説明

ズームレンズ、カメラおよび携帯情報端末装置

【課題】短焦点端の半画角:38度以上の広画角、8倍以上の高変倍比、構成枚数:11枚程度の小型で、1000万〜1500万画素の撮像素子に対応した解像力をもつズームレンズを実現する。
【解決手段】物体側より順に、正の第1レンズ群G1、負の第2レンズ群G2、正の第3レンズ群G3、正の第4レンズ群G4を有し、短焦点端から長焦点端への変倍に際し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が減少し、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔が増大し、第1レンズ群および第3レンズ群が、短焦点端よりも長焦点端で物体側に位置するように移動するズームレンズにおいて、第2レンズ群と第3レンズ群の間に開口絞りが配設され、第3レンズ群は物体側から順に、正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33、正レンズL34を配してなり、適切に設定された条件を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ズームレンズ、カメラおよび携帯情報端末装置に関する。
この発明のズームレンズは、デジタルカメラやビデオカメラの撮影光学系として好適に使用できるが、勿論、銀塩写真の撮影光学系として用いることもできる。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラが広く普及し、デジタルカメラに対するユーザの要望も多岐にわたっている。高画質化と小型化は常にユーザの欲するところであり、撮影レンズとして用いるズームレンズにも高性能化と小型化の両立が求められる。
【0003】
小型化という面では、まず「使用時のレンズ全長(最も物体側のレンズ面から像面までの距離)」を短縮することが求められ、各レンズ群の厚みを短縮して「収納時の全長」を抑えることも重要である。
高性能化という面では、少なくとも「1000万〜1500万画素の撮像素子に対応した解像力」を全ズーム域にわたって有することが求められる。
撮影レンズの広画角化を望むユーザも多く、ズームレンズの短焦点端の半画角は38度以上であることが望ましい。半画角:38度は「35mm銀塩カメラ(所謂ライカ版)換算の焦点距離で28mmに相当する。
【0004】
変倍比についてもなるべく大きなものが望まれているが「35mm銀塩カメラ換算の焦点距離で28〜200mm相当程度(約7.1倍)のズームレンズ」であれば、一般的な撮影の殆ど全てをこなすことが可能と考えられる。
【0005】
従来から、デジタルカメラ用で高性能を実現したズームレンズとして、物体側から正・負・正・正の屈折力を持つ第1乃至第4レンズ群を配してなり、短焦点端から長焦点端への変倍に際し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が減少し、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔が変化するもので、第3レンズ群が物体側から順に、正レンズ、正レンズ、負レンズ、正レンズの4枚のレンズで構成されるものが知られている(特許文献1〜4等)。
【0006】
これら特許文献1〜4に記載されたズームレンズを、変倍比、画角、コンパクト性の面から見ると、特許文献1記載のものは、変倍比が6.8倍程度であり、昨今、求められている「7倍強」という変倍比に及ばない。
【0007】
特許文献2、3記載のものは、高変倍化は実現されているが、広画角化の点でなお改善の余地があり、コンパクト性の面からすると「長焦点端におけるレンズ全長」が大きい。
【0008】
特許文献4記載のズームレンズでは、示されたズームレンズ、変倍比、画角の広さ、小型化の各面でなお、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、短焦点端の半画角:38度以上の広画角、8倍以上の高変倍比、構成枚数:11枚程度の小型で、1000万〜1500万画素の撮像素子に対応した解像力をもつズームレンズの実現を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載のズームレンズは「物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群を有し、短焦点端から長焦点端への変倍に際し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が減少し、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔が増大し、第1レンズ群および第3レンズ群が、短焦点端よりも長焦点端で物体側に位置するように移動するズームレンズ」であって、以下の点を特徴とする。
【0011】
即ち、第2レンズ群と第3レンズ群の間に開口絞りが配設される。
そして、第3レンズ群は物体側から順に、正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33、正レンズL34を配してなる。
【0012】
第3レンズ群における3枚の正レンズL31、L32、L34のレンズのうちの少なくとも2枚につき、以下の条件(1)〜(3)が満足される。
【0013】
(1) 1.54 <n< 1.7
(2) 62 <ν< 80
(3) 0.008<Pg,F−(−0.001802×ν+0.6483)
<0.050
ここに、nおよびνは、第3レンズ群の上記少なくとも2枚の正レンズの材質の、d線に対する屈折率およびアッベ数である。
【0014】
また、Pg,Fは、上記少なくとも2枚の正レンズの材質の部分分散比であり、g線、F線、C線に対する屈折率:n、n、nにより、
g,F=(n−n)/(n−n
で定義される。
【0015】
請求項1記載のズームレンズは、第3レンズ群の焦点距離:f3、短焦点端における全系の焦点距離:fwが、条件:
(4) 1.0 <f3/fw< 2.5
を満足することが好ましい(請求項2)。
【0016】
請求項1または2記載のズームレンズは、第3レンズ群の正レンズL31(第3レンズ群中で最も物体側に配置される正レンズ)の焦点距離:f31、第3レンズ群の正レンズL32(正レンズL31のすぐ像側に配置される正レンズ)の焦点距離:f32が、以下の条件(5)を満足することが好ましい。
(5) 0.3 <f31/f32< 1.2 。
【0017】
請求項1〜3の任意の1に記載のズームレンズはまた、第3レンズ群の正レンズL34(第3レンズ群中で最も像側に配置される正レンズ)の焦点距離:f34、第3レンズ群の焦点距離:f3が、条件:
(6) 0.1 <f3/f34<0.6
を満足することが好ましい(請求項4)。
【0018】
請求項1〜4の任意の1に記載のズームレンズは、第3群の負レンズL33の材質の、屈折率:n_n、アッベ数:n_νが、条件:
(7) 1.80 <n_n< 2.20
(8) 25.0 <n_ν< 45.0
を満足することが好ましい(請求項5)。
【0019】
請求項1〜5の任意の1に記載のズームレンズは、第3レンズ群の負レンズL33の焦点距離:f33、短焦点端における全系の焦点距離:fwが、条件:
(9) ―1.5 <f33/fw< ―0.5
を満足することが好ましい(請求項6)。
請求項1〜6の任意の1に記載のズームレンズは、第3レンズ群の中心肉厚:D3、短焦点端における全系の焦点距離:fwが、条件:
(10) 1.0 <D3/fw< 2.0
を満足することが好ましい(請求項7)。
【0020】
ここに「第3レンズ群の中心肉厚:D3」は、レンズ光軸上において「第3レンズ群における最も物体側の正レンズL31の物体側の面から、最も像側の正レンズL34の像側面までの距離」である。
【0021】
請求項1〜7の任意の1に記載のズームレンズは非球面を有することができるが、第3レンズ群の正レンズL31に非球面を採用するのが好ましい(請求項8)。
【0022】
請求項1〜8の任意の1に記載のズームレンズは「開口絞りと第3レンズ群との間隔が、短焦点端において長焦点端よりも広くなる」ように開口絞りが移動し、短焦点端における開口絞りと第3レンズ群の最も物体側の面との軸上間隔:DSw、長焦点端における全系の焦点距離:ftが、条件:
(11) 0.05 <DSw/ft< 0.20
を満足することが好ましい(請求項9)。
【0023】
請求項1〜9の任意の1に記載のズームレンズは、長焦点端における、レンズ全長:TLt、全系の焦点距離:ftが、条件:
(12) 0.8 <TLt/ft< 1.2
を満足することが好ましい(請求項10)。
【0024】
この発明のカメラは、請求項1〜10の任意の1に記載のズームレンズを撮影用光学系として有することを特徴とする(請求項11)。
この発明の携帯情報端末装置は、請求項1〜10のズームレンズを「カメラ機能部の撮影用光学系」として有することを特徴とする(請求項12)。
【0025】
説明を補足する。
この発明のズームレンズのような正・負・正・正の4レンズ群構成のズームレンズでは、第2レンズ群が主要な変倍作用を負担する所謂バリエータとして構成されるのが一般的であるが、この発明のズームレンズにおいては、第3レンズ群にも変倍作用を分担させることにより、第2レンズ群の負担を軽くして「広角化・高変倍化に伴って困難となりがちな収差補正」を実現する補正の自由度を確保している。
また、第1レンズ群が、短焦点端よりも長焦点端で物体側に位置するように移動を行なうが、このように短焦点端から長焦点端への変倍に際して第1レンズ群を大きく物体側へ移動させることにより、短焦点端において第1レンズ群を通過する光線高さを低くして、広角化に伴う第1レンズ群の大型化を抑制するとともに、長焦点端では第1レンズ群と第2レンズ群の間隔を大きく確保して長焦点化を達成する。
【0026】
短焦点端から長焦点端への変倍に際し「第1レンズ群と第2レンズ群の間隔は大きくなり、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔は小さくなって、第2レンズ群・第3レンズ群の倍率(絶対値)はどちらも増加し、これら第2、第3レンズ群が変倍作用を互いに分担しあう。
【0027】
第3レンズ群は正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33、正レンズL34を有し、3枚の正レンズL31、L32、L34のうちの少なくとも2枚の正レンズの材料が、条件(1)〜(3)を満足する。
【0028】
高変倍化、特に「長焦点端の焦点距離」を長くしようとすると、望遠側における軸上色収差の2次スペクトルの補正が困難となる。また、短焦点端の焦点距離を短く「より広角化」しようとすると、広角側における倍率色収差の2次スペクトルの補正が困難となる。
【0029】
この発明は、これらの色収差を「所謂異常分散材料(異常分散性の大きな材料)を用いて補正」しようとするものであるが、かかる材料の使用箇所と光学特性に大きな特徴がある。
【0030】
一般に、軸上色収差の2次スペクトルの低減のためには「軸上光線高さが高いレンズ群に特殊低分散ガラスを用いる」と効果が大きいことが知られている。
第3レンズ群は、軸上光線高さが第1レンズ群に次いで高いので、第3レンズ群に異常分散ガラスを採用することによって、軸上色収差の2次スペクトルの十分な低減が可能となる。
この発明のズームレンズでは、光線の通り方が異なる少なくとも2つのレンズ(第3レンズ群の少なくとも2枚の正レンズ)で分担して補正できるため、軸上色収差や倍率色収差の2次スペクトルの十分な低減が可能になる。
異常分散性を有するレンズが1つでは、軸上色収差や倍率色収差の2次スペクトルを十分に低減することが困難であるし、異常分散性を有するレンズに大きな収差補正能力を持たせることとなり、異常分散性を有するレンズの偏心感度が高くなる。
【0031】
「特殊低分散の光学材料」は一般に屈折率が低く、単色収差の補正能力が低下しやすいので、第3レンズ群を少ないレンズ枚数で構成しつつ、単色収差・色収差をバランス良く低減しようとする場合、特殊低分散が必ずしも十分な効果を上げない。
【0032】
そこで、この発明のズームレンズでは、第3レンズ群の少なくとも2枚の正レンズを、条件(1)〜(3)式を満足する範囲の屈折率・アッベ数・異常分散性を有する光学ガラスで構成した。
第3レンズ群が「4枚という少ない枚数」であっても、色収差の2次スペクトルを低減し、かつ「単色収差の十分な補正」も可能となる。
【0033】
条件(1)の下限値を超えると「単色収差の補正が不十分」となり、条件(2)の下限値を超えると「色収差の補正が不十分」となり、条件(3)の下限値を超えると「色収差の2次スペクトルの補正が不十分」となる。
【0034】
条件(1)〜(3)の各パラメータは大きいことが好ましいが、条件(1)〜(3)の全てにつき、上限を超えるような光学材料は存在しないか、存在したとしても非常に特殊かつ高価であり現実的でない。
請求項2の条件(4)は、単色収差・色収差の更なる補正を可能とする条件である。上限値を超えると、第3レンズ群の正のパワーが相対的に弱くなり、第3レンズ群に用いた「異常分散材料を使用したレンズ」による補正効果を十分に得られず、2次スペクトルを十分に低減できない場合がある。
また、条件(4)の下限値を超えると、第3レンズ群の正のパワーが相対的に強くなり「色収差補正と球面収差補正のバランスを取る」ことが難しくなるほか、レンズ各面の曲率が大きくなり「レンズ面の加工精度」の点でも不利となる。
【0035】
請求項3の条件(5)は、単色収差・色収差の更なる補正を可能とする条件であり、第3レンズ群の2枚の正レンズL31、L32の正のパワーを「良好にバランスさせる」ことにより、単色収差および色収差を分担して補正できる。
条件(5)の範囲外では、バランスの良い収差補正が難しくなり、単色収差や色収差の低減が困難になる。
【0036】
「単色収差,色収差のさらなる良好な補正」のためには、請求項4の条件(6)を満足するのがよい。
即ち「長焦点端において第2レンズ群と第3レンズ群の主点間隔を狭く」できると、性能を確保し易くなるが、条件(6)の上限値を超えると、第3レンズ群中における正レンズL34の正のパワーが相対的に強くなり「第3レンズ群の主点位置が像側になり過ぎ」て性能確保が困難になる。また、条件(6)の下限値を超えると第3レンズ群中における正レンズL34の正のパワーが弱くなるため「正レンズL34による収差補正の効果」を十分に得ることが難しい。
【0037】
請求項5の条件(7)、(8)は、主に色収差を「より低減」できる条件である。
【0038】
第3レンズ群の負レンズL33が、これらの条件(7)、(8)を満足することにより、第3レンズ群中における「正レンズとのバランス」を図ることが容易となり、単色収差を低減しつつ軸上色収差や倍率色収差を十分に低減することが可能となる。
【0039】
条件(7)、(8)の上限値・下限値を超えると、収差をバランス良く補正することが難しく、単色収差を低減しつつ「軸上色収差や倍率色収差を十分に低減する」ことが困難になる。
【0040】
請求項6の条件(9)は、単色収差・色収差を更に良好に補正できる条件であり、第3レンズ群中における負レンズL33の負のパワーを規制するものである。
【0041】
条件(9)の上限を超えると、負レンズL33のパワーが過小になり、下限を超えると過大になる。そして、条件(9)の上限値・下限値を超えると、バランス良い収差補正が困難となり「単色収差を低減しつつ、軸上色収差や倍率色収差を十分に低減する」ことが難しくなる。
【0042】
請求項7の条件(10)は、小型化に有利な条件である。条件(10)の上限を超えると、第3レンズ群が厚くなり、変倍するために移動できる間隔が小さくなり、レンズ群のパワーが強くする必要が出てくるため、レンズ群内での収差補正が困難になる。条件(10)の下限を超えると、第3レンズ群が薄くなり、第3レンズ群内での収差補正が困難になる。なお、沈胴の際に、第3レンズ群をレンズ光軸から退避させてもよい。
【0043】
この発明のようなレンズ構成で、さらに小型で球面収差を低減するためには、請求項8のように「第3レンズ群の最も物体側に配置されて、条件(1)〜(3)を満足する正レンズL31が非球面レンズ」であることが望ましい。
【0044】
球面収差補正のための非球面は、開口絞りに近い箇所に用いるのが良い。
【0045】
開口絞りと第3レンズ群との間隔は「短焦点端において長焦点端よりも広くなる」ことが好ましい。異常分散材料が使用されている第3レンズ群が「短焦点端において開口絞りから離れ、長焦点端において開口絞りに近付く」ことによって、異常分散性が「短焦点端では倍率色収差の2次スペクトル補正」に効果的に作用し、「長焦点端では軸上色収差の2次スペクトル補正」に効果的に作用する。
【0046】
従って、変倍の全域において色収差をより良好に補正することが可能となる。加えて,短焦点端において「開口絞りを第1レンズ群に近づけ、第1レンズ群を通過する光線高さをより低くする」ことが可能となり、第1レンズ群のさらなる小型化を達成できるという効果も生む。
【0047】
請求項9の条件(11)は、開口絞りと第3レンズ群との間の間隔:DSwの範囲を規定するものである。
下限値を超えると「短焦点端において第3レンズ群を通過する光線高さ」が小さくなり、広角側における倍率色収差の2次スペクトルの低減を効果的に行うことが困難になる。また「短焦点端において第1レンズ群を通過する光線高さ」が大きくなり、第1レンズ群の大型化を招来する。
上限値を超えると「短焦点端において第3レンズ群を通過する光線高さ」が大きくなり、像面がオーバーに倒れたり、樽型の歪曲収差が大きくなったりし、特に広角域における性能確保が難しくなる。
【0048】
請求項10の条件(12)は、より「高性能と小型化」を実現できる条件である。
上限値を超えると、望遠端でのレンズ全長が長くなり小型化が難しい。下限値を超えると望遠端でのレンズ全長が短くなり、小型化には良いが「変倍比確保のための各群の焦点距離が短く」なり、性能確保が困難になる。
【0049】
「開口絞りの開放径」は、長焦点端において「短焦点端より大きく」することにより、変倍に伴う「Fナンバの変化」を小さくできる。
像面に到達する光量を減少させる必要がある場合は「開口絞りを小径化」しても良いが、絞り径を大きく変えることなく「NDフィルタ等の挿入により光量を減少させる」方が回折現象による解像力の低下を防止できて好ましい。
【0050】
フォーカシングは全体繰出しでも良いが、「第4レンズ群で行う」ことが好ましい。
【発明の効果】
【0051】
以上に説明したように、この発明によれば新規なズームレンズを実現できる。このズームレンズは、後述する実施例に示すように、収差が十分に補正され、1000万〜1500万画素の受光素子に対応可能な性能を持つ小型なズームレンズとして実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ズームレンズの実施例1を説明するための図である。
【図2】ズームレンズの実施例2を説明するための図である。
【図3】ズームレンズの実施例3を説明するための図である。
【図4】ズームレンズの実施例4を説明するための図である。
【図5】実施例1のズームレンズの短焦点端における収差曲線図である。
【図6】実施例1のズームレンズの中間焦点距離における収差曲線図である。
【図7】実施例1のズームレンズの長焦点端における収差曲線図である。
【図8】実施例2のズームレンズの短焦点端における収差曲線図である。
【図9】実施例2のズームレンズの中間焦点距離における収差曲線図である。
【図10】実施例2のズームレンズの長焦点端における収差曲線図である。
【図11】実施例3のズームレンズの短焦点端における収差曲線図である。
【図12】実施例3のズームレンズの中間焦点距離における収差曲線図である。
【図13】実施例3のズームレンズの長焦点端における収差曲線図である。
【図14】実施例4のズームレンズの短焦点端における収差曲線図である。
【図15】実施例4のズームレンズの中間焦点距離における収差曲線図である。
【図16】実施例4のズームレンズの長焦点端における収差曲線図である。
【図17】携帯情報端末装置の実施の形態を説明するための図である。
【図18】携帯情報端末装置のシステム構造例を示すブロック図である。
【図19】実施例における歪曲収差を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の実施の形態を説明する。
図1〜図4に、ズームレンズの実施の形態を示す。これら図1〜図4に示すズームレンズは、具体的にはそれぞれ、後述する実施例1〜4に対応する。繁雑を避けるため、図1〜図4において、符号を共通化する。
【0054】
図1〜図4において、最上の図は「単焦点端(広角端)」におけるレンズ配置、中段の図は「中間焦点距離」におけるレンズ配置、最下の図は「長焦点端(望遠端)」におけるレンズ配置をそれぞれ示し、矢印は、単焦点端から長焦点端への変倍に際しての「各レンズ群の変位の様子」を表す。
【0055】
図1〜図4に示すズームレンズは、物体側(図の左方)より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4を有する。
短焦点端(最上の図)から長焦点端(最下の図)への変倍に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が増大し、第1レンズ群G1および第3レンズ群G3は「短焦点端よりも長焦点端で物体側に位置する」ように移動する。
【0056】
第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には開口絞りSが配設されている。
【0057】
第3レンズ群G3は物体側から順に、正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33、正レンズL34を配してなる。
【0058】
また、変倍に際して、開口絞りSは、開口絞りSと第3レンズ群G3との間隔が「短焦点端において長焦点端よりも広くなる」ように移動する。
【0059】
また、図1〜図4の実施の形態において、第1レンズ群G1は、物体側から順に「物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズとの接合レンズ」、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズにより構成される。
【0060】
第2レンズ群G2は、像側に曲率の大きい凹面を向けた凹レンズ、「像側に曲率の大きい凹面を向けた凹レンズと正レンズとの接合レンズ」により構成される。
第3レンズ群G3は、上記の如く構成され、第4レンズ群G4は「1枚の正レンズ」により構成される。
【0061】
図1〜図4において、符号Fは、光学ローパスフィルタ・赤外カットフィルタ等の各種フィルタや「CCDセンサ等の受光素子のカバーガラス(シールガラス)」をまとめて、光学的にこれらに等価な1枚の透明平行平板としたものである。また符合ISは「像面」であり、この像面位置に撮像素子の受光面が配される。
【0062】
これら実施の形態に対応する後述の実施例1〜4のズームレンズは何れも、条件(1)〜(12)を満足する。
【0063】
図17、図18を参照して、携帯情報端末装置の実施の形態を説明する。
図17に示す携帯情報端末装置のシステム構成は、図18に示すように、「ズームレンズ」である撮影レンズ1と「撮像素子」である受光素子13を有し、撮影レンズ1によって形成される撮影対象物の像を受光素子13によって読取るように構成され、受光素子13からの出力を、中央演算装置11の制御を受ける信号処理装置14によって処理してデジタル情報に変換する。
【0064】
デジタル情報に変換された画像は、液晶モニタ7に表示され、半導体メモリ15に記憶され、あるいは通信カード16により外部への通信に供される。この通信機能を除いた部分は「カメラ装置」を構成する。
【0065】
撮影レンズ1としては、請求項1〜9の任意の1に記載のズームレンズ、具体的には後述する実施例1〜4のズームレンズを用いる。
【0066】
液晶モニタ7には「撮影中の画像」を表示することもできるし、半導体メモリ15に記録されている画像を表示することもできる。
【0067】
撮影レンズ1はカメラの携帯時には、図17(A)に示すように「沈胴状態」にあり、電源スイッチ6の操作により電源が入ると筐体5から鏡胴が繰り出される。鏡胴が繰り出された状態において、鏡胴内部でズームレンズの各群は「例えば広角端の配置」となっており、図示されないズームレバーを操作することで各群の配置が変化し、望遠端への変倍を行うことができる。
このとき、ファインダ2も撮影レンズ1の画角の変化に連動して変倍する。
【0068】
シャッタボタン4の「半押し」によりフォーカシングがなされる。
【0069】
フォーカシングは第4レンズ群の移動により行なわれるが、「受光素子の移動」によって行うこともできる。シャッタボタン4をさらに押し込むと撮影がなされ、その後は上記の処理がなされる。
【0070】
半導体メモリ15に記録した画像を液晶モニタ7に表示したり、通信カード16等を使用して外部へ送信したりする際は、操作ボタン8を操作して行う。半導体メモリ15および通信カード16等は、それぞれ専用または汎用のスロット9に挿入して使用される。
【0071】
撮影レンズが「沈胴状態」にあるとき、ズームレンズの各レンズ群は、必ずしも光軸上に並んでいなくても良い。例えば、第3レンズ群および/または第4レンズ群が、光軸上から退避して「他のレンズ群と並列に収納される」如き機構とすれば、携帯情報端末装置のさらなる薄型化を実現できる。
この場合、第3レンズ群の方が、第4レンズ群よりも光軸方向の大きさが大きいので、第3レンズ群を光軸から退避させるほうが、沈胴状態の薄型化により大きく資することができる。
【実施例1】
【0072】
以下、ズームレンズの具体的な実施例を4例挙げる。
レンズの材質は全ての実施例において、第4レンズ群をなす1枚の正レンズが光学プラスチックである他は全て光学ガラスである。
【0073】
実施例における記号の意味は以下の通りである.
f:全系の焦点距離
F:Fナンバ
ω:半画角
R :曲率半径
D:面間隔
:屈折率
ν:アッベ数
φ:有効光線径
K:非球面の円錐定数
:4次の非球面係数
:6次の非球面係数
:8次の非球面係数
10 :10次の非球面係数
「非球面」は、近軸曲率半径の逆数(近軸曲率):C、光軸からの高さ:H、上記円錐定数:K、非球面係数:A〜A12により、周知の次式で表される。
【0074】
X=CH/{1+√(1−(1+K)C)}+A・H+A・H
+A・H+A10・H10+A12・H12+A14・H14
【0075】
「実施例1」
実施例1のデータを表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
「非球面係数」
非球面係数を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
「可変量」
可変量を表3に示す。表3において、「Wide」は短焦点端、「Mean」は「中間焦点距離」、「Tele」は長焦点端を表す。以下の実施例2〜4においても同様である。
【0080】
【表3】

【0081】
絞り径は、Wide、Meanにおいてφ3.3(3.3mm)、Teleにおいてφ4.0である。
【0082】
条件のパラメータの値
条件の各パラメータの値を表4に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
「実施例2」
実施例2のデータを表5に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
「非球面係数」
非球面係数を表6に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
「可変量」
可変量を表7に示す。
【0089】
【表7】

【0090】
絞り径は、Wide、Meanにおいてφ3.2、Teleにおいてφ4.0である。
【0091】
条件のパラメータの値
条件の各パラメータの値を表8に示す。
【0092】
【表8】

【0093】
「実施例3」
実施例3のデータを表9に示す。
【0094】
【表9】

【0095】
「非球面係数」
非球面係数を表10に示す。
【0096】
【表10】

【0097】
「可変量」
可変量を表11に示す。
【0098】
【表11】

【0099】
絞り径は、Wide、Meanにおいてφ3.3、Teleにおいてφ4.2である。
【0100】
条件のパラメータの値
条件の各パラメータの値を表12に示す。
【0101】
【表12】

【0102】
「実施例4」
実施例4のデータを表13に示す。
【0103】
【表13】

【0104】
「非球面係数」
非球面係数を表14に示す。
【0105】
【表14】

【0106】
「可変量」
可変量を表15に示す。
【0107】
【表15】

【0108】
絞り径は、Wide、Meanにおいてφ3.0、Teleにおいてφ3.8である。
【0109】
条件のパラメータの値
条件の各パラメータの値を表12に示す。
【0110】
【表16】

【0111】
図5〜図7に順次、実施例1のズームレンズの単焦点短、中間焦点距離、長焦点端における収差曲線を示す。
図8〜図10に順次、実施例2のズームレンズの単焦点短、中間焦点距離、長焦点端における収差曲線を示す。
図11〜図13に順次、実施例3のズームレンズの単焦点短、中間焦点距離、長焦点端における収差曲線を示す。
図14〜図16に順次、実施例4のズームレンズの単焦点短、中間焦点距離、長焦点端における収差曲線を示す。
これらの図の、球面収差の図における破線は「正弦条件」を表し、非点収差の図における実線はサジタル、破線はメリディオナルを表す。「d」はd線、「g」はg線を表す。また、「Y’」は最大像高である。
【0112】
また、各実施例とも、球面収差における横軸の両端の値は「±0.1」、非点収差における横軸の両端に値は「±0.1」、歪曲収差における横軸の両端の値は「±10%」、コマ収差の図における縦軸の両端の値は「±0.1」である。
【0113】
各実施例とも、広角端の半画角が38度以上と十分に広画角でありながら、8倍以上の変倍比を有し、構成枚数が11枚と少なく小型であり、性能的には1000万〜1500万画素の撮像素子に対応できる解像力を有している。
【0114】
ところで、実施例1〜4のズームレンズは、上記の如く性能良好であるが、広角端(短焦点短)においては、歪曲収差が発生している。勿論、歪曲収差は「中間焦点距離付近や長焦点端」では有効に抑えられている。
【0115】
この状態を、図19に説明図的に示す。図19(a)において、符号Im1で示すのは、長焦点端および中間焦点距離近傍における「像面形状」であり、撮像素子の受光面と略同一の矩形形状をなしている。
【0116】
一方、破線で示す像面形状Im2は、短焦点端における像面形状であり、負の歪曲収差により「樽型形状」となっている。しかしながら、この歪曲収差は「電気的な補正」により補正可能である。
【0117】
補正の方法は種々考えられるが、例えば、図19(b)に示すように、像面形状の中心から縦方向の基準線に対して角:θをなす直線上にある「画素」を考えてみる。
【0118】
図の如く、この受光素子の上記中心からの距離を「X」、上記中心からの距離を「X」における歪曲収差をDis(X)[%]とすると、上記距離「X」の位置にある画素を100×X/(100+Dis(X))に変換する補正を行えばよい。このようにして、短焦点端における歪曲収差を良好に補正した画像を撮像することができる。
【符号の説明】
【0119】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
S 開口絞り
1 撮影レンズ(ズームレンズ)
2 ファインダ
3 フラッシュ
4 シャッタボタン
5 筐体
6 電源スイッチ
7 液晶モニタ
8 操作ボタン
9 メモリーカードスロット
10 ズームスイッチ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特開2009− 93118号公報
【特許文献2】特開2007−122019号公報
【特許文献3】特開2006−113555号公報
【特許文献4】特開2004−258240号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群を有し、短焦点端から長焦点端への変倍に際し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が減少し、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔が増大し、第1レンズ群および第3レンズ群が、短焦点端よりも長焦点端で物体側に位置するように移動するズームレンズにおいて、
第2レンズ群と第3レンズ群の間に開口絞りが配設され、
第3レンズ群は物体側から順に、正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33、正レンズL34を配してなり、上記3枚の正レンズL31、L32、L34のレンズのうちの少なくとも2枚につき、
そのレンズ材質の、d線に対する屈折率:n、アッベ数:ν、g線、F線、C線に対する屈折率:n、n、nにより、
g,F=(n−n)/(n−n
で定義される部分分散比:Pg,Fが、条件:
(1) 1.54 <n< 1.7
(2) 62 <ν< 80
(3) 0.008<Pg,F−(−0.001802×ν+0.6483)
<0.050
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
請求項1記載のズームレンズにおいて、
第3レンズ群の焦点距離:f3、短焦点端における全系の焦点距離:fwが、条件:
(4) 1.0 <f3/fw< 2.5
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項3】
請求項1または2記載のズームレンズにおいて、
第3レンズ群の正レンズL31の焦点距離:f31、第3レンズ群の正レンズL32の焦点距離:f32が、条件:
(5) 0.3 <f31/f32< 1.2
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載のズームレンズにおいて、
第3レンズ群の正レンズL34の焦点距離:f34、第3レンズ群の焦点距離:f3が、条件:
(6) 0.1 <f3/f34<0.6
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項5】
請求項1〜4の任意の1に記載のズームレンズにおいて、
第3群の負レンズL33の材質の、屈折率:n_n、アッベ数:n_νが、条件:
(7) 1.80 <n_n< 2.20
(8) 25.0 <n_ν< 45.0
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項6】
請求項1〜5の任意の1に記載のズームレンズにおいて、
第3レンズ群の負レンズL33の焦点距離:f33、短焦点端における全系の焦点距離:fwが、条件:
(9) ―1.5 <f33/fw< ―0.5
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載のズームレンズにおいて、
第3レンズ群の中心肉厚:D3、短焦点端における全系の焦点距離:fwが、条件:
(10) 1.0 <D3/fw< 2.0
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項8】
請求項1〜7の任意の1に記載のズームレンズにおいて、
第3レンズ群の正レンズL31が非球面を有することを特徴とするズームレンズ。
【請求項9】
請求項1〜8の任意の1に記載のズームレンズにおいて、
開口絞りと第3レンズ群との間隔が、短焦点端において長焦点端よりも広くなるように開口絞りが移動し、
短焦点端における開口絞りと第3レンズ群の最も物体側の面との軸上間隔:DSw、長焦点端における全系の焦点距離:ftが、条件:
(11) 0.05 <DSw/ft< 0.20
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項10】
請求項1〜9の任意の1に記載のズームレンズにおいて、
長焦点端における、レンズ全長:TLt、全系の焦点距離:ftが、条件:
(12) 0.8 <TLt/ft< 1.2
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項11】
請求項1〜10の任意の1に記載のズームレンズを、撮影用光学系として有することを特徴とするカメラ。
【請求項12】
請求項1〜10のズームレンズを、カメラ機能部の撮影用光学系として有することを特徴とする携帯情報端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−112996(P2012−112996A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259353(P2010−259353)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】