説明

センサデバイス

【課題】外部から電力を供給することなく動作可能なセンサデバイスを提供する。
【解決手段】第1のガラス基板10aを用いて形成されたベース基板10と、半導体基板20aを用いて形成されてベース基板10の一表面側に固着されるフレーム部21およびフレーム部21の内側に配置され可撓性の撓み部22を介して揺動自在に支持された振動子23を有する振動子形成基板20と、第2のガラス基板30aを用いて形成され振動子形成基板20との間に振動子23の変位を可能とする変位空間35を形成する形で振動子形成基板20に固着されたカバー基板30と、撓み部22に形成され振動子23の振動に応じて交流電圧を発生する圧電変換部からなる発電部24と、フレーム部21のダイヤフラム部26にも設けた可動電極27とカバー基板30に設けられた固定電極37とで構成され発電部24からの交流電圧によりバイアスされるセンサ部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、MEMS(micro electro mechanical systems)デバイスの一種として、車の振動や人の動きによる振動などの任意の振動に起因した振動エネルギを電気エネルギに変換する発電デバイスが各所で研究開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ここにおいて、上記非特許文献1に開示された発電デバイスは、図10に示すように、ベース基板110と、ベース基板110の一表面側においてベース基板110に支持された2つの櫛形状の固定電極124,124と、ベース基板110の上記一表面から離間して2つの固定電極124,124の間に配置され支持ばね部122を介してアンカー部(図示せず)に支持された振動子123に設けられた櫛形状の可動電極125と、ベース基板110における可動電極125との対向部位に形成されたエレクトレット130とを備えている。なお、上述の発電デバイスは、支持ばね部122の剛性が低くなるように設計されている。
【0004】
上述の発電デバイスでは、固定電極124と可動電極125とを電極とする可変容量コンデンサ126が形成されるから、振動子123がベース基板110の上記一表面に沿って2つの固定電極124,124の並設方向(図10(b)の左右方向)に振動する(図10(a)中の白抜きの矢印は振動子123の振動方向を示している)ことにより固定電極124と可動電極125との間の距離および対向面積が変化し、可変容量コンデンサ126の静電容量が変化する。したがって、可変容量コンデンサ126と当該可変容量コンデンサ126に電圧を印加する電圧印加手段であるエレクトレット130との直列回路の両端間に負荷抵抗200を接続しておけば、可変容量コンデンサ126の静電容量の変化に応じて電荷が移動して電流が発生するから、振動子123の振動によって生じる可動子123の振動エネルギを電気エネルギに変換することができる。ここにおいて、上述の発電デバイスのエネルギ変換効率を大きくするには、可変容量コンデンサ126の静電容量の変化量を大きくすればよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Sterken,et al,「AN ELECTRET-BASED ELECTROSTATIC μ-GENERATOR」,TRANSDUCERS ‘03,The 12th InternationalConference on Solid State Sensors,Actuators and Microsystems,Boston,June8-12,2003,p.1291-1294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来から知られている各種のセンサデバイス(例えば、圧力センサ、温度センサなど)は外部の電源や電池から電力を供給するようにしており、センサデバイスに外部の電源や電池からの電力を供給するための金属細線を接続する必要があった。また、電池からセンサデバイスに電力を供給している場合には、電池の容量がなくなると、電池を交換する必要があった。
【0007】
また、図10に示した構成の発電デバイスをセンサデバイス(例えば、圧力センサ、温度センサ)の電源として用いることも考えられるが、この場合も発電デバイスとセンサデバイスとを金属細線により接続する必要があり(要するに、この場合もセンサデバイスに対して外部から電力を供給するための金属細線を接続する必要があり)、発電デバイスとセンサデバイスとを含めたセンサシステム全体のサイズが大きくなってしまう。また、センサデバイスとは別に発電デバイスが必要であり、低コスト化が難しい。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、外部から電力を供給することなく動作可能なセンサデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ベース基板と、半導体基板を用いて形成されてベース基板の一表面側に固着されるフレーム部およびフレーム部の内側に配置され可撓性の撓み部を介して揺動自在に支持された振動子を有する振動子形成基板と、撓み部に形成され振動子の振動に応じて交流電圧を発生する圧電変換部からなる発電部と、少なくとも一部がフレーム部に設けられ発電部からの交流電圧によりバイアスされるセンサ部とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、フレーム部およびフレーム部の内側に配置され可撓性の撓み部を介して揺動自在に支持された振動子を有する振動子形成基板と、撓み部に形成され振動子の振動に応じて交流電圧を発生する圧電変換部からなる発電部とを備え、少なくとも一部がフレーム部に設けられるセンサ部が、発電部からの交流電圧によりバイアスされるので、外部から電力を供給することなく動作可能となる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記センサ部の出力を電波として放射させるアンテナを備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、前記センサ部の出力を取り出すための金属細線が不要となり、センサデバイスを用いたシステムの低コスト化を図れ、前記発電部で発電できる微量な交流電力を整流、昇圧、蓄電などすることなく前記センサ部の出力を送信できる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記センサ部は、センシング対象の物理量の変化に応じて、容量値もしくは抵抗値が変化することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、センシング対象の物理量の変化を前記センサ部の容量値もしくは抵抗値の変化から検出することが可能となる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記センサ部は、センシング対象の物理量が圧力であって、前記フレーム部に形成したダイヤフラム部に設けられた可動電極と当該可動電極に対向配置される固定電極とで構成され圧力の変化に応じて容量値が変化する可変容量コンデンサであり、前記フレーム部に形成された参照抵抗を介して前記発電部の出力端間に接続されてなることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記発電部で発生する交流電圧と、前記発電部から可変容量コンデンサと参照抵抗とで構成されるRC直列回路に流れる交流電流との位相差が、センシングされる圧力に応じた可変容量コンデンサの容量値に基づいて変化するので、当該位相差に基づいて圧力を検知することが可能となる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項3の発明において、前記センサ部は、センシング対象の物理量が温度であって、温度の変化に応じて抵抗値が変化する感温抵抗であり、前記フレーム部に設けられた参照コンデンサを介して前記発電部の出力端間に接続されてなることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、前記発電部で発生する交流電圧と、前記発電部から参照コンデンサと感温抵抗とで構成されるRC直列回路に流れる交流電流との位相差が、センシングされる温度に応じた感温抵抗の抵抗値に基づいて変化するので、当該位相差に基づいて温度を検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明では、外部から電力を供給することなく動作可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1のセンサデバイスを示し、(a)は概略斜視図、(b)は概略分解斜視図である。
【図2】同上のセンサデバイスにおける振動子形成基板の概略平面図である。
【図3】同上のセンサデバイスを示し、(a)は図2のA−A’断面に対応する概略断面図、(b)は図2のB−B’断面に対応する概略断面図、(c)は図2のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図4】同上のセンサデバイスの等価回路図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】実施形態2のセンサデバイスを示し、(a)は概略斜視図、(b)は概略分解斜視図である。
【図7】同上のセンサデバイスにおける振動子形成基板の概略平面図である。
【図8】同上のセンサデバイスを示し、(a)は図6のA−A’断面に対応する概略断面図、(b)は図6のB−B’断面に対応する概略断面図、(c)は図6のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図9】同上のセンサデバイスの等価回路図である。
【図10】従来例を示し、(a)は一部破断した概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本実施形態のセンサデバイスについて図1〜図3を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態のセンサデバイスは、圧力センサデバイスであり、第1のガラス基板10aを用いて形成された矩形板状のベース基板10と、半導体基板(シリコン基板)20aを用いて形成されてベース基板10の一表面側に固着されるフレーム部21およびフレーム部21の内側に配置され可撓性の撓み部22を介して揺動自在に支持された振動子23を有する振動子形成基板20と、第2のガラス基板30aを用いて形成され振動子形成基板20との間に振動子23の変位を可能とする変位空間35を形成する形で振動子形成基板20におけるベース基板10側とは反対側に固着されたカバー基板30とを備え、振動子形成基板20の撓み部22に、振動子23の振動に応じて交流電圧を発生する圧電変換部(圧電変換素子)からなる発電部24が形成されている。
【0023】
上述の振動子形成基板20は、半導体基板20aの上記一表面上にシリコン酸化膜からなる絶縁膜20bが形成されており、発電部24を構成する圧電変換部は、絶縁膜20b上に形成された金属膜(例えば、Pt膜)からなる下部電極24aと、下部電極24aにおける絶縁膜20b側とは反対側に形成されたPZT膜からなる圧電層24bと、圧電層24bにおける下部電極24a側とは反対側に形成された金属膜(例えば、Al膜)からなる上部電極24cとで構成されている。なお、圧電層24bの圧電材料はPZTに限らず、例えば、鉛フリーのKNNやAlNなどを採用してもよく、これらの材料を採用すれば、環境負荷を軽減できる。
【0024】
また、本実施形態のセンサデバイスは、発電部24からの交流電圧によりバイアスされるセンサ部25と、カバー基板30における振動子形成基板20側とは反対側の一表面側に形成されセンサ部25の出力を電波(電磁波)として放射させるアンテナ39とを備えている。
【0025】
センサ部25は、センシング対象の物理量が圧力であって、フレーム部21に形成したダイヤフラム部26に設けられた可動電極27と、カバー基板30に設けられ可動電極27に対向配置される固定電極37とを備え、ダイヤフラム部26の受ける圧力の変化に応じて容量値が変化する可変容量コンデンサであり、フレーム部21に形成された金属膜からなる参照抵抗38を介して発電部24の出力端間に接続されている。ここで、ダイヤフラム部26は、上述の半導体基板20aの他表面に凹所20cをエッチング技術により形成することによって、振動子形成基板20のフレーム部21に形成されている。また、参照抵抗38は、絶縁膜20b上で平面視形状が蛇行した形状(図示例では、つづら折れ状の形状)に形成されている。上述の説明から分かるように、センサ部25は、一部がフレーム部21に設けられている。
【0026】
上述のセンサ部25は、可動電極27が、フレーム部21に形成された金属配線29aを介して発電部24の一対の電極の一方の電極である下部電極24aと接続され、固定電極37が、カバー基板30に形成された金属配線37bおよびフレーム部21に形成された金属配線28bを介して参照抵抗28の一端部と接続されている。また、参照抵抗28は、他端部が金属配線29bを介して発電部24の他方の電極である上部電極24cと接続されている。また、金属配線29bには、上述のアンテナ39が接続されている。しかして、センサデバイスの等価回路は、発電部24を交流電圧源Vs、参照抵抗28を抵抗R、センサ部25を可変容量コンデンサCとすれば、図4に示すように、交流電圧源Vsに抵抗Rと可変容量コンデンサCとのRC直列回路が接続され、交流電圧源Vsと抵抗Rとを接続している金属配線29bにアンテナ39が接続された回路構成となる。
【0027】
なお、本実施形態では、振動子形成基板20の基礎となる半導体基板20aとしてシリコン基板20aを用いているが、シリコン基板20aに限らず、例えば、シリコン基板からなる支持基板上のシリコン酸化膜からなる絶縁層(埋込酸化膜)上にn形のシリコン層(活性層)を有するSOI基板を用いて形成してもよく、当該絶縁層をダイヤフラム部26および撓み部22の形成時のエッチングストッパ層として利用することでダイヤフラム部26および撓み部22の厚さの高精度化を図るようにしてもよい。
【0028】
また、上述のベース基板10は、振動子形成基板20の凹所20c内の空間に連通する貫通孔10cが厚み方向に貫設されている。要するに、振動子形成基板20の凹所20c内の空間はセンサデバイスの外部空間と連通している。また、ベース基板10の上記一表面には、振動子23の変位空間15を確保するための変位空間形成用凹部10bが形成されている。なお、ベース基板10に変位空間形成用凹部10bを形成せずに、振動子23の厚みを薄くすることでベース基板10側への変位空間15を確保するようにしてもよい。
【0029】
また、上述のカバー基板30は、上述のアンテナ39が形成された一表面側とは反対側(つまり、振動子形成基板20側)の他表面に、振動子23の変位空間35を形成するための変位空間形成用凹部30b(図3(a),(c)参照)と、可動電極27と固定電極37との間にギャップを形成するためのギャップ形成用凹部30c(図3(c)参照)と、参照抵抗28を収納するための参照抵抗収納用凹部30d(図3(b)参照)とが形成されている。また、カバー基板30には、アンテナ39と振動子形成基板20のフレーム部21に形成されている金属配線29bとを電気的に接続する貫通配線38が厚み方向に貫設されている。
【0030】
上述のベース基板10およびカバー基板30は、所望の真空度(例えば、10Pa程度)の真空中で振動子形成基板20のフレーム21に気密的に固着されており、ベース基板10とフレーム部21とカバー基板30とで気密パッケージが構成されるので、当該気密パッケージ内を真空とすることで、振動子23の空気によるエアダンピングを防止することができてエネルギ変換効率の向上を図れるとともに、信頼性を高めることができる。なお、本実施形態のセンサデバイスでは、振動子23の周囲空間(振動子形成基板20における振動子23の周囲の空間と上述の各変位空間15,35とで構成される空間)の圧力、ギャップ形成用凹部10b内の圧力、参照抵抗収納用凹部30d内の圧力、それぞれが上記所望の真空度となっている。
【0031】
本実施形態のセンサデバイスでは、発電部24が下部電極24aと圧電層24bと上部電極24cとで構成される圧電変換部により構成されているから、振動子23の振動によって発電部24の圧電層24bが応力を受け上部電極24cと下部電極24aとに電荷の偏りが発生し、発電部24において交流電圧が発生する。また、本実施形態のセンサデバイスでは、センサ部25として、可動電極27と固定電極37とを一対の電極とする可変容量コンデンサCを備えているから、ダイヤフラム部26がセンサデバイスの外部からベース基板10の貫通孔10cおよび振動子形成基板20の凹所20cの内部空間を通して導入される気体や液体などの圧力により可動電極27と固定電極37との距離が変化し、可変容量コンデンサCの容量値が変化する。
【0032】
ここにおいて、本実施形態のセンサデバイスの等価回路は、上述の図4に示したように、発電部24により構成される交流電圧源Vsに、参照抵抗28とセンサ部25とのRC直列回路が接続された構成となるから、センサ部25の出力をアンテナ39から電波として放射させることができる。
【0033】
なお、上述のセンサデバイスは、MEMSデバイスの製造技術などを利用して形成されている。また、振動子形成基板20とベース基板10およびカバー基板30とは、例えば、陽極接合法や、常温接合法や、エポキシ樹脂などを用いた樹脂接合法などにより固着すればよい。
【0034】
以上説明した本実施形態のセンサデバイスによれば、フレーム部21およびフレーム部21の内側に配置され可撓性の撓み部22を介して揺動自在に支持された振動子23を有する振動子形成基板20と、撓み部22に形成され振動子23の振動に応じて交流電圧を発生する圧電変換部からなる発電部24とを備え、センサ部25が、発電部24からの交流電圧によりバイアスされるので、外部から電力を供給することなく動作可能となる。ここで、センサ部25は、センシング対象の物理量である圧力の変化に応じて、容量値が変化するので、圧力の変化をセンサ部25の容量値の変化から検出することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態のセンサデバイスは、センサ部25の出力を電波として放射させるアンテナ39を備えているので、センサ部25の出力を取り出すための金属細線が不要となり、センサデバイスを用いたシステムの低コスト化を図れ、発電部24で発電できる微量な交流電力を整流、昇圧、蓄電などすることなくセンサ部25の出力を送信できる。しかして、例えば、アンテナ39から送信された電波を受信する受信アンテナおよび当該受信アンテナの出力に基づいて圧力を求めるマイクロコンピュータなどからなる信号処理部を備えた受信装置において、圧力の情報を得ることが可能となる。なお、センサデバイスは、例えば、車両などに搭載して用いられるが、車載用途に限らず、他の用途にも用いられる。
【0036】
また、本実施形態のセンサデバイスによれば、センサ部25は、センシング対象の物理量が圧力であって、フレーム部21に形成したダイヤフラム部26に設けられた可動電極27と当該可動電極27に対向配置される固定電極37とで構成され圧力の変化に応じて容量値が変化する可変容量コンデンサCであり、フレーム部21に形成された参照抵抗28を介して発電部24の出力端間に接続されているので、図5に示すように、発電部24で発生する交流電圧「イ」と、発電部24からセンサ部25と参照抵抗28とで構成されるRC直列回路に流れる交流電流「ロ」との位相差δが、センシングされる圧力に応じたセンサ部25の容量値に基づいて変化する。なお、参照抵抗28の抵抗値をR、センサ部25の容量値をC、交流電圧「イ」の角周波数をωとすると、tanδ=1/ωRCとなる。
【0037】
したがって、センサデバイスにおける可変容量コンデンサCの代わりに容量値が一定のコンデンサを形成したリファレンス用デバイスをセンサデバイスの隣りに配置しておけば、両者の位相差δに基づいて圧力を検知することが可能となる。
【0038】
(実施形態2)
図6〜図8に基づいて説明する本実施形態のセンサデバイスは温度センサデバイスであるが、基本構成は実施形態1と略同じなので、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0039】
本実施形態では、振動子形成基板20において、実施形態1で説明した参照抵抗28(図1〜3参照)の代わりに、平面視形状が蛇行した金属膜(例えば、Pt膜)からなる感温抵抗よりなるセンサ部48が形成されている点、振動子形成基板20において、実施形態1で説明した凹所20c(図3(b)参照)およびダイヤフラム部26(図3(b)参照)を形成せずに可動電極27(図3(b)参照)の代わりに、固定電極47が形成されており、振動子形成基板20の固定電極47とカバー基板30の固定電極37とで容量値が一定の参照コンデンサ45を構成している点、などが相違する。また、本実施形態におけるベース基板10には、実施形態1にて説明した貫通孔10cは形成されていない点も相違する。
【0040】
ここにおいて、センサ部48を構成する感温抵抗はPt膜などの金属膜により形成されている。
【0041】
上述の参照コンデンサ45は、一方の固定電極47が、フレーム部21に形成された金属配線29aを介して発電部24の一対の電極の一方の電極である下部電極24aと接続され、固定電極37が、カバー基板30に形成された金属配線37bおよびフレーム部21に形成された金属配線48bを介して感温抵抗48の一端部と接続されている。また、感温抵抗48は、他端部が金属配線29bを介して発電部24の他方の電極である上部電極24cと接続されている。また、金属配線29bには、上述のアンテナ39が接続されている。しかして、センサデバイスの等価回路は、発電部24を交流電圧源Vs、センサ部48を可変抵抗R、参照コンデンサ45をコンデンサCとすれば、図9に示すように、交流電圧源Vsに可変抵抗RとコンデンサCとのRC直列回路が接続され、交流電圧源Vsと可変抵抗Rとを接続している金属配線29bにアンテナ39が接続された回路構成となる。
【0042】
本実施形態のセンサデバイスでは、上述の説明から分かるように、フレーム部21に設けられる感温抵抗からなるセンサ部48が発電部24からの交流電圧によりバイアスされるので、外部から電力を供給することなく動作可能となる。また、本実施形態のセンサデバイスにおけるセンサ部48は、センシング対象の物理量である温度の変化に応じて、抵抗値が変化するので、センシング対象の物理量の変化をセンサ部48の抵抗値の変化から検出することが可能となる。
【0043】
ここにおいて、本実施形態のセンサデバイスの等価回路は、上述の図9に示したように、発電部24により構成される交流電圧源Vsに、センサ部48と参照コンデンサ45とのRC直列回路が接続された構成となるから、センサ部48の出力をアンテナ39から電波として放射させることができる。しかして、例えば、アンテナ39から送信された電波を受信する受信アンテナおよび当該受信アンテナの出力に基づいて温度を求めるマイクロコンピュータなどからなる信号処理部を備えた受信装置において、温度の情報を得ることが可能となる。なお、センサデバイスは、例えば、車両などに搭載して用いられるが、車載用途に限らず、他の用途にも用いられる。
【0044】
また、本実施形態のセンサデバイスによれば、センサ部48は、センシング対象の物理量が温度であって、フレーム部21に形成され温度の変化に応じて抵抗値が変化する感温抵抗であり、フレーム部21に形成された参照コンデンサ45を介して発電部24の出力端間に接続されているので、上述の図5と同様に、発電部24で発生する交流電圧「イ」と、発電部24からRC直列回路に流れる交流電流「ロ」との位相差δが、センシングされる温度に応じたセンサ部48の抵抗値に基づいて変化する。なお、センサ部48の抵抗値をR、参照コンデンサ45の容量値をC、交流電圧「イ」の角周波数をωとすると、tanδ=1/ωRCとなる。
【0045】
したがって、センサデバイスにおけるセンサ部48の代わりに抵抗値が一定の参照抵抗を形成したリファレンス用デバイスをセンサデバイスの隣りに配置しておけば、両者の位相差δに基づいて温度を検知することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
10 ベース基板
10a 第1のガラス基板
20 振動子形成基板
20a シリコン基板
21 フレーム部
22 撓み部
23 振動子
24 発電部
25 センサ部
26 ダイヤフラム部
27 可動電極
28 参照抵抗
30 カバー基板
30a 第2のガラス基板
35 変位空間
37 固定電極
39 アンテナ
45 参照コンデンサ
48 センサ部(感温抵抗)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、半導体基板を用いて形成されてベース基板の一表面側に固着されるフレーム部およびフレーム部の内側に配置され可撓性の撓み部を介して揺動自在に支持された振動子を有する振動子形成基板と、撓み部に形成され振動子の振動に応じて交流電圧を発生する圧電変換部からなる発電部と、少なくとも一部がフレーム部に設けられ発電部からの交流電圧によりバイアスされるセンサ部とを備えることを特徴とするセンサデバイス。
【請求項2】
前記センサ部の出力を電波として放射させるアンテナを備えることを特徴とする請求項1記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記センサ部は、センシング対象の物理量の変化に応じて、容量値もしくは抵抗値が変化することを特徴とする請求項1または請求項2記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記センサ部は、センシング対象の物理量が圧力であって、前記フレーム部に形成したダイヤフラム部に設けられた可動電極と当該可動電極に対向配置される固定電極とで構成され圧力の変化に応じて容量値が変化する可変容量コンデンサであり、前記フレーム部に形成された参照抵抗を介して前記発電部の出力端間に接続されてなることを特徴とする請求項3記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記センサ部は、センシング対象の物理量が温度であって、温度の変化に応じて抵抗値が変化する感温抵抗であり、前記フレーム部に設けられた参照コンデンサを介して前記発電部の出力端間に接続されてなることを特徴とする請求項3記載のセンサデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−216846(P2010−216846A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60990(P2009−60990)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】