スラッシュ成形表皮材の製造方法及びスラッシュ成形型
【課題】成形された表皮材から不要部分を容易にかつ確実に取り除くようにする。
【解決手段】型外方に張り出す外側張出部17cと型内方に張り出す内側張出部17dとを型成形面19の製品形状部外周縁にそれぞれ形成する。断面三角形状の一対の第1突条部21を製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように外側張出部17cの型成形面19側に一体に突設するとともに、これら第1突条部21間に第1突条部21よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部23を第1突条部21と並列するように一体に突設する。断面三角形状の第3突条部25を製品形状部外周縁に沿って内側張出部17dの型成形面19側に一体に突設する。溶融樹脂層の冷却硬化過程で第1及び第2突条部21,23を先端を下に向けた姿勢に保持するとともに、第3突条部25を先端を上に向けた姿勢に保持する。
【解決手段】型外方に張り出す外側張出部17cと型内方に張り出す内側張出部17dとを型成形面19の製品形状部外周縁にそれぞれ形成する。断面三角形状の一対の第1突条部21を製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように外側張出部17cの型成形面19側に一体に突設するとともに、これら第1突条部21間に第1突条部21よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部23を第1突条部21と並列するように一体に突設する。断面三角形状の第3突条部25を製品形状部外周縁に沿って内側張出部17dの型成形面19側に一体に突設する。溶融樹脂層の冷却硬化過程で第1及び第2突条部21,23を先端を下に向けた姿勢に保持するとともに、第3突条部25を先端を上に向けた姿勢に保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラッシュ成形表皮材の製造方法及び該製造方法に用いるスラッシュ成形型の改良に関し、特に、成形されたスラッシュ表皮材から不要部分を取り除く対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、スラッシュ成形型は、型成形面側外周縁を原料収容ボックスの開口端縁に当接させ、原料収容ボックス側に設けられたクランプ治具で外周が挟持されて原料収容ボックスにセットされる。上記スラッシュ成形型の型成形面には、原料収容ボックスの上下方向への反転動作により原料収容ボックス内の粉体樹脂原料が付着し、この付着した粉体樹脂原料は型温により加熱溶融して溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層が冷却硬化することでスラッシュ成形表皮材が型成形面全体に成形される。成形された表皮材は脱型後、不要部分が取り除かれて製品となる。この不要部分を取り除き易くするために、断面三角形状の突条部を型成形面外周縁寄りの縦面部における製品形状部外周縁に沿って全周に亘って一体に突設することにより、成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形のノッチにより薄肉部を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−165112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図16に示すように、スラッシュ成形型aの型成形面b外周縁寄りの縦面部cに断面三角形状の突条部dを突設すると、該突条部dの先端が型内方に向かって突出しているため、スラッシュ成形型aの型成形面bに供給されて付着溶融した粉体樹脂原料からなる溶融樹脂層eが硬化する間に、上記突条部dの上方の溶融樹脂層eが重力の作用で突条部dの先端に向かって垂れて該突条部dの先端に溶融樹脂層eの厚肉部fが形成され、冷却硬化後に当該箇所から不要部分を取り除き難くなる。特に、例えば表皮材が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合には、取り除き難さが増大する。
【0004】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成形された表皮材から不要部分を容易にかつ確実に取り除くようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、この発明は、成形時における突条部とその向きを工夫したことを特徴とする。
【0006】
具体的には、請求項1,2に記載の発明は、スラッシュ成形表皮材の製造方法に関するものであり、そのうち、請求項1に記載の発明が講じた解決手段は、型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明が講じた解決手段は、型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側に断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に、上記第3突条部の先端を上にそれぞれ向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とする。
【0008】
請求項3,4に記載の発明は、加熱された型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材を成形するスラッシュ成形型に関するものであり、そのうち、請求項3に記載の発明が講じた解決手段は、上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、上記第1及び第2突条部は上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で先端を下に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明が講じた解決手段は、上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側には、断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設され、上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で上記第1及び第2突条部は先端を下に向けた姿勢に保持されるとともに、上記第3突条部は先端を上に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、スラッシュ成形型の型成形面に供給されて付着溶融した粉体樹脂原料からなる溶融樹脂層が硬化する間に、先端を下に向けた一対の第1突条部のところでは、溶融樹脂層は重力の作用で第1突条部の基端から傾斜面を伝って先端に向かって垂れるため、両第1突条部間の樹脂量が少なくなり、しかも、両第1突条部間の谷底における溶融樹脂層の厚みが第2突条部の突出量分だけ薄くなり、冷却硬化して成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形の大きなノッチにより一対の厚肉部が形成されるとともに、該厚肉部間にV形の小さなノッチにより薄肉部が形成される。したがって、例えば表皮材が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合であっても、表皮材を脱型した後に不要部分を手で引っ張ることで上記薄肉部を容易にかつ確実に引き千切ることができ、表皮材から不要部分を容易にかつ確実に取り除くことができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、スラッシュ成形型の型成形面に供給されて付着溶融した粉体樹脂原料からなる溶融樹脂層が硬化する間に、先端を下に向けた第1及び第2突条部のところでは、溶融樹脂層は重力の作用で第1突条部の基端から傾斜面を伝って先端に向かって垂れるため、両第1突条部間の樹脂量が少なくなり、しかも、両第1突条部間の谷底における溶融樹脂層の厚みが第2突条部の突出量分だけ薄くなり、冷却硬化して成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形の大きなノッチにより一対の厚肉部が形成されるとともに、該厚肉部間にV形の小さなノッチにより薄肉部が形成される。一方、先端を上に向けた第3突条部のところでは、溶融樹脂層はその表面張力と重力との作用で第3突条部の先端から傾斜面を伝って内側張出部側に向かって垂れるため、該第3突条部の先端に溶融樹脂層の薄肉部が形成され、冷却硬化して成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形のノッチにより薄肉部が形成される。したがって、例えば表皮材が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合であっても、表皮材を脱型した後に不要部分を手で引っ張ることで上記2種類の薄肉部を容易にかつ確実に引き千切ることができ、表皮材から不要部分を容易にかつ確実に取り除くことができる。このように薄肉部の形態を異ならせているのは、例えば成形品が表皮材と基材との間に発泡層が一体に成形された3層構造である場合において、基材の形状によっては、表皮材端末と基材端末との接触状態が異なることがあるからである。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、型成形面の製品形状部外周縁に外側張出部を形成し、該外側張出部に第1及び第2突条部を突設するだけで、スラッシュ成形型の型構造を大幅に改造することなく請求項1に記載の効果を奏することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、型成形面の製品形状部外周縁に外側張出部及び内側張出部を形成し、上記外側張出部に第1及び第2突条部を突設するとともに上記内側張出部に第3突条部を第1及び第2突条部と逆向きに突設するだけで、スラッシュ成形型の型構造を大幅に改造することなく請求項2に記載の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図13は車両用インストルメントパネル1を示す。該インストルメントパネル1は、図14及び図15に示すように、インストルメントパネル1の表面層を構成する樹脂製表皮材3と、インストルメントパネル1の裏面層を構成する樹脂製基材5とが断面略平行に配置されており、これら表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7が一体に成形されている。上記表皮材3は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、TPO(サーモプラスチックオレフィン)、TPU(サーモプラスチックウレタン)等の樹脂材でスラッシュ成形されたものである。上記基材5は、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の樹脂材で射出成形されたものである。上記ウレタン発泡層7は、独立発泡と連通発泡とが約半分ずつ分布する半硬質構造である。
【0016】
上記表皮材3の表皮材端末3aは、センタパネル9(図15仮想線参照)を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、図14に示すように、基材5側にL字状に折曲形成されたL字状折曲端部3bを有し、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、センタパネル9側を代表として図15に示すように、V字状に折曲形成されたV字状折曲端部3cを有している。一方、上記基材5の基材端末5aは、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、表皮材3側に開口する凹部5bを有し、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、表皮材端末3aを受ける受面部5cを有している。そして、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、上記表皮材端末3a表面が上記凹部5bの外側縦壁5d内面に内側から密着してL字状折曲端部3bがウレタン発泡層7内に埋設され、該ウレタン発泡層7端末の表皮材3と基材5との間を表皮材端末3aでシールしている。また、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、上記表皮材端末3aのV字状折曲端部3c先端が上記受面部5cに当接して両者間をシールしている。このV字状折曲端部3cは、装着されたセンタパネル9で外部から見えないように覆い隠されるようになっている。つまり、上記インストルメントパネル1は、表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7が一体に介在された3層構造であるが、アッパーパネル部の車体前方端縁部には、表皮材3及びウレタン発泡層7がなく基材5が露出している。また、ロアパネル部も表皮材3及びウレタン発泡層7がなく基材5が露出している。図13中、14はフロントデフロスターエア吹出口、15は表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7の原料である発泡ウレタン樹脂を注入するためのインストルメントパネル1裏側に設けられた樹脂注入口である。
【0017】
次に、上記表皮材3を成形するスラッシュ成形型の型構造を図1に基づいて説明する。
【0018】
スラッシュ成形型17は、表皮材3の大半を成形する平面部17aを備え、該平面部17a外周縁には、表皮材端末3aを成形する縦面部17bが若干の傾斜角度をもって全周に亘って一体に垂設されている。また、該縦面部17b下端周縁には、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域に対応して型外方に張り出す外側張出部17cが形成され、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応して型内方に張り出す内側張出部17dが形成されている。上記外側張出部17c及び内側張出部17dの張出端部には、スカート部17eが全周に亘って一体に延設され、該スカート部17e下端の外周縁にはフランジ部17fが全周に亘って一体に張り出し形成されている。そして、上記スラッシュ成形型17のフランジ部17fを除く内面を表皮材3を成形する型成形面19とし、そのうち、上記平面部17a及び縦面部17bに対応する領域を製品形状部としている。
【0019】
この発明の特徴として、上記外側張出部17cの型成形面19側には、断面三角形状の一対の第1突条部21が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部21間に該第1突条部21よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部23が第1突条部21と並列するように一体に突設されている。一方、上記内側張出部17dの型成形面19側中程には、断面三角形状の第3突条部25が製品形状部外周縁に沿って一体に突設されている。
【0020】
このように構成されたスラッシュ成形型17は、後述するが、加熱された型成形面19に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材3を成形するようになっている。そして、上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で上記第1及び第2突条部21,23は先端を下に向けた姿勢に保持されるとともに、上記第3突条部25は先端を上に向けた姿勢に保持されるようになっている。
【0021】
次に、上記スラッシュ成形型17を用いて表皮材3を成形する要領について説明する。以下に括弧書で付した番号は製造工程の順番を示す。
(1) 図2に示すように、スラッシュ成形型17を型成形面19が下になるようにして上下の加熱ヒータ27間に搬入し、例えば220℃に加熱する。
(2) 図3に示すように、上記加熱されたスラッシュ成形型17を型成形面19が下になるようにした状態で、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、TPO(サーモプラスチックオレフィン)、TPU(サーモプラスチックウレタン)等の粉体樹脂原料R1が収容された原料収容ボックス29開口端縁のフランジ部29aにスラッシュ成形型17のフランジ部17fを当接させてスラッシュ成形型17を原料収容ボックス29にセットし、該原料収容ボックス29側に設けられた図示しないクランプ治具で上記スラッシュ成形型17のフランジ部17fを挟持して、スラッシュ成形型17及び原料収容ボックス29の両フランジ部17f,29aの合わせ面をシール材31でシールする。
(3) 図4に示すように、回転軸33を図示しない回転装置によって回転させることにより、上記原料収容ボックス29を上下方向に反転させ、原料収容ボックス29内に収容された粉体樹脂原料R1を上記スラッシュ成形型17の型成形面19に供給して付着させる。図4において型成形面19に接近して沿う密集した点々は、粉体樹脂原料R1がスラッシュ成形型17の型成形面19に付着している状態を示す。型成形面19に付着した粉体樹脂原料R1が型温により加熱溶融して溶融樹脂層R2(図5参照)が形成され始める。その後、図5に示すように、原料収容ボックス29を上記とは逆に上下方向に反転させて元の姿勢に戻し、余剰の粉体樹脂原料R1を原料収容ボックス29内に落下させて回収する。
(4) スラッシュ成形型17を原料収容ボックス29から取り外し、図6に示すように、型成形面19が下になるようにして上下の加熱ヒータ27間に再度搬入して再加熱し、型成形面19に付着した未溶融の粉体樹脂原料R1を完全に溶融させる。この状態で、第1及び第2突条部21,23は先端を下に向けているとともに、第3突条部25は先端を上に向けている。図7(a)はスラッシュ成形型17を原料収容ボックス29から取り外した直後のスラッシュ成形型17の第1及び第2突条部21,23周りを拡大して示し、図7(b)は同じくスラッシュ成形型17を原料収容ボックス29から取り外した直後のスラッシュ成形型17の第3突条部25周りを拡大して示す。この段階では溶融樹脂層R2の厚みは型成形面19全体に均等に形成されているが、時間が経つにつれて、図8(a)及び(b)に示すように変化する。つまり、先端を下に向けた第1及び第2突条部21,23のところでは、溶融樹脂層R2は、図8(a)に示すように、重力の作用で第1突条部21の基端から傾斜面を伝って先端に向かって垂れるため、両第1突条部21間の樹脂量が少なくなり、しかも、両第1突条部21間の谷底における溶融樹脂層R2の厚みが第2突条部23の突出量分だけ薄くなり、一対の第1突条部21先端に厚肉部R2−1が形成されるとともに、該厚肉部R2−1間の第2突条部23先端に薄肉部R2−2が形成される。一方、先端を上に向けた第3突条部25のところでは、溶融樹脂層R2は、図8(b)に示すように、表面張力と重力との作用で第3突条部25の先端から傾斜面を伝って内側張出部17dに向かって垂れるため、該第3突条部25の先端に溶融樹脂層R2の薄肉部R2−3が形成される。
(5) スラッシュ成形型17をエアの吹付けにより冷却し、溶融樹脂層R2を硬化させる。この際、スラッシュ成形型17は、第1及び第2突条部21,23の先端を下に向けているとともに、第3突条部25の先端を上に向けている。これにより、前工程で起こっている溶融樹脂層R2の垂れ現象の進行が停止し、溶融樹脂層R2が垂れた状態でスラッシュ成形表皮材3が成形される(図9参照)。成形された表皮材3には、第1及び第2突条部21,23のところでは、型成形面19の製品形状部に対応する製品部分S1と不要部分S2との境目にV形の大きな一対のノッチS3−1により一対の厚肉部S4−1が形成されるとともに、該一対の厚肉部S4−1間にV形の小さなノッチS3−2により薄肉部S4−2が形成される。一方、第3突条部25のところでは、型成形面19の製品形状部に対応する製品部分S1と不要部分S2との境目にV形のノッチS3−3により薄肉部S4−3が形成されている。
(6) 図9に示すように、スラッシュ成形型17の型成形面19を上に向けた状態で表皮材3の不要部分S2を手で引っ張って型成形面19から剥がし、該表皮材3をスラッシュ成形型17から脱型する。この段階では、表皮材3の薄肉部S4−2,S4−3は引き千切れず、製品部分S1と不要部分S2とは繋がっているが、その後、上記不要部分S2を引っ張って薄肉部S4−2,S4−3を引き千切り、製品部分S1から取り除く(図10参照)。製品部分S1端末(表皮材端末3a)は、センタパネル9(図15仮想線参照)を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、図14に示すように、基材5側にL字状に折曲形成されたL字状折曲端部3bを有し、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、図15に示すように、V字状に折曲形成されたV字状折曲端部3cを有している。
【0022】
このように、この実施形態では、溶融樹脂層R2が硬化する間、先端を下に向けた一対の第1突条部21のところでは、溶融樹脂層R2の重力の作用で表皮材3の製品部分S1と不要部分S2との境目に第2突条部23に対応して薄肉部S4−2を形成できる。一方、先端を上に向けた第3突条部25のところでは、溶融樹脂層R2の表面張力と重力との作用で表皮材3の製品部分S1と不要部分S2との境目に薄肉部S4−3を形成できる。
【0023】
したがって、例えば表皮材3が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合であっても、表皮材3を脱型した後に不要部分S2を手で引っ張ることで、基材5の形状によって表皮材端末3aと基材端末5aとの接触状態の違いに起因して形成した上記2種類の薄肉部S4−2,S4−3を容易にかつ確実に引き千切ることができ、表皮材3から不要部分S2を容易にかつ確実に取り除くことができる。
【0024】
さらに、上記のスラッシュ成形型17では、型成形面19の製品形状部外周縁に外側張出部17c及び内側張出部17dを形成し、上記外側張出部17cに第1及び第2突条部21,23を突設するとともに上記内側張出部17dに第3突条部25を第1及び第2突条部21,23と逆方向に突設するだけで、スラッシュ成形型17の型構造を大幅に改造することなく上述の如き効果を奏することができる。
【0025】
このようにして成形された表皮材3は基材5と共に、図11及び図12に示すような成形型101に搬入されてインストルメントパネル1の製造に供せられる。
【0026】
上記成形型101は上型103と下型105とを備え、上記上型103には注入ヘッド107が設けられているとともに、上記下型105には、スライドコア109が流体圧シリンダ111の伸縮作動によりスライド可能に設けられている。図11及び図12中、103aは上記注入ヘッド107が挿着される挿着孔、113は表皮材3と基材5との間に形成されたキャビティである。
【0027】
インストルメントパネル1を製造する要領は以下の如くである。
【0028】
まず、図11に示すように、上型103を上昇させて成形型101を型開きした状態で、流体圧シリンダ111を伸長作動させてスライドコア109を前進させた後、表皮材3を下型105にセットする。これにより、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応する表皮材端末3aがスライドコア109先端に当接し、当該表皮材端末3aをスライドコア109先端により外方へ倒れないように保持するとともに、表皮材3を下型105に位置決めする。この状態で、真空吸引孔(図示せず)からの負圧により表皮材3を下型105に密着させる。一方、上型103に基材5をセットする。その際、基材保持装置(図示せず)で基材5が上型103から落下しないように保持する。この状態で、基材5の樹脂注入口15が注入ヘッド107に連通している。
【0029】
次いで、図12に示すように、流体圧シリンダ111を収縮作動させてスライドコア109を後退させるとともに、上型103を斜め上方から下降させて成形型101を型閉めする。これにより、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応する箇所では、表皮材端末3aの表側が基材5の外側縦壁5dに側方から当接し、L字状折曲端部3bが表皮材3と基材5との間に突出している(図14参照)。また、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域に対応する箇所では、表皮材端末3aのV字状折曲端部3cが基材5の受面部5cに当接している(図15参照)。
【0030】
その後、上記型閉め状態で、発泡樹脂原料(図示せず)を注入ヘッド107から基材5の樹脂注入口15を経て表皮材3と基材5との間のキャビティ113に射出して発泡硬化させ、表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7が一体に介在したインストルメントパネル1が得られる(図14及び図15参照)。
【0031】
しかる後、基材保持装置による基材5の保持状態を解除した後、上型103を上昇させて成形型101を型開きし、上記成形されたインストルメントパネル1を下型105から脱型する。
【0032】
なお、上記の実施形態では、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応する表皮材端末3aにL字状折曲端部3bを形成するとともに、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域に対応する表皮材端末3aにV字状折曲端部3cを形成した表皮材3を成形する場合(請求項2,4に相当)を示したが、表皮材端末3aにV字状折曲端部3cだけを形成した表皮材3を成形する場合(請求項1,3に相当)であってもよい。この場合には、型成形面19の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部17cだけを形成し、該外側張出部17cの型成形面19側に断面三角形状の一対の第1突条部21が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部21間に該第1突条部21よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部23が第1突条部21と並列するように一体に突設されたスラッシュ成形型17を用いる。そして、このスラッシュ成形型17を加熱した後、スラッシュ成形型17の型成形面19に粉体樹脂原料R1を供給して付着溶融させて溶融樹脂層R2を形成し、その後、上記第1及び第2突条部21,23の先端を下に向けた状態で、上記溶融樹脂層R2を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材3を成形した後、該表皮材3を脱型すればよい。
【0033】
なお、表皮材3が適用される成形品は、インストルメントパネル1に限らず、表皮材3を有する他の樹脂製成形品にも適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、車両用インストルメントパネル等の樹脂製成形品の表面層を構成するスラッシュ成形表皮材の製造方法及び該製造方法に用いるスラッシュ成形型について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係るスラッシュ成形型の断面図である。
【図2】実施形態におけるスラッシュ成形型の加熱工程図である。
【図3】実施形態において、スラッシュ成形型を原料収容ボックスにセットした状態を示す工程図である。
【図4】実施形態において、図3の状態から原料収容ボックスを反転させてスラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を付着溶融させている状態を示す工程図である。
【図5】実施形態において、図4の状態から原料収容ボックスを元の姿勢に戻して粉体樹脂原料を原料収容ボックスに回収しスラッシュ成形型の型成形面に表皮材となる溶融樹脂層が形成された状態を示す工程図である。
【図6】実施形態におけるスラッシュ成形型の再加熱工程図である。
【図7】(a)はスラッシュ成形型を原料収容ボックスから取り外した直後の図6のA部拡大相当図、(b)はスラッシュ成形型を原料収容ボックスから取り外した直後の図6のB部拡大相当図である。
【図8】実施形態において、突条部における溶融樹脂層の層厚が変化した状態を示し、(a)は図7(a)相当図、(b)は図7(b)相当図である。
【図9】実施形態において、成形された表皮材をスラッシュ成形型から脱型している状態を示す工程図である。
【図10】不要部分を取り除いた表皮材の断面図である。
【図11】表皮材を下型にセットするとともに基材を上型にセットした型開き状態の成形型の断面図である。
【図12】型閉め状態を示す成形型の断面図である。
【図13】インストルメントパネルの斜視図である。
【図14】図13のXIV −XIV 線における断面図である。
【図15】図13のXV−XV線における断面図である。
【図16】従来例の図8相当図である。
【符号の説明】
【0036】
3 表皮材
17 スラッシュ成形型
17a 平面部(製品形状部)
17b 縦面部(製品形状部)
17c 外側張出部
17d 内側張出部
19 型成形面
21 第1突条部
23 第2突条部
25 第3突条部
R1 粉体樹脂原料
R2 溶融樹脂層
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラッシュ成形表皮材の製造方法及び該製造方法に用いるスラッシュ成形型の改良に関し、特に、成形されたスラッシュ表皮材から不要部分を取り除く対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、スラッシュ成形型は、型成形面側外周縁を原料収容ボックスの開口端縁に当接させ、原料収容ボックス側に設けられたクランプ治具で外周が挟持されて原料収容ボックスにセットされる。上記スラッシュ成形型の型成形面には、原料収容ボックスの上下方向への反転動作により原料収容ボックス内の粉体樹脂原料が付着し、この付着した粉体樹脂原料は型温により加熱溶融して溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層が冷却硬化することでスラッシュ成形表皮材が型成形面全体に成形される。成形された表皮材は脱型後、不要部分が取り除かれて製品となる。この不要部分を取り除き易くするために、断面三角形状の突条部を型成形面外周縁寄りの縦面部における製品形状部外周縁に沿って全周に亘って一体に突設することにより、成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形のノッチにより薄肉部を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−165112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図16に示すように、スラッシュ成形型aの型成形面b外周縁寄りの縦面部cに断面三角形状の突条部dを突設すると、該突条部dの先端が型内方に向かって突出しているため、スラッシュ成形型aの型成形面bに供給されて付着溶融した粉体樹脂原料からなる溶融樹脂層eが硬化する間に、上記突条部dの上方の溶融樹脂層eが重力の作用で突条部dの先端に向かって垂れて該突条部dの先端に溶融樹脂層eの厚肉部fが形成され、冷却硬化後に当該箇所から不要部分を取り除き難くなる。特に、例えば表皮材が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合には、取り除き難さが増大する。
【0004】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成形された表皮材から不要部分を容易にかつ確実に取り除くようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、この発明は、成形時における突条部とその向きを工夫したことを特徴とする。
【0006】
具体的には、請求項1,2に記載の発明は、スラッシュ成形表皮材の製造方法に関するものであり、そのうち、請求項1に記載の発明が講じた解決手段は、型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明が講じた解決手段は、型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側に断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に、上記第3突条部の先端を上にそれぞれ向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とする。
【0008】
請求項3,4に記載の発明は、加熱された型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材を成形するスラッシュ成形型に関するものであり、そのうち、請求項3に記載の発明が講じた解決手段は、上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、上記第1及び第2突条部は上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で先端を下に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明が講じた解決手段は、上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側には、断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設され、上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で上記第1及び第2突条部は先端を下に向けた姿勢に保持されるとともに、上記第3突条部は先端を上に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、スラッシュ成形型の型成形面に供給されて付着溶融した粉体樹脂原料からなる溶融樹脂層が硬化する間に、先端を下に向けた一対の第1突条部のところでは、溶融樹脂層は重力の作用で第1突条部の基端から傾斜面を伝って先端に向かって垂れるため、両第1突条部間の樹脂量が少なくなり、しかも、両第1突条部間の谷底における溶融樹脂層の厚みが第2突条部の突出量分だけ薄くなり、冷却硬化して成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形の大きなノッチにより一対の厚肉部が形成されるとともに、該厚肉部間にV形の小さなノッチにより薄肉部が形成される。したがって、例えば表皮材が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合であっても、表皮材を脱型した後に不要部分を手で引っ張ることで上記薄肉部を容易にかつ確実に引き千切ることができ、表皮材から不要部分を容易にかつ確実に取り除くことができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、スラッシュ成形型の型成形面に供給されて付着溶融した粉体樹脂原料からなる溶融樹脂層が硬化する間に、先端を下に向けた第1及び第2突条部のところでは、溶融樹脂層は重力の作用で第1突条部の基端から傾斜面を伝って先端に向かって垂れるため、両第1突条部間の樹脂量が少なくなり、しかも、両第1突条部間の谷底における溶融樹脂層の厚みが第2突条部の突出量分だけ薄くなり、冷却硬化して成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形の大きなノッチにより一対の厚肉部が形成されるとともに、該厚肉部間にV形の小さなノッチにより薄肉部が形成される。一方、先端を上に向けた第3突条部のところでは、溶融樹脂層はその表面張力と重力との作用で第3突条部の先端から傾斜面を伝って内側張出部側に向かって垂れるため、該第3突条部の先端に溶融樹脂層の薄肉部が形成され、冷却硬化して成形された表皮材の製品部分と不要部分との境目にV形のノッチにより薄肉部が形成される。したがって、例えば表皮材が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合であっても、表皮材を脱型した後に不要部分を手で引っ張ることで上記2種類の薄肉部を容易にかつ確実に引き千切ることができ、表皮材から不要部分を容易にかつ確実に取り除くことができる。このように薄肉部の形態を異ならせているのは、例えば成形品が表皮材と基材との間に発泡層が一体に成形された3層構造である場合において、基材の形状によっては、表皮材端末と基材端末との接触状態が異なることがあるからである。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、型成形面の製品形状部外周縁に外側張出部を形成し、該外側張出部に第1及び第2突条部を突設するだけで、スラッシュ成形型の型構造を大幅に改造することなく請求項1に記載の効果を奏することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、型成形面の製品形状部外周縁に外側張出部及び内側張出部を形成し、上記外側張出部に第1及び第2突条部を突設するとともに上記内側張出部に第3突条部を第1及び第2突条部と逆向きに突設するだけで、スラッシュ成形型の型構造を大幅に改造することなく請求項2に記載の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図13は車両用インストルメントパネル1を示す。該インストルメントパネル1は、図14及び図15に示すように、インストルメントパネル1の表面層を構成する樹脂製表皮材3と、インストルメントパネル1の裏面層を構成する樹脂製基材5とが断面略平行に配置されており、これら表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7が一体に成形されている。上記表皮材3は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、TPO(サーモプラスチックオレフィン)、TPU(サーモプラスチックウレタン)等の樹脂材でスラッシュ成形されたものである。上記基材5は、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の樹脂材で射出成形されたものである。上記ウレタン発泡層7は、独立発泡と連通発泡とが約半分ずつ分布する半硬質構造である。
【0016】
上記表皮材3の表皮材端末3aは、センタパネル9(図15仮想線参照)を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、図14に示すように、基材5側にL字状に折曲形成されたL字状折曲端部3bを有し、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、センタパネル9側を代表として図15に示すように、V字状に折曲形成されたV字状折曲端部3cを有している。一方、上記基材5の基材端末5aは、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、表皮材3側に開口する凹部5bを有し、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、表皮材端末3aを受ける受面部5cを有している。そして、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、上記表皮材端末3a表面が上記凹部5bの外側縦壁5d内面に内側から密着してL字状折曲端部3bがウレタン発泡層7内に埋設され、該ウレタン発泡層7端末の表皮材3と基材5との間を表皮材端末3aでシールしている。また、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、上記表皮材端末3aのV字状折曲端部3c先端が上記受面部5cに当接して両者間をシールしている。このV字状折曲端部3cは、装着されたセンタパネル9で外部から見えないように覆い隠されるようになっている。つまり、上記インストルメントパネル1は、表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7が一体に介在された3層構造であるが、アッパーパネル部の車体前方端縁部には、表皮材3及びウレタン発泡層7がなく基材5が露出している。また、ロアパネル部も表皮材3及びウレタン発泡層7がなく基材5が露出している。図13中、14はフロントデフロスターエア吹出口、15は表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7の原料である発泡ウレタン樹脂を注入するためのインストルメントパネル1裏側に設けられた樹脂注入口である。
【0017】
次に、上記表皮材3を成形するスラッシュ成形型の型構造を図1に基づいて説明する。
【0018】
スラッシュ成形型17は、表皮材3の大半を成形する平面部17aを備え、該平面部17a外周縁には、表皮材端末3aを成形する縦面部17bが若干の傾斜角度をもって全周に亘って一体に垂設されている。また、該縦面部17b下端周縁には、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域に対応して型外方に張り出す外側張出部17cが形成され、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応して型内方に張り出す内側張出部17dが形成されている。上記外側張出部17c及び内側張出部17dの張出端部には、スカート部17eが全周に亘って一体に延設され、該スカート部17e下端の外周縁にはフランジ部17fが全周に亘って一体に張り出し形成されている。そして、上記スラッシュ成形型17のフランジ部17fを除く内面を表皮材3を成形する型成形面19とし、そのうち、上記平面部17a及び縦面部17bに対応する領域を製品形状部としている。
【0019】
この発明の特徴として、上記外側張出部17cの型成形面19側には、断面三角形状の一対の第1突条部21が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部21間に該第1突条部21よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部23が第1突条部21と並列するように一体に突設されている。一方、上記内側張出部17dの型成形面19側中程には、断面三角形状の第3突条部25が製品形状部外周縁に沿って一体に突設されている。
【0020】
このように構成されたスラッシュ成形型17は、後述するが、加熱された型成形面19に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材3を成形するようになっている。そして、上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で上記第1及び第2突条部21,23は先端を下に向けた姿勢に保持されるとともに、上記第3突条部25は先端を上に向けた姿勢に保持されるようになっている。
【0021】
次に、上記スラッシュ成形型17を用いて表皮材3を成形する要領について説明する。以下に括弧書で付した番号は製造工程の順番を示す。
(1) 図2に示すように、スラッシュ成形型17を型成形面19が下になるようにして上下の加熱ヒータ27間に搬入し、例えば220℃に加熱する。
(2) 図3に示すように、上記加熱されたスラッシュ成形型17を型成形面19が下になるようにした状態で、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、TPO(サーモプラスチックオレフィン)、TPU(サーモプラスチックウレタン)等の粉体樹脂原料R1が収容された原料収容ボックス29開口端縁のフランジ部29aにスラッシュ成形型17のフランジ部17fを当接させてスラッシュ成形型17を原料収容ボックス29にセットし、該原料収容ボックス29側に設けられた図示しないクランプ治具で上記スラッシュ成形型17のフランジ部17fを挟持して、スラッシュ成形型17及び原料収容ボックス29の両フランジ部17f,29aの合わせ面をシール材31でシールする。
(3) 図4に示すように、回転軸33を図示しない回転装置によって回転させることにより、上記原料収容ボックス29を上下方向に反転させ、原料収容ボックス29内に収容された粉体樹脂原料R1を上記スラッシュ成形型17の型成形面19に供給して付着させる。図4において型成形面19に接近して沿う密集した点々は、粉体樹脂原料R1がスラッシュ成形型17の型成形面19に付着している状態を示す。型成形面19に付着した粉体樹脂原料R1が型温により加熱溶融して溶融樹脂層R2(図5参照)が形成され始める。その後、図5に示すように、原料収容ボックス29を上記とは逆に上下方向に反転させて元の姿勢に戻し、余剰の粉体樹脂原料R1を原料収容ボックス29内に落下させて回収する。
(4) スラッシュ成形型17を原料収容ボックス29から取り外し、図6に示すように、型成形面19が下になるようにして上下の加熱ヒータ27間に再度搬入して再加熱し、型成形面19に付着した未溶融の粉体樹脂原料R1を完全に溶融させる。この状態で、第1及び第2突条部21,23は先端を下に向けているとともに、第3突条部25は先端を上に向けている。図7(a)はスラッシュ成形型17を原料収容ボックス29から取り外した直後のスラッシュ成形型17の第1及び第2突条部21,23周りを拡大して示し、図7(b)は同じくスラッシュ成形型17を原料収容ボックス29から取り外した直後のスラッシュ成形型17の第3突条部25周りを拡大して示す。この段階では溶融樹脂層R2の厚みは型成形面19全体に均等に形成されているが、時間が経つにつれて、図8(a)及び(b)に示すように変化する。つまり、先端を下に向けた第1及び第2突条部21,23のところでは、溶融樹脂層R2は、図8(a)に示すように、重力の作用で第1突条部21の基端から傾斜面を伝って先端に向かって垂れるため、両第1突条部21間の樹脂量が少なくなり、しかも、両第1突条部21間の谷底における溶融樹脂層R2の厚みが第2突条部23の突出量分だけ薄くなり、一対の第1突条部21先端に厚肉部R2−1が形成されるとともに、該厚肉部R2−1間の第2突条部23先端に薄肉部R2−2が形成される。一方、先端を上に向けた第3突条部25のところでは、溶融樹脂層R2は、図8(b)に示すように、表面張力と重力との作用で第3突条部25の先端から傾斜面を伝って内側張出部17dに向かって垂れるため、該第3突条部25の先端に溶融樹脂層R2の薄肉部R2−3が形成される。
(5) スラッシュ成形型17をエアの吹付けにより冷却し、溶融樹脂層R2を硬化させる。この際、スラッシュ成形型17は、第1及び第2突条部21,23の先端を下に向けているとともに、第3突条部25の先端を上に向けている。これにより、前工程で起こっている溶融樹脂層R2の垂れ現象の進行が停止し、溶融樹脂層R2が垂れた状態でスラッシュ成形表皮材3が成形される(図9参照)。成形された表皮材3には、第1及び第2突条部21,23のところでは、型成形面19の製品形状部に対応する製品部分S1と不要部分S2との境目にV形の大きな一対のノッチS3−1により一対の厚肉部S4−1が形成されるとともに、該一対の厚肉部S4−1間にV形の小さなノッチS3−2により薄肉部S4−2が形成される。一方、第3突条部25のところでは、型成形面19の製品形状部に対応する製品部分S1と不要部分S2との境目にV形のノッチS3−3により薄肉部S4−3が形成されている。
(6) 図9に示すように、スラッシュ成形型17の型成形面19を上に向けた状態で表皮材3の不要部分S2を手で引っ張って型成形面19から剥がし、該表皮材3をスラッシュ成形型17から脱型する。この段階では、表皮材3の薄肉部S4−2,S4−3は引き千切れず、製品部分S1と不要部分S2とは繋がっているが、その後、上記不要部分S2を引っ張って薄肉部S4−2,S4−3を引き千切り、製品部分S1から取り除く(図10参照)。製品部分S1端末(表皮材端末3a)は、センタパネル9(図15仮想線参照)を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域においては、図14に示すように、基材5側にL字状に折曲形成されたL字状折曲端部3bを有し、上記センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域においては、図15に示すように、V字状に折曲形成されたV字状折曲端部3cを有している。
【0022】
このように、この実施形態では、溶融樹脂層R2が硬化する間、先端を下に向けた一対の第1突条部21のところでは、溶融樹脂層R2の重力の作用で表皮材3の製品部分S1と不要部分S2との境目に第2突条部23に対応して薄肉部S4−2を形成できる。一方、先端を上に向けた第3突条部25のところでは、溶融樹脂層R2の表面張力と重力との作用で表皮材3の製品部分S1と不要部分S2との境目に薄肉部S4−3を形成できる。
【0023】
したがって、例えば表皮材3が伸び率の高い材料で成形されている場合等のように千切り難い材質である場合であっても、表皮材3を脱型した後に不要部分S2を手で引っ張ることで、基材5の形状によって表皮材端末3aと基材端末5aとの接触状態の違いに起因して形成した上記2種類の薄肉部S4−2,S4−3を容易にかつ確実に引き千切ることができ、表皮材3から不要部分S2を容易にかつ確実に取り除くことができる。
【0024】
さらに、上記のスラッシュ成形型17では、型成形面19の製品形状部外周縁に外側張出部17c及び内側張出部17dを形成し、上記外側張出部17cに第1及び第2突条部21,23を突設するとともに上記内側張出部17dに第3突条部25を第1及び第2突条部21,23と逆方向に突設するだけで、スラッシュ成形型17の型構造を大幅に改造することなく上述の如き効果を奏することができる。
【0025】
このようにして成形された表皮材3は基材5と共に、図11及び図12に示すような成形型101に搬入されてインストルメントパネル1の製造に供せられる。
【0026】
上記成形型101は上型103と下型105とを備え、上記上型103には注入ヘッド107が設けられているとともに、上記下型105には、スライドコア109が流体圧シリンダ111の伸縮作動によりスライド可能に設けられている。図11及び図12中、103aは上記注入ヘッド107が挿着される挿着孔、113は表皮材3と基材5との間に形成されたキャビティである。
【0027】
インストルメントパネル1を製造する要領は以下の如くである。
【0028】
まず、図11に示すように、上型103を上昇させて成形型101を型開きした状態で、流体圧シリンダ111を伸長作動させてスライドコア109を前進させた後、表皮材3を下型105にセットする。これにより、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応する表皮材端末3aがスライドコア109先端に当接し、当該表皮材端末3aをスライドコア109先端により外方へ倒れないように保持するとともに、表皮材3を下型105に位置決めする。この状態で、真空吸引孔(図示せず)からの負圧により表皮材3を下型105に密着させる。一方、上型103に基材5をセットする。その際、基材保持装置(図示せず)で基材5が上型103から落下しないように保持する。この状態で、基材5の樹脂注入口15が注入ヘッド107に連通している。
【0029】
次いで、図12に示すように、流体圧シリンダ111を収縮作動させてスライドコア109を後退させるとともに、上型103を斜め上方から下降させて成形型101を型閉めする。これにより、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応する箇所では、表皮材端末3aの表側が基材5の外側縦壁5dに側方から当接し、L字状折曲端部3bが表皮材3と基材5との間に突出している(図14参照)。また、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域に対応する箇所では、表皮材端末3aのV字状折曲端部3cが基材5の受面部5cに当接している(図15参照)。
【0030】
その後、上記型閉め状態で、発泡樹脂原料(図示せず)を注入ヘッド107から基材5の樹脂注入口15を経て表皮材3と基材5との間のキャビティ113に射出して発泡硬化させ、表皮材3と基材5との間にウレタン発泡層7が一体に介在したインストルメントパネル1が得られる(図14及び図15参照)。
【0031】
しかる後、基材保持装置による基材5の保持状態を解除した後、上型103を上昇させて成形型101を型開きし、上記成形されたインストルメントパネル1を下型105から脱型する。
【0032】
なお、上記の実施形態では、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分を除く外周領域に対応する表皮材端末3aにL字状折曲端部3bを形成するとともに、センタパネル9を装着する車幅方向略中央部分の外周領域、サイドデフロスタエア吹出口11の開口周縁領域、メーターフード12の成形領域及びエアバッグ装置装着用開口部13の開口周縁領域に対応する表皮材端末3aにV字状折曲端部3cを形成した表皮材3を成形する場合(請求項2,4に相当)を示したが、表皮材端末3aにV字状折曲端部3cだけを形成した表皮材3を成形する場合(請求項1,3に相当)であってもよい。この場合には、型成形面19の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部17cだけを形成し、該外側張出部17cの型成形面19側に断面三角形状の一対の第1突条部21が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部21間に該第1突条部21よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部23が第1突条部21と並列するように一体に突設されたスラッシュ成形型17を用いる。そして、このスラッシュ成形型17を加熱した後、スラッシュ成形型17の型成形面19に粉体樹脂原料R1を供給して付着溶融させて溶融樹脂層R2を形成し、その後、上記第1及び第2突条部21,23の先端を下に向けた状態で、上記溶融樹脂層R2を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材3を成形した後、該表皮材3を脱型すればよい。
【0033】
なお、表皮材3が適用される成形品は、インストルメントパネル1に限らず、表皮材3を有する他の樹脂製成形品にも適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、車両用インストルメントパネル等の樹脂製成形品の表面層を構成するスラッシュ成形表皮材の製造方法及び該製造方法に用いるスラッシュ成形型について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係るスラッシュ成形型の断面図である。
【図2】実施形態におけるスラッシュ成形型の加熱工程図である。
【図3】実施形態において、スラッシュ成形型を原料収容ボックスにセットした状態を示す工程図である。
【図4】実施形態において、図3の状態から原料収容ボックスを反転させてスラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を付着溶融させている状態を示す工程図である。
【図5】実施形態において、図4の状態から原料収容ボックスを元の姿勢に戻して粉体樹脂原料を原料収容ボックスに回収しスラッシュ成形型の型成形面に表皮材となる溶融樹脂層が形成された状態を示す工程図である。
【図6】実施形態におけるスラッシュ成形型の再加熱工程図である。
【図7】(a)はスラッシュ成形型を原料収容ボックスから取り外した直後の図6のA部拡大相当図、(b)はスラッシュ成形型を原料収容ボックスから取り外した直後の図6のB部拡大相当図である。
【図8】実施形態において、突条部における溶融樹脂層の層厚が変化した状態を示し、(a)は図7(a)相当図、(b)は図7(b)相当図である。
【図9】実施形態において、成形された表皮材をスラッシュ成形型から脱型している状態を示す工程図である。
【図10】不要部分を取り除いた表皮材の断面図である。
【図11】表皮材を下型にセットするとともに基材を上型にセットした型開き状態の成形型の断面図である。
【図12】型閉め状態を示す成形型の断面図である。
【図13】インストルメントパネルの斜視図である。
【図14】図13のXIV −XIV 線における断面図である。
【図15】図13のXV−XV線における断面図である。
【図16】従来例の図8相当図である。
【符号の説明】
【0036】
3 表皮材
17 スラッシュ成形型
17a 平面部(製品形状部)
17b 縦面部(製品形状部)
17c 外側張出部
17d 内側張出部
19 型成形面
21 第1突条部
23 第2突条部
25 第3突条部
R1 粉体樹脂原料
R2 溶融樹脂層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、
次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、
その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とするスラッシュ成形表皮材の製造方法。
【請求項2】
型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側に断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、
次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、
その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に、上記第3突条部の先端を上にそれぞれ向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とするスラッシュ成形表皮材の製造方法。
【請求項3】
加熱された型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材を成形するスラッシュ成形型であって、
上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、上記第1及び第2突条部は上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で先端を下に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とするスラッシュ成形型。
【請求項4】
加熱された型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材を成形するスラッシュ成形型であって、
上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側には、断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設され、上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で上記第1及び第2突条部は先端を下に向けた姿勢に保持されるとともに、上記第3突条部は先端を上に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とするスラッシュ成形型。
【請求項1】
型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、
次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、
その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とするスラッシュ成形表皮材の製造方法。
【請求項2】
型成形面の製品形状部外周縁に型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側に断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側に断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設されたスラッシュ成形型を加熱し、
次いで、上記スラッシュ成形型の型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、
その後、上記第1及び第2突条部の先端を下に、上記第3突条部の先端を上にそれぞれ向けた状態で、上記溶融樹脂層を冷却硬化してスラッシュ成形表皮材を成形した後、該表皮材を脱型することを特徴とするスラッシュ成形表皮材の製造方法。
【請求項3】
加熱された型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材を成形するスラッシュ成形型であって、
上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部が形成され、該外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、上記第1及び第2突条部は上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で先端を下に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とするスラッシュ成形型。
【請求項4】
加熱された型成形面に粉体樹脂原料を供給して付着溶融させて溶融樹脂層を形成し、該溶融樹脂層を冷却硬化することでスラッシュ表皮材を成形するスラッシュ成形型であって、
上記型成形面の製品形状部外周縁には、型外方に張り出す外側張出部と型内方に張り出す内側張出部とがそれぞれ形成され、上記外側張出部の型成形面側には、断面三角形状の一対の第1突条部が製品形状部外周縁に沿って互いに近接状態で並列するように一体に突設されるとともに、これら第1突条部間に該第1突条部よりも突出量が小さい断面三角形状の第2突条部が第1突条部と並列するように一体に突設され、一方、上記内側張出部の型成形面側には、断面三角形状の第3突条部が製品形状部外周縁に沿って一体に突設され、上記溶融樹脂層の冷却硬化過程で上記第1及び第2突条部は先端を下に向けた姿勢に保持されるとともに、上記第3突条部は先端を上に向けた姿勢に保持されるようになっていることを特徴とするスラッシュ成形型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−73967(P2008−73967A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256265(P2006−256265)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
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