説明

セルロースアシレートフィルム、その製造方法、これを用いた偏光板および液晶表示装置

【課題】膜厚方向の負のレターデーションを広範囲に制御することができ、耐久性のあるセルロースアシレートフィルム、その製造方法、該フィルムを用いた、コントラストが高く、長期間の使用でも優れた視認性を維持できる偏光板および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】下記(a)および(b)を満たすセルロースアシレートを含むドープをソルベントキャスト法により製膜し、続いて延伸処理を行いフィルムを得る。該フィルムを用い偏光板および液晶表示装置を作製する。(a)セルロースのグルコース単位が有する三つの水酸基のうち少なくとも一つが分極率異方性Δα2.5×10−24cm以上であるアシル基により置換されている。(b)前記Δαが2.5×10−24cm以上であるアシル基による置換度Pと、Δαが2.5×10−24cm未満であるアシル基による置換度をPが2P+P>3.0、P>0.2を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚方向の負のレターデーションを広範囲に制御することができ、環境変化によるフィルムの不具合が発生しないセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法と、該セルロースアシレートフィルムを用いた、コントラストが高く、長期間の使用でも優れた視認性を維持できる偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々用途が広がり、主にTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶が基板に対して立ち上がるために、斜めから見ると液晶分子による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して、液晶性分子がハイブリッド配向したフィルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性分子を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での諧調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
【0003】
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。これらの方式によりテレビ等の高品位の画像が要求される市場でも輝度が高い液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
これに伴い液晶表示装置において、これまで問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。そして光学補償フィルムに対してもコントラストが高く、位相差特性の変化が少ないといった光学補償能のさらなる向上が求められている。
【0004】
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えば、光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
最近では、セルロースアシレートフィルムを用いて光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有する光学補償フィルムが提案されている。このようなフィルムは延伸倍率が高いものであったり、レターデーション調整剤が添加されているものが多く、レターデーションを広範囲に制御できる特徴を有する。前記の光学軸がフィルムの法線方向にある膜であることを特徴とするセルロースアシレートフィルムとして、アシル置換度が低いセルロースアシレートを冷却溶解する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−133408号公報
【特許文献2】特開2005−120352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、提案された方式の多くは、液晶セル中の液晶の複屈折の異方性を打ち消して視野角を改善する方式であり、この光漏れを補償できるとされる方式でも、液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しい。さらに、延伸複屈折ポリマーフィルムで光学補償を行うIPSモード液晶セル用光学補償シートでは、膜厚方向の負のレターデーションを広範囲に制御することが難しく、複数のフィルムを用いる必要があった。その結果、光学補償シートの厚さが増し、表示装置の薄形化に不利である。また、延伸フィルムの積層には粘着層を用いるため、温湿度変化により粘着層が収縮してフィルム間の剥離や反りといった不良が発生することがあった。
【0008】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、膜厚方向の負のレターデーションを広範囲に制御することができ、環境変化によるフィルムの不具合が発生しないセルロース誘導体フィルムおよびその製造方法と、該セルロース誘導体フィルムを用いた、コントラストが高く、長期間の使用でも優れた視認性を維持できる偏光板および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のとおりである。
[1] 下記条件(a)および(b)を満たすセルロース誘導体を含むドープを、ソルベントキャスト法により製膜することを特徴とするセルロース誘導体フィルムの製造方法。
(a)セルロースのグルコース単位が有する三つの水酸基のうち、少なくとも一つが下記数式(1)で表される分極率異方性Δαが2.5×10−24cm以上である置換基により置換されている。
【0010】
数式(1):Δα=αx−(αy+αz)/2
(式中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり;
αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり;
αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。)
【0011】
(b)前記Δαが2.5×10−24cm以上である置換基による置換度をPとし、Δαが2.5×10−24cm未満である置換基による置換度をPとしたとき、前記置換度PおよびPが下記数式(3)および(4)を満たす。
【0012】
数式(3):2P+P>3.0
数式(4):P>0.2
【0013】
〔2〕 製膜に引き続いて延伸処理を施すことを特徴とする上記[1]項記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
[3] 前記Δαが2.5×10−24cm以上である置換基が芳香族アシル基であり、Δαが2.5×10−24cm未満である置換基が脂肪族アシル基であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
【0014】
[4] 前記脂肪族アシル基がアセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選ばれ、かつ前記芳香族アシル基の芳香環上の置換基として、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、炭素原子数が6乃至20のアリールオキシ基、炭素原子数が1乃至20のアシル基、炭素原子数が1乃至20のカルボンアミド基、炭素原子数が1乃至20のスルホンアミド基および炭素原子数が1乃至20のウレイド基からなる群より選ばれる構造を有することを特徴とする上記[3]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[5] 前記ドープが、レターデーション調整剤を少なくとも1種類含むことを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
[6] 前記レターデーション調整剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする上記[5]に記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ独立して、アリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2はそれぞれ独立して、単結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整
数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていてもよい。]
【0017】
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とするセルロース誘導体フィルム。
[8] 下記式(A)および(B)のレターデーションを満たすことを特徴とする上記[7]に記載のセルロース誘導体フィルム。
20nm<|Re(630)|<300nm (A)
−30nm>Rth(630)>−400nm (B)
(ここでRe(630)は、波長630nmにおけるフィルムの面内方向のレターデーションを示す。また、Rth(630)は、波長630nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーションを示す。)
[9] 下記(C)および(D)のレターデーションを満たす光学異方性層を有することを特徴とする上記[7]又は[8]に記載のセルロース誘導体フィルム。
0nm<Re(546)<200nm (C)
0nm<|Rth(546)|<300nm (D)
(ここでRe(546)は、波長546nmにおけるフィルムの面内方向のレターデーションを示す。またRth(546)は、波長546nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーションを示す。)
【0018】
[10] 前記光学異方性層がディスコティック液晶層を含有することを特徴とする上記[9]に記載のセルロース誘導体フィルム。
[11] 前記光学異方性層が棒状液晶層を含有することを特徴とする上記[9]に記載のセルロース誘導体フィルム。
【0019】
[12] 上記[7]〜[11]のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルムの少なくとも1枚を、偏光子の保護フィルムとして用いたことを特徴とする偏光板。
[13] 表面にハードコート層、防眩層および反射防止層の少なくとも1層を設けたことを特徴とする上記[12]に記載の偏光板。
[14] 上記[7]〜[11]のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルム、または上記[12]もしくは[13]に記載の偏光板、のいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
[15] 上記[7]〜[11]のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルム、または上記[12]もしくは[13]に記載の偏光板、のいずれかを用いたことを特徴とするIPSモード液晶表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、膜厚方向の負のレターデーションを広範囲に制御することができ、環境変化によるフィルムの不具合が発生しないセルロース誘導体フィルムおよびその製造方法と、該セルロース誘導体フィルムを用いた、コントラストが高く、長期間の使用でも優れた視認性を維持できる偏光板および液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記条件(a)および(b)を満たすセルロース誘導体を含むドープを、ソルベントキャスト法により製膜することを特徴とするセルロース誘導体フィルムの製造方法および該製造方法によって製造されたセルロース誘導体フィルムに関する。
(a)セルロースのグルコース単位が有する三つの水酸基のうち、少なくとも一つが下記数式(1)で表される分極率異方性Δαが2.5×10−24cm以上である置換基により置換されている。
数式(1):Δα=αx−(αy+αz)/2
(式中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり;
αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり;
αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。)
【0022】
(b)前記Δαが2.5×10−24cm以上である置換基による置換度をPとし、Δαが2.5×10−24cm未満である置換基による置換度をPとしたとき、前記置換度PおよびPが下記数式(3)および(4)を満たす。
数式(3):2P+P>3.0
数式(4):P>0.2
【0023】
なおセルロースのグルコース単位が有する水酸基は3つであるから元来、PとPの間にはP+P≦3の関係がある。
【0024】
(セルロース誘導体)
本発明は、使用するセルロース誘導体の構成単位であるβ−グルコース環上の3つの水酸基に連結する置換基として、分極率異方性が大きい置換基を導入し、かつ延伸工程を経てフィルムを作成することに特徴がある。
β−グルコース環上の水酸基に置換した分極率異方性の大きい置換基は、延伸処理時にβ−グルコース環主鎖に対して直交し、さらに分極率異方性が大きい置換基がフィルムの膜厚方向に分極率異方性が最大になる方向に配向する。これによってフィルムの膜厚方向に屈折率が最大となるセルロース誘導体フィルムを得ることが出来る。すなわちフィルム面内においては、延伸軸方向よりも延伸直交方向に遅相軸が発現し、かつ膜厚方向のレターデーションRthが負に大きく発現するセルロース誘導体フィルムを得ることが出来る。
【0025】
特に本発明においては分極率異方性が大きい置換基を導入し、さらにこの置換度を特定の範囲にすることで、所望の光学性能を有するセルロース誘導体フィルムを得ることができる。すなわち、分極率異方性Δαが大きい置換基の置換度P、およびΔαが小さい置換基の置換度Pを調整したセルロースアシレートを用いることで、面内方向および膜厚方向レターデーションRthを広範囲に変えることができる。
【0026】
特に本発明においては、膜厚方向レターデーションRthが負の値を有するセルロース誘導体フィルムを得ることを目的としている。
本発明者らは検討の結果、膜厚方向レターデーションRthを得るためには前記Pを高くすることが好ましいことを見出したが、同時にPが高すぎると面内レターデーションが所望の範囲を逸脱したり、フィルム軟化温度が下がるなどの問題が生じた。また溶液製膜を行う場合に十分な溶解性が得られない場合があった。
そこで本発明者らは所望の光学性能、および物性を得るためにはPとPのバランスが重要であると考え、鋭意検討を重ねた結果、2P+P>3.0を満たす置換度を有するセルロース誘導体を用いることで、膜厚方向レターデーションRthが好ましく負になり、かつその他の所望の性能が得られることを見出した。
【0027】
なお本発明においてセルロース誘導体の置換度は記載の方法によって測定することが出来る。
また他に下記の方法でもセルロース誘導体の置換度を測定することが可能である。
すなわち測定しようとしているセルロース誘導体の残存している水酸基に対して、このセルロース誘導体の置換基と異なる種類の置換基を導入する前処理を行い、得られたセルロース誘導体のC13−NMRスペクトルを測定し、セルロース誘導体の有する水酸基に直接結合しているカルボニル炭素に対応するシグナル強度比を測定することでそれぞれの置換基の置換度を求めることができる。
具体的には、例えばアセチル基および芳香族アシル基からなるセルロース誘導体の場合には、前処理として残存する水酸基にプロピオニル基を導入する。プロピオニル基を導入する方法としては例えば非特許文献1に記載されているような公知の方法で行うことができる。
このような前処理を施したセルロース誘導体のC13−NMRスペクトルにおいてはアセチル基、プロピオニル基、芳香族アシル基の有するカルボニル炭素に対応するピークが異なる位置に観測されるためそれぞれのピーク強度から置換度を求めることができる。
【0028】
【非特許文献1】Y. Tezuka, Y. Tsuchiya, Carbohydr. Res., 273, 93(1995)
【0029】
また上記方法によればセルロース誘導体の構成単位であるβ-グルコース環状の2位、3位、6位の水酸基に置換したそれぞれの置換基の置換度も求めることが出来る。これは2位、3位、6位の水酸基にそれぞれ直接置換した置換基のケミカルシフトが異なるためである。
【0030】
本発明において前記Pと前記Pが、下記数式(3)、(4)のいずれも満たす関係にあることが好ましく、
数式(3):2P+P>3.0
数式(4):0.2<P(好ましくは0.2<P<3.0)
さらに前記の通り、所望の膜厚方向レターデーションRthだけでなく、好ましい面内レターデーションRe、さらには好ましいフィルム物性を得るために、下記数式(3’)および(4’)の関係を満たすことがより好ましく、
数式(3’):2P+P>3.0
数式(4’):0.2<P<2.0
下記数式(3’’)かつ(4’’)の関係を満たすことがさらに好ましい。
数式(3’’):2P+P>3.0
数式(4’’):0.2<P<1.0
【0031】
また、セルロース誘導体の構成単位であるβ-グルコース環状の2位、3位、6位の芳香族アシル置換基の範囲は、本発明の請求内容が満たされれば特に制限はないが、負のRthを発現させるためにはβ−グルコース環の2位、3位に分極率異方性が大きい置換基を導入することが好ましい。2位、3位は、βーグルコース環から炭素原子を介して置換基が導入される6位よりも自由度が低く導入された置換基が膜厚方向に配向しやすく、延伸処理により膜厚方向に配向しやすいためと推測している。6位への芳香族アシル基置換度は0乃至1.0であることが好ましく、0乃至0.8であることが更に好ましく、0乃至0.5であることが最も好ましい。
【0032】
(分極率異方性)
前記の通り、本発明のフィルムは分極率異方性で定義される特定の置換基を有するセルロースアシレートを用いることを特徴としている。置換基の分極率異方性は例えばGaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社ソフトウェア)を用いて計算することが出来る。
具体的にはB3LYP/6-31G*レベルの計算で置換基の構造を最適化した後、得られた構造を用いてB3LYP/6-311+G**レベルで分極率を計算する。その後、得られた分極率テンソルを
対角化し、得られた対角成分により、下記式から分極率異方性を算出することが出来る。
【0033】
数式(1):Δα=αx−(αy+αz)/2
(式中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり;
αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり;
αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。)
【0034】
なお、本発明の分極率異方性が大きい置換基は、セルロースアシレート主鎖に対して直交する方向にαxおよびαyが、平行な方向にαzが配向することが好ましい。中でもαxがフィルム膜厚方向に配向し、αyがフィルム面内方向に配向した場合には、膜厚方向レタ
ーデーションRthが負の値になり、特に好ましい。そのようなαxおよびαyの配向については、セルロースアシレートのグルコピラノース環に対する置換基の置換位置に因る要因が大きいと考えられる。
【0035】
Δαが2.5×10−24cm以上である置換基としてはこれが芳香族アシル基であることが好ましい。
【0036】
またΔαが2.5×10−24cm未満である置換基としてはこれが脂肪族アシル基であることが好ましい。
【0037】
本発明に好ましく用いることの出来る芳香族アシル基としては下記一般式(A)で表される基があげられる。
【0038】
【化2】

【0039】
まず、一般式(A)について説明する。Xは置換基で、置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基およびアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)、−SiH−R、−SiH(−R)、−Si(−R)、−O−SiH−R、−O−SiH(−R)および−O−Si(−R)が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。置換基の数は、一個乃至五個であることが好ましく、一個乃至四個であることがより好ましく、一個乃至三個であることがさらに好ましく、一個または二個であることが最も好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基およびウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基およびカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基が最も好ましい。
【0040】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチルおよび2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシおよびオクチルオキシが含まれる。
【0041】
上記アリール基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。アシル基の例には、ホルミル、アセチルおよびベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミドおよびベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミドおよびp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
【0042】
上記アラルキル基の炭素原子数は、7乃至20であることが好ましく、7乃至12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチルおよびナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7乃至20であることが好ましく、7乃至12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8乃至20であることが好ましく、8乃至12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイルおよびN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイルおよびN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシおよびベンゾイルオキシが含まれる。
【0043】
上記アルケニル基の炭素原子数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよびイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。
【0044】
また、一般式(A)において芳香族環に置換する置換基Xの数(n)は0または1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。
【0045】
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
また置換基は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、炭素原子数が6乃至20のアリールオキシ基、炭素原子数が1乃至20のアシル基、炭素原子数が1乃至20のカルボンアミド基、炭素原子数が1乃至20のスルホンアミド基および炭素原子数が1乃至20のウレイド基からなる群より選ばれるのが好ましい。
一般式(A)で表される芳香族アシル基の具体例は下記に示す通りであるが、好ましいのは、No.1、3、5、6、8、13、18、28、より好ましいのはNo.1、3、6、13である。
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

【0050】
本発明に好ましく用いられる脂肪族アシル基としては炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等があげられる。好ましくはアセチル、プロピオニルおよびブチリルであり、特に好ましいのはアセチルである。本発明において前記脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては例えば前記の一般式(A)のXとして例示したものがあげられる。
【0051】
次に、セルロースの水酸基への芳香族アシル基の置換は、一般的には芳香族カルボン酸クラロイドあるいは芳香族カルボン酸から誘導される対称酸無水物および混合酸無水物を用いる方法等が挙げられる。特に好ましいのは芳香族カルボン酸から誘導した酸無水物を用いる方法(Journalof AppliedPolymerScience、Vo
l.29、3981−3990(1984)記載)が挙げられる。上記の方法として芳香族アシル基の置換方法としては、(1)セルロース脂肪酸モノエステル又はジエステルを一旦製造したのち、残りの水酸基に前記一般式(A)で表される芳香族アシル基を導入する方法、(2)セルロースに直接に、脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の混合酸無水物を反応させる方法、などがあげられる。前者においては、セルロース脂肪酸エステル又はジエステルの製造方法自体は周知の方法であるが、これにさらに芳香族アシル基を導入する後段の反応は、該芳香族アシル基の種類によって異なるが好ましくは反応温度0〜100℃、より好ましくは20〜50℃で、反応時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは30〜300分で行われる。また後者の混合酸無水物を用いる方法も、反応条件は混合酸無水物の種類によって変わるが、好ましくは反応温度0〜100℃、より好ましくは20〜50℃、反応時間は好ましくは30〜300分、より好ましくは60〜200分である。上記のいずれの反応も、反応を無溶媒又は溶媒中のいずれで行ってもよいが、好ましくは溶媒を用いて行われる。溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサンなどを用いることができる。
【0052】
本発明で用いられるセルロース誘導体は、10〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロース誘導体は、1000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することが最も好ましい。なお、質量平均分子量が小さいセルロース誘導体は添加剤として、三酢酸セルロースにポリマーブレンドして用いることもでき、これにより位相差フィルムのレターデーションの波長分散を制御することが期待できる。
【0053】
本発明で用いられるセルロース誘導体は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のようなプロトン性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
【0054】
この方法において、綿花リンターや木材パルプのようなセルロースは、酢酸のような有機酸で活性化処理した後、硫酸触媒の存在下で、上記のような有機酸成分の混合液を用いてエステル化する場合が多い。有機酸無水物成分は、一般にセルロース中に存在する水酸基の量に対して過剰量で使用する。このエステル化処理では、エステル化反応に加えてセルロース主鎖β1→4−グリコシド結合)の加水分解反応(解重合反応)が進行する。主鎖の加水分解反応が進むとセルロースエステルの重合度が低下し、製造するセルロースエステルフイルムの物性が低下する。そのため、反応温度のような反応条件は、得られるセルロースエステルの重合度や分子量を考慮して決定することが好ましい。
【0055】
重合度の高い(分子量の大きい)セルロースエステルを得るためには、エステル化反応工程における最高温度を50℃以下に調節することが重要である。最高温度は、好ましくは35〜50℃、さらに好ましくは37〜47℃に調節する。反応温度が35℃以上であれば、エステル化反応が円滑に進行するので好ましい。反応温度が50℃以下であれば、セルロースエステルの重合度が低下するなどの不都合が生じないので好ましい。
【0056】
エステル化反応の後、温度上昇を抑制しながら反応を停止すると、さらに重合度の低下を抑制でき、高い重合度のセルロースエステルを合成できる。すなわち、反応終了後に反応停止剤(例えば、水、酢酸)を添加すると、エステル化反応に関与しなかった過剰の酸無水物は、加水分解して対応する有機酸を副成する。この加水分解反応は激しい発熱を伴い、反応装置内の温度が上昇する。反応停止剤の添加速度が大きすぎることがなければ、反応装置の冷却能力を超えて急激に発熱して、セルロース主鎖の加水分解反応が著しく進行し、得られるセルロースエステルの重合度が低下するなどの問題が生じることはない。また、エステル化の反応中に触媒の一部はセルロースと結合しており、その大部分は反応停止剤の添加中にセルロースから解離する。このとき反応停止剤の添加速度が大きすぎなければ、触媒が解離するために充分な反応時間が確保され、触媒の一部がセルロースに結合した状態で残るなどの問題は生じにくい。強酸の触媒が一部結合しているセルロースエステルは安定性が非常に悪く、製品の乾燥時の熱などで容易に分解して重合度が低下する。これらの理由により、エステル化反応の後、好ましくは4分以上、さらに好ましくは4〜30分の時間をかけて反応停止剤を添加して、反応を停止することが望ましい。なお、反応停止剤の添加時間が30分以下であれば、工業的な生産性の低下などの問題が生じないので好ましい。
【0057】
反応停止剤としては、一般に酸無水物を分解する水やアルコールが用いられている。ただし、本発明では、各種有機溶媒への溶解性が低いトリエステルを析出させないために、水と有機酸との混合物が、反応停止剤として好ましく用いられる。以上のような条件でエステル化反応を実施すると、質量平均重合度が500以上である高分子量セルロースエステルを容易に合成することができる。
【0058】
(面内レターデーションRe、膜厚方向レターデーションRth)
Re(λ)は自動複屈折計(例えばKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーシ
ョン値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
【0059】
本発明のセルロース誘導体フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体、または偏光板の保護フィルムとしても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。したがって、本発明のセルロース誘導体フィルムは膜厚方向に屈折率が最大となることが好ましく、その結果膜厚方向のレターデーションが負の値をとることになる。すなわち、本発明の面内、および膜厚方向のレターデーションの好ましい範囲は、20nm<|Re(630)|<300nm、−30nm>Rth(630)>−400nmである。より好ましくは50nm<|Re(630)|<180nm、−50nm>Rth(630)>−300nmであり、特に好ましくは80nm<|Re(630)|<150nm、−100nm>Rth(630)>−200nmである。
【0060】
本発明に使用されるレターデーション調整剤としては、固有複屈折率が大きく、かつフィルム中で配向しやすい化合物、即ち、レターデーション発現能が大きい化合物であることが好ましい。すなわち、棒状化合物あるいは円盤状化合物をフィルム中に添加した後、延伸処理等によって配向させることでレターデーションを広範囲に調整することができる。特に該添加剤が液晶性を有する場合には、たとえば棒状液晶化合物を配向させた場合には延伸方向の複屈折が高くなり、円盤状液晶性化合物をフィルム表面に平行に配向させた場合にはフィルム面内方向の複屈折を高くすることができる。本発明のセルロース誘導体フィルムが該レターデーション調整剤を含まない場合には、特に分極率異方性が高い芳香族環アシル基の置換度が高いセルロースアシレートを用いた場合には、延伸直交方向(面内方向、膜厚方向を含む)に複屈折が増加する。そのため、面内レターデーションを低く抑えながら、膜厚方向レターデーションを負に大きくしたい場合には、該液晶性化合物を添加することで延伸方向の複屈折を大きくでき、面内レターデーションを低減することができる。
【0061】
(レターデーション調整剤)
本発明において、添加剤として下記一般式(1)に示されるようなレターデーション調整剤を用いることが好ましい。以下にセルロース誘導体フィルムのレターデーションを発現する化合物について説明する。本発明者らは、鋭意検討した結果、レターデーション調整剤として分子の最大末端間距離が20Å以上であり、かつ分子長軸/短軸比が2.0以上の素材を用いて光学的異方性を十分に発現させ、ReまたはRthが高くなるようにした。すなわち、延伸フィルム中で配向した調整剤によって、フィルム延伸方向と延伸直交方向の屈折率差が生じやすくなり、延伸方向の複屈折を容易に発現できる。なお、本発明に示す最大末端間距離、および分子長軸/短軸比については、MOPAC、WinMOPAC等の分子軌道計算ソフトを用いて分子構造を計算した結果から試算した。本発明においてレターデーション調整剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を添加することが好ましい。ただし、本発明の効果については、レターデーションを発現する添加剤として以下に示す構造に限定される訳ではない。
【0062】
本発明に用いるレターデーション調整剤の好ましい添加量は、セルロース誘導体100質量部に対する含有量として、0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。またセセルロース誘導体溶液中にうまく混合させるためには、レターデーション調整剤はセルロース誘導体に十分に相溶し、化合物自身が凝集しないことが好ましい。このためには、例えば溶剤と調整剤を撹拌混合した調整剤溶液をあらかじめ作成し、この調整剤溶液を別途用意した少量のセルロース誘導体溶液に加えて攪拌し、さらにメインのセルロース誘導体ドープ液と混合する方法が挙げられるが、本発明は特にそのような添加方法に限定される訳ではない。
【0063】
前述のように、本発明におけるセルロース誘導体フィルムには、レターデーション調整剤として下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とすることが好ましい。
【0064】
【化7】

【0065】
[式中、Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ独立して、アリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2はそれぞれ独立して、単結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていてもよい。]
【0066】
次に、本発明一般式(1)で表される化合物に関して詳細に説明する。
【0067】
一般式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2は単なる結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
Ar1、Ar2、Ar3はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、Ar1、Ar2、Ar3で表されるアリール基として好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
一般式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3で表されるアリール基としてより好ましくは炭
素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0069】
一般式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3で表される芳香族ヘテロ環としては酸素原子、
窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環であればいずれのヘテロ環でもよいが、好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。また、可能な場合にはさらに置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
【0070】
一般式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3で表される芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールである。
【0071】
一般式(1)中、L1、L2は単結合、または2価の連結基を表し、2価の連結基の例として好ましくは、-NR-(Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、-SO-、-CO-、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-SO-およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは-O-、-CO-、-SONR-、-NRSO-、-CONR-、-NRCO-、-COO-、および-OCO-、アルキニレン基であり、最も好ましくは-CONR-、-NRCO-、-COO-、および-OCO-、アルキニレン基である。
【0072】
本発明の一般式(1)で表される化合物において、Ar2はL1およびL2と結合するがAr2がフェニレン基である場合、L1-Ar2-L2、およびL2-Ar2-L2は互いにパラ位(1,4-位)の関係にあることが最も好ましい。
【0073】
nは3以上の整数を表し、好ましくは3ないし7であり、より好ましくは3ないし5である。
【0074】
一般式(1)のうち好ましくは一般式(2)であり、ここで一般式(2)について詳しく説明する。
【0075】
【化8】

【0076】
式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環を表
し、L2、L3はそれぞれ独立して、単結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
Ar2、L2、およびnは一般式(1)の例と同一であり、L3は単結合、または2価の
連結基を表し、2価の連結基の例として好ましくは、-NR-(Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、アルキレン基、置換アルキレン基、-O-、およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは-O-、-NR-、-NRSO-、および-NRCO-である。
【0078】
11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基など)、炭素数6〜12のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基)であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
【0079】
22、R23およびR24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基)である。
【0080】
以下に前述の置換基Tについて説明する。
置換基Tとして好ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、t-ブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4-n-ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン-2-イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン-3-イル)、
【0081】
アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2-シクロペンテン-1-イル、2-シクロヘキセン-1-イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-1-イル、ビシクロ[2,2,2]オクト-2-エン-4-イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p-トリル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
【0082】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t-ブトキシ、n-オクチルオキシ、2-メトキシエトキシ)、アリールオ
キシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0083】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
【0084】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
【0085】
アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイルベンゾイル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、n-オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表す。
【0086】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0087】
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0088】
以下に一般式(1)および一般式(2)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0089】
【化9】

【0090】
【化10】

【0091】
【化11】

【0092】
【化12】

【0093】
【化13】

【0094】
【化14】

【0095】
【化15】

【0096】
【化16】

【0097】
また、下記一般式(3)で表される化合物も好ましい。
【0098】
【化17】

【0099】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立に置換基を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、または2価の連結基を表す。n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、p、qはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。
【0100】
1、R2、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子以外の置換基を表す。R1
2、R3、R4、R5、R6は同じであってもよく、異なっていてもよい。置換基として好
ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0101】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0102】
中でも、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルコキシカルボニルオキシ基、シクロアルキル基、アシルアミノ基、シアノ基、ハロゲン原子を挙げることができる。
【0103】
また、置換基が二つ以上ある場合は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0104】
一般式(3)中、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、または2価の連結基を表す。L1、L2は同じであってもよく異なっていてもよい。
2価の連結基の例として好ましいものは、−NR7−(R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、−SO2−、−CO−、
アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−SO−およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは−O−、−CO−、−SO2NR7−、−NR7SO2−、−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基であり、最も好ましくは−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基である。ここで、置換基としては前述のR1、R2、R3、R4、R5、R6における置換基の例が適用できる。
【0105】
n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、n、mが2以上である場合、繰り返し単位中のR1、R2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。p、qはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、p、qが2以上である場合、繰り返し単位中のR3、R4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R3はR5とR4はR6と互いに環を形成していてもよい。なお、レターデーション制御効果の観点からは、一般式(1)で表される化合物は対称化合物であること(即ち、一般式(3)において中央に位置するシクロヘキサンの1,4位に結合する基が同一構造を有すること)が好ましい。
【0106】
以下に一般式(3)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0107】
【化18】

【0108】
【化19】

【0109】
【化20】

【0110】
【化21】

【0111】
【化22】

【0112】
また、下記一般式(4)で表される化合物も好ましい。
【0113】
【化23】

【0114】
(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に置換基を表し、E1、E2、E3、E4はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表す。L1、L2はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、p、qはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。)
【0115】
1、R 2はそれぞれ独立に置換基を表す。置換基として好ましくはハロゲン原子(例
えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0116】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0117】
また、置換基が二つ以上ある場合は、それぞれ同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0118】
3、R4はそれぞれ独立に置換基を表す。置換基として好ましい例として、はR1、R2で述べたものと同一であるが、中でも、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が好ましい。また、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基がさらに好ましい。
【0119】
1、L2はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。L1、L2は同じであってもよく、異なっていてもよい。 2価の連結基は、例えばアリーレン基以外の2価の連結基であり、好ましくは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、2つ以上の組み合わせにより構成される際、さらに他の2価の連結基で連結されていてもよい。このような2価の連結基としては−NR7−(R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−SO2NR7−、−NR7SO2−、−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、および−OCO−である。ここで、置換基としては前述のR1、R2、R3、R4における置換基の例が適用できる。
【0120】
n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、n、mが2以上である場合、繰り返し単位中のR1、R2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。p、qはそれぞれ独立に1〜10の整数を表し、p、qが2以上である場合、繰り返し単位中のE3、E4、L1
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、レターデーション制御効果の
観点からは、一般式(4)で表される化合物は対称化合物または対称に近い化合物であること(即ち、一般式(1)において中央に位置するシクロヘキサンの1,4位に結合する基が同一構造または近似する構造を有する)が好ましい。
【0121】
以下に一般式(4)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0122】
【化24】

【0123】
【化25】

【0124】
【化26】

【0125】
【化27】

【0126】
【化28】

【0127】
(化合物添加の方法)
またこれらレターデーション調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。またこれらレターデーション調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0128】
本発明におけるセルロース誘導体フィルムは、上記レターデーション調整剤の他にも用途に応じた種々の添加剤、例えば、光学的異方性を低下する化合物、可塑剤、本請求の透過率変化量調整に用いる紫外線吸収剤以外の紫外外線吸収剤、劣化防止剤、微粒子、剥離促進剤などを加えることができる。またその添加時期はドープ調製工程におけるどの段階で添加してもよく、綿を溶解させた直後のドープに添加剤溶液を加えても良いし、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤溶液を添加しても良い。
【0129】
次に、本発明に用いられるセルロース誘導体について詳細に説明する。
【0130】
[セルロース誘導体原料綿]
本発明に用いられるセルロース誘導体原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロース誘導体でも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロース誘導体フィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0131】
[セルロース誘導体の重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロース誘導体の重合度は、粘度平均重合度で10〜500であり、150〜450がより好ましく、180〜400が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロース誘導体のドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。
【0132】
また、本発明で好ましく用いられるセルロース誘導体の分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
【0133】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロース誘導体よりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロース誘導体は、通常の方法で合成したセルロース誘導体から低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロース誘導体を適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロース誘導体を製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロース誘導体を合成することができる。本発明のセルロース誘導体の製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロース誘導体である。一般に、セルロース誘導体は、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロース誘導体の含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロース誘導体は、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0134】
本発明のセルロース誘導体は置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロース誘導体を混合して用いることができる。
【0135】
[セルロース誘導体溶液の有機溶媒]
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロース誘導体フィルムを製造することが好ましく、セルロース誘導体を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0136】
以上本発明のセルロース誘導体フィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0137】
その他、本発明のセルロース誘導体溶液およびフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752号の各公報などに記載されている。これらの特許によると本発明のセルロース誘導体に好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0138】
[セルロース誘導体フィルムの製造工程]
[溶解工程]
本発明のセルロース誘導体溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロース誘導体溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0139】
(ドープ溶液の透明度)
本発明のセルロース誘導体溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロース誘導体ドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津作製所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロース誘導体溶液の透明度を算出した。
【0140】
[流延、延伸、乾燥、巻き取り工程]
次に、本発明のセルロース誘導体溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロース誘導体フィルムを製造する方法および設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロース誘導体溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅方向に延伸した後、得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロース誘導体フィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護フィルムやハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0141】
また、本発明のセルロース誘導体フィルムの厚さは用途によって定まり、特に制限はないが、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、30〜200μmがさらに好ましく、30〜100μmがとくに好ましい。
【0142】
本発明のセルロース誘導体フィルムの幅についても用途、特に使用する液晶表示装置のパネルサイズにより適当な幅を選択すれば良く、特に制限は無いが、600mm乃至3000mmが好ましく、1000mm乃至2500mmが更に好ましく、1300mm乃至2300mmが最も好ましい。
【0143】
なお、本発明における延伸処理は特に限定しないが、例えば複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してフィルム搬送方向に延伸する方法や、フィルム端部をクリップで把持し、幅方向に延伸する方法のいずれかおよびその両方の手法を使用することができる。また延伸倍率に関しては好ましくは1.03倍〜2.00倍を指すものとし、より好ましくは1.05倍〜1.5倍、特に好ましくは1.10倍〜1.25倍である。
【0144】
[セルロース誘導体フィルム物性評価]
(フィルムのヘイズ)
本発明のセルロース誘導体フィルムのヘイズは0.01〜2.0%であることがのぞましい。よりのぞましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらにのぞましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、本発明のセルロース誘導体フィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。
【0145】
(コントラストの測定)
コントラストの評価方法として黒表示状態の液晶表示装置を極角60°で全方位角で10点測定を行った時の平均輝度(単位:Cd/m)および、10点の変化率=10点測定の最大値と最小値の差/平均輝度(単位:%)を測定した。従って、平均輝度が小さく輝度変化率が小さいフィルムほど、コントラストが高く視野角依存性が小さい表示が可能となる。本発明における好ましい平均輝度は0.4未満であり、より好ましくは0.3未満、特に好ましくは0.25未満である。また、本発明における好ましい変化率は、30%未満であり、より好ましくは25%未満、特に好ましくは20%未満である。
【0146】
(黒輝度の測定)
黒輝度の評価方法として極角0°で画面内でランダムに10点測定を行った時の平均輝度(単位:Cd/m)より黒輝度を算出した。本発明における好まし黒輝度は黒輝度<0.25であり、より好ましくは黒輝度<0.20、特に好ましくは黒輝度<0.18である。
【0147】
本発明で作製されたセルロース誘導体フィルムの用途についてまず簡単に述べる。本発明のフィルムは特に偏光板保護フィルム用、液晶表示装置の光学補償フィルム(シート)、反射型液晶表示装置の光学補償フィルム、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として有用である。
【0148】
[機能層]
本発明のセルロース誘導体フィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、および該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロース誘導体フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学異方性層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロース誘導体フィルムを用いることができるこれらの機能層およびその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0149】
[光学異方性層]
本発明のセルロース誘導体フィルムは、下記(C)および(D)のレターデーションを満たす光学異方性層を有することが好ましい。
0nm<Re(546)<400nm (C)
0nm<|Rth(546)|<400nm (D)
(ここでRe(546)は、波長546nmにおけるフィルムの面内方向のレターデーションを示す。またRth(546)は、波長546nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーションを示す。)
好ましくは、
0 nm<Re(546)<200nm (C’)
0 nm<|Rth(546)|<300nm (D’)
である。
上記の各レターデーションを得るための光学異方性層は、ディスコティック液晶層または棒状液晶層が好ましい。
【0150】
光学異方性層は上記の光学特性を満足する範囲内であれば特に制限は無く、必要なRe(546)、Rth(546)に合わせて適当な層を用いることができる。Re、Rth値を満足する光学異方性層としては、例えば配向処理を施したポリマーフィルムを積層する方法、もしくは液晶を塗布して配向処理する方法を好ましく用いることが出来る。
前者の場合は、例えば延伸により配向処理したポリマーフィルムを粘着剤等を介してセルロース誘導体フィルムに貼合しても良く、セルロース誘導体フィルムにポリマー層を塗布法により設けた後、延伸処理を施しても良い。ポリマーの種類は特に制限は無く、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリオレフィン、セルロースエステル等を用いることができる。
後者の場合、液晶層に特に制限は無いが、ディスコティック液晶層または棒状液晶層が好ましく用いられる。これらの層はディスコティック液晶もしくは棒状液晶の他に必要に応じて配向制御剤等を含んでいても良い。
【0151】
液晶層の光学軸はフィルム面に実質的に平行に配向していることが好ましい。実質的に平行とは、フィルム面と光学軸の成す角度が0°乃至20°の範囲内であることを意味している。0°乃至10°の範囲であることが好ましく、0°乃至5°であることが好ましい。
【0152】
ディスコティック液晶は、本発明の請求を満足する範囲であれば特に制限は無いが、例えばトリフェニレン液晶を好ましく用いることができる。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0153】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−P)
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0154】
棒状液晶としてはアゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物はディスコティック液晶と同様に、重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0155】
液晶層の配向制御方法は特に制限は無く、ラビング処理または偏光UV光を照射した配向膜上に塗布して加熱処理する方法など公知の方法を用いることができる。
【0156】
[用途(偏光板)]
本発明のセルロース誘導体フィルムの用途について説明する。
本発明のセルロース誘導体フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロース誘導体フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0157】
偏光板は偏光子およびその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のセルロース誘導体フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
【0158】
(一般的な液晶表示装置の構成)
セルロース誘導体フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光板の透過軸と、セルロース誘導体フィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、および該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
【0159】
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロース誘導体フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロース誘導体フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効であるが、とくにIPSモードの液晶表示装置に用いるのが好ましい。
また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0160】
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロース誘導体フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0161】
(STN型液晶表示装置)
本発明のセルロース誘導体フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0162】
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロース誘導体フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReを0乃至150nmとし、Rthを70乃至400nmとすることが好ましい。Reは、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthは70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthは150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0163】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明のセルロース誘導体フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護フィルムとしても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロース誘導体フィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護フィルムのうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護フィルム(セル側の保護フィルム)に本発明のセルロース誘導体フィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護フィルムと液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
【0164】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロース誘導体フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0165】
(反射型液晶表示装置)
本発明のセルロース誘導体フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00/65
384号に記載がある。
【0166】
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロース誘導体フィルムは、ASM(Axially Symmetric
Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID
98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【実施例】
【0167】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されることはない。
【0168】
実施例1
<セルロース誘導体溶液の調製>
表1−1及び1−2に記載の組成物を耐圧性のミキシングタンクに投入し、6時間攪拌して各成分を溶解し、セルロース誘導体溶液T−1〜T−15を調製した。なお、表1−1及び1−2の置換度の欄の()内には置換されたアシル基の基名を示した。
【0169】
【表1】

【0170】
【表2】

【0171】
表中のNo.は、明細書中の一般式(A)の芳香族アシル基の具体例No.に対応している。アセチル基のΔαは、0.91×10−24cmであり、ブチリル基のΔαは、2.2×10−24cmであり、プロパノイル基のΔαは、1.4×10−24cmであり、No.1のΔαは、5.1×10−24cmであり、No.13のΔαは、7.1×10−24cmである。
【0172】
TPP:トリフェニルフォスフェート
BDP:ビフェニルジフェニルフォスフェート
PMMA: ポリメチルメタクリレート(オリコ゛マー:分子量約9000)
【0173】
化合物α:
【0174】
【化29】


【0175】
化合物β:
【0176】
【化30】


【0177】
<添加剤溶液の調製>
耐圧性のミキシングタンクに、表2に記載の組成物を投入し、39℃にて攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液U−1を調製した。
【0178】
【表3】

【0179】
【化31】

【0180】
<セルロースアシレートフィルム試料001〜002の作製>
耐圧性のミキシングタンクにて、セルロースアシレート溶液T−1の477質量部を充分に攪拌し、ドープを調製した。調整したドープをバンド流延機にて金属支持体上に流延した後に乾燥を行い、自己支持性のあるドープ流延膜をバンドより剥離した。剥離したドープ膜の端部をテンターで把持し、フィルム幅がそれぞれ1.0倍、1.1倍となるようにテンター延伸し、その後テンターで把持しながら乾燥し、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料001、002を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0181】
<セルロースアシレートフィルム試料005〜006、008〜016、018〜020、024、025、※B、※C、※K、※L、※N〜Sの作製>
セルロースアシレートフィルム試料001の作製方法において、セルロースアシレート溶液を表1−1、表1−2および表3にしたがって適宜変更し、延伸倍率を表3に示すようにしたこと以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料005〜006、008〜016、018〜020、024、025を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0182】
<セルロースアシレートフィルム試料007、017、021の作製>
セルロースアシレートフィルム試料001の作製方法において、ドープ調液に使用するセルロースアシレート溶液を表1−1、表1−2および表3にしたがってT−2、T−10、T−13に適宜変更し、かつセルロースアシレート溶液4質量部に対して表2に示した添加剤溶液を1質量部の割合で添加し、延伸倍率を表3に示すようにしたこと以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料007、017、021を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0183】
<セルロースアシレートフィルム試料※Gの作製>
セルロースアシレートフィルム試料※Cの作製方法において、バンド流延機の金属支持体上に流延する際に使用するダイの幅を広げ、フィルムの幅が1.5mになるように作製したこと以外は同様にしてセルロースアシレートフィルム試料※Gを作製した。
【0184】
<セルロースアシレートフィルム試料※Hの作製>
セルロースアシレート溶液※1を耐圧製ストックタンクに入れて静置した後、ポンプ、フィルター(フィルター径:10μm)を有する送液配管を用いてバンド流延機の金属支持体上に幅800mmの専用ダイを使用して流延した。バンド上で乾燥させ、自己支持性のある流延膜を金属支持体上から剥離した後、膜の端部をテンタークリップで把持し、延伸倍率が1.08倍になるように140℃で延伸した。延伸後にクリップから離脱し、フィルムの両端のクリップ把持部分を切り除いた後、連続的にロールを配置してフィルムを搬送できるようにした乾燥ゾーンを用いて135℃で乾燥させた。乾燥後のフィルムは幅680mmになるように再度両端を切り除いて巻き芯に500mの長さを巻き取った。このようにしてセルロースアシレートフィルム試料※Hの試料を作製した。
巻き取り後のフィルム膜厚は102μmであった。
【0185】
<セルロースアシレートフィルム試料※Iの作製>
セルロースアシレートフィルム試料002の作製方法において、ドープ調液に使用するセルロースアシレート溶液を表1−1及び表1−2にしたがって※2に変更し、かつ厚みを60μmとしたこと以外は同様にしてセルロースアシレートフィルム試料※Iを、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0186】
<セルロースアシレートフィルム試料※J、Nの作製>
セルロースアシレートフィルム試料002の作製方法において、ドープ調液に使用するセルロースアシレート溶液を表1−1及び表1−2にしたがって※3、※6に変更し、延伸倍率を1.3倍、厚みを40μmとしたこと以外は同様にしてセルロースアシレートフィルム試料※J、Nを、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0187】
<セルロースアシレートフィルム試料003、022、※Dの作製>
セルロースアシレートフィルム試料001の作製方法において、延伸倍率を1.2倍にしたこと以外は、同様の方法により、厚み80μmのフィルム003を得た。また、セルロースアシレートフィルム試料001の作製方法において、セルロースアシレート溶液をT−13に変更し、延伸倍率を1.2倍にしたこと以外は同様の方法により、厚み80μmのフィルム022を得た。
また、セルロースアシレートフィルム試料001の作製方法において、セルロースアシレート溶液を※1に変更し、延伸倍率を1.16倍とし、フィルムの膜厚を150μmにしたこと以外は同様の方法によりフィルム※Dを得た。
上記フィルム003および022の表面をケン化後、これらのフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60
秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施して、配向膜を得た。
【0188】
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
添加剤(下記例示化合物I−1) 0.2質量部
【0189】
【化32】

【0190】
【化33】

【0191】
次に、配向膜上に、ディスコティック液晶性化合物(D1)1.8g1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、のメチレンクロライドに溶解した溶液を、#3.4のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、125℃の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射しディスコティック液晶性化合物を架橋して、光学異方性層を形成した。その後、室温まで放冷した。このようにして、セルロースアシレートフィルム試料003、022を作製した。光学異方性層のRe(546)は 1.1 nm、Rth(546)は −230 nmであった。
【0192】
<セルロースアシレートフィルム試料004、023の作製>
前記のフィルム003および023のけん化処理および配向膜の形成を行った後、下記のディスコティック液晶性化合物(D1)1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、空気界面側垂直配向剤(フッ素系ポリマー、下記化合物P−15)0.0072gを3.9gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を、#3.4のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、125℃の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射しディスコティック液晶性化合物を架橋して、光学異方性層を形成した。その後、室温まで放冷した。このようにして、セルロースアシレートフィルム試料004、023を作製した。光学異方性層のRe(546)は3.4nm、Rth(546)は −130 nmであった。
【0193】
【化34】

【0194】
【化35】


【0195】
<セルロースアシレートフィルム試料※Eの作製>
セルロースアシレートフィルム試料001の作製方法において、セルロースアシレート溶液を※1に変更し、延伸倍率1.4倍、延伸後の膜厚を60μmとしたこと以外は同様にしてセルロースアシレートフィルムを作製した。表面をけん化処理した後、ディスコティック液晶塗布液を#3バーで塗布したこと以外はセルロースアシレートフィルム004と同様にして配向膜、光学異方性層を設けてセルロースアシレートフィルム試料※Eを作製した。光学異方性層のRe(546)は2.8nm、Rth(546)は−98nmであった。
【0196】
<セルロースアシレートフィルム試料※A、※Fの作製>
セルロースアシレートフィルム試料001の作製方法において、延伸倍率を1.2倍にしたこと以外は同様の方法により、厚み80μmのフィルム※Aを得た。また、セルロースアシレート溶液を※1に変更し延伸倍率を1.2倍にしたこと以外は同様の方法で厚み80μmのフィルム※Fを得た。
上記フィルムの表面をケン化処理した後、これらのフィルム上に以下の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施して、配向膜を設けた。
【0197】
<配向膜塗布液の組成>
前記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0198】
下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液を、上記作製した配向膜上に塗布した。フィルムの搬送速度は20m/minとした。室温から80℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、80℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を60℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、光学異方性層を形成した。光学異方性層のRe(546)は0.5nm、Rth(546)は−265nmであった。
【0199】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
前記の棒状液晶性化合物(I−1) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.4質量部
下記のピリジニム塩 1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0200】
フッ素系ポリマー
【0201】
【化36】

【0202】
ピリジニウム塩
【化37】

【0203】
<評価試験>
[パネル評価]
【0204】
実施例2
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム試料を用いて、液晶表示装置へ実装評価してその光学性能が十分であるか確認した。なお本実施例ではIPS型液晶セルを用いるが、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板の用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
【0205】
<アルカリけん化処理>
次に、作製した各セルロースアシレートフィルム試料に対し、アルカリけん化処理を行った。けん化液は1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用い、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにしてフィルムの両表面をケン化処理した光学補償フィルム試料001〜025を作製した。
【0206】
<偏光板作製>
上記の表面処理済み光学補償フィルム試料001を用い、偏光板作製を行った。すなわち、けん化処理をしたフィルム試料の片側の表面に対し、アクリル系粘着剤塗布液をそれぞれ20ml/m塗布し、100℃で5分乾燥して粘着剤付きフィルム試料とした。
【0207】
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光子を得た。上記の粘着剤付き光学補償フィルム試料001の粘着剤を塗設していない側に偏光子がくるように貼り付け、さらに偏光子のもう一方の側にセルロールアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re(630)は3nm、Rth(630)は50nm)を上記と同様の方法によりアルカリケン化処理、粘着剤層の塗設、および偏光子との貼り合わせを行い、光学補償フィルム付き偏光板試料001を作製した。
更に、液晶セルのもう片側に市販の偏光板(サンリッツ(株)製HLC−5618)を用いることにした。
【0208】
作製した上記の偏光板試料001と市販の偏光板を用い、図1に示すように光学補償フィルムが各々液晶セル側となるように、「偏光板試料001+IPS型の液晶セル+偏光板HLC−5618」の順番に重ね合わせて組み込んだ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板試料001の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償フィルムの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5度、ラビング方向:基板上下とも75度とした。
【0209】
同様にして、光学補償フィルム試料002〜015についても、上記の偏光板試料001と同様の方法により偏光板を作製し、IPS液晶セルと組み込んだ表示装置を作製した。
【0210】
実施例3
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム試料※Dを用いて、液晶表示装置へ実装評価してその光学性能が十分であるかを以下のようにして確認した。
【0211】
(フロント偏光板の作製)
厚さ75μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5.1倍に延伸し、乾燥して厚さ28μmの偏光子を得た。実施例2と同様にけん化処理を施した※Dの光学異方性層とは反対側の面と偏光子が接するようにポリビニルアルコール性接着剤を用いて貼り付け、さらに偏光子のもう一方の側に同様のけん化処理を施したセルロールアセテートフィルム(フジタックTFY80UL、富士写真フイルム(株)製)を貼り合せて光学補償フィルム付き偏光板を作製した。
【0212】
市販のIPS液晶表示装置(東芝製 37Z1000)のパネルのフロント側の偏光板を剥離し、上記で作製したフロント偏光板を粘着シートを用いて貼り合せた。本発明で作製した偏光板の吸収軸は、剥離した製品の偏光板の吸収軸の方向と合わせた。また、貼り合わせた後、50℃5気圧でオートクレーブ処理を施した。このようにして光学補償フィルムを用いたIPS液晶セルを作製した。
【0213】
実施例4
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルム試料※Eを用いて、液晶表示装置へ実装評価してその光学性能が十分であるかを以下のようにして確認した。
【0214】
(フロント偏光板用保護フィルムの作製)
デソライトKZ−7869(紫外線硬化性ハードコート組成物、72質量%、JSR(株)製)250gを62gのメチルエチルケトンと88gのシクロヘキサノンの混合溶媒に溶解し、ハードコート層塗布液を調製した。
【0215】
次にジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)91g、デソライトKZ−7115、KZ−7161(ZrO2微粒子分散液、JSR(株)製)199gを52gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46質量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)10gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。さらにこの溶液に平均粒径2.0μmの架橋ポリスチレン粒子(SX−200H、綜研化学(株)製)20gを80gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46質量%の混合溶媒に高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散した分散液29gを添加、攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層の塗布液を調製した。
【0216】
市販のセルロースアセテートフィルム(TF80UL 富士写真フイルム(株)製)の上に、前記のハードコート層塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ4μmのハードコート層を形成した。その上に、前記防眩層塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、窒素パージによって0.01%以下の酸素濃度雰囲気下において、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ1.4μmの防眩性ハードコート層を形成した。このようにしてフロント偏光板用保護フィルムを作製した。
【0217】
(フロント偏光板の作製)
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光子を得た。実施例3と同様にけん化処理を施した※Eの光学異方性層とは反対側の面と偏光子が接するようにポリビニルアルコール性接着剤を用いて貼り付け、さらに偏光子のもう一方の側に上記で作製した保護フィルムをけん化処理して、防眩層とは反対の面と偏光子が接するように貼り合せて光学補償フィルム付き偏光板を作製した。
【0218】
(リア側偏光板の作製)
上記のフロント側偏光板と同様にして偏光子を作製し、偏光子の片側にけん化処理を施した低レターデーションフィルム(ZRF80s 富士写真フイルム製)、他方にけん化処理したセルロースアセテートフィルム(TF80UL 富士写真フイルム製)を貼り合せてリア側偏光板を作製した。
【0219】
市販のIPS液晶表示装置(東芝製 37Z1000)のパネルのフロント側偏光板、およびリア側の偏光板を剥離し、上記で作製したフロント偏光板、リア側偏光板を粘着シートを用いて貼り合せた。偏光子の吸収軸方向は剥離した製品の偏光板の吸収軸方位と合わせ、実施例3と同様のオートクレーブ処理を施した。このようにして光学補償フィルムを用いたIPS液晶セルを作製した。
<黒表示の色味変化>
実施例2で作製した、本発明のセルロースアシレートフィルムを搭載した液晶表示装置を黒表示させ、正面(極角0°/方位角0°)から右斜め上方向(最大極角80°/方位角45°)に視点をずらしていったときの色味変化を以下の基準で評価した。
○:正面から斜め方向に視点をずらしたときに、黒色味がほとんど変化しない場合
△:正面から斜め方向に視点をずらしたときに、青味または赤味が確認できる場合
×:正面から斜め方向に視点をずらしたときに、著しく青味または赤味が確認できる場合
【0220】
<コントラスト保持率>
実施例2で作成した、本発明の液晶表示装置の正面方向から輝度計を用いて白輝度、および黒輝度を測定し、両者の比をとることで正面コントラスト(CR1)を測定した。
一方、本発明のセルロースアシレートフィルム試料の代わりにフジタックTD80UFを用いて同様にして正面コントラスト(CR0)を測定した。そして、以下式からコントラスト保持率を測定した。
コントラスト保持率= CR1/CR0 × 100(%)
【0221】
<光学性能の評価>
作製した各試料について、本明細書に記載の方法にて、Re(630)、Rth(63
0)の光学性能の評価を行った。
【0222】
<フイルムのRe、Rthの湿度依存性>
本発明のセルロースアシレートフイルムの面内レターデーションReおよび膜厚方向レターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましい。具体的には、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値の差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜50nmであることが好ましい。より好ましくは0〜40nmであり、さらに好ましくは0〜35nmである。
【0223】
結果を表3に示す。
なお、面内レターデーションReについては、延伸方向と平行な向きに遅相軸が発現する場合を正の値、延伸方向と直交する向きに遅相軸が発現する場合を負の値で示している。
【0224】
【表4】

【0225】
表3に示すように、本発明の分極率異方性が高いアシル基を有するセルロースアシレートフィルムは、膜厚方向レターデーションRthが負の値を有するために、液晶表示装置に搭載した場合に黒色味変化がほとんどなく、かつ正面コントラスト保持率が高い結果が得られた。すなわち、分極率異方性の高い置換基の種類、その他のアシル基(アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基など)および水酸基を含めた置換度を調整し、かつ光学異方性を示すレターデーション調整剤の添加および塗布により、レターデーションの値を広範囲に制御することが可能となった。また、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることで光学性能の湿度依存性を改善できる結果が得られ、視認性だけでなく、耐久性にも優れることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】本発明の実施例で使用した液晶表示装置を説明するための図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(a)および(b)を満たすセルロース誘導体を含むドープを、ソルベントキャスト法により製膜することを特徴とするセルロース誘導体フィルムの製造方法。
(a)セルロースのグルコース単位が有する三つの水酸基のうち、少なくとも一つが下記数式(1)で表される分極率異方性Δαが2.5×10−24cm以上である置換基により置換されている。
数式(1):Δα=αx−(αy+αz)/2
(式中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり;
αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり;
αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。)
(b)前記Δαが2.5×10−24cm以上である置換基による置換度をPとし、Δαが2.5×10−24cm未満である置換基による置換度をPとしたとき、前記置換度PおよびPが下記数式(3)および(4)を満たす。
数式(3):2P+P>3.0
数式(4):P>0.2
【請求項2】
製膜に引き続いて延伸処理を施すことを特徴とする請求項1記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記Δαが2.5×10−24cm以上である置換基が芳香族アシル基であり、Δαが2.5×10−24cm未満である置換基が脂肪族アシル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記脂肪族アシル基がアセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選ばれ、かつ前記芳香族アシル基の芳香環上の置換基として、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、炭素原子数が6乃至20のアリールオキシ基、炭素原子数が1乃至20のアシル基、炭素原子数が1乃至20のカルボンアミド基、炭素原子数が1乃至20のスルホンアミド基および炭素原子数が1乃至20のウレイド基からなる群より選ばれる構造を有することを特徴とする請求項3に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ドープが、レターデーション調整剤を少なくとも1種類含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記レターデーション調整剤が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のセルロース誘導体フィルムの製造方法。
【化1】


[式中、Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ独立して、アリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2はそれぞれ独立して、単結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整
数を表し、それぞれAr2、L2は同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とするセルロース誘導体フィルム。
【請求項8】
下記式(A)および(B)のレターデーションを満たすことを特徴とする請求項7に記載のセルロース誘導体フィルム。
20nm<|Re(630)|<300nm (A)
−30nm>Rth(630)>−400nm (B)
(ここでRe(630)は、波長630nmにおけるフィルムの面内方向のレターデーションを示す。また、Rth(630)は、波長630nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーションを示す。)
【請求項9】
下記(C)および(D)のレターデーションを満たす光学異方性層を有することを特徴とする請求項7または8に記載のセルロース誘導体フィルム。
0nm<Re(546)<200nm (C)
0nm<|Rth(546)|<300nm (D)
(ここでRe(546)は、波長546nmにおけるフィルムの面内方向のレターデーションを示す。またRth(546)は、波長546nmにおけるフィルムの膜厚方向のレターデーションを示す。)
【請求項10】
前記光学異方性層がディスコティック液晶層を含有することを特徴とする請求項9に記載のセルロース誘導体フィルム。
【請求項11】
前記光学異方性層が棒状液晶層を含有することを特徴とする請求項9に記載のセルロース誘導体フィルム。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルムの少なくとも1枚を、偏光子の保護フィルムとして用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項13】
表面にハードコート層、防眩層および反射防止層の少なくとも1層を設けたことを特徴とする請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
請求項7〜11のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルム、または請求項12もしくは請求項13に記載の偏光板、のいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項15】
請求項7〜11のいずれかに記載のセルロース誘導体フィルム、または請求項12もしくは請求項13に記載の偏光板、のいずれかを用いたことを特徴とするIPSモード液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−169599(P2007−169599A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265003(P2006−265003)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】