説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物及び成形品

【課題】耐湿熱老化性により優れるスラッシュ成形品を製造することのできるスラッシュ成形用の樹脂粉末組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末、好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマー粉末を主体とし、テトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミドであって、好ましくは数平均分子量が500〜30,000で末端基がアルコキシ基であるもの、を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材として適する、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末を主体とするスラッシュ成形用の樹脂粉末組成物であって、自動車内装部品等に成形した場合に、耐湿熱老化性に優れた樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車内装部品等は長期間の高温、高湿に晒されることがあり、そのため表皮の強度が低下する虞がある。近年、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末からなる樹脂成形品について、高温多湿な使用環境等により樹脂中に存在するエステル結合が加水分解する可能性があることがわかってきた。
【0003】
一方、ウレタン樹脂のなかでもポリエステル系ポリウレタン樹脂は、長期間の高温、高湿下で樹脂中のエステル結合が加水分解し、樹脂の物性が低下することがあることが知られている。この問題を解決するために、加水分解後の樹脂中のカルボン酸と結合をなし安定させるカルボジイミド化合物が効果を上げている。(例えば特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開平9−255752号公報
【特許文献2】特開平9−272726号公報
【特許文献3】特開平6−287442号公報
【特許文献4】特表平10−510311号公報
【0004】
しかしながら、自動車内装部品等を製造するためのスラッシュ成形用樹脂粉末組成物に適用することができる高温、高湿下の耐劣化技術は知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐湿熱老化性により優れるスラッシュ成形品を製造することのできるスラッシュ成形用の樹脂粉末組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)を主体とし、テトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A)を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物;及び該樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなる樹脂成形品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形された樹脂成形品は、耐湿熱老化性に優れ、引裂強度保持率が高い。
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形された樹脂成形品は、スラッシュ成形時の裏面溶融性が向上する。
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形された樹脂成形品は、色褪せ・グロスの変化が少なく、耐熱性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、テトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A)を含有するために耐湿熱老化性に優れる。テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略記する。)を重合してなるポリカルボジイミド(A)としては、TMXDIが重合したポリカルボジイミドが挙げらる。
TMXDIとは下記の一般式(1)で示されるジイソシアネートであり、これには位置異性体としてm−TMXDI、p−TMXDI等がある。このうち、m−TMXDIが好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
ポリカルボジイミド(A)の数平均分子量は、低分子量に起因する樹脂からのブリードアウトの観点から500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましく、10,000以上が一層好ましい。また、ポリカルボジイミドの粘度と、樹脂溶解時の流動性確保の観点から30,000以下が好ましく、25,000以下がより好ましい。数平均分子量は、ポリカルボジイミドの末端のNCO基をジブチルアミンでキャップし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)[測定機器は、例えば昭和電工のSHODEX−KFタイプ、溶媒は、THFを使用]で測定される。
【0011】
ポリカルボジイミド(A)の末端基としては、例えば、イソシアネート基(末端基が封止されていないもの)、アルコキシル基(例えば、末端イソシアネート基がエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されているもの)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル残基(例えば、末端イソシアネート基がポリエチレングリコールモノメチルエーテルで封止されているもの。ポリエチレングリコールはエチレンオキシドの付加モル数が5以上のもの。)等が挙げられる。これらのなかで、耐加水分解安定性、耐熱性の観点からアルコキシル基(例えば、メトシキ、エトキシ等)が好ましい。また、耐加水分解安定性の観点からイソシアネート基(末端基が封止されていないもの)が好ましい。上記のようなポリカルボジイミド(A)は、TMXDIの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端のTMXDIを重合してなるポリカルボジイミドを合成し、末端基がアルコキシル基の場合、更にこのイソシアネート末端のTMXDIを重合してなるポリカルボジイミドにエチレングリコールモノアルキルエーテルを反応させることにより製造することができる。
【0012】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)の重量に基づいて、ポリカルボジイミド(A)を好ましくは0.1〜10重量%含有し、より好ましくは0.5〜8重量%含有し、さらに好ましくは1〜5重量%含有する。(A)の含量が、0.1重量%以上であると安定剤としての効果を充分得ることができ、また、10重量%以下であるとスラッシュ成形用樹脂粉末組成物からなる成形物の物性に悪い影響を与えないので好ましい。
【0013】
本発明において、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)(以下、ポリウレタン樹脂粉末又は単に(B)ともいう)とは、スラッシュ成形用に使用可能なポリウレタン樹脂粉末であれば特に制限はない。好ましい例としては、高温時に溶融性を示し、低温時にゴム弾性を示す熱可塑性ポリウレタンエラストマー粉末(C)が挙げられる。
【0014】
本発明において、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)に他の熱可塑性樹脂粉末を配合することもできる。他の熱可塑性樹脂粉末としては、例えば、(以下、熱可塑性を省略して記載する。)ポリ塩化ビニル樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリビニル芳香族樹脂粉末、ポリアクリレート樹脂粉末、共役ジエン樹脂粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。他の熱可塑性樹脂粉末の配合量は、(B)100重量部あたり0〜100重量部が好ましい。
【0015】
ポリウレタン樹脂粉末におけるポリウレタン樹脂は、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン、低分子モノオールを原料として合成した樹脂である。
【0016】
ポリウレタン樹脂粉末としては、例えば以下の製造方法で得られるものが挙げられる。
(1)ウレタン結合およびウレア結合を有し、水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平8−120041号公
報等に記載されたものを使用することができる。
(2)ウレタン結合およびウレア結合を有するウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはジオール)と反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。
(3)ジイソシアネートと高分子ジオールと必要に応じて鎖伸長剤(低分子ジオール、低分子ジアミン)とを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)する方法で製造されるもの。
【0017】
ポリ塩化ビニル樹脂粉末は、例えば、懸濁重合法又は塊状重合法によって製造した塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーとエチレン酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニルモノマーを主成分とする共重合体の樹脂粉末が挙げられる。
【0018】
ポリオレフィン樹脂粉末は、一般的にオレフィン系熱可塑性エラストマーに属する物であればいかなるものも使用でき、さらに、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン−ゴム(EPM、EPDM)とプロピレン系重合体等のポリオレフィン等とを複合したオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。また、α−オレフィン共重合体よりなるオレフィン熱可塑性エラストマー、α−オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂から成るオレフィン熱可塑性エラストマーの微粉末も使用することができる。
【0019】
ポリビニル芳香族樹脂粉末には、芳香族ビニル化合物単独重合体、芳香族ビニル化合物とビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末等が含まれる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ブロモスチレン、ビニルスチレン、ビニルキシレン、フルオロスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0020】
ポリアクリレート樹脂粉末は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルとビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末等が挙げられる。
【0021】
共役ジエン樹脂粉末は、共役ジエン系共重合体中の共役ジエン系部分を水素添加または一部水素添加して得られる共重合体であり、例えば、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ランダム共重合体の水素添加物、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物の樹脂粉末が含まれる。
【0022】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmの範囲にある。
【0023】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物には、必要に応じて、金型汚れを起こさずブロッキング防止を行える範囲で、その他の添加物を配合することができる。その他の添加物としては、例えば、公知慣用の顔料、無機充填剤、可塑剤、離型剤、有機充填剤、分散剤、紫外線吸収剤(光安定剤)、酸化防止剤等が挙げられる。
【0024】
上記添加剤の配合量は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)の重量に対して、好ましくは0〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
【0025】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を製造する方法としては、ウレタン樹脂を使用する場合を例に挙げれば、以下の方法が挙げられる。他の熱可塑性樹脂の場合も、これに準じて行うことができる。
(1)ポリウレタン樹脂を合成する際、ポリカルボジイミド(A)を高分子ジオール及びジイソシアネートの少なくとも一方と混合させる。
(2)ウレタンプレポリマーに(A)を混ぜ合わせる。
(3)必要に応じて添加される可塑剤、顔料、安定剤等と混合させる。
(4)上記3つの方法を併用する。
これらのなかで、(2)の方法が好ましい。
ポリカルボジイミド(A)は、固体粉末状、又は溶液状等で添加することができるが、溶液状で添加することが好ましい。
【0026】
上記混合に使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシエルミキサー(登録商標)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウターミキサー(登録商標)等)を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機(ナウターミキサー(登録商標、以下省略)等)を使用するのが好ましい。
【0027】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物からなる樹脂成形品はスラッシュ成形法で成形することができる。例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後、冷却後、固化させ、表皮を製造する方法で好適に実施することができる。上記金型温度は好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは210〜280℃である。
【0028】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物で成形された表皮厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。成形表皮は、表面を発泡型に接するようにセットし、ウレタンフォームを流し、裏面に5mm〜15mmの発泡層を形成させて、樹脂成形品とすることができる。
【0029】
本発明の樹脂成形品は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等に好適に使用される。
【実施例】
【0030】
以下、製造例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0031】
製造例1
プレポリマー溶液の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1000のポリブチレンアジペート(497.9部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(124.5部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製;イルガノックス1010](1.12部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(90.7部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.7部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(153.4部)テトラヒドロフラン(125部)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製;チヌビン571](2.22部)、TMXDI(TMXDIはm体で純度98%)のポリカルボジイミド(A−1)[Mn15,000、末端基:メトキシ基、性状:70%メチルエチルケトン(以下、MEK)溶液、日清紡績(株)社製;Carbodilite V−09M](2.15部)を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液(C−1)を得た。(C−1)のNCO含量は、2.05%であった。
【0032】
製造例2
ジアミンのMEKケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミンと過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してMEKケチミン化物を得た。
【0033】
製造例3
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末の製造
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液(C−1)(100部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(5.6部)を投入し、そこにジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩を含む分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8)(1.3重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタンエラストマー粉末である熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)を製造した。(B−1)のMnは2.5万、体積平均粒径は155μmであった。
【0034】
実施例1
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の製造
100Lのナウタミキサー内に、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)(100部)、芳香族縮合リン酸エステル[大八化学(株)社製;CR−741](13.6部)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート[三洋化成工業(株)社製;DA600](3.9部)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)[商品名:TINUVIN765、チバ社製](0.27部)を投入し80℃で2時間混合した。次いでジメチルポリシロキサン[日本ユニカー(株)製;ケイL45−1000](0.1部)、カルボキシル変性シリコン[信越化学工業(株)製;X−22−3710](0.1部)を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。最後に、架橋ポリメチルメタクリレート[ガンツ化成(株);ガンツパールPM−030S](0.3部)を投入混合することでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−1)を得た。(D−1)の体積平均粒径は155μmであった。(D−1)に含まれるテトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A−1)の重量%は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)の重量に対して1.0重量%であった。
【0035】
実施例2
製造例1において、(A−1)2.15部の代わりに(A−1)9.68部を使用する以外は製造例1と同様にしてプレポリマー溶液(C−2)を得た。(C−2)のNCO含量は、1.95%であった。続いて、製造例3と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−2)を得、これを用いて実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−2)を得た。(D−2)の体積平均粒径は155μmであった。(D−2)に含まれるテトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A−1)の重量%は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−2)の重量に対して4.5重量%であった。
【0036】
実施例3
製造例1において、(A−1)2.15部の代わりにTMXDI(TMXDIはm体で純度98%)を重合してなるポリカルボジイミド(A−2)[Mn2,000、末端基:PEGモノメチルエーテル残基(エチレンオキシドの付加モル数10)、性状:液体、日清紡績(株)社製;Elastostab H01]1.51部を使用する以外は製造例1と同様にしてプレポリマー溶液(C−3)を得た。(C−3)のNCO含量は、2.08%であった。続いて、製造例3と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−3)を得、これを用いて実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−3)を得た。(D−3)の体積平均粒径は125μmであった。(D−2)に含まれるテトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A−2)の重量%は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−3)の重量に対して1.0重量%であった。
【0037】
実施例4
製造例1において、(A−1)2.15部の代わりにTMXDI(TMXDIはm体で純度98%)を重合してなるポリカルボジイミド(A−3)[Mn800、末端基:イソシアネート基、性状:液体、日清紡績(株)社製;Carbodilite V−05]1.51部を使用する以外は製造例1と同様にしてプレポリマー溶液(C−4)を得た。(C−4)のNCO含量は、2.18%であった。続いて、製造例3と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−4)を得、これを用いて実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−4)を得た。(D−4)の体積平均粒径は152μmであった。(D―4)に含まれるテトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A−3)の重量%は、熱可塑性樹脂粉末(B−4)の重量に対して1.0重量%であった。
【0038】
比較例1
製造例1において、(A−1)0.8部の代わりに(A−1)を使用しない以外は製造例1と同様にしてプレポリマー溶液(C−5)を得た。(C−5)のNCO含量は、2.10%であった。続いて、製造例3と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−5)を得、これを用いて実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−5)を得た。(D−5)の体積平均粒径は155μmであった。(D−5)に含まれるテトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミドの重量%は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−5)の重量に対して0重量%であった。
【0039】
比較例2
製造例1において、(A−1)2.25部の代わりに4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A−4)[Mn2,000、末端基メトキシ基、性状:50%トルエン溶液、日清紡績(株)社製;Carbodilite V−03]3.0部を使用する以外は製造例1と同様にしてプレポリマー溶液(C−6)を得た。(C−6)のNCO含量は、2.05%であった。続いて、製造例3と同様にして熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−6)を得、これを用いて実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−6)を得た。(D−6)の体積平均粒径は150μmであった。(D−6)に含まれる4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A−4)の重量%は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−6)の重量に対して1.0重量%であった。
【0040】
実施例1〜4のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−1)〜(D−4)、及び比較例1〜2のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(D−5)〜(D−6)を使用して、下記に示す方法で表皮を成形し、裏面溶融性の確認および湿熱老化試験を行った。また、下記に示す方法で表皮層を有するフォーム成形体を成形し、耐熱試験を行った。結果を表1に示した。
【0041】
<表皮の作成>
予め270℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型にスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を充填し、10秒後余分な粉末樹脂粉末組成物を排出する。230℃で更に90秒加熱後、水冷して表皮(厚さ1mm)を作成した。この成形表皮の裏面溶融性を評価し、表皮を用いて、湿熱老化試験を行った。
【0042】
<表皮層を有するフォーム成形体の作成>
上記の方法で作成した表皮をモールドにセットし、その上にウレタンフォーム形成成分[EOチップドポリプロピレントリオール(数平均分子量5,000)95部、トリエタノールアミン5部、水2.5部、トリエチルアミン1部、ポリメリックMDI61.5部からなる]を添加し発泡密着させ、各表皮層を有するフォーム成形体を得た。この成形体を用いて、耐熱試験を行った。
【0043】
<湿熱老化試験>
成形表皮を、恒温恒湿機中に、温度80℃湿度95%RHで400時間処理した。試験後、表皮の引裂強度を測定して、初期強度と比較した。
湿熱老化試験後の引裂強度保持率を以下の式(1)で算出した。
引裂強度保持率(%)=(湿熱老化試験後の引裂強度/湿熱老化試験前の引裂強度)×100 (1)
【0044】
<耐熱試験>
フォーム成形体を、循環乾燥機中に、110℃で1260時間処理した。試験後、表皮の色褪せ、グロスを確認した。
【0045】
評価基準
・裏面溶融性
成形品裏面中央部を、以下の判定基準で溶融性を評価した。
5:均一で光沢がある。
4:一部未溶融のパウダーが有るが、光沢がある。
3:裏面全面に凹凸があり、光沢はない。表面に貫通するピンホールはない。
2:裏面全面にパウダーの形状の凹凸があり、かつ表面に貫通するピンホールはない。
1:パウダーが溶融せず、成形品にならない。
・色褪せ
表皮サンプルを直接目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:変色無し
△:変色あり
×:著しく変色
・グロス
光沢計(ポータブルグロスメーターGMX−202:ムラカミカラーリサーチラボラトリー製)を用いて、グロス測定を実施した。グロス値が高いほど、艶がある。
・引裂強度
表皮サンプルからJIS K 6301(1995年)の引裂試験片ダンベルB号形を3枚打ち抜いた。板厚は曲がっている場所の近傍5カ所の最小値をとった。これをオートグラフに取り付け、200mm/minの速さで引っ張り、試験片が破断にいたる最大強度を算出した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1より、TMXDI由来のカルボジイミドを添加した実施例1〜4は、比較例1(カルボジイミド無添加)、比較例2(TMXDI以外のカルボジイミド添加)と比べて、引裂強度保持率が高くなっていることがわかる。引裂強度保持率が高くなっていることから、耐加水分解安定性が向上している。
また、耐熱試験においては実施例1〜4は、比較例1、比較例2と比べ、色褪せ・グロスの変化が少ないことから、耐熱性が向上している。
また、実施例1〜4は、比較例1、比較例2と比較して、裏面溶融性が良く、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形される表皮は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)を主体とし、テトラメチルキシリレンジイソシアネートを重合してなるポリカルボジイミド(A)を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項2】
ポリカルボジイミド(A)の数平均分子量が、500〜30,000である請求項1に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項3】
ポリカルボジイミド(A)の末端基がアルコキシル基である請求項1又は2に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項4】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B)が、熱可塑性ポリウレタンエラストマー粉末(C)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなる樹脂成形品。
【請求項6】
自動車内装材である請求項5に記載の樹脂成形品。

【公開番号】特開2008−214415(P2008−214415A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51108(P2007−51108)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】