説明

セルロースアシレートフィルム、その製造方法、それを用いた偏光板、並びにその偏光板を用いた液晶表示装置

【課題】
厚みムラが少なく、正面レターデーション変化の小さいセルロースアシレートフィルム、及びそれを用いた偏光板を提供すること、並びにこのような偏光板を用いた表示ムラのない高品位の液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】
フィルム表面におけるセルロースアシレート分子鎖の配向度Poと、フィルム全厚みでのセルロースアシレート分子鎖の平均配向度Ptが、下記数式(1)の関係を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
数式(1):2≦Po/Pt≦5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロースアシレートフィルム、楕円偏光板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは大型化が進むとともに、テレビなどの新たな用途でも使用され始めており、画質向上の要求が一段と高まっている。中でもコントラスト及び色味の視野角依存性は液晶表示装置特有の問題であり、改良の必要性の得に高い性能である。
【0003】
このため、従来のTN型のみならず、IPS、VA、OCB等の新たな液晶モードが提案されている。しかし、これらいずれの液晶モードにおいても、液晶セル単独で十分なコントラスト及び視野角依存性は得ることは難しく、何らかの位相差膜で液晶セルの有する複屈折を補償することが一般的である。
【0004】
セルロースアシレートフィルムは、従来から偏光板保護フィルムとして使用されてきたが、近年、このセルロースアシレートフィルムに積極的に位相差を付与し、光学補償フィルムとして使用する方法が提案されており、例えば、特許文献1にはテンター延伸したセルロースアシレートフィルムを、VA型液晶モードの位相差膜として使用する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−170492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら延伸セルロースアシレートフィルムは、製膜時に発生する厚みムラが大きいため、これを偏光板保護フィルム及び/又は位相差フィルムとして用いた液晶表示装置は、表示ムラが発生してしまうという問題を抱えており、強く改善が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、厚みムラが少なく、正面レターデーション変化の小さいセルロースアシレートフィルム、偏光板を提供することである。また、本発明の別の目的は表示ムラのない高品位の液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、セルロースアシレートフィルムの厚みムラはバンド上での乾燥時に発生するものが主要因であること、前記厚みムラは剥ぎ取り後の軟膜状態でフィルム表面の弾性率をフィルム内部の弾性率よりも高くすることで軽減されること、前記厚みムラは幅方向の延伸速度と搬送速度をバランスさせつつ乾燥させることによりさらに軽減されること、を見出した。前記フィルム表面の弾性率の高い領域の厚みは0.1μ〜20μの範囲が好ましく、またフィルム表面から内部に向けて連続的に弾性率が変化することが好ましい。さらに、フィルム表面に弾性率の高い領域を形成させる方法として、残留溶媒のI/O比、残留溶媒含量、及び延伸速度をコントロールしつつ延伸することによりフィルム表面にフィルム内部よりもセルロースアシレート主鎖の配向度の高い領域を形成させる方法が有効であることを見出し、本発明を完成させるにいたった。
【0008】
すなわち、本発明の上記目的は下記の構成1)〜8)により達成された。
1) フィルム表面におけるセルロースアシレート分子鎖の配向度Poと、フィルム全厚みでのセルロースアシレート分子鎖の平均配向度Ptが、下記数式(1)の関係を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
数式(1):2≦Po/Pt≦5
2) 波長590nmにおけるRe、及びRthが、下記数式(2)〜(4)の関係を満たす上記1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
数式(2):20≦Re≦200
数式(3):70≦Rth≦400
数式(4):1≦Rth/Re≦10
【0009】
3) セルロースアシレート、及び有機溶媒を含むドープ液を、バンド又はドラム上に流延後、剥離されたセルロースアシレートフィルムを搬送する工程(1)、幅手の端部把持する工程(2)、幅手方向に引き延ばす工程(3)を有するセルロースアシレートフィルムの製造において、残留溶媒含量が1質量%以上100質量%以下で、残留溶媒のI/O比が0.65以上6以下のセルロースアシレートフィルムを、下記数式(5)の条件でフィルムの搬送方向、及び/又はこれと垂直な方向に1%以上100%以下延伸することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
数式(5):1%/分≦延伸速度≦50%/分
4) 下記数式(6)の条件を満たす上記3)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
数式(6):5≦搬送速度/延伸速度≦300
【0010】
5) 上記3)又は4)の方法により製造された上記1)又は2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
6) セルロースアシレートの置換度が2.0以上2.85以下であり、フィルム中の添加剤含量がセルロースアシレートに対して12質量%以上である上記1)、2)又は5)に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0011】
7) 偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が上記1)、2)、5)又は5)に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
8) 少なくとも一方の保護フィルムの上に光学異方性層を有する上記7)に記載の偏光板。
【0012】
9) 液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも一方の偏光板が上記7)又は8)に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、厚みムラが少なく、正面レターデーション変化の小さいセルロースアシレートフィルム、偏光板が提供され、該セルロースアシレートフィルム、偏光板を用いた液晶表示装置は、表示ムラがなく高品位である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
<セルロースアシレートフィルム>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルム表面の配向度が内部の配向度よりも高いことを特徴とする。フィルム表面におけるセルロースアシレート分子鎖の配向度Poと、フィルム全厚みでのセルロースアシレート分子鎖の平均配向度Ptの関係は、下記数式(1)の関係を満たすことが必要であり、下記数式(1−2)の関係を満たすことが好ましい。
数式(1):2≦Po/Pt≦5
数式(1−2):2.5≦Po/Pt≦4
o/Ptの値が小さすぎると厚みムラ低減効果が不十分となる。また、Po/Ptの値が
大きすぎるとフィルムのカールが大きくなる。
【0015】
フィルム表面の配向度(配向オーダーパラメーター)Poは、簿膜X線In−Plain法測定を用いて、X線の検出器と試料を2θχとΦの角度で回転させて検出した2θχ/Φ=6〜11°のピーク強度から、下記数式(7)により算出できる。
数式(7):Po=(3cos2β−1)/2
ここで、
【0016】
【数1】

【0017】
また、フィルム全厚みでの平均配向度Ptは、透過2次元X線測定における2θ=6〜11°のピーク強度の平均値から上記式を用いて求めることができる。
【0018】
本発明のセルロースアシレートフィルムの、主鎖配向度の内部/表面の相対関係は、延伸速度及び延伸時の残留溶媒のセルロースアシレートに対する親和性を適度にコントロールすることにより調節することができる。以下に本発明のセルロースアシレートフィルムについて詳しく説明する。
【0019】
〔セルロースアシレート〕
まず、本発明に用いられるセルロースアシレートについて説明する。
セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位(β1→4グリコシド結合しているグルコース)に存在している3つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度は、セルロースの構成単位重量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、ASTM−D817−91に準じて実施する。
【0020】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、アセチル化度が2.0以上2.85以下のセルロースアセテートが好ましい。アセチル化度は2.5以上2.83以下がさらに好ましい。
【0021】
また下記数式(8)で表される、6位の置換比率が0.31以上であり、全置換度が2.85以下であるセルロースアセテートを使用することがより好ましい。
数式(8):6位の置換比率=6位の置換度/(2位の置換度+3位の置換度+6位の置換度)
【0022】
さらに、本発明に用いることができるもう1つの好ましいセルロースアシレートは、アシル化度が2.0以上2.85以下であり、2種類以上のアシル基を有するものである。アシル基の炭素原子数は2〜6であることが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基を用いることがさらに好ましい。また本発明のセルロースアシレートフィルムが、アセチル基とそれ以外のアシル基を有する場合、アセチル基の置換度は2.5未満が好ましく、2.3未満がさらに好ましい。
【0023】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、重量平均重合度250〜800を有することが好ましく、300〜600を有することがさらに好ましい。また本発明に用いられるセルロースアシレートは、数平均分子量(Mn)70000〜230000を有することが好ましく、75000〜230000を有することがさらに好ましく、78000〜120000を有することが最も好ましい。
【0024】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のようなプロトン性触媒が用い
られる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。
【0025】
工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースを、アセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸など)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。この方法において、綿花リンターや木材パルプのようなセルロースは、酢酸のような有機酸で活性化処理した後、硫酸触媒の存在下で、上記のような有機酸成分の混合液を用いてエステル化する場合が多い。有機酸無水物成分は、一般にセルロース中に存在する水酸基の量に対して過剰量で使用する。このエステル化処理では、エステル化反応に加えてセルロース主鎖β1→4グリコシド結合)の加水分解反応(解重合反応)が進行する。主鎖の加水分解反応が進むとセルロースエステルの重合度が低下し、製造するセルロースエステルフイルムの物性が低下する。そのため、反応温度のような反応条件は、得られるセルロースエステルの重合度や分子量を考慮して決定することが好ましい。
【0026】
重合度の高い(分子量の大きい)セルロースエステルを得るためには、エステル化反応工程における最高温度を50℃以下に調節することが重要である。最高温度は、好ましくは35〜50℃、さらに好ましくは37〜47℃に調節する。反応温度が35℃以上であれば、エステル化反応が円滑に進行するので好ましい。反応温度が50℃以下であれば、セルロースエステルの重合度が低下するなどの問題が生じないので好ましい。
【0027】
エステル化反応の後、温度上昇を抑制しながら反応を停止すると、さらに重合度の低下を抑制でき、高い重合度のセルロースエステルを合成できる。すなわち、反応終了後に反応停止剤(例えば、水、酢酸など)を添加すると、エステル化反応に関与しなかった過剰の酸無水物は、加水分解して対応する有機酸を副成する。この加水分解反応は激しい発熱を伴い、反応装置内の温度が上昇する。反応停止剤の添加速度が大きすぎると、反応装置の冷却能力を超えて急激に発熱するして、セルロース主鎖の加水分解反応が著しく進行し、得られるセルロースエステルの重合度が低下することがある。また、エステル化の反応中に触媒の一部はセルロースと結合しており、その大部分は反応停止剤の添加中にセルロースから解離する。しかし、反応停止剤の添加速度が大きすぎると、触媒が解離するために充分な反応時間がなく、触媒の一部がセルロースに結合した状態で残ることがある。強酸の触媒が一部結合しているセルロースエステルは安定性が非常に悪く、製品の乾燥時の熱などで容易に分解して重合度が低下する原因となる。これらの理由により、エステル化反応の後、好ましくは4分以上、さらに好ましくは4〜30分の時間をかけて反応停止剤を添加して、反応を停止することが望ましい。なお、反応停止剤の添加時間が30分以下であれば、工業的な生産性が低下するなどの問題は生じない。
【0028】
反応停止剤としては、一般に酸無水物を分解する水やアルコールが用いられている。ただし、本発明では、各種有機溶媒への溶解性が低いトリエステルを析出させないために、水と有機酸との混合物が、反応停止剤として好ましく用いられる。以上のような条件でエステル化反応を実施すると、重量平均重合度が500以上である高分子量セルロースエステルを容易に合成することができる。
【0029】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。ここで『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
【0030】
[レターデーション上昇剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、レターデーション上昇剤を含有することが好ましい。
本発明で用いられるレターデーション上昇剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が特に好ましい。以下にこれらの化合物に関して詳細に説明する。
一般式(1):
【0031】
【化1】

【0032】
一般式(1)中、R11〜R17、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基は後述の置換基Tが適用できる。
【0033】
18は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
【0034】
11〜R15のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。R11、R13又はR15のうちの1つが電子供与性基であることが好ましくり、R13が電子供与性基であることがより好ましい。
【0035】
電子供与性基とは、Hammetのσp値が0以下のものを指し、“Chem.Rev.”,91巻,p.165(1991年).記載のHammetのσp値が0以下のものが好ましく適用でき、より好ましくは−0.85〜0のものが用いられる。このような電子供与性基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アルコキシ基であり、より好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)である。
【0036】
11として好ましくは、水素原子又は電子供与性基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、最も好ましくはメトキシ基である。
【0037】
12として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基である。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
【0038】
13として好ましくは、水素原子又は電子供与性基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。最も好ましくはn−プロポキシ基、エトキシ基、メトキシ基である
【0039】
14として好ましくは、水素原子又は電子供与性基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、特に好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
【0040】
15として好ましい基は、R12で挙げた基と同じである。
16、R17、R19及びR20として好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子である。
【0041】
18として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基であり、より好ましくは、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基であり、更に好ましくは、炭素数2〜7のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7のアシルアミノ基、シアノ基であり、特に好ましくは、フェニルエチニル基、フェニル基、p−シアノフェニル基、p−メトキシフェニル基、ベンゾイルアミノ基、n−プロポキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、シアノ基である。
【0042】
一般式(1)のうち、下記一般式(1−1)で表される化合物がより好ましい。
一般式(1−1):
【0043】
【化2】

【0044】
一般式(1−1)中、R11、R12、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ一般式(1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0045】
一般式(1−1)中、R111はアルキル基を表し、直鎖でも分岐があってもよく、また更に置換基を有してもよい。好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基など)を表す。
【0046】
一般式(1)のうち、下記一般式(1−2)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(1−2):
【0047】
【化3】

【0048】
一般式(1−2)中、R11、R12、R14、R15、R16、R17、R19及びR20は一般式(1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。またR111は、一般式(1−1)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0049】
一般式(1−2)中、R112は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、カルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0050】
11、R12、R14、R15がすべて水素原子の場合には、R112として好ましくは、アルキル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくは、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)であり、特に好ましくは、メトキシ基、メトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基である。
【0051】
11、R12、R14、R15のうち少なくとも1つが置換基の場合には、R112として好ましくは、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基であり、更に好ましくは、炭素数2〜7のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7のアシルアミノ基、シアノ基であり、特に好ましくは、フェニルエチニル基、フェニル基、p−シアノフェニル基、p−メトキシフェニル基、ベンゾイルアミノ基、n−プロポキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、シアノ基である。
【0052】
一般式(1)のうち、下記一般式(1−3)で表される化合物がよりさらに好ましい。一般式(1−3):
【0053】
【化4】

【0054】
一般式(1−3)中、R11、R12、R14、R15、R111及びR112は、一般式(1−2)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0055】
一般式(1)で表される化合物の中で特に好ましいものは、下記一般式(1−4)で表される化合物である。
一般式(1−4):
【0056】
【化5】

【0057】
一般式(1−4)中、R12、R14及びR15は、一般式(1−3)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。より好ましくは、R12、R14及びR15のうち、いずれか1つは−OR113で表される基であり、好ましくはR14、R15が−OR113で表される基であり、より好ましくはR14が−OR113で表される基である。R121、R122はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表す。R123は、炭素数2〜7のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7のアシルアミノ基、又はシアノ基を表す。R113は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0058】
121は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基である。R122は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
123は、好ましくは、フェニルエチニル基、フェニル基、p−シアノフェニル基、p−メトキシフェニル基、ベンゾイルアミノ基、n−プロポキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、シアノ基である。
【0059】
以下に前述の置換基Tについて説明する。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭
素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例
えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には、例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル等)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリル等)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0060】
また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0061】
以下に一般式(1)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物は、置換安息香酸とフェノール誘導体の一般的なエステル反応によって合成でき、エステル結合形成反応であればどのような反応を用いてもよい。例えば、置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノールと縮合する方法、縮合剤又は触媒を用いて置換安息香酸とフェノール誘導体を脱水縮合する方法などがあげられる。
製造プロセス等を考慮すると、置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノールと縮合する方法が好ましい。
【0069】
反応溶媒として炭化水素系溶媒(好ましくはトルエン、キシレン等)、エーテル系溶媒(好ましくはジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。これらの溶媒は、単独でも数種を混合して用いてもよく、反応溶媒として好ましくはトルエン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドである。
【0070】
反応温度としては、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜100℃、更に好ましくは0〜90℃であり、特に好ましくは20℃〜90℃である。
【0071】
本反応には塩基を用いないのが好ましく、塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミン等)である。
【0072】
本発明のセルロースアシレートフィルムには、レターデーション上昇剤として、下記一般式(2)で表される化合物もまた好ましく用いることができる。
一般式(2):Ar21−L21−X21−L22−Ar22
式中、Ar21、Ar22はアリール基又は芳香族ヘテロ環を表す。L21、L22は、−C(
=O)O−、−C(=O)NR02−を表す(R02は水素原子又はアルキル基を表す)。X21は下記一般式(2a)又は一般式(2b)を表す。
【0073】
一般式(2a):
【0074】
【化12】

【0075】
一般式(2a)中、R21a、R22a、R23a、R24a、R25a、R26a、R27a及びR28aは水素原子又は置換基を表す。
【0076】
一般式(2b):
【0077】
【化13】

【0078】
一般式(2b)中、R21b、R22b、R23b、R24b、R25b、R26b、R27b及びR28bは、水素原子又は置換基を表す。
【0079】
上記一般式(2)中、Ar21、Ar22は、上記のとおりアリール基又は芳香族ヘテロ環を表し、好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。
【0080】
一般式(2)中、Ar21、Ar22で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
またAr21、Ar22で表される芳香族ヘテロ環としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環であれば何でもよいが、好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも1つを含む5〜6員環の芳香族ヘテロ環である。また、可能な場合には更に置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
【0081】
上記Ar21、Ar22で表される芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールである。
【0082】
一般式(2)中、L21、L22は、上記のとおり−C(=O)O−又は−C(=O)NR02−を表し、どちらも同様に好ましい。R02は水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は、炭素数1〜6アルキル基であり、より好ましくは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0083】
上記一般式(2a)中、R21a、R22a、R23a、R24a、R25a、R26a、R27a及びR28aは、上記のとおり、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の
置換基Tが適用できる。R21a、R22a、R23a、R24a、R25a、R26a、R27a及びR28aとして、好ましくは、水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
【0084】
上記一般式(2b)中、R21b、R22b、R23b、R24b、R25b、R26b、R27b及びR28bは、上記のとおり、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。R21b、R22b、R23b、R24b、R25b、R26b、R27b及びR28bとして、好ましくは、水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
【0085】
一般式(2)の化合物のうち、好ましくは一般式(2−2)で表される化合物である。
一般式(2−1):
【0086】
【化14】

【0087】
式中、R211、R212、R213、R214、R215、R216、R217、R218、R219及びR220は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。L21、L22及びX21は、前記一般式(2)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0088】
211、R216は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、更に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0089】
212、R217は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
【0090】
213、R218は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。最も好ましくはn−プロポキシ基、エトキシ基、メトキシ基である。
【0091】
214、R219は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、特に好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
【0092】
215、R220は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4より好ましくはメチル基である。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
【0093】
一般式(2)の化合物のうち、より好ましくは一般式(2−2)で表される化合物である。
一般式(2−2):
【0094】
【化15】

【0095】
式中、R211、R212、R214、R215、R216、R217、R218、R219、R220、L21、L22及びX21は、上記一般式(2−1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0096】
一般式(2−2)中、R221は、炭素数1〜12のアルキル基を表し、アルキル基は直鎖でも分岐があってもよく、また更に置換基を有してもよいが、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜8アルキル基、更に好ましくは炭素数1〜6アルキル基、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる)を表す。
【0097】
一般式(2)の化合物のうち、更に好ましくは一般式(2−3)で表される化合物である。
一般式(2−3):
【0098】
【化16】

【0099】
式中、R212、R214、R215、R216、R217、R218、R219、R220、R221、L21、L22及びX21は、上記一般式(2−2)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0100】
222は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、更に好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0101】
一般式(2)の化合物のうち、特に好ましくは一般式(2−4)で表される化合物である。
一般式(2−4):
【0102】
【化17】

【0103】
式中、R212、R215、R216、R217、R218、R219、R220、R221、R222、L21、L22及びX21は、上記一般式(2−3)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0104】
223は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3の
アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0105】
以下に、一般式(2)で表される化合物に関して、具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0106】
【化18】

【0107】
【化19】

【0108】
【化20】

【0109】
【化21】

【0110】
前記一般式(1)〜(1−4)で表される化合物は、置換安息香酸とフェノール、又はアニリン誘導体の一般的なエステル化反応、アミド化反応によって合成でき、エステル結合形成反応であればどのような反応を用いてもよい。例えば、置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール、又はアニリン誘導体と縮合する方法、縮合剤又は触媒を用いて置換安息香酸とフェノール、又はアニリン誘導体を脱水縮合する方法などがあげられる。
製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール、又はアニリン誘導体と縮合する方法が好ましい。
【0111】
反応溶媒としては、炭化水素系溶媒(好ましくは、トルエン、キシレン等)、エーテル系溶媒(好ましくは、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。これらの溶媒は、単独でも数種を混合して用いてもよく、反応溶媒として好ましくはトルエン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドである。
【0112】
反応温度としては、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜100℃、更に好ましくは0〜90℃であり、特に好ましくは20℃〜90℃である。
【0113】
本反応には塩基を用いない方が好ましいが、塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミン等)である。
【0114】
また、一般式(3)、(3−1)及び(3−2)で表される化合物も、本発明におけるレターデーション上昇剤として好ましく用いることができる。
一般式(3):
【0115】
【化22】

【0116】
一般式(3−1)
【0117】
【化23】

【0118】
一般式(3)中、R31、R32及びR33は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族環又は複素環を表すが、それらはそれぞれ異なる芳香族環又は複素環であってもよく、またR31とR33とが同一で、オルト位、メタ位及び/又はパラ位に置換基を有する芳香族
環又は複素環を表し、R32が置換基を有する芳香族環又は複素環を表してもよい。但し、R31及びR33がオルト位、メタ位及び/又はパラ位に置換基を有する芳香族環を表し、R32が置換基を有する芳香族環を表すときには、R31及びR33とR32とが同一となることはない。
【0119】
なお「異なる芳香族環又は複素環」とは、置換基を含めて芳香族環及び複素環が同一でないことを意味する。例えば同一の芳香族環又は複素環であっても、置換基が異なる場合、また置換基が同一であっても置換位置が異なる場合は、「異なる芳香族環又は複素環」に含まれる。さらに「同一でない」とは、置換基を含めて同一でないことを意味し、例えば同一の芳香族環であっても置換基が異なる場合、さらに置換基が同一であっても置換位置が異なる場合は、「同一でない」場合に含まれる。
【0120】
31は単結合又は−NR33−を表し、X32は単結合又は−NR34−を表し、X33は単結合又は−NR35−を表す。R33、R34及びR35は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。
【0121】
更に詳しく説明すると、R31〜R33がそれぞれ表す芳香族環は、フェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R31及びR33が表す芳香族環は、少なくともオルト位、メタ位及び/又はパラ位に置換基を有していることが好ましく、またそれ以外の位置にも置換基を有していてもよい。R32が表す芳香族環は、いずれかの置換位置に少なくとも1つの置換基を有することが好ましい。該置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。
【0122】
31〜R33がそれぞれ表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジル又は4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
【0123】
31、X32及びX33がそれぞれ単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
【0124】
【化24】

【0125】
一般式(3)において、前記のとおり、X31は単結合又は−NR33−を表し、X32は単結合又は−NR34−を表し、X33は単結合又は−NR35−を表す。R33、R34及びR35は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、ア
リール基又は複素環基を表す。R33、R34及びR35がそれぞれ表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基を表すのがより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)及びアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)が含まれる。
【0126】
33、R34及びR35がそれぞれ表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
【0127】
33、R34及びR35がそれぞれ表す芳香族環基及び複素環基は、R31及びR32がそれぞれ表す芳香族環及び複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基及び複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR31及びR32の芳香族環及び複素環の置換基と同様である。
【0128】
次に前記一般式(3−1)の化合物について詳しく説明する。
一般式(3−1)中、R312はオルト位及び/又はメタ位に置換基を有する芳香族環又は複素環を表す。R312が表す芳香族環及び複素環については、前記一般式(3)中のR31及びR32がそれぞれ表す芳香族環及び複素環と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、置換基についても、R31及びR32がそれぞれ表す芳香族環及び複素環有する置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R312が表す芳香族環は、オルト位及び/又はメタ位に少なくとも置換基を有し、他の位置にも置換基を有していてもよい。
【0129】
311は単結合又は−NR313−を表し、X312は単結合又は−NR314−を表し、X313は単結合又は−NR315−を表す。R313、R314及びR315は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。R313、R314及びR315がそれぞれ表す置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基については、前記一般式(3)中のR33、R34及びR35がそれぞれ表す各基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0130】
以下に本発明で好ましくに用いられるレターデーション上昇剤として、前記一般式(3)及び(3−1)で表される化合物である1,3,5−トリアジン環を有する化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0131】
【化25】

【0132】
【化26】

【0133】
【化27】

【0134】
【化28】

【0135】
【化29】

【0136】
【化30】

【0137】
【化31】

【0138】
【化32】

【0139】
【化33】

【0140】
本発明で用いられるレターデーション上昇剤の分子量は、200以上1,000以下であることが好ましく、300以上850以下が好ましい。この範囲であれば、溶媒への溶解性と製膜時の保留性を両立することができる。
レターデーション上昇剤の沸点は、260℃以上であることが好ましい。沸点は、市販の測定装置、例えば“TG/DTA100”{セイコー電子工業(株)製}を用いて測定できる。
【0141】
本発明におけるレターデーション上昇剤は、単独又は2種類以上混合して用いることができる。レターデーション上昇剤の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して、2〜30質量部が好ましく、3〜25質量部がさらに好ましい。この範囲で前記化合物を用いることにより、ブリードアウトを生じることなくレターデーションを上昇させることができる。
【0142】
本発明におけるレターデーション上昇剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランの有機溶媒に溶解してから、セルロースアシレート溶液(ドープ)に添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0143】
〔セルロースアシレートフィルムの製造〕
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法では、セルロースアシレート、及び有機溶媒を含むドープ液を、バンド又はドラム上に流延後、剥離されたセルロースアシレートフィルムを搬送する工程(1)、幅手の端部把持する工程(2)、幅手方向に引き延ばす工程(3)を有するセルロースアシレートフィルムの製造において、残留溶媒含量が1質量%以上100質量%以下で、残留溶媒のI/O比が0.65以上6以下のセルロースアシレートフィルムを、下記数式(5)の条件で延伸することを特徴とする。
数式(5):1%/分≦延伸速度≦50%/分
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
【0144】
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
【0145】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメ
タン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
【0146】
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
【0147】
本発明において有機溶媒はメチレンクロリドとアルコールを混合して用いることが好ましく、メチレンクロリドに対するアルコールの比率は1質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下が好ましく、12質量%以上30質量%以下が最も好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−ブタノールが好ましく、2種類以上のアルコールを混合して使用してもよい。
【0148】
0℃以上の温度(常温又は高温)で処理することからなる一般的な方法で、セルロースアシレート溶液を調製することができる。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
【0149】
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0150】
セルロースアシレート溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
【0151】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
【0152】
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
【0153】
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
【0154】
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、又は取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0155】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にも、セルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
【0156】
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0157】
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。冷却によりセルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
【0158】
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0159】
さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。
【0160】
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
【0161】
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0162】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、
溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
【0163】
なお、例えばセルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量計(DSC)での測定によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0164】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。ドープにはレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。
【0165】
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
【0166】
ソルベントキャスト法における乾燥方法については、米国特許第2336310号、同第2367603号、同第2492078号、同第2492977号、同第2492978号、同第2607704号、同第2739069号及び同第2739070号の各明細書、英国特許第640731号及び同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号の各公報に記載がある。バンド又はドラム上での乾燥は空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行うことができる。
【0167】
得られたセルロースアシレートフィルムはドラム又はバンドから剥ぎ取り、テンターに搬送後、幅方向の端部を把持して延伸することが好ましい。剥ぎ取り時の残留溶媒含量は20%以上150%以下が好ましく、30%以上100%以下がさらに好ましい。剥ぎ取り後、テンター工程までの間に、高温風等によりさらに乾燥させることもできる。
また、100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して、残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0168】
調整したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0169】
二層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つ
の流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することもできる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。さらに特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高・低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
【0170】
また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取った後、そのフィルムの支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0171】
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明に用いられるセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
【0172】
従来の単層液では、必要なフィルムの厚さにするためには、高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
【0173】
[延伸処理]
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法において、セルロースアシレートフィルムは延伸処理される。延伸処理によりセルロースアシレートフィルムに所望のレターデーションを付与することが可能であり、かつバンド上での乾燥時に発生した厚みムラを解消することができる。本発明の製造方法において、セルロースアシレートフィルムの延伸方向は幅方向である。
【0174】
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度±30℃の範囲であることが好ましい。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0175】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、一定の残留溶媒を含んだ状態で一定の延伸速度で延伸することが好ましい。延伸開始時の残留溶媒含量は1質量%以上100質量%以下であり、5質量%以上100質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。延伸終了時の残留溶媒含量は0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲で延伸を開始することにより、延伸時の残留溶剤量がフィルム表面>フィルム
内部となり、さらにはフィルム表面のTg>フィルム内部のTgとなり、フィルム表面の方がフィルム内部よりも、セルロース分子鎖が配向しやすくすることが可能となる。
【0176】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムの延伸時の残留溶媒は、一定のI/O比の範囲であることが好ましい。残留溶媒のI/O比は0.65以上6以下であることが好ましく、0.75以上5以下であることがさらに好ましい。I/O比は、三共出版刊、甲田善男、有機概念図に記載された計算方法により計算することができる。
上記範囲で延伸を行うことにより、前記フィルム表面と内部のTg差をさらに増幅することができる。
【0177】
本発明においては、溶媒AをM質量%と溶媒Bを(100−M)質量%含有する混合溶媒のI/O比は、溶媒AのI/O比をRa、溶媒BのI/O比をRbとした場合、下記数式(9)により算出するものとする。
数式(9):Ra×M/100+Rb×(100−M)/100
【0178】
また本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法においては、下記数式(5)の条件で延伸することが好ましく、下記数式(5−1)の条件で延伸することがさらに好ましい。
数式(5):1%/分≦延伸速度≦50%/分
数式(5−1):5%/分≦延伸速度≦40%/分
延伸速度を上記範囲に設定することにより、フィルム内部/表面の弾性率差を効果的に利用でき、延伸によるフィルム厚みの均一化効果を最大にすることが可能となる。
延伸速度、残留溶媒含量、及び残留溶媒のI/O比を上記範囲に設定することにより、フィルムの表面にフィルム内部よりもセルロースアシレートの主鎖の配向度の高い領域を形成せしめることが可能となる。
【0179】
さらに、延伸速度とフィルムの搬送速度は、下記数式(6)の関係を満たすことが好ましく、さらに好ましくは下記数式(6−1)の関係を満たすことである。
数式(6):5≦搬送速度/延伸速度≦300
数式(6−1):10≦搬送速度/延伸速度≦200
フィルムの延伸速度と搬送速度が上記範囲を満たすことにより、バンド上で発生した厚みムラの延伸工程における解消効果を大きくすることが可能である。これにより、フィルムの表面と内部の配向度差を十分に生成させることができ、厚みムラ解消効果を十分に発揮させることができる。
【0180】
また延伸時の雰囲気温度は、100℃以上160℃以下が好ましく、120℃以上150℃以下がさらに好ましい。
【0181】
フィルムの延伸倍率は、1%〜100%が好ましく、5%〜90%がさらに好ましい。なお本発明においてフィルムの延伸倍率とは、下記数式(10)で求められる数値を指すものとする。
数式(10):{(延伸後の寸法/延伸前の寸法)−1}×100(%)
【0182】
[添加剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、レターデーション上昇剤の他に、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を含有することが好ましい。
【0183】
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール
系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムを、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0184】
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0185】
また、市販品として、「チヌビン(TINUVIN)109」、「チヌビン(TINUVIN)171」、「チヌビン(TINUVIN)326」、「チヌビン(TINUVIN)328」{何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}を好ましく使用できる。
【0186】
(可塑剤)
セルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するために、以下の可塑剤を用いることができる。
可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。
【0187】
可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好
ましい。
【0188】
(劣化防止剤)
また、セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%以上であれば、劣化防止剤の効果が発現するので好ましい。添加量が1質量%以下であれば、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が生じないので好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0189】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0190】
[セルロースアシレートフィルムの諸特性]
(セルロースアシレートフィルムの厚み)
本発明のセルロースアシレートフィルムの厚みは10μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上150μm以下がさらに好ましく、30μm以上100μm以下が最も好ましい。
【0191】
(カール)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、湿度によるカール変化が小さいことが好ましい。カール度の測定は、該フィルムを幅手方向50mm、長手方向2mmに切断し、所定の湿度で24時間調湿し、曲率スケールを用いて該フィルムのカール値を測定することにより求めることができる。カール値は1/Rで表され、Rは曲率半径で単位はmを用いる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの湿度1%RH当たりのカール値変化は0.02以下が好ましく、0.015以下がさらに好ましい。湿度1%RH当たりのカール値変化を該範囲にすることにより、偏光板加工後に使用環境湿度変化による変形が小さくなり、液晶表示装置の使用環境の変化に伴う光漏れが防止することができる。
【0192】
(高温高湿下での寸度変化)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、高温恒湿下での寸度変化が小さいことが好ましい。40℃、95%RHで24時間処理前後での寸度変化率は、0.20%以下が好ましく、0.15%以下がさらに好ましい。高温恒湿下での寸度変化を該範囲にすることにより、偏光板加工後に使用環境湿度変化による変形が小さくなり、液晶表示装置の使用環境の変化に伴う光漏れが防止することができる。
【0193】
(透湿度)
透湿度は、JIS Z−0208に記載の方法に則り、各試料の透湿度を測定し、面積1m2当たり24時間で蒸発する水分量(g)として算出する。透湿度は偏光板の耐久性と密接に関係したフィルム物性であり、透湿度を下げることにより偏光板耐久性を向上させることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24時間における透湿度が200g/m2以上1700g/m2以下であることが好ましい。
より好ましくは500g/m2以上1400g/m2以下である。
【0194】
(含水率)
セルロースアシレートフィルムの含水率は、一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は、上記温湿度に24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃、80%RHにおける含水率は4.5質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましく、3.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0195】
(フィルムのレターデーション)
本明細書において、Reλ、Rthλはそれぞれ、波長λにおける正面レターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Reλは“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}を用いて、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。RthλはこのReλ、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、“KOBRA 21ADH”が算出する。
【0196】
ここで平均屈折率の仮定値は、「ポリマーハンドブック」(JOHN WILEY &
SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、“KOBRA 21ADH”はnx、ny、nzを算出する。
【0197】
本発明のセルロースアシレートフィルムのRe590は20〜200nmが好ましく、30〜150nmがさらに好ましく、60〜120nmが最も好ましい。Rth590は70〜400nmが好ましく、50〜400nmがより好ましく、100〜300nmがさらに好ましく、150〜250nmが最も好ましい。
また、Rth590/Re590比は1以上10以下が好ましく、2以上8以下がさらに好ましい。
【0198】
OCB用モード及びTN用モードでは前記レターデーション値を有するセルロースアシレートフィルム上に光学異方性層を塗布して光学補償フィルムとして使用できる。
【0199】
(光弾性)
本発明のセルロースアシレートの光弾性係数は60×10-8cm2/N以下が好ましく、20×10-8cm2がさらに好ましい。光弾性係数はエリプソメーターにより求めることができる。
【0200】
(ガラス転移温度)
本発明のセルロースアシレートのガラス転移温度は120℃以上が好ましく、更に140℃以上が好ましい。ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度
10℃/分で測定したときにフィルムのガラス転移に由来するベースラインが変化しはじめる温度と再びベースラインに戻る温度との平均値として求めたものである。
【0201】
[鹸化処理]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、アルカリ鹸化処理することによりポリビニルアルコールとの密着性を付与し、偏光板保護フィルムとして用いることができる。
【0202】
セルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1〜5.0mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜4.0mol/Lの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0203】
<偏光板>
次に本発明の偏光板について詳しく説明する。
【0204】
〔偏光板の構成〕
本発明の偏光板は、偏光子や保護フィルム以外にも、粘着剤層、セパレートフィルム、保護フィルムを構成要素として有していても構わない。
【0205】
(1)保護フィルム
本発明の偏光板は偏光子の両側に1ずつ合計2枚の保護フィルムを有し、少なくとも1枚は本発明のセルロースアシレートフィルムである。また、2枚の保護フィルムのうち、少なくとも一枚は位相差フィルムとしての機能を合わせてもつことが好ましい。液晶表示装置に本発明の偏光板を用いる場合、液晶セルの両側に配置される二枚の偏光板の少なくとも一方が、本発明の偏光板であることが好ましい。
【0206】
本発明において用いられる保護フィルムは、ノルボルネン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリスルフォン、セルロースアシレートなどから製造されたポリマーフィルムであることが好ましく、セルロースアシレートフィルムであることが最も好ましい。
【0207】
(2)偏光子
本発明に用いられる偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)と二色性分子から構成することが好ましいが、特開平11−248937号公報に記載されているように、PVAやポリ塩化ビニルを脱水又は脱塩素することによりポリエン構造を生成させ、これを配向させたポリビニレン系偏光子も使用することができる。
【0208】
PVAは、ポリ酢酸ビニルをケン化したポリマー素材であるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のような酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性PVAも用いることができる。
【0209】
PVAのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80〜100mol%が好ましく、90〜100mol%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが、1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。
【0210】
PVAのシンジオタクティシティーは、特許2978219号公報に記載されているように、耐久性を改良するため55%以上であることが好ましいが、特許第3317494
号公報に記載されている45〜52.5%のものも好ましく用いることができる。
【0211】
PVAはフィルム化した後、二色性分子を導入して偏光子を構成することが好ましい。PVAフィルムの製造方法は、PVA系樹脂を、水又は有機溶媒に溶解した原液を流延して成膜する方法が、一般に好ましく用いられる。原液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、通常5〜20質量%であり、この原液を流延法により製膜することによって、膜厚10〜200μmのPVAフィルムを製造できる。PVAフィルムの製造は、特許第3342516号公報、特開平09−328593号公報、特開2001−302817号公報、特開2002−144401号公報を参考にして行うことができる。
【0212】
PVAフィルムの結晶化度は、特に限定されないが、特許第3251073号公報に記載されている平均結晶化度(Xc)50〜75質量%や、面内の色相バラツキを低減させるため、特開2002−236214号公報に記載されている結晶化度38%以下のPVAフィルムを用いることができる。
【0213】
PVAフィルムの複屈折(△n)は、小さいことが好ましく、特許第3342516号公報に記載されている、複屈折が1.0×10-3以下のPVAフィルムを好ましく用いることができる。但し、特開2002−228835号公報に記載されているように、PVAフィルムの延伸時の切断を回避しながら高偏光度を得るため、PVAフィルムの複屈折を0.02以上0.01以下としてもよいし、特開2002−060505号公報に記載されているように(nx+ny)/2−nzの値を0.0003以上0.01以下としてもよい。
【0214】
PVAフィルムのレターデーションRe(正面)は、0nm以上100nm以下が好ましく、0nm以上50nm以下がさらに好ましい。また、PVAフィルムのレターデーションRth(膜厚方向)は、0nm以上500nm以下が好ましく、0nm以上300nm以下がさらに好ましい。
【0215】
この他、本発明の偏光板には、特許3021494号公報に記載されている1、2−グリコール結合量が1.5モル%以下のPVAフィルム、特開2001−316492号公報に記載されている5μm以上の光学的異物が100cm2当たり500個以下であるPVAフィルム、特開2002−030163号公報に記載されているフィルムのTD方向の熱水切断温度斑が1.5℃以下であるPVAフィルム、さらにグリセリンなどの3〜6価の多価アルコ−ルを1〜100質量部混合したり、特開平06−289225号公報に記載されている可塑剤を15質量%以上混合したりした溶液から製膜したPVAフィルムを好ましく用いることができる。
【0216】
PVAフィルムの延伸前のフィルム膜厚は特に限定されないが、フィルム保持の安定性、延伸の均質性の観点から、1μm〜1mmが好ましく、20〜200μmが特に好ましい。特開2002−236212号に記載されているように水中において4倍から6倍の延伸を行った時に発生する応力が10N以下となるような薄いPVAフィルムを使用してもよい。
【0217】
二色性分子は、I3-やI5-などの高次のヨウ素イオン又は二色性染料を好ましく使用することができる。本発明では高次のヨウ素イオンが特に好ましく使用される。高次のヨウ素イオンは、「偏光板の応用」永田良編、CMC出版や「工業材料」、第28巻、第7号、p.39〜p.45に記載されているように、ヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液及び/又はホウ酸水溶液にPVAを浸漬し、PVAに吸着・配向した状態で生成することができる。
【0218】
二色性分子として二色性染料を用いる場合は、アゾ系色素が好ましく、特にビスアゾ系とトリスアゾ系色素が好ましい。二色性染料は水溶性のものが好ましく、このため二色性分子にスルホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基が導入され、遊離酸として、又はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として好ましく用いられる。
【0219】
このような二色性染料の具体例としては、例えば、C.I.Direct Red 37、 Congo Red(C.I. Direct Red 28)、C.I.Direct Violet 12、 C.I.Direct Blue 90、 C.I.Direct Blue 22、 C.I.Direct Blue 1、 C.I.Direct Blue 151、 C.I.Direct Green 1等のベンジジン系;C.I.Direct Yellow 44、 C.I.Direct Red 23、 C.I.Direct Red 79等のジフェニル尿素系;C.I.Direct Yellow 12等のスチルベン系;C.I.Direct Red 31等のジナフチルアミン系;C.I.Direct Red 81、 C.I.Direct Violet 9、 C.I.Direct Blue 78等のJ酸系などを挙げることができる。
【0220】
これ以外にも、C.I.Direct Yellow 8、C.I.Direct Yellow 28、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct
Yellow 87、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Orange 106、C.I.Direct Orange 107、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Direct Red 240、C.I.Direct
Red 242、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Violet 51、C.I.Direct
Violet 98、C.I.Direct Blue 15、C.I.Direct
Blue 67、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 98、C.I.Direct Blue 168、C.I.Direct Blue 202、C.I.Direct Blue 236、C.I.Direct Blue 249、C.I.Direct Blue 270、C.I.Direct Green 59、C.I.Direct Green 85、C.I.Direct Brown 44、C.I.Direct Brown 106、C.I.Direct Brown 195、C.I.Direct Brown 210、C.I.Direct
Brown 223、C.I.Direct Brown 224、C.I.Direct Black 1、C.I.Direct Black 17、C.I.Direct Black 19、C.I.Direct Black 54等が、さらに特開昭62−70802号、特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開平1−248105号、特開平1−265205号、特開平7−261024号の各公報記載の二色性染料等も好ましく使用することができる。各種の色相を有する二色性分子を製造するため、これらの二色性染料は2種以上を配合してもかまわない。二色性染料を用いる場合、特開2002−082222号公報に記載されているように吸着厚みが4μm以上であってもよい。
【0221】
フィルムのマトリックスを構成するポリビニルアルコール系重合体に対する上記二色性分子の含有量は、一般に0.01質量%から5質量%の範囲に調整される。二色性分子の含有量が該下限値以上であれば、良好な偏光度が発現し、また該上限値以下であれば、単板透過率が低下するなどの問題が生じないので好ましい。
【0222】
偏光子の好ましい膜厚としては、5μm〜40μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜30μmである。偏光子の厚さと後述する保護フィルムの厚さの比を、特開2002−174727号公報に記載されている0.01≦DA(偏光子膜厚)/DB(保護フィルム膜厚)≦0.16の範囲とすることも好ましい。
【0223】
保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸の交差角は、任意の値でよいが、平行もしくは45±20゜の方位角であることが好ましい。
【0224】
〔偏光板の製造工程〕
次に、本発明の偏光板の製造工程について説明する。
本発明における偏光板の製造工程は、PVAフィルムの膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程、保護フィルムの貼り合わせ工程、貼り合わせ後乾燥工程から構成されることが好ましい。染色工程、硬膜工程、延伸工程の順序を任意に変えること、また、いくつかの工程を組み合わせて同時に行っても構わない。さらに特許第3331615号公報に記載されているように、硬膜工程の後に水洗することも好ましく行うことができる。
【0225】
本発明では、PVAフィルムの膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程、保護フィルム貼り合わせ工程、貼り合わせ後乾燥工程を記載の順序で遂次行うことが特に好ましい。また、上記工程中又は工程後にオンライン面状検査工程を設けても構わない。
【0226】
PVAフィルムの膨潤工程は、水のみで行うことが好ましいが、特開平10−153709号公報に記載されているように、光学性能の安定化及び、製造ラインでの偏光板基材のシワ発生回避のために、偏光板基材をホウ酸水溶液により膨潤させて、偏光板基材の膨潤度を管理することもできる。
また膨潤工程の温度、時間は、任意に定めることができるが、10℃以上60℃以下、5秒以上2000秒以下が好ましい。
【0227】
PVAフィルムの染色工程は、特開2002−86554号公報に記載の方法を用いることができる。また染色方法としては、浸漬だけでなく、ヨウ素又は染料溶液の塗布又は噴霧等、任意の手段が可能である。また、特開2002−290025号公報に記載されているように、ヨウ素の濃度、染色浴温度、浴中の延伸倍率、及び浴中の浴液を撹拌させながら染色させる方法を用いてもよい。
【0228】
二色性分子として高次のヨウ素イオンを用いる場合、高コントラストな偏光板を得るためには、染色工程はヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液を用いることが好ましい。この場合のヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液のヨウ素は、0.05〜20g/L、さらには0.5〜2g/L;ヨウ化カリウムは3〜200g/L、さらには30〜120g/L;ヨウ素:ヨウ化カリウムの質量比は1:1〜2000、さらには1:30〜120が好ましい範囲である。染色時間は10〜1200秒、さらには30〜600秒が好ましく、液温度は10〜60℃、さらには20〜50℃が好ましい。
【0229】
また、特許第3145747号公報に記載されているように、染色液にホウ酸、ホウ砂等のホウ素系化合物を添加してもよい。
【0230】
PVAフィルムの硬膜工程は、PVAフィルムを架橋剤溶液に浸漬、又は該フィルムに架橋剤溶液を塗布して架橋剤を含ませるのが好ましい。また、特開平11−52130号公報に記載されているように、硬膜工程を数回に分けて行うこともできる。
【0231】
架橋剤としては米国再発行特許第232897号明細書に記載のものが使用でき、特許
第3357109号公報に記載されているように、寸法安定性を向上させるため、架橋剤として多価アルデヒドを使用することもできるが、ホウ酸類が最も好ましく用いられる。硬膜工程に用いる架橋剤としてホウ酸を用いる場合には、ホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液に金属イオンを添加してもよい。金属イオンとしては塩化亜鉛が好ましいが、特開2000−35512号公報に記載されているように、塩化亜鉛の代わりに、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛塩を用いることもできる。
【0232】
本発明では、塩化亜鉛を添加したホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液を作製し、PVAフィルムを浸漬して硬膜を行うことが好ましく行われる。ホウ酸は1〜100g/L、さらには10〜80g/L;ヨウ化カリウムは1〜120g/L、さらには5〜100g/L;塩化亜鉛は0.01〜10g/L、さらには0.02〜8g/L;硬膜時間は10〜1200秒、さらには30〜600秒;液温度は10〜60℃、さらには20〜50℃が好ましい。
【0233】
PVAフィルムの延伸工程は、米国特許2454515号明細書などに記載されているような、縦一軸延伸方式、又は特開2002−86554号公報に記載されているようなテンター方式を好ましく用いることができる。好ましい延伸倍率は2倍以上12倍以下であり、さらに好ましくは3倍以上10倍以下である。また延伸倍率と原反厚さと偏光子厚さの関係は、特開2002−040256号公報に記載されている:
(保護フィルム貼合後の偏光子膜厚/原反膜厚)×(全延伸倍率)>0.17
としたり、最終浴を出た時の偏光子の幅と保護フィルム貼合時の偏光子幅の関係を特開2002−040247号公報に記載されている:
0.80≦(保護フィルム貼合時の偏光子幅/最終浴を出た時の偏光子の幅)≦0.95
としたりすることも好ましく行うことができる。
【0234】
PVAフィルムの乾燥工程は、特開2002−86554号公報で公知の方法を使用できるが、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。また、特許第3148513号公報に記載されているように、水中退色温度を50℃以上とするような熱処理を行ったり、特開平07−325215号公報や特開平07−325218号公報に記載されているように、温湿度管理した雰囲気でエージングしたりすることも好ましく採用することができる。
【0235】
保護フィルム貼り合わせ工程は、乾燥工程を出た前述の偏光子の両面を、2枚の保護フィルムで貼合する工程である。貼合直前に接着液を供給し、偏光子と保護フィルムを重ね合わせるように、一対のロールで貼り合わせる方法が好ましく使用される。また、特開2001−296426号公報及び特開2002−86554号公報に記載されているように、偏光子の延伸に起因するレコードの溝状の凹凸を抑制するため、貼り合わせ時の偏光子の水分率を調整することが好ましい。本発明では0.1〜30質量%の水分率が好ましく用いられる。
【0236】
偏光子と保護フィルムとの接着剤は、特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは、乾燥後に0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。
【0237】
また、偏光子と保護フィルムの接着力を向上させるために、保護フィルムを表面処理して、親水化してから接着することが好ましく行われる。表面処理の方法には、特に制限は無いが、アルカリ溶液を用いて鹸化する方法、コロナ処理法など公知の方法を用いることができる。さらに表面処理後にゼラチン下塗層等の易接着層を設けてもよい。特開200
2−267839号公報に記載されているように保護フィルム表面の水との接触角は50°以下が好ましい。
【0238】
貼り合わせ後乾燥条件は、特開2002−86554号公報に記載の方法に従うが、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。また、特開平07−325220号公報に記載されているように温湿度管理をした雰囲気でエージングすることも好ましい。
【0239】
偏光子中の元素含有量は、ヨウ素0.1〜3.0g/m2、ホウ素0.1〜5.0g/m2、カリウム0.1〜2.00g/m2、亜鉛0〜2.00g/m2であることが好ましい。また、カリウム含有量は特開2001−166143号公報に記載されているように0.2質量%以下であってもよいし、偏光子中の亜鉛含有量を特開2000−035512号公報に記載されている0.04〜0.5質量%としてもよい。
【0240】
特許第3323255号公報に記載されているように、偏光板の寸法安定性をあげるために、染色工程、延伸工程及び硬膜工程のいずれかの工程において、有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を添加使用し、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれた、少なくとも一種の化合物を含有することもできる。また、偏光板の色相を調整するために二色性染料を添加してもよい。
【0241】
〔偏光板の特性〕
(1)透過率及び偏光度
本発明の偏光板の、下記数式(10)で定義される好ましい単板透過率は、42.5%以上49.5%以下であるが、さらに好ましくは42.8%以上49.0%以下である。下記数式(11)で定義される偏光度の好ましい範囲は、99.900%以上99.999%以下であり、さらに好ましくは99.940%以上99.995%以下である。平行透過率の好ましい範囲は36%以上42%以下であり、直交透過率の好ましい範囲は、0.001%以上0.05%以下である。下記数式(12)で定義される二色性比の好ましい範囲は48以上、1215以下であるが、さらに好ましくは53以上525以下である。
【0242】
上記の透過率は、JIS Z−8701に基づいて、下記数式(10)により定義される。
数式(10):
【0243】
【数2】

【0244】
ここで、K、S(λ)、y(λ)、τ(λ)は以下の通りである。
【0245】
【数3】

【0246】
S(λ):色の表示に用いる標準光の分光分布
y(λ):XYZ表色系(CIE1931表色系)における等色関数
τ(λ):分光透過率
【0247】
数式(11):
【0248】
【数4】

【0249】
数式(12):
【0250】
【数5】

【0251】
ヨウ素濃度と単板透過率は、特開2002−258051号公報に記載されている範囲であってもよい。
【0252】
平行透過率は、特開2001−083328号公報や特開2002−022950号公報に記載されているように波長依存性が小さくてもよい。偏光板をクロスニコルに配置した場合の光学特性は、特開2001−091736号公報に記載されている範囲であってもよく、平行透過率と直交透過率の関係は、特開2002−174728号公報に記載されている範囲内であってもよい。
【0253】
特開2002−221618号公報に記載されているように、光の波長が420〜700nmの間での、10nm毎の平行透過率の標準偏差が3以下で、且つ、光の波長が420〜700nmの間での10nm毎の(平行透過率/直交透過率)の最小値が300以上であってもよい。
【0254】
偏光板の、波長440nmにおける平行透過率と直交透過率、平行透過率、波長550nmにおける平行透過率と直交透過率、波長610nmにおける平行透過率と直交透過率が、特開2002−258042号公報や特開2002−258043号公報に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
【0255】
(2)色相
本発明の偏光板の色相は、CIE均等知覚空間として推奨されているL***表色系において、明度指数L*及びクロマティクネス指数a*とb*を用いて好ましく評価される。
*、a*、b*は、前記表XYZ色系におけるX、Y、Zを用いて数式(13)で定義される。
数式(13):
【0256】
【数6】

【0257】
ここでX0、Y0、Z0は照明光源の三刺激値を表し、標準光Cの場合、X0=98.072、Y0=100、Z0=118.225であり、標準光D65の場合、X0=95.045、Y0=100、Z0=108.892である。
【0258】
偏光板単枚の好ましいa*の範囲は−2.5以上0.2以下であり、さらに好ましくは−2.0以上0以下である。偏光板単枚の好ましいb*の範囲は1.5以上5以下であり、さらに好ましくは2以上4.5以下である。2枚の偏光板の平行透過光のa*の好ましい範囲は−4.0以上0以下であり、さらに好ましくは−3.5以上−0.5以下である。2枚の偏光板の平行透過光のb*の好ましい範囲は2.0以上8以下であり、さらに好ましくは2.5以上7以下である。2枚の偏光板の直交透過光のa*の好ましい範囲は−0.5以上1.0以下であり、さらに好ましくは0以上2以下である。2枚の偏光板の直交透過光のb*の好ましい範囲は−2.0以上2以下であり、さらに好ましくは−1.5以上0.5以下である。
【0259】
色相は、前記X、Y、Zから算出される色度座標(x,y)で評価してもよく、例えば、2枚の偏光板の平行透過光の色度(xp、yp)と直交透過光の色度(xc、yc)は、特開2002−214436号公報、特開2001−166136号公報及び特開2002−169024号公報に記載されている範囲にしたり、色相と吸光度の関係を特開200
1−311827号公報に記載されている範囲内にしたりすることも好ましく行うことができる。
【0260】
(3)視野角特性
偏光板をクロスニコルに配置して波長550nmの光を入射させる時、垂直光を入射させた場合と、偏光軸に対して45゜の方位から法線に対し40゜の角度で入射させた場合の、透過率比やxy色度差を特開2001−166135号公報や特開2001−166137号公報に記載された範囲とすることも好ましい。また特開平10−068817号公報に記載されているように、クロスニコル配置した偏光板積層体の、垂直方向の光透過率(T0)と、積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)を10000以下としたり、特開2002−139625号公報に記載されているように、偏光板に法線から仰角80゜までの任意な角度で自然光を入射させた場合に、その透過スペクトルの520〜640nmの波長範囲について、波長域20nm以内における透過光の透過率差を6%以下としたり、特開平08−248201号公報に記載されている、フィルム上の任意の1cm離れた場所における透過光の輝度差が30%以内とすることも好ましい。
【0261】
(4)耐久性
(4−1)湿熱耐久性
60℃、90%RHの雰囲気に500時間放置した場合の、その前後における光透過率及び偏光度の変化率が、絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。また特開平07−077608号公報に記載されているように、80℃、90%RHで500時間放置後の偏光度が95%以上、単体透過率が38%以上であることも好ましい。
【0262】
(4−2)ドライ耐久性
80℃、ドライ雰囲気下に500時間放置した場合の、その前後における光透過率及び偏光度の変化率が、絶対値に基づいて3%以下であることもまた好ましい。特に光透過率の変化率は2%以下、また偏光度の変化率は、絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。
【0263】
(4−3)その他の耐久性
さらに、特開平06−167611号公報に記載されているように、80℃で2時間放置した後の収縮率が0.5%以下としたり、ガラス板の両面にクロスニコル配置した偏光板積層体を、69℃の雰囲気中で750時間放置した後のx値及びy値が、特開平10−068818号公報に記載されている範囲内としたり、80℃、90%RHの雰囲気中で200時間放置処理後の、ラマン分光法による105cm-1及び157cm-1のスペクトル強度比の変化を、特開平08−094834号公報や特開平09−197127号公報に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
【0264】
(5)配向度
PVAの配向度は高い程良好な偏光性能が得られるが、偏光ラマン散乱や偏光FT−IR等の手段によって算出されるオーダーパラメーター値として0.2〜1.0が好ましい範囲である。また、特開昭59−133509号公報に記載されているように、偏光子の全非晶領域の高分子セグメントの配向係数と占領分子の配向係数(0.75以上)との差を少なくとも0.15としたり、特開平04−204907号公報に記載されているように、偏光子の非晶領域の配向係数が0.65〜0.85としたり、I3-やI5-の高次ヨウ素イオンの配向度を、オーダーパラメーター値として0.8〜1.0とすることも好ましく行うことができる。
【0265】
(6)その他の特性
特開2002−006133号公報に記載されているように、80℃、30分加熱したときの、単位幅当たりの吸収軸方向の収縮力が4.0N/cm以下としたり、特開2002−236213号公報に記載されているように、偏光板を70℃の加熱条件下に120時間置いた場合に、偏光板の吸収軸方向の寸法変化率及び偏光軸方向の寸法変化率を、共に±0.6%以内としたり、特開2002−090546号公報に記載されているように偏光板の水分率を3質量%以下とすることも好ましく行うことができる。さらに、特開2000−249832号公報に記載されているように、延伸軸に垂直な方向の表面粗さが中心線平均粗さに基づいて0.04μm以下としたり、特開平10−268294号公報に記載されているように、透過軸方向の屈折率n0を1.6より大きくしたり、偏光板の厚みと保護フィルムの厚みの関係を特開平10−111411号公報に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
【0266】
〔偏光板の機能化〕
本発明の偏光板は、LCDの視野角拡大フィルム、反射型LCDに適用するためのλ/4板等の位相差フィルム、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルムや、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板として好ましく使用される。
【0267】
本発明の偏光板と、上記の機能性光学フィルムを複合した構成例を図1に示した。
偏光板5の片側の保護フィルムとして、機能性光学フィルム3を偏光子2に粘着層を介して接着してもよいし{図1(A)}、偏光子2の両面に保護フィルム1a、1bを設けた偏光板5に、粘着層4を介して機能性光学フィルム3を接着してもよい{図1(B)}。前者の場合、もう一方の保護フィルム1には任意の透明保護フィルムを使用してもよい。また本発明の偏光板においては、保護フィルムに光学機能層を、粘着層を介して貼り合わせ、機能性光学フィルム3として、図1(A)の構成とすることも好ましい。機能層や保護フィルム等の各層間の剥離強度は、特開2002−311238号公報に記載されている4.0N/25mm以上とすることも好ましい。機能性光学フィルムは、目的とする機能に応じて、液晶モジュール側に配置したり、液晶モジュールとは反対側、すなわち表示側又はバックライト側に配置したりすることが好ましく実施できる。
【0268】
以下に本発明の偏光板と複合して使用される機能性光学フィルムについて説明する。
【0269】
(1)視野角拡大フィルム
本発明の偏光板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory
Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードに提案されている視野角拡大フィルムと組み合わせて使用することができる。
【0270】
TNモード用の視野角拡大フィルムとしては、「日本印刷学会誌」第36巻第3号(1999年)p.40〜44、「月刊ディスプレイ」8月号(2002年)p.20〜24、特開平4−229828号公報、特開平6−75115号公報、特開平6−214116号公報、特開平8−50206号公報等に記載された「WVフィルム」{富士写真フイルム(株)製}を好ましく組み合わせて使用される。
【0271】
TNモード用の視野角拡大フィルムの好ましい構成は、本発明のセルロースアシレートフィルム上に、配向層と光学異方性層をこの順に有したものである。視野角拡大フィルムは、粘着剤を介して偏光板と貼合されて用いられてもよいが、“SID’00 Dig.
”,p.551(2000年)に記載されているように、前記偏光子の保護フィルムの一方をも兼ねて使用されることが薄手化の観点から特に好ましい。
【0272】
配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログループを有する層の形成のような手段で設けることができる。さらに電場の付与、磁場の付与又は光照射により配向機能が生じる配向層も知られているが、ポリマーのラビング処理により形成する配向層が特に好ましい。ラビング処理はポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることにより好ましく実施される。偏光子の吸収軸方向とラビング方向は実質的に平行であることが好ましい。配向層に使用するポリマーの種類は、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9−152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー等を好ましく使用することができる。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
【0273】
光学異方性層は液晶性化合物を含有していることが好ましい。本発明に使用される液晶性化合物は、ディスコティック化合物(ディスコティック液晶)を有していることが特に好ましい。ディスコティック液晶分子は、トリフェニレン誘導体のように円盤状のコア部を有し、そこから放射状に側鎖が伸びた構造を有している。また、経時安定性を付与するため、熱、光等で反応する基をさらに導入することも好ましく行われる。上記ディスコティック液晶の好ましい例は特開平8−50206号公報に記載されている。
以下にディスコティック液晶分子の例を示す。
【0274】
【化34】

【0275】
ディスコティック液晶分子は、配向層付近ではラビング方向にプレチルト角を持ってほぼフィルム平面に平行に配向しており、反対の空気面側ではディスコティック液晶分子が面に垂直に近い形で立って配向している。ディスコティック液晶層全体としては、ハイブリッド配向を取っており、この層構造によってTNモードのTFT−LCDの視野角拡大を実現することができる。
【0276】
上記光学異方性層は、一般にディスコティック化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤など)を、溶媒に溶解した溶液を配向層上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱した後、UV光の照射等により重合させ、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いるディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマチック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
【0277】
また、上記光学異方性層に添加するディスコティック化合物以外の化合物としては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物に好ましい傾斜角の変化を与えられるか、又は配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)、含フッ素トリアジン化合物等の空気界面側の配向制御用添加剤、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレート等のポリマーを挙げることができる。これらの化合物は、ディスコティック化合物に対して一般に0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の添加量にて使用される。
【0278】
光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0279】
視野角拡大フィルムの好ましい態様は、透明基材フィルムとしてのセルロースアシレー
トフィルム、その上に設けられた配向層、及び該配向層上に形成されたディスコティック液晶からなる光学異方性層から構成され、且つ光学異方性層がUV光照射により架橋されているものである。
【0280】
また上記以外にも、視野角拡大フィルムと本発明の偏光板を組み合わせる場合、例えば特開平07−198942号公報に記載されているように、板面に対し交差する方向に光軸を有して複屈折に異方性を示す位相差板と積層したり、特開2002−258052号公報に記載されているように、保護フィルムと光学異方性層の寸法変化率が実質的に同等となるようにしたりすることも好ましく行うことができる。また特開平12−258632号公報に記載されているように、視野角拡大フィルムと貼合される偏光板の水分率を2.4%以下としたり、特開2002−267839号公報に記載されているように、視野角拡大フィルム表面の水との接触角を70°以下としたりすることも好ましく行うことができる。
【0281】
IPSモード液晶セル用視野角拡大フィルムは、電界無印状態の黒表示時において、基板面に平行配向した液晶分子の光学補償及び偏光板の直交透過率の視野角特性向上に用いる。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。しかし斜めから観察した場合は、透過軸の交差角が90°ではなくなり、漏れ光が生じてコントラストが低下する。本発明の偏光板をIPSモード液晶セルに用いる場合は、漏れ光を低下させるため特開平10−54982号公報に記載されているような、面内の位相差が0に近く、且つ厚さ方向に位相差を有する視野角拡大フィルムと好ましく組み合わせて用いられる。
【0282】
OCBモードの液晶セル用視野角拡大フィルムは、電界印加により液晶層中央部で垂直配向し、基板界面付近で傾斜配向した液晶層の光学補償を行い、黒表示の視野角特性を改善するために使用される。本発明の偏光板をOCBモード液晶セルに用いる場合は、米国特許5805253号明細書に記載されたような円盤状の液晶性化合物を、ハイブリット配向させた視野角拡大フィルムと好ましく組み合わせて用いられる。
【0283】
VAモードの液晶セル用視野角拡大フィルムは、電界無印加状態で液晶分子が基板面に対して垂直配向した状態の黒表示の視野角特性を改善する。このような視野角拡大フィルムしては、特許第2866372号公報に記載されているような、面内の位相差が0に近く、且つ厚さ方向に位相差を有するフィルムや、円盤状の化合物が基板に平行に配列したフィルムや、同じ正面レターデーション値を有する延伸フィルムを、遅相軸が直交になるように積層配置したフィルムや、偏光板の斜め方向の直交透過率悪化防止のため、液晶分子のような棒状化合物からなるフィルムを積層したものと好ましく組み合わせて用いられる。
【0284】
(2)位相差フィルム
本発明の偏光板は、位相差層を有することが好ましい。本発明における位相差層としてはλ/4板が好ましく、本発明の偏光板とλ/4板とを積層させることで、円偏光板として使用することができる。円偏光板は入射した光を円偏光に変換する機能を有しており、反射型液晶表示装置やECBモードなどの半透過型液晶表示装置、又は有機EL素子等に好ましく利用されている。
【0285】
本発明に用いるλ/4板は、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4のレターデーション(Re)を有する位相差フィルムであることが好ましい。「可視光の波長の範囲において概ね1/4のレターデーション」とは、波長400から700nmにおいて、長波長ほどレターデーションが大きく、波長450nmで測定したレターデーション値(Re450)が80〜125nm
であり、且つ波長590nmで測定したレターデーション値(Re590)が120〜160nmである関係を満足する範囲を示す。Re590−Re450≧5nmであることがさらに好ましく、Re590−Re450≧10nmであることが特に好ましい。
【0286】
本発明で用いるλ/4板は、上記の条件を満たしていれば特に制限はないが、例えば特開平5−27118号公報、特開平10−68816号公報、特開平10−90521号公報に記載された、複数のポリマーフィルムを積層したλ/4板、国際公開第00/65384号パンフレット、国際公開第00/26705号パンフレットに記載された、1枚のポリマーフィルムを延伸したλ/4板、特開2000−284126号公報、特開2002−31717号公報に記載された、ポリマーフィルム上に少なくとも1層以上の光学異方性層を設けたλ/4板など公知のλ/4板を用いることができる。また、ポリマーフィルムの遅相軸の方向や光学異方性層の配向方向は液晶セルに合わせて任意の方向に配置することができる。
【0287】
円偏光板において、λ/4板の遅相軸と前記偏光子の透過軸は、任意の角度で交差できるが、45゜±20°の範囲で交差されることが好ましい。但し、λ/4板の遅相軸と上記偏光子の透過軸は上記以外の範囲で交差されても構わない。
【0288】
λ/4板をλ/4板及びλ/2板を積層して構成する場合は、特許第3236304号公報や特開平10−68816号公報に記載されているように、λ/4板及びλ/2板の面内の遅相軸と偏光板の透過軸とのなす角度が、実質的に75°及び15゜となるように貼り合わせることが好ましい。
λ/4板をλ/4板及びλ/2板を積層して構成する場合は、特許番号第3236304号公報や特開平10−68816号公報に記載されているように、λ/4板及びλ/2板の面内の遅相軸と偏光板の透過軸とがなす角度が実質的に75°及び15゜となるように貼り合わせることが好ましい。
【0289】
(3)反射防止フィルム
本発明の偏光板は反射防止フィルムと組み合わせて使用することができる。反射防止フィルムは、フッ素系ポリマー等の低屈折率素材を単層付与しただけの反射率1.5%程度のフィルム、又は薄膜の多層干渉を利用した反射率1%以下のフィルムのいずれも使用できる。
【0290】
本発明では、透明支持体上に、低屈折率層及び、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(すなわち、高屈折率層、中屈折率層)を積層した構成が好ましく使用される。また「日東技報」第38巻、第1号(5月号)(2000年)26頁〜28頁や、特開2002−301783号公報などに記載された反射防止フィルムも好ましく使用できる。
【0291】
各層の屈折率は次ぎの関係を満足する。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
【0292】
反射防止フィルムに用いる透明支持体は、前記偏光子の保護フィルムに使用する透明ポリマーフィルムを好ましく使用することができる。
【0293】
(低屈折率層)
低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であり、好ましくは1.30〜1.50である。低屈折率層は、耐擦傷性、防汚性を有する最外層として使用することが好ましい。耐擦傷性向上のため、シリコーン基や、フッ素の含有する素材を用い表面への滑り性付与することも好ましく行われる。
【0294】
含フッ素化合物としては、例えば、特開平9−222503号公報段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物を好ましく使用することができる。
【0295】
含シリコーン化合物はポリシロキサン構造を有する化合物が好ましいが、反応性シリコーン[例えば、「サイラプレーン」{チッソ(株)製}]や両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報)等を使用することもできる。シランカップリング剤等の、有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを、触媒共存下に縮合反応で硬化させてもよい(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報、特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)。
【0296】
低屈折率層には、上記以外の添加剤として、充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の、一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物(特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有させることも好ましく行うことができる。
【0297】
低屈折率層は、気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよいが、安価に製造できる点で、塗布法で形成することが好ましい。塗布法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法を好ましく使用することができる。
【0298】
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0299】
(中屈折率層及び高屈折率層)
中屈折率層及び高屈折率層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子を、マトリックス用材料に分散した構成とすることが好ましい。高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物、例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等を好ましく使用できる。
【0300】
このような超微粒子は、粒子表面を表面処理剤で処理したり(シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物又は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造としたり(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤を併用したりする(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等の態様で使用することができる。
【0301】
マトリックス用材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等を使用できるが、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の多官能性材料や、特開2001−293818号公報等に記載の金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜を使用することもできる。
【0302】
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
【0303】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
【0304】
反射防止フィルムのヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また膜の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0305】
(4)輝度向上フィルム
本発明の偏光板は、輝度向上フィルムと組み合わせて使用することができる。輝度向上フィルムは、円偏光又は直線偏光の分離機能を有しており、偏光板とバックライトの間に配置され、一方の円偏光又は直線偏光をバックライト側に後方反射又は後方散乱する。バックライト部からの再反射光は、部分的に偏光状態を変化させ、輝度向上フィルム及び偏光板に再入射する際、部分的に透過するため、この過程を繰り返すことにより光利用率が向上し、正面輝度が1.4倍程度に向上する。輝度向上フィルムとしては、異方性反射方式及び異方性散乱方式が知られており、いずれも本発明の偏光板と組み合わせることができる。
【0306】
異方性反射方式では、一軸延伸フィルムと未延伸フィルムを多重に積層して、延伸方向の屈折率差を大きくすることにより、反射率及び透過率の異方性を有する輝度向上フィルムが知られており、誘電体ミラーの原理を用いた多層膜方式(国際公開第95/17691号、同第95/17692号、同第95/17699号の各パンフレット記載)や、コレステリック液晶方式(欧州特許第606940A2号明細書、特開平8−271731号公報記載)が知られている。誘電体ミラーの原理を用いた多層方式の輝度向上フィルムとしては、“DBEF−E”、“DBEF−D”、“DBEF−M”(いずれも3M社製)、コレステリック液晶方式の輝度向上フィルムとしては、“NIPOCS”{日東電工(株)製}が本発明で好ましく使用される。“NIPOCS”については「日東技報」第38巻、第1号(5月号)、2000年、19頁〜21頁などを参考にすることができる。
【0307】
また、本発明では国際公開第97/32223号、同第97/32224号、同第97/32225号、同第97/32226号の各パンフレット及び特開平9−274108号、同11−174231号の各公報に記載された、正の固有複屈折性ポリマーと負の固有複屈折性ポリマーをブレンドして一軸延伸した、異方性散乱方式の輝度向上フィルムと、組み合わせて使用することも好ましい。異方性散乱方式輝度向上フィルムとしては、“DRPF−H”(3M社製)が好ましい。
【0308】
本発明の偏光板と輝度向上フィルムは、粘着剤を介して貼合された形態、もしくは偏光板の保護フィルムの一方を輝度向上フィルムとした一体型として使用することが好ましい。
【0309】
(5)他の機能性光学フィルム
本発明の偏光板は、さらに、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層、ガスバリア層、滑り層、帯電防止層、下塗層や保護層等を設けた機能性光学フィルムと組み合わせて使用することも好ましい。また、これらの機能層は、前記の反射防止フィルムにおける反射防止層、又は視野角補償フィルムにおける光学異方性層等と、同一層内で相
互に複合して使用することも好ましい。これらの機能層は、これら反射防止フィルム又は視野角補償フィルム等の、偏光子側又は偏光子と反対面(より空気側の面)のどちらか片面、又は両面に設けて使用することができる。
【0310】
(5−1)ハードコート層
本発明の偏光板は、耐擦傷性等の力学的強度を付与するため、ハードコート層を透明支持体の表面に設けた機能性光学フィルムと組み合わせることが好ましく行われる。ハードコート層を、前記の反射防止フィルムに適用して用いる場合は、特に透明支持体と高屈折率層の間に設けることが好ましい。
【0311】
ハードコート層は、光及び/もしくは熱による硬化性化合物の架橋反応、又は重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は、有機アルコキシシリル化合物が好ましい。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものを好ましく使用することができる。
【0312】
ハードコート層の膜厚は、0.2〜100μmであることが好ましい。
ハードコート層の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。またJIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0313】
ハードコート層を形成する材料は、エチレン性不飽和基を含む化合物、開環重合性基を含む化合物を用いることができ、これらの化合物は単独又は組み合わせて用いることができる。エチレン性不飽和基を含む化合物の好ましい例としては、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールのポリアクリレート類;ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類;ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を好ましい化合物として挙げることができる。
【0314】
また市販の化合物としては、“EB−600”、“EB−40”、“EB−140”、“EB−1150”、“EB−1290K”、“IRR214”、“EB−2220”、“TMPTA”、“TMPTMA”{以上、ダイセル・ユーシービー(株)製}、“UV−6300”、“UV−1700B”{以上、日本合成化学工業(株)製}等が挙げられる。
【0315】
また、開環重合性基を含む化合物の好ましい例としては、グリシジルエーテル類としてエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなど;脂環式エポキシ類として、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」、「エポリードGT−301」、「エポリードGT−401」、“EHPE3150CE”{以上、ダイセル化学工業(株)製}、フ
ェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテルなど;オキセタン類として、“OXT−121”、“OXT−221”、“OX−SQ”、“PNOX−1009”{以上、東亞合成(株)製}などが挙げられる。その他に、グリシジル(メタ)アクリレートの重合体又はグリシジル(メタ)アクリレートと、それらと共重合できるモノマーとの共重合体をハードコート層に使用することもできる。
【0316】
ハードコート層には、ハードコート層の硬化収縮の低減、基材との密着性の向上、本発明の偏光板のカールを低減するため、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム等の酸化物微粒子やポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリジメチルシロキサン等の架橋粒子、SBR、NBRなどの架橋ゴム微粒子等の有機微粒子等の架橋微粒子を添加することも好ましく行われる。これらの架橋微粒子の平均粒径は、1nm〜20000nmであることが好ましい。また、架橋微粒子の形状は、球状、棒状、針状、板状など特に制限無く使用できる。微粒子の添加量は硬化後のハードコート層の60体積%以下であることが好ましく、40体積%以下がより好ましい。
【0317】
上記で記載した無機微粒子を添加する場合、これらの無機微粒子は、一般にバインダーポリマーとの親和性が悪いため、これら無機微粒子を、ケイ素、アルミニウム、チタニウム等の金属を含有し、且つアルコキシド基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の官能基を有する表面処理剤を用いて表面処理することも好ましく行われる。
【0318】
ハードコート層は、熱又は活性エネルギー線を用いて硬化することが好ましく、その中でも放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を用いることがより好ましく、安全性、生産性を考えると電子線、紫外線を用いることが特に好ましい。熱で硬化させる場合は、プラスチック自身の耐熱性を考えて、加熱温度は140℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下である。
【0319】
(5−2)前方散乱層
前方散乱層は、本発明の偏光板を液晶表示装置に適用した際の、上下左右方向の視野角特性(色相と輝度分布)を改良するために使用される。本発明では、屈折率の異なる微粒子をバインダー分散した構成が好ましく、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等の構成を使用することができる。また、本発明の偏光板をヘイズの視野角特性を制御するため、住友化学の技術レポート「光機能性フィルム」31頁〜39頁に記載された「ルミスティ」と組み合わせて使用することも好ましく行うことができる。
【0320】
(5−3)アンチグレア層
アンチグレア(防眩)層は、反射光を散乱させて映り込みを防止するために使用される。アンチグレア機能は、液晶表示装置の最表面(表示側)に凹凸を形成することにより得られる。アンチグレア機能を有する光学フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0321】
フィルム表面に凹凸を形成する方法は、例えば、微粒子を添加して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成する方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、フィルム表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)
等を好ましく使用することができる。
【0322】
〔偏光板を使用する液晶表示装置〕
次に本発明の偏光板が使用される液晶表示装置について説明する。
図2は、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置の一例である。
【0323】
図2に示す本発明の液晶表示装置は、液晶セル(10〜13)、及び該液晶セル(10〜13)を挟持して配置された上側偏光板6と下側偏光板17とを有する。偏光板は偏光子及び一対の透明保護フィルムによって挟持されているが、図2中では一体化された偏光板として示し、詳細構造は省略する。液晶セルは、上側電極基板10及び下側電極基板13と、これらに挟持される液晶分子12から形成される液晶層からなる。液晶セルは、ON・OFF表示を行う液晶分子の配向状態の違いで、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードに分類されるが、本発明の偏光板は透過及び反射型によらず、いずれの表示モードにも使用できる。
【0324】
電極基板10及び13の液晶分子12に接触する表面(以下、「内面」という場合がある)には、配向膜(図示せず)が形成されていて、配向膜上に施されたラビング処理等により、電界無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子12の配向が制御されている。また、基板10及び13の内面には、液晶分子12からなる液晶層に電界を印加可能な透明電極(図示せず)が形成されている。
【0325】
TNモードのラビング方向は上下基板で互いに直交する方向に施し、その強さとラビング回数などでチルト角の大きさが制御できる。配向膜はポリイミド膜を塗布後焼成して形成する。液晶層のねじれ角(ツイスト角)の大きさは、上下基板のラビング方向の交差角と液晶材料に添加するカイラル剤により決まる。ここではツイスト角が90°になるようにするためピッチ60μm程度のカイラル剤を添加する。
【0326】
なお、ツイスト角は、ノートパソコンやパソコンモニタ、テレビ用の液晶表示装置の場合は90°近傍(85から95°)に、携帯電話などの反射型表示装置として使用する場合は0から70°に設定する。またIPSモードやECBモードでは、ツイスト角が0°となる。IPSモードでは電極が下側基板8のみに配置され、基板面に平行な電界が印加される。また、OCBモードでは、ツイスト角がなく、チルト角を大きくされ、VAモードでは液晶分子12が上下基板に垂直に配向する。
【0327】
ここで液晶層の厚さdと屈折率異方性Δnの積Δndの大きさは、白表示時の明るさを変化させる。このため最大の明るさを得るために表示モード毎にその範囲を設定する。
【0328】
上側偏光板6の吸収軸7と下側偏光板17の吸収軸18の交差角は、一般に概略直交するように積層することで高コントラストが得られる。液晶セルの上側偏光板6の吸収軸7と上側基板10のラビング方向の交差角は、液晶表示モードによってことなるが、TN、IPSモードでは一般に平行か垂直に設定する。OCB、ECBモードでは45°に設定することが多い。ただし、表示色の色調や視野角の調整のために各表示モードで最適値が異なり、この範囲に限定されるわけではない。
【0329】
本発明の偏光板が使用される液晶表示装置は、図2の構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶セルと偏光子との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、液晶セルと偏光板との間に、別途、前述した視野角拡大フィルムを配置すること
もできる。偏光板6、17と光学異方性層(視野角拡大フィルム)8、15は粘着剤で貼合した積層形態で配置されてもよいし、液晶セル側保護フィルムの一方を視野角拡大に使用した、いわゆる一体型楕円偏光板として配置されてもよい。
【0330】
また、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置を透過型として使用する場合は、冷陰極もしくは熱陰極蛍光管、又は発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置できる。また、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置は、反射型であってもよく、かかる場合は、偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セル背面又は液晶セルの下側基板の内面に反射膜を設置する。もちろん前記光源を用いたフロントライトを液晶セル観察側に設けてもよい。
【実施例】
【0331】
以下、本発明を実施例及び合成例に基づき具体的に記載するが、本発明はこれら具体例によって何ら限定されることはない。
【0332】
〔レターデーション上昇剤の合成〕
合成例1:例示化合物(101)の合成
攪拌機、原材料添加装置、還流冷却管及び温度計を装備した反応容器に、3,4,5−トリメトキシ安息香酸24.6g(0.116モル)、トルエン100mL及びN,N−ジメチルホルムアミド1mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル15.2g(0.127モル)をゆっくりと滴下し、2時間60℃で加熱した。その後、予め4−シアノフェノール15.1g(0.127モル)をアセトニトリル50mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、60℃で3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、得られた固形物に、アセトニトリル100mLを加え、再結晶操作を行った。アセトニトリル溶液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を11.0g(収率11%)得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルで行った。
【0333】
1H−NMR(CDCl3):δ3.50(br,9H),7.37(d,2H),7.45(s,2H),7.77(s,2H)
マススペクトル:m/z 314(M+H)+
得られた化合物の融点は172〜173℃であった。
【0334】
合成例2:例示化合物(102)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸106.1g(0.5モル)、トルエン340mL及びジメチルホルムアミド1mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル65.4g(0.55モル)をゆっくりと滴下し、2時間65〜70℃で加熱した。その後、予め4−シアノフェノール71.5g(0.6モル)をアセトニトリル150mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、80〜85℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル(1L)、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸マグネシウムで水分を除去した後、約500mLの溶媒を減圧留去し、メタノール1Lを加え、再結晶操作を行った。析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を125.4g(収率80%)得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルで行った。
【0335】
1H−NMR(CDCl3):δ3.91(s,3H),3.93(s,3H),3.98(s,3H),6.59(s,1H),7.35(d,2H),7.58(s,1H),7.74(d,2H)
マススペクトル:m/z 314(M+H)+
得られた化合物の融点は116℃であった。
【0336】
合成例3:例示化合物(103)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,3,4−トリメトキシ安息香酸10.1g(47.5ミリモル)、トルエン40mL及びジメチルホルムアミド0.5mLを充填して80℃に加熱した後、塩化チオニル6.22g(52.3ミリモル)をゆっくりと滴下し、80℃で2時間加熱撹拌した。その後、予め4−シアノフェノール6.2g(52.3ミリモル)をアセトニトリル20mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、80〜85℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、メタノール50mLを加え、再結晶操作を行った。析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を11.9g(収率80%)得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルで行った。
【0337】
1H−NMR(CDCl3):δ3.50(br,9H),7.37(d,2H),7.45(s,2H),7.77(s,2H)
マススペクトル:m/z 314(M+H)+
得られた化合物の融点は102〜103℃であった。
【0338】
合成例4:例示化合物(104)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,6−トリメトキシ安息香酸25.0g(118ミリモル)、トルエン100mL及びジメチルホルムアミド1mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル15.4g(129ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、予め4−シアノフェノール15.4g(129ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、80〜85℃で4.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、メタノール500mL、アセトニトリル100mLを加え、再結晶操作を行った。析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を10.0g(収率27%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトルで行った。
【0339】
マススペクトル:m/z 314(M+H)+
得られた化合物の融点は172〜173℃であった。
【0340】
合成例5:例示化合物(105)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,3−ジメトキシ安息香酸15.0g(82.3ミリモル)、トルエン60mL及びジメチルホルムアミド0.5mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル10.7(90.5ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、予め4−シアノフェノール10.8g(90.5ミリモル)をアセトニトリル30mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、70〜80℃で7時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、イソプロピルアルコール90mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を12.3g(収率53%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトルで行った。
【0341】
マススペクトル:m/z 284(M+H)+
得られた化合物の融点は104℃であった。
【0342】
合成例6:例示化合物(106)の合成
合成例5において、2,3−ジメトキシ安息香酸を用いる代わりに、2,4−ジメトキシ安息香酸を用いる以外は合成例5と同様の方法で、例示化合物(106)を合成した。
また化合物の同定はマススペクトルで行った。
マススペクトル:m/z 284(M+H)+
得られた化合物の融点は134〜136℃であった。
【0343】
合成例7:例示化合物(107)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,5−ジメトキシ安息香酸25.0g(137ミリモル)、トルエン100mL及びジメチルホルムアミド1.0mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル18.0(151ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、予め4−シアノフェノール18.0g(151ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、70〜80℃で7.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル(9/1、V/V))で精製操作を行い、白色の結晶として目的化合物を18.8g(収率48%)得た。また化合物の同定はマススペクトルで行った。
【0344】
マススペクトル:m/z 284(M+H)+
得られた化合物の融点は79〜80℃であった。
【0345】
合成例8:例示化合物(108)の合成
合成例5において、2,3−ジメトキシ安息香酸を用いる代わりに、2,6−ジメトキシ安息香酸を用いる以外は合成例5と同様の方法で、例示化合物(108)を合成した。また化合物の同定はマススペクトルで行った。
マススペクトル:m/z 284(M+H)+
得られた化合物の融点は130〜131℃であった。
【0346】
合成例9:例示化合物(111)の合成
合成例2において、4−シアノフェノール71.5gを用いる代わりに、4−クロロフェノール76.9gを用いる以外は合成例2と同様の方法で、例示化合物(111)を得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルで行った。
【0347】
1H−NMR(CDCl3):δ3.90(s,3H),3.94(s,3H),3.99(s,3H),6.58(s,1H),7.15(d,2H),7.37(d,2H),7.56(s,1H)
マススペクトル:m/z 323(M+H)+
得られた化合物の融点は127〜129℃であった。
【0348】
合成例10:例示化合物(112)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸45.0g(212ミリモル)、トルエン180mL及びジメチルホルムアミド1.8mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル27.8g(233ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2.5時間加熱撹拌した。その後、予め4−ヒドロキシ安息香酸メチル35.4g(233ミリモル)をジメチルホルムアミド27mLに溶解させた液をゆっくりと添加し、80℃で3時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却し、メタノール270mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を64.5g(収率88%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
【0349】
1H−NMR(CDCl3):δ3.95(m,9H),3.99(s,3H),6.57(s,1H),7.28(d,2H),7.57(s,1H)8.11(d,2H)
マススペクトル:m/z 347(M+H)+
得られた化合物の融点は121〜123℃であった。
【0350】
合成例11:例示化合物(113)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸20.0g(94.3ミリモル)、トルエン100mL及びジメチルホルムアミド1mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル12.3g(104ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。その後、予め4−フェニルフェノール17.7g(104ミリモル)をトルエン150mLに溶解させた液をゆっくりと添加し、80℃で3時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却し、メタノール250mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を21.2g(収率62%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
【0351】
1H−NMR(CDCl3):δ3.93(s,3H),3.96(s,3H),3.99(s,3H),6.59(s,1H),7.26−7.75(m,10H)
マススペクトル:m/z 365(M+H)+
得られた化合物の融点は131−132℃であった。
【0352】
合成例12:例示化合物(114)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸12.9g(61ミリモル)、トルエン50mL及びジメチルホルムアミド0.6mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル8.0g(67ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。その後、予め4−フェニルフェノール17.7g(104ミリモル)をアセトニトリル25mLに溶解させた液をゆっくりと添加し、80℃で3時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却し、メタノール100mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を21.6g(収率93%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトルにより行った。
【0353】
マススペクトル:m/z 381(M+H)+
得られた化合物の融点は91〜92℃であった。
【0354】
合成例13:例示化合物(115)の合成
合成例2において、4−シアノフェノール71.5gを用いる代わりに、フェノール56.4gを用いる以外は合成例2と同様の方法で例示化合物(115)を得た。なお、化合物の同定は1H−NMR及びマススペクトルにより行った。
【0355】
1H−NMR(CDCl3):δ3.91(s,3H),3.93(s,3H),3.99(s,3H),6.58(s,1H),7.19−7.27(m,3H),7.42(m,2H),7.58(s,1H)
マススペクトル:m/z 365(M+H)+
得られた化合物の融点は105〜108℃であった。
【0356】
合成例14:例示化合物(116)の合成
合成例2において、4−シアノフェノール71.5gを用いる代わりに、4−メトキシフェノール74.4gを用いる以外は合成例2と同様の方法で例示化合物(116)を得ることができた。なお、化合物の同定は1H−NMR及びマススペクトルにより行った。
【0357】
1H−NMR(CDCl3):δ3.84(s,3H),3.92(s,3H),3.93(s,3H),3.99(s,3H),6.58(s,1H),6.92(d,2H),7.12(d,2H),7.42(m,2H),7.58(s,1H)
マススペクトル:m/z 319(M+H)+
得られた化合物の融点は102〜103℃であった。
【0358】
合成例15:例示化合物(117)の合成
合成例2において、4−シアノフェノール71.5gを用いる代わりに、4−エチルフェノール73.3gを用いる以外は合成例2と同様の方法で例示化合物(117)を得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
マススペクトル:m/z 317(M+H)+
得られた化合物の融点は70〜71℃であった。
【0359】
合成例16:例示化合物(124)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、4−エトキシ安息香酸27.3g(164ミリモル)、トルエン108mL及びジメチルホルムアミド1mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル21.5g(181ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、予め4−エトキシフェノール25.0g(181ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で4時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール100mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を30.6g(収率65%)得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
【0360】
1H−NMR(CDCl3):δ1.48−1.59(m,6H),4.05(q,2H),4.10(q,2H),6.89−7.00(m,4H),7.10(d,2H),8.12(d,2H)
マススペクトル:m/z 287(M+H)+
得られた化合物の融点は113〜114℃であった。
【0361】
合成例17:例示化合物(125)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、4−エトキシ安息香酸24.7g(149ミリモル)、トルエン100mL及びジメチルホルムアミド1mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル19.5g(164ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、予め4−プロポキシフェノール25.0g(165ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で4時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール100mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、得られた固体にメタノール100mLを加えて再結晶操作を行い、得られた結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を33.9g(収率76%)得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
【0362】
1H−NMR(CDCl3):δ1.04(t,3H),1.45(t,3H),1.82(q,2H),3.93(q,2H),4.04(q,2H),6.89−7.00(m,4H),7.10(d,2H),8.12(d,2H)
マススペクトル:m/z 301(M+H)+
得られた化合物の融点は107℃であった。
【0363】
合成例18:例示化合物(127)の合成
合成例16において、4−エトキシ安息香酸27.3gを用いる代わりに、4−プロポキシ安息香酸29.5gを用いる以外は合成例16と同様の方法で合成した。なお、化合物の同定はマススペクトルにより行った。
マススペクトル:m/z 301(M+H)+
得られた化合物の融点は88〜89℃であった。
【0364】
合成例19:例示化合物(128)の合成
合成例17において、4−エトキシ安息香酸24.7gを用いる代わりに、4−プロポキシ安息香酸26.8gを用いる以外は合成例17と同様の方法で合成した。なお、化合物の同定はマススペクトルにより行った。
マススペクトル:m/z 315(M+H)+
得られた化合物の融点は92℃であった。
【0365】
合成例20:例示化合物(140)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4−ジメトキシ安息香酸20.0g(109ミリモル)、トルエン80mL及びジメチルホルムアミド0.8mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル14.4g(121ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。その後、予め4−フェニルフェノール20.5g(121ミリモル)をジメチルホルムアミド50mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で6時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール100mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を31.7g(収率86%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトルにより行った。
マススペクトル:m/z 335(M+H)+
得られた化合物の融点は161〜162℃であった。
【0366】
合成例21:例示化合物(142)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4−ジメトキシ安息香酸30.0g(165ミリモル)、トルエン120mL及びジメチルホルムアミド1.2mLを充填して60℃に加熱した後、塩化チオニル21.6g(181ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、予め4−フヒドロキシ安息香酸メチル27.6g(181ミリモル)をジメチルホルムアミド40mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で6時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール140mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を24.4g(収率47%)得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
【0367】
1H−NMR(CDCl3):δ3.92(m,9H),6.56(m,2H),7.27(m,2H),8.09(m,3H)
マススペクトル:m/z 317(M+H)+
得られた化合物の融点は122〜123℃であった。
【0368】
合成例22:例示化合物(201)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸40.1g(189ミリモル)、4、4’−ジヒドロキシビフェニル16.75g(90ミリモル)、トルエン200mL及びジメチルホルムアミド2mLを充填して70℃に加熱した後、塩化チオニル23.6g(198ミリモル)をゆっくりと滴下し、70℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール300mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を48.4g(収率94%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
【0369】
1H−NMR(CDCl3):δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),3.99(s,6H),6.58(s,2H),7.28(d,4H),7.62(m,6H)得られた化合物の融点は227〜229℃であった。
【0370】
合成例23:例示化合物(202)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸34g(160ミリモル)、4、4’−ジヒドロキシ−3−フルオロビフェニル15g(73ミリモル)、トルエン110mL及びジメチルホルムアミド1.6mLを充填して70℃に加熱した後、塩化チオニル20.9g(176ミリモル)をゆっくりと滴下し、70℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール300mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を37g(収率86%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
【0371】
1H−NMR(CDCl3):δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),4.00(s,6H),6.59(s,2H),7.26−7.45(m,5H),7.63(m,4H)
得られた化合物の融点は197〜199℃であった。
【0372】
合成例24:例示化合物(203)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸23.3g(110ミリモル)、4、4’−ジヒドロキシ−3−クロロビフェニル15g(50ミリモル)、トルエン75mL及びジメチルホルムアミド1.1mLを充填して70℃に加熱した後、塩化チオニル14.4g(121ミリモル)をゆっくりと滴下し、80℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール250mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を26g(収率85%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
【0373】
1H−NMR(CDCl3):δ3.90−4.00(m,18H),6.59(s,2H),7.26−7.70(m,9H)
得られた化合物の融点は168〜170℃であった。
【0374】
合成例25:例示化合物(204)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸30.3g(143ミリモル)、4、4’−ジヒドロキシ−3−メチルビフェニル15g(65ミリモル)、トルエン100mL及びジメチルホルムアミド1.4mLを充填して70℃に加熱した後、塩化チオニル18.7g(157ミリモル)をゆっくりと滴下し、70℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール300mLを加え、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を27.4g(収率72%)得た。なお化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
【0375】
1H−NMR(CDCl3):δ2.31(s,3H),3.95(s,6H),4.00(s,6H),6.60(s,2H),7.10(m,2H),7.27(m,3H),7.40(m,2H),7.63(d,2H)
マススペクトル:m/z 589(M+H)+
得られた化合物の融点は188〜189℃であった。
【0376】
合成例26:例示化合物(205)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸5.72g(26.9ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン3.5g(27ミリモル)及びテトラヒドロフラン20mLを充填して氷水で冷却した後、メタンスルホニルクロリド3.1g(27ミリモル)をゆっくりと滴下し、滴下後2時間室温で攪拌した。その後、氷水に冷却し、予めビス(4−ヒドロキシフェニル)アセチレン2.9g(13.7ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン3.5g(27ミリモル)をテトラヒドロフラン40mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、滴下後、室温で3時間、50℃1時間攪拌した。その
後水160mLを添加し、得られた結晶を濾過回収し、メタノール100mLを加え、再結晶操作を行い、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を3.0g(収率19%)得た。なお化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びマススペクトルにより行った。
【0377】
1H−NMR(CDCl3):δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),3.99(s,6H),6.57(s,2H),7.24(m,4H),7.58(m,6H)
マススペクトル:m/z 599(M+H)+
得られた化合物の融点は201〜203℃であった。
【0378】
合成例27:例示化合物(206)の合成
(1)2,4,5−トリメトキシ安息香酸−4−エチニルアニリドの合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、2,4,5−トリメトキシ安息香酸21.2g(100ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン12.9g(100ミリモル)及びテトラヒドロフラン126mLを充填して氷水で冷却した後、メタンスルホニルクロリド11.4g(100ミリモル)をゆっくりと滴下し、滴下後2時間室温で攪拌した。その後、氷水に冷却し、予め4−エチルアニリン11.7g(100ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン12.9g(100ミリモル)をテトラヒドロフラン42mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、滴下後、室温で6時間攪拌した。その後酢酸エチル200mLを添加し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、0.5モル/L塩酸水、飽和食塩水の順で有機相を洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを添加し、脱水操作を行い、濾過により硫酸ナトリウムを濾別し、有機溶媒を減圧留去した。次ぎにこれにメタノール350mLを加え、再結晶操作を行い、析出した結晶を濾過回収し、白色の結晶として目的化合物を15.0g(収率48%)得た。
【0379】
(2)例示化合物(206)の合成
合成例1で用いたと同様の反応容器に、上記で得られた2,4,5−トリメトキシ安息香酸−4−エチニルアニリド3.1g(10ミリモル)、2,4,5−トリメトキシ安息香酸−4−ヨードフェニル4.1g(10ミリモル)、トリエチルアミン5.56mL(40ミルモル)及びテトラヒドロフラン15mLを充填して、窒素雰囲気下、室温で攪拌し、塩化第一銅22.8mg(0.12ミリモル)、トリフェニルホスフィン131mg(0.5ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド70mg(0.1ミリモル)を添加し、60℃で3時間加熱攪拌した。その後反応液を室温まで冷却し、水200mLを添加した。得られた結晶を濾過し、メタノール100mLで再結晶操作を行い、黄白色の結晶として目的化合物を5.6g(収率94%)得た。
なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)及びにより行った。
【0380】
1H−NMR(DMSO−d6):δ3.92(s,3H),3.93(s,3H),4.05(m,9H)4.15(s,3H)6.96(br,2H),7.46(d,2H),7.55(s,1H), 7.62(s,1H),7.69(d,2H),7.76(d,2H),7.98(d,2H),10.30(s,1H)
得られた化合物の融点は216〜218℃であった。
【0381】
合成例28:例示化合物(223)の合成
下記スキームに従い、例示化合物(223)を合成した。
【0382】
【化35】

【0383】
(1)中間体(C)の合成
2,4,5−トリメトキシ安息香酸300g、トルエン1200ml、ジメチルホルム
アミド12mlを80℃に加熱した後、塩化チオニル112.1mlをゆっくりと45分かけて滴下し、滴下後80℃で1時間加熱攪拌した。その後、反応液に4‐ヒドロキシ安息香酸214.8gをジメチルホルムアミド800mlに溶解させた溶液を加え、さらに80℃で2時間反応させた。反応後、トルエンを留去した後、室温まで冷却した。次いでメタノール2500mlを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として中間体(C)を263.8g(収率56.3%)得た。
【0384】
(2)例示化合物(223)の合成
中間体(C)108.4g、ジメチルアミノピリジン7.24g、化合物(D)32.67g、塩化メチレン500mlを加熱還流させた後、ジシクロヘキシルカルボジイミド67.31gの塩化メチレン200ml溶液をゆっくりと30分かけて滴下し、さらに2時間加熱還流させた。その後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶(ジシクロヘキシルウレア)をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残さをメタノールにて3回再結晶を行い、白色の結晶として例示化合物(1)を91.42g(収率75.8%)得た。また化合物の同定は1H―NMR(400MHz)により行った。
【0385】
1H−NMR(CDCl3)δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),4.00(s,6H),6.61(s,2H),7.32(d,4H),7.38(d,4H),7.61(s,2H),7.68(d,4H),8.29(d,4H)
得られた化合物の融点は199〜200℃であった。
【0386】
〔セルロースアシレートフィルムの作製〕
実施例1−1:セルロースアシレートフィルム(CAF1)の作製
[セルロースアシレート原液(CAL−1)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート原液(CAL−1)を調製した。
【0387】
{セルロースアシレート原液(CAL−1)の組成}
セルロースアシレート 100.0質量部
アセチル化度2.79
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 8.0質量部
ビフェニルホスフェート(可塑剤) 4.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0388】
[マット剤溶液(Ma−1)の調製]
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解し、マット剤溶液(Ma−1)を調製した。
【0389】
{マット剤溶液(Ma−1)組成}
平均粒径20nmのシリカ粒子 2.0質量部
“AEROSIL R972”日本アエロジル(株)製
メチレンクロリド(第1溶媒) 75.0質量部
メタノール(第2溶媒) 12.7質量部
セルロースアシレート原液(CAL−1) 10.3質量部
【0390】
[レターデーション上昇剤溶液(Re−1)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液(Re−1)を調製した。
【0391】
{レターデーション上昇剤溶液(Re−1)の組成}
レターデーション上昇剤(302) 20.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液原液(CAL−1) 12.8質量部
【0392】
[セルロースアシレートフィルム(CAF1)の作製]
上記セルロースアシレート原液(CAL−1)94.5質量部、マット剤溶液(Ma−1)1.3質量部及びレターデーション上昇剤溶液(Re−1)4.2質量部をそれぞれ濾過した後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。残留溶媒含量43質量%で得られたフィルムをバンドから剥離し、140℃の雰囲気温度下、30m/分の速度でフィルムを搬送しながらテンターを用いて、延伸速度48%/分で、120%まで横延伸したのち140℃で30秒間保持した。延伸開始時の残留溶媒含量は25質量%、残留溶媒のI/O比が0.9だった。その後、クリップを外して130℃で40分間乾燥させ、セルロースアシレートフィルム(CAF1)を製造した。できあがったセルロースアシレートフィルムの残留溶媒量は0.2質量%であった。
【0393】
実施例1−2及び1−3:セルロースアシレートフィルム(CAF2)及び(CAF3)の作製
[セルロースアシレート原液(CAL−2)及び(CAL−3)の調製]
セルロースアシレート原液(CAL−1)の調製において、アセチル化度2.79のセルロースアシレートを用いる代わりに、アセチル化度2.75又はアセチル化度2.83のセルロースアシレートをそれぞれ用いる以外は同様にして、セルロースアシレート原液(CAL−2)及び(CAL−3)を調製した。
【0394】
[マット剤溶液(Ma−2)及び(Ma−3)の調製]
マット剤溶液(Ma−1)の調製において、セルロースアシレート原液(CAL−1)を用いる代わりに、セルロースアシレート原液(CAL−2)又は(CAL−2)をそれぞれ用いる以外は同様にして、マット剤溶液(Ma−2)及び(Ma−3)を調製した。
【0395】
[レターデーション上昇剤溶液(Re−2)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液(Re−2)を調製した。
【0396】
{レターデーション上昇剤溶液(Re−2)の組成}
レターデーション上昇剤(112) 14.9質量部
レターデーション上昇剤(302) 2.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液原液(CAL−1) 12.8質量部
【0397】
[レターデーション上昇剤溶液(Re−3)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液(Re−3)を調製した。
【0398】
{レターデーション上昇剤溶液(Re−3)の組成}
レターデーション上昇剤(223) 11.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液原液(CAL−1) 12.8質量部
【0399】
[セルロースアシレートフィルム(CAF2)及び(CAF3)の作製]
セルロースアシレートフィルム(CAF1)の作製において、セルロースアシレート原液(CAL−1)、マット剤溶液(Ma−1)及びレターデーション上昇剤溶液(Re−1)を用いる代わりに、セルロースアシレート原液(CAL−2)、マット剤溶液(Ma−2)及びレターデーション上昇剤溶液(Re−2)、又はセルロースアシレート原液(CAL−3)、マット剤溶液(Ma−3)及びレターデーション上昇剤溶液(Re−3)を用い、またフィルムの作製に際して、その搬送速度、延伸倍率、延伸速度、延伸開始時の残留溶媒含量及びI/O比を表2の内容に変更した以外は、実施例1−1と同様にしてセルロースアシレートフィルム(CAF2)及び(CAF3)を作製した。
なお、セルロースアシレートフィルム(CAF2)及び(CAF3)の作製に用いたセルロースアシレートの種類、並びにレターデーション上昇剤の種類及びその添加量は表1に示す。
【0400】
実施例1−4:セルロースアシレートフィルム(CAF4)の作製
[セルロースアシレート原液(CAL−4)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート原液(CAL−4)を調製した。
【0401】
{セルロースアシレート原液(CAL−4)の組成}
セルロースアシレート 100.0質量部
アセチル化度1.80、プロピオニル化度0.90
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 9.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 3.5質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 362.0質量部
エタノール(第2溶媒) 100.0質量部
【0402】
[マット剤溶液(Ma−4)の調製]
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解し、マット剤溶液(Ma−4)を調製した。
【0403】
{マット剤溶液(Ma−4)組成}
平均粒径20nmのシリカ粒子 2.0質量部
“AEROSIL R972”日本アエロジル(株)製
メチレンクロリド(第1溶媒) 75.0質量部
エタノール(第2溶媒) 12.7質量部
セルロースアシレート原液(CAL−4) 10.3質量部
【0404】
[レターデーション上昇剤溶液(Re−4)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液(Re−4)を調製した。
【0405】
{レターデーション上昇剤溶液(Re−4)の組成}
レターデーション上昇剤(302) 20.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 58.4質量部
エタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液原液(CAL−4) 12.8質量部
【0406】
[セルロースアシレートフィルム(CAF4)の作製]
上記セルロースアシレート原液(CAL−4)94.5質量部、マット剤溶液(Ma−
4)1.3質量部及びレターデーション上昇剤溶液(Re−4)3.4質量部をそれぞれ濾過した後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。残留溶媒含量45質量%で得られたフィルムをバンドから剥離し、140℃の雰囲気温度下、10m/分の速度でフィルムを搬送しながらテンターを用いて、延伸速度36%/分で、130%まで横延伸したのち、140℃で30秒間保持した。延伸開始時の残留溶媒含量は27質量%、残留溶媒のI/O比が2.2だった。その後、クリップを外して130℃で40分間乾燥させ、セルロースアシレートフィルム(CAF4)を製造した。できあがったセルロースアシレートフィルムの残留溶媒量は0.2質量%であった。
【0407】
実施例1−5及び1−6:セルロースアシレートフィルム(CAF5)及び(CAF6)の作製
[セルロースアシレート原液(CAL−5)及び(CAL−6)の調製]
セルロースアシレート原液(CAL−4)の調製において、アセチル化度1.80及びプロピオニル化度0.90のセルロースアシレートを用いる代わりに、アセチル化度1.70及びプロピオニル化度0.95のセルロースアシレート、又はアセチル化度1.83及びプロピオニル化度0.91のセルロースアシレートをそれぞれ用いる以外は同様にして、セルロースアシレート原液(CAL−5)及び(CAL−6)を調製した。
【0408】
[マット剤溶液(Ma−5)及び(Ma−6)の調製]
マット剤溶液(Ma−4)の調製において、セルロースアシレート原液(CAL−4)を用いる代わりに、セルロースアシレート原液(CAL−5)又は(CAL−6)をそれぞれ用いる以外は同様にして、マット剤溶液(Ma−5)及び(Ma−6)を調製した。
【0409】
[レターデーション上昇剤溶液(Re−5)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液(Re−5)を調製した。
【0410】
{レターデーション上昇剤溶液(Re−5)の組成}
レターデーション上昇剤(112) 26.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 53.2質量部
エタノール(第2溶媒) 7.9質量部
セルロースアシレート溶液原液(CAL−4) 12.8質量部
【0411】
[レターデーション上昇剤溶液(Re−6)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液(Re−6)を調製した。
【0412】
{レターデーション上昇剤溶液(Re−6)の組成}
レターデーション上昇剤(223) 11.2質量部
レターデーション上昇剤(206) 17.6質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 50.8質量部
エタノール(第2溶媒) 7.6質量部
セルロースアシレート溶液原液(CAL−4) 12.8質量部
【0413】
[セルロースアシレートフィルム(CAF5)及び(CAF6)の作製]
セルロースアシレートフィルム(CAF4)の作製において、セルロースアシレート原液(CAL−4)、マット剤溶液(Ma−4)及びレターデーション上昇剤溶液(Re−4)を用いる代わりに、セルロースアシレート原液(CAL−5)、マット剤溶液(Ma−5)及びレターデーション上昇剤溶液(Re−5)、又はセルロースアシレート原液(CAL−6)、マット剤溶液(Ma−6)及びレターデーション上昇剤溶液(Re−6)
を用い、またフィルムの作製に際して、その搬送速度、延伸倍率、延伸速度、延伸開始時の残留溶媒含量及びI/O比を表2の内容に変更した以外は、実施例1−4と同様にしてセルロースアシレートフィルム(CAF5)及び(CAF6)を作製した。
なお、セルロースアシレートフィルム(CAF5)及び(CAF6)の作製に用いたセルロースアシレートの種類、並びにレターデーション上昇剤の種類及びその添加量は表1に示す。
【0414】
実施例1−7:セルロースアシレートフィルム(CAF7)の作製
実施例1−4において、フィルムの作製に際しての搬送速度、延伸倍率、延伸速度、延伸開始時の残留溶媒含量及びI/O比を表2の内容に変更した以外は、実施例1−4と同様にしてセルロースアシレートフィルム(CAF7)を作製した。
【0415】
比較例1−1:セルロースアシレートフィルム(CAF8)の作製
[セルロースアシレート原液(CAL−7)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート原液(CAL−7)を調製した。
【0416】
{セルロースアシレート原液(CAL−7)の組成}
セルロースアシレート 100.0質量部
アセチル化度2.79
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 8.0質量部
ビフェニルホスフェート(可塑剤) 4.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 457.0質量部
メタノール(第2溶媒) 5.0質量部
【0417】
[マット剤溶液(Ma−7)の調製]
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解し、マット剤溶液(Ma−7)を調製した。
【0418】
{マット剤溶液(Ma−7)組成}
平均粒径20nmのシリカ粒子 2.0質量部
“AEROSIL R972”日本アエロジル(株)製
メチレンクロリド(第1溶媒) 82.0質量部
メタノール(第2溶媒) 5.7質量部
セルロースアシレート原液(CAL−7) 10.3質量部
【0419】
[レターデーション上昇剤溶液(Re−7)の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液(Re−7)を調製した。
【0420】
{レターデーション上昇剤溶液(Re−7)の組成}
レターデーション上昇剤(302) 20.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 63.4質量部
メタノール(第2溶媒) 3.7質量部
セルロースアシレート溶液(CAL−7) 12.8質量部
【0421】
[セルロースアシレートフィルム(CAF8)の作製]
上記セルロースアシレート原液(CAL−7)94.5質量部、マット剤溶液(Ma−7)1.3質量部及びレターデーション上昇剤溶液(Re−7)4.2質量部をそれぞれ濾過した後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。残留溶媒含量15質量%で得られ
たフィルムをバンドから剥離し、170℃の雰囲気温度下、20m/分の速度でフィルムを搬送しながらテンターを用いて、延伸速度48%/分で、120%まで横延伸したのち、140℃で30秒間保持した。延伸開始時の残留溶媒含量は5質量%、残留溶媒のI/O比が0.21だった。その後、クリップを外して130℃で40分間乾燥させ、セルロースアシレートフィルム(CAF8)を製造した。できあがったセルロースアシレートフィルムの残留溶媒量は0.1質量%であった。
【0422】
比較例1−2:セルロースアシレートフィルム(CAF9)の作製
実施例1−4において、フィルムの作製に際しての搬送速度、延伸倍率、延伸速度、延伸開始時の残留溶媒含量及びI/O比を表2の内容に変更した以外は、実施例1−4と同様にしてセルロースアシレートフィルム(CAF9)を作製した。
【0423】
【表1】

【0424】
【表2】

【0425】
〔フィルム特性値の測定〕
[厚み分布及びRe分布の測定]
セルロースアシレートフィルム(CAF1)〜(CAF9)について、それぞれ10cmごとに長手方向1m、幅方向1mの合計100箇所についてフィルム厚み及びRe590、Rth590を測定し、平均値及び標準偏差を求めた。
なお、Re及びRthは自動複屈折率計“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}により25℃、60%RHの温湿度下で測定した。
【0426】
[X線測定]
理学電機(株)製“RINT RAPID”により、X線源にはCu管球を用い、40kV−36mAでX線を発生させた。コリメーターは0.8mmφ、フィルム試料は透過試料台を用いて固定した。また、露光時間は600秒とした。このようにして、フィルム表面の配向度(配向オーダーパラメーター)Po及びフィルム全厚みでの平均配向度Ptを測定し、Po/Ptを求めた。
結果を表3に示す。
【0427】
【表3】

【0428】
表3の結果から、本発明のセルロースアシレートフィルムは比較試料に比べ厚みムラが解消されていることがわかる。
【0429】
〔偏光板の作製〕
実施例11−1〜11−7及び比較例11−1〜11−2
[セルロースアシレートフィルムの鹸化処理]
前記実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2で作製されたセルロースアシレートフィルム(CAF1)〜(CAF9)を、それぞれ1.4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬し、次いで室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。次ぎに再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに110℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルム(CAF1)〜(CAF9)の表面をそれぞれ鹸化した。
【0430】
また市販のセルローストリアセテートフィルム「フジタックTD80UF」{富士写真フイルム(株)製}を同条件で鹸化し、以下の偏光板試料作製に供した。
【0431】
[偏光子の作製]
延伸したPVAフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光子を作製し、PVA系接着剤を用いて、実施例1−1で作製したセルロースアシレートフィルム(CAF1)を偏光子の片側に貼り付けた。偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。
【0432】
さらに上記で鹸化処理した「フジタックTD80UF」を、PVA系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板(P1−1)を作製した。
【0433】
セルロースアシレートフィルム(CAF2〜9)についても、同様にして偏光板(P1−2)〜(P1−7)及び(PR1−1)〜(PR1−2)を作製した。得られた偏光板の構成を表4に示す。
【0434】
【表4】

【0435】
実施例21−1及び比較例21−1
〔VAモード液晶表示装置の作製と評価1〕
図3に示す液晶表示装置を作製した。
すなわち、観察方向(上)から、上側偏光板、VAモード液晶セル(上基板、液晶層、下基板)、下側偏光板を積層し、さらにバックライト光源を配置した。
以下の例では、上側偏光板に市販品の偏光板“HLC2−5618”{(株)サンリッツ製}を用い、下側偏光板に本発明の偏光板を使用している。
【0436】
[液晶セルの作製]
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(“MLC6608”メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のリターデーション{すなわち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d}を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
【0437】
上記で得た垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(図3)の上側偏光板には、市販品の上記スーパーハイコントラスト品“HLC2−5618”を、下側偏光板には、実施例11−3で作製した偏光板(P1−3)を、その一方の保護フィルムである本発明のセルロースアシレートフィルム(CAF3)が液晶セル側となるように、粘着剤を介してそれぞれ液晶セルに貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
【0438】
次ぎに、比較例2で作製したセルロースアシレートフィルム(CAF9)を用い、比較例12で作製した偏光板(PR1−2)についても、それを下側偏光板に用い上記と同様にして液晶表示装置を作製した。
【0439】
本発明の偏光板(P1−3)を使用した液晶表示装置は、比較例の偏光板(PR1−2)を使用した液晶表示装置と比較して、表示ムラがなく、好ましいことがわかった。
【0440】
実施例31−1
〔VAモード液晶表示装置の作製と評価2〕
[液晶セルの作製]
PVA3質量%水溶液100質量部に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(カップリング剤)を1質量部添加した。これを、ITO電極付のガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビ
ング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるようにした。セルギャップ(d)が5μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.08)を注入し、垂直配向液晶セルを作製した。Δnとdとの積(すなわち液晶層のリターデーション)は400nmであった。
【0441】
実施例11−2で作製した偏光板(P1−2)を、25℃、60%RHの温湿度条件で予め調湿した後、防湿処理を施した袋に包装し、3日間放置した。袋はポリエチレンテレフタレート/アルミ/ポリエチレンの積層構造からなる包装材であり、透湿度は1×10-5g/m2・日以下であった。
【0442】
25℃、60%RHの環境下で、偏光板(P1−2)を取り出して、上記で作製した垂直配向液晶セルの両面に、粘着シートを用いて貼り付けて、液晶表示装置を作製した。
【0443】
本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、表示ムラがなく好ましいことがわかった。
【0444】
実施例12
〔偏光板の作製〕
[光学補償シートの作製]
(セルロースアシレートフィルムの鹸化処理)
実施例1−1で作製したセルロースアシレートフィルム(CAF1)上に、下記組成の液を6.0mL/m2塗布し、60℃で10秒間乾燥させた。フィルムの表面を流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルム表面を乾燥させた。
【0445】
(鹸化液の組成)
イソプロピルアルコール 818質量部
水 167質量部
プロピレングリコール 187質量部
日本エマルジョン(株)製“EMALEX” 12質量部
水酸化カリウム 67質量部
【0446】
(配向膜の形成)
鹸化処理したセルロースアシレート(CAF1)の上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、セルロースアシレート(CAF1)上(透明支持体)の延伸方向(遅相軸とほぼ一致)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0447】
(配向膜塗布液の組成)
下記構造の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
【0448】
【化36】

【0449】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記構造のディスコティック化合物91質量部、エチレンオキシド変成トリメチロールプロパントリアクリレート“V#360”{大阪有機化学(株)製}9質量部、セルロースアセテートブチレート“CAB531−1”(イーストマン・ケミカル社
製)1.5質量部、光重合開始剤「イルガキュア907」(チバガイギー社製)3質量部、増感剤「カヤキュアーDETX」{日本化薬(株)製}1質量部を、メチルエチルケトン214.2質量部に溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーコーターで5.2mL/m2塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シート(WV−1)を得た。
【0450】
【化37】

【0451】
(光学補償シートの鹸化処理)
光学補償シート(WV−1)を、実施例11−1と同様にして鹸化処理を行った。
【0452】
[偏光板の作製]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
次に、上記で鹸化処理した光学補償シート(WV−1)の透明支持体側を、PVA系接着剤を用いて、得られた偏光子の片側に貼り付けた。透明支持体の遅相軸及び偏光子の透過軸が平行になるように配置した。
【0453】
市販のセルローストリアセテートフィルム「フジタックTD80UF」{富士写真フイルム(株)製}を実施例11−1と同様に鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側(光学補償シートを貼り付けなかった側)に貼り付けた。このようにして、楕円偏光板(P2−1)を作製した。
【0454】
実施例22
〔液晶表示装置の作製〕
[ベンド配向液晶セルの作製]
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた2枚のガラス基板を、ラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを5.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物“ZLI1132”(メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
【0455】
[液晶表示装置の作製]
作製したベンド配向セルを挟むように、楕円偏光板(P2−1)を2枚貼り付けた。偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0456】
得られた液晶表示装置を用いて、25℃、80%RHの環境下で1000時間連続点灯した場合の、黒表示での光漏れを観察したところ、本発明の偏光板(P2−1)を用いた液晶表示装置は、表示ムラがなく好ましいものであることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0457】
【図1】図1は、本発明の偏光板と機能性光学フィルムとを複合した構成の一例である。
【図2】図2は、本発明の偏光板が使用された液晶表示装置の一例である。
【図3】図3は、本発明の偏光板が使用されたVAモード液晶表示装置の一例である。
【符号の説明】
【0458】
1、1a、1b:保護フィルム
2:偏光子
3:機能性光学フィルム
4:粘着層
5:偏光板
【0459】
6:上偏光板
7:上偏光板吸収軸
8:上光学異方性層
9:上光学異方性層配向制御方向
10:液晶セル上電極基板
11:上基板配向制御方向
12:液晶分子
13:液晶セル下電極基板
14:下基板配向制御方向
15:下光学異方性層
16:下光学異方性層配向制御方向
17:下偏光板
18:下偏光板吸収軸
【0460】
30:上側偏光板
31:VAモード液晶セル
32:下側偏光板
33:セルロースアシレートフィルム
34:偏光子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム表面におけるセルロースアシレート分子鎖の配向度Poと、フィルム全厚みでのセルロースアシレート分子鎖の平均配向度Ptが、下記数式(1)の関係を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
数式(1):2≦Po/Pt≦5
【請求項2】
波長590nmにおけるRe、及びRthが、下記数式(2)〜(4)の関係を満たす請求項1のセルロースアシレートフィルム。
数式(2):20≦Re≦200
数式(3):70≦Rth≦400
数式(4):1≦Rth/Re≦10
【請求項3】
セルロースアシレート、及び有機溶媒を含むドープ液を、バンド又はドラム上に流延後、剥離されたセルロースアシレートフィルムを搬送する工程(1)、幅手の端部把持する工程(2)、幅手方向に引き延ばす工程(3)を有するセルロースアシレートフィルムの製造において、残留溶媒含量が1質量%以上100質量%以下で、残留溶媒のI/O比が0.65以上6以下のセルロースアシレートフィルムを、下記数式(5)の条件でフィルムの搬送方向、及び/又はこれと垂直な方向に1%以上100%以下延伸することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
数式(5):1%/分≦延伸速度≦50%/分
【請求項4】
下記数式(6)の条件を満たす請求項3記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
数式(6):5≦搬送速度/延伸速度≦300
【請求項5】
請求項3又は4の方法により製造された請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項6】
偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が請求項1、2又は5に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
少なくとも一方の保護フィルムの上に光学異方性層を有する請求項6記載の偏光板。
【請求項8】
液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも一方の偏光板が請求項6又は7に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−235483(P2006−235483A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53227(P2005−53227)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】