説明

セラミック基板

【課題】表層導体の剥離が生じ難く、電子部品の実装が容易であり、大電流用の配線基板として好適なセラミック基板を提供する。
【解決手段】セラミック基板10は、セラミック焼結体12と表層導体14とが一体化され、表面に表層導体14が露出した構成を有する。セラミック焼結体12の一主面12aと、表層導体14の一主面14aとは、同一平面をなし、表層導体14の一主面14a以外の部分は、セラミック焼結体12に埋設され一体的に接合されている。表層導体14の一主面14a以外の部分、すなわち、表層導体14の側面14bは、セラミック焼結体12の内壁部12bと接合され、表層導体14の他方の主面14cは、セラミック焼結体12の内底面12cと接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板に関し、一層詳細には大電流用の配線基板として好適なセラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車、産業機器や家電のインバータに用いられる配線基板には、大電流が印加されるため、配線の抵抗による損失が生じ易く、配線が発熱し最終的には溶断に至るおそれがある。そのため、大電流用の配線導体には、その断面積の大きいものが好適である。
【0003】
また、大電流による発熱や高温環境での使用によって配線基板が膨張した際に、配線と基板との熱膨張差によって、基板から配線が剥離する懸念がある。そこで、配線の剥離を防ぐために、配線となる導体をセラミック焼結体の内部に埋設したセラミック基板が提案されている。(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−43757号公報
【特許文献2】特開2000−151104号公報
【特許文献3】特開2003−174261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1、2には、セラミックグリーンシートの表面に導体ペーストをスクリーン印刷した後、積層し焼成して得られるセラミック基板が示されている。このセラミック基板の場合、セラミック焼結体の内部に埋設された配線の剥離は回避できるものの、セラミック基板の表面には導体が盛り上がった構造の配線が形成されるため、依然配線が剥離する懸念が払拭されない。
【0006】
また、盛り上がった配線によって基板の表面の平坦性が損なわれるため、半導体素子等の電子部品を確実に実装することや、実装のための半田印刷を均一に行うことが困難になる。
【0007】
さらに、セラミックグリーンシートの表面に導体ペーストを印刷する方法では、導体の厚みの分だけ焼成後のセラミック基板に変形が生じ易い。そのため、導体の位置精度が低下したり、導体と基板との間に隙間が生じたりするおそれがある。
【0008】
加えて、特許文献1、2では、100μm程度の厚みを有するセラミックグリーンシートに対し、相対的に厚みが極めて小さい導体が形成されているため、大電流用の基板として好適といえるものではない。
【0009】
特許文献3には、断面が逆台形形状の導体とセラミックグリーンシートとを積層して得られるセラミック基板が示されている。この場合、導体の断面積が小さくなって高抵抗化するため、配線が発熱し易くなる。また、導体が台形形状のためセラミックグリーンシートの圧着時に圧力が均一に印加され難く、その結果、特許文献1、2と同様に、セラミック基板に変形が生じるため、電子部品の実装に支障を来す懸念がある。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、表層導体の剥離が生じ難く、電子部品の実装が容易であり、大電流用の配線基板として好適なセラミック基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明に係るセラミック基板は、厚みが30μm以上の表層導体とセラミック焼結体とが一体化されたセラミック基板であって、
前記セラミック焼結体の一主面に前記表層導体が露出し、且つ、前記セラミック焼結体の一主面と、前記表層導体の一主面とが、同一平面を形成していることを特徴とする。
【0012】
セラミック焼結体の一主面と表層導体の一主面とが同一平面を形成していることで、表層導体への電子部品の確実な実装や、電子部品の実装のための正確な半田印刷が可能となる。また、厚みの大きい表層導体の側面からセラミック焼結体に熱が逃げるため、配線の発熱を低減することができる。さらに、配線とセラミック焼結体との温度差が生じ難くなり、熱膨張差による剥離を低減することができる。しかも、表層導体の側面がセラミック焼結体に埋設されているため、導体とセラミック焼結体とが一体化(接合)された面積が大きく、より一層剥離し難くなる。従って、表層導体に対し、大電流用の大型の電子部品を搭載した場合の接続強度が高い。
【0013】
また、第1の本発明に係るセラミック基板において、前記表層導体の一主面には、金属被膜が形成されていてもよい。例えば、半田印刷によって金属被膜を形成することにより電子部品の実装を容易化することができ、めっき等によって金属被膜を形成し配線厚みを大きくすることにより低抵抗化することができる。
【0014】
この場合、第1の本発明に係るセラミック基板において、前記表層導体の厚みと前記金属被膜の厚みの合計が、50μm以上となる構成としてもよい。上記のように表層導体がセラミック焼結体に埋設されているため、金属被膜の厚みを大きくしても熱膨張差による剥離が生じ難いことから、より一層配線の抵抗を低減することができる。
【0015】
さらに、第1の本発明に係るセラミック基板において、前記セラミック焼結体の内部に埋設された内層導体を有し、前記表層導体と該内層導体とが、ビア電極により接続されていてもよい。内層導体を設けてもセラミック基板の変形が少なく、ビア電極との接続も確実に可能であることから、基板の信頼性に優れる。
【0016】
第2の本発明に係るセラミック基板は、厚みが30μm以上の表層導体とセラミック焼結体とが一体化されたセラミック基板であって、前記セラミック焼結体の一主面よりも内方に前記表層導体が設けられ、且つ、前記表層導体の一主面に金属被膜が形成されて露出するとともに、前記セラミック焼結体の一主面と、前記金属被膜の表面とが、同一平面を形成していることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、第1の本発明と同様に、セラミック基板の一主面と金属被膜の表面とが同一平面を形成していることで、表層導体又は金属被膜への電子部品の確実な実装が可能となる。また、厚みの大きい表層導体の側面及び金属被膜の側面からセラミック焼結体に熱が逃げるため、配線の発熱をより一層低減することができる。さらに、表層導体の側面がセラミック焼結体中に埋設されているため、導体とセラミック焼結体とが一体化(接合)された面積が大きく、剥離し難い。従って、表層導体又は金属被膜に対し、大電流用の大型の電子部品を搭載した場合に接続強度が高い。
【0018】
この場合、第2の本発明に係るセラミック基板において、前記表層導体の厚みと前記金属被膜の厚みの合計が、50μm以上である構成としてもよい。より一層配線抵抗を低減することができる。
【0019】
また、第2の本発明に係るセラミック基板において、前記セラミック焼結体の一主面に隣接し、前記表層導体の側面に沿った内壁部には、前記金属被膜の側面が当接している構成とすることができる。表層導体の側面に加えて、金属被膜の側面もセラミック焼結体の内壁部に当接していることから、金属被膜からセラミック焼結体に放熱させることができるとともに、配線の剥離を防ぐことができ電子部品の接続強度も高めることができる。
【0020】
さらに、第2の本発明に係るセラミック基板において、前記セラミック焼結体の内部に埋設された内層導体を有し、前記表層導体と該内層導体とは、ビア電極により接続されている構成としてもよい。内層導体を設けてもセラミック基板の変形が少なく、ビア電極との接続も確実に可能であることから、基板の信頼性に優れる。また、例えば、ビア電極をめっきにより形成する場合には、金属被膜とビア電極とを同時に、しかも精度良く設けることができる。
【0021】
また、第1又は2の本発明に係るセラミック基板において、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、基体上に形成された導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形体を一体的に焼成することにより、導体成形体が導体となり、セラミック成形体がセラミック焼結体とされたものであることが好ましい。このような構成によれば、セラミック焼結体の一主面と、表層導体の一主面とが同一平面を形成するセラミック基板とすることが容易である。
【0022】
さらに、第2の本発明に係るセラミック基板において、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、基体上に設けられた凸パターン上に形成された導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形体を一体的に焼成することにより、導体成形体が導体となり、セラミック成形体がセラミック焼結体とされたものであることが好ましい。このような構成によれば、セラミック焼結体の一主面よりも表層導体を内方に位置させて表層導体の一主面に金属被膜を形成することができるとともに、セラミック焼結体の一主面と金属被膜の一主面とが同一平面を形成するセラミック基板とすることが容易である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係るセラミック基板によれば、表層導体の剥離が生じ難く、電子部品の実装が容易であり、大電流用の配線基板として好適なセラミック基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1Aは、第1実施形態に係るセラミック基板を示す一部平面図であり、図1Bは、図1AのIB−IB線断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態の変形例に係るセラミック基板を示す断面図である。
【図3】図3は導体成形体を有する第1セラミック成形体と導体成形体を有しない第2セラミック成形体を積層してセラミック積層体とした状態を示す断面図である。
【図4】図4Aはフイルム上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図4Bは鋳込み型内にフイルムを設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図4Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図5】図5Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフイルムごと離型した状態を示す断面図であり、図5Bはフイルムから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図であり、図5Cは、第1セラミック成形体に貫通孔を設け、該貫通孔に導体ペーストを充填した状態を示す断面図である。
【図6】図6Aはフイルムを鋳込み型内に設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図6Bは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第2セラミック成形体とした状態を示す断面図であり、図6Cは鋳込み型から第2セラミック成形体をフイルムごと離型し、さらに、フイルムから第2セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図7】図7Aはフイルム上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図7Bは鋳込み型内にフイルムを他のフイルム及びスペーサと共に設置した、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図7Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図8】図8Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフイルム、他のフイルム及びスペーサごと離型した状態を示す断面図であり、図8Bはフイルム、他のフイルム及びスペーサから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図9】図9Aは基体上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図9Bは導体成形体を被覆するように基体上にスラリーを塗布した状態を示す断面図である。
【図10】図10Aは基体上にスラリーを塗布する方法の一例を示す斜視図であり、図10Bはその側面図である。
【図11】図11Aは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す断面図であり、図11Bは基体を剥離して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図であり、図11Cは、第1セラミック成形体に貫通孔を設け、該貫通孔に導体ペーストを充填した状態を示す断面図である。
【図12】図12Aは基体上にスラリーを塗布した状態を示す断面図であり、図12Bは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す断面図であり、図12Cは基体を剥離して第2セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図13】図13Aは、第2実施形態に係るセラミック基板を示す断面図である。図13Bは導体成形体を有する第1、3セラミック成形体と導体成形体のない第2セラミック成形体を積層してセラミック積層体とした状態を示す断面図である。
【図14】図14Aはフイルム上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図14Bは鋳込み型内にフイルムを設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図14Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図15】図15Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフイルムごと離型した状態を示す断面図であり、図15Bはフイルムから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図であり、図15Cは、第1セラミック成形体に貫通孔を設け、該貫通孔に導体ペーストを充填した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先ず、第1実施形態に係るセラミック基板10について図1A、図1Bを参照しながら説明する。
【0026】
図1Aは、セラミック基板10の平面図である。セラミック基板10は、セラミック焼結体12と表層導体14とが一体化され、表面に表層導体14が露出した構成を有する。表層導体14は、所定の表層導体パターン16を形成し、配線として機能する。表層導体14には、例えば、半導体素子や端子等を接続するための拡幅された接続部18が配設され、該接続部18には、内層導体22(図1B参照)と表層導体14とを電気的に接続するビア電極20の一端が接続されている。
【0027】
セラミック基板10のIB−IB線断面を示す図1Bから諒解されるように、セラミック焼結体12の一主面12aと、表層導体14の一主面14aとは、同一平面をなし、表層導体14の一主面14a以外の部分は、セラミック焼結体12に埋設され一体的に接合されている。表層導体14の一主面14a以外の部分、すなわち、表層導体14の側面14bは、セラミック焼結体12の内壁部12bと接合され、表層導体14の他方の主面14cは、セラミック焼結体12の内底面12cと接合されている。
【0028】
また、図1Bに示すセラミック基板の断面において、表層導体14の他方の主面14cの一部、例えば接続部18が形成された部分には、ビア電極20が設けられ、表層導体14と内層導体22とが接続されている。内層導体22は、図1Aの例では、セラミック焼結体12の内部に、表層導体14と平行して2層設けられており、それぞれ内層導体パターン24を構成している。内層導体22間も一部がビア電極によって接続されている。なお、内層導体22は、2層に限らず、多数設けられてよい。
【0029】
表層導体14の厚みは、30μm以上が好ましく、45μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。また、表層導体14の厚みの上限は、例えば、200μm以下、150μm以下、100μm以下とすることが好ましい。内層導体22も同様の厚みとすることができる。
【0030】
また、表層導体14と内層導体22との間隔は、例えば10〜500μm、30〜300μm、より好ましくは、50〜200μmとすることができる。表層導体14に平行に設けられた2層の内層導体22の層間隔も上記と同様に、例えば10〜500μm、30〜300μm、より好ましくは、50〜200μmとすることができる。
【0031】
第1実施形態に係るセラミック基板は、基本的には以上のような構成を有する。次にその作用効果について説明する。
【0032】
本実施形態では、セラミック焼結体12の一主面12aと表層導体14の一主面とを同一平面上に位置させている。これにより、表層導体14に半導体素子等の電子部品を実装する際に、表面に凹凸がなく平坦であることから、部分的に実装不良が生じたり、電子部品の傾きや位置ずれ等が生じたりすることなく、確実に実装することができる。また、表層導体14に電子部品の実装のための半田印刷を行う場合には、セラミック基板10の表面の平坦性により、均一な印刷膜を正確に施すことが可能となる。
【0033】
また、表層導体14の厚みが30μm以上と大きいため導体の抵抗が小さくなり、大電流を流したときの発熱も抑えることができる。しかも、表層導体14がセラミック焼結体12に埋設され、表層導体14の側面14bとセラミック焼結体12の内壁部12bとが接合されているため、表層導体14の側面14bからセラミック焼結体12に熱を逃がして放熱することができる。
【0034】
さらに、表層導体14とセラミック焼結体12とが一体化(接合)された面積が大きく、剥離し難い。特に、表層導体14の側面14bは、セラミック焼結体12の内壁部12bと接合されていることから、例えば表層導体14の熱膨張がセラミック焼結体12の熱膨張より大きい場合であっても、側面14bによって拘束されているため、表層導体14が剥離するような応力が生じ難い。従って、表層導体14に対し、大電流用の大型の電子部品を搭載したり、接続端子を接続したりした場合も接続強度が大きいためはずれ難くなる。
【0035】
次に、第一実施形態に係るセラミック基板の変形例について図2を参照して説明する。
図2に示すように、この変形例に係るセラミック基板10は、表層導体14の一主面上に金属被膜26を設けた点で、図1Bに示した例と異なる。
【0036】
金属被膜26は、半田、めっき、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング、化学気相成長(CVD)等の各種の成膜法により形成された被膜を採用することができる。金属被膜26の厚みは、例えば、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。従って、表層導体14の厚みと金属被膜26の厚みとの合計は、50μm以上とすることができる。
【0037】
例えば、半田印刷によって金属被膜26を形成した場合には、半導体素子等の電子部品の実装を容易化できる。また、めっき等によって金属被膜26を形成することで、より一層配線抵抗を低くできることは勿論、半田濡れ性、耐腐食性、耐酸化性、高熱伝導性等に優れた各種金属材料を用いることにより、配線の各特性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、所定の厚みを有する表層導体14がセラミック焼結体12に埋設されており、表層導体14の側面14bがセラミック焼結体12の内壁部12bと接合されているため、表層導体14上に、例えば厚みの大きな金属被膜26を設けても、熱膨張差による剥離が回避される。
【0039】
この第一実施形態に係るセラミック基板の製造方法について、上記した変形例も含め図3〜図12Cを参照して説明する。
【0040】
図3に示すように、後に導体となる導体成形体28を有し、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー30(図4B参照)を、導体成形体28を被覆するように供給した後に硬化して得られる複数の第1セラミック成形体32と、導体成形体28のない第2セラミック成形体34とを積層してセラミック積層体36を作製し、該セラミック積層体36を焼成することによって図1に示すセラミック基板10が得られる。
【0041】
すなわち、セラミック積層体36を焼成することによって、導体成形体28による表層導体14及び内層導体22と、これらが埋め込まれたセラミック焼結体12とを有するセラミック基板10が得られる。
【0042】
ここで、セラミック積層体36の2つの作製方法(第1作製方法及び第2作製方法)について図4A〜図12Cを参照しながら説明する。
【0043】
[第1作製方法]
第1作製方法は、先ず、図4Aに示すように、フイルム38上に導体ペースト40を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフイルム38上に導体成形体28を形成する。フイルム38は、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)である。導体ペースト40の加熱硬化時における収縮、歪を抑制するために、予めフイルム38に温度150℃で10分以上のアニール処理を施すことが好ましい。
【0044】
その後、図4Bに示すように、フイルム38を鋳込み型42内に設置し、スラリー30を鋳込み型42内に鋳込んだ後に、硬化(室温硬化や乾燥硬化等)する。これによって、図4Cに示すように、第1セラミック成形体32が得られる。この場合、図5Aに示すように、フイルム38上に第1セラミック成形体32が設置された状態になっているため、第1セラミック成形体32をフイルム38から離型することによって、図5Bに示すように、導体成形体28が埋設された第1セラミック成形体32が得られる。
【0045】
この場合、スラリー30に熱硬化性樹脂前駆体を含んでいるため、スラリー30の硬化時における乾燥収縮に伴う導体成形体28周りの部分の変形は小さい。従って、第1セラミック成形体32のうち、導体成形体28の周りの部分の変形も小さく、第1セラミック成形体32の一主面(導体成形体28の一主面が露出された面)の平坦性も良好となる。
【0046】
次に、図5Cに示すように、第1セラミック成形体32に対し、ビア電極20を形成するための貫通孔44を穿設する孔加工を行う。孔加工は、NCパンチで開ける方法、金型で打ち抜く方法、レーザを用いて開ける方法などが挙げられる。なかでも、レーザを用いる方法や、金型による打抜き加工が量産に対応でき、孔加工精度にも優れる点で好ましい。孔加工によって第1セラミック成形体32に形成された貫通孔44に導体ペースト45を例えばスクリーン印刷によって充填し、硬化させる。
【0047】
一方、図6Aに示すように、フイルム38を鋳込み型42内に設置し、スラリー30を鋳込み型42内に鋳込んだ後に、図6Bに示すように、スラリー30を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)する。その後、フイルム38を離型することによって、図6Cに示すように、第2セラミック成形体34が得られる。
【0048】
第1セラミック成形体32の鋳込み型42からの離型性を良好にするために、図7A〜図8Bに示すようにしてもよい。すなわち、図7Aに示すように、フイルム38上に導体ペースト40を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフイルム38上に導体成形体28を形成する。
【0049】
その後、図7Bに示すように、導体成形体28が形成されたフイルム38を鋳込み型42内に設置する際に、フイルム38の導体成形体28が形成された面と他のフイルム46とを対向させ、さらに、フイルム38と他のフイルム46の間にスペーサ48を挟んで設置する。そして、スペーサ48にて形成される空間内にスラリー30を流し込んだ後に硬化して、第1セラミック成形体32を得るようにしてもよい(図7C参照)。この場合、図8Aに示すように、第1セラミック成形体32がフイルム38、他のフイルム46及びスペーサ48にて囲まれた状態となっているため、第1セラミック成形体32が鋳込み型42に不要に付着することなく、簡単に鋳込み型42から離型することができる。
【0050】
さらに、導体成形体28が形成されるフイルム38の表面に塗布された剥離剤の剥離力と、他のフイルム46の表面に塗布された剥離剤の剥離力とを異なるようにすれば、必ずどちらかのフイルム38(又は46)が剥がれ易くなり、フイルム38(又は46)からの離型も容易になる。図8Bに、フイルム38、他のフイルム46及びスペーサ48から第1セラミック成形体32を離型した状態を示す。なお、第2セラミック成形体34についても、図7A〜図8Bの作製方法を採用してもよい。
【0051】
次に、図3に示すように、例えば複数の第1セラミック成形体32と、少なくとも1つの第2セラミック成形体34を積層して、セラミック積層体36とする。このとき、セラミック積層体36の一主面に、第1セラミック成形体32の一主面、すなわち導体成形体28が露出している面が上面となるように積層する。第1セラミック成形体32の一主面の平坦性が良好となっていることから、セラミック積層体36における一主面(導体成形体28の一主面が露出された面)の平坦性も良好となる。
【0052】
このセラミック積層体36において、複数の第1セラミック成形体32及び第2セラミック成形体34は、スラリー30に含まれる溶剤の一部が残存していてもよい。この場合、硬化後の第1及び第2セラミック成形体32、34は柔軟性を有する。従って、一般に硬くて脆い熱硬化性樹脂前駆体をバインダに使用しても、柔軟性のあるテープ成形体として工程間を搬送させることができ、複数の第1セラミック成形体32及び第2セラミック成形体34を積層しても、積層間に空隙が生じる等の不具合は生じない(積層性の向上)。なお、積層の際の圧力、温度は、デラミネーションや積層体の変形、積層ずれを勘案して適宜設定される。
【0053】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0054】
[導体ペースト40:第1作製方法]
導体ペースト40としては、バインダとしてエポキシ、フェノール等の未硬化物を含有するものが好ましいが、とりわけ、レゾール型フェノール樹脂を含有するものが好ましい。また、金属粉末については、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Rhといった金属の単体又は合金、金属間化合物を用いることができるが、同時焼成されるセラミック部材に要求される特性、すなわち、焼成時の酸素分圧、温度、焼成収縮温度特性を考慮し、適宜選択される。焼成収縮温度特性については金属粉末組成だけではなく、金属粉末の粒径、比表面積、凝集度によっても適宜制御される。導体ペースト40中のバインダ分量については、例えば、Ag粉末の場合、金属粉末重量の1%〜10%の範囲を使用するが、セラミック部材の焼成収縮率、スクリーン印刷時の印刷性を考慮し、3〜6%の範囲が好ましい。
【0055】
導体ペースト40は、上述したように、印刷後、加熱硬化させるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第1の実施の形態で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、120℃で10分〜60分硬化させる。
【0056】
導体ペースト40による導体成形体28が形成されたフイルム38(この場合、PETフィルム)を鋳込み型42に設置するが、PETフイルムを鋳込み型42に設置する際、PETフイルムのうねりを抑制するため、所望の平行度、平坦度を有する型板に真空吸着、糊付け、静電吸着等の手段により吸着させる。
【0057】
なお、ビア電極の形成に用いる導体ペースト45は、導体成形体に用いる導体ペースト40と同じものを用いても良いし、例えば、貫通孔44に流れ込み易くなるように粘度を調整した別のものを用いてもよい。この場合、別の導体ペースト45として、市販の銀ペースト等を用いることができる。
【0058】
[鋳込み型42(金型):第1作製方法]
型板は、吸着手段に応じた板部材を使用する。例えば真空吸着の場合は、金属、セラミック、樹脂等の材質は関係なく、多孔質板や吸着用孔を多数あけた板を使用し、糊付けの場合は、糊との反応性がなく、後に溶剤等で糊を拭き取る際にも変質を起こさない材質の板を使用し、静電吸着の場合は、PETと静電吸着し易い材料でできた板を使用することが好ましい。
【0059】
鋳込み型42は、内部にスラリー30が流通する経路を有し、鋳込み硬化後のスラリー30が所望の厚みの板状となるように、型板間に、導体成形体28が形成されたフイルム38、他のフイルム46及びスペーサ48を設置して、フイルム38及び他のフイルム46を平行に対向した形態を有し、且つ、フイルム38と他のフイルム46との間に適当な間隔が設定されるようにすることが好ましい。
【0060】
フイルム38、他のフイルム46、スペーサ48は、PETフイルム、離型剤をコートした金属板・セラミック板、あるいはテフロン(登録商標)樹脂板等を用いることができる。
【0061】
そして、この鋳込み型42に、反応硬化する樹脂を含有するスラリー30を流し込み、硬化させる。
【0062】
[スラリー30:第1作製方法]
スラリー30は、用途に応じ、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含んだセラミックス粉末を無機成分と、例えば分散剤とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応が誘起される有機化合物とからなる。
【0063】
このスラリー30は、無機成分粉末の他、有機分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。有機分散媒は反応性官能基を有していてよく、あるいは有していなくともよい。しかし、この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
【0064】
反応性官能基を有する有機分散媒としては、以下を例示することができる。
【0065】
すなわち、反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリー30を固化可能な液状物質であること、及び鋳込みが容易な高流動性のスラリー30を形成できる液状物質であることの2つを満足する必要がある。
【0066】
ゲル化剤と化学結合し、スラリー30を固化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より十分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール、多塩基酸が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリグリセリンのように多数あってもよい。
【0067】
一方、注型が容易な高流動性のスラリー30を形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に、20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリー30を固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル、多価アルコールの酸エステル等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、スラリー30を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0068】
スラリー30に含有されていてもよい反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。また、非反応性分散媒としては、炭化水素、エーテル、トルエン等を例示できる。
【0069】
[ゲル化剤:第1作製方法]
スラリー30中に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、以下を例示することができる。
【0070】
すなわち、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリー30を固化することが好ましい。
【0071】
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリー30を固化可能な物質である。従って、ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0072】
但し、反応性ゲル化剤は、スラリー30の流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0073】
一般に、平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本実施例では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。なお、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0074】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0075】
イソシアナート類は、ジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリー30が固化してしまう場合がある。
【0076】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー30を固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー30を固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリー30を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0077】
イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0078】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0079】
なお、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0080】
スラリー30には、上述した成分以外に、消泡剤、界面活性剤、焼結助剤、触媒、可塑剤、特性向上剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0081】
上述したスラリー30は、以下のように作製することができる。
(a)分散媒に無機物粉体を分散してスラリー30とした後、ゲル化剤を添加する。
(b)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリー30を製造する。
【0082】
注型時及び塗布時の作業性を考慮すると、20℃におけるスラリー30の粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリー30の粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー30の濃度(スラリー30全体の体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0083】
但し、スラリー30の濃度は、通常は、25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。有機成分として分散媒、分散剤、反応硬化物、反応触媒を有する。このうち、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により固化する。
【0084】
[第2作製方法]
次に、第2作製方法について図9A〜図12Cを参照しながら説明する。
【0085】
先ず、図9Aに示すように、基体50の上面に導体ペースト40を例えば印刷法によってパターン形成し、さらに、このパターン形成された導体ペースト40を加熱硬化して、基体50上に導体成形体28を形成する。なお、基体50は、上述したフイルム38と同様に、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。
【0086】
その後、図9Bに示すように、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー30を、導体成形体28を被覆するように基体50上に塗布する。塗布方法としては、ディスペンサー法や、図10A及び図10Bに示す方法やスピンコート法等がある。図10A及び図10Bに示す方法は、一対のガイド板52a及び52bの間に基体50(導体成形体28が形成された基体50)を設置し、その後、スラリー30を、導体成形体28を被覆するように基体50上に塗布した後、ブレード状の治具54を一対のガイド板52a及び52bの上面を滑らせて(摺り切って)、余分なスラリー30を取り除く方法である。一対のガイド板52a及び52bの高さを調整することによって、スラリー30の厚みを容易に調整することができる。
【0087】
その後、図11Aに示すように、基体50上に塗布されたスラリー30を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させ、さらに、図11Bに示すように、基体50を剥離、除去することによって第1セラミック成形体32が完成する。この場合も、第1セラミック成形体32の一主面(導体成形体28の一主面が露出された面)の平坦性は良好となる。
【0088】
次に、図11Cに示すように、第1セラミック成形体32に対し、ビア電極20を形成するための貫通孔44を穿設する孔加工を行った後、貫通孔44に導体ペースト45を例えばスクリーン印刷によって充填し、硬化させる。
【0089】
一方、図12Aに示すように、導体成形体28が形成されていない基体50上に、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー30を塗布する。塗布方法は、上述したように、ディスペンサー法や、図10A及び図10Bに示す方法やスピンコート法等を用いることができる。
【0090】
その後、図12Bに示すように、基体50上に塗布されたスラリー30を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させ、さらに、図12Cに示すように、基体50を剥離、除去することによって第2セラミック成形体34が完成する。
【0091】
次に、図3に示すように、例えば複数の第1セラミック成形体32と、少なくとも1つの第2セラミック成形体34を積層して、セラミック積層体36とする。このとき、セラミック積層体36の一主面に、第1セラミック成形体32の一主面、すなわち導体成形体28が露出している面が上面となるように積層する。
【0092】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0093】
[導体ペースト40:第2作製方法]
第1作製方法と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2作製方法における導体ペースト40は、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む。導体ペースト40に使用される樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0094】
導体ペースト40は、上述したように、印刷後、加熱硬化されるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第2作製方法で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、温度80〜150℃、時間10分〜60分で硬化させることができる。
【0095】
[スラリー30:第2作製方法]
第1作製方法と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2作製方法におけるスラリー30に含まれるセラミック粉末は、用途に応じて、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含む。
【0096】
スラリー30に含まれる熱硬化性樹脂前駆体は、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子とを有する。
【0097】
上述した塗布方法のうち、ディスペンサー法や図10A及び図10Bに示す方法にてスラリー30を基体50上に塗布する場合、スラリー30の粘度は比較的高いことが好ましい。スラリー30の粘度は第1作製方法と同様でもよいが、スラリー30が低粘度だと、塗布した後の保形性が低く、流動による厚みバラつきが発生し易い。そのため、スラリー30の粘度は200cps〜2000cpsが好ましい。
【0098】
そこで、水酸基を有する高分子として分子量の大きい樹脂を用いることで、スラリー30の粘度を高くできる。一例としてブチラール樹脂は分子量が大きいため、スラリー30の粘度を高くするには好適である。もちろん、高分子の分子量でスラリー30の粘度の制御が可能となることから、塗布方法に応じて、高分子として使用する樹脂を適宜選択すればよい。
【0099】
上述したブチラール樹脂は、一般に、ポリビニルアセタール樹脂であるが、その中には原料のポリビニルアルコール樹脂に由来するOH基が残るので、このOH基がゲル化剤のイソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応するものと考えられる。
【0100】
特に、イソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応に必要な量を超えてブチラール樹脂を添加すると、反応後に残ったブチラール樹脂は熱可塑性樹脂として作用するので、熱硬化性樹脂の欠点である、硬化後の接着性が悪くなるという特性を改善することができる。その結果、例えば図3に示すように、第1セラミック成形体32を複数積層してセラミック積層体36を構成する場合に、各第1セラミック成形体32の接着性が良好となることから、製造過程において第1セラミック成形体32が剥離するという不都合を回避でき、複数の第1セラミック成形体32のセラミック積層体36によるセラミック基板10の歩留まりを向上させることができる。
【0101】
水酸基を有する高分子としては、その他、エチルセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、あるいはポリエーテル系樹脂を好ましく用いることができる。
【0102】
以上のように、第1方法又は第2方法によってセラミック積層体36を得た後、図1Bに示すように、導体成形体28が埋め込まれたセラミック積層体36を焼成することによって、1つのセラミック焼結体12に表層導体14、複数の内層導体22が三次元構造に埋設されたセラミック基板10が完成する。
【0103】
この場合、焼成前におけるセラミック積層体36の一主面の平坦性が良好となっていることから、焼成後におけるセラミック焼結体12の一主面12aも平滑で平坦な面となり、しかも、セラミック焼結体12の一主面12aと表層導体14の一主面14aとが同一平面上に存在する形態となる。
【0104】
さらに、半田、めっき、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング、化学気相成長(CVD)等の各種の成膜法により表層導体14の一主面14a上に、金属被膜26を形成することにより、図2に示す第1実施形態の変形例に係るセラミック基板10が得られる。
【0105】
なお、ビア電極20に代わりスルーホール電極を設ける場合には、例えば、セラミック積層体36に貫通孔を形成し、焼成後に該貫通孔にめっき膜を形成することでスルーホール電極としてもよい。この場合、めっきによる金属被膜26の形成と同時にスルーホール電極の形成をすることができる。
【0106】
そして、セラミック焼結体12の一主面12aから露出する表層導体14上、例えば接続部18に電子部品が実装される。
【0107】
次に、上記した製造方法に基づいて発揮される本実施形態に係るセラミック基板10の作用効果について説明する。
【0108】
従来においては、セラミックグリーンシート(セラミック成形体)の作製には、本実施形態で用いられる熱硬化性樹脂ではなく、熱可塑性樹脂が用いられてきた。その場合、熱可塑性樹脂を含むスラリーの乾燥収縮時に導体成形体との界面で隙間やクラックが発生したり、グリーンシートが凹凸形状になったりする。一方、本実施の形態では、スラリー30に熱硬化性樹脂前駆体を含ませて、乾燥時に熱硬化性樹脂前駆体を硬化させて三次元網目構造を生成させ、収縮を小さくすることで前記問題は解決され、セラミック基板10の平坦性が向上する。従って、セラミック焼結体12の一主面12aと、表層導体14の一主面14aとを同一平面上に位置させることが容易である。
【0109】
この場合、スラリー30に使用する溶剤に、熱硬化性樹脂前駆体が硬化する温度での蒸気圧が小さいものを選定し、熱硬化時の溶剤乾燥による収縮を小さくすることが望ましい。室温で硬化する樹脂を用いた場合は、特に作業や装置が簡単になる。
【0110】
ポリウレタン樹脂は、硬化後の弾性を制御し易く、柔軟な成形体も可能となる等の利点を有する。後工程での取り扱いを考えると、あまり硬い成形体は適さない場合があり、熱硬化性樹脂は三次元網目構造をとるので一般に硬いが、ポリウレタン樹脂は、柔軟性のある成形体も可能で、特にテープ状の成形体は、柔軟性が要求される場合が多いため望ましい。また、スラリー性状の制御のため、熱可塑性樹脂を含ませてもよい。第1セラミック成形体32には、ビア電極20形成のための孔加工が施されるが、ポリウレタン樹脂を用いているため加工性に優れる。従って、ビア電極20の寸法精度や位置精度が極めて高くなり、配線基板としての信頼性に優れる。
【0111】
従来においては、熱可塑性樹脂を含む導体ペーストが、スラリーを塗布する際に、スラリーの溶剤に溶解して、導体形状が崩れる。一方、本実施の形態においては、導体ペースト40に熱硬化性樹脂前駆体を含ませているため、耐溶剤性が向上し、導体形状の崩れは生じない。従って、表層導体14及び内層導体22から構成される表層導体パターン16及び内層導体パターン24の形状精度や位置精度に優れたセラミック基板10が得られることから、配線基板としての信頼性に優れる。
【0112】
熱硬化性樹脂前駆体は、硬化後は三次元の網目構造となり、元に戻らないため、硬化後は、溶剤への再溶解性がなくなり、一般に、熱可塑性樹脂よりも耐溶剤性が高い。
【0113】
熱硬化性樹脂前駆体の中では、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が硬化前プレポリマーの分子量の制御ができ、ペースト性状のコントロールが可能なため、好適である。なお、熱可塑性樹脂をペースト性状の制御のために、熱硬化性樹脂と一緒に含めるようにしてもよい。
【0114】
特に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂は、硬化剤が必要なく、加熱するだけで硬化するタイプがあり、導体ペースト40の効率的な使用に適する。つまり、硬化剤の添加が必要な他の熱硬化性樹脂前駆体は、導体ペースト40を印刷する前に、硬化剤を混合する必要があるが、混合すると保存がきかない。従って、印刷後に残った導体ペースト40を回収して保存する必要のある印刷法によって導体ペースト40を印刷する場合は、硬化剤を混合する必要がない熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型フェノール樹脂が好適である。
【0115】
従来において、熱可塑性樹脂をバインダとするセラミック成形体は、該セラミック成形体の密度ばらつきが発生し易く、そのために、焼成後のセラミック焼結体の寸法ばらつきが大きく、埋設された導体成形体の焼成寸法のばらつきも大きくなる。一方、本実施の形態においては、熱硬化性樹脂前駆体をバインダに使用して導体成形体28を埋設した第1セラミック成形体32を得ることにより、焼成ばらつきの小さいセラミック基板10を得ることができる。
【0116】
例えば第1セラミック成形体32の焼成後の寸法は、第1セラミック成形体32のうち、導体成形体28を除く部分の生密度により主に決まる。これはセラミック基板10のセラミック焼結体12の構造は空隙が非常に少ないのに対し、第1セラミック成形体32の上記部分は空隙が多いため、その空隙量の多少が、焼成中の収縮量を決めるからである。
【0117】
従来の熱可塑性樹脂をバインダとして含むスラリーは、溶媒を乾燥してセラミック成形体を得るが、乾燥する際の塗工比(スラリー体積と成形後の成形体体積の比)が大きく、この大きな塗工比が成形体密度のばらつきの原因となる。しかし、本実施の形態のように、熱硬化性樹脂前駆体をスラリー30のバインダとして使用した場合は、溶剤を含んだままでも硬化するため、塗工比を小さくすることができ、生密度のばらつきを小さくすることができる。その結果、焼成後の寸法ばらつきが小さくなり、埋設した表層導体14及び内層導体22の寸法ばらつきも小さくすることができる。従って、セラミック焼結体12の一主面12aと、表層導体14の一主面14aとを同一平面上に位置させることが容易になる。
【0118】
次に、第2実施形態に係るセラミック基板60について、図13A〜図15Cを参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付し、共通する構成については、その説明を省略する。
【0119】
第2実施形態に係るセラミック基板60は、その断面を図13Aに示す通り、セラミック焼結体12の一主面12aよりも内方に表層導体64が設けられ、その表層導体64の一主面64aには、金属被膜66が形成され、該金属被膜66の一主面66aは、セラミック焼結体12の一主面12aと同一平面をなしている。表層導体64の一主面64a以外の部分は、セラミック焼結体12に埋設され一体的に接合されている。表層導体64の一主面64a以外の部分、すなわち、表層導体64の側面64bは、セラミック焼結体12の内壁部12bと接合され、表層導体64の他方の主面64cは、セラミック焼結体12の内底面12cと接合されている。また、金属被膜66の側面66bは、セラミック焼結体12の内壁部12bと当接している。
【0120】
すなわち、図2に示す第1実施形態の変形例に係るセラミック基板10では、セラミック焼結体12の一主面12aと同一平面上に、表層導体14の一主面14aが設けられ、その上に金属被膜26が盛り上がった構成であるのに対し、第2実施形態に係るセラミック基板60は、表層導体64の一主面64aがセラミック焼結体12の一主面12aよりも陥没した位置に設けられ、その上に金属被膜66が、その一主面66aとセラミック焼結体12の一主面12aとが同一平面となるように形成されている点で異なる。
【0121】
本実施形態では、セラミック焼結体12の一主面12aと金属被膜66の一主面66aとを同一平面上に位置させている。これにより、金属被膜66に半導体素子等の電子部品を実装する際に、表面に凹凸がなく平坦であることから、部分的に実装不良が生じたり、電子部品の傾きや位置ずれ等を生じたりすることなく、確実に実装することができる。
【0122】
また、表層導体64がセラミック焼結体12に埋設され、表層導体64の側面64bとセラミック焼結体12の内壁部12bとが接合されるとともに、金属被膜66の側面66bも、セラミック焼結体12の内壁部12bと当接しているため、表層導体64及び金属被膜66の側面64a、66aからセラミック焼結体12に熱を逃がして放熱することができる。
【0123】
さらに、金属被膜66の熱膨張がセラミック焼結体12の熱膨張より大きい場合であっても、内壁部12bによって拘束されているため、金属被膜66が剥離するような応力が生じ難い。従って、金属被膜66に対し、大電流用の大型の電子部品を搭載したり、接続端子を接続したりした場合も接続強度が大きいためはずれ難くなる。
【0124】
金属被膜66は、第1実施形態の変形例の場合と同様に、めっき、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング、化学気相成長(CVD)等の各種の成膜法により形成された被膜を採用することができる。金属被膜26の厚みは、例えば、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。例えば、表層導体64の厚みと金属被膜66の厚みとの合計を、50μm以上とすることが好ましい。
【0125】
次に、第2実施形態に係るセラミック基板60の製造方法について、図13B〜図15Cを用いて説明する。なお、第1実施形態に係るセラミック基板10の製造方法と、同一の構成については、同一の符号を付し、共通する工程については、その説明を省略する。
【0126】
図13Bに示すように、第2実施形態に係るセラミック積層体76は、表層導体64となる導体成形体28の一主面が、セラミック積層体76の一主面と同一平面上になく、内方の陥没した位置にある点で、第1実施形態に係るセラミック積層体36と異なる。従って、セラミック積層体76の一主面には、表層導体64となる導体成形体28に沿って溝80が形成された形態となる。その他の内層導体22となる導体成形体28を含む第1セラミック成形体32や導体成形体28を含まない第2セラミック成形体34の成形、ビア電極20を形成するための孔加工等の各工程は、第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態に係るセラミック積層体76の表層を構成する第3セラミック成形体70の成形について図14A〜図15Cを参照しながら説明する。
【0127】
先ず、図14Aに示すように、フイルム68には、表層導体64のパターンに対応した凸パターン68aが設けられている。この凸パターン68a上に導体ペースト40を印刷法によってパターン形成した後、硬化して導体成形体28を形成する。フイルム68の凸パターンの高さの調整により、表層導体64のセラミック焼結体12における内方の位置、或いは表層導体64上に形成する金属被膜の厚みを設定することができる。
【0128】
以降の工程は、第1実施形態とほぼ同様である。その後、図14Bに示すように、フイルム68を鋳込み型42内に設置し、スラリー30を鋳込み型42内に鋳込んだ後に、硬化させ、第3セラミック成形体70が得られる。この場合、図15Aに示すように、フイルム68上に第3セラミック成形体32が設置された状態になっているため、第3セラミック成形体70をフイルム68から離型することによって、図15Bに示すように、導体成形体28が埋設された第3セラミック成形体70が得られる。このフイルム68を剥がすと同時に、第3セラミック成形体70の一主面側には、溝80が表れる(図15C参照)。
【0129】
ビア電極20を形成するための貫通孔44を穿設する孔加工は、導体成形体28が剥離しないように、例えば、導体成形体28側から穿設してもよいし、フイルム68を第3セラミック成形体70から剥がす前に行ってもよい。
【0130】
次に、図13Bに示すように、例えば一つの第3セラミック成形体70と、複数の第1セラミック成形体32と、少なくとも1つの第2セラミック成形体34を積層して、セラミック積層体76とする。このとき、セラミック積層体76の一主面に、第3セラミック成形体70の一主面、すなわち導体成形体28が露出している面が上面となるように積層する。なお、上記の例では、セラミック積層体76を第1実施形態における第1作製方法とほぼ同様にして作製したが、第2製造方法にて作製してもよいことは勿論である。
【0131】
以上のように、セラミック積層体76を得た後、導体成形体28が埋め込まれたセラミック積層体76を焼成することによって、1つのセラミック焼結体12に表層導体64、複数の内層導体22が三次元構造に埋設されたセラミック基板60が得られる。
【0132】
さらに、半田、めっき、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティング、化学気相成長(CVD)等の各種の成膜法により表層導体64の一主面64a上に、金属被膜66を形成することにより、図13Aに示す第2実施形態に係るセラミック基板60が完成する。この場合、セラミック焼結体12の一主面12aと、金属被膜66の一主面66aとを同一平面上に位置させるには、例えば、成膜量を制御するようにしてもよいし、セラミック焼結体12の一主面12aよりも盛り上がるように形成した後に、研削加工を施してもよい。
【0133】
そして、セラミック焼結体12の一主面12aから露出する表層導体14上、例えば接続部18に電子部品が実装される。
【実施例】
【0134】
セラミック基板に形成された表層導体に対し、所定の発熱量(P=0.0642W/mm)を生じさせた場合の表層導体の表面温度の熱シミュレーションを行った。実施例1〜3、比較例1〜3、参考例1、2の各セラミック基板の設定条件を以下に示す。
(実施例1)
幅3mm、長さ6mm、厚み0.6mm(600μm)、熱伝導率2.5W/m・Kの誘電体(セラミック焼結体12)に、長さ2mm、線幅0.25mm(250μm)、導体厚み40μmの表層導体14を図1Bに示すように、セラミック焼結体12の一主面12aと、表層導体14の一主面14aとが同一平面となるように設けた。
(比較例1)
上記実施例1と同寸法の誘電体の表面に、同寸法の表層導体を盛り上がるように設けた。すなわち、表層導体は埋設されていない。
(実施例2)
表層導体14の線幅を100μmとした以外は、実施例1と同一条件とした。
(比較例2)
表層導体の線幅を100μmとした以外は、比較例1と同一条件とした。
(比較例3)
表層導体の線幅を上辺100μm、下辺50μm(表1中かっこ内に示した)の断面逆台形形状とした以外は、実施例1とほぼ同一条件とした。ただし、特許文献3の図1(b)に記載されたように、誘電体の表面と表層導体の表面とは同一平面上になく、若干表層導体の表面が盛り上がっている。
(参考例1)
表層導体の導体厚みを10μmとした以外は、実施例1と同一条件とした。
(参考例2)
表層導体の導体厚みを10μmとした以外は、比較例1と同一条件とした。
【0135】
熱シミュレーションの結果を表1〜表3に示す。なお、表1中の実施例1の表面温度差の数値は、比較例1の表面温度を基準とし、表2中の実施例2、比較例3の表面温度差の数値は、比較例2の表面温度を基準とし、表3中の参考例2の表面温度差の数値は、参考例1の表面温度を基準として、それぞれ、基準の温度に比べてどの程度温度が低下しているかを示している。
【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】
【表3】

【0139】
表1〜表3のいずれの熱シミュレーション結果においても、セラミック焼結体に表層導体を埋設した場合、埋設しない場合よりも表層導体の表面温度が低下すること、すなわち表層導体からセラミック焼結体へ熱を逃がす効果が発揮されることが示された。また、表1と表2との比較により、線幅が小さい表層導体の場合、表面温度を下げる効果が顕著であることがわかる。さらに、表2に示された結果から、表層導体が断面逆台形形状の比較例3よりも実施例2の表層導体の表面温度が低く、上記した放熱の効果が大きいことがわかる。さらにまた、導体厚みの小さい参考例1よりも、導体厚みの大きい実施例1のほうが温度差が大きいことから、表層導体14の側面14bからの放熱によって表層導体の温度がより一層低下していることわかる。
【0140】
以上の熱シミュレーション結果により、実施例1、2に係るセラミック基板10では、厚みの大きい表層導体14の側面14bからセラミック焼結体12に熱が逃げるため、表層導体14の発熱を低減できることが示された。さらに、表層導体14の温度が低下することにより、表層導体14とセラミック焼結体12との温度差が低減されることから、熱膨張差による表層導体14の剥離の発生を抑えることができるといえる。従って、これらのセラミック基板10は、表層導体14の発熱が生じ易い大電流用の配線基板として好適である。
【0141】
なお、本発明に係るセラミック基板は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0142】
10、60…セラミック基板 12…セラミック焼結体
12a…セラミック焼結体の一主面 14、64…表層導体
14a、64a…表層導体の一主面 16…表層導体パターン
18…接続部 20…ビア電極
22…内層導体 24…内層導体パターン
26、66…金属被膜 28…導体成形体
30…スラリー 32…第1セラミック成形体
34…第2セラミック成形体 36、76…セラミック積層体
38、68…フイルム 40…導体ペースト
42…鋳込み型 44…貫通孔
46…他のフイルム 50…基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが30μm以上の表層導体とセラミック焼結体とが一体化されたセラミック基板であって、
前記セラミック焼結体の一主面に前記表層導体が露出し、且つ、前記セラミック焼結体の一主面と、前記表層導体の一主面とが、同一平面を形成していることを特徴とするセラミック基板。
【請求項2】
請求項1記載のセラミック基板において、
前記表層導体の一主面には、金属被膜が形成されていることを特徴とするセラミック基板。
【請求項3】
請求項2記載のセラミック基板において、前記表層導体の厚みと前記金属被膜の厚みの合計が、50μm以上であることを特徴とするセラミック基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック基板において、
前記セラミック焼結体の内部に埋設された内層導体を有し、前記表層導体と該内層導体とは、ビア電極により接続されていることを特徴とするセラミック基板。
【請求項5】
厚みが30μm以上の表層導体とセラミック焼結体とが一体化されたセラミック基板であって、
前記セラミック焼結体の一主面よりも内方に前記表層導体が設けられ、且つ、前記表層導体の一主面に金属被膜が形成されて露出するとともに、前記セラミック焼結体の一主面と、前記金属被膜の表面とが、同一平面を形成していることを特徴とするセラミック基板。
【請求項6】
請求項5記載のセラミック基板において、
前記表層導体の厚みと前記金属被膜の厚みの合計が、50μm以上であることを特徴とするセラミック基板。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれか1項に記載のセラミック基板において、
前記セラミック焼結体の一主面に隣接し、前記表層導体の側面に沿った内壁部には、前記金属被膜の側面が当接していることを特徴とするセラミック基板。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のセラミック基板において、
前記セラミック焼結体の内部に埋設された内層導体を有し、前記表層導体と該内層導体とは、ビア電極により接続されていることを特徴とするセラミック基板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミック基板において、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、基体上に形成された導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形体を一体的に焼成することにより、前記導体成形体が前記導体となり、前記セラミック成形体が前記セラミック焼結体とされたことを特徴とするセラミック基板。
【請求項10】
請求項5〜8記載のいずれか1項に記載のセラミック基板において、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、基体上に設けられた凸パターン上に形成された導体成形体を被覆するように供給した後に硬化して得られるセラミック成形体を一体的に焼成することにより、前記導体成形体が前記導体となり、前記セラミック成形体が前記セラミック焼結体とされたことを特徴とするセラミック基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−199349(P2012−199349A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61923(P2011−61923)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】