説明

センサチップおよびそれを用いたアッセイ法

【課題】本発明は、高感度かつ高精度であり、イムノアッセイに必要不可欠である特異性に優れたプラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法、アッセイ用装置ならびにアッセイ用キットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のセンサチップは、透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化されたリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサのリガンドが固定化されている面側に、リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップであって、該プラズモン励起センサと該流路天板との間(流路)に光学ノイズ吸収剤からなる層が含有されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップおよびそれを用いたアッセイ法、該アッセイ用装置ならびに該アッセイ用キットに関する。さらに詳しくは、本発明は、基板と金属薄膜とリガンドとを含むプラズモン励起センサおよび流路天板を有し、その間に光学ノイズ吸収剤からなる層を含有するセンサチップ、および表面プラズモン励起増強蛍光分光法〔SPFS;Surface Plasmon−field enhanced Fluorescence Spectroscopy〕の原理に基づき該センサチップを用いたアッセイ法、該アッセイ用装置ならびに該アッセイ用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
SPFS〔表面プラズモン励起増強蛍光分光法〕において、全反射条件で増強されたプラズモン波のみが立ち、蛍光色素の励起光としてのみ働くのが好ましいが、現実的には、迷光、散乱光、プラズモン発生に伴うプラズモン散乱光などが混在する。これらはすべてプラズモン励起光と同一の波長なので、カットフィルタ等でカットしシグナルとしての蛍光と分離する。
【0003】
例えば、特許文献1には、一般的なカットフィルタが配置されたSPFS装置が開示されており、ノイズ源となる励起光や測定上不要な波長成分をカットする構造が開示されている。一方、特許文献2には、励起光と、発生する蛍光等との分離を完全に行うことを目的として、分子認識物質の作用によって発光強度が変化する発光物質を含有したSPFSセンサが開示されている。
【0004】
しかしながら、ノイズの除去率を向上すれば蛍光シグナルもカットされるため自ずと限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−204484号公報
【特許文献2】特表2001−523819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高感度かつ高精度であり、イムノアッセイに必要不可欠である特異性に優れたプラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法、アッセイ用装置ならびにアッセイ用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来のSPFS装置またはSPFSセンサで高感度化を追求すると、本来問題にならなかったレーザ光源の揺らぎから発生される励起光周辺の波長を有する光、あるいは一般的にはないと考えられているガラス材料、樹脂材料から発生する励起光周辺の波長を有する自家蛍光が問題であることが判明した。また、極微量の迷光、散乱光も微量シグナル検出の障害となるため、蛍光シグナル光以外の前記微量ノイズ光除去手段が望まれている。
【0008】
本発明者らは、このような問題を解決すべく鋭意検討した結果、基板と金属薄膜とリガンドとを含むプラズモン励起センサと流路天板との間に光学ノイズ吸収剤からなる層を配置することによって、プラズモン発生直後に一定量の光学ノイズを吸収し、光学ノイズの絶対量を低減させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のセンサチップは、透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化されたリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサのリガンドが固定化されている面側に、リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップであって、該プラズモン励起センサと該流路天板との間(流路)に光学ノイズ吸収剤からなる層が含有されることを特徴とする。
【0010】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層は、上記金属薄膜の、上記透明支持体とは接していないもう一方の表面に形成され、上記リガンドは、該光学ノイズ吸収剤からなる層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化されていること、上記流路天板の、上記プラズモン励起センサ側の一方の面に形成され、かつ該層は、リガンドに接することのないこと、または光学ノイズ吸収剤と、少なくとも該吸収剤を溶解する溶媒とを含み、上記プラズモン励起センサと上記流路天板との間(流路)を満たすことが好ましく、光学ノイズ吸収剤と高分子とを含むか、または誘電体と該誘電体の表面にシランカップリング剤を介して固定化されている光学ノイズ吸収剤とを含むことが好ましく、該光学ノイズ吸収剤は、顔料または染料であることが好ましい。
【0011】
上記金属薄膜は、金、銀、アルミニウム、銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されていることが好ましい。
また、本発明のアッセイ法(I)および(II)は、それぞれ下記工程(a)〜(d)および下記工程(e)〜(h)を含むことを特徴とする。
【0012】
工程(a):透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化された第1のリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップであって、該プラズモン励起センサと該流路天板との間(流路)に光学ノイズ吸収剤からなる層が含有されるセンサチップに、検体を接触させる工程;
工程(b):該工程(a)を経て得られたセンサチップに、さらに第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程;
工程(c):該工程(b)を経て得られたセンサチップに、該透明支持体の、該金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程;および
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程;ならびに
工程(e):透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化された第1のリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップに、検体を接触させる工程;
工程(f):該工程(e)を経て得られたセンサチップに、さらに第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程;
工程(g):光学ノイズ吸収剤と、少なくとも該吸収剤を溶解する溶媒とを含み、上記プラズモン励起センサと上記流路天板との間(流路)を満たしながら、該工程(f)を経て得られたセンサチップに、該透明支持体の、該金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程;および
工程(h):該工程(g)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
【0013】
上記アッセイ法(I)に記載の上記光学ノイズ吸収剤からなる層は、上記金属薄膜の、上記透明支持体とは接していないもう一方の表面に形成され、上記リガンドは、該光学ノイズ吸収剤からなる層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化されていること、または上記流路天板の、上記プラズモン励起センサ側の一方の面に形成され、かつ該層は、リガンドに接することのないことが好ましく、光学ノイズ吸収剤と高分子とを含むか、または誘電体と該誘電体の表面にシランカップリング剤を介して固定化されている光学ノイズ吸収剤とを含むことが好ましい。
【0014】
上記光学ノイズ吸収剤は、顔料または染料であることが好ましい。
上記金属薄膜は、金、銀、アルミニウム、銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されていることが好ましい。
【0015】
上記検体は、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液および唾液からなる群から選択される少なくとも1種の体液を含むことが好ましい。
本発明の装置は、少なくとも、上記工程(b)または(f)を経て得られたプラズモン励起センサ、レーザ光の光源、光学フィルタ、プリズム、カットフィルタ、集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光検出部を含み、上記工程(c)または(g)に用いられることを特徴とする。
【0016】
本発明のキットは、少なくとも、透明支持体と上記金属薄膜とを含むセンサおよび光学ノイズ吸収剤を含み、上記アッセイ法(I)または(II)に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、プラズモン発生直後に一定量の外光(装置外の照明光)、励起光(励起光の透過成分)、迷光(各所での励起光の散乱成分)およびプラズモンの散乱光(励起光を起源とし、プラズモン励起センサ表面上の構造体または付着物などの影響で発生する散乱光)を除去し、光学ノイズの絶対量を極限まで低減させ、高感度化に寄与できるセンサチップおよびそれを用いたアッセイ法、アッセイ用装置ならびにアッセイ用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(1)〜(3)はそれぞれ、本発明に係るセンサチップ(1)〜(3)の一態様の断面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明のセンサチップ、アッセイ法、装置およびキットについて具体的に説明する。
まず、本発明のセンサチップについて、図1を用いて具体的に説明する。
【0020】
<センサチップ>
本発明のセンサチップは、「透明支持体」1と、該支持体の一方の表面に形成された「金属薄膜」2と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化された「リガンド」3とを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサのリガンドが固定化されている面側に、リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた「流路天板」4を有するセンサチップであって、該プラズモン励起センサと該流路天板との間(流路)に「光学ノイズ吸収剤からなる層」5が含有されることを特徴とするものである。
【0021】
該光学ノイズ吸収剤からなる層(以下「光学ノイズ吸収層」ともいう。)5は、符号11のセンサチップ(1)、符号12のセンサチップ(2)および符号13のセンサチップ(3)の態様を含むことが好ましく、光学ノイズの絶対量を極限まで低減させるという効果がより顕著であり、実際の測定操作が容易なことから、センサチップ(3)が望ましく、センサチップ(2)がより望ましく、センサチップ(1)が特に望ましい。
【0022】
(透明支持体)
本発明で用いられる透明支持体1としては、ガラス製であっても、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などのプラスチック製であってもよく、屈折率〔nd〕が好ましくは1.40〜2.20であり、厚さが好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmであれば、大きさ(縦×横)は特に限定されない。
【0023】
なお、ガラス製の透明支持体は、市販品として、SCHOTT AG社製のBK7(屈折率〔nd〕1.52)およびLaSFN9(屈折率〔nd〕1.85)、(株)住田光学ガラス製のK−PSFn3(屈折率〔nd〕1.84)、K−LaSFn17(屈折率〔nd〕1.88)およびK−LaSFn22(屈折率〔nd〕1.90)、(株)オハラ製のS−LAL10(屈折率〔nd〕1.72)などが光学的特性と洗浄性との観点から好ましい。
【0024】
透明支持体は、その表面に金属薄膜を形成する前に、その表面を酸および/またはプラズマにより洗浄することが好ましい。
酸による洗浄処理としては、0.001〜1Nの塩酸中に、1〜3時間浸漬することが好ましい。
プラズマによる洗浄処理としては、例えば、プラズマドライクリーナー(ヤマト科学(株)製のPDC200)中に、0.1〜30分間浸漬させる方法が挙げられる。
【0025】
(金属薄膜)
上記透明支持体1の一方の表面に形成された金属薄膜2としては、好ましくは、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなり、より好ましくは金からなることが望ましく、これら金属の合金であってもよい。このような金属種は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強が大きくなることから好適である。
【0026】
なお、透明支持体1としてガラス製平面基板を用いる場合に限り、ガラスと金属薄膜2とをより強固に接着することができることから、あらかじめクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を形成することが好ましい。
【0027】
透明支持体1上に金属薄膜2を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法等)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。薄膜形成条件の調整が容易なことから、スパッタリング法または蒸着法によりクロムの薄膜および/または金属薄膜を形成することが好ましい。
【0028】
金属薄膜2の厚さとしては、金:5〜500nm、銀:5〜500nm、アルミニウム:5〜500nm、銅:5〜500nm、白金:5〜500nm、およびそれらの合金:5〜500nmが好ましく、クロムの薄膜の厚さとしては、1〜20nmが好ましい。
【0029】
電場増強効果の観点から、金:20〜70nm、銀:20〜70nm、アルミニウム:10〜50nm、銅:20〜70nm、白金:20〜70nm、およびそれらの合金:10〜70nmがより好ましく、クロムの薄膜の厚さとしては、1〜3nmがより好ましい。
【0030】
金属薄膜2の厚さが上記範囲内であると、表面プラズモンが発生し易いので好適である。また、このような厚さを有する金属薄膜2であれば、大きさ(縦×横)は特に限定されない。
【0031】
(リガンド)
リガンド3とは、検体中に含有されるアナライトを特異的に認識し(または、認識され)結合し得る分子または分子断片であって、このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などであれば、特に限定されない。
【0032】
「タンパク質」としては、例えば、抗体などが挙げられ、具体的には、抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体((株)日本医学臨床検査研究所などから入手可能)、抗ガン胎児性抗原(CEA)モノクローナル抗体、抗CA19−9モノクローナル抗体、抗PSAモノクローナル抗体などが挙げられる。
【0033】
なお、本発明において、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、遺伝子組換えにより得られる抗体、および抗体断片を包含する。
リガンド3の固定化方法については、センサチップ(1)の項目で説明する。
【0034】
(流路天板)
本発明において、流路天板4とは、プラズモン励起センサとともに流路を形成するための一部であり、プラズモン励起センサと流路を挟んで対面している。その流路とは、微量な薬液の送達を効率的に行うことができ、反応促進を行うために送液速度を変化させたり、循環させたりすることができる角筒状または丸筒(管)状のものである。
【0035】
流路天板4の材料としては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン等を原料として含有するホモポリマーまたは共重合体;ポリエチレン等のポリオレフィンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
流路天板4の大きさは、プラズモン励起センサと同程度の大きさを有することが好ましいが、本発明は特に限定されない。
【0036】
(光学ノイズ吸収剤)
本発明において、プラズモン発生直後に一定量の外光、励起光、迷光およびプラズモンの散乱光を含む光学ノイズを吸収するために用いられる光学ノイズ吸収剤は、顔料または染料であることが好ましい。なお、後述する検体と光学ノイズ吸収剤とを混合する場合(センサチップ(3)の態様)、光学ノイズ吸収剤は、水溶性基を有する水溶性の構造とする必要があるが、プラズモン励起センサまたは流路天板4に固定化する場合(センサチップ(1)または(2)の態様)は疎水性であってもよい。
【0037】
このような顔料または染料は、金属薄膜2を形成する金属種およびプリズムを通して照射されるレーザ光の波長によって適宜選択され、それらの例示化合物を表1に示す。
【0038】
【表1】

以下、具体的な光学ノイズ吸収剤として有用な染料の例を挙げる。光学ノイズ吸収剤からなる層としてセンサチップに形成する場合は、油溶性染料、分散染料および顔料が好ましい。
【0039】
油溶性染料としては、例えば、オリエント化学工業(株)製のValifast Yellow 4120、Valifast Yellow 3150、Valifast Yellow 3108、Valifast Yellow 2310N、Valifast Yellow 1101、Valifast Red 3320、Valifast Red 3304、Valifast Red 1306、Valifast Blue 2610、Valifast Blue 2606、Valifast Blue 1603、Oil Yellow GG−S、Oil Yellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow 107、Oil Yellow 105、Oil Scarlet 308、Oil Red RR、Oil Red OG、Oil Red 5、Oil Pink 312、Oil Blue BOS、Oil Blue 613、Oil Blue 2N、Oil Black BY、Oil Black BS、Oil Black 860、Oil Black 5970、Oil Black 5906、Oil Black 5905;日本化薬(株)製のKayaset Yellow SF−G、Kayaset Yellow K−CL、Kayaset Yellow GN、Kayaset Yellow A−G、Kayaset Yellow 2G、Kayaset Red SF−4G、Kayaset Red K−BL、Kayaset Red A−BR、Kayaset Magenta 312、Kayaset Blue K−FL;有本化学工業(株)製のFS Yellow 1015、FS Magenta 1404、FS Cyan 1522、FS Blue 1504、C.I.Solvent Yellow 88、83、82、79、56、29、19、16、14、04、03、02、01、C.I.Solvent Red 84:1、C.I.Solvent Red 84、218、132、73、72、51、43、27、24、18、01、C.I.Solvent Blue 70、67、44、40、35、11、02、01、C.I.Solvent Black 43、70、34、29、27、22、7、3、C.I.Solvent Violet 3、C.I.Solvent Green 3および7、Plast Yellow DY352、Plast Red 8375;三井化学(株)製のMS Yellow HD−180、MS Red G、MS Magenta HM−1450H、MS Blue HM−1384;住友化学(株)製のES Red 3001、ES Red 3002、ES Red 3003、TS Red 305、ES Yellow 1001、ES Yellow 1002などが挙げられる。
【0040】
また、分散染料としてしては、例えば、C.I.ディスパーズイエロー 5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224および237;C.I.ディスパーズオレンジ 13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119および163;C.I.ディスパーズレッド 54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356および362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365および368ならびにC.I.ディスパーズグリーン 6:1および9等;TS Yellow 118、ES Orange 2001、ES Blue 6001、TS Turq Blue 618;Bayer社製のMACROLEX Yellow 6G、Ceres Blue GNNEOPAN Yellow O75、Ceres Blue GN、MACROLEX Red Violet R等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いることができる顔料は、特に限定されないが、散乱を発生させないために、その粒径としては、体積平均粒径で50nm以下が好ましい。ブラック顔料であるカーボンブラックとしては、ファーネス法やチャネル法で製造されたカーボンブラックであってもよく、一次粒径が15〜40nm、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。このようなカーボンブラックとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成(株)製);RAVEN1255(コロンビア・インダストリアル社製);REGAL400R、REGAL660R、MOGUL L(以上、キヤボット社製);Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ社製)等が挙げられる。
【0042】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 138等が挙げられる。
【0043】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0044】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。
【0045】
検出時に、光学ノイズ吸収剤を送液(反応溶液)に添加する場合は、水溶性染料が好ましい。水溶性染料の好ましい例としては、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0046】
〔センサチップ(1)〕
センサチップ(1)は、図1(1)に示されるように、光学ノイズ吸収剤からなる層5が、金属薄膜2の、透明支持体1とは接していないもう一方の表面に形成され、リガンド3が、光学ノイズ吸収剤からなる層5の、金属薄膜2とは接していないもう一方の表面に固定化されていることが好ましい。
【0047】
センサチップ(1)に含まれる光学ノイズ吸収剤からなる層5は、(i)光学ノイズ吸収剤と高分子とを含むか、または(ii)誘電体と該誘電体の表面にシランカップリング剤を介して固定化されている光学ノイズ吸収剤とを含むことが好ましく、該(i)はさらに下記(i−1)および(i−2)の態様を含むことが望ましい。
【0048】
このような光学ノイズ吸収剤からなる層5は、作製の容易さおよびコスト削減の観点から、好ましくは(ii)、より好ましくは(i−2)、特に好ましくは(i−1)である。
【0049】
(i)光学ノイズ吸収剤と高分子とを含む態様:
(i−1)このような高分子としては、リガンド3を金属薄膜2に固定化するために用いられ、例えば、カルボキシメチルデキストラン〔CMD〕のような厚みのある支持体、SAMまたは反応基を有するポリエチレングリコール、イミノジ酢酸誘導体((N−5−amino−1−carboxypentyl)iminodiacetic acid等)、結合様式としてのビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインGなどが挙げられる。これらのうち、高感度化するためにリガンドを集積し易いの観点から、カルボキシメチルデキストランが好ましい。なお、これら高分子は1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0050】
光学ノイズ吸収剤は、固定化する場合、染料の官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基)に、該官能基と反応性のシランカップリング剤またはSAMを結合させた後、金属基板または金属基板表面を被覆した誘電体層に固定するか、高分子材料に含浸して被膜を形成することにより形成される。高分子に疎水性染料を溶解または顔料を分散させてスピンコータで塗布することが、精度よく染料濃度を制御できることから、より好ましい。これらの方法により、厚さ0.01〜10μmの光学ノイズ吸収剤からなる層5を形成する。
【0051】
上述した、光学ノイズ吸収剤を固定化するために用いられるポリマーは、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマー、およびエステル基を有するポリマーが好ましい。
【0052】
アセタールを含有するポリマーとして好ましくは、ポリビニルブチラール樹脂であり、例えば、電気化学工業(株)製の#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#4000−2、#5000−A、#6000−C、#6000−EP;または積水化学工業(株)製のBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−5、BL−10、BL−S、BL−SH、BX−10、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BM−SH、BH−3、BH−6、BH−S、BX−1、BX−3、BX−5、KS−10、KS−1、KS−3、KS−5などが挙げられる。
【0053】
主な官能基として炭酸エステルを含有するポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂であり、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロンシリーズ、ノバレックスシリーズなどが挙げられる。
【0054】
主な官能基として水酸基を含有するポリマーとしては、例えば、PVAがあり、例えば、(株)クラレ製のポバールPVA−102、PVA−117、PVA−CSA、PVA−617、PVA−505などが挙げられる。
【0055】
主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとしては、ポリエステルであってもよく、例えば、日本ユピカ(株)製の4516、4700、5834、6400等が挙げられる。また、メタクリル系の樹脂であってもよく、例えば、旭化成(株)製のデルペットシリーズの560F、60N、80N、LP−1、SR8500、SR6500などを用いることができる。
【0056】
また、本発明では、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合して調製できるビニル系樹脂も好ましく用いることができ、スチレン樹脂、アクリル系樹脂も好ましく用いることができる。他に用いることのできる樹脂としては、例えば、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の単量体を、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等の既存の方法で重合して用いることができる。
【0057】
このように形成した光学ノイズ吸収剤からなる層5にリガンド3を固定化する方法としては、高分子が有する水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基などの官能基(好ましくは、水酸基、およびカルボキシル基)とリガンド3が有する官能基(免疫反応促進能や非特異吸着反応抑制能を勘案し、高分子が有する官能基と適宜組み合わせることが好ましい。)とで反応させて化学結合を形成する方法などが挙げられる。
【0058】
リガンド3の好ましい固定化量は、モル吸光係数によっても異なるが、上述の染料のモル吸光係数は概ね2万〜10万であることから、固定化濃度としては、0.1M〜0.0001Mである。
【0059】
(i−2)このような高分子としては、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン-アクリレート、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリエステルなどのポリマーが挙げられる。これらのうち、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレンおよびポリビニルブチラールは、光学ノイズ吸収剤との相溶性に優れ、非特異的な吸着(例えば、蛋白質(アルブミン、フィブリノーゲン、免疫グロブリン)、脂質、糖類(グルコース)などの吸着)を抑制することができるため好適である。なお、これらポリマーは1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0060】
光学ノイズ吸収剤は、ポリマーとともに溶剤に溶解し、得られた組成物を金属薄膜2の透明支持体1に接していない一方の表面に塗布し乾燥する(溶剤を揮発する)ことによって固定化することができ、厚さ0.01〜10μmの光学ノイズ吸収剤からなる層5を形成する。
【0061】
「溶剤」としては、揮発性が高ければ特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン〔MEK〕、アセトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族類;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラフルオロプロパン等の含ハロゲン系炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ターシャリブタノール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール等のグリコール類などが挙げられる。これらのうち、ポリマーの溶解安定性の観点から、ケトン類、芳香族類、エステル類、含ハロゲン系炭化水素類が好ましい。
【0062】
「組成物」は、光学ノイズ吸収剤、ポリマーおよび溶剤以外に、必要に応じて酸化防止剤などの添加剤も含有することができる。
「酸化防止剤」としては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0063】
このように形成した光学ノイズ吸収剤からなる層5の総量(100重量%)に対して、光学ノイズ吸収剤は1〜75重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましく、ポリマーは25〜99重量%が好ましく、70〜30重量%がより好ましい。光学ノイズ吸収剤およびポリマーの含有量が上記範囲内であると、消光の効率が良好である。
【0064】
また、溶剤は、組成物100重量部に対して、100〜1,000重量部が好ましく、100〜500重量部がより好ましい。添加剤は、組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。溶剤または添加剤の配合量が上記範囲内であると、塗布性が良く、蛍光量子収率の低下を起さないため好適である。
【0065】
「塗布」する方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、ワイヤーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷法などが挙げられ、組成物を金属薄膜2の表面に塗布後、通常20〜100℃で、5〜30分間乾燥させる。
【0066】
リガンド3の固定化方法としては、ポリマーが有する水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基などの官能基(好ましくは、水酸基およびカルボキシル基)とリガンド3が有する官能基(免疫反応促進能や非特異吸着反応抑制能を勘案し、ポリマーが有する官能基と適宜組み合わせることが好ましい。)とで反応させて化学結合を形成する方法、2感応性反応基を有する化合物(例えば、シランカップリング剤など)を介してリガンド3を固定化する方法などが挙げられる。
【0067】
「シランカップリング剤」としては、加水分解でシラノール基(Si-OH)を与えるエトキシ基(またはメトキシ基)を有し、他端にアミノ基やグリシジル基、カルボキシル基などの反応基を有するシランカップリング剤であれば特に限定されず、従来公知のシランカップリング剤を用いることができる。
【0068】
シランカップリング剤以外には、リガンド3の固定化能に優れることから、例えば、カルボキシメチルデキストラン、ポリエチレングリコール、イミノジ酢酸誘導体((N−5−amino−1−carboxypentyl)iminodiacetic acid等)、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインGなども好適である。
【0069】
シランカップリング剤を用いる場合、リガンドの固定化方法の具体例として、まず金薄薄膜2が形成されている透明支持体1を、通常0.1〜10%、好ましくは0.5%の濃度でシランカップリング剤を含む水溶液に30分〜2時間浸漬後、室温の場合:通常1〜24時間、好ましくは10時間;100℃の場合:通常10分〜1時間、好ましくは30分の乾燥を行い、この後、通常、上記基板を水で洗浄する。この時点で、シランカップリング剤の一方の末端が加水分解して得られたシラノール基(Si−OH)を光学ノイズ吸収剤からなる層5側にして並べた単分子膜が形成されている。シランカップリング剤からなる単分子膜の外側には、シランカップリング剤が有するアミノ基やカルボキシル基が露出している状態となっている。
【0070】
次に、リガンド3が有するカルボキシル基を、水溶性カルボジイミド(WSC)(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)など)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とにより活性エステル化し、このように活性エステル化したカルボキシル基と、シランカップリング剤が有するアミノ基とを水溶性カルボジイミドを用いて脱水反応させ固定化させる。
【0071】
その他の好ましい方法の具体例としては、光学ノイズ吸収剤からなる層5内のポリマーのカルボキシル基を水溶性カルボジイミド(WSC)(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)など)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とにより活性エステル化し、リガンド3が有するアミノ基とを水溶性カルボジイミドを用いて脱水反応させ固定化させる。
【0072】
(ii)誘電体と該誘電体の表面にシランカップリング剤を介して固定化されている光学ノイズ吸収剤とを含む態様:
このような「誘電体」は、金属薄膜2による蛍光色素の金属消光を防止することを目的として、金属薄膜2の、透明支持体1と接していないもう一方の表面に形成したものであって、該誘電体としては、光学的に透明な各種無機物、天然または合成ポリマーを用いることもでき、化学的安定性、製造安定性および光学的透明性に優れていることから、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)を含むことが好ましい。
【0073】
誘電体の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、電子線蒸着法、熱蒸着法、ポリシラザン等の材料を用いた化学反応による形成方法、またはスピンコータによる塗布などが挙げられる。
【0074】
光学ノイズ吸収剤は、金属薄膜2の表面に形成された誘電体の表面にシランカップリング剤を介して固定化することができ、光学ノイズ吸収剤からなる層5を形成する。
「シランカップリング剤」としては、加水分解でシラノール基(Si-OH)を与えるエトキシ基(またはメトキシ基)を有し、他端にアミノ基やグリシジル基、カルボキシル基などの反応基を有するシランカップリング剤であれば特に限定されず、従来公知のシランカップリング剤を用いることができる。
【0075】
光学ノイズ吸収剤からなる層5の厚さは、通常10nm〜1mmであり、共鳴角安定性の観点からは、30nm以下が好ましく、10〜20nmがより好ましい。また、電場増強の観点からは、200nm〜1mmが好ましく、電場増強効果の安定性の観点からは、400〜1,600nmが好ましい。プラズモン励起センサが、今後、大量生産される際、該センサが有するスペーサ層の厚さが変動することが想定され、特に400nm以上の厚さを有すると共鳴角の変動が一層大きくなる可能性があるため、測定の安定性を確保する目的から、該スペーサ層の厚さとして、特に10〜20nmが好ましい。
【0076】
リガンド3の固定化方法としては、金属基板上に被覆したSiO2上に3−アミノプロピルトリエトキシシランまたは2−カルボキシエチルトリエトキシシランを常法により固定化し、部分的にカルボキシル基またはアミノ基を官能基として有する染料をアミンカップリングにより固定化し、さらにリガンドを同様にアミンカップリングで形成する方法が好ましい。
【0077】
〔センサチップ(2)〕
センサチップ(2)は、図1(2)に示されるように、光学ノイズ吸収剤からなる層5が、流路天板4の、上記プラズモン励起センサ側の一方の面に形成され、かつ光学ノイズ吸収剤からなる層5は、リガンド3に接することのないことが好ましい。
光学ノイズ吸収剤からなる層5は、リガンド3を固定化しないこと以外は、センサチップ(1)に含まれる光学ノイズ吸収剤からなる層5と同様に形成することができる。
【0078】
〔センサチップ(3)〕
センサチップ(3)は、図1(3)に示されるように、光学ノイズ吸収剤からなる層5が、上記光学ノイズ吸収剤と、少なくとも該吸収剤を溶解する溶媒とを含み、上記プラズモン励起センサと流路天板4との間(流路)を満たすことが好ましい。
【0079】
このような「溶媒」としては、後述する送液と同様のもの、すなわち、下記検体を希釈するための溶媒または緩衝液を用いることが好ましく、具体的には、リン酸緩衝生理食塩水〔PBS〕、トリス緩衝生理食塩水〔TBS〕、Hepes緩衝生理食塩水〔HBS〕などが挙げられるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0080】
光学ノイズ吸収剤の濃度は、1〜1000μモル/mlが好ましく、1〜100μモル/mlがより好ましい。光学ノイズ吸収剤の濃度が上記範囲内であると、S/N比が向上するため好適である。
【0081】
<アッセイ法>
本発明のアッセイ法は、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするアッセイ法(I)または下記工程(e)〜(h)を含むことを特徴とするアッセイ法(II)を含むものである。
【0082】
〔アッセイ法(I)〕
アッセイ法(I)は、下記工程(a)〜(d)、好ましくはさらに洗浄工程を含むことを特徴とするものである。
【0083】
工程(a):透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化された第1のリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップであって、該プラズモン励起センサと該流路天板との間(流路)に光学ノイズ吸収剤からなる層が含有されるセンサチップに、検体を接触させる工程。
【0084】
工程(b):該工程(a)を経て得られたセンサチップに、さらに第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程。
工程(c):該工程(b)を経て得られたセンサチップに、該透明支持体の、該金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程。
【0085】
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
洗浄工程:上記工程(a)を経て得られたセンサチップの表面および/または上記工程(b)を経て得られたセンサチップの表面を洗浄する工程。
以下、本発明のアッセイ法(I)について、図1を用いて具体的に説明する。
【0086】
[工程(a)]
工程(a)とは、「透明支持体」1と、該支持体1の一方の表面に形成された「金属薄膜」2と、該薄膜2の、該支持体1とは接していないもう一方の表面に固定化された「第1のリガンド」とを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた「流路天板」4を有する「センサチップ」であって、該プラズモン励起センサと該流路天板4との間(流路)に「光学ノイズ吸収剤からなる層」5が含有されるセンサチップに、「検体」を「接触」させる工程である。
【0087】
(センサチップ)
アッセイ法(I)で用いられる「センサチップ」は、上述したセンサチップ(1)または(2)が好適である。なお、透明支持体1、金属薄膜2、流路天板4および光学ノイズ吸収剤からなる層5は、上述したものと同様であり、第1のリガンドは、上記リガンド3と同様である。
【0088】
(検体)
「検体」としては、例えば、血液(血清・血漿)、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが挙げられ、所望の溶媒、緩衝液等に適宜希釈して用いてもよい。これら検体のうち、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液および唾液が好ましい。
【0089】
(接触)
「接触」は、流路中に循環する送液に検体が含まれ、プラズモン励起センサの第1のリガンドが固定化されている片面のみが該送液中に浸漬されている状態において、プラズモン励起センサと検体とを接触させる態様が好ましい。
【0090】
「流路」とは、上述のとおり角筒状または丸筒(管)状のものであって、プラズモン励起センサを設置する個所近傍は角筒状構造を有することが好ましく、薬液を送達する個所近傍は丸筒(管)状を有することが好ましい。
【0091】
その材料としては、プラズモン励起センサ部または流路天板4ではメチルメタクリレート、スチレン等を原料として含有するホモポリマーまたは共重合体;ポリエチレン等のポリオレフィンなどからなり、薬液送達部ではシリコーンゴム、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマーを用いる。
【0092】
プラズモン励起センサ部においては、検体との接触効率を高め、拡散距離を短くする観点から、プラズモン励起センサ部の流路の断面として、縦×横がそれぞれ独立に100nm〜1mm程度が好ましい。
【0093】
流路にプラズモン励起センサを固定する方法としては、小規模ロット(実験室レベル)では、まず、プラズモン励起センサの金属薄膜2が形成されている表面に、流路高さ0.5mmを有するポリジメチルシロキサン〔PDMS〕製シートを該プラズモン励起センサの金属薄膜2が形成されている部位を囲むようにして圧着し、次に、該ポリジメチルシロキサン〔PDMS〕製シートとプラズモン励起センサとをビス等の閉め具により固定する方法が好ましい。
【0094】
工業的に製造される大規模ロット(工場レベル)では、流路にプラズモン励起センサを固定する方法としては、プラスチックの一体成形品に銀基板を形成、または別途作製した銀基板を固定し、金表面に誘電体層、蛍光色素層およびリガンド固定化を行った後、流路天板に相当するプラスチックの一体成形品により蓋をすることで製造できる。必要に応じてプリズムを流路に一体化することもできる。
【0095】
「送液」としては、検体を希釈した溶媒または緩衝液と同じものが好ましく、例えば、リン酸緩衝生理食塩水〔PBS〕、トリス緩衝生理食塩水〔TBS〕、Hepes緩衝生理食塩水〔HBS〕などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0096】
送液を循環させる温度および時間としては、検体の種類などにより異なり、特に限定されるものではないが、通常20〜40℃×1〜60分間、好ましくは37℃×5〜15分間である。
【0097】
送液中の検体中に含有されるアナライトの初期濃度は、100μg/mL〜0.001pg/mLであってもよい。
送液の総量、すなわち流路の容積としては、通常0.001〜20mL、好ましくは0.1〜1mLである。
送液の流速は、通常1〜2,000μL/min、好ましくは5〜500μL/minである。
【0098】
(洗浄工程)
洗浄工程とは、上記工程(a)を経て得られたセンサチップの表面および/または下記工程(b)を経て得られたセンサチップの表面を洗浄する工程である。
【0099】
洗浄工程に使用される洗浄液としては、例えば、工程(a)および(b)の反応で用いたものと同じ溶媒または緩衝液に、Tween20、TritonX100などの界面活性剤を溶解させ、好ましくは0.00001〜1重量%含有するもの、または塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩を150〜500mM含有するものが望ましい。あるいは、低pHの緩衝液、例えば、10mM Glycine HClでpHが1.5〜4.0のものであってもよい。
【0100】
洗浄液を循環させる温度および流速は、上記工程(a)の送液を循環させる温度および流速と同じであることが好ましい。
洗浄液を循環させる時間は、通常0.5〜180分間、好ましくは5〜60分間である。
【0101】
[工程(b)]
工程(b)とは、上記工程(a)、好ましくはさらに上記洗浄工程を経て得られたセンサチップに、さらに「第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲート」を反応させる工程である。
【0102】
(蛍光色素)
「蛍光色素」とは、本発明において、所定の励起光を照射する、または電界効果を利用して励起することによって蛍光を発光する物質の総称であり、該「蛍光」は、燐光など各種の発光も含む。
【0103】
本発明で用いられる蛍光色素は、金属薄膜2による吸光に起因する消光を受けない限りにおいて、その種類に特に制限はなく、公知の蛍光色素のいずれであってもよい。一般に、単色比色計(monochromometer)よりむしろフィルタを備えた蛍光計の使用をも可能にし、かつ検出の効率を高める大きなストークス・シフトを有する蛍光色素が好ましい。
【0104】
このような蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(Integrated DNA Technologies社製)、ポリハロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、クマリン・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ローダミン・ファミリーの蛍光色素(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、シアニン・ファミリーの蛍光色素、インドカルボシアニン・ファミリーの蛍光色素、オキサジン・ファミリーの蛍光色素、チアジン・ファミリーの蛍光色素、スクアライン・ファミリーの蛍光色素、キレート化ランタニド・ファミリーの蛍光色素、BODIPY(登録商標)・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ナフタレンスルホン酸・ファミリーの蛍光色素、ピレン・ファミリーの蛍光色素、トリフェニルメタン・ファミリーの蛍光色素、Alexa Fluor(登録商標)色素シリーズ(インビトロジェン(株)製)などが挙げられ、さらに米国特許番号第6,406,297号、同第6,221,604号、同第5,994,063号、同第5,808,044号、同第5,880,287号、同第5,556,959号および同第5,135,717号に記載の蛍光色素も本発明で用いることができる。
【0105】
これらファミリーに含まれる代表的な蛍光色素の吸収波長(nm)および発光波長(nm)を表2に示す。
【0106】
【表2】

また、蛍光色素は、上記有機蛍光色素に限られない。例えば、例えばEu、Tb等の希土類錯体系の蛍光色素も、本願発明に用いられる蛍光色素となりうる。希土類錯体は、一般的に励起波長(310〜340nm程度)と発光波長(Eu錯体で615nm付近、Tb錯体で545nm付近)との波長差が大きく、蛍光寿命が数百マイクロ秒以上と長い特徴がある。市販されている希土類錯体系の蛍光色素の一例としては、ATBTA−Eu3+が挙げられる。
【0107】
本発明においては、後述する蛍光測定を行う際に、金属薄膜2を形成する金属種による吸光の少ない波長領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることが望ましい。例えば、金属薄膜2として金を用いる場合には、金による吸光による影響を最小限に抑えるため、最大蛍光波長が600nm以上である蛍光色素を使用することが望ましい。したがって、この場合には、Cy5、Alexa Fluor(登録商標)647等近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることが特に望ましい。このような近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることは、血液中の血球成分由来の鉄による吸光の影響を最小限に抑えることができる点で、検体として血液を用いる場合においても有用である。一方、金属薄膜2として銀を用いる場合には、最大蛍光波長が400nm以上である蛍光色素を使用することが望ましい。
これら蛍光色素は1種単独でも、2種以上併用してもよい。
【0108】
(第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲート)
「第2のリガンドと蛍光色素からなるコンジュゲート」は、リガンドとして2次抗体を用いる場合、検体中に含有されるアナライト(標的抗原)を認識し結合し得る抗体であることが好ましい。
【0109】
本発明のアッセイ法(I)において、第2のリガンドは、アナライトに蛍光色素による標識化を行う目的で用いられるリガンドであり、上記第1のリガンドと同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、第1のリガンドとして用いる1次抗体がポリクローナル抗体である場合、第2のリガンドとして用いる2次抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、該1次抗体がモノクローナル抗体である場合、2次抗体は、該1次抗体が認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
【0110】
さらに、検体中に含有されるアナライト(標的抗原)と競合する第2のアナライト(競合抗原;ただし、標的抗原とは異なるものである。)と2次抗体とがあらかじめ結合した複合体を用いる態様も好ましい。このような態様は、蛍光信号(蛍光シグナル)量と標的抗原量とを比例させることができるため好適である。
【0111】
「第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲート」の作製方法としては、第2のリガンドとして2次抗体を用いる場合、例えば、まず蛍光色素にカルボキシル基を付与し、該カルボキシル基を、水溶性カルボジイミド〔WSC〕(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩〔EDC〕など)とN−ヒドロキシコハク酸イミド〔NHS〕とにより活性エステル化し、次いで活性エステル化したカルボキシル基と2次抗体が有するアミノ基とを水溶性カルボジイミドを用いて脱水反応させ固定化させる方法;イソチオシアネートおよびアミノ基をそれぞれ有する2次抗体および蛍光色素を反応させ固定化する方法;スルホニルハライドおよびアミノ基をそれぞれ有する2次抗体および蛍光色素を反応させ固定化する方法;ヨードアセトアミドおよびチオール基をそれぞれ有する2次抗体および蛍光色素を反応させ固定化する方法;ビオチン化された蛍光色素とストレプトアビジン化された2次抗体(あるいは、ストレプトアビジン化された蛍光色素とビオチン化された2次抗体)とを反応させ固定化する方法などが挙げられる。
【0112】
このように作製された「第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲート」の送液中の濃度は、0.001〜10,000μg/mLが好ましく、1〜1,000μg/mLがより好ましい。
送液を循環させる温度、時間および流速は、それぞれ上記工程(a)の場合と同様である。
【0113】
[工程(c)]
工程(c)とは、上記工程(b)、好ましくはさらに上記洗浄工程を経て得られたセンサチップに、透明支持体1の、金属薄膜2を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程である。
【0114】
(光学系)
本発明のアッセイ法(I)で用いる光源は、金属薄膜2にプラズモン励起を生じさせることができるものであれば、特に制限がないものの、波長分布の単一性および光エネルギーの強さの点で、レーザ光を光源として用いることが好ましい。レーザ光は、光学フィルタを通して、プリズムに入射する直前のエネルギーおよびフォトン量を調節することが望ましい。
【0115】
レーザ光の照射により、全反射減衰条件(ATR)において、金属薄膜2の表面に表面プラズモンが発生する。表面プラズモンの電場増強効果により、照射したフォトン量の数十〜数百倍に増えたフォトンにより蛍光色素を励起する。なお、該電場増強効果によるフォトン増加量は、透明支持体1の屈折率、金属薄膜2の金属種およびその膜厚に依存するが、通常、金では約10〜20倍の増加量となる。
【0116】
蛍光色素は、光吸収により分子内の電子が励起され、短時間のうちに第一電子励起状態に移動し、この状態(準位)から基底状態に戻る際、そのエネルギー差に相当する波長の蛍光を発する。
【0117】
「レーザ光」としては、例えば、波長200〜900nm、0.001〜1,000mWのLD、波長230〜800nm(金属薄膜2に用いる金属種によって共鳴波長が決まる。)、0.01〜100mWの半導体レーザなどが挙げられる。
【0118】
「プリズム」は、各種フィルタを介したレーザ光が、プラズモン励起センサに効率よく入射することを目的としており、屈折率が透明支持体1と同じであることが好ましい。本発明は、全反射条件を設定できる各種プリズムを適宜選択することができることから、角度、形状に特に制限はなく、例えば、60度分散プリズムなどであってもよい。このようなプリズムの市販品としては、上述した「ガラス製の透明支持体」の市販品と同様のものが挙げられる。
【0119】
「光学フィルタ」としては、例えば、減光〔ND〕フィルタ、ダイアフラムレンズなどが挙げられる。「減光〔ND〕フィルタ」(または、中性濃度フィルタ)は、入射レーザ光量を調節することを目的とするものである。特に、ダイナミックレンジの狭い検出器を使用するときには精度の高い測定を実施する上で用いることが好ましい。
【0120】
「偏光フィルタ」は、レーザ光を、表面プラズモンを効率よく発生させるP偏光とするために用いられるものである。
「カットフィルタ」は、外光(装置外の照明光)、励起光(励起光の透過成分)、迷光(各所での励起光の散乱成分)、プラズモンの散乱光(励起光を起源とし、プラズモン励起センサ表面上の構造体または付着物などの影響で発生する散乱光)などの光学ノイズ、および蛍光色素の自家蛍光を除去するフィルタであって、例えば、干渉フィルタ、色フィルタなどが挙げられる。
【0121】
「集光レンズ」は、検出器に蛍光シグナルを効率よく集光することを目的とするものであり、任意の集光系でよい。簡易な集光系として、顕微鏡などで使用されている、市販の対物レンズ(例えば、(株)ニコン製またはオリンパス(株)製等)を転用してもよい。対物レンズの倍率としては、10〜100倍が好ましい。
【0122】
「SPFS検出部」としては、超高感度の観点からは光電子増倍管(浜松ホトニクス(株)製のフォトマルチプライヤー)が好ましい。また、これらに比べると感度は下がるが、画像として見ることができ、かつノイズ光の除去が容易なことから、多点計測が可能なCCDイメージセンサも好適である。
【0123】
〔工程(d)〕
工程(d)とは、上記工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有される「アナライト」量を算出する工程である。
【0124】
より具体的には、工程(d)は、既知濃度の標的抗原もしくは標的抗体での測定を実施することで検量線を作成し、作成された検量線に基づいて被測定検体中のアナライト(標的抗原量もしくは標的抗体)量を測定シグナルから算出する工程である。
【0125】
(アナライト)
「アナライト」としては、第1のリガンドに特異的に認識され(または、認識し)結合し得る分子または分子断片であって、このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA〔ペプチド核酸〕等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などが挙げられ、具体的には、AFP〔αフェトプロテイン〕等のがん胎児性抗原や腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどであってもよく、特に限定されない。
【0126】
(アッセイシグナル変化量)
さらに、工程(d)は、上記工程(b)の前に測定したシグナルを“ブランクシグナル”、としたとき、下記式で表されるアッセイのシグナル変化量を算出することができる。
シグナル変化量=|(アッセイ蛍光シグナル)−(ブランク蛍光シグナル)|
【0127】
〔アッセイ法(II)〕
アッセイ法(II)は、下記工程(e)〜(h)、好ましくはさらに洗浄工程を含むことを特徴とする。
【0128】
工程(e):透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化された第1のリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップに、検体を接触させる工程。
【0129】
工程(f):該工程(e)を経て得られたセンサチップに、さらに第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程。
工程(g):光学ノイズ吸収剤と、少なくとも該吸収剤を溶解する溶媒とを含み、上記プラズモン励起センサと上記流路天板との間(流路)を満たしながら、該工程(f)を経て得られたセンサチップに、該透明支持体の、該金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程。
【0130】
工程(h):該工程(g)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
洗浄工程:上記工程(e)を経て得られたセンサチップの表面および/または上記工程(f)を経て得られたセンサチップの表面を洗浄する工程。
以下、本発明のアッセイ法(II)について、図1を用いて具体的に説明する。
【0131】
[工程(e)]
工程(e)とは、透明支持体1と、該支持体1の一方の表面に形成された金属薄膜2と、該薄膜2の、該支持体1とは接していないもう一方の表面に固定化された第1のリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板4を有するセンサチップに、「検体」を「接触」させる工程である。
【0132】
(センサチップ)
アッセイ法(II)で用いられる「センサチップ」は、上述したセンサチップ(3)が好適である。なお、透明支持体1、金属薄膜2、第1のリガンド、流路天板4、検体および接触は、上述したものと同様である。
【0133】
(洗浄工程)
洗浄工程とは、上記工程(e)を経て得られたセンサチップの表面および/または下記工程(f)を経て得られたセンサチップの表面を洗浄する工程であり、洗浄する対象が異なる以外は上記アッセイ法(I)の洗浄工程と同様である。
【0134】
[工程(f)]
工程(f)とは、上記工程(e)、好ましくはさらに上記洗浄工程を経て得られたセンサチップに、さらに第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程である。
アッセイ法(II)の工程(f)は、対象とするセンサチップが異なる以外は、上記アッセイ法(I)の工程(b)と同様である。
【0135】
[工程(g)]
工程(g)とは、光学ノイズ吸収剤と、少なくとも該吸収剤を溶解する溶媒とを含み、上記プラズモン励起センサと上記流路天板との間(流路)を満たしながら、該工程(f)、好ましくはさらに上記洗浄工程を経て得られたセンサチップに、透明支持体1の、金属薄膜2を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程である。
【0136】
アッセイ法(II)の工程(g)は、上記工程(e)および(f)で用いたものと同様の送液に光学ノイズ吸収剤を添加し、対象とするセンサチップが異なる以外は、上記アッセイ法(I)の工程(c)と同様である。
【0137】
光学ノイズ吸収剤としては、Au基板ではインドール系、アゾ系、トリフェニルメタン系、銅フタロシアニン系、Ag系ではアゾ系が好適である。
その濃度は上述したものと同様である。
【0138】
[工程(h)]
工程(h)とは、上記工程(g)で得られた測定結果から、検体中に含有される「アナライト」量を算出する工程である。
アッセイ法(II)の工程(h)は、測定結果が異なる工程から得られた以外は、上記アッセイ法(I)の工程(d)と同様である。
【0139】
<装置>
本発明の装置は、少なくとも、上記工程(b)または(f)を経て得られたプラズモン励起センサ、レーザ光の光源、光学フィルタ、プリズム、カットフィルタ、集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光検出部を含み、上記工程(c)または(g)に用いられることを特徴とするものである。
【0140】
すなわち、本発明の装置は、上記センサチップを用いて、本発明のアッセイ法を実施するためのものである。
「装置」としては、少なくともレーザ光の光源、各種光学フィルタ、プリズム、カットフィルタ、集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光〔SPFS〕検出部を含むものとし、検体液、洗浄液または標識抗体液などを取り扱う際に、センサチップと組み合った送液系を有することが好ましい。送液系としては、例えば、送液ポンプと連結したマイクロ流路デバイスなどでもよい。
【0141】
また、表面プラズモン共鳴〔SPR〕検出部、すなわちSPR専用の受光センサとしてのフォトダイオード、SPRおよびSPFSの最適角度を調製するための角度可変部(サーボモータで全反射減衰〔ATR〕条件を求めるためにフォトダイオードと光源とを同期して、45〜85°の角度変更を可能とする。分解能は0.01°以上が好ましい。)、SPFS検出部に入力された情報を処理するためのコンピュータなども含んでもよい。
【0142】
光源、光学フィルタ、カットフィルタ、集光レンズおよびSPFS検出部の好ましい態様は上述したものと同様である。
「送液ポンプ」としては、例えば、送液が微量な場合に好適なマイクロポンプ、送り精度が高く脈動が少ないが循環することができないシリンジポンプ、簡易で取り扱い性に優れるが微量送液が困難な場合があるチューブポンプなどが挙げられる。
【0143】
<キット>
本発明のキットは、少なくとも、上記透明支持体と上記金属薄膜とを含むセンサおよび光学ノイズ吸収剤を含み、上記アッセイ法(I)に用いられることを特徴とするものであって、アッセイ法(I)を実施するにあたり、1次抗体、抗原などのリガンド、検体および2次抗体以外に必要とされるすべてのものを含むことが好ましい。
【0144】
少なくとも該支持体と該薄膜とを含むセンサと光学ノイズ吸収剤とを含むものは、センサチップ(1)または(2)の態様が好適である。
本発明のキットと、検体として、例えば、血液、血漿または血清と、特定の腫瘍マーカーに対する抗体とを用いることによって、特定の腫瘍マーカーの含有量を、高感度かつ高精度で検出することができる。この結果から、触診などによって検出することができない前臨床期の非浸潤癌(上皮内癌)の存在も高精度で予測することができる。
【0145】
このようなキットとしては、具体的に、透明支持体の一方の表面に金属薄膜を形成したセンサ(センサチップ(2)の場合)、または該センサの金属薄膜の、透明支持体とは接していない一方の表面に、光学ノイズ吸収剤からなる層を形成したもの(センサチップ(1)の場合);光学ノイズ吸収剤と、高分子、ポリマーまたは誘電体/シランカップリング剤(センサチップ(2)の場合);検体を溶解または希釈するための溶解液または希釈液;センサと検体とを反応させるための各種反応試薬および洗浄試薬が挙げられ、本発明のアッセイ法を実施するために必要とされる各種器材または資材や上記「装置」を含めることもできる。
【0146】
さらに、キット要素として、検量線作成用の標準物質、説明書、多数検体の同時処理ができるマイクロタイタープレートなどの必要な器材一式などを含んでもよい。
【実施例】
【0147】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0148】
[調製例1]光学ノイズ吸収剤として、C.I.ディスパーズブルー60を含む塗布液の調製:
丸底フラスコに湯浴を付し、酢酸エチル100gを加熱還流し、さらに、モノマーとして、ステアリルメタクリレート20g、メチルメタクリレート50gおよび2−アセトアセトキシエチルメタクリレート30gならびにN,N’−アゾビスイソバレロニトリル0.1gを各々溶解した混合液を2時間かけて滴下し、同温度にて10時間反応させて樹脂(R−1)の酢酸エチル溶液を得た。
この樹脂溶液(R−1)を1mL計量し、さらにディスパーズブルー60を10mM含む酢酸エチル溶液を1mL加え撹拌して塗布液を調製した。
【0149】
[調製例2]光学ノイズ吸収剤として銅フタロシアニンを含む塗布液の調製:
調製例1において、モノマーとして、メチルメタクリレート90gおよびメチルメタクリレート10gを用いた以外は調製例1と同様にして樹脂(R−2)の酢酸エチル溶液を得た。この樹脂溶液(R−2)を1mL計量し、さらに銅フタロシアニンを5mM含む酢酸エチル溶液を1mL加え撹拌して塗布液を調製した。
【0150】
[実施例1]センサチップ(2)の製造およびそれを用いたアッセイ法の実施:
(ステップ1:金属薄膜の形成)
厚さ1mmのガラス製の透明支持体「S−LAL 10」((株)オハラ製;屈折率〔nd〕=1.72)を、プラズマドライクリーナーでプラズマ洗浄した。プラズマ洗浄された該支持体の片面に、まずクロム薄膜をスパッタリング法により形成し、さらにその表面に金薄膜をスパッタリング法により形成した。クロム薄膜の厚さは1nm、金薄膜の厚さは50nmであった。
【0151】
(ステップ2:SAMの形成)
ステップ1により得られた金属基板を、1mMの11−Amino−1−undecanethiol((株)同仁化学研究所製)エタノール溶液に室温で24時間浸漬したことで、該基板の表面にアミノ基を有するSAMをパターニングした。
【0152】
(ステップ3:カルボキシメチルデキストランの結合)
ステップ2により得られたSAMがパターニングされた金属基板を、カルボキシメチルデキストラン(名糖産業(株)製;分子量50万、置換度1.08)50mg/mL水溶液に浸漬した。さらに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩〔EDC〕((株)同人化学研究所製)およびN−ヒドロキシコハク酸イミド〔NHS〕(Thermo Scientific社製)をそれぞれ100mMになるように加えて、1時間室温で反応させたことで、アミノ基末端のSAMとデキストランのカルボキシル基とのアミドカップリングによりデキストランが固定化された金属基板を得た。
【0153】
(ステップ4:光学ノイズ吸収層の作製)
ポリメチルメタクリレート〔PMMA〕製基板の一方の面に、調製例1で得られた塗布液を乾燥膜厚が10μmになるようにスピンコータで塗布し、乾燥温度100℃で5分間乾燥を行い、光学ノイズ吸収層を形成した。さらに送液導入用の穴(送液導入口)および送液排出用の穴(送液排出口)が上記測定領域内に位置するように形成した。
【0154】
(ステップ5:センサチップの構築)
基板の金属薄膜およびSAMが形成された側の面に、測定領域を形成するための、流路長10mm、幅5mmの穴の開いた厚さ0.5mmのポリジメチルシロキサン〔PDMS〕製シートを乗せた。さらに、このPDMS製シートの周囲にシリコーンゴム製スペーサを配置した(このシリコーンゴム製スペーサは送液に触れない状態にある)。このPDMS製シートおよびシリコーンゴム製スペーサの上に、ステップ4で作製した光学ノイズ吸収層を形成したPMMA製天板を乗せた。これらセンサ基板、PDMS製シート、およびPMMA製天板の積層物を外周部で圧着してビスで固定し、チップとした。
【0155】
(ステップ6:抗体の結合)
チップの送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した(以下、特に記載しなくとも、各種流体の送液および循環はすべてこのようなチューブおよびペリスタポンプを用いて行った)。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩〔EDC〕((株)同人化学研究所製)400mMと、N−ヒドロキシコハク酸イミド〔NHS〕(Thermo Scientific社製)100mMとの混合液を、500μL/minにて10分間フローして、カルボキシメチルデキストランを活性エステル化した。
【0156】
続いて、抗αフェトプロテイン〔AFP〕モノクローナル抗体(1D5;2.5mg/mL、ミクリ免疫研究所(株)製)を、該抗体が20μg/mLとなるよう10mM酢酸バッファー(pH5.0)にて希釈して得られた溶液を、500μL/minにて30分間フローして、該抗体をカルボキシメチルデキストランに連結した。
【0157】
最後に、1Mエタノールアミン塩酸塩(SIGMA社製;pH8.5)水溶液を500μL/minにて10分間フローすることによってブロッキング処理をし、センサチップを完成させた。
【0158】
(ステップ6:アッセイ法の実施)
上記ステップ1〜6に従い製造したセンサチップに、まず、AFP(2.0mg/mL溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mLとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、500μL/minにて20分間フローさせた。
【0159】
続いて、上述のようにして調製した標識抗体:Alexa Fluor 647標識抗AFPモノクローナル抗体が2.5μg/mLとなるよう1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、500μL/minにて20分間フローさせた。洗浄工程として、0.005%Tween20を含んだTBS溶液(pH7.4)を500μL/minにて10分間フローさせた。
【0160】
その後、PBSバッファー(pH7.4)で流路を満たした状態にして、プラズモン励起センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(640nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値を「アッセイシグナル」とした。一方、上記ステップ1〜5に従い製造した別のプラズモン励起センサについて、最初にフローさせた送液にAFPをまったく含まない(0ng/mL)PBSバッファー(pH7.4)を用いてフローさせた以外は上記と同じ手順で蛍光量を測定し、その測定値を「ブランクシグナル」とした。ブランクシグナルおよびアッセイシグナルから下記式によりS/N比を算出した。
S/N比=|(アッセイシグナル)|/|(ブランクシグナル)|
得られた結果を表3に示す。
【0161】
[実施例2]
実施例1において、調製例1で得られた塗布液の代わりに、調製例2で得られた塗布液を用いた以外は実施例1と同様にしてセンサチップを製造し、それを用いてアッセイ法を実施した。その結果を表3に示す。
【0162】
[実施例3]
実施例1において、調製例1で得られた塗布液を用いずに、かつ送液中に100μMの濃度になるようにブリリアントグリーン(光学ノイズ吸収剤)を含有させた以外は実施例1と同様にしてセンサチップ(3)を製造し、それを用いてアッセイ法を実施した。その結果を表3に示す。
【0163】
[比較例1]
実施例1において、調製例1で得られた塗布液を用いなかった以外は実施例1と同様にしてセンサチップを製造し、それを用いてアッセイ法を実施した。その結果を表3に示す。
【0164】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明のセンサチップを用いたアッセイ法は、高感度かつ高精度に検出することができる方法であるから、例えば、血液中に含まれる極微量の腫瘍マーカーであっても検出することができ、この結果から、触診などによって検出することができない前臨床期の非浸潤癌(上皮内癌)の存在も高精度で予測することができる。
【符号の説明】
【0166】
1・・・透明支持体
2・・・金属薄膜
3・・・リガンド
4・・・流路天板
5・・・光学ノイズ吸収剤からなる層
11・・・センサチップ(1)
12・・・センサチップ(2)
13・・・センサチップ(3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体と、
該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、
該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化されたリガンドと
を含むプラズモン励起センサ、および
該プラズモン励起センサのリガンドが固定化されている面側に、リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板
を有するセンサチップであって、
該プラズモン励起センサと該流路天板との間(流路)に光学ノイズ吸収剤からなる層が含有されることを特徴とするセンサチップ。
【請求項2】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層が、上記金属薄膜の、上記透明支持体とは接していないもう一方の表面に形成され、
上記リガンドが、該光学ノイズ吸収剤からなる層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化されている請求項1に記載のセンサチップ。
【請求項3】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層が、上記流路天板の、上記プラズモン励起センサ側の一方の面に形成され、かつ該層は、リガンドに接することのない請求項1に記載のセンサチップ。
【請求項4】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層が、光学ノイズ吸収剤と、少なくとも該吸収剤を溶解する溶媒とを含み、上記プラズモン励起センサと上記流路天板との間(流路)を満たす請求項1に記載のセンサチップ。
【請求項5】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層が、光学ノイズ吸収剤と高分子とを含むか、または誘電体と該誘電体の表面にシランカップリング剤を介して固定化されている光学ノイズ吸収剤とを含む請求項2または3に記載のセンサチップ。
【請求項6】
上記光学ノイズ吸収剤が、顔料または染料である請求項1〜5のいずれかに記載のセンサチップ。
【請求項7】
上記金属薄膜が、金、銀、アルミニウム、銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されている請求項1〜6のいずれかに記載のセンサチップ。
【請求項8】
下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするアッセイ法;
工程(a):透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化された第1のリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップであって、該プラズモン励起センサと該流路天板との間(流路)に光学ノイズ吸収剤からなる層が含有されるセンサチップに、検体を接触させる工程;
工程(b):該工程(a)を経て得られたセンサチップに、さらに第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程;
工程(c):該工程(b)を経て得られたセンサチップに、該透明支持体の、該金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程;ならびに
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
【請求項9】
下記工程(e)〜(h)を含むことを特徴とするアッセイ法;
工程(e):透明支持体と、該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と、該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に固定化された第1のリガンドとを含むプラズモン励起センサ、および該プラズモン励起センサの該リガンドが固定化されている面側に、該リガンドに接することなく、該面と略平行に設けられた流路天板を有するセンサチップに、検体を接触させる工程;
工程(f):該工程(e)を経て得られたセンサチップに、さらに第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程;
工程(g):光学ノイズ吸収剤と、少なくとも該吸収剤を溶解する溶媒とを含み、上記プラズモン励起センサと上記流路天板との間(流路)を満たしながら、該工程(f)を経て得られたセンサチップに、該透明支持体の、該金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程;ならびに
工程(h):該工程(g)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライト量を算出する工程。
【請求項10】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層が、上記金属薄膜の、上記透明支持体とは接していないもう一方の表面に形成され、
上記リガンドが、該光学ノイズ吸収剤からなる層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面に固定化されている請求項8に記載のアッセイ法。
【請求項11】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層が、上記流路天板の、上記プラズモン励起センサ側の一方の面に形成され、かつ該層は、上記リガンドに接することのない請求項8に記載のアッセイ法。
【請求項12】
上記光学ノイズ吸収剤からなる層が、光学ノイズ吸収剤と高分子とを含むか、または誘電体と該誘電体の表面にシランカップリング剤を介して固定化されている光学ノイズ吸収剤とを含む請求項8,10および11のいずれかに記載のアッセイ法。
【請求項13】
上記光学ノイズ吸収剤が、顔料または染料である請求項8〜12のいずれかに記載のアッセイ法。
【請求項14】
上記金属薄膜が、金、銀、アルミニウム、銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されている請求項8〜13のいずれかに記載のアッセイ法。
【請求項15】
上記検体が、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液および唾液からなる群から選択される少なくとも1種の体液を含む請求項8〜14のいずれかに記載のアッセイ法。
【請求項16】
少なくとも、上記工程(b)または(f)を経て得られたプラズモン励起センサ、レーザ光の光源、光学フィルタ、プリズム、カットフィルタ、集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光検出部を含み、請求項8,10,11,12〜15のいずれかに記載の工程(c)または請求項9,12〜15のいずれかに記載の工程(g)に用いられることを特徴とする装置。
【請求項17】
少なくとも、透明支持体と上記金属薄膜とを含むセンサおよび光学ノイズ吸収剤を含み、請求項8〜15のいずれかに記載のアッセイ法に用いられることを特徴とするキット。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−37477(P2012−37477A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180246(P2010−180246)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】