説明

セラミック電子部品及び積層セラミックコンデンサ

【課題】耐熱衝撃性、耐機械的応力性に優れているとともに、耐衝撃性に優れた外部電極を持つセラミック電子部品を提供する。
【解決手段】セラミック素体1の表面に外部電極5、6を形成して成るセラミック電子部品10において、外部電極5、6は、セラミック素体1側から順に、第1ガラス成分G1及び気孔Pを有する第1領域5a、6a、第2ガラス成分G2を有し且つ気孔Pを有さない第2領域5b、6b、ガラス成分G1、G2及び気孔Pのいずれも有さない第3領域5c、6cの3つの領域を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品及び積層セラミックコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
代表的なセラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを用いて説明する。
【0003】
図3に示すように、積層セラミックコンデンサ(セラミック電子部品)30は、誘電体層32と内部電極33、34とを交互に積層してなる積層体(セラミック素体)31の一対の端部に、夫々内部電極33、34に電気的に接続される外部電極35、36が形成されている。
【0004】
一般的に、外部電極35、36に必要とされる特性としては、低い導体抵抗、半田濡れ性をよくするための平滑性、コンデンサ内部への水分等の侵入を抑制する高封止性などが挙げられる。この平滑性及び高封止性を実現するためには、外部電極35、36が緻密であることが望ましいが、その場合プリント配線基板などの実装基板への半田実装の際に生じる熱衝撃や、実装基板に加わる曲げ応力によって、積層体31にクラックが発生するという問題があった。
【0005】
かかる問題を解決するべく、図3に示すように、セラミック素体の表面に形成された外部電極35、36が、セラミック素体側から順に、気孔Pを有する内側領域(35a、36a)及び気孔を有さない外側領域(35b、36b)の2つの領域を有して構成される積層セラミックコンデンサ30が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平08−162359号公報(2−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記積層セラミックコンデンサ30においては、図3に示すように、電気特性の検査の際に、外部電極35、36にプローブ40を押し当てる等の行為により外部から衝撃が加わった場合、外側領域35b、36bはその展性によって変形し、衝撃の応力が内側領域35a、36aに伝わって内側領域35a、36aにクラックが発生することとなり、ひいては外部電極35、36全体にクラックが広がるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、耐熱衝撃性、耐機械的応力性に優れているとともに、耐衝撃性に優れた外部電極を有するセラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、セラミック素体の表面に外部電極を形成して成るセラミック電子部品において、前記外部電極は、前記セラミック素体側から順に、第1ガラス成分及び気孔を有する第1領域、第2ガラス成分を有し且つ気孔を有さない第2領域、ガラス成分及び気孔のいずれも有さない第3領域の3つの領域を有してなることを特徴とするものである。
【0009】
前記第1ガラス成分は3重量%〜20重量%の割合で含有することが好ましく、また、前記気孔は前記第1領域の2体積%〜40体積%を占めることが好ましい。
【0010】
また前記第2ガラス成分は1重量%〜10重量%の割合で含有することが好ましい
更に、前記3つの領域は同一金属を主成分とすることが好ましい。
【0011】
また更に、前記外部電極の表面にNi及び/又はSnを主成分とするメッキ層を形成することが好ましい。
【0012】
また本発明は、セラミック積層体の表面に外部電極を形成して成る積層セラミックコンデンサにおいて、前記外部電極は、前記セラミック積層体側から、第1ガラス成分及び気孔を有する第1領域、第2ガラス成分を有し且つ気孔を有さない第2領域、ガラス成分及び気孔のいずれも有さない第3領域の3つの領域を有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セラミック素体の表面に外部電極を形成して成るセラミック電子部品において、前記外部電極は、前記セラミック素体側から順に、第1ガラス成分及び気孔を有する第1領域、第2ガラス成分を有し且つ気孔を有さない第2領域、ガラス成分及び気孔のいずれも有さない第3領域の3つの領域を有してなることから、以下の効果を奏する。
【0014】
まず第1領域は、第1ガラス成分を有することから第1領域とセラミック素体との接合強度を強くでき、また、気孔を有することから熱や機械的外力により発生する応力を緩和することができる。特に、第1ガラス成分の含有を、3重量%以上とすることで第1領域とセラミック素体とが効果的に接合して接着強度を高くすることができ、また、20重量%以下とすることで内部抵抗値の増大を抑制することができる。また、気孔割合を、第1領域の2体積%以上とすることでペースト焼付けによる焼締まりを小さくしてセラミック素体のクラックを抑制でき、また、第1領域の40体積%以下とすることで内部抵抗値の増大を抑制することができる。
【0015】
次に第3領域は、ガラス成分及び気孔のいずれも有さないため、その外表面、すなわち外部電極表面の平滑性及び封止性を高くすることができる。これにより、後述のように、第3領域の表面にNi及び/又はSnを主成分とするメッキ層を形成する際、メッキ液が内部へ侵入してその残渣が第1領域の気孔等に残留することを効果的に抑制できることから、残渣が外部電極を腐食して絶縁性の劣化や電気特性の変動を引き起こすことを防止できる。
【0016】
そして第2領域は、第2ガラス成分を有し且つ気孔を有さないことから、比較的高い強度を有するため、外部からの局所的な衝撃によって第3領域が変形し第2領域に衝撃応力が伝わったとしても、内部にある第1領域への衝撃応力の伝わりを抑制して、第1領域にクラックが発生することを効果的に防止することができる。また、第2ガラス成分の含有を、1重量%以上とすることで金属成分の展性を抑えて第1領域への衝撃応力をより伝わりにくくでき、また、10重量%以下とすることで内部抵抗値の増大を抑制することができる。なお、第2領域において、気孔を有さないとは、気孔が第2領域の2体積%未満を占めることを意味する。
【0017】
また、外部電極を構成する3つの領域の主成分を同一金属で構成することが好ましく、これにより領域間の電気的接続及び接着の信頼性を高くすることができる。特に、第2領域及び/または第3領域をメッキにより形成する場合、メッキ下地となる領域の表面への濡れ性が良好となり、最外領域である第3領域の表面の平滑性を高くすることができる。なお、濡れ性が良好な理由としては、同一の金属原子であれば原子間距離や配向が同一となるため、最初に析出する原子が、下地表面を構成する原子と容易に結合することが考えられる。
【0018】
さらに、外部電極の表面にNi及び/又はSnを主成分とするメッキ層をさらに形成しても良い。Niを主成分とするメッキ層を形成することで第3領域を構成する金属の半田食われを抑制することができ、また、Snを主成分とするメッキ層を形成することで半田濡れ性を向上させることができる。
【0019】
また本発明は、セラミック積層体の表面に外部電極を形成して成る積層セラミックコンデンサにおいて、外部電極は、セラミック積層体側から順に、第1ガラス成分及び気孔を有する第1領域、第2ガラス成分を有し且つ気孔を有さない第2領域、ガラス成分及び気孔のいずれも有さない第3領域の3つの領域を有してなることから、耐熱衝撃性、耐機械的応力性及び耐衝撃性が向上する。当該効果は、外部電極が、セラミック積層体の一対の端部に形成された積層セラミックコンデンサにおいて特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のセラミック電子部品を図面に基づいて説明する。
【0021】
代表的なセラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明の積層セラミックコンデンサを示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は縦断面図、(c)は(b)の外部電極を拡大した縦断面図である。
【0023】
図1において、10は積層セラミックコンデンサ(セラミック電子部品)、1は積層体、2は誘電体層、3、4は内部電極、5、6は外部電極である。
【0024】
誘電体層2は、チタン酸バリウム(BaTiO)などを主成分とする非還元性誘電体材料からなり、その厚みは高容量化のために例えば1〜5μmとする。この誘電体層2の大きさは、例えば0.6mm×0.3mmとし、これを複数積層して積層体1が構成される。なお、誘電体層2の形状、厚み及び積層数等は所望の容量値に応じて任意に変更すればよい。
【0025】
内部電極3、4は、例えばCuやNiを主成分とする材料から構成され、その厚みは例えば0.5〜2μmとする。そして、誘電体層2の積層方向に隣接する2つの内部電極3、4は、互いに積層体1の異なる端面側に延出し、異なる外部電極5、6に夫々接続される。
【0026】
外部電極5、6は、積層体1側から順に、第1ガラス成分G1及び気孔Pを有する第1領域5a、6a、第2ガラス成分G2を有し且つ気孔Pを有さない第2領域5b、6b、ガラス成分及び気孔Pのいずれも有さない第3領域5c、6cの3つの領域を有してなる。なお、ガラス成分G1、G2は、図1で示すように独立して存在しても良いし、外部電極5、6を構成する他の成分と固溶していても良い。
【0027】
図1(c)に示すように、まず第1領域5a、6aは、例えばCuを主成分とし、ホウケイ酸バリウム系ガラスなどからなる第1ガラス成分G1を含有する厚膜導電層からなる。このように、第1ガラス成分G1を有することから第1領域5a、6aとセラミック素体との接合強度を強くでき、また、気孔Pを有することから熱応力や機械的応力を緩和することができる。第1ガラス成分G1としては、ホウケイ酸バリウム系以外に、ホウケイ酸亜鉛系、ホウケイ酸ストロンチウム系、アルミノホウケイ酸バリウム系、アルミノホウケイ酸亜鉛系、アルミノホウケイ酸ストロンチウム系、及びこれらの組み合わせて構成することができる。
【0028】
特に、第1ガラス成分G1の含有を、焼成後の第1領域5a、6a全体重量に対し3重量%以上とすることで第1領域5a、6aとセラミック素体とが効果的に接合して接着強度を高くすることができ、また、20重量%以下とすることで内部抵抗値の増大を抑制することができる。また、気孔割合を、第1領域5a、6aの2体積%以上とすることでペースト焼付けによる焼締まりを小さくしてセラミック素体のクラックを抑制でき、また、第1領域5a、6aの40体積%以下とすることで内部抵抗値の増大を抑制することができる。さらに、第1領域5a、6aを導電性ペーストの焼付けにより形成する場合には、含有される第1ガラス成分G1により金属成分の焼結が促進されるため、より効果的に第1領域5a、6aとセラミック素体との接合強度を強くできる。
【0029】
なお、気孔Pの測定方法は、積層セラミックコンデンサ10の幅(W)方向または厚み(T)方向の外部電極5、6の断面を、FIB(集束イオンビーム)等で切出してSEM(走査型電子顕微鏡)やSIM(走査型イオン顕微鏡)等で観察した像を画像処理装置で読み取り、面積比として算出したものである。
【0030】
次に、第3領域5c、6cは、Cuメッキ層で形成され、ガラス成分及び気孔のいずれも有さないため、その外表面、すなわち外部電極5、6表面の平滑性及び封止性を高くすることができる。これにより、後述のように、第3領域5c、6cの表面にNi及び/又はSnを主成分とするメッキ層を形成する際、メッキ液が内部へ侵入してその残渣が第1領域5a、6aの気孔等に残留することを効果的に抑制できることから、残渣が外部電極5、6を腐食して絶縁性の劣化や電気特性の変動を引き起こすことを防止できる。なお、第3領域5c、6cの気孔Pは、十分な封止性を得れば良く、第3領域5c、6cの0.1体積%未満の範囲で含まれていても構わない。
【0031】
そして、第2領域5b、6bは、ホウケイ酸バリウム系ガラスなどからなる第2ガラス成分G2を含有するCuメッキ層からなり、気孔を有さない構成を有する。このため、比較的高い強度を有し、外部からの局所的な衝撃によって第3領域5c、6cが変形し第2領域5b、6bに衝撃応力が伝わったとしても、内部にある第1領域5a、6aへの衝撃応力の伝わりを抑制して、第1領域5a、6aにクラックが発生することを効果的に防止することができる。また、第2ガラス成分G2の含有を、1重量%以上とすることで金属成分の展性を抑えて第1領域5a、6aへの衝撃応力をより伝わりにくくでき、また、10重量%以下とすることで内部抵抗値の増大を抑制することができる。なお、第2領域5b、6bにおいて、気孔を有さないとは、気孔が第2領域5b、6bの2体積%未満を占めることを意味する。第2ガラス成分G2としては、ホウケイ酸バリウム系以外に、ホウケイ酸亜鉛系、ホウケイ酸ストロンチウム系、アルミノホウケイ酸バリウム系、アルミノホウケイ酸亜鉛系、アルミノホウケイ酸ストロンチウム系、及びこれらの組み合わせて構成することができる。
【0032】
なお、第2領域5b、6bの厚みは、厚みが増すことによるポアの増長に対応しクラックの発生を防止する為、第1領域5a、6aの厚みの10%以上であることが好ましい。
【0033】
また、第1ガラス成分G1及び第2ガラス成分G2は、第1領域と第2領域の熱膨張係数を近づける事を優先する場合、同一とすることが好ましく、第1領域の接着強度、第2領域の膜強度各々の最適化を計る場合、異なるように設定することが好ましい。
【0034】
さらに、第2領域5b、6bと第3領域5c、6cの境界を凹凸面にすることで、より効果的に接着強度を高くなるようにしても良い。凹凸面の面粗さRaは、第2領域5b、6bの平均厚みの20%以上とすることが好ましい。
【0035】
また、外部電極5、6を構成する3つの領域5a〜5c、6a〜6cの主成分はすべてCuで構成されており、これにより、領域間の電気的接続及び接着の信頼性を高くすることができる。特に、第2領域5b、6b及び/または第3領域5c、6cをメッキにより形成する場合、メッキ下地となる領域の表面への濡れ性が良好となり、最外領域である第3領域5c、6cの表面の平滑性を高くすることができる。なお、濡れ性が良好な理由としては、同一の金属原子であれば原子間距離や配向が同一となるため、最初に析出する原子が、下地表面を構成する原子と容易に結合することが考えられる。
【0036】
さらに、外部電極5、6の表面には、Niメッキ層5d、6d及びSnメッキ層5e、6e(図示せず)が順次形成されている。Niを主成分とするメッキ層を形成することで第3領域5c、6cを構成する金属の半田食われを抑制することができ、また、Snを主成分とするメッキ層を形成することで半田濡れ性を向上させることができる。
【0037】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。なお、各符号は焼成の前後で区別しないことにする。
【0038】
まず、誘電体層となるセラミックグリーンシート2の所定の領域に、導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布後乾燥し、内部電極となる導体パターン3、4を形成する。
【0039】
次に、このセラミックグリーンシートを、導体パターン3、4が互いに対向するように所定の積層枚数重ねた後、切断して積層体1とし、この積層体1を所定の雰囲気、温度、時間で焼成する。
【0040】
その後、積層体1の一対の端面に露出した内部電極3、4と接続されるようにして、外部電極5、6をそれぞれ形成する。外部電極5、6は、以下のように形成される。
【0041】
まず、積層体1の両端部に、Cu粉末と上述の第1ガラス成分G1を含有する導電性ペーストを塗布後、脱バインダー及び焼成を行い、第1領域5a、6aとなる厚膜導電層5a、6aを形成する。このとき、Cu粉末及び第1ガラス成分G1の粒径、Cu粉末及び第1ガラス成分G1の含有率、Cu粉末と第1ガラス成分G1との混合比率、導電性ペーストの添加物の種類や量、焼成温度、焼成時の昇温速度などを調節することにより、気孔Pが第1領域5a、6aの2体積%〜40体積%を占めるように制御する。
【0042】
次に、例えば上述の第2ガラス成分G2を含有するピロ燐酸銅メッキ浴中に、厚膜導電層5a、6a(第1領域)が形成された積層体1を浸漬し、バレルメッキ法にて厚膜導電層5a、6aの表面に第2ガラス成分G2を含有するCuメッキ層5b、6bを析出させて第2領域5b、6bを形成する。このとき、バレルメッキ法における攪拌速度を速くすることにより、第2ガラス成分G2がメッキ浴中に均一に混合されるようにすることが望ましい。メッキ浴としては、ピロ燐酸銅、硫酸銅及びシアン化銅などを用いればよいが、ピロ燐酸銅のメッキ浴中においては、Cu2+イオンはCu(P6−の状態で存在し、Cuメッキ層を均一且つ緻密にすることができるとともに、メッキ残渣が残りにくく安全性が高いことから、ピロ燐酸銅を用いることが好ましい。
【0043】
そして、ガラス成分を含有しないピロ燐酸銅などのメッキ浴中に、Cuメッキ層5b、6bが形成された積層体1を浸漬し、バレルメッキ法にてCuメッキ層5b、6b表面に、ガラス成分及び気孔Pのいずれも有さないCuメッキ層5c、6cを析出させて第3領域5c、6cを形成する。
【0044】
以上のようにして3つの領域を形成し、その表面にセラミック電子部品に用いられる一般的なメッキ液を用いて、Niメッキ層5d、6d及び/又はSnメッキ層5e、6eを形成して外部電極5、6としてもよい。
【0045】
このようにして、図1に示すような積層セラミックコンデンサ10が得られる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、本発明のセラミック電子部品10を積層セラミックコンデンサに適用した例を用いて説明したが、本発明は、積層型圧電部品、チップ型抵抗器、回路基板、半導体部品など、さまざまなセラミック電子部品10に適用できる。
【0048】
また、上記実施の形態に代えて、外部電極5、6を、導電性ペーストを塗布後焼成し、その上にガラス成分を含有しないメッキ層を析出させることにより形成しても良い。図2は、当該製造方法により形成された積層セラミックコンデンサの外部電極を拡大した縦断面図である。具体的には、第1領域5a、6aは導電性ペーストを塗布後焼成することにより形成された厚膜導電膜であり、第3領域5c、6cはメッキにより形成されたメッキ導電膜である。第2領域5b、6bは、第1領域5a、6aと同時に形成された厚膜導電膜のオープンポア部Aを、第3領域5c、6c形成のメッキ金属の析出・充填により形成してなるものである。当該実施の形態によれば、第2領域5b、6bを形成するための工程を別途設けることなく、第1領域5a、6a及び第3領域5c、6cの製造工程を制御することによって第2領域5b、6bを形成するため、製造工程を簡略化することが可能となる。
【0049】
さらに、第3領域5c、6cの表面にSnメッキ層5e、6eを直接形成しても良い。
【0050】
また更に、第3領域5c、6cとNiメッキ層5d、6dの間に、Auメッキ層などの他のメッキ層を形成しても良い。Auメッキ層の表面粗さRaは、第3領域5c、6cの表面粗さRaよりさらに小さくできるため、Niメッキ層5d、6dの厚みを小さく且つ均一にできる。また、Auメッキ層をフラッシュメッキ法により形成することにより、メッキ析出時間を短縮できるとともに、メッキ液が第1領域5a、6a内へ浸入することによる絶縁信頼性劣化等の問題点も解決できる。
【0051】
なお、第3領域5c、6c表面へのNiメッキ5d、6dやSnメッキ5e、6eに代えて、貴金属メッキ層や導電性樹脂層などを形成しても良いことは言うまでもない。
【0052】
また、外部電極5、6の第3領域5c、6cを金属コロイド膜や有機金属化合物膜で形成しても良い。具体的には、図2において、第1領域5a、6aは導電性ペーストを塗布後焼成することにより形成された厚膜導電膜であり、第3領域5c、6cは金属コロイド膜である。第2領域5b、6bは、第1領域5a、6aと同時に形成された厚膜導電膜のオープンポア部Aを、第3領域5c、6c形成の金属コロイドの充填により形成してなるものである。すなわち、第3領域5c、6cを形成する金属コロイドの金属粉末が、数nm〜数10nmと非常に小さいため、オープンポア部Aに安定して充填でき、且つその外表面、すなわち外部電極5、6表面の平滑性及び封止性を極めて高くすることができる。これにより、第3領域5c、6cの表面にNi及び/又はSnを主成分とするメッキ層5d、6d、5e、6eを形成する際、メッキ液が内部へ侵入してその残渣が第1領域5a、6aの気孔等に残留することを効果的に抑制できることから、残渣が外部電極を腐食して絶縁性の劣化や電気特性の変動を引き起こすことをより効果的に防止できる。また、第2領域5b、6bの強度をより高くできるため、外部からの局所的な衝撃によって第3領域5c、6cが変形し第2領域5b、6bに衝撃応力が伝わったとしても、内部にある第1領域5a、6aへの衝撃応力の伝わりを抑制して、第1領域5a、6aにクラックが発生することをより効果的に防止することができる。ここで、金属コロイド膜を形成する場合、粒径(SEMの写真から個々の金属粉末の粒径を測定して求められる平均粒径)が数nm〜数10nmのAu、Ag、Cu、Niなどの金属粉末に、有機溶剤、有機バインダ樹脂やその他の添加剤を混合した金属コロイドペーストを用いる方法が挙げられる。すなわち、導電性ペーストを塗布後焼成後、導電性ペースト焼成部分全体を被覆するように、上記金属コロイドペーストをディップ法、スクリーン印刷法などで塗布する。このとき、導電性ペースト焼成部分のオープンポア部Aに金属コロイドペーストの金属粉末が入り込むように、真空脱泡を行うようにしても良い。次に、塗布された金属コロイドペーストを焼成し、上記第1領域5a、6a、第2領域5b、6b、第3領域5c、6cを形成する。このとき、金属粉末の粒径が数nm〜数10nmと小さいことから、焼成温度を200℃以下とすることができ、積層体に加わる応力を小さくすることができるという効果もある。尚、有機金属化合物膜を形成する場合には、メタルオーガニックペーシトを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサを示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は縦断面図、(c)は(b)の外部電極を拡大した縦断面図である。
【図2】本発明の積層セラミックコンデンサの他の実施形態を示す拡大断面図である。
【図3】従来の積層セラミックコンデンサを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10・・・・積層セラミックコンデンサ(セラミック電子部品)
1・・・・・積層体(セラミック素体)
2・・・・・誘電体層
3、4・・・内部電極
5、6・・・外部電極
5a、6a・第1領域
5b、6b・第2領域
5c、6c・第3領域
5d、6d・Niメッキ層
5e、6e・Snメッキ層
P・・・・・気孔
G1・・・・第1ガラス成分
G2・・・・第2ガラス成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック素体の表面に外部電極を形成して成るセラミック電子部品において、
前記外部電極は、前記セラミック素体側から順に、第1ガラス成分及び気孔を有する第1領域、第2ガラス成分を有し且つ気孔を有さない第2領域、ガラス成分及び気孔のいずれも有さない第3領域の3つの領域を有してなることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1ガラス成分は、3重量%〜20重量%で含有されることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記気孔は、前記第1領域の2体積%〜40体積%を占めることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記第2ガラス成分は、1重量%〜10重量%で含有されることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記3つの領域は、同一金属を主成分とすることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記外部電極の表面にNi及び/又はSnを主成分とするメッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
セラミック積層体の表面に外部電極を形成して成る積層セラミックコンデンサにおいて、
前記外部電極は、前記セラミック積層体側から順に、第1ガラス成分及び気孔を有する第1領域、第2ガラス成分を有し且つ気孔を有さない第2領域、ガラス成分及び気孔のいずれも有さない第3領域の3つの領域を有してなることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−186316(P2006−186316A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313866(P2005−313866)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】