説明

スロットルバルブの制御装置

【課題】吸気温度や機関温度が吸気の流路面積に及ぼす影響を考慮した上で、吸気の流路面積を機関運転状態に適した面積とすることができるスロットルバルブの制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置50は、吸気温センサ51によって検出される吸気温度が低い、あるいは水温センサ52によって検出される冷却水温が高いほど、スロットルバルブ20の目標開度が小さくなるように補正して、スロットルバルブ20の開度が目標開度となるようにスロットルモータ40を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のスロットルバルブの開度を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関においては、スロットルバルブの開度を機関運転状態に基づいて制御することにより、機関運転状態に適した量の空気が同機関の燃焼室に供給されるようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の制御装置は、運転者によるアクセルペダルの操作量等に基づいて機関の目標出力トルクを算出し、この目標出力トルクに基づいてスロットルバルブの開度を制御するようにしている。
【特許文献1】特開平8−218919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スロットルバルブや吸気通路を構成する吸気管は、吸気通路を流れる空気の温度や機関温度に応じてその体積が変化するため、吸気管の内周面とスロットルバルブの外周面との間に形成される吸気の流路面積もこれらの温度による影響を受ける。しかしながら、特許文献1に示す従来の制御装置は、吸気温度や機関温度が吸気の流路面積に及ぼす影響については何ら考慮していない。そのため、従来の制御装置では、スロットルバルブの開度を運転状態に基づいて制御している場合であっても、吸気温度や機関温度によっては吸気の流路面積が運転状態に適した面積とならない場合があり、燃焼室に供給される空気の量が機関運転状態に適した量とならないといった事態が生じうる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸気温度や機関温度が吸気の流路面積に及ぼす影響を考慮した上で、吸気の流路面積を機関運転状態に適した面積とすることができるスロットルバルブの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、スロットルバルブの制御装置であって、内燃機関の吸気通路に設けられるスロットルバルブと、前記スロットルバルブを開閉するアクチュエータと、前記スロットルバルブの目標開度を前記機関の運転状態に基づいて設定する設定手段と、前記スロットルバルブの開度が前記目標開度となるように前記アクチュエータを駆動制御する駆動制御手段と、前記吸気通路を流れる吸気の温度、あるいは前記機関の温度を検出する温度検出手段と、前記検出される吸気の温度が低いほど、あるいは前記検出される機関の温度が高いほど、前記目標開度が小さくなるように補正する補正手段とを備えることを要旨とする。
【0007】
吸気通路を流れる吸気の温度が低い場合にはスロットルバルブの温度が低くなるため、同スロットルバルブが収縮する。一方、機関温度が高い場合には、吸気通路を構成する吸気管の温度が高くなるため、同吸気管が膨張する。したがって、吸気の温度が低くなるほど、あるいは機関温度が高くなるほど、吸気管の内周面とスロットルバルブの外周面との間に形成される吸気の流路面積が大きくなりやすい。
【0008】
この点、上記構成によれば、吸気の温度が低いほど、あるいは機関温度が高いほど、スロットルバルブの目標開度が小さくなるように補正されるため、スロットルバルブの収縮や吸気管の膨張に起因して吸気の流路面積が大きくなりやすい場合には、スロットルバルブの開度が小さくなるように制御される。したがって、吸気温度や機関温度が吸気の流路面積に及ぼす影響を考慮した上で、吸気の流路面積を機関運転状態に適した面積とすることができ、これにより、内燃機関の燃焼室に対して運転状態に適した量の空気を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を車載内燃機関のスロットルバルブの制御装置に具体化した一実施形態を、図1〜図6を参照して説明する。
図1に、本実施形態に係るスロットルバルブの制御装置において、スロットルバルブが設けられる内燃機関及びその周辺機構を示す。図1に示すように、内燃機関5では、吸気通路10、燃焼室15及び排気通路16が順に接続されている。
【0010】
内燃機関5の吸気通路10にはスロットルバルブ20が設けられている。このスロットルバルブ20は、アクチュエータとしてのスロットルモータ40により開閉される。このスロットルバルブ20は、具体的には、吸気通路10を構成する吸気管12に回転可能に支持されたバルブシャフト21と、このバルブシャフト21に固定された円板状のバルブ本体22とを備え、スロットルモータ40の駆動力によって、バルブ本体22がバルブシャフト21とともに回転することにより、その開度が全閉状態(0°)と全開状態(90°)との間で調節される。そして、このようにスロットルバルブ20の開度が調節されることにより、吸気通路10において吸気が流れる流路面積が変更され、燃焼室15に供給される空気の量が調整される。
【0011】
内燃機関5において、こうしたスロットルバルブ20の開度制御や燃焼室15に供給される燃料の量の制御などの各種制御は、車両に搭載された電子制御装置50により実行される。電子制御装置50は、内燃機関5の制御にかかる演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
【0012】
具体的には、電子制御装置50の入力ポートには、図1に示されるように、吸気通路10を流れる吸気の温度を検出する吸気温センサ51、機関温度として内燃機関5の冷却水の温度を検出する水温センサ52が接続されており、本実施形態では、この吸気温センサ51及び水温センサ52が、それぞれ温度検出手段を構成している。また電子制御装置50の入力ポートには、車両の操作者によるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサ53や、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するブレーキスイッチ54、機関回転速度を検出する回転速度センサ55、吸気通路10を流れる空気の流量を検出するエアフロメータ56が接続されている。さらに、電子制御装置50の入力ポートには、排気通路16において排気の酸素濃度を検出する酸素センサ57が接続されている。
【0013】
また、電子制御装置50の出力ポートには、燃焼室15に燃料を供給するためのインジェクタ(図示略)やスロットルモータ40の駆動回路などが接続されている。
電子制御装置50は、アクセルセンサ53及びブレーキスイッチ54及び回転速度センサ55の検出信号等に基づき、燃焼室15に供給される空気の量が機関運転状態に適した量となるように、吸気通路10を流れる空気の目標流量Rtを設定する。そして、電子制御装置50は、設定手段及び駆動制御手段として、スロットルバルブ20の開度をこの目標流量Rtに対応する目標開度θtに設定し、同バルブ20の開度がこの目標開度θtとなるように、スロットルモータ40を制御する。
【0014】
また、電子制御装置50は、エアフロメータ56によって検出される空気流量に基づいて、燃焼室15に供給される空気と燃料との比が所定の空燃比(例えば理論空燃比)となるように燃焼室に供給される燃料の量を制御する。さらに、電子制御装置50は、排気通路16に設けられる酸素センサ57の検出信号に基づいて燃焼室15における混合気の実際の空燃比を導出し、導出される実際の空燃比が理論空燃比となるように、燃焼室15に供給される燃料の量を調整する空燃比フィードバック制御を行う。なお、この空燃比フィードバック制御では、調整される燃料の量が所定の上下限値の範囲内において調整される。本実施形態では、このように燃焼室15で燃焼する混合気の空燃比を理論空燃比とすることにより、排気通路16に設けられる三元触媒(図示略)において、排気を適切に浄化するようにしている。
【0015】
ところで、機関冷却水温や吸気温度が変化すると、スロットルバルブ20の開度を制御するにあたり以下の問題が生じる。図2及び図3は、機関暖機後で吸気温度が常温(15℃)である場合と、機関暖機後で吸気温度が極低温(例えば−40℃)である場合とにおいて、スロットルバルブ20を一定の所定開度とした状態を示している。この図2及び図3に示すように、スロットルバルブ20及び吸気管12は、吸気通路10を流れる空気の温度や機関冷却水温に応じてその体積が変化する。したがって、スロットルバルブ20は、図2(b)に示すように、吸気温度が低い場合には、図2(a)に示す状態よりも体積収縮した状態となる。そのため、図3に示すように、吸気管12の内周面とスロットルバルブ20のバルブ本体22の外周面との間に形成される吸気の流路面積(領域A)についても吸気温度による影響を受ける。すなわち、吸気の流路面積は、図3(a)に示す吸気温度が高い場合よりも、図3(b)に示す吸気温度が低い場合のほうが大きくなる。なお、図2及び図3は、機関暖機後の状態を示しているが、機関暖機前であり冷却水温が低い場合には、吸気管12が体積収縮するため、流路面積は、これらの図に示す機関暖機後の流路面積よりも小さくなる。このように、スロットルバルブ20を同一の開度にした場合であっても吸気温度や機関温度に応じて吸気通路10で吸気が流れる流路面積が変化する。したがって、例えば暖機後で吸気温度が常温のときに吸気通路10を流れる空気の流量が目標流量Rtとなるスロットルバルブ20の開度を予め設定しておき、吸気温度や機関温度に依らず、アクセル開度等に基づいてスロットルバルブ20の開度がこの予め設定された開度となるように制御したとしても、機関温度や冷却水温によっては吸気通路10を流れる空気の流量が目標流量Rtとならないといった事態が生じうる。
【0016】
なお、このような問題が機関運転状態に及ぼす影響は、内燃機関5の高負荷時よりも低負荷時のほうが大きくなる。図4において、実線Aは、機関暖機後において吸気温度が常温である場合のスロットルバルブ20の開度と吸気通路10を流れる空気の流量との関係を示し、破線Bは、機関暖機後において吸気温度が極低温である場合のスロットルバルブ20の開度と吸気通路10を流れる空気の流量との関係を示している。この図4に示すように、内燃機関5の暖機後において吸気温度が常温である場合に、機関負荷が低いと吸気通路10を流れる空気の流量はこの負荷に対応して例えば少量の目標流量R1に設定され、スロットルバルブ20の開度はこれに対応して開度θ1となるように制御される。一方、内燃機関5の高負荷時には、吸気通路10を流れる空気の流量が例えば目標流量R2と設定され、スロットルバルブ20の開度はこれに対応して開度θ2となるように制御される。そして、低負荷時における目標流量R1は、そもそも高負荷時の目標流量R2よりも少量であるため、吸気温度や冷却水温の影響により実際の空気流量が目標流量R1からわずかにずれた場合であっても、このわずかなずれが燃焼室15における混合気の空燃比に及ぼす影響が大きくなる。
【0017】
さらに、スロットルバルブ20の開度を一定に制御した場合における吸気温度が常温のときの空気流量と吸気温度が極低温での空気流量との偏差は、内燃機関5の負荷が低くスロットルバルブ20を開度θ1に制御した場合の偏差Δr1のほうが、内燃機関5の負荷が高くスロットルバルブ20を開度θ2に制御した場合の偏差Δr2よりも大きくなる。これは吸気の流路面積が、吸気管12の断面積とスロットルバルブ20の吸気通路10の吸気の流れ方向における投影面積との偏差により導出されるためである。すなわち、スロットルバルブ20の投影面積は同バルブ20の開度が小さいほど大きくなるため、吸入空気の温度が変化する場合、スロットルバルブ20の開度が小さいほどスロットルバルブ20の投影面積の変化が大きくなる。したがって、スロットルバルブ20の開度が小さくなる低負荷時には、スロットルバルブ20の開度が大きくなる高負荷時よりも、スロットルバルブ20の開度を一定とした場合における吸気温度及び冷却水温の影響による流路面積の変動が大きくなり、その結果、空気流量の変動が大きくなる。そして、このことによっても、スロットルバルブ20の開度が小さくなる低負荷時には、吸気温度や機関温度の変化による空気量の変化が機関運転状態に及ぼす影響が大きくなるといえる。
【0018】
このようにして内燃機関5の低負荷時においては、スロットルバルブ20の開度を一定にした場合に、吸気温度や冷却水温の影響を受けて燃焼室15に供給される空気量が変動しやすくなるため、機関温度や吸気温度に依らずスロットルバルブ20の開度を制御すると、燃焼室15に機関運転状態に応じた適切な量の空気を供給することができない虞がある。また、本実施形態では、上述した空燃比フィードバック制御により燃料の量を調整している。しかしながら、吸気温度や冷却水温に依らずスロットルバルブ20の開度を制御した場合には、燃料量をその上下限範囲内でフィードバック制御しても、燃焼室15で燃焼する混合気の空燃比が理論空燃比とはならない場合があり、排気の浄化を適切に行えないといった事態が生じうる。そこで、本実施形態では、電子制御装置50が、内燃機関5の低負荷時であるアイドル運転時に、吸気温度及び冷却水温を考慮した上でスロットルバルブ20の開度制御を行うようにしている。以下、電子制御装置50によって実行されるスロットルバルブ20の開度制御を図5及び図6に従って説明する。
【0019】
図5は、スロットルバルブの開度制御の実行手順を示すフローチャートである。この制御は、内燃機関5の運転中に所定の制御周期をもって実行される。
図5に示すように、本制御が開始されると、まずステップS11において、現在がアイドル運転時か否かが判定される。このステップS11における判定は、アクセルセンサ53やブレーキスイッチ54、回転速度センサ55などの検出信号に基づいて判断される。そして、これらの検出信号に基づいてアイドル運転時であると判定されると、ステップS12に移る。
【0020】
ステップS12では、アイドル運転時の基準開度θb(i)が設定される。ここで、基準開度θbは、内燃機関5が暖機されており且つ吸気温度が常温である場合において、吸気通路10を流れる空気の流量を機関運転状態に適した目標流量Rtとするためのスロットルバルブ20の開度であり、機関負荷や回転数などの機関運転状態に応じて予め設定されている。
【0021】
そして、ステップS12において、アイドル運転時の基準開度θb(i)を設定した後、ステップS13に移り、補正係数Kが算出される。この補正係数Kは、上述した吸気温度及び機関温度が流路面積に及ぼす影響を補うための係数であり、図6のマップに示すように、吸気温度が低く機関冷却水温が高いほど小さくなるように設定されている。このステップS13では、吸気温センサ51によって検出される吸気温度及び水温センサ52によって検出される冷却水温を図6のマップに適用することにより補正係数Kが設定される。
【0022】
そして、ステップS14に移り、この補正係数Kをアイドル運転時の基準開度θb(i)に乗算することによりアイドル運転時の目標開度θt(i)が設定される。すなわち、図6において機関暖機後で冷却水温が80℃であり且つ吸気温度が20℃であれば、ステップS13において補正係数Kは「1.00」に設定されるため、ステップS14では目標開度θt(i)が基準開度θb(i)に設定される。また、冷却水温が80℃であり吸気温度が低温の−20℃であれば、吸気温度が低いことに起因して吸気の流路面積が大きくなりやすいため、ステップS13において補正係数Kが「0.97」に設定されて、ステップS14において目標開度θt(i)が基準開度θb(i)よりも小さく設定される。また、吸気温度が−40℃と低い場合であっても、機関冷却水温も−40℃と低い場合には、ステップS13において補正係数Kは「1.00」に設定され、目標開度θt(i)は基準開度θb(i)に設定される。すなわち、吸気温度が低い場合にはスロットルバルブ20が収縮するものの、冷却水温も低いために吸気管12も収縮することから、この場合は、内燃機関5が暖機後で且つ吸気が常温である場合と比較して流路面積にさほど差がないため、補正係数Kは「1.00」とされる。このようにして、吸気温度と冷却水温がともに低い場合にも、目標開度θt(i)が基準開度θb(i)に設定される。以上のようにして、本実施形態では、内燃機関5のアイドル運転時には、吸気温度が低いほど、また機関冷却水温が高いほどスロットルバルブ20の目標開度θt(i)が小さくなるように設定される。なおステップS13及びステップS14の処理が補正手段による処理に該当する。
【0023】
そして、ステップS17に移り、スロットルバルブ20の開度が設定した目標開度θt(i)となるように、電子制御装置50がスロットルモータ40を制御し、エンドに移って本処理を終了する。
【0024】
一方、先のステップS11において、内燃機関5がアイドル運転時ではないと判定された場合には、ステップS15に移り、そのときの運転状態に応じた基準開度θbが算出される。ここで、基準開度θbは、上述したように、機関暖機後で吸気温度が常温である場合を基準として設定されるスロットルバルブ20の開度である。そして、ステップS15からステップS16に移り、スロットルバルブ20の基準開度θbが目標開度θtに設定される。
【0025】
すなわち、内燃機関5がアイドル運転中でない場合には、吸気温度や機関温度に応じた流路面積の変動は、上述したようにさほど問題とはならないため、ステップS16においては、スロットルバルブ20の目標開度θtを基準開度θbに設定する。
【0026】
そして、ステップS17に移り、スロットルバルブ20の開度が設定した目標開度θtとなるように、電子制御装置50がスロットルモータ40を制御し、エンドに移って本処理を終了する。
【0027】
以上のようにして、本実施形態では、内燃機関5のアイドル運転時に吸気温度が低く、冷却水温が高いほど、目標開度θtが小さくなるように補正される。したがって、これらの温度の影響によるスロットルバルブ20の収縮や吸気管12の膨張に起因して吸気の流路面積が大きくなりやすい場合にはスロットルバルブ20の開度が小さくなるように制御される。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、内燃機関5のアイドル運転時において、電子制御装置50がスロットルバルブ20の目標開度θtを設定するにあたり、吸気温センサ51によって検出される吸気温度が低く、水温センサ52によって検出される冷却水温が高いほど、目標開度θtが小さくなるように補正するようにしている。これにより、スロットルバルブ20の開度が同じ開度である場合には、吸気の温度が低いほど、あるいは機関温度が高いほど、スロットルバルブ20の収縮や吸気管12の膨張に起因して吸気の流路面積が大きくなりやすいものの、このように吸気の流路面積が大きくなりやすい場合にはスロットルバルブ20の開度が小さくなるように制御される。したがって、吸気温度や機関温度が吸気の流路面積に及ぼす影響を考慮した上で、吸気の流路面積を機関運転状態に適した面積とすることができ、これにより、内燃機関5の燃焼室15に対して運転状態に適した量の空気を供給することができる。
【0029】
(2)本実施形態では、上記(1)に記載した吸気温度及び冷却水温に基づくスロットルバルブ20の目標開度θtの補正を、内燃機関5のアイドル運転時にのみ行うようにしている。すなわち、内燃機関5のアイドル運転時には、スロットルバルブ20の開度を同一の開度に制御した場合に、吸気温度や冷却水温の変動による空気流量のずれが内燃機関5の運転状態に及ぼす影響が大きくなりやすい。したがって、このように吸気温度及び冷却水温による空気流量の変動が運転状態に及ぼす影響が大きくなりやすい運転時において、吸気の流路面積をアイドル運転に適した面積にして燃焼室15に対してアイドル運転に適した量の空気を供給することができ、アイドル運転時における運転状態を安定した状態に保つことができる。
【0030】
(3)本実施形態では、燃焼室15における混合気の空燃比を制御することにより、排気通路16に設けられる三元触媒により排気を適切に浄化するようにしている。そして、このような場合において、上記吸気温度及び冷却水温によるスロットルバルブ20の開度補正を行うことにより、燃焼室15における混合気の空燃比を適切に所定の空燃比に制御することができるため、排気の浄化を適切に行うことができる。
【0031】
(その他の実施形態)
なお上記実施形態は以下のように適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、内燃機関のアイドル運転時にのみ吸気温度及び冷却水温に基づいてスロットルバルブの目標開度を補正するようにしている。しかしながら、アイドル運転時のみならず、内燃機関の低負荷時にも吸気温度及び冷却水温に基づく目標開度の補正を行うようにしてもよい。さらに、内燃機関の高負荷時においても、吸気温度及び冷却水温に基づく目標開度の補正を行うようにしてもよい。
【0032】
・上記実施形態では、吸気温度及び冷却水温に基づいてスロットルバルブの目標開度を補正するようにしている。しかしながら、吸気温度及び冷却水温の何れか一方のみに基づいてスロットルバルブの目標開度を補正するようにしてもよい。また、機関温度を検出するにあたり、冷却水温の検出に代わり、例えば機関運転時間を計時し、機関運転時間が長いほど機関温度が高いと検出するようにしてもよい。また、これらの温度に基づいて目標開度を補正するにあたり、図6に示すマップを用いるようにしたが、この補正係数は特に限定されない。また、図6に示す例では、吸気温度が比較的低温の0℃であっても、水温が60℃以下であれば、補正係数を「1.00」とし、目標開度を基準開度となるようにしたが、吸気温度が低いほど、または冷却水温が高いほど補正係数を線形的に漸次小さくするようにしてもよい。また、目標開度の補正は、基準開度に補正係数を乗算する態様と異なる態様で補正するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る一実施形態において、内燃機関及びその周辺機構を示す模式図。
【図2】同実施形態において、スロットルバルブ及び吸気管を吸気の流れ方向に沿って切断した断面構造を示す模式図であり、(a)及び(b)は、それぞれ機関暖機後において吸気温度が常温であるときと極低温であるときの状態を示す。
【図3】同実施形態において、吸気管を吸気の流れと直交する方向に沿って切断した断面構造を示す模式図であり、(a)及び(b)は、それぞれ機関暖機後において吸気温度が常温であるときと極低温であるときの状態を示す。
【図4】同実施形態において、スロットルバルブの開度に対する吸気通路を流れる空気の流量を示すグラフ。
【図5】同実施形態において、スロットルバルブの開度制御の実行手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態において、吸気温度と機関冷却水温に応じたスロットルバルブの目標開度の補正係数を示すマップ。
【符号の説明】
【0034】
5…内燃機関、10…吸気通路、12…吸気管、15…燃焼室、16…排気通路、20…スロットルバルブ、21…バルブシャフト、22…バルブ本体、40…スロットルモータ、50…電子制御装置、51…吸気温センサ、52…水温センサ、53…アクセルセンサ、54…ブレーキスイッチ、55…回転速度センサ、56…エアフロメータ、57…酸素センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に設けられるスロットルバルブと、
前記スロットルバルブを開閉するアクチュエータと、
前記スロットルバルブの目標開度を前記機関の運転状態に基づいて設定する設定手段と、
前記スロットルバルブの開度が前記目標開度となるように前記アクチュエータを駆動制御する駆動制御手段と、
前記吸気通路を流れる吸気の温度、あるいは前記機関の温度を検出する温度検出手段と、
前記検出される吸気の温度が低いほど、あるいは前記検出される機関の温度が高いほど、前記目標開度が小さくなるように補正する補正手段とを備える
ことを特徴とするスロットルバルブの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−127145(P2010−127145A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301265(P2008−301265)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】