説明

セルロース誘導体又はその塩及びその製造方法ならびにそれを含む化粧料組成物

【課題】油性成分との混練が容易であり、皮膚に対して保護修復効果を付与しうる化粧料配合剤の提供。
【解決手段】セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部がモノカルボン酸由来のアシル基で置換されてなるO−アシル化部位、さらには、セルロースに含まれる水酸基の他の一部が硫酸基で置換されてなるO−硫酸化部位を含むセルロース誘導体又はその塩。該セルロース誘導体又はその塩は、化粧料組成物、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤及びメラニン産生抑制剤の有効成分として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部にモノカルボン酸由来のアシル基が導入されてなるセルロース誘導体又はその塩及びその製造方法に関する。また、本発明は、該セルロース誘導体又はその塩を含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は皮膚の結合組織等に存在する多糖類であり、保湿機能を有していることから、皮膚の弾力性や潤い、みずみずしさを保つ働きがある。しかしながら、ヒアルロン酸は、ヒアルロニダーゼという酵素によって分解されてしまうことが知られている。皮膚において、ヒアルロン酸が分解され、ヒアルロン酸が不足すると、皮膚が乾燥し、肌荒れの原因になる。近年増加している「敏感肌」は、この乾燥により皮膚の細胞表面や支持マトリックスが崩壊して細胞が暴露され、病原体、炎症媒介物質、炎症剤または防腐剤などの種々の物質に肌が損傷される結果、化粧料に配合されている化学物質に肌が過敏に反応する症状をいう。
【0003】
ヒアルロニダーゼの活性を阻害する化合物として、硫酸化多糖が知られている。硫酸化多糖は、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することにより、細胞表面及び保護接続組織のマトリックスの再生を促進させ、その結果、抗炎症作用または組織再生作用を奏するものと考えられている。代表的な硫酸化多糖としてはコンドロイチン硫酸が知られている。また、本件発明者らは先にセルロースに含まれる水酸基の一部が硫酸基で修飾されてなる硫酸化セルロースが、コンドロイチン硫酸の約100倍のヒアルロニダーゼ活性阻害能を有することを見出している(特許文献1:特開2006−274245号公報)。さらに、硫酸化セルロースを球状粒子にすることにより、化粧料に配合した際にのびや肌触りがより良好なものとなることを報告している(特許文献2:特開2008−222604号公報)。
【0004】
硫酸化セルロースは脂質吸着能をもち、化粧料に滑らか感を付与できるために、液状ファンデーションなどのメークアップ化粧料にも使用されている。しかし、油性成分との相性が悪く、油性化粧料に多量に配合することは困難であった。
【0005】
一方、特開2003−252903号公報(特許文献3)には、セルロースに含まれる水酸基に多価カルボン酸をエステル結合させてカルボキシル基を導入することによってセルロース誘導体粒子の親水性が高められ、化粧料に配合した際に、皮膚にしっとり感を与えることが記載されている。しかし、多価カルボン酸エステルを導入することによってセルロース誘導体粒子の親水性が高められるために、油性成分との相溶性は低下するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−274245号公報
【特許文献2】特開2008−222604号公報
【特許文献3】特開2003−252903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ファンデーションなどのメークアップ化粧料は、一日の大半を皮膚に付けたままで過ごすため、皮膚への負担が大きい一方で、これらメークアップ化粧料には、特別な手間をかけずに手軽に皮膚に対する保護修復効果を期待できるアイテムとしての側面もある。近年使用者の社会的行動範囲が拡大し、それに伴い、多様なライフスタイルを持つ人が多くなってきており、メークアップ化粧料の保護修復的役割に大きな期待が持たれるようになってきた。
【0008】
また、従来、種々の美白用化粧料が提案されている。特にアルブチンなどの色素細胞中のチロシナーゼなどに作用してメラニン産生を阻害するものが、高い美白効果を奏するものとして知られている。しかし、これまで、これらの薬剤は、ビタミンC及びその類縁体のように服用するか、溶液または乳液に溶解させて肌に直接塗布して浸透させる方法が採られている。メークアップ化粧料などの化粧料にも美白的役割をもたせることができれば、より手軽に美白効果を期待できる。
【0009】
このような状況の中で、皮膚に対して保護修復効果を与えるという機能に加え、油性成分との混練が容易であり、さらにメラニン産生阻害という美白効果に繋がる機能を有する化粧料の提供が望まれている。特にメークアップ系の化粧料配合剤としてメークアップを施しながら皮膚の状態を改善(保湿、美白)するという様な材料は前例が無く、そのような材料への期待は大きい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロース又はその誘導体の水酸基にモノカルボン酸由来のアシル基を導入することによって、セルロース誘導体の親油性を向上させることに成功した。さらに、該セルロース誘導体にアシル基に加えて硫酸基を導入することにより、ヒアルロニダーゼ活性阻害能などの皮膚に対する保護修復効果を付与できることを見出した。特にパルミチン酸などのメラニン産生抑制能を有する脂肪酸由来のアシル基と硫酸基とを組み合わせることにより、更に美白効果を付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のセルロース誘導体又はその塩及びその製造方法、該セルロース誘導体又はその塩を有効成分として含むヒアルロニダーゼ活性阻害剤及びメラニン産生抑制剤ならびに化粧料組成物等を提供するものである。
【0012】
[1]セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部がモノカルボン酸由来のアシル基で修飾されてなるO−アシル化部位を含むセルロース誘導体又はその塩。
[2]セルロースに含まれる残りの水酸基の少なくとも一部が硫酸基で修飾されてなるO−硫酸化部位を含む、[1]記載のセルロース誘導体又はその塩。
[3]前記モノカルボン酸が炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸である、[1]又は[2]記載のセルロース誘導体又はその塩。
[4]前記モノカルボン酸がカプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸及びリノール酸からなる群から選ばれた脂肪酸由来のアシル基である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[5]前記モノカルボン酸がパルミチン酸である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[6]前記モノカルボン酸が桂皮酸又はその誘導体である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[7]前記セルロース誘導体又はその塩のぬれ指数が、30mN/m〜40mN/mである、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[8]前記セルロース誘導体又はその塩の硫黄含量が、0.001〜10重量%である、[2]〜[7]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[9]前記セルロース誘導体又はその塩が、平均粒子径0.01〜45μmを有する粒子である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[10]前記セルロース誘導体又はその塩が、真球度0.5〜1.0を有する球状粒子である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[11]前記セルロース誘導体又はその塩が、真球度0.8〜1.0を有する球状粒子である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
[12]セルロースをモノカルボン酸由来のアシル化剤と反応させる工程を含む、[1]〜[11]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩の製造方法。
[13]セルロースをモノカルボン酸由来のアシル化剤と反応させる工程と、前記工程で得られた反応生成物を硫酸化剤と反応させる工程とを含む、[2]〜[11]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩の製造方法。
[14][1]〜[11]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩を有効成分として含むヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
[15][1]〜[11]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩を有効成分として含むメラニン産生抑制剤。
[16][1]〜[11]のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩と化粧料として許容される添加剤とを含む化粧料組成物。
[17]前記セルロース誘導体又はその塩の含有量が、組成物全体の0.01〜50重量%である、[16]記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、油性成分との相溶性が改善されたセルロース誘導体又はその塩が提供される。本発明の好ましい態様によれば、皮膚に対して保護修復効果を与えることができ、且つ、油性成分との混練が容易なセルロース誘導体又はその塩が提供される。本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体又はその塩に、さらにメラニン産生阻害という美白効果に繋がる機能を付与することもできる。
本発明によれば、該セルロース誘導体又はその塩を含む化粧料組成物が提供される。
また、本発明の好ましい態様によれば、該セルロース誘導体又はその塩を有効成分として含むヒアルロニダーゼ活性阻害剤又はメラニン産生抑制剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1、5、7及び10で得たセルロース誘導体の各濃度におけるイオン交換水懸濁液のヒアルロニダーゼ活性阻害率と、比較例1で得た「セルフローC−25」の各濃度におけるイオン交換水懸濁液のヒアルロニダーゼ活性阻害率とをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のセルロース誘導体又はその塩及びその製造方法、該セルロース誘導体又はその塩を有効成分として含むヒアルロニダーゼ活性阻害剤及びメラニン産生抑制剤ならびに化粧料組成物について詳細に説明する。
【0016】
A.セルロース誘導体又はその塩
本発明のセルロース誘導体又はその塩(以下、これらを総称して「セルロース誘導体」ということがある。)は、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部がモノカルボン酸由来のアシル基で修飾されてなるO−アシル化部位を含む。
【0017】
本発明のセルロース誘導体に含まれる「O−アシル化部位」とは、セルロースに含まれる水酸基の水素原子がモノカルボン酸由来のアシル基で置換されてアシル化された部位をいう。モノカルボン酸由来のアシル基は、本発明の目的及び効果を損なわないものであれば特に制限されないが、炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸由来のアシル基が好ましい。炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸由来のアシル基をセルロース誘導体に導入することによって、セルロース誘導体の親油性が高められ、油性成分との混練が容易になる。
脂肪酸は、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸及びリノール酸などが好ましく挙げられる。これらの中でも、特にパルミチン酸、パルミトレイン酸及びリノール酸が好ましい。本発明の好ましい態様によれば、硫酸基と組み合わせてこれらの脂肪酸由来のアシル基をセルロースに導入することによって、セルロース誘導体に、メラニン産生を抑制する機能などの美白効果に繋がる機能を付与することができる。
【0018】
また、モノカルボン酸由来のアシル基として、桂皮酸又はその誘導体由来のアシル基を用いることもできる。桂皮酸又はその誘導体としては、例えば、桂皮酸又は下記式で示される桂皮酸誘導体が好ましく挙げられる。
【化1】


[式中、Rは、複数ある場合それぞれ独立して、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20アシルオキシ基、水酸基、ハロゲン(F,Cl,Br,I)を示し、nは、0〜5の整数を示す。]
【0019】
ここで、「C〜C20アルキル基」は、C〜C10アルキル基であることが好ましく、C〜Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
「C〜C20アルコキシ基」は、C〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C〜Cアルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
「C〜C20アシルオキシ基」は、C〜C10アルキルカルボニルオキシ、C〜C12アリールカルボニルオキシ、モノ−C〜Cアルキルフェニルカルボニルオキシ、ジ−C〜Cアルキルフェニルカルボニルオキシ、フェニル−C〜Cアルキルカルボニルオキシであることが好ましく、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、イソバレリルオキシ、ベンゾイルオキシ、メチルベンゾイルオキシ、ジメチルベンゾイルオキシ、メチルエチルベンゾイルオキシ、ジエチルベンゾイルオキシ、ベンジルカルボニルオキシであることが更に好ましい。
【0020】
桂皮酸誘導体としては、例えば、メチル桂皮酸、エチル桂皮酸、プロピル桂皮酸、メトキシ桂皮酸、エトキシ桂皮酸、プロピルオキシ桂皮酸、3,4−ジヒドロキシ桂皮酸、3,4−ジメトキシ桂皮酸、4−アセトキシ−2−メトキシ桂皮酸などが好ましく挙げられる。特に4−アセトキシ−2−メトキシ桂皮酸が好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、硫酸基と組み合わせてこれらの桂皮酸又はその誘導体由来のアシル基をセルロースに導入することによって、セルロース誘導体に、メラニン産生を抑制する機能などの美白効果に繋がる機能を付与することができる。
【0021】
本発明のセルロース誘導体において、O−アシル化部位の導入量(エステル化率)は、特に制限されなく、セルロースに含まれる水酸基の一部のみがアシル化されていてもよいし、全部がアシル化されていてもよい。本発明のセルロース誘導体に他の官能基を導入可能にするため、水酸基の一部がアシル化されていることが好ましい。
O−アシル化部位の導入量が増加するにつれて、セルロース誘導体の疎水性(ぬれ指数)が向上することから、O−アシル化部位の導入量の好ましい範囲を、ぬれ指数を目安に規定してもよい。例えば、本発明のセルロース誘導体のぬれ指数は、42mN/m以下が好ましく、40mN/m以下がより好ましく、35mN/m以下がさらに好ましい。なお、本明細書において「ぬれ指数」は、実施例に記載した試験例3の「疎水性評価試験」に従って測定することができる。
【0022】
本発明の一実施態様では、本発明のセルロース誘導体は、セルロースに含まれる水酸基の一部がモノカルボン酸由来のアシル基で修飾されてなるO−アシル化部位に加えて、セルロースに含まれる残りの水酸基の少なくとも一部が、硫酸基で修飾されてなるO−硫酸化部位を含むことが好ましい。
【0023】
本発明のセルロース誘導体に含まれる「O−硫酸化部位」とは、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が硫酸基で置換されて硫酸化された部位をいう。ここで「硫酸基」には、「−SOH」と「−SO」のいずれの基も含まれる。該硫酸基は、無機塩基、有機塩基、塩基性アミノ酸などのアルカリと塩を形成してもよい。なお、本明細書において「セルロース誘導体の塩」とは、セルロース誘導体に導入された硫酸基が塩を形成しているものをいう。
硫酸基の塩は、生理学的に許容されるものであれば特に制限されない。例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、トリエチルアミン塩、アルギニン塩、リジン塩及びヒスチジン塩などが挙げられる。中でも、ナトリウム塩が好ましい。なお、分子内に硫酸基が複数含まれる場合、これらは異なる種類の塩を形成してもよい。
【0024】
本発明のセルロース誘導体は、分子内にO−硫酸化部位を含むことにより、ヒアルロニダーゼ活性阻害能を有することができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体の分子内にO−硫酸化部位が含まれていることにより、皮膚の弾力性や潤い、みずみずしさを保つ働きを有するヒアルロン酸の分解を抑制して、皮膚を保護修復することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体は、分子内にO−アシル化部位に加えてO−硫酸化部位を含むことによりメラニン産生抑制能を奏することができる。
【0025】
本発明のセルロース誘導体において、O−硫酸化部位の導入量は、硫黄含量で定義することができる。本発明のセルロース誘導体における硫黄含量は、特に制限されるものではないが、0.001〜10重量%が好ましく、0.01〜1重量%がより好ましく、0.1〜0.3重量%がさらに好ましい。本発明のセルロース誘導体を球状の形態にする場合、硫黄含量が0.5重量%を超えると、球状形態を保ち難くなることがある。その場合は、原料であるセルロース粒子を架橋することによって、球状形態を保ちつつ硫黄含量を上げることができる。なお、本明細書において硫黄含量は、「誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma)法」による元素分析により測定することができる。
【0026】
本発明のセルロース誘導体は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、O−硫酸化部位又はO−アシル化部位以外の修飾部位を有していてもよい。そのような修飾部位としては、O−アルカリ金属部位(例えば、Li、Na、K、Caなど)、O−グリセロール部位、O−ヒドロキシアルキルル部位(ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど)などが挙げられる。
【0027】
本発明のセルロース誘導体の形状は特に制限されないが、粒子であることが好ましい。粒子であると、組成物中のセルロース誘導体の分散性が良好になる上、皮膚との接触面積が大きくなるためにより効果的に機能を発揮できるといった利点がある。
【0028】
セルロース誘導体が粒子である場合、粒子の形状は特に制限されなく、球状、扁平形、不定形のものが含まれる。
【0029】
粒子の平均粒子径は、セルロース誘導体を配合する製品の形態又は用途等に応じて適宜決定すればよい。例えば、本発明のセルロース誘導体をメークアップ化粧料に用いる場合、平均粒子径は0.01〜45μmが好ましく、1〜45μmがより好ましく、1〜20μmがさらに好ましい。平均粒子径が上記の範囲内であると、のびと肌触りの滑らかさが良好なものとなる。また、皮膚への付着性が良好であり、透明感に優れたものとなる。なお、メークアップ化粧料に用いる場合には、皮膚に付けた際に肌のザラツキ感がないようにするため、セルロース誘導体の粒子径は揃っていることが好ましく、最大粒子径は50μm以下であることが好ましい。
また、スキンケア化粧料又は皮膚洗浄料に用いる場合には、平均粒子径は0.01〜350μmであることが好ましく、より好ましくは1〜300μmである。平均粒子径が上記の範囲内であると、肌触りが良好なものとなる。なお、スキンケア化粧料又は皮膚洗浄料に用いる場合も、セルロース誘導体の粒子径は揃っていることが好ましく、最大粒子径は400μm以下であることが好ましい。
セルロース誘導体粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。粒子が扁平形または不定形の場合、平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した結果を用いて、下記式から算出することができる。
【数1】

[式中、Jは、粒子径分割番号であり、q(J)は、頻度分布(%)であり、X(J)はJ番目の粒子径範囲の代表径(μm)である。]
【0030】
中でも、本発明のセルロース誘導体が球状粒子であると、化粧料組成物に配合した際にのびや肌触りが特に優れているので好ましい。なお、本明細書において「球状」というときは、真球状から略球状までの形態を含む。
本発明のセルロース誘導体が球状粒子である場合、真球度(短径/長径)は0.5〜1.0が好ましく、0.8〜1.0がより好ましく、0.9〜1.0がさらに好ましい。特に真球度が0.8以上のセルロース誘導体は、のびや肌触りが特に優れているため、ファンデーション、コンシーラ、エッセンス、化粧水、保湿クリームなどのメークアップ化粧料に好適に用いることができる。
セルロース誘導体粒子の真球度は、乾燥した粒子を光学顕微鏡によって観察し、短径/長径を測定することによって求めることができる。
【0031】
B.セルロース誘導体の製造方法
本発明のセルロース誘導体は、セルロースをモノカルボン酸由来のアシル化剤と反応させ、さらに必要に応じて、得られた反応生成物を硫酸化剤と反応させることによって製造することができる。以下、各工程について説明する。
【0032】
(1)アシル化工程
まず、セルロースをモノカルボン酸由来のアシル化剤と反応させる工程について説明する。
本発明のセルロース誘導体の原料として用いられるセルロース(以下「原料セルロース」という。セルロースにO−アルカリ金属部位(例えば、Li、Na、K、Caなど)、O−グリセロール部位、O−ヒドロキシアルキルル部位(ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなどの修飾が施されたものも含む。)は、架橋又は非架橋のセルロースを用いることができるが、粒子の形状を維持しつつ硫黄含量を高めることができることから、強度の点で優れている架橋セルロースを用いることが好ましい。
【0033】
原料セルロースの形状は特に制限されないが、例えば球状のセルロース誘導体を製造する場合は、原料であるセルロースも球状のものを使用することが好ましい。その場合、球状セルロースの真球度は0.5〜1.0が好ましく、0.8〜1.0がより好ましく、0.9〜1.0がさらに好ましい。
【0034】
球状セルロースは、原料セルロースを溶解し、再生することにより製造することができる。球状セルロースは、例えば、特公昭55−39565号公報、特公昭55−40618号公報などに記載されている酢酸エステルを経由する方法、特公昭63−62252号公報などに記載されるチオシアン酸カルシウム塩を用いた溶液から造粒する方法、特開昭59−38203号公報などに記載されるパラホルムアルデヒド・ジメチルスルホキシド溶液から製造する方法、あるいは、原料セルロースを塩化リチウム含有アミドに溶解させたセルロース溶液から成形する日本国特許第3663666号公報に記載された方法などを用いて製造することができる。
【0035】
本発明に用いられる球状セルロースは非架橋のものであっても、架橋したものであってもよい。架橋球状セルロースは、例えば、非架橋の球状セルロースを、常法に従い、架橋剤を用いて架橋処理することにより得ることができる。架橋剤としては、例えばエピクロロヒドリンなどの多官能エポキシ化合物などを用いることができる。
【0036】
本発明に用いられる球状セルロースの平均粒子径は、特に制限されるものではないが、所望の平均粒子径を有するセルロース誘導体を生成するためには、45μm以下であることが好ましく、より好ましくは1〜45μm、さらに好ましくは1〜20μmである。
【0037】
球状セルロースとしては市販品を用いることもできる。例えば、「セルフロー C−25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径8〜12μm)及び「セルフロー TA−25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径4〜12μm)などを使用することができる。
【0038】
原料セルロースは、通常、原料セルロースの重量の約2〜3重量%の水分を含んでいる。水分が存在する状態でアシル化反応を行った場合、この水分により、化学反応が効率よく進まないことがある。このため、反応を行う前に原料セルロースを脱水し、あらかじめ水分をできるだけ除去しておくことが好ましい。
【0039】
脱水処理の方法は、特に制限されないが、原料セルロースの形状を損なわないものが好ましい。例えば、加熱乾燥などが挙げられる。なお、加熱乾燥は、真空条件下で行ってもよい。
【0040】
加熱乾燥によって脱水処理を行う場合、原料セルロース中の水分が1重量%以下になるまで行うことが好ましい。それによって、次のアシル化反応を効率よく行うことができる。このとき加熱温度は80±20℃が好ましい。
【0041】
次に、原料セルロースをモノカルボン酸由来のアシル化剤と反応させて原料セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部をアシル化する。アシル化剤は、通常、水酸基のアシル化に用いられるものであれば特に制限されない。アシル化剤としては、例えば、モノカルボン酸ハロゲン化物、モノカルボン酸無水物、モノカルボン酸由来のシリルエステルなどが用いられる。
アシル化剤の使用量は、例えば、原料セルロースの重量をグルコース(単位構造物質)相当の分子量で割った値を原料セルロースのモル数として、原料セルロースに対してモル比で0.05〜1倍が好ましく、0.05〜0.5倍がより好ましく、0.05〜0.1倍がさらに好ましい。
【0042】
例えば、脱水処理した原料セルロースを、塩基の存在下、カルボン酸塩化物と反応させる方法が挙げられる。反応温度は、特に制限されないが、室温(25±5℃)〜160℃が好ましく、室温〜100℃がより好ましく、30〜50℃がさらに好ましい。また、反応時間は、特に制限されないが、1〜10時間が好ましく、2〜6時間がより好ましく、2〜4時間がさらに好ましい。反応を均一に行うため、原料セルロース及び塩基を含む反応容器にカルボン酸塩化物を徐々に滴下することが好ましい。
【0043】
カルボン酸塩化物は、常法に従い、例えばカルボン酸を等量の塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン等と反応させることによって得ることができる。塩基は、特に制限されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、ピリジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ−7−エン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)などの有機塩類が好ましく用いられる。
塩基の使用量は、モノカルボン酸由来のアシル化剤に対してモル比で1〜3倍が好ましい。
【0044】
これらの塩基のうち、N,N−ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、ピリジンは溶媒の代わりになるが、これ以外の塩基を用いる場合は、例えば、トルエン又はキシレンなどの芳香族系溶媒の存在下で反応を行うことが好ましい。
【0045】
このようにして原料セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部をアシル化することができる。本発明のセルロース誘導体において、アシル化の割合は、原料セルロースに含まれる水酸基に対するカルボン酸の仕込み量で調整することができる。
【0046】
(2)硫酸化工程
次に、原料セルロースに含まれる残りの水酸基の少なくとも一部を硫酸化剤と反応させて硫酸化する工程について説明する。
本工程に用いられる硫酸化剤としては、原料セルロースに含まれる水酸基を硫酸化できるものであれば特に制限されない。硫酸化剤としては、例えば、無水硫酸、又はN,N−ジメチルホルムアミドと無水硫酸との混合物(N,N−ジメチルホルムアミドと無水硫酸とによって形成される複合体ないし錯体を含む)が好ましく用いられる。
【0047】
硫酸化剤として、N,N−ジメチルホルムアミドと無水硫酸との混合物を使用する場合、混合物中の無水硫酸の濃度は1〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、約18重量%がさらに好ましい。
【0048】
硫酸化剤の使用量は、原料セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部を硫酸化することができる範囲内であれば特に制限されなく、当業者であればその範囲を適宜決定することができる。例えば、原料セルロース(前記アシル化工程でアシル化されたセルロース誘導体を含む)の重量をグルコース(単位構造物質)相当の分子量で割った値を原料セルロースのモル数として、原料セルロースに対してモル比で0.01〜5倍、より好ましくは0.1〜1倍の無水硫酸を含むように、硫酸化剤の使用量を調整することが好ましい。本発明のセルロース誘導体において、硫酸化の割合は、原料セルロースに対する硫酸化剤の仕込み量で調整することができる。
【0049】
硫酸化反応は溶媒の存在下で行うことが好ましい。使用できる溶媒は、原料セルロース及び硫酸化剤に対して不活性なものであれば特に制限されない。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ピリジン等の複素環系溶媒、トリエチルアミン等の3級アミン系溶媒などが好ましく挙げられる。溶媒の使用量は、反応条件によって適宜調整すればよいが、原料セルロースの重量の1〜100倍量が好ましく、1〜10倍量がより好ましい。
【0050】
硫酸化反応は、原料セルロースを溶媒に懸濁後、硫酸化剤を滴下して行う。反応を均一に行うため、反応は攪拌しながら行うことが好ましい。反応温度は、特に低温である必要はなく、0〜70℃であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃、さらに好ましくは30〜50℃である。反応時間は、硫酸エステル化反応が十分に進行する範囲であれば特に限定されないが、目安としては、通常1〜10時間程度であり、好ましくは2〜6時間、より好ましくは2〜4時間である。
【0051】
反応終了後、反応生成物を濾過分離などによって回収し、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒を用いて洗浄することによって、目的のセルロース誘導体を得ることができる。
【0052】
得られたセルロース誘導体はそのまま用いることもできるが、無機塩基、有機塩基、塩基性アミノ酸などのアルカリで中和処理して用いることが好ましい。中和処理を行うことによってセルロース誘導体に導入された硫酸基が塩を形成し、それによって硫酸基によるセルロース誘導体の分解を抑えることができる。
【0053】
例えば、無機塩基で中和処理して得られるセルロース誘導体の塩としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩などが挙げられる。有機塩基で中和処理して得られるセルロース誘導体の塩としては、トリエチルアミン塩などが挙げられる。また、塩基性アミノ酸で中和処理して得られるセルロース誘導体の塩としては、アルギニン塩、リジン塩又はヒスチジン塩などが挙げられる。中でも、ナトリウム塩は製造が容易であり、比較的安価であることから好適である。
【0054】
中和処理後は、イオン交換水などを用いて生成物を洗浄し、目的のセルロース誘導体を塩の形態で得ることができる。なお、本発明のセルロース誘導体の塩には、無水物及び水和物のいずれもが含まれる。
【0055】
なお、本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体は、乾燥させた粉体として用いられるが、保水性が高いため、完全に水分を除去できない場合や完全に除去しても空気中の水分を吸収する場合がある。このため、本発明のセルロース誘導体は、乾燥させた場合でもセルロース誘導体の重量の約2〜15重量%の水分を含むことがあるが、そのような場合でも本発明のセルロース誘導体は化粧料組成物に好適に配合される。
【0056】
C.ヒアルロニダーゼ活性阻害剤
本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体はヒアルロニダーゼ活性阻害能を有することができるため、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤の有効成分として好ましく用いられる。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤の形態は特に制限されなく、液状でも、固形状でもよい。また、化粧料や皮膚外用剤等に使用される各種溶媒(例えば多価アルコール)に分散させた分散液の形態でもよい。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤に含まれるセルロース誘導体の硫黄含量は0.1〜10重量%が好ましく、0.15〜0.3重量%がより好ましい。また、親油性を十分に有し、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果を十分に発揮できるアシル基の導入量は、本発明のセルロース誘導体のぬれ指数を目安として、42mN/m以下が好ましく、40mN/m以下がより好ましく、40mN/m〜30mN/mがさらに好ましい。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤における本発明のセルロース誘導体の含有量は、使用形態等によって適宜調整すればよい。
【0057】
D.メラニン産生抑制剤
本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体はメラニン産生抑制能を有することができるため、メラニン産生抑制剤の有効成分として好ましく用いられる。
本発明のメラニン産生抑制剤の形態は特に制限されなく、液体状でも、固形状でもよい。また、化粧料や皮膚外用剤等に使用される各種溶媒(例えば多価アルコール)に溶解させた溶液状でもよい。
本発明のメラニン産生抑制剤に含まれるセルロース誘導体のO−アシル化部位は、セルロースに含まれる水酸基が炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸由来のアシル基で置換されてなるものが好ましい。特に該水酸基がパルミチン酸由来のアシル基で置換されてなるものが好ましい。
本発明のメラニン産生抑制剤における本発明のセルロース誘導体の含有量は、使用形態等によって適宜調整すればよい。
親油性を十分に有し、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果を十分に発揮できるアシル基の導入量は、本発明のセルロース誘導体のぬれ指数を目安として、42mN/m以下が好ましく、40mN/m以下がより好ましく、40mN/m〜30mN/mがさらに好ましい。
【0058】
E.化粧料組成物
次に、本発明の化粧料組成物について説明する。
本発明の化粧料組成物は、本発明のセルロース誘導体と化粧料として許容される添加剤とを含む。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体はヒアルロニダーゼ活性阻害能を有しているため、本発明の化粧料組成物は、皮膚に対して保護修復効果を奏することができる。特に、本発明のセルロース誘導体として球状の形態を有する粒子を用いることによって、皮膚に負担をかけることなく、本発明のセルロース誘導体を皮膚に適用することができるので、より効果的に皮膚を乾燥や肌荒れから防ぐことができる。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体はメラニン産生抑制能という美白効果に繋がる機能を有しているため、本発明の化粧料組成物は美白用化粧料として用いることができる。
【0060】
本発明のセルロース誘導体は油性成分との相溶性が良好であり、油性化粧料にも分散させやすいことから、リキッドファンデーションなどの油性化粧料にも任意の組成比で混成させることができる。したがって、本発明のセルロース誘導体を含む化粧料組成物は、スキンケア化粧料としてはもちろんのこと、メークアップ化粧料、皮膚洗浄剤など、種々の製品形態の化粧料組成物として好適に用いられる。
【0061】
本発明の化粧料組成物において、本発明のセルロース誘導体の含有量は特に制限されない。本発明のセルロース誘導体の含有量は、求める皮膚に対する保護修復効果、更には美白効果を発揮しうる濃度領域と製品の原材料費とのバランス、更には製品の目的などを考慮して決定すればよい。
【0062】
例えば、本発明のセルロース誘導体の含有量は、本発明の化粧料組成物の全重量に対し、0.0001〜99重量%が好ましく、0.001〜80重量%がより好ましく、0.001〜70重量%がさらに好ましく、0.01〜50重量%が特に好ましい。特に、液状ファンデーションに使用する場合、本発明のセルロース誘導体の含有量は0.001〜10重量%が好ましい。固形ファンデーションに使用する場合、0.001〜50重量%が好ましい。
【0063】
本発明の化粧料組成物は、本発明のセルロース誘導体に加え、化粧料として許容される添加剤を含む。本発明の化粧料組成物に用いられる添加剤としては、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲であれば特に制限されない。
【0064】
化粧料として許容される添加剤としては、例えば、顔料、色素沈着抑制剤、チロシナーゼ活性阻害剤、メラノサイトメラニン生成抑制剤、保湿剤、細胞賦活剤/代謝活性化剤、抗酸化剤、活性酸素消去剤/ラジカル生成抑制剤、脂肪代謝促進剤、紫外線防御剤/紫外線吸収促進剤、収斂剤、抗炎症剤/インターロイキン産生抑制剤/消炎剤、抗脂漏剤、抗菌剤/抗ウイルス剤、血流促進剤/血管刺激剤、抗アンドロゲン剤、構造タンパク質分解酵素(エラスターゼ、コラゲナーゼ、ケラチンプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、インテグリン分解酵素、インボルクリン分解酵素、フィラグリン分解酵素、ラミニン分解酵素、フィブロネクチン分解酵素、プロテオグリカン分解酵素等)活性阻害剤、構造タンパク質合成促進剤、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)分解酵素阻害剤、ムコ多糖類合成促進剤、細胞間脂質生成促進剤/細胞間脂質状態改善剤、角質溶解剤/角層剥離促進剤、プラスミノーゲンアクチベーター拮抗阻害剤、メイラード反応阻害剤、テストステロン5αレダクターゼ活性阻害剤/毛乳頭活性化剤/発毛促進剤、毛母細胞増殖抑制剤/発毛抑制剤、毛髪膨潤剤/毛髪保護剤及び有臭物質消去剤等の有効成分を使用することができる。
【0065】
また、化粧料組成物を形成する上で使用が好まれる植物系原料、動物系原料、微生物系原料、その他天然物原料等を由来とするエキス又は代謝物等の成分、その他の種々の化合物を添加剤として任意に選択し、併用することができる。化粧料として許容される添加剤としては、例えば、特開2005−350454号公報に記載された化合物などを例示することもできる。
【0066】
本発明の化粧料組成物におけるこれらの添加剤の含有量は、用途や目的に応じて適宜選択されるものであり、特に制限されるものではない。添加剤の含有量は、例えば、本発明の化粧料組成物の全重量に対し、通常0.0001〜50重量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.01〜50重量%である。
【0067】
本発明の化粧料組成物の形状は、微粉末状、微細結晶状、液状、ペレット状などいずれを採用することもできる。形状は製品形態に合わせて適宜選択することができる。例えば、任意の添加剤として、賦形剤、増粘剤、ゲル化剤等を混合して、顆粒状、ゲル状又は粘液状に調製することも可能である。ここで、賦形剤、増粘剤、ゲル化剤としては、化粧料組成物に一般に用いられる化合物を目的に応じて適宜選択して使用することができる。
【0068】
本発明の化粧料組成物は、本発明のセルロース誘導体及び化粧料として許容される添加剤を、用途に応じた割合で計量し、混合することによって製造することができる。製造装置及び製造条件は、目的とする化粧料組成物の性状及び用途に応じて公知の製造装置及び製造条件を採用すればよい。
【0069】
本発明の化粧料組成物は、種々の製品形態で用いることができる。中でも、スキンケア化粧料、メークアップ化粧料及び皮膚洗浄剤として好適に用いられる。本発明の化粧料組成物をスキンケア化粧料として用いることにより、皮膚に対して保湿効果を付与し、さらに抗炎症作用又は組織再生の作用を奏しうるので、皮膚に高い保護修復効果を与えることができる。また、本発明のセルロース誘導体はのびや肌触りが滑らかであるので、つけ心地がよいので、本発明のセルロース誘導体を含む本発明の化粧料組成物は、ファンデーションやおしろいなどのメークアップ化粧料として好適に使用できる。メークアップ化粧料は、一日の大半を皮膚に付けたまま過ごすため皮膚への負担が大きいが、本発明の化粧料組成物は皮膚に対して保護修復効果を与えることができるので、皮膚の負担を軽減することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、本発明の化粧料組成物は美白効果を奏することもできるので、美白用化粧料としても好ましく用いられる。また、本発明の化粧料組成物を皮膚洗浄剤に用いることにより、皮膚洗浄時の肌へのダメージを最小限に抑えることができるといった利点も有する。
【0070】
スキンケア化粧料としては、例えば、化粧水、美容液、美白化粧水、乳液、美白乳液、クリーム、美白クリーム、軟膏、美白軟膏、ローション、美白ローション、オイル又はパックなどが好ましく挙げられる。
メークアップ化粧料としては、例えば、固形ファンデーション、液状ファンデーション、口紅、リップグロス、アイシャドウ、白粉、頬紅、アイライナー、マスカラ又は眉墨などが好ましく挙げられる。
皮膚洗浄剤としては、例えば、石鹸、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングミルク、洗顔料又はボディーシャンプーなどが好ましく挙げられる。
【0071】
これら各化粧料の組成は、本発明の化粧料配合剤を含むものであれば特に限定されるものではなく、各化粧料の組成として公知の組成を用いることができる。例えば、「香粧品化学−理論と実際−第4版」(廣田博、田村健夫、フレグランスジャーナル社)、「化粧品ハンドブック」(関根茂ら、日光ケミカルズ株式会社他)、特開2005−200407号公報、特開平1−143816号公報、特開2000−191442号公報、特開2005−314393号公報、特開2000−319629号公報、特開2003−160465号公報、特開2005−232049号公報等を参照することができる。
【0072】
本発明のセルロース誘導体は親油性が高められているため油性化粧料に対して任意の割合で配合することができる。このため本発明のセルロース誘導体を含む本発明の化粧料組成物は高い効果を奏することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]球状セルロースカプリン酸エステル
出発原料として、球状セルロースである「セルフロー C-25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径8〜12μm)を使用した。ゲル中の水分を除去するため、2000mLのセパラブルフラスコに「セルフロー C-25」を含水重量で103.68g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.39重量%であり、重量は100.15gであった。
上記ゲルの入った2000mLのセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド600mLを投入し、室温にて30分間攪拌した後、カプリン酸クロリド11.78gを徐々に滴下した。
滴下終了後、ウォータバスにて内温を80℃まで昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をアセトンにて洗浄した。その後、ろ過物を80℃で一昼夜加熱真空乾燥させて球状セルロースカプリン酸エステル103.97gを得た。
【0075】
[実施例2]球状セルロースオレイン酸エステル
出発原料として、実施例1で用いた「セルフロー C-25」を用いた。ゲル中の水分を除去するため、2000mLのセパラブルフラスコに「セルフロー C-25」を含水重量で104.2g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.10重量%であり、重量は100.0gであった。
上記ゲルの入った2000mLのセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド600mLを投入し、室温にて30分間攪拌した後、オレイン酸クロリド9.25gを徐々に滴下した。
滴下終了後、ウォータバスにて内温を80℃まで昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をアセトンにて洗浄した。その後、ろ過物を80℃で一昼夜加熱真空乾燥させて球状セルロースオレイン酸エステル100.86gを得た。
【0076】
[実施例3]球状セルロースミリスチン酸エステル
出発原料として、実施例1で用いた「セルフロー C-25」を用いた。ゲル中の水分を除去するため、500mLのセパラブルフラスコに「セルフロー C-25」を含水重量で103.66g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.1重量%であり、重量は98.71gであった。
上記ゲルの入った2000mLセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド600mlを投入し、室温にて30分間攪拌した後、ミリスチン酸クロリド7.52gを徐々に滴下した。
滴下終了後、ウォータバスにて内温を80℃まで昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をアセトンにて洗浄した。その後、ろ過物を80℃で加熱真空乾燥させて球状セルロースミリスチン酸エステル100.58gを得た。
【0077】
[実施例4]球状セルロースウンデシレン酸エステル
出発原料として、実施例1で用いた「セルフロー C-25」を用いた。ゲル中の水分を除去するため、500mLのセパラブルフラスコに「セルフロー C-25」を含水重量で26.25g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.64重量%であり、重量は25.00gであった。この前処理したゲルを疎水化に使用した。
前処理ゲルの入った500mLのセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド150mLを投入し、室温にて30分間攪拌した後、トリメチルシリル化ウンデシレン酸19.75gを徐々に滴下した。
滴下終了後、ウォータバスにて内温を80℃まで昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、反応終了液をろ過分別し、ろ過物をアセトンにて洗浄した。その後、ろ過物を80℃で加熱真空乾燥させて球状セルロースウンデシレン酸エステル25.34gを得た。
【0078】
[実施例5]球状セルロースパルミチン酸エステル
出発原料として、実施例1で用いた「セルフロー C-25」を用いた。ゲル中の水分を除去するため、2000mLのセパラブルフラスコに「セルフロー C-25」を含水重量で103.0g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.79重量%であり、重量は99.29gであった。
上記ゲルの入った2000mLのセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド600mLを投入し、室温にて30分間攪拌した後、パルミチン酸クロリド8.25gを徐々に滴下した。
滴下終了後、ウォータバスにて内温を80℃まで昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をアセトンにて洗浄した。その後、ろ過物を80℃で加熱真空乾燥させて球状セルロースパルミチン酸エステル94.61gを得た。
【0079】
[実施例6]球状セルロースリノール酸エステル
出発原料として、実施例1で用いた「セルフロー C-25」を用いた。ゲル中の水分を除去するため、500mLのセパラブルフラスコに「セルフロー C-25」を含水重量で10.5g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.97重量%であり、重量は10.0gであった。
上記ゲルの入った500mLのセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド60mlを投入し、室温にて30分間攪拌した後、リノール酸クロリド0.9gを徐々に滴下した。
滴下終了後、ウォータバスにて内温を80℃まで昇温し、4時間反応させた。
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をアセトンにて洗浄した。その後、ろ過物を80℃で加熱真空乾燥させて球状セルロースリノール酸エステル9.95gを得た。
【0080】
[実施例7]球状硫酸化セルロースカプリン酸エステル
実施例1で製造した球状セルロースカプリン酸エステルを出発原料として用いた。ゲル中の水分を除去するため、300mLのセパラブルフラスコに含水重量で出発原料を10.27g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.53重量%で、重量は10.23gであった。
上記ゲルの入った300mLのセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド60mlを投入し、室温にて30分間攪拌した後、18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド混合溶液12.70gを徐々に滴下した。
反応時間は4時間、反応温度は30±2℃で行った。
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をメタノールにて洗浄した。その後、ろ過物をイオン交換水中へ投入し、1M−NaOHにて中和した。その後、中和したろ過物をイオン交換水で充分に洗浄した後、球状硫酸化セルロースカプリン酸エステル9.48gを得た。
元素分析(測定値)硫黄含量:0.88重量%
【0081】
[実施例8]球状硫酸化セルロースオレイン酸エステル
実施例2で製造した球状セルロースオレイン酸エステルを出発原料として用いた。
出発原料25.0gの入った300mLセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド150mLを投入し、室温にて30分間攪拌した後、18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド混合溶液16.50gを徐々に滴下した。
反応時間は4時間、反応温度は30±2℃で行った。
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をメタノールにて洗浄した。その後、ろ過物をイオン交換水中へ投入し、1M−NaOHにて中和した。その後、中和したろ過物をイオン交換水で充分洗浄した後、球状硫酸化セルロースオレイン酸エステル22.88gを得た。
元素分析(測定値)硫黄含量:0.23重量%
【0082】
[実施例9]球状硫酸化セルロースミリスチン酸エステル
実施例3で製造した球状セルロースミリスチン酸エステルを出発原料として用いた。
出発原料25.0gの入った300mlセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド150mlを投入し、室温にて30分間攪拌した後、18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド混合溶液17.10gを徐々に滴下した。
反応時間は4時間、反応温度は30±2℃で行った。
反応終了後は、反応液をろ過分別し、ろ過物をメタノールにて洗浄した後、イオン交換水中へ投入し、1M−NaOHにて中和を行った。その後イオン交換水で充分洗浄した後、球状硫酸化セルロースミリスチン酸エステルを23.79g得た。
元素分析(測定値)硫黄含量:0.16重量%
【0083】
[実施例10]球状硫酸化セルロースパルミチン酸エステル
実施例5にて製造した球状セルロースパルミチン酸エステルを出発原料として用いた。ゲル中の水分を除去するため、500mLのセパラブルフラスコに球状セルロースパルミトレイン酸エステルを含水重量で51.13g秤量し、最終水分値が1重量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のゲル中の水分は0.88重量%であり、重量は50.43gであった。
上記ゲルの入った500mLのセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド300mLを投入し、室温にて30分間攪拌した後、18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド混合溶液62.50gを徐々に滴下した。
反応時間は4時間、反応温度は30±2℃で行った。
反応終了後は、反応液をろ過分別し、ろ過物をメタノールにて洗浄した後、イオン交換水中へ投入し、1M−NaOHにて中和を行った。その後イオン交換水で充分洗浄した後、球状硫酸化セルロースパルミチン酸エステルを41.16g得た。
元素分析(測定値)硫黄含量:0.74重量%
【0084】
[実施例11]球状硫酸化セルロースリノール酸エステル
実施例6にて製造した球状セルロースリノール酸エステルを出発原料として用いた。
出発原料5.0gの入った300mlセパラブルフラスコへN,N−ジメチルホルムアミド30mlを投入し、室温にて30分間攪拌した後、18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド錯体溶液3.4gを徐々に滴下した。
反応時間は4時間、反応温度は30±2℃で行った。
反応終了後は、反応液をろ過分別し、ろ過物をメタノールにて洗浄した後、イオン交換水中へ投入し、1M−NaOHにて中和を行った。その後イオン交換水で充分洗浄した後、球状硫酸化セルロースリノール酸エステルを4.02g得た。
元素分析(測定値)硫黄含量:0.16重量%
【0085】
[試験例1]
ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼの活性阻害試験
次に、実施例1、実施例5、実施例7及び実施例10で得たセルロース誘導体の懸濁液を用いてウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ活性阻害試験を行った。また、比較例として「セルフロー C−25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径8〜12μm)を用い、上記試験結果と比較した。なお、ここで使用した試薬は特に記載しない限り和光純薬工業(株)製のものを用いた。
【0086】
下記の6種の溶液A〜Fを調製し、試験に用いた。
溶液A:ウシ睾丸由来ヒアルロニダーゼ(シグマ社製)の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)溶液(濃度 2.83mg/mL)
溶液B:0.3mol/L塩化ナトリウム−0.1mol/L酢酸緩衝溶液(pH4.0)
溶液C:ヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製、CHA H−Type)の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)溶液(濃度 1.83mg/mL)
溶液D:0.4mol/L水酸化ナトリウム水溶液
溶液E:0.8mol/Lホウ酸ナトリウム水溶液
溶液F:パラ−ジメチルアミノベンズアルデヒド1gに、10N塩酸1.25mL及び酢酸98.75mLを添加した溶液
【0087】
(試験溶液の調製)
実施例1、実施例5、実施例7及び実施例10で得たセルロース誘導体をそれぞれN,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)に懸濁させ、各セルロース誘導体について0.5重量%、1.0重量%、3.0重量%、5.0重量%の濃度の懸濁液を調製した。
また、「セルフロー C−25」をN,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)に懸濁させ、0.5重量%、1.0重量%、3.0重量%、5.0重量%の濃度の懸濁液を調製した。
上記で調製した各濃度の懸濁液を用いて、それぞれ試験溶液を調製した。
まず、溶液A(0.025mL)に溶液B(0.2mL)を添加し、37℃で20分間保持した。これに上記懸濁液を添加し、37℃で20分間恒温槽に静置した。更に溶液C(0.2mL)を加えて37℃で20分間恒温槽に静置した。次いで溶液D(0.1mL)及び溶液E(0.1mL)を添加して3分間煮沸した後、冷却し、溶液F(3.0mL)を加え37℃で20分間恒温槽に静置し、試験溶液を調製した。この試験溶液について、ヒアルロニダーゼの分解により生成した還元端のN−アセチルヘキソサミンを指標として、対照を純水に、585nmにおける吸光度Qを測定した。
【0088】
(対照溶液1の調製)
溶液Aの代わりに0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)を用い、セルロース誘導体の代わりに純水を用いた以外は、上記の試験溶液の調製と同様にして対照溶液1を調製した。この対照溶液1につき、試験溶液の場合と同様にして、585nmにおける吸光度Qを測定した。
【0089】
(対照溶液2の調製)
セルロース誘導体の懸濁液の代わりに純水を用いた以外は、上記の試験溶液の調製と同様にして対照溶液2を調製した。この対照溶液2につき、試験溶液の場合と同様にして、585nmにおける吸光度Qを測定した。
【0090】
測定した吸光度Q、吸光度Q、吸光度Qを用い、下記の式に従って、実施例1、5、7、及び10で調製した球状セルロースカルボン酸エステル誘導体の0.5重量%、1.0重量%、3.0重量%、5.0重量%濃度のDMSO懸濁液と、比較例1で調製した球状セルロース「セルフロー C−25」の0.5重量%、1.0重量%、3.0重量%、5.0重量%濃度のDMSO懸濁液のヒアルロニダーゼ活性阻害率を求めた。
阻害率(%)={(Q−Q)−(Q−Q)}/(Q−Q
結果を図1に示す。
【0091】
図1に示されるとおり、実施例1、実施例5及び比較例1では、ヒアルロニダーゼ活性阻害能を全く示さなかったが、実施例7及び実施例10では、顕著なヒアルロニダーゼ活性阻害能を示した。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率は、セルロース誘導体の濃度に比例して増加した。実施例10では、球状硫酸化セルロースパルミチン酸エステルの濃度が0.5重量%の場合でヒアルロニダーゼ活性阻害率は100%近い阻害率を示すことがわかり、1重量%以下の低濃度でも高い効果を示すことがわかった。
【0092】
上記結果は、セルロース誘導体がO−硫酸化部位を有することによってヒアルロニダーゼ活性阻害能が付与されたことを意味する。
【0093】
[試験例2]
メラニン産生抑制試験
(被験物質)
被験物質として、実施例5、実施例10で得たセルロース誘導体及び「セルフロー C−25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径8〜12μm)を用いた。また、陽性対照としてアルブチン(ナカライテスク:Lot. M6P2152)を用いた。
各被験物質にDulbecco’s phosphate buffered saline(PBS;Invitrogen)を添加した後、20分間、卓上型超音波洗浄器(型式:W−113MKII)を用いて超音波処理した。超音波処理後、実施例5、実施例10で得たセルロース誘導体及び「セルフロー C−25」は白色懸濁液であり、アルブチンは溶解液であった。
実施例5、実施例10で得たセルロース誘導体及び「セルフロー C−25」はそれぞれ、終濃度1,000、5,000及び10,000μg/mLで、細胞と接触させた。
【0094】
(細胞及び培養液)
試験にはAmerican type culture colletion(ATCC)から市販されている「マウスメラノーマB16−F10細胞」(以下「B16−F10細胞」と略記する)を用いた。
B16−F10細胞は継代時、100u/mLペニシリン(Invitrogen)、100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)及び10%牛胎児血清(JRH)を含むDulbecco’s Modified Eagle培養液(GIBCO11054:Invitrogen)を用いて培養した。
なお、実験使用時にはメラニン産生を促進させるために、上記培養液にα−MSH(合成メラノサイト刺激ホルモン、終濃度1×10−8M:(株)ペプチド研究所)を添加して用いた。
【0095】
(細胞培養法)
1×10個/mLのB16−F10細胞を含む上記培養液20mLを培養フラスコに播種した。培養3日目又は4日目にコンフルエントになった細胞をTrypsin−EDTA(Invitrogen)を用いて剥離回収した。
回収した細胞を培養液に浮遊させ、1000rpm/分の条件で3分間遠心分離した後、細胞を、培養液(100μ/mLペニシリン(Invitrogen)、100μg/mLストレポトマイシン(Invitrogen)及び10%牛胎児血清(JRH)を含むDulbecco’s Modified Eagle培養液(GIBCO11054:Invitrogen))で1回洗浄した。洗浄した細胞に、上記培養液を添加して5×10個/mLに調製し細胞浮遊液とした。
【0096】
メラニン産生抑制試験
α−MSH(終濃度1×10−8M)を添加した培養液を用いて5×10個/mLに調製した細胞浮遊液1.35mLを24穴マイクロプレートの各wellに播種し、37℃、5%COの条件下で24時間培養した。24時間培養後、被験物質150μLを添加してさらに3日間培養した。
培養終了後、培養液全量を抜き取り、1mol/LのNaOH溶液(ナカライテスク株式会社)を200μL添加して細胞を溶解させた。この溶解液100μLを96穴マイクロプレートに移して、405nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
なお、PBSで溶解した化合物に対しては405nmにおける吸光度をそのまま用いた。懸濁状態で接触させた化合物に対しては405nmで測定した吸光度から620nmで測定した吸光度を除することにより、懸濁による吸光度への影響を取り除いた。被験物質群のメラニン産生抑制率は以下の式を用いて算出した。

メラミン産生抑制率(%)=[1−(被験物質群の吸光度/Control群の吸光度)]×100
【0097】
なお、メラニン産生抑制試験は2回実施した。結果を表1に示す。
【表1】


表1に示したとおり、実施例10で得たO−硫酸化部位及びO−アシル化部位を有するセルロース誘導体は、アルブチンの5〜10倍のメラニン産生抑制効果を有していることがわかった。
【0098】
[試験例3]
疎水性評価試験
実施例1〜11で得た各セルロース誘導体について、以下に示す方法にて疎水性の数値化を行った。
テフロン(登録商標)シート上に、青色に着色されたぬれ張力試験用混合液(関東化学株式会社)の0.5mL液滴を形成し、その液滴上にスパチュラを用いて被検物質約2mgを添加した。
添加後10秒以内に被検物質が青色に着色した場合を「ぬれた」と判断した。10秒後に液滴上に被験物質が浮いており外観上白色を呈していた場合を「ぬれなかった」と判断した。
このような実験をぬれ指数の異なるぬれ張力試験用混合液を用いて行った場合にぬれ始めたときのぬれ張力試験用混合液のぬれ指数(mN/m)をセルロース誘導体のぬれ指数(mN/m)とした。結果を表2に示す。
【表2】

【0099】
表2に示したとおり、本発明のセルロース誘導体は、セルフローと比較して疎水性が向上した。ぬれ指数は30〜40であり、セルフローの疎水性(親油性)を大きく凌駕している。
【0100】
以上示したとおり、セルロースに含まれる水酸基の一部をモノカルボン酸由来のアシル基で置換することにより、本発明のセルロース誘導体の親油性が高められた。また、該セルロース誘導体に更に硫酸基を導入することにより、得られたセルロース誘導体は低濃度でも高いヒアルロニダーゼ活性阻害能を示した。また、モノカルボン酸由来のアシル基及び硫酸基を導入することにより、得られたセルロース誘導体はメラニン産生抑制能を示した。
【0101】
以下、本発明の化粧料組成物の製造例を示す。
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のセルロース誘導体は、種々の形態のスキンケア化粧料、メークアップ化粧料及び皮膚洗浄剤として好適に用いられる。本発明の好ましい態様によれば、本発明のセルロース誘導体は、保護修復効果に加えて美白効果を奏することができるので美白用化粧料にも好適に配合される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部がモノカルボン酸由来のアシル基で修飾されてなるO−アシル化部位を含むセルロース誘導体又はその塩。
【請求項2】
セルロースに含まれる残りの水酸基の少なくとも一部が硫酸基で修飾されてなるO−硫酸化部位を含む、請求項1記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項3】
前記モノカルボン酸が炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸である、請求項1又は2記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項4】
前記モノカルボン酸がカプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸及びリノール酸からなる群から選ばれた脂肪酸由来のアシル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項5】
前記モノカルボン酸がパルミチン酸である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項6】
前記モノカルボン酸が桂皮酸又はその誘導体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項7】
前記セルロース誘導体又はその塩のぬれ指数が、30mN/m〜40mN/mである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項8】
前記セルロース誘導体又はその塩の硫黄含量が、0.001〜10重量%である、請求項2〜7のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項9】
前記セルロース誘導体又はその塩が、平均粒子径0.01〜45μmを有する粒子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項10】
前記セルロース誘導体又はその塩が、真球度0.5〜1.0を有する球状粒子である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項11】
前記セルロース誘導体又はその塩が、真球度0.8〜1.0を有する球状粒子である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩。
【請求項12】
セルロースをモノカルボン酸由来のアシル化剤と反応させる工程を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩の製造方法。
【請求項13】
セルロースをモノカルボン酸由来のアシル化剤と反応させる工程と、前記工程で得られた反応生成物を硫酸化剤と反応させる工程とを含む、請求項2〜11のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩を有効成分として含むヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩を有効成分として含むメラニン産生抑制剤。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又はその塩と化粧料として許容される添加剤とを含む化粧料組成物。
【請求項17】
前記セルロース誘導体又はその塩の含有量が、組成物全体の0.01〜50重量%である、請求項16記載の化粧料組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−21119(P2012−21119A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162070(P2010−162070)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】