【0072】
具体的に、その過程を詳細に説明すれば、電気炉の溶融スラグがスラグポット内に排出されれば、流入した炭素(C)が還元剤の役目をしてFeO+C→Fe+COの還元反応が進む。
【0073】
この過程で、溶融スラグの温度が低くなることができるが、その後、アルミニウム(Al)を流入させれば、3FeO+2Al→3Fe+Al−−−187.1kcalの発熱反応によって溶融スラグの温度が高温に維持されて還元反応が促進される。ここで、還元反応によって生成されたAlはスラグの組成変化を引き起こし、融点を低める。
【0074】
溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持するためのアルミニウム(Al)の流入量は、スラグ1ton当たり10〜50kgである。アルミニウム(Al)の流入量は操業条件によってアルミニウム(Al)実収率を50〜100%に設定した値である。
【0075】
アルミニウム(Al)の流入量は下記の反応式及び発熱量公式によって算出する。
<反応式>3FeO+2Al→3Fe+Al−−−187.1kcal
<発熱量>Q=CMT
ここで、Q:発熱量、C:スラグ熱容量、M:スラグ重量、T:昇温温度である。
【0076】
例えば、スラグ重量が10ton、スラグ中のFeO含量が1tonであると仮定すれば、アルミニウム(Al)の流入量は251kgになる。
計算過程はつぎのようである。
FeO 1moleと反応するAlは2/3mole
FeO 1mole=71.8g
FeO 1ton=1000000/71.8=13928mole
FeO 13928moleと反応するAlは9285mole
Al 9285mole→9285mole×27g/mole=251kg
【0077】
溶融スラグ中のFeOの含量測定は分光計(spectrometer)を用いるか湿式などの方法を用いることができる。
【0078】
前述したように、溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持するためのアルミニウム(Al)の流入量はスラグ1ton当たり10〜50kgであり、このような適正量の還元剤を流入させるために、前記流入量制御部23では溶融スラグの温度を1300〜1600℃の範囲に維持することができる還元剤の量を算出する。
【0079】
そのために、流入量制御部23は、スラグ改質処理ポット10の下部に配置されてスラグ改質処理ポット10内の溶融スラグを重量を測定する計重装置(後述する図5の符号50)で測定された溶融スラグの重量から前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃範囲に維持することができる還元剤の量を算出する。
【0080】
例えば、流入量制御部23は、計重装置(後述する図5の符号50)から測定された溶融スラグの重量が1tonである場合、還元剤であるアルミニウム(Al)の流入量を10〜50kgに算出し、パイプ上の制御バルブ24を調節することにより、算出された還元剤(アルミニウム)の量だけホッパー21からスラグ改質処理ポット10の内部にランス管22を通じて流入させるものである。
【0081】
下記の表2はアルミニウム(Al)投入量に対するスラグ回収率を示したものである。

【表2】

表2に示すように、有価金属であるFeの回収率が20%水準と高く、前述した方法によれば、粉塵が発生しないながらも安定的に有価金属を回収することができる利点がある。
【0082】
一方、還元剤流入部20によって溶融スラグの融点及び比重を低め、スラグの改質のための接種剤がもっと流入することができる。
【0083】
すなわち、制御冷却の前、溶融スラグの融点及び比重を低め、スラグの改質のための接種剤を流入させることができる。接種剤は1300℃以上の溶融スラグのフォーミングを誘導して融点及び比重を低める方向に溶融スラグの物理、化学的組成を変化させる。
【0084】
溶融スラグの比重は3.0g/cm以下を満足する。この際、溶融スラグの比重は接種剤の投入とFeOがFeに回収される要因が複合的に作用して低くなる。
【0085】
その原理は、接種剤を流入させれば、酸化反応によって低融点酸化物が形成され、かつスチームとキャリアガス(carrier gas)によって冷却されながら溶融スラグの体積が膨脹してスラグの比重が低くなる。そして、低融点酸化物によって溶融スラグの融点も低くなる。
【0086】
ここで、接種剤は、アルミニウム、シリコン、生石灰などより選ばれた1種以上であることができる。
【0087】
アルミニウム、シリコン、生石灰などはスラグ1ton当たり400kg以下に流入する。アルミニウムとシリコンは添加量が増加すれば溶融スラグの比重と融点を低める役目をする。しかし、過度に添加されれば、反応の前、溶融スラグの熱を奪ってスラグを凝固させるので、スラグ1ton当たり400kgを超えないようにする。なぜならば、融点及び比重を低めるための反応は溶融スラグ状態でだけ可能であるからである。
【0088】
本発明の有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100は、溶融スラグと還元剤または接種剤との効率的な反応のために、ポットカバー11に配置されて溶融スラグの温度を維持または上昇させるバーナー60をさらに含む。前記バーナー60によって溶融スラグの温度を一定に維持させることで、溶融スラグと還元剤または接種剤との反応性を一定水準以上に維持させることができる。
【0089】
ここで、前記バーナー60はLNG、オイル(Oil)及び酸素を燃料とし、本発明の有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100は、スラグ改質処理ポット10内に前記LNG、オイル(Oil)及び酸素を供給するように、ポットカバー11を貫通して形成された燃料供給管61、62、63をさらに含む。図1を参照すれば、符号61はLNG供給管、符号62はオイル(Oil)供給管、符号63は酸素供給管である。
【0090】
還元はアルミニウム(Al)の流入後1〜2時間が経てば完了する。
【0091】
還元が完了すれば、高比重の鉄(Fe)がスラグ改質処理ポット10の下部に分離され、その上部に溶融スラグが位置することになる。
【0092】
還元完了の後、溶融スラグの制御冷却を遂行する前、制御冷却の効率を高めるともに溶融スラグを多孔質構造の固相スラグに作るために、溶融スラグから回収されてスラグ改質処理ポット10の下部に分離された有価金属(Fe)をスラグ改質処理ポット10の外部に排出する必要がある。これはスラグ改質処理ポット10の一側に形成された排出口12によってなされ、図1に示すように、前記排出口12がスラグ改質処理ポット10の下部に形成されることもできる。
【0093】
本発明の冷却手段30、40は、有価金属が回収された溶融スラグを多孔性構造の軽量物に形成するために、スラグ改質処理ポット10内で溶融スラグの制御冷却を遂行する。
ここで、溶融スラグの冷却の前、添加剤がさらに投入されることができる。添加剤は溶融スラグをセメント成分に製造するための添加剤であることができる。
【0094】
前記冷却手段30、40は、溶融スラグを冷却させて固相スラグを製造するためのスチームをスラグ改質処理ポット10内に流入させるスチーム供給部30及び溶融スラグと還元剤の反応を極大化するためのキャリアガスをスラグ改質処理ポット10内に流入させるガス供給部40を含み、制御冷却は前記溶融スラグ内に前記スチームと前記キャリアガスの混合気体を注入することでなされる。
【0095】
具体的に、スチーム供給部30は、スラグ改質処理ポット10の内壁または底部に形成されてスチームを噴射するスチーム噴射口33と、前記スチーム噴射口33とスラグ改質処理ポット10の外壁の間に形成されたスチーム用多孔質プラグ(porous plug)32と、スチーム管31とを含む。
【0096】
図1を参照すれば、スラグ改質処理ポット10の内壁と底部には内部にスチームを噴射する複数のスチーム噴射口33が形成され、スチーム噴射口33にスチーム管31が連通して連結された構造を持つ。スチームの注入量と注入圧力を調節するための流量調節器34がスチーム管31上に備えられている。また、図示されていないが、スチーム管31にはスチームの熱損失によって生成された凝縮水を排出する排出管が備えられることができる。
【0097】
ここで、スチーム用多孔質プラグ(porous plug)32は酸化アルミニウムなどを主成分とすることができる多孔性耐火物でなり、図3に示すように、複数の孔32aが不規則に配列されている。前記孔32aはスチーム用多孔質プラグ32の表面だけでなく、多孔質プラグ32の内部にも不規則に形成されているので、スチーム管31から伝達される気相または固相の還元剤が通過することができる。
【0098】
図3を参照すれば、スチーム用多孔質プラグ32の外径はスラグ改質処理ポット10の外壁側から内壁側に行くほど小くなるように形成されることが好ましい(図3を参照すれば、D1>D2)。これにより、スラグ改質処理ポット10内の圧力が高くなる場合であっても、スラグ改質処理ポット10内に流入したスチームがスチーム管31側に逆流することを防止することができることになる。
【0099】
ここで、前記のような多孔質プラグのような構成だけでなく、各種流入管または鉄管などを用いてスラグ改質処理ポット10内にスチームを流入させることができる。
【0100】
また、スラグ改質処理ポット10の内部で感知された溶融スラグの静圧に基づき、スラグ改質処理ポット10内に流入する前記スチームと前記キャリアガスの流入圧力を調節することにより、前記スチームまたは前記キャリアガスがスラグ改質処理ポット10の外部に逆流することを防止する圧力調節部13をさらに備えることができる。
【0101】
圧力調節部13は、スラグ改質処理ポット10内の溶融スラグの静圧を感知するセンサーと、前記静圧に基づいてスラグ改質処理ポット10内に流入するスチームまたはキャリアガスの流入圧力を制御する制御部とからなる。
【0102】
具体的に、スラグ改質処理ポット10内の溶融スラグの静圧が高くなれば、スラグ改質処理ポット10内に流入したスチームまたはキャリアガスがスチーム管31またはガス管41側に逆流することができる。この場合、逆流を防止するために、圧力調節部13は自動的にスラグ改質処理ポット10内に流入するスチームとキャリアガスの流入圧力を調節することになる。
【0103】
このために、所定のセンサーによってスラグ改質処理ポット10内の溶融スラグの静圧を感知し、感知された静圧が所定圧力以上の場合、前記静圧を克服してスラグ改質処理ポット10内にスチームとキャリアガスが円滑に流入することができるように、圧力調節部13の所定の制御部でスチームとキャリアガスの流入圧力を上昇させるようにする。
【0104】
また、図示されていないが、前記スチーム用多孔質プラグ32の孔32aを用いる代わりに、銅(Cu)、鉄(Fe)、ステンレススチールのいずれか1種でなる複数の微細管をスチーム管31と連結し、前記複数の微細管を通じてスラグ改質処理ポット10内にスチームを噴射する構成も採用することができる。
【0105】
ガス供給部40の構造及び機能も前記スチーム供給部30とほぼ類似している。ガス供給部40は、スラグ改質処理ポット10の内壁または底部に形成されてキャリアガスを噴射するガス噴射口43と、前記ガス噴射口43とスラグ改質処理ポット10の外壁の間に形成されたガス用多孔質プラグ(porous plug)42と、ガス管41とを含む。ここで、前記キャリアガスは、空気(Air)、窒素またはアルゴンガスが使われることができる。
スラグ改質処理ポット10の内壁と底部には内部にキャリアガスを噴射する複数のガス噴射口43が形成され、ガス噴射口43にガス管41が連通して連結された構造を持つ。ガスの注入量と注入圧力を調節するための流量調節器44がガス管41上に備えられている。
【0106】
ガス用多孔質プラグ42は前記スチーム用多孔質プラグ32と構造及び機能が類似するので、その説明を省略する。
【0107】
前記実施例のように、スチームとキャリアガスがそれぞれ別個のスチーム供給部30とガス供給部40を通じてスラグ改質処理ポット10内に注入される場合には、スチームとキャリアガスの流量及び注入圧力を個別的に制御することができる利点がある。
【0108】
しかし、本発明はこれに限定されず、前記スラグ改質処理ポット内にスチームとガスを供給するためのスチーム供給部のスチーム管とガス供給部のガス管が互いに連結されることにより、ガスとスチームが混合してスラグ改質処理ポット内に制御供給されることも可能である。
【0109】
図4は本発明の他の実施例によるスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の構成図、図5は図4に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の還元剤流入部の構成図である。
【0110】
図1の実施例においては還元剤流入部20がホッパー21、ランス管22及び流入量制御部23でなるものとして説明したが、図4の実施例においては還元剤流入部20をガス供給部40及びガス供給部40を通じてスラグ改質処理ポット10に流入する還元剤の流入量を算出する流入量制御部23を含むものに構成することもできる。
【0111】
すなわち、図1の実施例とは異なり、ガス供給部40によって還元剤をキャリアガスと一緒に注入することができる。
【0112】
この場合、図5を参照すれば、流入量制御部23は、溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持することができる還元剤の量を計重装置50で測定された溶融スラグの重量に基づいて算出し、ガス管41上に備えられた流量調節器44を調節して、算出された還元剤の量だけスラグ改質処理ポット10の内部に還元剤を流入させる。前記計重装置50はロードセル(Load Cell)でなった電子秤などが利用でき、この外にも重量を測定するために使われるいずれの形式の秤であっても適用可能である。
【0113】
一方、前記スチームと前記キャリアガスの混合気体を溶融スラグ内に注入して制御冷却を遂行すれば、比重と融点が低くなった溶融スラグは内部に気泡が生成された状態で冷却されて多孔質構造の固相スラグになり、多大な力を加えなくても易しく破砕されることになる。
【0114】
本発明の制御冷却ではなく、溶融スラグを一般的な水冷または空冷で処理すればFe含量が高くて破砕が難しく、3.5g/cm以上の高比重とf−CaOとf−MgOの相変態による膨脹性によってセメント原料として使用が不可能になる問題がある。
【0115】
還元の後、フォーミングと制御冷却によって製造された多孔質構造の固相スラグは0.6〜3.0g/cmのかさ密度(Bulk Density)を持つ。かさ密度は物質と物質間の容積(空間)を考慮した密度を意味し、かさ密度とも言う。
【0116】
かさ密度は0.6g/cm未満であれば、建築物の軽量骨材として適用するとき、階間騷音を防止する効果が低く、3.0g/cmを超えればセメント原料としての使用が難しい。
【0117】
スチームはスラグの冷却のために注入され、キャリアガスは溶融スラグと還元剤の撹拌反応のために注入される。スチームはスラグの温度を低めるとともに膨張力が小さいので冷却効率に優れる。参考として、水は膨張力が高くて爆発の危険があるので、高温の溶融スラグの冷却に適用しないようにする。
【0118】
冷却は常温まで1〜50℃/secの冷却速度で冷却することができる。冷却速度は常温のキャリアガス及びスチームの注入量と圧力の調節によって最大値または最小値を持ち、この冷却速度によって固相スラグの形状、強度、組職密度に差がある。
【0119】
表3はガス及びスチームの注入量と圧力調節による冷却速度の最大値と最小値を示すものである。
【表3】

【0120】
表3を参照すれば、冷却速度は常温のガス及びスチームの注入量と圧力調節によって最大値及び最小値を持つことが分かる。
【0121】
表4は冷却速度による多孔性構造の固相スラグを破砕した後の粒度を示すものである。
【表4】

【0122】
表4を参照すれば、冷却速度が5〜50℃/secに維持された場合、固相スラグの粒度は50mm以下に形成されることを把握することができる。ここで、粒度は破砕後の初期粒子サイズを意味する。
【0123】
表3及び表4から、還元の後、フォーミング、制御冷却及び破砕によって粒度50mmの低比重スラグを確保することができることが分かる。
【0124】
表3及び表4に示すデータに基づき、冷却速度が5〜50℃/secに維持されるように、常温のガス及びスチームの注入量と圧力を調節する。これは固相スラグの破砕効率を高めるためのもので、冷却速度が5℃/sec以上の場合、スラグ平均粒度が50mm以下で、破砕効率が高い。そして、冷却速度の上限値は常温のキャリアガス及びスチームの注入量と圧力調節による最大値を適用する。
【0125】
本発明の有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100は、スラグ改質処理ポット10の熱変形を防止する水冷ライン70をさらに含む。
【0126】
スラグ改質処理ポット10の内部では、高温の溶融スラグによる反復的な熱衝撃が加わり、それによりスラグ改質処理ポット10が熱変形を引き起こすことができる。これを防止するために、スラグ改質処理ポット10の外壁の周りに配置される水冷ライン70を通じて常温水を流動させることにより、スラグ改質処理ポット10が熱変形されることを防止することができる。
【0127】
図6は図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の回収装置の第1実施例を示す構成図である。
【0128】
本発明の一実施例による有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100は、スラグ改質処理ポット10の内部で溶融スラグを冷却させた後に発生する高温のスチーム、前記スラグ改質処理ポットの内部の未反応還元剤粉体、及び溶融スラグと還元剤の反応によって発生するダストを回収する回収装置90をさらに含む。
【0129】
ここで、前記回収装置90は、前記高温のスチームとダスト(未反応還元剤粉体を含み)をそれぞれ回収して貯蔵するスチーム貯蔵部91、ダスト回収部92、共通配管93、スチーム配管94、ダスト配管95及び調節部96を含む。
【0130】
具体的に、スラグ改質処理ポット10の内部で溶融スラグを冷却させた後には高温のスチームが発生し、前記高温のスチームは共通配管93を通じてスラグ改質処理ポット10の外部に排出される。これと同様に、溶融還元剤の反応によってダストが発生すれば、前記ダストは共通配管93によってスラグ改質処理ポット10の外部に排出される。
【0131】
図6を参照すれば、共通配管93に流入する前記スチームとダストはそれぞれスチーム貯蔵部91とダスト回収部92に案内される。
【0132】
具体的に説明すれば、高温のスチームは溶融スラグを冷却させるときに発生するもので、ダストは溶融スラグと還元剤の反応の際に発生するものであるので、前記スチームとダストが発生する時点は互いに異なる。
【0133】
各時点によって説明すれば、溶融還元剤の反応の際には、共通配管93を通過したダストがダスト回収部92に案内されるように調節部96を調節してダスト配管95側にダストを案内して収集する。
【0134】
また、溶融スラグを制御冷却するときには、共通配管93を通過したスチームがスチーム回収部91に案内されるように調節部96を調節してスチーム配管94側に高温のスチームを案内して収集する。ここで、前記調節部96はソレノイドバルブのような方向転換バルブなどを用いることができる。
【0135】
すなわち、前記回収装置90は、調節部96を用いて、スラグ改質処理ポット10の内部で溶融スラグを冷却させた後に発生する高温のスチームと、溶融還元剤の反応によって発生するダストを選択的に回収することができることになる。
【0136】
このように、スチーム貯蔵部91に案内されて回収された高温のスチームの排熱を回収してリサイクルすることで効率を高めることができ、ダスト回収部92に案内されたダストを集塵処理することで汚染物質の排出を防止することができる。
【0137】
図7は図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の回収装置の第2実施例を示す構成図である。
【0138】
図7に示す回収装置90は、スラグ改質処理ポット10の上部から離隔され、前記スチームとダストを吸引して捕集する集塵フード97を含むことができる。
【0139】
したがって、スラグ改質処理ポット10の上部に排出されるスチームまたはダストは集塵フード97によって捕集され、集塵フード97に捕集されたスチームまたはダストは共通配管93に排出され、それぞれ選択的にスチーム貯蔵部91とダスト回収部92に案内されて貯蔵されることができる。
【0140】
図8は図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の傾動装置を示す図である。
【0141】
本発明の有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100は、スラグ改質処理ポット10内から制御冷却の完了した固相スラグを外部に排出するために、スラグ改質処理ポット10を傾動させる傾動装置75をさらに含む。
【0142】
制御冷却によって溶融スラグが多孔質構造の固相スラグになれば、これを破砕、粉砕するために外部に排出させる。
【0143】
図8を参照すれば、傾動装置75がスラグ改質処理ポット10の側面にヒンジで結合され、所定の動力源(図示せず)から動力を受けてスラグ改質処理ポット10を傾動させることにより固相スラグを外部に排出させる。
【0144】
図8においては、傾動装置75がスラグ改質処理ポット10の側面に固定されてスラグ改質処理ポット10を傾動させているが、傾動装置75の配置位置は限定されるものではなく、傾動装置75をスラグ改質処理ポット10の下部に固定させてスラグ改質処理ポット10を上下に移動させることも可能である。
【0145】
また、図8においては、傾動装置75として所定の油圧源(図示せず)から油圧を受ける油圧シリンダーを用いてスラグ改質処理ポット10を傾動させる油圧傾動装置を用いる実施例を示しているが、油圧方式ではなくて電源を動力とするモーターを傾動装置として用いることも可能である。
【0146】
図9は図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の溶着防止部の第1実施例を示す構成図、図10は図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の溶着防止部の第2実施例を示す構成図、図11は図1に示す有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の溶着防止部の第3実施例を示す構成図である。
【0147】
本発明の有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置100は、スラグ改質処理ポット10内で制御冷却の完了した固相スラグがスラグ改質処理ポット10の内壁に溶着することを防止するために、前記スラグ改質処理ポット10の外部に備えられた溶着防止部80をさらに含む。
【0148】
制御冷却がスラグ改質処理ポット10内でなされる間、溶融スラグが冷却されながらスラグ改質処理ポット10の内壁に溶着することができる。この場合、傾動装置75を用いてスラグ改質処理ポット10を傾動させても、内壁に溶着されたスラグはスラグ改質処理ポット10の外部に排出されることができない問題がある。よって、制御冷却が完了した固相スラグがスラグ改質処理ポット10の内壁に溶着しないようにする溶着防止部80を採用する。
【0149】
図9を参照すれば、前記溶着防止部80は、スラグ改質処理ポット10の外部でスラグ改質処理ポット10に向けて高周波を放射する高周波加熱器81であることができる。金属の加熱に利用される高周波加熱(高周波誘導加熱)は、高周波電流を用いた電子誘導作用によるもので、高周波によってスラグ改質処理ポット10の外壁を加熱し、内壁に伝導された熱によってスラグ改質処理ポット10の内壁のスラグに一時的に熱を加えることにより溶着を防止する。
【0150】
その外にも、図10を参照すれば、前記溶着防止部80は、スラグ改質処理ポット10の下部に配置されてスラグ改質処理ポット10に微細な振動を伝達する振動装置82であることができる。また、図11を参照すれば、前記溶着防止部80は、スラグ改質処理ポット10の外壁と内壁の間に埋め込まれて、スラグ改質処理ポット10の内壁と外壁の間を加熱する熱線83であることができる。
【0151】
制御冷却によって溶融スラグが多孔質構造の固相スラグになれば、これを傾動装置75によって外部に排出させた後、破砕、粉砕する。
【0152】
多孔質構造の固相スラグは有価金属であるFeの含量が低く、多孔質構造によって破砕及び粉砕が容易である。破砕及び粉砕された固相スラグの平均粒度は50mm以下に均一になる。
【0153】
図12は多機能性骨材の活用例を示す図である。
【0154】
このように製造された多機能骨材の主成分はCaO、Al、SiOであり、図12に示すような活用例を持つことになり、セメント原料として活用するとき、別途の焼成過程を要求しない。したがって、セメントの製造の際に使われる燃料の使用量を減少させるだけでなく電力消費量も低減させる。
【0155】
また、多機能骨材を使ったセメントは、既存のセメントの生産に比べると、焼成過程が要求されないので、二酸化炭素の排出量を約40%節減する。
【0156】
表5はスラグを活用した二酸化炭素(CO)の節減効果を示すものである。
【表5】

表5を参照すれば、スラグを用いた多機能骨材は、セメントの生産時に比べて、二酸化炭素排出量を約40%低減することを把握することができる。これから、本発明によれば、気候変動枠組み条約の発足と同時に温室効果ガス減縮の目標が発効するにつれて、セメント産業界が当面しているCO排出量の節減に寄与することに期待される。
【0157】
また、多機能骨材は化学抵抗性に優れ、塩化物イオンに対する浸透抵抗性に優れる。また、アルカリ−シリカ反応(ASR、Alkali Silica Reaction)に対する抑制効果があるので、耐久性の高いコンクリート構造物に活用可能である。
【0158】
前述した方法及び装置は転炉から排出されたスラグにも同様に適用可能である。
【0159】
(第2実施例)
本発明の他の実施例によるスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置は、スラグ改質ポットの他の実施例に関するもので、第1実施例と重複する説明の記載は省略する。
【0160】
図13はスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置の他の実施例を用いた作業工程図である。
【0161】
図13に示す実施例は、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグポット110内に排出し、還元剤による有価金属回収作業はスラグポット110で遂行した後、上部の溶融スラグをスラグ改質処理ポット130に排出し、制御冷却を実施するもので、スラグ改質処理ポット10で有価金属回収及び制御冷却がすべて行われる第1実施例とは違いがある。
【0162】
具体的に、図13の(b)に示すように、炭素(C)、アルミニウム(Al)などの還元剤がスラグポットに供給される。この際、撹拌力を高めて反応速度を高めるためにキャリアガスとともに投入されることもできる。還元剤及びキャリアガスについての説明は前述したようであるので省略する。
【0163】
還元が完了すれば、図13の(c)に示すように、高比重の有価金属である鉄(Fe)がスラグポット110の下部に分離され、その上部に溶融スラグが位置する。すると、図13の(d)に示すように、上部の溶融スラグをスラグ改質処理ポット130に排出し、スラグポット110に残った鉄(Fe)は回収する。
【0164】
スラグ改質処理ポット130は有価金属が回収された溶融スラグの制御冷却のための装置であり、有価金属が回収された溶融スラグを多孔性構造の軽量物に形成するための冷却手段を備える。
【0165】
冷却手段は、スラグ改質処理ポット130の内壁と底部に設けられて内部にキャリアガスとスチームを噴射する複数の噴射口150と、この噴射口に連通するように備えられ、キャリアガスとスチームが注入された後に混合される混合管170とを含む。
混合管170は、ガスとスチームが注入された後に混合されて噴射口150を通じて噴射されるように単一ラインで連結できる。
【0166】
そして、図示されていないが、混合管170には、スチームの熱損失によって生成された凝縮水を排出する排出管、及びガス及びスチームの注入量と注入圧力を調節するための流量調節器が備えられることができる。制御冷却は、溶融スラグを多孔性構造の固相スラグにして、多大な力を加えなくても易しく破砕されるようにする。
【0167】
制御冷却によって溶融スラグが多孔性構造の固相スラグになれば、図13の(e)に示すように、破砕、粉砕される。多孔性構造の固相スラグは有価金属であるFeの含量が低く、多孔性構造によって破砕及び粉砕が容易である。破砕及び粉砕された固相スラグの粒度は50mm以下で、均一である。
【0168】
破砕及び粉砕されたスラグは浮遊比重選別機190によって高比重スラグと低比重スラグに選別されることができる。高比重スラグはFeO、MnOの多いスラグで、磁力反発力、磁力選別法または浮遊比重選別法によって選別することができる。
【0169】
ここで、破砕及び粉砕されたスラグを高比重スラグと低比重スラグに選別する作業を行うのは、有価金属の回収率を高めながらも比重を低めることで軽量骨材としての利用を可能にするためである。
【0170】
本発明では、浮遊比重選別法によって破砕及び粉砕されたスラグを高比重スラグと低比重スラグに選別し、これに使われる浮遊比重選別機190は図13の(f)形状を採用することができる。
【0171】
浮遊比重選別機190は、破砕及び粉砕されたスラグが投入口を通じて投入されれば、粒度50mm以下のスラグはメッシュ網を通過するが、粒度50mmを超えるスラグは排出口を通じて排出される。
【0172】
メッシュ網を通過したスラグは浮遊比重選別機190の下部に落下し、供給される水の波動によってFeO、MnOが少なく含まれた低比重のスラグは水の上に浮き上がり、FeO、MnOがたくさん含まれた高比重のスラグは水の下に沈むことになる。水の上に浮き上がった低比重のスラグは水平に形成された溢水壁を越えて外部に排出される。
排出された低比重のスラグは乾燥処理後に多機能骨材に成形される。そして、高比重のスラグと粒度50mmを超えるスラグは還元剤の投入によって有価金属が回収された後に多機能骨材に成形されることができる。
(第3実施例)
【0173】
本発明のさらに他の実施例によるスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置は、還元剤を流入させる他の実施例に関するもので、前記第1実施例及び第2実施例と重複する説明についての記載は省略する。
【0174】
図14は本発明の他の実施例による還元剤流入部を示す構成図、図15は本発明のさらに他の実施例による還元剤流入部を示す構成図である。
【0175】
図14及び図15に示す実施例は、スラグ改質処理ポット230、330で還元剤による有価金属回収作業を遂行するために、スラグ改質処理ポット230、330に還元剤を流入させるとき、スラグ改質処理ポット230、330の上部、側面または下部で還元剤を直接流入させなく、別途のスラグ流入容器223を用いて還元剤を流入させるか、あるいは転炉または電気炉から排出されたスラグがスラグポット310を経てスラグ改質処理ポット330に流入する過程に還元剤を直接流入させる方式を用いる点で第1実施例とは違いがある。
【0176】
また、転炉または電気炉の溶融スラグがスラグポット210内に排出されれば、スラグポット210内の溶融スラグがスラグ改質処理ポット230に排出される点は第2実施例と同様であるが、還元剤による有価金属回収作業がスラグポット210、310ではないスラグ改質処理ポット230、330で行われる点で第2実施例とは違いがある。
【0177】
図14を参照して具体的に説明すれば、本発明の他の実施例による還元剤流入部220は、ホッパー221、還元剤流入管222及びスラグ流入容器223を含む。
ホッパー221には炭素(C)、アルミニウム(Al)などの還元剤が貯蔵され、ホッパー221に貯蔵された還元剤は還元剤流入管222を通じてスラグ流入容器223に投入される。
【0178】
スラグ流入容器223は漏斗状を持ち、底面には、溶融スラグをスラグ改質処理ポット230に排出するための下部孔223aが形成される。スラグ流入容器223はスラグポット210とスラグ改質処理ポット230の間に配置され、スラグポット210から排出された溶融スラグを貯蔵してスラグ改質処理ポット230に排出させる。
【0179】
スラグポット210内の溶融スラグがスラグ流入容器223に排出されるとき、還元剤流入管222を通じてスラグ流入容器223に排出される溶融スラグに還元剤が投入され、その過程で溶融スラグに直接還元剤が流入される。
【0180】
それにより、漏斗状のスラグ流入容器223内の溶融スラグの有価金属酸化物を還元させる還元反応時間が増加し、反応表面積が広くなって還元反応の反応性が大きく向上し、スラグ改質処理ポット230内での還元反応時間を短縮し、キャリアガスの使用量を減らすことにより、溶融スラグの温度低下を防止することができる利点がある。
【0181】
一方、本実施例によるスラグ流入容器223を適用する場合、スラグポット210とスラグ改質処理ポット230の間の溶融スラグの排出経路上で還元剤の直接的な流入を安定的に案内する機能をすることができることになるが、溶融スラグがスラグ流入容器223内に溶着して内壁または下部孔223aを詰める問題が発生することができる。
【0182】
この場合、スラグ流入容器223のみを外部に移動させ、冷却水を撒布して急冷させることにより凝固したスラグを除去するか、あるいは外部に移動されたスラグ流入容器223に所定の衝撃または振動を加えることにより凝固したスラグを除去することができる。
【0183】
還元剤流入部のさらに他の実施例として、図15を参照して説明すれば、本発明のさらに他の実施例による還元剤流入部320はホッパー321及び還元剤流入管322を含む。
【0184】
本実施例は、図14に示すスラグ流入容器223を適用しない点で前述した実施例とは違いがある。よって、ホッパー321に貯蔵された還元剤は還元剤流入管322を通じてスラグ流入容器223に噴射されるものではなく、スラグポット310からスラグ改質処理ポット330に排出される溶融スラグに直接的に投入される。
【0185】
その過程で溶融スラグに直接還元剤が流入することになり、それにより、還元反応の反応性が大きく向上する効果を持つ点で図14に示す実施例と同様である。
【0186】
前述した還元剤流入部220、320によって、スラグ改質処理ポット230、330に還元剤が流入した後には、スラグ改質処理ポット230、330で有価金属回収及び制御冷却がすべて行われる点で第1実施例の構成と同様であるので、重複する説明の記載は省略する。
【0187】
本発明の権利は前述した実施例に限定されなくて請求範囲に記載されたものによって定義され、本発明の技術分野で通常の知識を持った者が請求範囲に記載された権利範囲内で多様な変形及び改作をなし得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0188】
10、130、230、330:スラグ改質処理ポット
20、220、320:還元剤流入部
30:スチーム供給部
40:ガス供給部
50:計重装置
60:バーナー
70:水冷ライン
80:溶着防止部
90:回収装置
100:スラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元期操業の前、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグポットまたはスラグ改質処理ポット内に排出する段階;及び
前記スラグポットまたはスラグ改質処理ポット内に排出された溶融スラグに還元剤を供給することによってスラグの物理化学的組成を制御して有価金属を回収する段階を含むことを特徴とする、スラグの有価金属回収方法。
【請求項2】
前記還元剤は、炭素、アルミニウム、シリコン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びCOガスの中で選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のスラグの有価金属回収方法。
【請求項3】
前記還元剤の投入量は、前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃に維持する範囲で投入されることを特徴とする、請求項2に記載のスラグの有価金属回収方法。
【請求項4】
前記アルミニウムは前記スラグ1ton当たり10〜50kgが投入されることを特徴とする、請求項3に記載のスラグの有価金属回収方法。
【請求項5】
転炉または電気炉から排出された溶融スラグが貯蔵されるスラグ改質処理ポット;
前記溶融スラグの有価金属を回収するための還元剤を前記スラグ改質処理ポットの内部に流入させる還元剤流入部;及び
前記有価金属が回収された溶融スラグを多孔性構造の軽量物に形成するためのバブル発生及び制御冷却を行う冷却手段を含むことを特徴とする、スラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項6】
前記還元剤流入部は、
前記還元剤を貯蔵するホッパー;
前記還元剤を前記スラグ改質処理ポットに噴射するように前記ホッパーから前記スラグ改質処理ポットの内部に伸びたランス管;及び
前記ランス管を通じて前記スラグ改質処理ポットに流入する還元剤の流入量を算出する流入量制御部を含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項7】
前記還元剤は、炭素、アルミニウム、シリコン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びCOガスの中で選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項8】
前記還元剤流入部を通じて、前記溶融スラグの改質処理及びスラグの融点及び比重を低めるための接種剤がさらに流入することを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項9】
前記接種剤は、アルミニウム、シリコン、生石灰の中で選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項8に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項10】
前記冷却手段は、
前記溶融スラグを冷却して固相スラグを製造するためのスチームを前記スラグ改質処理ポット内に流入させるスチーム供給部;及び
前記溶融スラグと前記還元剤の反応を極大化するためのキャリアガスを前記スラグ改質処理ポット内に流入させるガス供給部を含み、
前記溶融スラグ内に前記スチームと前記キャリアガスの混合気体を注入することにより冷却がなされることを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項11】
前記スラグ改質処理ポットの内部で感知された溶融スラグの静圧に基づき、前記スラグ改質処理ポット内に流入する前記スチームと前記キャリアガスの流入圧力を調節することにより、前記スチームまたは前記キャリアガスが前記スラグ改質処理ポットの外部に逆流することを防止する圧力調節部をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項12】
前記スチーム供給部は、
前記スラグ改質処理ポットの内壁または底部に形成されて前記スチームを噴射するスチーム噴射口;及び
前記スチーム噴射口と前記スラグ改質処理ポットの外壁の間に形成されたスチーム用多孔質プラグ(porous plug)を含むことを特徴とする、請求項10に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項13】
前記ガス供給部は、
前記スラグ改質処理ポットの内壁または底部に形成されて前記キャリアガスを噴射するガス噴射口;及び
前記ガス噴射口と前記スラグ改質処理ポットの外壁の間に形成されたガス用多孔質プラグ(porous plug)を含むことを特徴とする、請求項10に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項14】
前記スチーム供給部と前記ガス供給部は前記スラグ改質処理ポット内にそれぞれスチームとキャリアガスを供給するためのスチーム管とガス管を含み、
前記スチーム管と前記ガス管は互いに連結されることで、前記キャリアガスとスチームが混合されてスラグ改質処理ポット内に制御供給されることを特徴とする、請求項10に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項15】
前記還元剤流入部は、
前記ガス供給部;及び
前記ガス供給部によって前記スラグ改質処理ポットに流入する還元剤の流入量を算出する流入量制御部を含むことを特徴とする、請求項10に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項16】
前記流入量制御部は、前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃範囲に維持することができる還元剤の量を算出することを特徴とする、請求項6または15に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項17】
前記スラグ改質処理ポットの下部に配置され、前記スラグ改質処理ポット内の溶融スラグの重量を測定する計重装置をさらに含み、
前記流入量制御部は、前記計重装置で測定された溶融スラグの重量から前記溶融スラグの温度を1300〜1600℃範囲に維持することができる還元剤の量を算出することを特徴とする、請求項16に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項18】
前記溶融スラグから回収されて前記スラグ改質処理ポットの下部に分離された有価金属を前記スラグ改質処理ポットの外部に排出するための排出口が前記スラグ改質処理ポットの一側に形成されたことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項19】
前記スラグ改質処理ポットの内部で前記溶融スラグを冷却させた後に発生する高温のスチーム、前記スラグ改質処理ポットの内部の未反応還元剤粉体、及び前記溶融スラグと前記還元剤の反応によって発生するダストを回収する回収装置をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項20】
前記回収装置は、前記スチームとダストを選択的に回収することができることを特徴とする、請求項19に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項21】
前記回収装置は、前記スラグ改質処理ポットの上部から離隔され、前記スチームとダストを吸引して捕集する集塵フードを含むことを特徴とする、請求項19に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項22】
前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグが前記スラグ改質処理ポットに流入するように前記スラグ改質処理ポットの上部を開閉するポットカバーをさらに含み、
前記ポットカバーに配置され、前記スラグ改質処理ポット内の溶融スラグの温度を維持または上昇させるバーナーをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項23】
前記バーナーはLNG、オイル及び酸素を燃料とし、
前記スラグ改質処理ポット内に前記LNG、オイル及び酸素を供給するために前記ポットカバーを貫通して形成された燃料供給管をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項24】
前記スラグ改質処理ポットの熱変形を防止するために前記スラグ改質処理ポットの外壁の周りに配置される水冷ラインをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項25】
前記スラグ改質処理ポット内で制御冷却が完了した固相スラグを外部に排出するために前記スラグ改質処理ポットを傾動させる傾動装置をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項26】
前記スラグ改質処理ポット内で制御冷却が完了した固相スラグが前記スラグ改質処理ポットの内壁に溶着することを防止するために前記スラグ改質処理ポットの外部に備えられた溶着防止部をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項27】
前記溶着防止部は、前記スラグ改質処理ポットの外部で前記スラグ改質処理ポットに向けて高周波を放射する高周波加熱器であることを特徴とする、請求項26に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項28】
前記溶着防止部は、前記スラグ改質処理ポットの下部に配置され、前記スラグ改質処理ポットに微細な振動を伝達する振動装置であることを特徴とする、請求項26に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項29】
前記溶着防止部は、前記スラグ改質処理ポットの外壁と内壁の間に埋め込まれる熱線であることを特徴とする、請求項26に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項30】
前記転炉または電気炉と前記スラグ改質処理ポットの間に配置され、前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグを貯蔵して前記スラグ改質処理ポットに排出させるスラグポットをさらに含み、
前記還元剤流入部は、前記還元剤を前記スラグポットからスラグ改質処理ポットに排出される溶融スラグに投入する還元剤流入管を含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項31】
前記転炉または電気炉と前記スラグ改質処理ポットの間に配置され、前記転炉または電気炉から排出された溶融スラグを貯蔵して前記スラグ改質処理ポットに排出させるスラグポットをさらに含み、
前記還元剤流入部は、
前記スラグポットと前記スラグ改質処理ポットの間に配置され、前記スラグポットから排出された溶融スラグを貯蔵して前記スラグ改質処理ポットに排出させるスラグ流入容器;及び
前記還元剤を前記スラグポットから前記スラグ流入容器に排出される溶融スラグに投入する還元剤流入管を含むことを特徴とする、請求項5に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造装置。
【請求項32】
還元期操業の前、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグポットまたはスラグ改質処理ポット内に排出し還元剤を投入することで、前記溶融スラグに含まれた有価金属を回収する段階;
前記有価金属が回収された溶融スラグを冷却して多孔性構造の固相スラグに形成する段階;及び
前記多孔性構造の固相スラグを粉砕及び破砕した後、骨材状に成形する段階を含むことを特徴とする、スラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法。
【請求項33】
前記冷却は前記溶融スラグ内にスチームとキャリアガスを注入することでなされ、前記スチームとキャリアガスは前記溶融スラグの冷却速度が5〜50℃/secとなるように注入することを特徴とする、請求項32に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法。
【請求項34】
前記スチームとキャリアガスは前記溶融スラグの重量及び温度によって注入量と圧力が調節されて供給され、前記スチームとキャリアガスによって冷却されたスラグの粒度が50mm以下に形成されることを特徴とする、請求項33に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法。
【請求項35】
前記溶融スラグの有価金属還元後、フォーミングと制御冷却によって生成された冷却スラグが0.6〜3.0g/cmのかさ密度(Bulk Density)を持つことを特徴とする、請求項34に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法。
【請求項36】
前記破砕及び粉砕されたスラグは浮遊比重選別法によって高比重スラグと低比重スラグに選別されることを特徴とする、請求項32に記載のスラグの有価金属回収及び多機能性骨材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−528783(P2012−528783A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513889(P2012−513889)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004150
【国際公開番号】WO2011/081267
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(510307299)ヒュンダイ スチール カンパニー (14)
【Fターム(参考)】