説明

セキュリティシステム並びにそれに用いられる警報装置及びユーザ端末

【課題】正当者が出入り可能な状況であったとしても、不審者が所定の空間に侵入した場合、異常を警報することができるセキュリティシステムを提供すること。
【解決手段】セキュリティシステム100は、警報装置1と、正当者が所持するユーザ端末2とを備える。警報装置1は、所定の空間に、人が入ってきたか否かを感知する人感知センサ部3と、無線通信部4と、制御装置5とを含む。制御装置5は、人感知センサ部3によって人が感知されたとき、無線通信部4を介して、識別IDの送信をユーザ端末2に対して要求し、ユーザ端末2から送信されてくる識別IDを受信すると、受信した識別IDを照合する。制御装置5は、照合結果に基づいて、人感知センサ部3によって感知された人が正当者であるか不審者であるかを判断する。識別IDの返信がない場合、制御装置5は、人感知センサ部3によって感知された人が不審者であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不審者を検出するためのセキュリティシステム並びにそれに用いられる警報装置及びユーザ端末に関し、より特定的には、一定のユーザ端末を所持していない不審者を検出するためのセキュリティシステム並びにそれに用いられる警報装置及びユーザ端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセキュリティシステムとして、入り口などにICカードによる認証ゲートを設け、認証された者だけが室内に入室できるシステムがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−109308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来のセキュリティシステムにおいては、ICカードを認証するための認証ゲートが必要である。ところが、学校などのように、出入り口が広範囲に渡っていたり、入り口が複数あったり、出入りが頻繁に行われるような場所では、このようなICカードによる認証を用いたセキュリティシステムは、使いづらい。たとえば、学校のようなところでは、グランドから不審者が侵入する可能性がある。しかし、グランドへの侵入経路は、校門などのような出入り口として認証ゲートを設けているところには限らない。さらに、何らかの方法で、すでに不審者が施設内に侵入してしまった場合、従来のセキュリティシステムでは、不審者の存在を警告することができない。たとえば、正当者がICカードを用いて、施設内に侵入し、入り口が開いている瞬間に不審者が施設内に気づかれないように侵入した場合を考える。この場合、不審者は、認証ゲートを通過してしまったことになるので、以後、セキュリティシステムは、当該不審者を認識することができない。特に、学校などのような場所で、仮に、出入り口にICカードによる認証ゲートを設けていたとしても、不審者が何らかの方法で学校に侵入し、目立たない場所に隠れて、不正行為を行う機会を窺うことも可能となる。
【0004】
既に施設内に誰も存在しないという状況であれば(たとえば、学校から生徒・児童・教職員など全員が帰宅したという状況であれば)、人感知センサによるセキュリティシステムを働かせ、不審者が学校に侵入したら、警報することも可能である。しかし、このようなセキュリティシステムは、正当者と不審者とを区別することができないので、たとえば、日中、このようなセキュリティシステムを働かせておくことはできない。
【0005】
それゆえ、本発明の目的は、正当者が出入り可能な状況であったとしても、不審者が所定の空間に侵入した場合、異常を警報することができるセキュリティシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、不審者を検出するためのセキュリティシステムであって、不審者を検出する警報装置と、正当者が所持し、警報装置と通信可能なユーザ端末とを備える。警報装置は、所定の空間に、人が入ってきたか否かを感知する人感知手段と、人感知手段によって人が感知されたとき、識別IDの送信をユーザ端末に対して要求する識別ID要求手段と、ユーザ端末から送信されてくる識別IDを受信する識別ID受信手段と、識別ID受信手段が受信した識別IDを照合する識別ID照合手段と、識別ID照合手段による照合結果に基づいて、人感知手段によって感知された人が正当者であるか不審者であるかを判断する判断手段とを含む。ユーザ端末は、警報装置によって識別IDの送信が要求された場合、記憶している識別IDを送信する識別ID送信手段を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所定の空間で人が感知されたら、警報装置によって、識別IDの送信が要求される。当該要求に応じて、ユーザ端末は、識別IDを返信する。もし、所定の空間に侵入した者が正当者であれば、ユーザ端末を所持しているので、警報装置によって、不審者とは判断されない。一方、所定の空間に侵入した者が不審者であれば、ユーザ端末を所持していない、もしくは、所持していたとしてもその識別IDが登録されていないので、警報装置によって、不審者が侵入したと判断される。したがって、もし、誰もいない所定の空間に不審者が侵入すれば、警報装置によって、不審者の侵入が警報されることとなる。これにより、正当者が出入り可能な状況であったとしても、不審者が所定の空間に侵入した場合、異常を警報することができるセキュリティシステム並びにそれに用いられる警報装置及びユーザ端末が提供されることとなる。
【0008】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るセキュリティシステム100の構成を示す概念図である。図1において、セキュリティシステム100は、警報装置1と、正当者が所持するユーザ端末2とを備える。警報装置1は、制御装置5と、人感知センサ部3と、無線通信部4とを含む。人感知センサ部3及び無線通信部4は、室内の天井や、屋外に立脚した支柱など、不審者の侵入を禁止する所定の空間に設けられている。制御装置5は、人感知センサ部3及び無線通信部4と、電気信号を送受信することができる。制御装置5は、人感知センサ部3及び無線通信部4の近くに配置されていてもよいし、遠くに配置されていてもよい。制御装置5は、外部ネットワークと接続されており、異常が発生したら、自ら警告音を発すると共に、外部ネットワークを介して、外部のコンピュータ装置(図示せず)に異常を通報する。人感知センサ部3は、赤外線センサなど、人の有無を感知することができる。無線通信部4は、Bluetooth(登録商標)などの無線通信方式を用いて、制御装置5とユーザ端末2との無線通信を可能にする。図1では、人感知センサ部3と無線通信部4とは、隣接して記載されているが、人検出距離や、通信可能距離を考慮して、離れて設置されていてもよい。また、人感知センサ部3と無線通信部4とが一対一に対応付けられているが、一つの人感知センサ部3に対して、複数の無線通信部4を対応付けて配置してもよいし、逆に、一つの無線通信部4に対して、複数の人感知センサ部3を対応付けて配置してもよい。また、図1では、人感知センサ部3と無線通信部4とに対応して、制御装置5が設けられているようにしているが、複数の人感知センサ部3と複数の無線通信部4とに対して、一つの制御装置5が設けられていても良い。
【0010】
図2は、警報装置1の機能的構成を示すブロック図である。図2において、図1に示す部分と同一の機能を有する部分については、同一の参照符号を付す。図2において、警報装置1は、制御部6と、記憶部7と、外部通信部8と、出力部9と、人感知センサ部3と、無線通信部4とを含む。制御部6と、記憶部7と、外部通信部8と、出力部9とによって、制御装置5が構成される。制御部6は、外部通信部8を介して、外部ネットワークと接続され、外部のコンピュータ装置(図示せず)と通信可能である。外部通信部8は、外部ネットワークでの通信プロトコルに従って、制御部6からの信号を送信し、外部ネットワークからの信号を受信することができる装置である。出力部6は、スピーカーやライト、ディスプレイなどである。制御部6は、異常が発生したら、出力部9に、異常を示す出力を実行させる。たとえば、制御部6は、異常が発生したら、出力部9に、大音量の警報音を出力させる。なお、出力部9が音や光で異常を知らせる場合、出力部9は、管理室等に設けられていても良いし、人感知センサ部3や無線通信部4の近くに設けられていても良い。出力部9が人感知センサ部3や無線通信部4の近くに設けられている場合、出力部9と人感知センサ部3や無線通信部4とが一対一に対応しているとよい。記憶部7は、メモリやハードディスク等の記録装置である。記憶部7は、登録されているユーザ端末2の識別IDを格納している。なお、制御部6と記憶部7とは、ネットワークを介して接続されていてもよい。制御装置5は、専用のハードウエアによって実現されてもよいし、後述の図4に示す動作を実行させるプログラムがインストールされた汎用のコンピュータ装置によって実現されていてもよい。
【0011】
図3は、ユーザ端末2の機能的構成を示すブロック図である。図3において、ユーザ端末2は、記憶部10と、制御部11と、無線通信部12とを含む。なお、ユーザ端末2は、携帯電話等の汎用的なハードウエアの一部として実現されてもよいし、専用のハードウエアとして実現されてもよい。ユーザ端末2が汎用的なハードウエアの一部として実現される場合、後述の図5に示す動作を実行させるプログラムが記憶部10に格納され、当該ハードウエアのCPUが制御部11として機能して、当該プログラムを実行すればよい。記憶部10は、メモリやハードディスク等の記録装置である。記憶部10は、ユーザ端末2に割り当てられた識別IDを格納している。無線通信装置12は、無線通信装置4と同様、Bluetooth(登録商標)などの無線通信方式を用いおり、制御装置5とユーザ端末2との無線通信を可能にする。
【0012】
図4は、警報装置1の動作を示すフローチャートである。以下、図4を参照しながら、警報装置1の動作について説明する。まず、制御部6は、人感知センサ部3からの信号に基づいて、人感知センサ部3によって、所定の空間に人が侵入したか否かを判断する(ステップS101)。人が感知されていない場合、制御部6は、そのまま、ステップS101の動作を継続する。一方、人が感知された場合、制御部6は、ステップS102の動作に進む。
【0013】
ステップS102において、制御部6は、識別IDを送信することを要求する信号(識別ID要求信号)を無線通信部4に送信させる。次に、制御部6は、予め定められた所定の時間を経過したか否かを判断する(ステップS103)。所定の時間を経過していない場合、ステップS104の動作に進む。一方、所定の時間を経過している場合、ステップS108の動作に進む。
【0014】
ステップS104において、制御部6は、無線通信部4がユーザ端末2からの識別IDを受信したか否かを判断する。識別IDを受信していない場合、制御部6は、ステップS103の動作に戻る。一方、識別IDを受信した場合、制御部6は、ステップS105の動作に進む。ステップS105において、制御部6は、記憶部7を参照して、受信した識別IDが登録されている識別IDと一致するか否かの照合を実行する。照合の結果、制御部6は、識別IDの認証が完了したか否か、すなわち、一致する識別IDが記憶部7に格納されていたか否かを判断する(ステップS106)。認証が完了した場合、制御部6は、ステップS107の動作に進み、人感知センサ部3が感知した人は、正当者であると認識する。一方、認証ができなかった場合、制御部6は、ステップS108の動作に進む。
【0015】
ステップS108において、制御部6は、侵入した者は不審者であるとして、警報する。たとえば、制御部6は、出力部9に音を出力させたり、ライトを光らせたり、ディスプレイに異常を表示したり、外部通信部8を介して、外部のコンピュータ装置(図示せず)に異常を通報したりして、不審者の侵入を警報する。
【0016】
図5は、ユーザ端末2の動作を示すフローチャートである。以下、図5を参照しながら、ユーザ端末2の動作について説明する。まず、制御部11は、無線通信部12からの信号に基づいて、識別ID要求信号を受信したかを判断する(ステップS201)。識別ID要求信号を受信していない場合、制御部11は、ステップS201の動作に戻る。一方、識別ID要求受信を受信した場合、制御部11は、記憶部10に格納されている自端末の識別IDを読み出し、当該識別IDに対応する信号を、無線通信部12に送信させて、ステップS201の動作に戻る。
【0017】
このように、本実施形態によれば、所定の空間で人が感知されたら、警報装置1によって、識別IDの送信が要求される。当該要求に応じて、ユーザ端末2は、識別IDを返信する。もし、所定の空間に侵入した者が正当者であれば、ユーザ端末2を所持しているので、警報装置1によって、不審者とは判断されない。一方、所定の空間に侵入した者が不審者であれば、ユーザ端末2を所持していない、もしくは、所持していたとしても記憶部7にその識別IDが登録されていないので、警報装置1によって、不審者が侵入したと判断される。したがって、もし、誰もいない所定の空間に不審者が侵入すれば、警報装置1によって、不審者の侵入が警報されることとなる。
【0018】
なお、本実施形態を用いる場合、所定の空間に複数の人がいる場合、正当者が一人でもいれば、その中に不審者が混ざっていたとしても識別IDの返信が行われることになり、不審者の侵入は通報されない。しかし、所定の空間に複数の人がいる場合に、正当者が一人でもいれば、不審者の存在に当該正当者が気づくはずであるから、本実施形態に係るセキュリティシステムであっても、不都合は生じない。特に、本実施形態に係るセキュリティシステムが有効に機能するのは、不審者が誰もいない場所(たとえば、トイレや倉庫、視聴覚施設、階段の踊り場、屋外の物陰など)に潜んでいる場合である。このような場合、本実施形態のセキュリティシステムを用いれば、警報装置1は、不審者の存在を認識することができる一方、正当者が侵入した場合は、異常を警報しない。
【0019】
本実施形態に係るセキュリティシステムは、学校や、公官庁、会社の建物、自宅など、人が頻繁に出入りするが、通常は、特定の者の出入りしか許可されていないような場所に、不審者が紛れて侵入していることを検出することができる。本実施形態に係るセキュリティシステムは、このような場所での利用に特に効果的である。
【0020】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
セキュリティシステム並びにそれに用いられる警報装置及びユーザ端末は、一定のユーザ端末を所持していない不審者を検出することができ、産業上、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るセキュリティシステム100の構成を示す概念図
【図2】警報装置1の機能的構成を示すブロック図
【図3】ユーザ端末2の機能的構成を示すブロック図
【図4】警報装置1の動作を示すフローチャート
【図5】ユーザ端末2の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0023】
100 セキュリティシステム
1 警報装置
2 ユーザ端末2
3 人感知センサ部
4 無線通信部
5 制御装置
6 制御部
7 記憶部
8 外部通信部
9 出力部
10 記憶部
11 制御部
12 無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不審者を検出するためのセキュリティシステムであって、
前記不審者を検出する警報装置と、
正当者が所持し、前記警報装置と通信可能なユーザ端末とを備え、
前記警報装置は、
所定の空間に、人が入ってきたか否かを感知する人感知手段と、
前記人感知手段によって前記人が感知されたとき、識別IDの送信を前記ユーザ端末に対して要求する識別ID要求手段と、
前記ユーザ端末から送信されてくる前記識別IDを受信する識別ID受信手段と、
前記識別ID受信手段が受信した前記識別IDを照合する識別ID照合手段と、
前記識別ID照合手段による照合結果に基づいて、前記人感知手段によって感知された前記人が前記正当者であるか前記不審者であるかを判断する判断手段とを含み、
前記ユーザ端末は、前記警報装置によって前記識別IDの送信が要求された場合、記憶している識別IDを送信する識別ID送信手段を含むことを特徴とする、セキュリティシステム。
【請求項2】
不審者を検出するためのセキュリティシステムで用いられ、正当者が所持しているユーザ端末と通信して、前記不審者を検出する警報装置であって、
所定の空間に、人が入ってきたか否かを感知する人感知手段と、
前記人感知手段によって前記人が感知されたとき、識別IDの送信を前記ユーザ端末に対して要求する識別ID要求手段と、
前記ユーザ端末から送信されてくる前記識別IDを受信する識別ID受信手段と、
前記識別ID受信手段が受信した前記識別IDを照合する識別ID照合手段と、
前記識別ID照合手段による照合結果に基づいて、前記人感知手段によって感知された前記人が前記正当者であるか前記不審者であるかを判断する判断手段とを含むことを特徴とする、警報装置。
【請求項3】
所定の空間に、人が入ってきたか否かを感知する人感知手段と、前記人感知手段によって前記人が感知されたとき、識別IDの送信を要求する識別ID要求手段と、送信されてくる前記識別IDを受信する識別ID受信手段と、前記識別ID受信手段が受信した前記識別IDを照合する識別ID照合手段と、前記識別ID照合手段による照合結果に基づいて、前記人感知手段によって感知された前記人が正当者であるか不審者であるかを判断する判断手段とを備える警報装置との間で通信可能なユーザ端末であって、前記警報装置によって前記識別IDの送信が要求された場合、記憶している識別IDを送信することを特徴とする、ユーザ端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−271638(P2009−271638A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119852(P2008−119852)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(598025555)株式会社岡田製作所 (11)
【Fターム(参考)】